説明

タイヤ、及びタイヤの製造方法。

【課題】走行性能を低下させることなく空気入りを抑制して耐久性を向上させたタイヤを提供することが目的である。
【解決手段】熱可塑性材料で形成された環状のタイヤケース17と、補強コード26Aに第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆して形成された被覆コード部材26を、タイヤケース17のクラウン部16部に巻回し且つ接合して形成された補強層28と、をタイヤ10が有することで、走行性能を低下させることなく空気入りを抑制して耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムに装着するタイヤ、及びタイヤの製造方法にかかり、特には、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ、及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
【0003】
近年では、軽量化やリサイクルのしやすさから、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性材料をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の空気入りタイヤでは、耐久性、乗り心地、走行性能等の観点から、タイヤ骨格部材の外周部に補強コードを連続螺旋状に巻回して補強層を形成している。しかしながら、熱可塑性の高分子材料を用いて成形されたタイヤ骨格部材のクラウン部表面に補強コードを直接螺旋巻きし、その上に他のタイヤ構成部材(例えばトレッドなど)を配設した場合、補強コード周囲(補強コードとクラウン部との間)に隙間が生じて空気が残る(空気が入る)ことがある。空気入りが生じた場合には、補強コードがクラウン部表面に接着剤で接着されていても、走行時の入力で補強コードが動いてタイヤの耐久性を低下させる虞がある。このため、特許文献1では、クラウン部に設けたクッションゴムに補強コードを被覆埋設して補強層を形成することで補強コード周囲に空気入りが生じるのを抑制して補強コードの動きを抑制している。
【0006】
しかしながら、補強コードを被覆埋設するには、クッションゴムの厚みを不必要に厚くする必要がある。クッションゴムの厚みが厚くなった場合には、重量増加、厚み方向における部材の物性変化幅の増大、及び熱可塑性の高分子材料と比べてクッションゴムの弾性率が低いことに起因する走行時に横力を十分に発揮できない、などの点で走行性能が低下することが考えられ、更なる改良が求められている。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、走行性能を低下させることなく空気入りを抑制して耐久性を向上させたタイヤ、及びこのタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のタイヤは、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材と、補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆して形成された被覆コード部材を、前記タイヤ骨格部材の外周部に巻回し且つ接合して形成された補強層と、を有する。
【0009】
請求項1のタイヤによれば、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材の外周部に被覆コード部材が巻回され且つ接合されて補強層が形成されていることから、耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ(タイヤ骨格部材)の周方向剛性が向上する。なお、周方向剛性が向上することで、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材のクリープ(一定の応力下でタイヤ骨格部材の塑性変形が時間とともに増加する現象)が抑制される。
【0010】
また、被覆コード部材の補強コードは、第1の被覆用熱可塑性材料に被覆されることから、補強コード周囲への空気入りが抑制されて補強コードの動きが抑制される。ここで、補強層の外周側にトレッドなどのタイヤ構成部材を配設した場合、被覆コード部材が外周部に接合されることから、走行時の入力などにより被覆コード部材(補強コード含む)が動くのが抑制されて耐久性が向上する。
【0011】
一方、補強コードは第1の被覆用熱可塑性材料に被覆されて周囲の空気入りが抑制されていることから、補強コードをクッションゴム等に埋設するものと比べた場合、重量増加、厚み方向における部材の物性変化幅の増大、及び走行時の横力不足などの走行性能の低下が抑制される。
【0012】
請求項2のタイヤは、請求項1のタイヤにおいて、前記補強コードと前記第1の被覆用熱可塑性材料とが接着剤により接合されている。
【0013】
請求項2のタイヤによれば、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料とが接着剤により接合されていることから、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料との密着性が向上し、補強コード周囲への空気入りがさらに抑制される。また、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料との接合により、補強コードの動きがさらに抑制されて、第1の被覆用熱可塑性材料の劣化(亀裂の発生など)が抑制される。
【0014】
請求項3のタイヤは、請求項1又は請求項2のタイヤにおいて、前記外周部と前記被覆コード部材とが溶着により接合されている。
【0015】
請求項3のタイヤによれば、外周部と被覆コード部材とが溶着により接合されていることから、外周部と被覆コード部材との接合強度が向上する。
【0016】
請求項4のタイヤは、請求項3のタイヤにおいて、前記熱可塑性材料と前記第1の被覆用熱可塑性材料が同種である。
【0017】
請求項4のタイヤによれば、熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料が同種であることから、外周部と被覆コード部材との溶着時に熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料とが良く混ざり合い、外周部と被覆コード部材との接合強度が向上する。
【0018】
請求項5のタイヤは、請求項1又は請求項2のタイヤにおいて、前記外周部と前記被覆コード部材とが接着剤により接合されている。
【0019】
請求項5のタイヤによれば、外周部の熱可塑性材料と補強コード部材の第1の被覆用熱可塑性材料とが溶着し難い材料であっても、接着剤を用いることで外周部と被覆コード部材とを接合することができる。
【0020】
請求項6のタイヤは、請求項1〜請求項5の何れか1項のタイヤにおいて、前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側が逆側よりも幅広とされている。
【0021】
請求項6のタイヤによれば、被覆コード部材は、外周部への接合側が逆側よりも幅広とされていることから、外周部と補強コード部材との接合面積(接合力)が確保される。
【0022】
請求項7のタイヤは、請求項1〜請求項6の何れか1項のタイヤにおいて、前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側が平坦面とされている。
【0023】
請求項7のタイヤによれば、被覆コード部材は、外周部への接合側が平坦面とされていることから、被覆コード部材が断面円形状のものと比べて、外周部と被覆コード部材との間に隙間が生じ難く、接合面積が効果的に確保される。
【0024】
請求項8のタイヤは、請求項1〜請求項7の何れか1項のタイヤにおいて、前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側と逆側が平坦面とされている。
【0025】
請求項8のタイヤによれば、被覆コード部材は、外周部への接合側と逆側が平坦面とされていることから、補強層の外周側にトレッドなどのタイヤ構成部材を配設(接合した)した場合、外周部への接合側と逆側の平坦面と上記タイヤ構成部材の内周面との間に隙間が生じ難く、接合面積が確保されて、補強層と上記タイヤ構成部材との接合力が向上する。
【0026】
請求項9のタイヤは、請求項1〜請求項8の何れか1項のタイヤにおいて、第2の被覆用熱可塑性材料で形成され、前記外周部に接合されて前記補強層を覆い外周面が平坦状とされた被覆層を有する。
