説明

センサユニットのID登録システム及びセンサユニットのID登録方法

【課題】センサユニットのID登録システム及びセンサユニットのID登録方法において、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことにある。
【解決手段】ID登録モードにおいて受信した検知信号を通じて取得したタイヤの温度がユーザの意図を持って変化させたことが認識される閾値を越えて変化したとき、その検知信号に含まれるIDコードが特定のタイヤの取り付け位置に関連付けられて登録される。このように、タイヤの取り付け位置の登録にあたって、タイヤの温度が意図的に変化させられた場合であっても、熱力学の法則に従ってその後自然に常温に戻る。よって、タイヤの取り付け位置を登録した後に、例えば空気圧を調整する等の手間がなく、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてどのタイヤ取り付け位置にどのタイヤが取り付けられているのかを登録するセンサユニットのID登録システム及びセンサユニットのID登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、タイヤの空気圧を走行しながらチェックするタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が搭載される傾向にある。この場合、車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニットが設けられ、各センサユニットからタイヤの空気圧(タイヤ空気圧信号)が送信可能となっている。そして、車両は、これらタイヤ空気圧信号を通じて各タイヤの空気圧を監視し、空気圧異常となったタイヤが存在する場合、そのタイヤを運転者に通知する。
【0003】
ここで、車両には、何れの取り付け位置(右前輪、右後輪、左後輪、左前輪)のタイヤに異常が発生したかを通知するために、事前に各センサユニットに対応するIDコードがタイヤの取り付け位置に関連付けられて登録される。
【0004】
具体的には、IDコード登録用のツールを利用して、予め決められた順(例えば、右前輪→右後輪→左後輪→左前輪の順)にセンサユニットを起動させて、各センサユニットから順にそれぞれ異なるIDコードを含むタイヤ空気圧信号を送信させる。車両は、各センサユニットからの空気圧信号に含まれるIDコードを右前輪→右後輪→左後輪→左前輪の順に登録する。これにより、どの取り付け位置にどのセンサユニット(正確にはそれを備えるタイヤ)が取り付けられているかが識別されて、何れの取り付け位置のタイヤに異常が発生したかを通知できる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1の構成においては、タイヤの取り付け位置の登録には専用のツールが必要となる。そこで、例えば、特許文献2には、専用のツールを利用することなく、タイヤの取り付け位置を登録できる構成が開示されている。具体的には、タイヤの取り付け位置を登録するにあたって、各タイヤの空気圧が所定の条件を満たすように空気圧を調整する。例えば、各タイヤの空気圧が「左前輪>左後輪>右後輪>右前輪」の条件を満たすように空気圧を調整する。車両は、タイヤ空気圧信号に含まれる各タイヤの空気圧情報に基づき、上記例では最も空気圧が高い旨判断されたセンサユニットのIDコードを左前輪として登録する。以下、同様にしてその他3つのセンサユニットについても空気圧の高い順に取り付け位置の登録が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−32331号公報
【特許文献2】特開2004−26062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献2に記載される構成においては、タイヤの取り付け位置の登録を行った後に全てのタイヤの空気圧を適正値まで戻す必要があり不便であった。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができるセンサユニットのID登録システム及びセンサユニットのID登録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、複数のタイヤにそれぞれ設けられるとともに、自身のIDコードを含む無線信号を一定周期毎に送信するセンサユニットと、前記無線信号に含まれるIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するID登録モードを有する車載制御装置とを備えたセンサユニットのID登録システムにおいて、前記センサユニットはタイヤの温度を検出する温度センサを備え、前記センサユニットは前記無線信号に前記温度センサを通じて取得したタイヤの温度に係る情報を含ませて送信し、前記車載制御装置は、前記ID登録モードにおいて受信される前記無線信号に含まれる温度情報を通じてタイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断したとき、その無線信号に含まれるIDコードを特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、ID登録モードにおいて受信した無線信号を通じて取得したタイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断されたとき、その無線信号に含まれるIDコードが特定のタイヤの取り付け位置に関連付けられて登録される。