説明

センサ用出力ICおよびセンサ装置

【課題】センサ装置の回路規模および製造コストを従来よりも抑制しつつ、負荷短絡保護機能を実現する。
【解決手段】センサ用出力IC10は、センサからの検出信号に基づき、出力端子間をオン・オフするための出力用トランジスタ11を備える。センサ用出力IC10は、センサ用出力IC10内の温度が所定値以上になると、出力用トランジスタ11をオフ状態に維持する温度制限回路13と、出力用トランジスタ11のベース電位Vを所定値以下に制限する電圧制限回路15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサからの検出信号に基づき、出力端子間をオン・オフするスイッチング素子を備えるセンサ用出力ICおよびセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、センサからの検出信号に基づき、各種の動作を行う一般的なセンサシステムの概略構成を示している。図示のように、センサシステム100は、センサ装置110に電源111および負荷112が接続された構成である。電源111は、センサ装置110の電力供給端子113・113に接続され、センサ装置110に電力を供給する。また、負荷112は、電力の供給により、センサ120(後述)の検出信号に基づく各種の動作を行うものであり、直列に接続された電源111および負荷112が、出力端子114・114に接続される。
【0003】
なお、図示の例では、電力供給端子113および出力端子114の−側が共通の接地端子GNDとなっている。以下では、電力供給端子113および出力端子114の+側を、それぞれ電力供給端子Vccおよび出力端子OUTと記述する。
【0004】
センサ装置110は、センサ120およびセンサ用出力IC(Integrated Circuit)121を備える構成である。センサ120は、物理的または化学的な情報を検出するものであり、例えば近接センサ、光電センサなどが挙げられる。センサ120が検出した検出信号が、センサ用出力IC121に入力される。
【0005】
センサ用出力IC121は、出力端子122・122がセンサ装置110の出力端子OUT・GNDにそれぞれ接続される。センサ用出力IC121は、センサ120からの検出信号に基づき、出力端子122・122間をオン・オフするスイッチング素子123を備える。これにより、電源111から負荷112への電力供給がオン・オフされる。従って、センサ120の検出に基づき、負荷112の動作を制御することができる。
【0006】
図6に示すセンサシステム100において、負荷112を短絡させた場合、スイッチング素子123は、オン状態になると過大な電流が流れて、故障する虞がある。このため、従来から、センサ装置110には、負荷112を短絡させてもスイッチング素子123を故障から保護する負荷短絡保護機能が設けられている。
【0007】
例えば、特許文献1には、スイッチング素子123に第1の所定期間に連続して所定値以上の過電流が流れていることを検出すると、スイッチング素子123を第2の所定期間強制的にオフする短絡保護回路が開示されている。第1および第2の所定期間を経過したか否かを判断するため、同文献ではタイマ回路を利用しており、その他、ロジック回路のクロック周波数を分周したものを利用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−156721号公報(1990年6月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記タイマ回路を利用する場合、容量、抵抗などを有する回路素子をセンサ用出力IC121の外部に設ける必要があるため、センサ装置110は、回路規模および製造コストが増大することになる。また、上記ロジック回路を利用する場合、上記ロジック回路をセンサ用出力IC121の内部に設ける必要があるため、センサ用出力IC121の製造プロセスが高価なものに限定され、製造コストが増大することになる。このように、従来の短絡保護回路は、センサ装置110のさらなる小型化および低価格化を図る上で問題となっている。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサ装置の回路規模および製造コストを従来よりも抑制しつつ、負荷短絡保護機能を実現するセンサ用出力ICなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るセンサ用出力ICは、センサからの検出信号に基づき、出力端子間をオン・オフするためのスイッチング素子を備えるセンサ用出力ICにおいて、上記課題を解決するために、該センサ用出力IC内の温度が所定値以上になると、上記スイッチング素子をオフ状態に維持する温度制限回路を備えることを特徴としている。
【0012】