【0027】
請求項9のタイヤによれば、隣接する被覆コード部材間に生じる隙間が、外周面が平坦状とされた被覆層により覆われる。ここで、被覆層の外周面にトレッドなどのタイヤ構成部材を配設した(接合した)場合、隣接する被覆コード部材間に隙間が生じた状態の補強層へ上記タイヤ構成部材を接合したものと比べて、両者の間に隙間が生じ難く、空気入りが抑制される。これにより、上記タイヤ構成部材と被覆層との間の接合面積(接合力)が確保され、走行時の入力などによって上記タイヤ構成部材と被覆層との間の剥離が抑制されて耐久性が向上する。
【0028】
請求項10のタイヤは、請求項9のタイヤにおいて、前記第1の被覆用熱可塑性材料と前記第2の被覆用熱可塑性材料が同種である。
【0029】
請求項10のタイヤでは、第1の被覆用熱可塑性材料と第2の被覆用熱可塑性材料が同種であることから、例えば、溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料で補強層を覆って被覆層を形成する場合、覆った部分の第1の被覆用熱可塑性材料と第2の被覆用熱可塑性材料とが良く混ざり合い、被覆コード部材と被覆層との接合強度が向上する。
【0030】
請求項11のタイヤの製造方法は、補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆して被覆コード部材を形成する被覆コード部材形成工程と、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材の外周部に前記被覆コード部材を巻回し且つ接合する被覆コード部材巻回工程と、を有する。
【0031】
請求項11のタイヤの製造方法によれば、補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆して被覆コード部材が形成され、その被覆コード部材がタイヤ骨格部材の外周部に巻回されて接合される。ここで、補強コードが第1の被覆用熱可塑性材料によって被覆されていることから、補強コード周囲への空気入りが抑制され、補強コードの動きが抑制される。
【0032】
請求項12のタイヤの製造方法は、請求項11のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材形成工程では、前記補強コードの外周面に接着層を形成し、該接着層を介して前記補強コードに溶融又は軟化させた前記第1の被覆用熱可塑性材料を被覆接合する。
【0033】
請求項12のタイヤの製造方法によれば、接着層を介して補強コードに溶融又は軟化させた第1の被覆用熱可塑性材料が被覆接合されることから、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料とが密着して補強コード周囲への空気入りが抑制される。また、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料との接合により、補強コードの動きがさらに抑制されて、第1の被覆用熱可塑性材料の劣化(亀裂の発生など)が抑制される。
【0034】
請求項13のタイヤの製造方法は、請求項12のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材形成工程では、前記接着層を形成する前に前記補強コードを洗浄する。
【0035】
請求項13のタイヤの製造方法によれば、接着層を形成する前に補強コードを洗浄することから、補強コードの外周面に接着層がムラなく形成される。これにより、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料との密着性がさらに向上して補強コード周囲への空気入りが抑制される。また、補強コードの外周面に接着層がムラなく形成されることにより、補強コードと第1の被覆用熱可塑性材料との接合面積が増えて補強コードの動きがさらに抑制され、第1の被覆用熱可塑性材料の劣化(亀裂の発生など)が抑制される。
【0036】
請求項14のタイヤの製造方法は、請求項11〜請求項13の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材巻回工程では、前記被覆コード部材の前記第1の被覆用熱可塑性材料、及び、前記被覆コード部材が接合される部分の前記クラウン部の前記熱可塑性材料の少なくとも一方を溶融又は軟化状態にして、前記クラウン部と前記被覆コード部材とを溶着により接合する。
【0037】
請求項14のタイヤの製造方法によれば、被覆コード部材の第1の被覆用熱可塑性材料、及び、被覆コード部材が接合される部分のクラウン部の熱可塑性材料の少なくとも一方を溶融又は軟化状態にして、クラウン部と被覆コード部材とを溶着により接合することから、外周部と被覆コード部材との接合強度が向上する。なお、被覆コード部材の第1の被覆用熱可塑性材料、及び、被覆コード部材が接合される部分のクラウン部の熱可塑性材料の両方を溶融又は軟化状態にする場合、一方のみを溶融又は軟化状態にする場合と比べて、熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料とが良く混ざり合い、外周部と被覆コード部材との接合強度がさらに向上する。
【0038】
請求項15のタイヤの製造方法は、請求項11〜請求項13の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材巻回工程では、前記外周部と前記被覆コード部材とを接着剤により接合する。
【0039】
請求項15のタイヤの製造方法によれば、外周部と被覆コード部材とを接着剤で接合することから、外周部の熱可塑性材料と被覆コード部材の第1の被覆用熱可塑性材料とが溶着し難い材料であっても、外周部と被覆コード部材とを接合することができる。
【0040】
請求項16のタイヤの製造方法は、請求項11〜請求項15の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側が逆側よりも幅広となる前記被覆コード部材を形成する。
【0041】
請求項16のタイヤの製造方法によれば、外周部への接合側が逆側よりも幅広となる被覆コード部材を形成することから、この被覆コード部材を外周部へ巻回し且つ接合した場合、外周部と補強コード部材との接合面積(接合力)を十分に確保することができる。
【0042】
請求項17のタイヤの製造方法は、請求項11〜請求項16の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側が平坦面となる前記被覆コード部材を形成する。
【0043】
請求項17のタイヤの製造方法によれば、外周部への接合側が平坦面となる被覆コード部材を形成することから、この被覆コード部材を外周部へ巻回し且つ接合した場合、外周部と被覆コード部材との間に隙間が生じにくく、接合面積が効果的に確保される。また、蛇行することなく被覆コード部材を外周部に巻回することができる。
【0044】
請求項18のタイヤの製造方法は、請求項11〜請求項17の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側と逆側が平坦面となる前記被覆コード部材を形成する。
【0045】
請求項18のタイヤの製造方法によれば、外周部への接合側と逆側が平坦面となる被覆コード部材を形成することから、この被覆コード部材を外周部へ巻回し且つ接合し、外周側にトレッドなどのタイヤ構成部材を接合した場合、被覆コード部材の外周部への接合側と逆側の平坦面と上記タイヤ構成部材との間に隙間が生じにくく、接合面積が十分に確保される。
【0046】
請求項19のタイヤの製造方法は、請求項11〜18の何れか1項のタイヤの製造方法において、前記外周部に埋設された前記被覆コード部材を溶融又は軟化させた第2の被覆用熱可塑性材料で覆う被覆コード部材被覆工程を有する。
【0047】
