説明

センサ

【課題】複数のベクトル量を検出できるセンサを提供する。
【解決手段】ベース102と、ベース102に対して6自由度を有し、ベース102と対向して配置されたテーブル103と、テーブル103とベース102とを連結する並列配置された6つの連結部104とを備えてセンサ101を構成する。ここで、連結部104は、テーブル103の可動を受ける3自由度を有する軸受け106と、軸受け106の可動を受ける2自由度を有する軸受け107と、ベース102に固定され、軸受け107の可動を受けるアーム105と、を含んでいる。さらに、センサ101は、アーム105の変位および/または変形を検出する静電容量素子108と、静電容量素子108の検出値から、テーブル103もしくはベース102に作用する力の大きさおよび/または方向を計算する演算部を有する回路基板110と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサにおいて、特に、6軸力覚センサおよび6軸運動センサに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
力覚センサは、力覚センサが有するトラベリングテーブル(物体)に作用する力(外力)を検出する装置であり、例えば、ロボットハンドにおいて人間の指先の触覚を実現するために用いられる。力覚センサには、三次元空間の直交座標系(x軸、y軸、z軸)の3軸方向の力成分と、その3軸回りのモーメント成分の計6成分を同時に検出することができるものがある。このように、6成分を検出できる力覚センサは、6軸力覚センサとも呼ばれている。
【0003】
特開平10−274573号公報(特許文献1)には、トッププレートとボトムプレートとを複数のロッドで連結し、これらプレート相互の連結は一端側が2自由度のジョイントにより、他端側が3自由度のジョイントによる力覚センサが開示されている。そしてこの力覚センサのロッドにはロッド軸線方向の圧縮・引張力を検出できる検出素子が具備されている。
【0004】
また、構造体が変形して力を検出する力センサ(構造変形モード)が、特開平9−318469号公報(特許文献2)に開示されている。例えば、歪ゲージと弾性体を組み合わせた型の6軸力センサは、力制御を行なうロボットにおける外力測定などの用途で広く用いられている。歪ゲージを取り付けた弾性体に力あるいはモーメントが作用して弾性体が変形すると、それに応じて各歪ゲージに応力が発生する。その結果生じる各歪ゲージの電気抵抗値の変化は、周知のブリッジ回路を介して電圧値として出力され、更に所定の計算処理回路あるいはソフトウェア処理によって6軸力に変換される。
【0005】
また、特開平5−149811号公報(特許文献3)には、平板状の起歪体のFEM解析により設定された最適部位に貼付された複数の歪ゲージにより直交する3軸の力と、これら軸回りのモーメントを独立して検出する複数のブリッジ回路よりなる歪検出用回路を備えている6軸力覚センサが開示されている。
【0006】
また、特開平9−131690号公報(特許文献4)には、複数のアクチュエータの協同により所定の可動板の位置・姿勢を制御する6軸荷重検出装置が開示されている。複数のアクチュエータの協同動作により可動板を所定の位置・姿勢に保持させることにより、予め決められた可動板上の所定の点に作用する6軸荷重を検出するものである。
【0007】
また、特開2000−148382号公報(特許文献5)には、ユーザに力覚を呈示伝達するための力覚呈示機構が、ユーザを接続するための操作機器と、その操作機器を装着するための運動プラットホームと、その運動プラットホームを支持する6つのリンクセットと、各リンクセットを独立して駆動する6つの駆動装置と、6つの位置センサとを備えた6軸のフォースフィードバックを有する力覚インタフェース装置が開示されている。
【0008】
ところで、加速度センサは、質量を持つ物体の加速度を検出する装置であり、例えば、ロボットの姿勢制御や、自動車のエアバッグの衝突検知などに用いられる。また、角速度センサ(例えばジャイロセンサ)は、質量を持つ物体が回転する角速度を検出する装置であり、例えば、産業用ロボットや、自動車の横転検出などに用いられる。これら加速度センサおよび角速度センサは、物体に加えられた力(外力)を検出する力覚センサに対して、物体の動きから生じる慣性力から検出する装置(運動センサ)である。
【0009】
x軸、y軸、z軸方向の3軸加速度を検出するために、例えば、1軸加速度センサを用いる場合、3個の1軸加速度センサをそれぞれ直交する方向に配置する必要がある。また、x軸、y軸、z軸の回転方向の3軸角速度を検出するために、例えば、1軸角速度センサを用いる場合も3個必要となる。このため、3軸加速度と3軸角速度を同時に検出する6軸運動センサが求められている。
【0010】
なお、本願では、加速度センサおよび角速度センサの上位概念として運動センサを説明する。すなわち、運動センサは、加速度および/または角速度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−274573号公報
【特許文献2】特開平9−318469号公報
【特許文献3】特開平5−149811号公報
【特許文献4】特開平9−131690号公報
【特許文献5】特開2000−148382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、人間の指と同様の触覚を得るために、医療分野や日常生活分野用のロボットの指先に力覚センサを設けるような研究、開発が行われている。このような力覚センサには、小型化、高精度化が要求されている。また、加速度センサ、角速度センサなどの運動センサにおいても、産業用ロボットや、さらには民生機器などに設けられるために、小型化、高精度化が要求されている。
【0013】
ところで、物体に係る力、加速度、角速度ともベクトル量であり、物体が受けた力を検出する力覚センサと、物体の動きを力から加速度、角速度として検出する運動センサとは、ベクトル量を検出する構造を共通とすることができると考えられる。したがって、多くのベクトル量の検出を同時に行うことができる新規な構造を用いれば、小型化、高精度化に対応した力覚センサ、運動センサを得ることも可能となる。
【0014】
本発明の目的は、複数のベクトル量を検出するセンサを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