このように、タイヤの取り付け位置の登録にあたって、タイヤの温度が意図的に変化させられた場合であっても、熱力学の法則に従ってその後自然に常温に戻る。よって、タイヤの取り付け位置を登録した後に、例えば空気圧を再調整する等の手間がなく、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記ユーザの意図を持った温度変化は、ユーザによる前記センサユニットへの直接的な動作によりもたらされることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、タイヤの温度変化はユーザによるセンサユニットへの直接的な動作によりもたらされる。よって、車両はタイヤの温度を変化させる構成を備える必要がなく、センサユニットのID登録システムをより簡易に構成できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記各タイヤの取り付け位置には、予め温度の変化態様が対応付けられていて、前記車載制御装置は、前記ID登録モードにおいて特定のタイヤの取り付け位置に関連付けてIDコードを登録するにあたって、受信される前記無線信号に含まれる温度情報を通じてタイヤの温度が前記特定のタイヤの取り付け位置に対応する温度の変化態様にて変化するか否か判断し、前記特定のタイヤの取り付け位置に対応する温度の変化態様にて温度変化した旨判断したとき、前記タイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたとして、その無線信号に含まれるIDコードを前記特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、各タイヤの取り付け位置には、予め温度の変化態様が対応付けられている。ここで、ユーザは各タイヤの取り付け位置に対応する温度の変化態様を認識している。よって、例えば、ID登録モードにおいて右後輪にIDコードを関連付けて登録するにあたって、ユーザが誤って左前輪に温度変化を与えた場合であっても、右後輪及び左前輪に対応付けられる温度の変化態様が異なれば、左前輪のセンサユニットのIDコードが右後輪として誤登録されることを抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、各タイヤの取り付け位置を登録するID登録モードにおいて、複数のタイヤにそれぞれ設けられるセンサユニットから一定周期毎に送信される無線信号に含まれるIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録方法において、前記センサユニットはタイヤの温度に係る情報を含ませて送信し、前記ID登録モードにおいて受信される前記無線信号に含まれるタイヤの温度情報を通じて同タイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断したとき、その無線信号に含まれるIDコードを特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、ID登録モードにおいて受信した無線信号を通じて取得したタイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断されたとき、その無線信号に含まれるIDコードが特定のタイヤの取り付け位置に関連付けられて登録される。よって、タイヤの取り付け位置を登録した後に、例えば空気圧を再調整する等の手間がなく、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センサユニットのID登録システム及びセンサユニットのID登録方法において、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】TPMSの構成図。
【図2】タイヤの取り付け位置に係るIDコードの登録情報が示された表。
【図3】受信機のCPUが実行する制御プログラムの処理手順が示されるフローチャート。
【図4】各センサユニットからの温度情報を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)を搭載した車両に具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、TPMSは、車両の各タイヤに設けられるセンサユニットU1〜U4と、車両に設けられる車載装置1とから構成されている。また、車両はハザードランプ19を備える。本実施形態ではハザードランプ19の点滅を通じて、所定のタイヤの登録が完了した旨がユーザに通知される。