請求項19のタイヤの製造方法によれば、外周部に埋設された被覆コード部材を溶融又は軟化させた第2の被覆用熱可塑性材料で覆うことから、隣接する被覆コード部材間に生じる隙間が溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料で埋められる。そして、溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料は左右に広がり、表面が平坦状に近づく。ここで、固化した第2の被覆用熱可塑性材料の表面にトレッドなどのタイヤ構成部材を配設した場合、両者の間に隙間が生じ難く、空気入りが効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明のタイヤは上記構成としたので、走行性能を低下させることなく空気入りが抑制されて耐久性が向上した。また、本発明のタイヤの製造方法は、走行性能を低下させることなく空気入りが抑制されて耐久性が向上したタイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(A)は第1実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図である。(B)は第1実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った拡大断面図である。
【図2】第1実施形態のタイヤのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図3】成形機の斜視図である。
【図4】(A)は成形機のタイヤ支持部のシリンダロッドの突出量が最も小さい状態を示めす斜視図である。(B)は成形機のタイヤ支持部のシリンダロッドの突出量が最も大きい状態を示めす斜視図である。
【図5】押出機を用いてケース分割体の接合部に溶接用熱可塑性材料を付着させる動作を説明するための押出機の斜視図である。
【図6】コード接着層装置を用いて補強コードに接着層を形成する動作を説明するための模式図である。
【図7】コード被覆装置を用いて補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆接合する動作を説明するための模式図である。
【図8】コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に被覆コード部材を巻回し且つ接合する動作を説明するための説明図である。
【図9】タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を第2の被覆用熱可塑性材料で覆う動作を説明するための説明図である。
【図10】タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を第2の被覆用熱可塑性材料で覆う状態を示すタイヤケースの幅方向断面図である。
【図11】タイヤのクラウン部に巻回され且つ埋設された被覆コード部材の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図12】タイヤのクラウン部を溶融又は軟化状態にして、被覆コード部材を埋設する動作を説明するためのクラウン部の要部断面図である。
【図13】その他の実施形態のタイヤのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図14】その他の実施形態のタイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を溶着シートで覆う動作を説明するための説明図である。
【図15】その他の実施形態のチューブ型タイヤのタイヤ回転軸に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[第1実施形態]
以下、図面にしたがって本発明のタイヤの第1実施形態に係るタイヤについて説明する。図1(A)に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
【0051】
図1(A)に示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12(図1(B)参照)、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)からなる環状のタイヤケース17(タイヤ骨格部材の一例)を備えている。
【0052】
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、単一の熱可塑性材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(ビード部12、サイド部14、クラウン部16など)に異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
【0053】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0054】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、熱可塑性材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
【0055】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0056】
これらの熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上のものを用いることができる。
【0057】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビードコア18は、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。また、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略してもよい(図15参照)。
【0058】
また、図1(B)に示すように、本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分にタイヤケース17を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れた材料(高いシール性を有する材料)、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24(シール部の一例)が形成されている。このシール層24はビードシート21と接触する部分にも形成されていてもよい。
【0059】
シール層24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、熱可塑性材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24を省略してもよく、また、タイヤケース17を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性材料を用いてもよい。
【0060】
図1(A)及び図2に示すように、クラウン部16には、被覆コード部材26が巻回されて補強層28(図2では破線で示されている)が形成されている。この被覆コード部材26は、タイヤケース17を形成する熱可塑性材料よりも剛性が高い補強コード26Aに第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆接合して形成されている。なお、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27とは、接着剤(詳細は後述)によって接着されており、補強コード26Aの外周面全体には接着剤による接着層が形成されている。また、被覆コード部材26はクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26とクラウン部16とが溶着して接合されている。
【0061】
また、補強コード26Aは、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態では補強コード26Aとしてスチール繊維を撚ったスチールコードを用いている。なお、補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0062】
また、補強層28は、被覆層29によって覆われている。この被覆層29は、第2の被覆用熱可塑性材料で形成されており、被覆層29の幅方向両端部は、補強層28の幅方向両端部よりも幅方向外側に位置している。なお、幅方向とは、タイヤケース17及びタイヤ10の幅方向を示し、補強層28の幅方向両端部とは、補強層28を形成する被覆コード部材26のうち幅方向最外側の被覆コード部材26の幅方向外側端部を示している。なお、本実施形態では、被覆層29の幅方向両端部が補強層28の幅方向両端部よりも幅方向外側に位置している構成としたが、本発明はこの構成に限らず、被覆層29の幅方向両端部と補強層28の幅方向両端部とが幅方向で同じ位置であってもよい。また、被覆層29と補強層28は、第2の被覆用熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料27との溶着により、接合されている。