ベースと、前記ベースに対して6自由度を有し、前記ベースと対向して配置されたテーブルと、前記テーブルと前記ベースとを連結する並列配置された6つの連結部と、を備えたセンサであって、前記連結部が、前記テーブルの可動を受ける3自由度を有する第1軸受けと、前記第1軸受けの可動を受ける2自由度を有する第2軸受けと、一端が前記第1軸受けと接続され、他端が前記第2軸受けと接続されたロッドと、一端が前記第2軸受けと接続され、他端が前記ベースと固定されたアームと、を含んで前記テーブルと前記ベースとを連結しており、前記アームの変位および/または変形を一方向で検出する検出素子を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すると、複数のベクトル量を検出するセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態におけるセンサを模式的に示す上面図である。
【図2】図1のセンサを模式的に示す側面図である。
【図3】図1のセンサが有する回路の構成図である。
【図4】本発明の他の実施の形態におけるセンサを模式的に示す要部断面図である。
【図5】図4の磁気識別素子の原理を説明するための図である。
【図6】本発明の他の実施の形態におけるセンサを模式的に示す要部平面図である。
【図7】図6のX−X線におけるセンサを模式的に示す要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態におけるセンサを模式的に示す上面図である。
【図9】図8のセンサであってテーブルを除いて模式的に示す上面図である。
【図10】図8のY−Y線におけるセンサを模式的に示す断面図である。
【図11】力を検出するための説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態におけるセンサを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、ベクトル量を検出できる新規な構造を有するセンサとして力覚センサに適用した場合について説明する。本実施の形態におけるセンサ101(力覚センサ101)は、図8〜図10に示すように、ベース102と、ベース102に対して6自由度を有し、ベース102と対向して配置されたトラベリングテーブル(以下、単にテーブルという)103と、テーブル103とベース102とを連結する並列配置された6つの連結部104とを備えている。この力覚センサ101は、テーブル103の6自由度により、三次元空間の直交座標系(x軸、y軸、z軸)の3軸方向の力成分F、F、Fと、その3軸回りのモーメント成分M、M、Mの計6成分として、検出することができるものである。
【0021】
連結部104は、テーブル103の可動を受ける3自由度を有する軸受け106と、軸受け106の可動を受ける2自由度を有する軸受け107と、ベース102に固定され、軸受け107の可動を受けるアーム105と、を含んでテーブル103とベース102とを連結している。軸受け106、107は、例えば鋼球を球面で保持し、3自由度または2自由度で可動できる球面軸受けである。
【0022】
本実施の形態では、軸受け106および軸受け107とは、各軸受けの球が角度をもって、例えば溶接によって直接接続されている。すなわち、軸受け106、107は、物理的に大きさを持っているので、それらをある角度で直接接続している。理論的には、上下の軸受け106、107の中心がある距離と角度をもって接続されており、アーム105に力が伝達されていれば良い。このため、ベース102とテーブル103との間の距離を軸受け106、107によるものとでき、力覚センサ101は薄型化とすることができる。
【0023】
このようにベース102とテーブル103との間の距離が短い場合、ベース102とテーブル103との間でアーム長さを確保することが困難となるが、本実施の形態では、アーム105をベース102平面と平行する面内に延在させている。
【0024】
このようにテーブル103を複数の連結部104によって支持する構造は、パラレルリンク構造である。本実施の形態では、テーブル103の全方向(6軸方向)に動かそうとするため、連結部104を6本配置している。なお、テーブル103の平面上の点を移動するのであれば、最小2本の連結部104が必要である。
【0025】
ここで、軸受け106が3自由度を有し、また軸受け107が2自由度を有することに関して説明する。ベース102とテーブル103とを連結部104(軸受け106、107、アーム105)ではなく、剛体のロッドのみで連結した場合を考える。この場合、テーブル103を例えばM全方向に動かそうとすると、ロッドは回転方向に倒れながら尚且つねじられることとなる。テーブル103からロッドの一点を見たとき、ロッドの回転方向の倒れは、テーブル103がその平面方向に動くことで生じる。このロッドの回転方向の倒れを逃がすために2自由度、かつ、ロッドのねじれを逃がすために、もう1自由度が必要となる。また、ベース102からロッドの一点を見たとき、ロッドのねじれは既に逃がされているので、ロッドの回転方向の倒れ分を考慮すれば2自由度となる。なお、ロッドを剛体ではなく弾性体とした場合、テーブル103は自由に可動できるが、ベース102には力が伝達されない。
【0026】
このため、本実施の形態では、テーブル103と接続される軸受け106は3自由度を有するもの、また、ベース102と接続される軸受け107は2自由度を有するものを適用している。
【0027】
テーブル103は円状の平面板を有してなり、例えば、腐食性、加工性に優れたステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属からなる剛体である。このテーブル103の外周側には、平面板を貫通する孔103aが6つ形成されている。この孔103aに嵌合するように球面軸受けである軸受け106が直接接続される。
【0028】
また、ベース102は円状の平面板を有してなり、例えば、腐食性、加工性に優れたステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属からなる剛体である。このベース102の中心部では突起部が形成されており、その突起部からベース102の外周部側へ枝状に延在するアーム105が6つ形成されている。各アーム105は、ベース102と一体成型で形成された場合、腐食性、加工性に優れたステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属からなるが、枝状に延在するように形成しているため、ベース102の変化量に対して十分大きな変化量を有する弾性体となっている。
【0029】