負荷が短絡されている場合、スイッチング素子は、オン状態になると過大な電流が流れて発熱し、センサ用出力IC内の温度が上昇する。そこで、本発明では、温度制限回路は、上記温度が所定値以上になると、上記スイッチング素子をオフ状態に維持する。これにより、スイッチング素子の発熱が停止するので、スイッチング素子を故障から保護することができる。
【0013】
ところで、ICに組み込まれるトランジスタなどの半導体素子は温度特性を有するものが多い。従って、温度制限回路は、温度特性を有する半導体素子を利用することにより、上記温度が所定値以上であるか否かを検出することができ、上述の動作を行うことができる。これにより、負荷短絡保護機能を実現するために、センサ用出力ICは、外部に部品を接続したり、内部にロジック回路を設けたりする必要が無くなるので、回路規模および製造コストを従来よりも抑制することができる。
【0014】
なお、センサは、センサ用出力ICの外部に設けられてもよいし、センサ用出力ICに組み込まれてもよい。
【0015】
本発明に係るセンサ用出力ICでは、上記スイッチング素子は、駆動用電流が供給されるとオン状態になる一方、上記駆動用電流の供給が停止されるとオフ状態になるものであり、上記検出信号に基づき、上記スイッチング素子に上記駆動用電流を供給するか、或いは上記駆動用電流の供給を停止する駆動回路をさらに備えており、上記温度制限回路は、上記温度が所定値以上になると、上記駆動回路の動作を停止するように制御してもよい。
【0016】
この場合、温度制限回路は、上記温度が所定値以上になると、駆動回路の動作を停止する。これにより、検出信号に関係なく、駆動回路からスイッチング素子に駆動用電流が供給されなくなるので、上記スイッチング素子がオフ状態に維持され、上述と同様の効果を奏することができる。
【0017】
ところで、負荷を短絡させたことにより上記スイッチング素子が故障に至る原因としては、上述のような発熱によるものと、電流集中によるものとが挙げられる。上記発熱による故障は、時間の経過と共に上記スイッチング素子の温度が上昇することにより発生する。一方、上記電流集中による故障は、上記スイッチング素子に流せる電流の最大値を超えることにより瞬時に発生する。
【0018】
従って、上記スイッチング素子にてオン状態の場合に流れる電流を制限する回路を設けて、上記スイッチング素子を上記電流集中による故障から保護することが望ましい。具体的には、本発明に係るセンサ用出力ICでは、上記スイッチング素子は、オン状態の場合に流れる電流が、上記スイッチング素子に印加される駆動用電圧によって決まるものであり、上記駆動用電圧を所定値以下に制限する電圧制限回路をさらに備えることが望ましい。
【0019】
この場合、電圧制限回路が駆動用電圧を制限することにより、オン状態の場合にスイッチング素子に流れる電流を制限することができる。従って、上記スイッチング素子を故障から確実に保護することができる。
【0020】
本発明に係るセンサ用出力ICでは、上記温度制限回路は、検出した温度が上記所定値よりも低い別の所定値になると、上記駆動回路の動作を再開するように制御することが望ましい。この場合、上記温度が上記所定値以下となり、さらに上記別の所定値以下となるまで、上記駆動回路の動作が停止したままとなり、上記スイッチング素子のオフ状態が維持されるので、上記スイッチング素子を十分に冷却することができる。従って、上記スイッチング素子を故障から確実に保護することができる。
【0021】
本発明に係るセンサ用出力ICでは、上記温度制限回路は、上記スイッチング素子に隣接して配置することが望ましい。この場合、温度制限回路が検出する温度は、スイッチング素子の温度に近くなるので、スイッチング素子に過大な電流が流れて発熱してから、上記温度が所定値以上になったことを検出するまでの期間を短縮することができる。従って、上記スイッチング素子を故障から確実に保護することができる。
【0022】
なお、上記スイッチング素子の例としては、トランジスタが挙げられる。
【0023】
また、センサと、上記構成のセンサ用出力ICとを備えるセンサ装置であれば、上述と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係るセンサ用出力ICは、温度特性を有する半導体素子を利用して、センサ用出力IC内の温度が所定値以上になると、スイッチング素子をオフ状態に維持することにより、スイッチング素子を故障から保護するので、外部に部品を接続したり、内部にロジック回路を設けたりする必要が無くなり、回路規模および製造コストを従来よりも抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態であるセンサ用出力ICの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記センサ用出力ICにおいて、負荷が短絡された場合に出力用トランジスタに流れる電流と、上記センサ用出力ICの温度との時間変化を示すグラフである。
【図3】上記センサ用出力ICにおける出力用トランジスタおよび温度制限回路の位置関係を示す平面図である。