【0063】
また、被覆層29の外周面は平坦状とされ、この外周面には、タイヤケース17を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。このトレッド30の内周面は、被覆層29の外周面に沿った形状とされ、両者の間には隙間がない状態(空気入りがない状態)となっている。また、トレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を形成する熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
【0064】
(タイヤの製造装置)
次に、本実施形態のタイヤ10の製造装置について説明する。
図3には、タイヤ10を形成する際に用いる成形機32の要部が斜視図にて示されている。成形機32は、水平に配置された軸36と、この軸36を回転させるギヤ付きモータ37と、床面に接地されてギヤ付きモータ37を支持する台座34と、を有している。
【0065】
軸36の端部側には、タイヤケース17を支持するためのタイヤ支持部40が設けられている。タイヤ支持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を有し、シリンダブロック38には、径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0066】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤケース内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ支持片42が設けられている。図3、図4(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態を示しており、図4(B)は、シリンダロッド41の突出量が最も大きい状態を示している。なお、各シリンダロッド41は、連動して同一方向に同一量突出可能となっている。
【0067】
図5に示すように、成形機32の近傍には、タイヤケース17が複数に分割されて形成された場合に、これら分割体を一体化するために用いる溶接用熱可塑性材料を押し出す押出機44が配置されている(なお、本実施形態では、左右半割りのケース分割体17Aを溶接一体化してタイヤケース17を形成している)。この押出機44は溶融した溶接用熱可塑性材料53を下方に向けて吐出するノズル46を有している。このノズル46の出口部は略矩形状とされており、断面形状が略矩形状とされた帯状の溶接用熱可塑性材料53を吐出する。溶接用熱可塑性材料53は、タイヤケース17を形成している熱可塑性材料と同種のもの、特に同一のものが好ましいが、溶接できれば異なる種類のものであってもよい。なお、本実施形態では、タイヤケース17を形成している熱可塑性材料と溶接用熱可塑性材料53を同一のものとしている。
【0068】
また、ノズル46の近傍には、タイヤケース17のケース分割体17Aに付着させた溶接用熱可塑性材料53を押圧して均す均しローラ48、及び均しローラ48を上下方向に移動するシリンダ装置50が配置されている。なお、シリンダ装置50は、図示しないフレームを介して押出機44の支柱52に支持されている。また、この押出機44は、床面に配置されたガイドレール54に沿って、成形機32の軸36と平行な方向に移動可能となっている。
【0069】
また、押出機44は、ノズル46をノズル88に交換可能となっている。このノズル88は、出口部がノズル46よりも幅広とされた略矩形状とされ、押出機44内の被覆用熱可塑性材料と交換することで、溶接用熱可塑性材料53よりも幅広とされた帯状の溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料90を吐出できるようになる(図9参照)。この第2の被覆用熱可塑性材料90は、後述する被覆コード部材巻回工程でクラウン部16に巻回された被覆コード部材26を覆い、被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27及び被覆コード部材26周囲の熱可塑性材料と溶着するものである。このため、被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27と同種のもの、特に同一のものが好ましいが、溶接できれば異なる種類のものであってもよい。なお、以下では符号のない第2の被覆用熱可塑性材料は固化状態のものを示し、符号の付された第2の被覆用熱可塑性材料90は溶融又は軟化状態のものを示す。
【0070】
また、ガイドレール54には、補強層28を形成するための被覆コード部材26を供給するコード供給装置56が移動可能に搭載されている。
【0071】
図8に示すように、コード供給装置56は、被覆コード部材26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、被覆コード部材26の搬送方向下流側に配置された押圧ローラ60と、押圧ローラ60をタイヤケース17のクラウン部16に対して接離する方向に移動させる第1シリンダ装置62と、押圧ローラ60の補強コード26Aの搬送方向下流側に配置される冷却ローラ64、及び金属製の冷却ローラ64をクラウン部16の外周面に対して接離する方向に移動させる第2シリンダ装置66と、を有している。また、押圧ローラ60及び冷却ローラ64の表面は、溶融又は軟化した熱可塑性材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。
なお、本実施形態では、コード供給装置56は、押圧ローラ60及び冷却ローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。また、押圧ローラ60及び冷却ローラ64は、タイヤケース17に対して従動回転するようになっている。
【0072】
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70及びファン72と、内部空間に当該熱風が供給されると共に内部空間を被覆コード部材26が通過する加熱ボックス74と、加熱ボックス74の先端に設けられ加熱された被覆コード部材26が排出される排出口76とを有している。
また、コード供給装置56はタイヤケース17の軸方向に移動可能となっている。
【0073】
図6には、補強コード26Aの外周面に接着層を形成するコード接着層装置110が示されている。このコード接着層装置110は、補強コード26Aが巻き付けられたリール112と、リール112から送り出される補強コード26Aのテンションを調整して搬送方向下流側へ送るテンションローラ114と、テンションローラ114から送られた補強コード26Aの外周面を液剤(本実施形態では、補強コード26Aがスチールコードのため酸やアルコールなどが好ましい。)で洗浄する洗浄装置116と、洗浄された補強コード26Aの外周面に接着層を形成する接着層形成装置118と、補強コード26Aの接着層を熱風などで乾燥させる乾燥装置120と、乾燥装置120から送られた補強コード26Aを巻き取る巻取装置122と、有している。
【0074】
また、接着層形成装置118における接着層の形成方法としては、洗浄された補強コード26Aを接着剤が貯留された接着槽内を通して外周面に形成するものでもよく、洗浄された補強コード26Aの外周面に接着剤を吹き付けて形成するものでもよく、その他の方法でもよい。
なお、接着剤としては、補強コード26Aを被覆する第1の被覆用熱可塑性材料27との接着性がよければ何れの接着剤を用いてもよいが、例えば、トリアジンチオール系のものを用いることが好ましい。
【0075】
この第1の被覆用熱可塑性材料27は、タイヤケース17を形成している熱可塑性材料と同種のもの、特に同一のものが好ましいが、溶接できれば異なる種類のものであってもよい。また、第1の被覆用熱可塑性材料27は、被覆層29を形成する第2の被覆用熱可塑性材料90と同種のもの、特に同一のものが好ましいが、溶接(溶着)できれば異なる種類のものであってもよい。またさらに、タイヤケース17を形成する熱可塑性材料と、被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27と、被覆層29を形成する第2の被覆用熱可塑性材料とが同種であることが接合強度の観点から好ましい。
【0076】
そして、巻取装置122からドラム132へ補強コード26Aが送られて巻き取られるようになっている。