このように各アーム105はベース102が有する平面と平行して枝状に延在している。各アーム105は、先端部が中空体で形成されており、この中空体内に通じる孔105aを有している。この孔105aに嵌合するように球面軸受けである軸受け107が直接接続される。この軸受け107は、前述したように例えば溶接によって角度をもって軸受け106と直接接続されることとなる。
【0030】
また、力覚センサ101は、弾性体であるアーム105の変位および/または変形を検出する検出素子として静電容量素子108を備えている。この静電容量素子108は、アーム105の先端部の下方であってベース102上に配置されるものであって、具体的には、ベース102側とアーム側105に一対の電極が配置されてなる。この一対の電極間の静電容量の変化を、アーム105の変位および/または変形として検出する。
【0031】
また、力覚センサ101は、静電容量素子108の検出値から、テーブル103に作用する力の大きさおよび/または方向を計算する演算部(例えばCPU)を有する回路基板110を備えている。この回路基板110は、ベース102においてテーブル103と対向する平面上に配置されている。
【0032】
この回路基板110には、図3に示すような回路構成によって、アーム105の変位および/または変形を検出した静電容量素子108(検出素子SD)からの信号(アナログ信号)をアンプ11によって増幅した後、そのアナログ信号をA/D変換器12でデジタル信号に変換し、CPU13によってテーブル103に加わった力(荷重)を、メモリ14からの定数を用いて計算する。すなわち、演算部であるCPU13は、静電容量素子108(検出素子SD)が検出した検出値から、テーブル103に作用する力の大きさおよび/または方向を計算する。
【0033】
この計算結果は、CPU13からデジタル出力とし、またD/A変換器15を用いてアナログ出力として出力される。このアーム105の変位および/または変形からテーブル103に加わった荷重を計算するには、例えば計算あるいは実測で求めた定数が必要である。この定数を基と、6つのアーム105のそれぞれに設けられた静電容量素子108(検出素子SD)からの検出値によって、CPU13を介してテーブル103に加わる6軸の力成分F、F、F、M、M、Mを同時に検出することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、テーブル103が荷重を受ける場合を示すが、ベース102が力(荷重)を受ける場合であっても良い。この場合、回路基板110が備えるCPU13は、静電容量素子108の検出値から、ベース102に作用する力の大きさおよび/または方向を計算する。
【0035】
このような力覚センサ101のテーブル103に対して、垂直方向の力成分Fが加わった場合について順を追って説明する。まず、力(F)によりテーブル103は−Z方向に移動しようとする。テーブル103に3自由度の軸受け106が接続され、その軸受け106に2自由度の軸受け107が接続されているため、軸受け106の軸方向に力(F/6)が加わる。すなわち、力(F/6)がテーブル103と軸受け106の取り付け角度で合成されて、力(F)となっている。
【0036】
次いで、軸受け106とアーム105の先端部は2自由度の軸受け107により接続され、アーム105の他端とベース102は固定されているため、アーム105に力(Fz/6)が加わり、アーム105が一方向に変形(平面変形)する。このように、弾性体であるアーム105に正確に力を発生させるためには、軸受け106および軸受け107に摺動抵抗が無く、ベース102、テーブル103が剛体でなければならない。
【0037】
このように、テーブル103に加わる力の大きさおよび/または方向を、アーム105において最も単純な平面変形に置き換えることができるので、高精度の力を検出することができる。
【0038】
ここで、本実施の形態における力覚センサ101において、軸受け106と軸受け107とを直接接続した場合であっても、テーブル103に作用する力の大きさ/または方向を検出することができることについて、図11に示す部材の節点をピン接続したトラス構造を参照して説明する。なお、軸受け106が軸受けB1に置き換えられ、軸受け107が軸受けB2、B3に置き換えられている。
【0039】
図11では、三角形の各頂点に軸受けB1、B2、B3が配置されている。また、軸受けB1と軸受けB2とはロッドR1で接続されており、軸受けB1と軸受けB3とはロッドR2で接続されている。例えば、軸受けB1へ力Fが加わり釣り合っている時、各ロッドR1、R2には軸方向の力T1、T2のみが働き、軸受けB2には力T1の反力、軸受けB3には力T2の反力が働く。これら力T1、T2の大きさは、次式で決定される。
【0040】
T1=Fz/sinθ
T2=Fz/sinθ
【0041】
このことから、力T1、T2は、各θ、θのみに左右され、ロッド長には影響を受けないことが分かる。よって、本実施の形態における力覚センサ101では、ロッドを設け無くとも、軸受け106と軸受け107同士を直接接続し、角度を持たせて配置したとしても、テーブル103に作用する力を検出することができる。このように、ロッドを設けず、軸受け106と軸受け107同士を直接接続した力覚センサ101では、薄型化や小型化することができる。
【0042】
力覚センサ101のパラレルリンク構造では、テーブル103を動かそうとした時、テーブル103に複数本の軸(ロッド)が接続され、アーム105の長さを可変することによって駆動するものである。軸の両端にはテーブル103の回転を逃がす軸受け106、107が必要であるが、本実施の形態では、軸受け106、107が軸(ロッド)として兼用していることとなる。
【0043】
力覚センサ101の剛性は、テーブル103の移動量となり、テーブル103に力が加わった時、力覚センサ101が変形してしまう量である。本実施の形態では、ベース102、テーブル103、軸受け106、107を剛体としており、アーム105を所定のばね係数をもった弾性体としている。このため、アーム105の変形する量でテーブル102の移動量が決定される。なお、アーム105の変形量よりは力覚センサ101の剛性への影響は小さいが、軸受け106、107同士の取り付け角度や軸(ロッド)の長さも影響する。
【0044】
構造体が変形して、その変形を検出素子(例えば歪ゲージ)で検出を行う力センサ(構造変形モード)では、定格荷重250Nを加えたとき、25μmの変形とした場合、被接触物が剛体として、10Nの制御をするためには、1μmの位置制御をしなければならない。これでは、精度の高い力制御は困難である。
【0045】
