説明

タイヤの製造方法および装置

【課題】安価でありながら高能率で良好なくせ付けを中間バンド31に施す。
【解決手段】成形ドラム11の軸方向両端部外側に環状溝32を有する円筒状の成形スリーブ30を嵌合させた後、カーカスプライ20を成形ドラム11に巻付けて軸方向両端部が成形スリーブ30の外側に位置する中間バンド31を成形し、その後、円板状部材39により中間バンド31を環状溝32内に押し込むことで全周に亘りくせ付けするようにしたので、作業者による手作業が不要となって生産能率の向上および省力化を図ることができ、また、中間バンド31はくせ付け時に成形スリーブ30に密着したままであるので、良好なくせ付けを容易に施すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸方向端部を折曲げた円筒状の中間バンドを一部に用いてタイヤを製造するタイヤの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高く巻き上げられたカーカス層の折返し端に発生するセパレーションを防止するため、図9に示すように、カーカス層70の側端部70aをビードコア71の周囲でその外表面71aに沿って巻き回し、該カーカス層70の側端70bをビードコア71位置まで半径方向内側に移動させたタイヤが提案されているが、このようなタイヤの製造方法および装置としては、例えば以下の特許文献1、2に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−225653号公報
【特許文献2】特開2005−186455号公報
【0004】
ここで、前記特許文献1に記載のものは、幅方向に延びるスチールコードが埋設されたカーカスプライを、回転する成形ドラムの周囲に供給して巻付けることで、円筒状のカーカスバンドを成形した後、外周に1本以上の周方向に延びる環状溝が形成された軸状部材を、前記成形ドラムとカーカスバンドとの間の周上1箇所に挿入し、次に、前記環状溝に重なり合っている部位のカーカスバンドを円板状部材により環状溝に押し込みながら、これら軸状部材、円板状部材を一体的に成形ドラムの周方向に移動させて前記部位のカーカスバンドを全周に亘って折曲げてくせ付けするようにしたものである。
【0005】
一方、前記特許文献2に記載のものは、幅方向に延びるスチール製カーカスコードが埋設されたカーカスプライを、軸方向両端部外周に1本以上の周方向に延びる環状溝がそれぞれ形成された回転するフォーマの周囲に供給して巻付け円筒状の中間バンドを成形した後、中間バンドの環状溝に重なっている部位を型付けローラにより該環状溝内に押し込みながら、該型付けローラをフォーマの周方向に移動させて前記部位の中間バンドを全周に亘って折曲げてくせ付けするようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたタイヤの製造方法、装置にあっては、軸状部材を成形ドラムとカーカスバンドとの間に挿入する作業の自動化が難しく、この結果、作業者による挿入作業が必要となり生産能率が低下してしまうという課題があった。しかも、カーカスバンドを成形ドラムから一旦引き剥がした状態でくせ付け作業を行うことになるため、軸状部材、円板状部材の回転速度に狂い等が生じると、くせ付け作業位置前後のカーカスバンドに弛みや波打が発生し、製品タイヤの品質低下を招くおそれがあるという課題もあった。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたタイヤの製造方法、装置にあっては、タイヤの種類、サイズの変更に伴って環状溝の本数、環状溝間の間隔等に変更があると、成形ドラムを対応する環状溝が形成されている成形ドラムに交換する必要があり、この結果、大型部品である成形ドラムを多数個準備保管しておく必要があって製作費が高価となるとともに、交換作業に多大の労力、時間が必要となり生産能率が低下してしまうという課題があった。
【0008】
この発明は、安価でありながら高能率で良好なくせ付けを中間バンドに施すことができるタイヤの製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、第1に、回転可能な成形ドラムの軸方向端部外側に、外周に1本以上の周方向に延びる環状溝が形成された円筒状を呈する成形スリーブを嵌合させる工程と、幅方向に延びるスチールコードが埋設された帯状部材を回転する成形ドラムの周囲に供給して巻付け、軸方向端部が成形スリーブの外側に位置している円筒状の中間バンドを成形する工程と、前記中間バンドの環状溝に重なっている部位を円板状部材によって該環状溝内に周方向に順次押し込むことで、該中間バンドを環状溝と重なる位置において全周に亘り折曲げてくせ付けする工程と、くせ付けされた中間バンドを含むグリーンタイヤを成形する工程とを備えたタイヤの製造方法により、達成することができる。
【0010】