【図4】上記センサ用出力ICの一実施例を示す回路図である。
【図5】上記センサ用出力ICの他の実施例を示す回路図である。
【図6】一般的なセンサシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。なお、センサシステムの概略構成は、図6に示す従来のセンサシステム100の概略構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0027】
図1は、本実施形態のセンサ用出力IC10の概略構成を示している。図示のように、センサ用出力IC10は、出力用トランジスタ(Q1)11、抵抗(R1)12、温度制限回路13、駆動回路14、および電圧制限回路15を備える構成である。
【0028】
出力用トランジスタ11は、図6に示すスイッチング素子123として機能するものである。図示の例では、出力用トランジスタ11は、NPN型であり、コレクタ端子が出力端子OUTに接続され、ベース端子が駆動回路14および電圧制限回路15に接続され、かつ、エミッタ端子が抵抗12を介して接地端子GNDに接続されている。出力用トランジスタ11は、駆動回路14からの電気信号により、オン・オフ動作を行う。
【0029】
温度制限回路13は、出力用トランジスタ11付近の温度が第1の所定値以上になると、駆動回路14の動作を停止するように指示する。さらに、温度制限回路13は、上記温度が、第1の所定値よりも低い第2の所定値以下になると、駆動回路14の動作を再開するように指示するヒステリシス機能を有する。
【0030】
駆動回路14は、出力用トランジスタ11をオフ状態からオン状態に駆動するための駆動用電流の供給を、センサ120からの検出信号に基づき制御するものである。具体的には、駆動回路14は、上記検出信号により出力用トランジスタ11をオン状態にする場合、出力用トランジスタ11のベース端子に所定の駆動用電流を供給する。一方、駆動回路14は、上記検出信号により出力用トランジスタ11をオフ状態にする場合、上記駆動用電流の供給を停止する。
【0031】
さらに、駆動回路14は、上記温度制限回路13からの指示により、動作を停止したり再開したりする。駆動回路14が動作を停止すると、上記検出信号に関係なく、上記駆動用電流の出力用トランジスタ11への供給が停止されるので、出力用トランジスタ11はオフ状態となる。
【0032】
電圧制限回路15は、出力用トランジスタ11のベース端子の電位(ベース電位)Vを所定値以下に制限するものである。出力用トランジスタ11は、ベース−エミッタ間電圧VBE(Q1)が閾値よりも低いとオフ状態となり、ベース−エミッタ間電圧VBE(Q1)が閾値以上になるとオン状態となる。オン状態のとき、出力用トランジスタ11のベース電位Vおよび電流Ioutは次式を満たす。
=VBE(Q1)+Iout×R1 ・・・(式1)。
【0033】
出力用トランジスタ11は、流れる電流Ioutが変化してもベース−エミッタ間電圧VBE(Q1)がさほど変化しない。これにより、出力用トランジスタ11を流れる電流Ioutは、ベース電位V、すなわち、接地端子GNDと出力用トランジスタ11のベース端子との間の電圧(駆動用電圧)Vによって決まることになる。
【0034】
従って、負荷が短絡された場合など、出力用トランジスタ11に過剰な電流が流れるような状況では、電圧制限回路15によってベース電位Vを所定値以下に制限することにより、出力用トランジスタ11を流れる電流Ioutを制限することができる。これにより、出力用トランジスタ11を電流集中による故障から保護することができる。
【0035】
上記構成のセンサ用出力IC10において、負荷が短絡された場合、出力用トランジスタ11は、オン状態になると過大な電流が流れて発熱し、センサ用出力IC10内の温度が上昇する。このとき、温度制限回路13は、上記温度が所定値以上になると、駆動回路14の動作を停止する。これにより、検出信号に関係なく、駆動回路14から出力用トランジスタ11に駆動用電流が供給されなくなるので、出力用トランジスタ11がオフ状態に維持される。これにより、出力用トランジスタ11の発熱が停止するので、出力用トランジスタ11を故障から保護することができる。
【0036】
また、温度制限回路13は、温度特性を有する半導体素子を利用して、上記温度が所定値以上であるか否かを検出することができ、上述の動作を行うことができる。これにより、負荷短絡保護機能を実現するために、センサ用出力IC10は、外部に部品を接続したり、内部にロジック回路を設けたりする必要が無くなるので、回路規模および製造コストを従来よりも抑制することができる。
【0037】
また、温度制限回路13は、上述のヒステリシス機能を有するので、出力用トランジスタ11を十分に冷却することができる。従って、出力用トランジスタ11を故障から確実に保護することができる。
【0038】
図2は、上記構成のセンサ用出力IC10において、負荷が短絡された場合に出力用トランジスタ11に流れる電流Ioutと、センサ用出力IC10の温度との時間変化を示すグラフである。なお、図示の例では、出力用トランジスタ11がオン状態となるような検出信号がセンサ120から入力されているとする。