また、例えば特許文献5に記載のようなフォースフィードバックを有する力覚インタフェース装置のような力の出力構造で力を検出しようとした場合を考える。この構造では、テーブルに加わった力によりアクチュエータの移動量を駆動手段にフィードバックし、テーブルを所定の位置に戻すことで加わった力と均衡させるので、テーブルを動かせなくなってしまう。
【0046】
そこで、本実施の形態では、アーム105を弾性体とし、その変位を変えることで、力覚センサ101の剛性を容易に変化させることができる。すなわち、精度(分解能)が高い優しい力(細かい力)の検出をすることができる。
【0047】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、3自由度を有する軸受けと、2自由度を有する軸受けとを直接接続して薄型化、小型化できるセンサについて説明した。このように、軸受けを直接接続した構造では、力を受けるテーブルの可動範囲が小さい。そこで、本実施の形態では、3自由度を有する軸受けと2自由度を有する軸受けとの間にロッドを設けてテーブルの可動範囲を広くすることによって、より精度が高い優しい力の検出を行うことができるセンサについて説明する。なお、複数のベクトル量を検出するセンサとして、ロッドを設けたことによる構造の違いの他は前記実施の形態1と同様である。
【0048】
本実施の形態では、ベクトル量を検出できる新規な構造を有するセンサとして力覚センサに適用した場合について説明する。図1および図2に示すように、本実施の形態におけるセンサ1(力覚センサ1)は、ベース2と、ベース2に対して6自由度を有し、ベース2と対向して配置されたトラベリングテーブル(以下、単にテーブルという)3と、テーブル3とベース2とを連結する並列配置された6つの連結部とを備えている。
【0049】
この連結部は、テーブル3の可動を受ける3自由度を有する軸受け6と、軸受け6の可動を受ける2自由度を有する軸受け7と、ベース2に固定され、軸受け7の可動を受けるアーム5と、一端が軸受け6と接続され、他端が軸受け7と接続されたロッド4と、を含んでテーブル3とベース2とを連結している。
【0050】
前記実施の形態1で説明したように、本実施の形態における力覚センサ1は、テーブル3に加わる力を検出するにあたり、ロッド4の長さは影響しない。すなわち、本実施の形態ではロッド4を設けた力覚センサ1について示すが、理論的には、前記実施の形態1で示した力覚センサ101と同様である。
【0051】
このように本実施の形態の力覚センサ1は、連結部にベース2とテーブル3とを連結する棒状のロッド4およびアーム5を備えている。テーブル3を複数の連結部によって支持する構造は、パラレルリンク構造である。なお、ベース2とテーブル3は、例えば図に示すように平板体で形成されており、互いに平行して配置されている。
【0052】
力覚センサ1は、テーブル3に作用する力(荷重)の大きさおよび/または方向を、三次元空間の直交座標系(x軸、y軸、z軸)の3軸方向の力成分F、F、Fと、その3軸回りのモーメント成分M、M、Mの計6成分として、検出することができるものである。なお、本実施の形態では、テーブル3が荷重を受ける場合を示すが、ベース2が荷重を受ける場合であっても良い。
【0053】
力覚センサ1では、1つのロッド4と、1つのアーム5とを含んで、1つの連結部材を形成して、ベース2とテーブル3とを連結している。テーブル3の周方向に沿って連結部材が6本設けられ、2本ずつで並設されている。すなわち、ロッド4がテーブル3の周囲に沿って6本設けられ、2本ずつで並設されている。これにより、テーブル3に作用する力(荷重)の大きさおよび/または方向を、三次元空間の直交座標系の3軸方向の力成分と、その3軸回りのモーメント成分の計6成分として同時に検出することができる。
【0054】
これらベース2、テーブル3、ロッド4、軸受け6、軸受け7のそれぞれの材質は、テーブル3へ加わる定格荷重に耐えられる剛体であり、アーム5は弾性体である。例えば、ベース2、テーブル3、ロッド4は、例えば、腐食性、加工性に優れたステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属からなる剛体である。また、アーム5は、例えば、一般にばね材として用いられるリン青銅などの金属からなる弾性体である。なお、テーブル3への荷重が10N以下の低荷重であれば、金属ではなく、樹脂(ポリアセタールなど)で構成することもできる。
【0055】
このように、ベース2、テーブル3、ロッド4は、剛体という前提であるが、測定荷重精度に対して影響を与えない剛性をもっていれば良く、すなわちアーム5の変形量に対して変形量が十分に小されば良い。アーム5は、変形する部分を細く、薄くしてばね係数を決定し、塑性変形が起こらない荷重範囲とすれば良い。なお、後述の実施の形態4では、塑性変形が起こらない荷重範囲内において、アーム5を磁性体で形成した場合について説明する。
【0056】
テーブル3とロッド4の一端は、3自由度の軸受け6により接続されており、ロッド4の他端とアーム5の一端は、2自由度の軸受け7により接続されており、さらに、アーム5の他端とベース2は、固定されている。
【0057】
本実施の形態では、アーム5の他端とベース2とは、アーム取付台9を介して固定されている場合を示すが、アーム5の他端とベース2とを直接固定しても良く、例えば、溶接、ボルト止め、ベース2とアーム5とを一体成型することができる。なお、剛体のベース2と弾性体のアーム5との一体成型は、ベース2の厚さに対してアーム5となる部分を薄くすれば、その部分が特定荷重内で弾性を持つことができるので、生産時の一体化によって成形される。
【0058】
このような力覚センサ1のテーブル3に対して、垂直方向の力成分Fが加わった場合について順を追って説明する。まず、力(F)によりテーブル3は−Z方向に移動しようとする。テーブル3とロッド4の一端は3自由度の軸受け6により接続され、ロッド4の他端とアーム5の一端は2自由度の軸受け7により接続されているため、6本の各ロッド4の軸方向に力(F/6)が加わる。すなわち、力(F/6)がテーブル3とロッド4の取り付け角度で合成されて、力(F)となっている。
【0059】
次いで、ロッド4の他端とアーム5の一端は2自由度の軸受け7により接続され、アーム5の他端とベース2は固定されているため、ロッド4からそれと接続されているアーム5に力(F/6)が加わり、アーム5が一方向に変形(平面変形)する。
【0060】
ここで、アーム5に正確に力を発生させるためには、テーブル3とロッド4とを接続する軸受け6、ロッド4とアーム5とを接続する軸受け7に、摺動抵抗が無く、テーブル3、ロッド4が剛体でなければならない。このため、ロッド4の一端側とテーブル3とは3自由度の軸受け6により接続し、ロッド4の他端側とベース2とは2自由度の軸受け7により接続している。