【0019】
図1において拡大して示すように、センサユニットU1〜U4は、送信回路22と、送信アンテナ22aと、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリ23と、温度センサ24と、空気圧センサ25とを備える。温度センサ24は、タイヤの温度を検出し、その検出結果をCPU21に出力する。空気圧センサ25は、タイヤの空気圧を検出し、その検出結果をCPU21に出力する。メモリ23には、各センサユニットU1〜U4に固有のIDコードID1〜ID4が記憶されている。
【0020】
CPU21は、メモリ23を通じて取得したIDコードID1〜ID4と、温度センサ24を通じて認識されたタイヤの温度の情報と、空気圧センサ25を通じて認識されたタイヤの空気圧の情報とを含む検出信号を生成し、その生成した検出信号を送信回路22に出力する。送信回路22は、検出信号を変調するとともに、その変調した検出信号を送信アンテナ22aを介して無線信号として車載装置1に送信する。検出信号は、一定周期毎(例えば1分毎)に送信される。すなわち、各センサユニットU1〜U4からはそれぞれ異なるIDコードID1〜ID4を含む検出信号が送信される。
【0021】
車載装置1は、受信機10及びインジケータ18を備える。インジケータ18は、例えばLED(発光ダイオード)を備えるとともに、同LEDの点灯を通じて所定のタイヤの空気圧が低下した旨をユーザに通知する。
【0022】
受信機10は、受信回路12と、受信アンテナ12aと、CPU11と、メモリ13とを備える。受信回路12は、受信アンテナ12aを介して検出信号を受信するとともに、受信した検出信号を復調し、その復調した検出信号をCPU11に出力する。
【0023】
メモリ13には、空気圧低下の警告に利用される閾値Pthと、センサユニットU1〜U4のIDコードの登録に係る制御プログラムと、そのプログラムにて利用される閾値Tthと、タイヤの取り付け位置に係るID登録情報と、が記憶されている。
【0024】
図2の表にはタイヤの取り付け位置に係るID登録情報が示されている。このID登録情報は、後述する制御プログラムを通じて作成される。同図に示すように、各取り付け位置に対応してIDコードID1〜ID4が登録されている。
【0025】
CPU11は、検出信号に含まれるIDコードID1〜ID4及びタイヤの空気圧の情報を認識する。例えば、CPU11は、IDコードID1に対応する空気圧がメモリ13に記憶される閾値Pth以下となったとき、図2の表を参照して、右前輪の空気圧低下に係る警告をインジケータ18を通じて行う。その他、右後輪、左前輪、左後輪についても同様に警告が行われる。これにより、ユーザは何れのタイヤの空気圧が低下したかを認識することができる。また、CPU11は、図示しないボデー制御装置等を通じてハザードランプ19を点滅させることができる。
【0026】
ここで、図2の表に示したようにタイヤの各取り付け位置に対応してIDコードが登録されていても、タイヤ寿命等の観点からタイヤがローテーションされる場合や新たなタイヤに履き替えられる場合がある。この場合には、IDコードを再登録する必要がある。本実施形態においては、各タイヤを取り付け位置に装着させた後に、ユーザは冷却スプレーの噴射を通じて、予め定められた取り付け位置の順番でセンサユニットU1〜U4を温度変化させることで、各センサユニットU1〜U4のIDコードID1〜ID4を取り付け位置に関連付けて登録していく。
【0027】
以下、具体的にセンサユニットのIDコードの登録に係る制御プログラムについて説明する。この制御プログラムは、メモリ13に記憶されるとともに、図3に示すフローチャートに従ってCPU11により実行される。また、この制御プログラムは、CPU11の動作モードがID登録モードに切り替えられたときに開始される。ID登録モードへは、例えば、ユーザによる図示しない車両側のスイッチ操作により移行される。
【0028】
まず、IDコードの登録に係る取り付け位置が選択される(S101)。本例では、右前輪→右後輪→左後輪→左前輪の順に選択される。すなわち、制御プログラム開始直後のステップS101では右前輪が選択される。
【0029】
そして、各センサユニットU1〜U4からの検出信号に含まれるタイヤの温度t1が認識されて、その温度t1がメモリ13に記憶される(S102)。そして、一定時間が経過するのが待たれて(S103)、その一定時間が経過した旨判断されたとき(S103でYES)、再び各センサユニットU1〜U4からの検出信号に含まれるタイヤの温度t2が認識される(S104)。次に、「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えるか否かが判断される(S105)。ここで閾値Tthは、ユーザによりタイヤの温度が意図的に変化させられたと判断される値に設定される。換言すると、ステップS105においては、温度t1を中心値としてプラス側及びマイナス側にそれぞれ閾値Tthが設定される閾範囲に温度t2が存在するか否かが判断される。