【0039】
図2に示すように、出力用トランジスタ11がオン状態となり、出力用トランジスタ11に電流Ioutが流れて、センサ用出力IC10のチップ温度が上昇する。このとき、電流Ioutは、電圧制限回路15によって制限値に制限される。
【0040】
そして、上記チップ温度が第1の所定値に達すると、出力用トランジスタ11がオフ状態となる。これにより、上記チップ温度が徐々に低下する。そして、上記チップ温度が第2の所定値に達すると、駆動回路14の動作が再開されて、出力用トランジスタ11がオン状態となり、上記の動作を繰り返す。
【0041】
図3は、センサ用出力IC10における出力用トランジスタ11および温度制限回路13の配置例を示している。図示のように、温度制限回路13は、出力用トランジスタ11に隣接して配置されることが望ましい。この場合、温度制限回路13が検出する温度は、出力用トランジスタ11の温度に近くなるので、出力用トランジスタ11に過大な電流が流れて発熱してから、上記温度が所定値以上になったことを検出するまでの期間を短縮することができる。従って、出力用トランジスタ11を故障から確実に保護することができる。なお、温度制限回路13では、上記温度の検出に利用される素子(後述のトランジスタQ21および抵抗R21)を出力用トランジスタ11に近い側に設けることがさらに望ましい。
【実施例1】
【0042】
図4は、図1に示すセンサ用出力IC10の回路の一例を示している。まず、センサ用出力IC10における駆動回路14の回路例について説明する。図示のように、駆動回路14は、定電流源CC11、NPN型のトランジスタQ11・Q12、および抵抗R11を備える構成である。
【0043】
トランジスタQ11は、コレクタ端子が、電力供給線Vccに接続され、ベース端子にセンサ120からの検出信号が入力され、エミッタ端子が抵抗R11を介して出力用トランジスタ11のベース端子に接続される。また、トランジスタQ12は、コレクタ端子が定電流源CC11およびトランジスタQ11のベース端子に接続され、ベース端子がトランジスタQ11のエミッタ端子に接続され、エミッタ端子が出力用トランジスタ11のベース端子に接続される。
【0044】
従って、上記検出信号により定電流源CC11からの電流がトランジスタQ11・Q12に供給されると、トランジスタQ11がオン状態となって、出力用トランジスタ11のベース端子に駆動用電流I11が供給される。このとき、I11=VBE(Q12)/R11となる。ここで、VBE(Q12)は、トランジスタQ12のベース−エミッタ間電圧を意味する。一方、上記検出信号により定電流源CC11からの電流がトランジスタQ11・Q12に供給されなくなると、トランジスタQ11がオフ状態となって、駆動用電流I11の供給が停止される。
【0045】
次に、センサ用出力IC10における温度制限回路13の回路例について説明する。温度制限回路13は、図4に示すように、定電流源CC21・CC22・CC23・CC24、NPN型のトランジスタQ21・Q22・Q23・Q24、抵抗R21、およびダイオードD21を備える構成である。
【0046】
図4に示す回路例では、トランジスタQ21および抵抗R21が、センサ用出力IC121内の温度が所定値以上になったことを検出することになる。本実施例では、トランジスタQ21のベース−エミッタ間電圧VBEが負の温度特性を有し、抵抗R21が正の温度特性を有するとする。
【0047】
定電流源C21は、トランジスタQ21のベース端子に接続され、定電流源C22は、トランジスタQ21のコレクタ端子とトランジスタQ22・Q23のベース端子とに接続される。また、定電流源C23は、トランジスタQ22のコレクタ端子に接続され、ダイオードD21を介してトランジスタQ21のベース端子に接続される。
また、定電流源C24は、トランジスタQ23のコレクタ端子とトランジスタQ24のベース端子とに接続される。
【0048】
トランジスタQ21は、ベース端子が抵抗R21を介して接地線GNDに接続される。また、トランジスタQ24は、コレクタ端子が駆動回路14のトランジスタQ11のベース端子に接続される。なお、全てのトランジスタQ21〜Q24は、エミッタ端子が接地線GNDに接続される。
【0049】
従って、出力端子OUTが、電力供給端子Vccと短絡され、出力用トランジスタ11に大電流が流れると、出力用トランジスタ11が発熱し、センサ用出力IC121内の温度が上昇する。このとき、VBE(Q21)が小さくなり、R21が大きくなる。なお、定電流源CC21〜CC24からの電流は、温度にほとんど依存しないとする。
【0050】