【0061】
このようにロッド4を剛体として、変位および/または変形を検出する対象としてアーム5を備えることで、テーブル3に加わる力の大きさおよび/または方向を、アーム5において最も単純な平面変形に置き換えることができる。これにより、特許文献1の技術のように、例えばロッドに歪ゲージを設けるような力覚センサよりも、更なる高性能化ができる。
【0062】
力覚センサ1は、回路基板10を有しており、図2に示すように、ベース2においてテーブル3と対向する面とは反対面(裏面)に回路基板10が設けられている。この回路基板10には、図3に示すような回路構成によって、アーム5の変位および/または変形を検出した歪ゲージ8(検出素子SD)からの信号(アナログ信号)をアンプ11によって増幅した後、そのアナログ信号をA/D変換器12でデジタル信号に変換し、CPU13によってテーブル3に加わった荷重を、メモリ14からの定数を用いて計算する。すなわち、演算部であるCPU13は、歪ゲージ8が検出した検出値から、テーブル3に作用する力の大きさおよび/または方向を計算する。
【0063】
この計算結果は、CPU13からデジタル出力とし、またD/A変換器15を用いてアナログ出力として出力される。なお、このアーム5の変位および/または変形からテーブル3に加わった荷重を計算するには、例えば計算あるいは実測で求めた定数が必要である。
【0064】
6つのアーム5のそれぞれに設けられた歪ゲージ8の検出によって、CPU13を介してテーブル3に加わる6軸の力成分F、F、F、M、M、Mを同時に検出することができる。歪ゲージ8は、アーム5において歪が最も大きく発生する箇所に設けることで、精度良く6軸の力を検出することができる。図1、図2では、アーム5に設ける歪ゲージ8を、テーブル3と対向する面側に設けた場合について示しているが、ベース2と対向する面側に設けても良いこととなる。
【0065】
ここで、特許文献1の技術(従来技術)を用いた力覚センサを、本実施の形態の用語に対応させて説明する。従来技術を用いた力覚センサは、テーブルとロッドの一端が2自由度の軸受けにより接続され、ロッドの他端とベースが3自由度の軸受けにより接続された力覚センサであって、歪ゲージをロッドに設ける構造である。すなわち、ロッドの軸線方向の圧縮・引張力を検出するものとしている。このため、従来技術の力覚センサでは、アームの変位および/または変形を検出するものでない。
【0066】
理論的には、従来技術の力覚センサのロッドには軸方向の圧縮・引張力のみが加わる。しかしながら、実際にはロッドが剛体ではないと、軸方向以外の変形(座屈)等を考慮した設計、つまり軸方向には弾性を持たせ、軸直径方向には剛性を持たせるという相反する条件を満たすことが必要となり、力覚センサを小型化した場合は、より設計が困難なものとなる。すなわち、ロッドに検出素子を設けている従来技術の力覚センサでは、精度良く、テーブルに加わった荷重を検出することができない。
【0067】
これに対して、本実施の形態では、ロッド4を剛体とし、変位および/または変形を検出するアーム5を備えることで、ロッド4のベース2側端の位置検出として、ロッド4の圧縮・引張力を最も単純な平面変形に置き換えることができ、例えば力覚センサ1が小型化された場合であっても、そのテーブル3に加わった荷重を高精度で検出することができる。すなわち、テーブル3に全6方向から加えられた力成分F、F、F、M、M、Mを平面上で検出することができる。言い換えると、テーブル3に加えられた6方向の力成分であっても、単一方向の力が加えられた場合の検出と全く変わりなく行うことができる。
【0068】
このように、本実施の形態における力覚センサ1は、複数の力(ベクトル量)を検出できる新規な構造を有するデバイスである。この新規な構造について以下に説明する。
【0069】
本実施の形態の力覚センサ1とは異なり、構造体が変形して検出を行う力センサ(構造変形モード)では、ある大きさを持った構造体である限り、例えば、力センサの力を加える箇所(以下、テーブルという)にz軸方向の力成分Fを加えた時に、x軸、y軸方向にも力成分F、Fが出てしまう(他軸感度)。また、z軸のモーメントを加えた上での出力特性などの非常に対処し難い、避けられない問題が生じ、さらに、特定な一カ所に6方向からの力を加えることも困難となる。
【0070】
また、小型化を考慮した場合、力センサなどの構造体では、テーブルの大きさも縮小させることが考えられるが、テーブルの大きさが変形すると、テーブルから力が加わる箇所の構造自体の設計を見直さなければならない。また、力センサなどの構造体では、例えば、テーブルに力成分Mを加えた上で力成分Fを加えた時などの合成力が加わった場合、力成分F特性を検出することは困難となり、検出することができるとしても力センサの製造が困難であり、高額となってしまう。
【0071】
しかしながら、本実施の形態では、アーム5に加わる一方向の力のみを検出すれば良いので、力覚センサ1のテーブル3を小さくしても、受感部であるアーム5も小さくすることができる。すなわち、小型化の力覚センサ1とした場合であっても、高精度に検出することができる。
【0072】
また、力センサのような構造体と比較して本実施の形態における力覚センサ1は、歪ゲージ8からの配線などを任意の位置から取り出すことができる。これにより、例えば、力覚センサ1をロボットの腕などに設置できる大きさとした場合であっても、ベース2、テーブル3の軸の中央に配線を通すことができる。
【0073】
また、力センサのような構造体においても高精度化、低コスト化、小型化の追求は、軸受けの構造の検討によるところが大きい。本実施の形態における力覚センサ1では、ロッド4を剛体とするため、構造変形モードの設計、解析に比べ容易となっている。
【0074】
また、本実施の形態における力覚センサ1は、1つのロッド4と1つのアーム5とを含んで1つの連結部材(リンク)を形成し、6つ(複数)の連結部材(リンク)によってベース2とテーブル3とを連結している。このため、力覚センサ1は、6つのリンクを閉リンク構造にすることで、高剛性、高速駆動を実現することができる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態では、前記実施の形態2におけるロッドに、リニアアクチュエータを設けた場合について説明する。なお、前記実施の形態2と重複する説明は省略する場合がある。
【0076】