【0030】
「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越える旨判断されたとき(S105でYES)、その温度変化があった検出信号のIDコードが右前輪として登録され(S106)、その登録が完了したときハザードランプ19が点滅される(S107)。
【0031】
一方、「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えない旨判断されたとき(S105でNO)、再び、ステップS102の処理に戻る。ここで、図4のグラフに示すように、ステップS102〜S105の処理は、各センサユニットU1〜U4からの検出信号に含まれる温度情報に基づき同時に行われている。そして、例えば、センサユニットU1からの温度情報において、一定時間T1内に「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えたとき、そのセンサユニットU1に対応するIDコードID1が右前車輪として登録される。このとき、事前に右前車輪として登録されていたIDコードは消去される。
【0032】
そして、全てのタイヤについてそのIDコードID1〜ID4の登録が完了したか否かが判断される(S108)。例えば、右前輪のみ登録が完了している場合(S108でNO)、再びステップS101の処理に移行される。そして、上記右前輪と同様にしてステップS102〜S107の処理を通じて残りの3つの取り付け位置(右後輪、左後輪及び左前輪)についても、図4のグラフに示すように、ユーザによる温度変化を通じてIDコードの登録が行われる。全てのタイヤについてそのIDコードID1〜ID4の登録が完了した旨判断されたとき(S108でYES)、当該制御プログラムの処理が終了される。これにより、新たなタイヤに履き替えられた場合であっても、図2の表において各取り付け位置に新たなIDコードが登録される。また、タイヤがローテーションされた場合であっても、図2の表におけるIDコードは適切に入れ替えられる。何れの場合であっても、上記登録作業を行うことで特定のタイヤの空気圧が低下したときには、そのタイヤを正しくインジケータ18を通じて通知することができる。
【0033】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ID登録モードにおいて受信した検知信号を通じて取得したタイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたことが認識される閾値Tthを越えて変化したとき、その検知信号に含まれるIDコードが特定のタイヤの取り付け位置に関連付けられて登録される。このように、センサユニットU1〜U4の登録にあたって、タイヤの温度が意図的に変化させられた場合であっても、熱力学の法則に従ってその後自然に常温に戻る。よって、タイヤの取り付け位置を登録した後に、例えば空気圧を調整する等の手間がなく、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録を行うことができる。
【0034】
(2)タイヤの温度変化はユーザによる冷却スプレーの噴射を通じて行われる。よって、車両はタイヤの温度を変化させる構成を備える必要がなく、簡易に構成できる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0035】
・上記実施形態においては、ハザードランプ19の点滅を通じて特定のタイヤ取り付け位置についてIDコードの登録が完了した旨が通知されていた。しかし、通知手段はこれに限らず、例えばホーンやインジゲータを通じて通知してもよい。
【0036】
・上記実施形態においては、図4のグラフに示すように、冷却スプレーを通じてユーザによりタイヤの温度は低下させられていた。しかし、ドライヤー等の加熱手段を通じてタイヤの温度を上昇させてもよい。この場合であっても温度変化(「温度t1−温度t2」)は絶対値で判断されるため、上記実施形態と同様にタイヤの取り付け位置を登録できる。
【0037】
また、センサユニットU1〜U4の温度を変化させることができれば、使い捨てカイロを押し当てたり、息を吹きかけたりすることで、温度変化させてもよい。この場合には、例えば温度センサ24の検出部を外部に露出させる態様でバルブに設けることで、その部分に例えば息を吹きかけ、若しくは使い捨てカイロを押し当てることで、より容易に温度を変化させることができる。さらに、前記検出部にユーザが直接手指で触れることで体熱や、前記検出部をユーザが手指で擦ることで生じる摩擦熱を通じて温度変化を与えてもよい。
【0038】