そして、上記温度が第1の所定値以上になると、トランジスタQ21がオン状態となる。すると、定電流源CC22からの電流がトランジスタQ21の方に流れるので、トランジスタQ22・Q23がオフ状態となる。これにより、定電流源CC24からの電流がトランジスタQ24の方に流れるので、トランジスタQ24がオン状態となる。これにより、駆動回路14の定電流源CC11からの電流が、トランジスタQ24の方に流れるので、トランジスタQ11がオフ状態となる。その結果、出力用トランジスタ11は、ベース端子に駆動用電流I11が供給されなくなるので、オフ状態となる。
【0051】
また、トランジスタQ22がオフ状態となることにより、定電流源CC23からの電流がダイオードD21を介してトランジスタQ21のベース端子および抵抗R21に供給される。すなわち、トランジスタQ21のベース端子および抵抗R21に供給される電流が増加することになる。これにより、出力用トランジスタ11がオフ状態となり、センサ用出力IC121内の温度が低下して第1の所定値以下となっても、上記電流の増加によりトランジスタQ21はオン状態を維持する。
【0052】
そして、センサ用出力IC121内の温度がさらに低下して第2の所定値以下となると、トランジスタQ21がオフ状態となる。すると、定電流源CC22からの電流がトランジスタQ22・Q23の方に流れるので、トランジスタQ22・Q23がオン状態となり、これにより、定電流源CC24からの電流がトランジスタQ23の方に流れるので、トランジスタQ24がオフ状態となる。これにより、駆動回路14は、定電流源CC11からの電流がトランジスタQ24の方に流れなくなるので、上記検出信号に基づく動作を再開する。
【0053】
また、トランジスタQ22がオン状態となることにより、定電流源CC23からの電流がトランジスタQ22の方へ流れるので、トランジスタQ21のベース端子および抵抗R21に供給される電流が元に戻る。
【0054】
上記構成の温度制限回路13には、I21=ΔVBE/R21で決まる電流源が用いられる。ここで、ΔVBEは、トランジスタの面積により決まるVBEの差電圧を意味する。この電流源は、温度特性が比較的フラットである点と、トランジスタのVBEが負の温度特性であるので温度上昇を検出し易い点とを特徴としているので、本願発明の温度制限回路として望ましい。
【0055】
次に、センサ用出力IC10における電圧制限回路15の回路例について説明する。図4に示すように、電圧制限回路15は、定電流源CC31、NPN型のトランジスタQ31・Q32・Q34、PNP型のトランジスタQ33、および抵抗R31・R32を備える構成である。
【0056】
トランジスタQ31・32および抵抗R31は、出力用トランジスタ11のベース端子と接地線GNDとの間に設けられたカレントミラー回路を構成している。また、トランジスタQ32のコレクタ端子は、定電流源CC31およびトランジスタQ33のベース端子に接続される。
【0057】
また、トランジスタQ33は、エミッタ端子が出力用トランジスタ11のベース端子に接続され、コレクタ端子が、トランジスタQ34のベース端子に接続されると共に、抵抗R32を介して接地線GNDに接続される。また、トランジスタQ34は、コレクタ端子が出力用トランジスタ11のベース端子に接続され、エミッタ端子が接地線GNDに接続される。
【0058】
従って、出力用トランジスタ11がオン状態となり、出力用トランジスタ11および抵抗12に流れる電流が大きくなると、出力用トランジスタ11のベース電位Vが大きくなり、トランジスタQ31・Q32に流れる電流が大きくなる。そして、出力用トランジスタ11のベース電位Vが所定値以上となった場合、定電流源CC31からの電流I31以上の電流がトランジスタQ32に流れて、トランジスタQ33がオン状態となり、トランジスタQ34がオン状態となる。これにより、駆動回路14のトランジスタQ11および抵抗R11を流れる電流I11がトランジスタQ34の方へ流れることになる。従って、ベース電位Vが所定値までに制限されるので、該所定値によって決まる電流値に、出力用トランジスタ11のコレクタ電流Ioutを制限することができる。
【0059】
また、トランジスタQ34がオン状態である場合、次式を満たすことになる。
BE(Q34)={(V−VBE(Q31))/R31‐I31}×hFE(Q33)×R32 ・・・(式2)。
【0060】
ここで、hFEは電流増幅率を意味する。hFE≒∞とすると、出力用トランジスタ11のベース電位Vは、V=I31×R31+VBE(Q31)を満たすことになり、平衡を保つことになる。従って、出力用トランジスタ11のベース電位Vが一定に維持されるので、コレクタ電流Ioutを一定に維持されることができる。
【実施例2】
【0061】
図5は、図1に示すセンサ用出力IC10の回路の他の例を示している。なお、図5に示す回路例は、図4に示す回路例に比べて、電圧制限回路15の構成が異なるのみであり、その他の構成は同じである。
【0062】