【0077】
図7には、補強コード26Aの外周面に第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆接合するコード被覆装置130が示されている。このコード被覆装置130は、接着層が形成された補強コード26Aが巻き付けられたドラム132と、ドラム132から送り出される補強コード26Aのテンションを調整して搬送方向下流側へ送るテンションローラ134と、テンションローラ134から送られた補強コード26Aの外周面に溶融又は軟化した第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆する押出機136と、押出機136から押し出された被覆コード部材26の溶融状態の第1の被覆用熱可塑性材料27を冷却するための水槽138と、水槽138から出た被覆コード部材26を巻き取る巻取装置140と、を有している。
【0078】
押出機136は上部に樹脂投入口142を有しており、この樹脂投入口142から投入された第1の被覆用熱可塑性材料27を溶融又は軟化させて、内部を通る補強コード26Aに被覆するようになっている。また、押出機136のコード出口部144は略円形状とされている。このため、本実施形態では、断面円形状の被覆コード部材26が形成されるようになっている。なお、押出機136のコード出口部144の形状は略円形状以外であってもよい。
【0079】
そして、巻取装置140からリール58へ被覆コード部材26が送られて巻き取られるようになっている。
【0080】
次に本実施形態のタイヤ10の製造方法について説明する。
(タイヤケース成形工程)
(1)図3に示すように、先ず、径を縮小したタイヤ支持部40の外周側に、互いに向かい合わせに突き当てた2つのケース分割体17Aを配置すると共に、2つのケース分割体17Aの内部に、薄い金属板(例えば、厚さ0.5mmの鋼板)からなる筒状のタイヤ内面支持リング43を配置する(なお、図3では、内部を見せるために一方のケース分割体17Aを外して記載されている)。
【0081】
タイヤ内面支持リング43の外径は、ケース分割体17Aの外周部分の内径と略同一寸法に設定されており、タイヤ内面支持リング43の外周面が、ケース分割体17Aの外周部分の内周面に密着するようになっている。これにより、タイヤ支持片42間の隙間によりタイヤ支持部40の外周に生じる凹凸に起因する接合部分(溶接用熱可塑性材料53)の凸凹(前記凹凸の逆形状)の発生を抑制することができる。また、タイヤ支持片42間の隙間によって配置部材(タイヤケース17、トレッド30、その他のタイヤ構成部材(例えば、ベルト補強層など))に凹凸が発生するのを抑制することができる。つまり、配置部材を配置する際に作用させる力(テンションや押圧力など)で配置部材のタイヤ支持片42間の隙間に対応した部位に凹凸が発生するのを抑制することができる。なお、タイヤ内面支持リング43は薄い金属板形成されているため、曲げ変形させてケース分割体17Aの内部に容易に挿入可能である。
【0082】
そして、図4(B)に示すように、タイヤ支持部40の径を拡大してタイヤ内面支持リング43を複数のタイヤ支持片42で内側から保持する。
【0083】
(2)図5に示すように、押出機44を移動して、ケース分割体17Aの突き当て部分の上方にノズル46を配置する。そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、ノズル46から溶融した溶接用熱可塑性材料53を接合部位に向けて押し出し、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料53を付着させる。付着した溶接用熱可塑性材料53は、下流側に配置した均しローラ48によって平らに均されると共に、両方のケース分割体17Aの外周面に溶着する。溶接用熱可塑性材料53は自然冷却により次第に固化し、一方のケース分割体17Aと他方のケース分割体17Aとが溶接用熱可塑性材料53によって溶接され、これらの部材が一体となってタイヤケース17が形成される。
【0084】
(被覆コード部材形成工程)
(3)図6に示すように、まず、コード接着層装置110を用いて補強コード26Aの外周面に接着層を形成する。具体的には、リール112から送り出された補強コード26Aをテンションローラ114でテンション調整しながら洗浄装置116へ送り、外周面を洗浄する。次に、洗浄した補強コード26Aの外周面に接着層形成装置118で接着層を形成する。このとき、補強コード26Aの外周面が洗浄されていることから、接着層がムラなく形成される。そして、この接着層を乾燥装置120で乾燥させる。このようにして接着層が形成された補強コード26Aを、巻取装置122で巻き取る。その後、巻取装置122からドラム132へ補強コード26Aを送り、ドラム132で補強コード26Aを巻き取った後、ドラム132をコード被覆装置130にセットする。
【0085】
(4)次に、図7に示すように、コード被覆装置130を用いて接着層が形成された補強コード26Aの外周面に第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆接合する。具体的には、ドラム132から送り出された補強コード26Aをテンションローラ134でテンション調整しながら押出機136へ送る。押出機136では、補強コード26Aの外周面に溶融又は軟化させた第1の被覆用熱可塑性材料27を被覆してコード出口部144から被覆コード部材26を水槽138へ押し出す。これにより溶融又は軟化状態の第1の被覆用熱可塑性材料27が冷却固化される。なお、溶融又は軟化状態の第1の被覆用熱可塑性材料27を補強コード26Aに被覆したとき、接着層を介して補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27とが接合される。ここで、補強コード26Aの外周面に接着層がムラなく形成されていることから、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27との間の密着性が向上する。これにより、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27との接合面積(接合力)が増加する。次に、被覆コード部材26を巻取装置140で巻き取る。その後、巻取装置140からリール58へ被覆コード部材26を送り、リール58で被覆コード部材26を巻き取った後、リール58をコード供給装置56にセットする。
【0086】
(被覆コード部材巻回工程)
(5)次に、図8に示すように、押出機44を退避させて、コード供給装置56をタイヤ支持部40の近傍に配置する。そして、ヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。
【0087】
次に、上記工程でセットされたリール58から巻き出した被覆コード部材26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、被覆コード部材26の外周面の温度を100〜200°C程度に加熱)する。ここで、被覆コード部材26は、加熱されることで第1の被覆用熱可塑性材料27が溶融又は軟化した状態となる。
【0088】
そして被覆コード部材26は、排出口76を通り、矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻回される。このとき、クラウン部16に接触した部分の溶融又は軟化状態の第1の被覆用熱可塑性材料27は周囲に広がり、この接触部分の熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料27とが混ざり合い溶着される。これにより、クラウン部16と被覆コード部材26との接合強度が向上する。
【0089】
また、被覆コード部材26に作用させるテンションは、タイヤケース17に対して従動回転するリール58にブレーキをかけることで調整されるようになっており、このように一定のテンションを作用させながら被覆コード部材26を巻回することで、被覆コード部材26が蛇行するのを抑制できる。なお、本実施形態では、リール58にブレーキをかけてテンションを調整しているが、被覆コード部材26の搬送経路途中にテンション調整用ローラを設けるなどしてテンションを調整してもよい。
【0090】
また、第1の被覆用熱可塑性材料27が溶融又は軟化状態の被覆コード部材26は、クラウン部16の外周面に接触した直後に、押圧ローラ60によって押圧することで溶融又は軟化状態の第1の被覆用熱可塑性材料27が周囲によく広がり、クラウン部16との接合面積を確保することができる。また、このように押圧することで、被覆コード部材26をクラウン部16に接触させた際に侵入した空気も押し出され、被覆コード部材26とクラウン部16との間への空気入りがさらに抑制される。