図12に示すように、本実施の形態におけるセンサ1a(力覚センサ1a)では、ロッド4が軸方向に伸縮可能なリニアアクチュエータ4aを有している。リニアアクチュエータ4aは、例えば、サーボモータ、シリンダ、形状記憶合金、人工筋肉などからなり、ロッド4全体の長さを軸方向に伸縮することができる。よって、ロッド4内にリニアアクチュエータ4aを設けることで、テーブル3面を自在に動かすことができる。
【0077】
前記実施の形態1で説明したように、力覚センサ1aでは、テーブル3に加わる力を検出するにあたり、ロッド4の長さは影響しない。すなわち、本実施の形態では全体の長さを軸方向に伸縮できるロッド4を設けた力覚センサ1aについて示すが、理論的には、前記実施の形態1で示した力覚センサ101と同様である。ただし、テーブル3の力を検出する時、ロッド4は剛体でなければならない。すなわち、ロッド4自身の長さが変化しても、テーブル3の向きが変わるだけで、テーブル3に加わった力でロッド4は軸方向に伸縮するものではない。
【0078】
力覚センサ1aでは、ロッド4内にリニアアクチュエータ4aを設けることで、そのリニアアクチュエータ4aの伸縮によって移動されたテーブル3に加わる力の検出を行うことができる。前記実施の形態1で説明したように、ロッド4の長さはテーブル3に作用する力の検出に影響を与えないので、テーブル3の移動をロッド4の伸縮で行い、力検出をアーム5で行うことができるからである。
【0079】
例えば、肘から手首までを有するロボットアームの場合、肘側にベース2、手首側にテーブル3、肘から手首までをリニアアクチュエータ4aを備えたロッド4で構成することができる。これにより、手首に加わる力を可動させながら検出することができる。
【0080】
(実施の形態4)
前記実施の形態2では、アームの変位および/または変形を歪ゲージ(検出素子)で検出する場合について説明したが、本実施の形態では、アームの変位および/または変形を磁気識別素子(検出素子)で検出する場合について説明する。なお、前記実施の形態2と重複する説明は省略する場合がある。
【0081】
図4に示すように、磁気識別素子20がアーム5の一端側であって、その下のベース2に埋め込まれている(設けられている)。なお、図4は本実施の形態における力覚センサを模式的に示す要部断面図であり、説明を容易にするため、一部のみにハッチングを付している。
【0082】
この磁気識別素子20は、2個1組の磁気抵抗素子20aと磁石20bで構成されており、図5に示すように、基準電位(GND)に対して電源電圧(Vcc)を印加しておき、磁気抵抗素子20aに加わる磁束の変化を出力電圧(Vout)として検出するものである。ここで、磁気抵抗素子20aは磁界の強さに比例して抵抗値が変化するものである。
【0083】
アーム5は、テーブル3に加えられる定格荷重に耐えられる材質であれば良いが、本実施の形態では、アーム5は磁性体で形成されたものとしている。静的な磁界中に素子を2個おいて、その中で磁性体が動けば磁界が変化し、抵抗バランスが崩れる。このため、磁性体であるアーム5が変位(符号Aで示している)すると、磁気抵抗素子20aに加わる磁束が変化するため、出力電圧(Vout)はアーム5の変位および/または変形として検出することができる。
【0084】
本実施の形態では、磁気識別素子20は、ロッド4の他端と接続されるアーム5の一端側であって、その下のベース2に設けられている。アーム5の他端側がベース2と固定されているので、アーム5に加わる力によって、アーム5の一端(先端)が最も変位するため、磁気識別素子20をアーム5の一端側であって、その下のベース2に設けているのである。
【0085】
また、図4に示すように、アーム5の一端が上下に移動するため、テーブル3に過負荷が加わった場合、アーム5がベース2(磁気識別素子20)と接触することも考えられる。これを防止するために本実施の形態では、アーム5の一端側であって、ベース2と対向する面にストッパ21を設けている。前述した力センサなどの構造体では、設計変更の自由度がないため困難であるが、本実施の形態における力覚センサでは、アーム5の一方向のみの変形を捉えれば良いので、そのアーム5に対して過負荷に対するストッパ構造を設ければ良い。
【0086】
このようにロッド4を剛体として、変位および/または変形を検出する対象としてアーム5を備えることで、ロッド4の圧縮・引張力を最も単純な平面変形に置き換えることができるので、磁気識別素子20を、アーム5の一端側であって、その下のベース2に設けても高性能にテーブル3に加わる荷重を検出することができる。
【0087】
(実施の形態5)
前記実施の形態2では、アームの変位および/または変形を歪ゲージ(検出素子)で検出する場合について説明したが、本実施の形態では、ジンバル構造を用いてアームとベースとを一体成型し、そのアーム(ジンバル)の変位および/または変形を静電容量素子(検出素子)で検出する場合について説明する。なお、前記実施の形態2と重複する説明は省略する場合がある。
【0088】
図6および図7に示すように、本実施の形態では、ジンバル構造として、アームであるジンバル5aがベース2aと一体成型されている。一体成型を説明するために、図6の平面図および図7の断面図では、ジンバル5aとベース2aとは同じハッチングを付している。
【0089】
本実施の形態では、テーブル3の周方向に沿って設けられた6本のロッド4(図1および図2参照)のそれぞれにジンバル構造が採用されている。図6および図7では、1本のロッド4に対応させて示している。このロッド4の一端はテーブル3と接続され(図2参照)、ロッド4の他端は2自由度の軸受け7aによりジンバル5aと接続される(図7参照)こととなる。
【0090】
このジンバル5aには、対向する2つの板状の電極30a、30bからなる静電容量素子30が設けられている。この静電容量素子30は、ジンバル5aの変位および/または変形を、静電容量の変化で検出する検出素子である。本実施の形態では、接続部31を介してジンバル5aに静電容量素子30の一方の電極30aが設けられている。また、静電容量素子30の他方の電極30bは、ベース2aにおいてテーブル3と対向する面とは反対面に固定して設けられた回路基板10に設けられている。すなわち、ベース2aに、静電容量素子30の他方の電極30bが設けられている。この静電容量素子30の静電容量の変化を、ジンバル5aの上下変位(例えば図7中の符号Aで示す)に換算することができる。
【0091】