・上記実施形態においては、ユーザによって直接的にタイヤの温度は変化させられていた。しかし、車両は各センサユニットU1〜U4に対向する位置に冷却装置又は加熱装置を備え、これら装置を通じて自動的に各センサユニットの温度を変化させてもよい。この場合、右前輪→右後輪→左後輪→左前輪の順にそれぞれに対応する冷却装置等は動作する。これにより、ユーザが冷却スプレー等を通じてタイヤの温度を変化させる手間がなく、より簡易にタイヤの取り付け位置の登録が行える。
【0039】
・上記実施形態における図3に示すフローチャートにおいて、ステップS103の処理を省略してもよい。この場合には、一定時間T1の経過の有無に関わらず、ステップS105において「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えるか否かが判断される。
【0040】
また、「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えない旨判断されたとき(S105でNO)、ステップS102ではなく、ステップS104の処理に移行してもよい。この場合、温度t1は初期値に固定される。
【0041】
・上記実施形態においては4輪の自動車であったが、車輪の数はこれに限定されず、例えば自動2輪車に適用してもよい。
・上記実施形態においては、IDコードは各タイヤに対応して計4つであったが、スペアタイヤがグランドタイヤ(車両装着タイヤ)であれば、IDコードは計5つ、すなわちIDコードID1〜ID5まで存在することになる。
【0042】
また、センサユニットU1〜U5からの検出信号が受信されている場合には、最後までユーザの意図ある温度変化がないセンサユニットのIDコードをスペアタイヤとして登録してもよい。
【0043】
・上記実施形態においては、「温度t1−温度t2」の絶対値が閾値Tthを越えるか否かを通じてユーザが意図した温度変化があったか否かが判断されていた。しかし、上記温度変化の有無の判断条件はこれに限らない。例えば、常温から一定温度だけ低下した後、一定温度だけ上昇したとき上記温度変化があったと判断されてもよい。この低下及び上昇の順番を逆にしてもよい。
【0044】
・上記実施形態においては、取り付け位置が選択された後に(S101)、閾値Tthを越える温度の上昇又は低下があったとき(S105でYES)、その温度変化があったセンサユニットU1〜U4のIDコードが登録される(S106)。しかし、各取り付け位置に温度の上昇若しくは低下が対応付けされてもよい。以下、前輪(右前輪及び左前輪)に温度上昇、後輪(右後輪及び左後輪)に温度低下が対応付けられた例について説明する。
【0045】
ステップS101において右前輪が選択されたときには、ステップS105において閾値Tthを越える温度上昇があったか否かが判断される。すなわち、上記実施形態と異なって絶対値をとることなく「t2−t1>Tth」の判断が行われる。
【0046】
一方、ステップS101において右後輪が選択されたときには、ステップS105において「t1−t2」にて算出される低下温度が閾値Tthを越えるか否かが判断される。すなわち、上記実施形態におけるステップS105の計算式において絶対値が省略される。
【0047】
以上の構成によれば、ユーザによるIDコードの誤登録が抑制される。具体的には、ユーザは前輪を温度上昇させて、後輪を温度低下させてID登録を行うことを事前に認識している。この状況において、例えば、右前輪についてIDコードの登録が完了(S106)した後、本来ならば右後輪についてIDコードを登録する、すなわち、右後輪のセンサユニットに温度変化を与える必要がある。しかし、ユーザが誤って左前輪のセンサユニットに温度変化を与えてしまったとする。この場合であっても、ユーザは左前輪のセンサユニットを温度上昇させているところ、閾値Tthを越える温度低下があった旨判断、ひいてはそのセンサユニットのIDコードが右後輪として登録されることはない。よって、上記誤登録を抑制できる。ここで、各取り付け位置に対応付けられる温度上昇又は低下は上記例に限らない。例えば、右輪(右前輪及び右後輪)に温度上昇、左輪(左前輪及び左後輪)に温度低下が対応付けられてもよい。
【0048】
さらに、各取り付け位置に温度上昇及び低下を対応付けることで、例えば以下のような制御も可能となる。ステップS101において、左前輪及び左後輪からなる左側と、右前輪及び右後輪からなる右側の何れかが選択される。そして、右側が選択された場合において、センサユニットの上昇温度(t2−t1)が閾値Tthを超えたときにはそのIDコードは右前輪に登録され、低下温度(t1−t2)が閾値Tthを越えたときにはそのIDコードは右後輪に登録される。これにより、例えば右輪が選択されているときには、右前輪及び右後輪の順番関係なく、右前輪を加熱して、右後輪を冷却することで、正しくIDコードの登録が行える。よって、利便性が向上する。
【0049】
さらに、各取り付け位置にそれぞれ異なる温度の上昇及び低下の組み合わせが対応付けられていてもよい。例えば、上昇、低下及び上昇の順で変化した場合にはその温度変化に係るセンサユニットのIDコードを予め対応付けられている取り付け位置に登録する。これにより、ステップS101においてIDコード登録に係る取り付け位置を選択する必要がなくなる。よって、任意の順番にてIDコードの登録が行える。