【0091】
その後、押圧ローラ60の下流側に設けられた冷却ローラ64によって、被覆コード部材26の溶融又は軟化した第1の被覆用熱可塑性材料27が強制的に冷却される。これにより、被覆コード部材26が動いたりする前に被覆コード部材26及びその周囲が冷却されるため、精度よく被覆コード部材26を配設することができる。
【0092】
このように被覆コード部材26をクラウン部16に螺旋状に巻回することで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強層28が形成される。
【0093】
(被覆コード部材被覆工程)
(6)次に、図9に示すように、コード供給装置56を退避させて、再び押出機44をタイヤ支持部40の近傍に配置する。このとき、押出機44のノズル46をノズル88に交換すると共にノズル88から吐出する材料を第2の被覆用熱可塑性材料90に交換する。
【0094】
次に、クラウン部16に巻回された被覆コード部材26の巻回領域(補強層28の配設領域)よりも幅広の領域の幅方向端部の上方にノズル88を配置する。
【0095】
そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、ノズル88から溶融又は軟化した第2の被覆用熱可塑性材料90をクラウン部16の被覆領域に向けて吐出し、周方向に沿って第2の被覆用熱可塑性材料90を付着させる。このようにして、被覆コード部材26が第2の被覆用熱可塑性材料90で覆われていく。このとき、溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料90は巻回された被覆コード部材26の表面にある程度広がるため、隣接する被覆コード部材26の間の隙間が第2の被覆用熱可塑性材料90で埋められ、表面が平坦状に近づく。
【0096】
また、溶融又は軟化した第2の被覆用熱可塑性材料90で巻回された被覆コード部材26を覆うときの被覆量は、第2の被覆用熱可塑性材料90の表面(全表面)が被覆コード部材26のタイヤケース17の径方向外側端部よりも径方向外側となるように調整している。このように調整することで、第2の被覆用熱可塑性材料90の表面がより平坦状となる。
【0097】
また、付着した第2の被覆用熱可塑性材料90は、下流側に配置した均しローラ48によって押圧されて平らに均され、第2の被覆用熱可塑性材料90が第1の被覆用熱可塑性材料27と溶着する。これにより、第2の被覆用熱可塑性材料90が巻回した被覆コード部材26から浮き上がるのが抑制される。さらに、均しローラ48による押圧時に被覆コード部材26と第2の被覆用熱可塑性材料90との間の空気も押し出され、被覆コード部材26周囲への空気入りが効果的に抑制される。そして、自然冷却により第1の被覆用熱可塑性材料90が固化した後は、補強層28を覆う被覆層29が形成される。
【0098】
また、図10に示すように、クラウン部16の被覆領域に第2の被覆用熱可塑性材料90を付着させる際には、タイヤケース17の幅方向端部同士を若干オーバーラップさせてもよい。
【0099】
なお、本工程では、タイヤケース成形工程で用いた押出機44を用いる構成としているが、本発明はこの構成に限らず、他に本工程専用の押出機を製作して用いてもよい。しかし、タイヤケース成形工程で用いた押出機44の一部の部品を交換して用いることで、新たな押出機を製作するよりもコストダウンを図ることができる。
【0100】
(表面処理工程)
(7)次に、押出機44を退避させて、図示しないバフ処理機がタイヤ支持部40の近傍に配置される。そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、被覆層29が形成されたタイヤケース17のトレッド30(詳細後述)が接合されるトレッド接合面(被覆層29の外周面を含む)を周方向及び幅方向が均一となるように削って外形を整えつつ表面に微細な凹凸(溝含む)を形成する表面処理を行なう。なお、この微細な凹凸は、後工程でトレッド30をトレッド接合面に接着剤で接合する際にアンカー効果を生じさせるものである。つまり、本実施形態では、トレッド接合面に微細な凹凸を形成するが、これに限らず、アンカー効果を生じさせることができればどのようなものをトレッド接合面に形成してもよい。
【0101】
さらに、被覆層29は、被覆用熱可塑性材料90の表面(全表面)が被覆コード部材26のタイヤケース17の径方向外側端部よりも径方向外側となるように第2の被覆用熱可塑性材料90の被覆量を調整して形成されている、つまり、被覆層29と被覆コード部材26との間の厚みが確保されていることから、表面処理時に補強コード26Aが削られ難くなる。
【0102】
(8)次に、タイヤケース17のトレッド接合面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けて、このトレッド接合面にトレッド30を、接着剤などを用いて接合する。このトレッド30の内周面は、被覆層29の外周面と同じく平坦状とされていることから、被覆層29の外周面を含むトレッド接合面とトレッド30の内周面との間に隙間が生じ難く、空気入りが抑制される。また、表面処理工程で、トレッド接合面には、微細な凹凸が形成されていることから、接着剤が微細な凹凸に入り込み、アンカー効果が生じてトレッド30と被覆層29が形成されたタイヤケース17との接合強度が向上する。
【0103】
なお、接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はない。また、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
【0104】
(9)そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
【0105】
(10)最後に、タイヤ支持部40の径を縮小し、完成したタイヤ10をタイヤ支持部40から取り外し、内部のタイヤ内面支持リング43を曲げ変形させてタイヤ外へ取り外す。
【0106】
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、熱可塑性材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16に被覆コード部材26を巻回して補強層28を形成していることから耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
【0107】
また、被覆コード部材26の補強コード26Aは、第1の被覆用熱可塑性材料27に被覆されていることから、補強コード26A周囲への空気入りが抑制されると共に補強コード26Aの動きが抑制される。また、被覆コード部材26がクラウン部16に溶着により接合されていることから、走行時の入力などにより被覆コード部材26(補強コード26A含む)が動くのが抑制されて耐久性が向上する。
【0108】
一方、補強コード26Aは第1の被覆用熱可塑性材料27に被覆されて周囲の空気入りが抑制されていることから、補強コード26Aをクッションゴム等に埋設するものと比べた場合、重量増加、厚み方向における部材の物性変化幅の増大、及び走行時の横力不足などの走行性能の低下が抑制される。
【0109】
また、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27とが接着剤により接合されていることから、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27との密着性が向上し、補強コード26A周囲への空気入りがさらに抑制される。また、補強コード26Aと第1の被覆用熱可塑性材料27との接合により、補強コード26Aの動きがさらに抑制されて、第1の被覆用熱可塑性材料27の劣化(亀裂の発生など)が抑制される。
【0110】
そして、クラウン部16の熱可塑性材料と被覆コード部材26とが溶着により接合されていることから、クラウン部16と被覆コード部材26との接合強度が向上する。
【0111】
また、タイヤケース17を形成する熱可塑性材料と被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27が同種の場合には、熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料27との溶着時に熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料とが良く混ざり合い、クラウン部16と被覆コード部材26との接合強度が向上する。