上述の実施例では、出力用トランジスタ11を流れる電流Ioutは、上記の式(1)に基づき、出力用トランジスタ11のベース電位Vによって検出しているが、本実施例では、出力用トランジスタ11のエミッタ端子における電位(エミッタ電位)Vによって検出している。換言すれば、本実施例では、抵抗12における電圧Vによって、出力用トランジスタ11から抵抗12に流れる電流Ioutを検出している。なお、上記実施形態および上記実施例で説明した構成と同様の機能を有する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
図5に示す電圧制限回路15は、図4に示す電圧制限回路15に比べて、抵抗R31の接続先が変更されている点と、定電流源CC41、およびダイオードD41・D42が追加されている点とが異なり、その他の構成は同様である。定電流源CC41は、ダイオードD41・D42を介して出力用トランジスタ11のエミッタ端子に接続される。そして、ダイオードD41・42の間の接続点に、抵抗R31が接続される。
【0064】
従って、出力用トランジスタ11および抵抗12に流れる電流が大きくなると、出力用トランジスタ11のエミッタ電位Vが大きくなる。これにより、ダイオードD41・42の間の接続点における電位V41も大きくなり、トランジスタQ31・Q32に流れる電流が大きくなる。そして、出力用トランジスタ11のエミッタ電位Vが所定値以上となった場合、定電流源CC31からの電流I31以上の電流がトランジスタQ32に流れて、トランジスタQ33がオン状態となり、トランジスタQ34がオン状態となる。従って、上述の実施例と同様に、ベース電位Vが制限されることになる。
【0065】
以上のように、電圧制限回路15の回路構成は種々のものが考えられる。同様に、温度制限回路13および駆動回路14の回路構成も種々のものが考えられる。
【0066】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
例えば、上記実施形態および上記実施例では、センサ120は、センサ用出力IC10の外部に設けられているが、一体に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明に係るセンサ用出力ICは、温度特性を有する半導体素子を利用して、センサ用出力IC内の温度が所定値以上になると、スイッチング素子をオフ状態に維持することにより、スイッチング素子を故障から保護するので、近接センサ、光電センサなどの任意のセンサに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 センサ用出力IC
11 出力用トランジスタ(スイッチング素子)
12 抵抗
13 温度制限回路
14 駆動回路
15 電圧制限回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサからの検出信号に基づき、出力端子間をオン・オフするためのスイッチング素子を備えるセンサ用出力ICにおいて、
該センサ用出力IC内の温度が所定値以上になると、上記スイッチング素子をオフ状態に維持する温度制限回路を備えることを特徴とするセンサ用出力IC。
【請求項2】
上記スイッチング素子は、駆動用電流が供給されるとオン状態になる一方、上記駆動用電流の供給が停止されるとオフ状態になるものであり、
上記検出信号に基づき、上記スイッチング素子に上記駆動用電流を供給するか、或いは上記駆動用電流の供給を停止する駆動回路をさらに備えており、
上記温度制限回路は、上記温度が所定値以上になると、上記駆動回路の動作を停止するように制御することを特徴とする請求項1に記載のセンサ用出力IC。
【請求項3】
上記スイッチング素子は、オン状態の場合に流れる電流が、上記スイッチング素子に印加される駆動用電圧によって決まるものであり、
上記駆動用電圧を所定値以下に制限する電圧制限回路をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のセンサ用出力IC。
【請求項4】
上記温度制限回路は、検出した温度が上記所定値よりも低い別の所定値になると、上記駆動回路の動作を再開するように制御することを特徴とする請求項2または3に記載のセンサ用出力IC。
【請求項5】
上記温度制限回路は、上記スイッチング素子に隣接して配置することを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載のセンサ用出力IC。
【請求項6】
上記スイッチング素子はトランジスタであることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載のセンサ用出力IC。
【請求項7】
センサと、請求項1から6までの何れか1項に記載のセンサ用出力ICとを備えるセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−193158(P2011−193158A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56628(P2010−56628)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】