【0050】
・上記実施形態においては、センサユニットU1〜U4からのそれぞれの温度情報に基づきユーザの意図ある温度変化の有無の判断(S105)が行われていた。しかし、各センサユニットU1〜U4の相対的な温度変化に基づき上記温度変化の有無の判断を行ってもよい。例えば、センサユニットU1の温度が他のセンサユニットU2〜U4の温度と同一の場合には相対温度差はゼロとなる。センサユニットU1の相対温度差が閾値Tthを越えた場合、そのIDコードが特定の取り付け位置に登録される。これにより、ユーザの意図がない車両環境に伴う温度変化により誤ってIDコードが登録されることが抑制される。
【0051】
・上記実施形態においては、ステップS101において、CPU11によって取り付け位置の登録対象が予め設定された順番(右前輪→右後輪→左後輪→左前輪)で選択されていた。しかし、ユーザが例えばスイッチ操作により取り付け位置の登録対象を選択可能としてもよい。
【0052】
・上記実施形態においては、受信機10に設けられるCPU11によりユーザの意図ある温度変化の有無の判断(S105)が行われていた。しかし、センサユニットU1〜U4のCPU21においてその判断が行われてもよい。この場合、CPU21は温度センサ24の検出結果に基づきユーザの意図ある温度変化があった旨判断したとき(S105でYES)、その旨及び自身のIDコードを含む結果信号を送信する。車両側のCPU11は受信回路12等を通じて結果信号を受信すると、その結果信号に含まれるIDコードを特定の取り付け位置に登録する。すなわち、CPU11はID登録モードにおいて結果信号を受信した順に、それに含まれるIDコードを右前輪→右後輪→左後輪→左前輪の順に登録していく。これにより、車両側のCPU11が各センサユニットU1〜U4の温度情報を監視する必要がなくなる。また、検出信号に温度情報を含ませる必要がなくなり、それに係る処理を省くことができる。
【0053】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項2に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記ユーザによる前記センサユニットへの直接的な動作とは、携帯型の冷却又は加熱手段を前記センサユニットに接近させる動作であるセンサユニットのID登録システム。
【0054】
同構成によれば、冷却スプレーやカイロ等の携帯型の冷却又は加熱手段をセンサユニットに接近させることで閾値を越えるタイヤの温度変化がもたらされる。
(ロ)請求項2に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記ユーザによる前記センサユニットへの直接的な動作とは、体熱を利用して前記センサユニットに温度変化を加える動作であるセンサユニットのID登録システム。
【0055】
同構成によれば、体熱を利用して閾値を越えるタイヤの温度変化がもたらされる。具体的には、センサユニットに息を吹きかけることや触れることで体熱を利用して温度変化をもたらすことができる。体熱を利用することで、携帯型の冷却又は加熱手段を用意する必要がないため、利便性が高い。
【0056】
(ハ)請求項1〜3、上記(イ)項及び(ロ)項のうち何れか一項に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記ID登録モードへはユーザの操作に基づき移行するセンサユニットのID登録システム。
【0057】
同構成によれば、ユーザの操作によりID登録モードへ移行される。よって、ユーザの意図なくタイヤの温度が変化することで不用意にIDコードが登録されることが防止される。
【0058】
(ニ)複数のタイヤにそれぞれ設けられるとともに、自身のIDコードを含む無線信号を一定周期毎に送信するセンサユニットと、前記無線信号に含まれるIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するID登録モードを有する車載制御装置とを備えたセンサユニットのID登録システムにおいて、前記センサユニットはタイヤの温度を検出する温度センサを備え、前記センサユニットは前記温度センサの検出結果に基づくタイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断したとき、その旨を含む前記無線信号を送信し、前記車載制御装置は、前記ID登録モードにおいて受信した前記無線信号に含まれるユーザの意図ある温度変化があった旨を認識すると、それに含まれるIDコードを特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録システム。
【0059】
同構成によれば、センサユニットによってタイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたか否か判断される。よって、車載制御装置の判断処理に係る負担を低減することができる。