第2に、回転可能な成形ドラムと、外周に1本以上の周方向に延びる環状溝が形成された円筒状を呈する成形スリーブと、該成形スリーブを移動させて成形ドラムの軸方向端部外側に嵌合させる移動手段と、幅方向に延びるスチールコードが埋設された帯状部材を回転する成形ドラムの周囲に供給して巻付け、軸方向端部が成形スリーブの外側に位置している円筒状の中間バンドを成形する供給手段と、前記中間バンドの環状溝に重なっている部位を該環状溝内に周方向に順次押し込むことで、該中間バンドを環状溝と重なる位置において全周に亘り折曲げてくせ付けする円板状部材と、くせ付けされた中間バンドを含むグリーンタイヤを成形する成形手段とを備えたタイヤの製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、成形ドラムの軸方向端部外側に環状溝を有する円筒状の成形スリーブを嵌合させた後、帯状部材を成形ドラムの周囲に巻付けて軸方向端部が成形スリーブの外側に位置する中間バンドを成形し、その後、円板状部材により中間バンドを環状溝内に押し込むことで、中間バンドを全周に亘り折曲げてくせ付けするようにしたので、従来のような作業者による手作業が不要となって生産能率の向上および省力化を図ることができるとともに、中間バンドはくせ付け時に成形スリーブに密着したままであるので、中間バンドに対し良好なくせ付けを容易に施すことができる。また、タイヤの種類、サイズの変更に伴って環状溝の本数、環状溝間の間隔等に変更がある場合には、成形ドラムより軽量、小型部品である成形スリーブを対応するものに交換するだけでよく、この結果、準備保管しておく成形スリーブの製作費が安価となり、また、交換作業も容易となって生産能率が向上する。
【0012】
また、請求項2に記載のように構成すれば、成形ドラムの回転機構をくせ付けにそのまま用いることができるため、構造が簡単となり製作費を安価とすることができる。さらに、円板状部材をフリー回転可能とすることで、成形ドラム、成形スリーブに追従回転させると、中間バンドに対しくせ付けする際、円板状部材の回転抵抗や円板状部材と中間バンドとの間に生じる抵抗により、くせ付け位置にずれが生じたり、中間バンドに変形が生じることがあるが、請求項3に記載のように構成すれば、前述のような抵抗を消失させることができるため、中間バンドに対し良好なくせ付けを施すことができる。
【0013】
また、請求項4に記載のように構成すれば、中間バンドに対してくせ付けする際、円板状部材の進行方向直前に位置する中間バンドの一部を該円板状部材によって若干引き込みながらくせ付けを行うことになるため、中間バンドに対しさらに良好なくせ付けを施すことができる。さらに、中間バンドに対するくせ付けの開始直後はくせ付け作業が不安定となって、くせ付け形状が乱れることがあるが、請求項5に記載のように構成すれば、このような乱れを矯正することができ、全周に亘って良好なくせ付けを施すことができる。また、請求項7に記載のように構成すれば、生産能率を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略平面図である。
【図2】成形スリーブ近傍の正面断面図である。
【図3】図2のI−I矢視断面図である。
【図4】くせ付け作業時における成形スリーブ近傍の正面断面図である。
【図5】(a)(b)(c)はそれぞれくせ付け作業を説明する正面図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ図5(c)に続くくせ付け作業を説明する一部破断正面図である。
【図7】(a)(b)はそれぞれビードコアのセット作業を説明する一部破断正面図である。
【図8】グリーンタイヤの成形作業を説明する一部破断正面図である。
【図9】タイヤのビード部の子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3、4において、11は回転可能で拡縮径可能な円筒状の成形ドラムであり、この成形ドラム11の主軸12は駆動部13に片持ちで支持されている。そして、前記成形ドラム11は駆動部13から駆動力を受けると、主軸12と共に軸線回りに一体となって回転する。前記成形ドラム11の側方には成形ドラム11の軸線に直交する方向に延びる供給手段としての搬送コンベア15が設置され、この搬送コンベア15から成形ドラム11に種々の帯状部材、例えば、幅方向両端にゴムチェーファー16、サイドトレッド17がプリセットされたインナーライナー18、および、ワイヤーチェーファー19、カーカスプライ20、クッションゴム21(図6(b)参照)が順次供給される。このとき、成形ドラム11は回転しているため、前記帯状部材は成形ドラム11の周囲に巻き付けられ、その後、帯状部材の始終端同士が接合されて円筒状に成形される。
【0016】
ここで、前記搬送コンベア15は前述した帯状部材の種類毎に設置するようにしてもよく、この場合にはこれら搬送コンベアを上下に離して設置すればよい。また、前記インナーライナー18にゴムチェーファー16、サイドトレッド17をプリセットせず、単独で成形ドラム11に順次供給するようにしてもよい。また、タイヤの種類によっては、成形ドラム11に対するワイヤーチェーファー19の巻付けを省略したり、あるいは、サイドトレッド17を後工程でタイヤ中間体に貼付けることもある。
【0017】