本実施の形態における力覚センサにおいても、前記実施の形態2と同様にテーブル3に作用する力の大きさおよび/または方向をアームであるジンバル5aの変位および/または変形によって検出するものである。ここで、本実施の形態では、静電容量素子30を構成する電極30aは、剛体であるロッド4の他端に設けているが、弾性体であるジンバル5a(アーム)が変位することによって、ロッド4の他端と共に電極30aの位置が変位して静電容量素子30の静電容量が変化する。すなわち、静電容量素子30の静電容量の変化を、ジンバル5aの変位として捉え、テーブル3に作用する力の大きさおよび/または方向として換算することができるのである。なお、ジンバル5aの変位および/または変形を検出した静電容量素子30(検出素子SD)の信号(検出値)は、回路基板10に送られ、図3に示すような回路構成によって、処理される。
【0092】
本実施の形態では、接続部31を介して電極30aをジンバル5aに設け、また、電極30aに対向する位置に電極30bを設けて静電容量素子30を構成している。これに限らず、接続部31を介してではなく、電極30bと対向する面側のジンバル5aに電極30aを設けても良い。前述したように、静電容量素子30の静電容量の変化を、ジンバル5aの変位および/または変形として捉え、テーブル3に作用する力の大きさおよび/または方向として換算することができれば良いからである。
【0093】
このようにロッド4を剛体として、変位および/または変形を検出する対象として弾性体のジンバル5a(アーム)を備えることで、ロッド4の圧縮・引張力を最も単純な平面変形に置き換えることができるので、本実施の形態における力覚センサは、高性能にテーブル3に加わる荷重を検出することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、アームをジンバル5aとしてベース2aと一体成型することによって、前記実施の形態2で示したような棒状のアーム5がベース2からテーブル3への高さ方向に延在していない。言い換えると、アームとなるジンバル5aが、ベース2aの平面方向に延在している。このため、前記実施の形態2で示したようなアーム5の高さ分を削ることができ、力覚センサをより小型化することができる。
【0095】
(実施の形態6)
前記実施の形態1〜5では、ベクトル量を検出できる新規な構造を有するセンサとして、力覚センサに適用した場合について説明したが、本実施の形態では、運動センサに適用した場合について説明する。なお、前記実施の形態1〜5と重複する説明は省略する場合がある。
【0096】
力覚センサは物体が受ける外力を検出する装置であり、運動センサは物体が受ける慣性力から加速度、角速度として検出する装置であり、共に力(外力、慣性力)を検出するものである。このため、本実施の形態における運動センサにおいても、前記実施の形態1〜5で説明した力を検出する新規な構造を、共通に用いることができる。
【0097】
例えば、図1および図2を参照して説明すると、本実施の形態におけるセンサ1(運動センサ1)は、次の構造を備えている。まず、ベース2と、ベース2と対向して配置されたテーブル3と、ベース2とテーブル3とを連結するロッド4およびアーム5とを備えている。このテーブル3とロッド4の一端は、3自由度の軸受け6により接続されており、ロッド4の他端とアーム5の一端は、2自由度の軸受け7により接続されており、アーム5の他端とベース2は固定されている。さらに、運動センサ1は、可動部(テーブル3、ロッド4、および軸受け6、7)が受ける慣性力の大きさおよび/または方向をアーム5の変位および/または変形によって検出する歪ゲージ8(検出素子)と、歪ゲージ8の検出値から、可動部が受ける慣性力の大きさおよび/または方向を計算する演算部であるCPU13(図3参照)を有している。
【0098】
このような運動センサ1によるz軸方向の加速度aを検出(計算)する場合について説明する。例えば、運動センサ1を固定された水平な台にベース2側で置いた時、センサ1は重力加速度を受ける。この時、運動センサ1内部では、各アーム5にテーブル3とロッド4と軸受け6、7の質量が係っており、全てのアーム5は、ベース2に近づく方向で同量に変位および/または変形(平面変形)する。変位量がz軸方向の力Fであるから、運動方程式m・a=Fにより、z軸方向の加速度aを検出(計算)することができる。この加速度aの計算は、例えば図3で示したCPU13によって行うことができる。ここで、運動方程式中のmは可動部(テーブル3、ロッド4、および軸受け6、7)の質量である。
【0099】
また、運動センサ1によるz軸方向の角速度ωを検出(計算)する場合について説明する。水平方向に置かれた回転テーブルの中心にベース2側で運動センサ1を取り付け、その回転テーブルに回転運動を与えると、回転起動時にベース2とテーブル3との間に、ねじれが生じる。この時、隣り合う2つのアーム5において、一方のアーム5にはベース2に近づく方向の変位、もう一方のアーム5にはベース2から離れる方向の変位および/または変形(平面変形)が現れ、z軸回りの力のモーメントMが検出できる。
【0100】
この力のモーメントMと慣性モーメントIとの間には、I・a=Mの関係が成り立つことから角加速度aが計算できる。よって、微小時間ごとに角加速度aを計算し積分することで、角速度ωを得ることができる。この角速度ωの計算は、例えば図3で示したCPU13によって行うことができる。なお、慣性モーメントIは、可動部(テーブル3、ロッド4、および軸受け6、7)を微小部分に分割した時、微小部分を質点とみなすことにより、i番目の質点をm、可動部中心からの距離をrとすると、I=Σ(m・r)である。
【0101】
ここで、特許文献1に記載のような従来技術のセンサを用いて、z軸回りの角速度を検出する場合について説明する。従来技術を用いたセンサは、テーブルとロッドの一端が2自由度の軸受けにより接続され、ロッドの他端とベースが3自由度の軸受けにより接続されたセンサであって、歪ゲージをロッドに設ける構造となる。すなわち、弾性体であるロッドの軸線方向の圧縮・引張力を検出するものとしている。
【0102】
回転テーブルの中心に従来技術のセンサを取り付け、z軸回りの角速度を検出しようとした時、ロッド自身の慣性質量のため弾性体のロッドでは、シナリが生じ、正確な力を検出することができないと考えられる。これに対して、本実施の形態における運動センサ1では、アーム5は、z軸方向のみ変位および/または変形(平面変形)を生じる機構であり、かつ、慣性質量による歪みの影響が非常に少ないため、高精度に慣性力を検出することができる。
【0103】
本実施の形態における運動センサ1では、ベース2、テーブル3、ロッド4、軸受け6、7を剛体とし、変位および/または変形を検出する対象としての弾性体をアーム5とすることによって、テーブル3、さらにはロッド4に加わる力の大きさおよび/または方向をアーム5で最も単純な平面変形として置き換えることができる。言い換えると、アーム5の変位および/または変形によって運動センサ1が受ける慣性力を検出し、加速度、角速度を検出することができる。