【0112】
さらに、隣接する被覆コード部材26間に生じる隙間が、外周面が平坦状とされた被覆層29により覆われる。これにより、被覆層29を含むタイヤケース17のトレッド接合面に接合されたトレッド30との間に隙間が生じ難く、空気入りが抑制される。これにより、トレッド30と被覆層29との間の接合面積(接合力)が確保され、走行時の入力などによってトレッド30と被覆層29との間の剥離が抑制されて耐久性が向上する。
【0113】
被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27と被覆層29の第2の被覆用熱可塑性材料が同種の場合には、溶融又は軟化させた第2の被覆用熱可塑性材料90で補強層28を覆って被覆層を形成することから、覆った部分の第1の被覆用熱可塑性材料27と第2の被覆用熱可塑性材料90とが良く混ざり合い、被覆コード部材26と被覆層29との接合強度が向上する。
【0114】
また、路面と接触するトレッド30を熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
【0115】
またさらに、ビード部12のリム20と接触する部分に、熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20と熱可塑性材料とでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
【0116】
[その他の実施形態]
第1の実施形態では、被覆コード部材26を加熱し、第1の被覆用熱可塑性材料27を溶融又は軟化させて被覆コード部材26とクラウン部16を溶着により接合する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26を加熱せずに、クラウン部16の被覆コード部材26が埋設される部分を加熱して熱可塑性材料を溶融又は軟化状態としてから被覆コード部材26をクラウン部16に埋設して両者を接合する構成としてもよい。詳述すると、図12に示すように、ファン82、ヒーター80、及び排出口84を有する熱風生成装置78を用い、この熱風生成装置78で発生させた熱風をクラウン部16の被覆コード部材26が埋設される部分に吹きかけて熱可塑性材料を溶融又は軟化させてから被覆コード部材26を埋設し、被覆コード部材26とクラウン部16との溶着により接合する。これにより、被覆コード部材26の周囲が図11に示されるような断面となるタイヤ10が製造される。
さらに、図8に示されるコード加熱装置59を用いて被覆コード部材26を加熱して第1の被覆用熱可塑性材料27を溶融又は軟化状態とし、図12に示される熱風生成装置78を用いてクラウン部16の被覆コード部材26が埋設される部分を加熱して熱可塑性材料を溶融又は軟化状態としてから両者を接触させて接合する構成としてもよい。この場合には、両者のうちの一方を溶融又は軟化状態したものと比べて、熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料27とが良く混ざり合うため、クラウン部16と被覆コード部材26との接合強度が、さらに向上する。なお、クラウン部16の被覆コード部材26が埋設される部分の加熱は、熱風生成装置78の熱風による加熱以外に、輻射熱での加熱、赤外線での加熱、加熱ローラなどを押し付けて加熱などの種々の方式のものを用いることができる。
【0117】
また、上述の実施形態では、被覆コード部材26とクラウン部16を溶着により接合する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26の外周面に接着剤を塗布(又は吹き付け)し、この接着剤により被覆コード部材26とクラウン部16を接合してもよい。このように接着剤で接合する場合には、タイヤケース17を形成している熱可塑性材料と第1の被覆用熱可塑性材料27とが溶着し難い材料であっても、被覆コード部材26とクラウン部16を接合することができる。なお、このように、接着剤を用いてクラウン部16に被覆コード部材26を接着した場合には、両者の間に接着剤層が形成される。
【0118】
上述の実施形態では、被覆コード形成工程で断面円形状の被覆コード部材26を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、被覆コード部材26は断面視で、クラウン部16への接合側を平坦面26Dとしてもよく、クラウン部16への接合側と逆側を平坦面26Uとしてもよく、クラウン部16への接合側を逆側よりも幅広としてもよい(ここでは、平坦面26Uよりも平坦面26Dを幅広としている)。このような断面形状としては略台形が挙げられる(図13参照)。ここで、被覆コード形成工程で断面台形状の被覆コード部材26を形成した場合、この被覆コード部材26をクラウン部16へ巻回する際に被覆コード部材26の蛇行が抑制され、被覆コード部材26が高い精度で配設される。また、クラウン部16と被覆コード部材26との間に隙間が生じにくく、接合面積が効果的に確保される。さらに、平坦面26Uよりも平坦面26Dが幅広のため、クラウン部16と被覆コード部材26との接合面積(接合力)を十分に確保することができる。さらに、平坦面26Dの上にトレッドなどのタイヤ構成部材を接合した場合、平坦面26Uとタイヤ構成部材との間に隙間が生じにくく、接合面積が十分に確保される。なお、この被覆コード部材26で形成される補強層28に被覆層29を形成する場合に、平坦面26U上の溶融又は軟化状態の第2の被覆用熱可塑性材料90が広がりやすく、また表面が平坦状になりやすい。また、断面台形状の被覆コード部材26は平坦面26Dを加熱して平坦面26D側の第1の被覆用熱可塑性材料27を溶融又は軟化状態にしてクラウン部16に溶着により接合してもよい。またその他に、断面台形状の被覆コード部材26は平坦面26Dに接着剤を塗布し(又は吹きかけ)、平坦面26Dをクラウン部16に接着剤により接合することもできる。
【0119】
上述の実施形態では、コード接着層装置110で補強コード26Aの外周面に接着層を形成する構成としたが、本発明はこれに限らず、補強コード26Aを、アルカリ脱脂を行い洗浄、次に酸活性化槽に投入して洗浄、次に接着剤が入った接着剤層で電解法もしくは浸漬法による処理を行い洗浄、そして、湯洗して乾燥した熱風で乾燥させる装置を用いて補強コード26Aの外周面に接着層を形成する構成としてもよい。
【0120】
さらに、上述の実施形態では、押出機44から溶融又は軟化した第2の被覆用熱可塑性材料90を押し出して、被覆領域を第2の被覆用熱可塑性材料90で覆う構成としたが、本発明はこの構成に限らず、図14に示すように、第2の被覆用熱可塑性材料90と同種の材料で形成された溶着シート92を加熱(熱風、輻射熱、赤外線、加熱ローラなどで加熱)しながら被覆領域に配設し、シリンダ装置94で下方に押圧された均しローラ96で均す構成としてもよい。溶着シート92を用いる場合には、溶着シート92のクラウン部16への接着面を加熱して溶融又は軟化状態とすることが好ましい。また、クラウン部16の溶着シート92が配設される部分を加熱し溶融又は軟化させながら溶着シート92を配設してもよい。さらに、溶着シート92を加熱して溶融又は軟化させ、クラウン部16の溶着シート92が配設される部分を加熱し溶融又は軟化させながら溶着シート92を配設してもよい。この場合には、溶融又は軟化した溶着シート92と被覆コード部材26の第1の被覆用熱可塑性材料27とが混ざり合って溶着し、冷却固化した後、溶着シート92によって形成された被覆層29とクラウン部16との接合強度(溶接強度)が向上する。なお、図14では、熱風生成装置98の吹き出し口100を溶着シート92の接着面に向けて、生成した熱風で接着面を溶融又は軟化させながら、クラウン部16の被覆領域に配設している。
【0121】
また、上述の実施形態では、被覆コード部材26をクラウン部16に巻回して補強層28を形成した後で、溶融又は軟化した第2の被覆用熱可塑性材料90で被覆コード部材26を覆う構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26をクラウン部16に埋設しながら、埋設された被覆コード部材26を溶融又は軟化した第2の被覆用熱可塑性材料90で覆う構成としてもよい。
【0122】