【0060】
(ホ)請求項3に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、前記温度の変化態様とはユーザの意図を持って温度変化されたことを認識する基準となる閾値を越える温度上昇、若しくは前記閾値を越える温度低下であるセンサユニットのID登録システム。
【0061】
同構成によれば、各タイヤの取り付け位置には、予め温度上昇若しくは温度低下が対応付けられている。ユーザはID登録にあたって何れの取り付け位置におけるタイヤを加熱若しくは冷却する必要があるかを記憶すればよく、その記憶が容易である。
【0062】
(ヘ)請求項1又は2に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、タイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたことを認識する基準となる閾範囲を外れたとき、前記タイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断するセンサユニットのID登録システム。
【0063】
同構成によれば、タイヤの温度と閾範囲との比較を通じて、容易にタイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたか否かが判断される。
【符号の説明】
【0064】
1…車載装置、10…受信機、11…CPU、12…受信回路、21…CPU(車載制御装置)、24…温度センサ、25…空気圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイヤにそれぞれ設けられるとともに、自身のIDコードを含む無線信号を一定周期毎に送信するセンサユニットと、前記無線信号に含まれるIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するID登録モードを有する車載制御装置とを備えたセンサユニットのID登録システムにおいて、
前記センサユニットはタイヤの温度を検出する温度センサを備え、
前記センサユニットは前記無線信号に前記温度センサを通じて取得したタイヤの温度に係る情報を含ませて送信し、
前記車載制御装置は、前記ID登録モードにおいて受信される前記無線信号に含まれる温度情報を通じてタイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断したとき、その無線信号に含まれるIDコードを特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録システム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、
前記ユーザの意図を持った温度変化は、ユーザによる前記センサユニットへの直接的な動作によりもたらされるセンサユニットのID登録システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサユニットのID登録システムにおいて、
前記各タイヤの取り付け位置には、予め温度の変化態様が対応付けられていて、
前記車載制御装置は、前記ID登録モードにおいて特定のタイヤの取り付け位置に関連付けてIDコードを登録するにあたって、受信される前記無線信号に含まれる温度情報を通じてタイヤの温度が前記特定のタイヤの取り付け位置に対応する温度の変化態様にて変化するか否か判断し、
前記特定のタイヤの取り付け位置に対応する温度の変化態様にて温度変化した旨判断したとき、前記タイヤの温度がユーザの意図を持って変化されたとして、その無線信号に含まれるIDコードを前記特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録システム。
【請求項4】
各タイヤの取り付け位置を登録するID登録モードにおいて、複数のタイヤにそれぞれ設けられるセンサユニットから一定周期毎に送信される無線信号に含まれるIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録方法において、
前記センサユニットはタイヤの温度に係る情報を含ませて送信し、
前記ID登録モードにおいて受信される前記無線信号に含まれるタイヤの温度情報を通じて同タイヤの温度がユーザの意図を持って変化された旨判断したとき、その無線信号に含まれるIDコードを特定のタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するセンサユニットのID登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86740(P2012−86740A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236583(P2010−236583)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】