【0104】
運動センサ1では、1つのロッド4と、1つのアーム5とを含んで1つの連結部材を形成して、ベース2とテーブル3とを連結している。テーブル3の周方向に沿って連結部材が6本設けられ、連結部材が構成する仮想円錐面において全ての連結部材は、頂点を向かないよう配置されている。これにより、可動部(テーブル3、ロッド4、および軸受け6、7)が受ける慣性力の大きさおよび/または方向を、三次元空間の直交座標系の3軸方向の力成分と、その3軸回りのモーメント成分の計6成分として同時に検出することができる。
【0105】
したがって、本実施の形態の運動センサ1は、3軸方向の成分から3軸加速度を検出(計算)することができ、また、3軸回りのモーメント成分から3軸角速度を検出することができる6軸運動センサであるといえる。
【0106】
本実施の形態における運動センサ1では、演算部であるCPU13が加速度を計算する処理、および角速度を計算する処理を含むものである。よって、運動センサ1は、例えばCPU13によって加速度のみを検出すれば加速度センサとして、また、角速度のみを検出すれば角速度センサとして構成することもできる。
【0107】
なお、本実施の形態では、運動センサ1のベース2側で水平な台、あるいは回転テーブルの中心に運動センサ1を設けた場合について説明したが、運動センサ1のテーブル3側で設けても同様に加速度および角速度を検出することができる。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0109】
例えば、アームの変位および/または変形を検出する検出素子として、アームに圧電素子や、ベースに静電容量素子、光素子(例えばレーザ)などを設けても良い。また、アームを水晶で作製し、固有振動の変化を捉えることもできる。このように、アームの変位および/または変形の検出は、アームの歪、変化量などを例えば変換した電気信号から行うことができる。
【0110】
また、例えば、力覚センサや運動センサを設置部に設置する場合、その設置部をベースとみなして、その設置部上にアーム、軸受け、ロッド、テーブルなどを組み上げれば、ベース無しの構造の力覚センサや運動センサとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、力覚センサ、運動センサおよびそれを用いたロボット分野に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0112】
1、1a センサ(力覚センサ、運動センサ)
2、2a ベース
3 テーブル
4 ロッド
4a リニアアクチュエータ
5 アーム
5a ジンバル(アーム)
6 軸受け(第1軸受け)
7、7a 軸受け(第2軸受け)
8 歪ゲージ(検出素子)
9 アーム取付台
10 回路基板
11 アンプ
12 A/D変換器
13 CPU(演算部)
14 メモリ
15 D/A変換器
20 磁気識別素子(検出素子)
20a 磁気抵抗素子
20b 磁石
21 ストッパ
22 磁気抵抗素子
23 磁石
30 静電容量素子(検出素子)
30a、30b 電極
31 接続部
101 センサ(力覚センサ、運動センサ)
102 ベース
103 テーブル
103a 孔
104 連結部
105 ベース
105a 孔
106 軸受け(第1軸受け)
107 軸受け(第2軸受け)
108 静電容量素子(検出素子)
110 回路基板
SD 検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して6自由度を有し、前記ベースと対向して配置されたテーブルと、
前記テーブルと前記ベースとを連結する並列配置された6つの連結部と、
を備えたセンサであって、
前記連結部が、前記テーブルの可動を受ける3自由度を有する第1軸受けと、前記第1軸受けの可動を受ける2自由度を有する第2軸受けと、一端が前記第1軸受けと接続され、他端が前記第2軸受けと接続されたロッドと、一端が前記第2軸受けと接続され、他端が前記ベースと固定されたアームと、を含んで前記テーブルと前記ベースとを連結しており、
前記アームの変位および/または変形を一方向で検出する検出素子を備えていることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記検出素子の検出値から、前記テーブルもしくは前記ベースに作用する力の大きさおよび/または方向を計算する演算部を備えていることを特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記検出素子の検出値から、前記テーブルもしくは前記ベースが受ける慣性力の大きさおよび/または方向を計算する演算部を備えていることを特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項4】
前記検出素子は、前記ベースに設けられており、前記アームの変位および/または変形を一方向で検出することを特徴とする請求項1、2または3記載のセンサ。
【請求項5】
前記アームは、塑性変形が起こらないものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ベース、前記テーブルおよび前記ロッドの変形量は、前記アームの変形量に対して小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記ベース、前記テーブルおよび前記ロッドは、剛体であり、
前記アームは、弾性体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−190883(P2010−190883A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186417(P2009−186417)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【分割の表示】特願2009−59679(P2009−59679)の分割
【原出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【特許番号】特許第4519941号(P4519941)
【特許公報発行日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(509006820)有限会社レプトリノ (10)
【Fターム(参考)】