またさらに、上述の実施形態では、クラウン部16に被覆コード部材26を巻回し且つ溶着による接合又は接着剤による接合(接着)を行なう構成としたが、本発明はこの構成に限らず、クラウン部16に予め螺旋状の溝を形成し、その溝に被覆コード部材26を嵌め込む構成としてもよい。この構成とすることで、クラウン部16に被覆コード部材26を巻回する際に、被覆コード部材26が蛇行せずに、高い精度で配設される。また、被覆コード部材26を溝に嵌め込んだ後で、被覆コード部材26の周囲を加熱して被覆コード部材26とクラウン部16を溶着により接合してもよく、予め加熱した被覆コード部材26を溝に嵌め込んで溶着により被覆コード部材26とクラウン部16を接合してもよい。なお、接着剤を塗布した被覆コード部材26を溝に嵌め込んで被覆コード部材26とクラウン部16を接合してもよい。
【0123】
上述の実施形態では、溶融又は軟化した被覆用熱可塑性材料90をクラウン部16の巻回領域に付着させた後、被覆用熱可塑性材料90を自然冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、被覆用熱可塑性材料90を強制的に冷却する構成としてもよい。この強制的に冷却する手段としては、冷風を吹きかけたり、水冷式の冷却ローラを用いて溶融又は軟化状態の被覆用熱可塑性材料90を直接冷却する手段が挙げられる。また、均しローラ48を上記冷却ローラとしてもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、ケース分割体17Aを接合してタイヤケース17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤケース17を一体的に形成してもよい。
【0125】
上述の実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ10は、図15に示すように、完全なチューブ形状であってもよい。なお、図15に示す完全なチューブ形状のタイヤも図1に示すチューブレスタイヤと同様にリム組みされるようになっている。
【0126】
また、上述の実施形態では、被覆コード部材26をクラウン部16の外周面へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26が幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
【0127】
さらに、上述の実施形態では、被覆層29の外周面にトレッド30を設ける構成としたが、本発明はこの構成に限らず、被覆層29の外周面に別のタイヤ構成部材を設ける構成としてもよく、例えば、被覆層29の外周面に第1の被覆用熱可塑性材料27が溶融又は軟化した被覆コード部材26を巻回し、その後、溶融又は軟化した被覆用熱可塑性材料で覆って被覆層を形成してタイヤケース17にタイヤ構成部材を積層していく構成としもよい。
【0128】
またさらに、タイヤ10を製造するための順序は、第1実施形態の順序に限らず、適宜変更してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0129】
10 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
17 タイヤケース(タイヤ骨格部材)
26 被覆コード部材
26A 補強コード
27 第1の被覆用熱可塑性材料
28 補強層
29 被覆層
30 トレッド
90 第2の被覆用熱可塑性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材と、
補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆して形成された被覆コード部材を、前記タイヤ骨格部材の外周部に巻回し且つ接合して形成された補強層と、
を有するタイヤ。
【請求項2】
前記補強コードと前記第1の被覆用熱可塑性材料とが接着剤により接合されている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外周部と前記被覆コード部材とが溶着により接合されている請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記熱可塑性材料と前記第1の被覆用熱可塑性材料が同種である請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外周部と前記被覆コード部材とが接着剤により接合されている請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側が逆側よりも幅広とされた請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側が平坦面とされた請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記被覆コード部材は、前記外周部への接合側と逆側が平坦面とされた請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
第2の被覆用熱可塑性材料で形成され、前記外周部に接合されて前記補強層を覆い外周面が平坦状とされた被覆層を有する請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の被覆用熱可塑性材料と前記第2の被覆用熱可塑性材料が同種である請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
補強コードに第1の被覆用熱可塑性材料を被覆して被覆コード部材を形成する被覆コード部材形成工程と、
熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材の外周部に前記被覆コード部材を巻回し且つ接合する被覆コード部材巻回工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【請求項12】
前記被覆コード部材形成工程では、前記補強コードの外周面に接着層を形成し、該接着層を介して前記補強コードに溶融又は軟化させた前記第1の被覆用熱可塑性材料を被覆接合する請求項11に記載のタイヤの製造方法。
【請求項13】
前記被覆コード部材形成工程では、前記接着層を形成する前に前記補強コードを洗浄する請求項12に記載のタイヤの製造方法。
【請求項14】
前記被覆コード部材巻回工程では、前記被覆コード部材の前記第1の被覆用熱可塑性材料、及び、前記被覆コード部材が接合される部分の前記クラウン部の前記熱可塑性材料の少なくとも一方を溶融又は軟化状態にして、前記クラウン部と前記被覆コード部材とを溶着により接合する請求項11〜請求項13の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項15】
前記被覆コード部材巻回工程では、前記外周部と前記被覆コード部材とを接着剤により接合する請求項11〜請求項13の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項16】
前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側が逆側よりも幅広となる前記被覆コード部材を形成する請求項11〜請求項15の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項17】
前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側が平坦面となる前記被覆コード部材を形成する請求項11〜請求項16の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項18】
前記被覆コード部材形成工程では、前記外周部への接合側と逆側が平坦面となる前記被覆コード部材を形成する請求項11〜請求項17の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項19】
前記外周部に埋設された前記被覆コード部材を溶融又は軟化させた第2の被覆用熱可塑性材料で覆う被覆コード部材被覆工程を有する請求項11〜18の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−42235(P2011−42235A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191231(P2009−191231)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】