また、前記成形ドラム11はその軸方向両端部に半径方向に移動可能で周方向に並べて配置された複数の円弧状を呈するビードロック体24を有し、これらのビードロック体24の外周は、通常、ビードロック体24間に位置する成形ドラム11の外周と同一面上に位置しているが、該成形ドラム11の軸方向両端部外側に後述の断面が六角形であるビードコア22(図7参照)が搬入されると、半径方向外側に同期移動して拡径し、該ビードコア22を半径方向内側から把持する。25は成形ドラム11と駆動部13との間の主軸12および成形ドラム11から先端側に突出した主軸12にそれぞれ固定された円板状の支持プレートであり、これらの支持プレート25の互いに対向する内面にはそれぞれ成形ドラム11の軸線に平行に延びる複数の移動手段としての流体シリンダ26が周方向に離れて取り付けられている。
【0018】
これら流体シリンダ26のピストンロッド27の先端には円筒状を呈し、金属等の剛体から構成された一対の成形スリーブ30が取り付けられ、これら一対の成形スリーブ30は成形ドラム11と同軸で、該成形ドラム11と一体的に回転することができる。そして、これら成形スリーブ30は前記流体シリンダ26が作動してピストンロッド27が突出した引っ込んだりすることで、成形ドラム11の軸方向両端部、ここではビードロック体24の外側に嵌合されたくせ付け位置A(図2参照)と、成形ドラム11の軸方向両端より軸方向外側の待機位置B(図1参照)との間を成形ドラム11の軸線に沿って移動することができる。なお、この実施形態においては、成形スリーブ30を移動させて成形ドラム11の軸方向端部外側に嵌合させる移動手段として流体シリンダ26を用いたが、この発明においては、ねじ機構、リンク機構、ラック・ピニオン機構等を用いてもよい。
【0019】
ここで、前述の成形スリーブ30は、成形ドラム11の周囲に前述のインナーライナー18等が巻き付けられると、流体シリンダ26の作動により前記くせ付け位置Aまで移動するが、このように成形スリーブ30がくせ付け位置Aに移動すると、内部に幅方向に平行に延びる多数本のスチールコード20a(図4参照)が埋設されている前記カーカスプライ20が前記搬送コンベア15から成形ドラム11、成形スリーブ30に供給される。この結果、前記カーカスプライ20はその幅方向中央部が回転している成形ドラム11の周囲に供給されて巻き付けられ、一方、その幅方向両端部が回転している成形スリーブ30の周囲に供給されて巻き付けられ、その後、このカーカスプライ20の始終端同士が接合されて軸方向両端部が成形スリーブ30の外側に位置している円筒状の中間バンド31が成形される。
【0020】
ここで、前記成形スリーブ30の内径は成形ドラム11の外周に巻き付けられたサイドトレッド17、ワイヤーチェーファー19等の最大外径より大径に形成されており、この結果、該成形スリーブ30がくせ付け位置Aと待機位置Bとの間を移動しても、該成形スリーブ30がサイドトレッド17、ワイヤーチェーファー19等に接触することはなく、成形スリーブ30がこれらを傷付ける事態を確実に阻止することができる。各成形スリーブ30の外周には周方向に連続して延びる1本以上、ここではビードコア22が前述のように六角形であるため3本、の環状溝32が形成され、これら環状溝32は軸方向にビードコア22の頂点間の距離とほぼ等距離だけ離れている。また、これら環状溝32の断面形状は、通常、V字形であるが、最深部に断面略四角形をした幅狭の周方向溝を形成してもよい。なお、この実施形態においては、ビードコア22として断面六角形のものを用いたが、断面が四角形のものを用いてもよく、この場合には、前記環状溝は軸方向に離して2本だけ形成すればよい。
【0021】
35は成形ドラム11に対して搬送コンベア15と反対側に設置された一対のくせ付け手段であり、これらくせ付け手段35は成形ドラム11のビードロック体24とほぼ重なり合う軸方向位置に配置されている。これらくせ付け手段35は基台36と、該基台36に基端が揺動可能に連結された揺動アーム37とを有し、前記揺動アーム37は図示していない揺動機構により基端を中心として成形ドラム11の軸線に垂直な平面内を揺動することができる。
【0022】
各揺動アーム37の先端には成形ドラム11の軸線に平行に延びる1本の回転軸38が回転可能に支持され、これら回転軸38には前記環状溝32と同数の円板状部材39が固定されている。ここで、これら円板状部材39はくせ付け位置Aに位置している成形スリーブ30の環状溝32と同一軸方向位置に配置されており、この結果、これら円板状部材39は前記環状溝32と同一距離だけ軸方向に離れている。また、これら円板状部材39の半径方向外端部は半径方向外端に向かうに従い薄肉となった断面V字形を呈するとともに、その両側面における交差角は該半径方向外端部が前記環状溝32内に容易に挿入できるよう、該環状溝32の両側面の交差角以下となっている。なお、この円板状部材39は周方向に3分割されていてもよい。
【0023】
そして、前述のようにして成形スリーブ30の外側に円筒状をした中間バンド31の軸方向両端部がそれぞれ配置されると、前記揺動機構により揺動アーム37が揺動して円板状部材39が中間バンド31に接近し、該円板状部材39の半径方向外端部によって中間バンド31の環状溝32に重なり合っている部位が対応する環状溝32内に押し込まれる。このとき、駆動部13から成形ドラム11に回転駆動力が付与され、成形ドラム11、支持プレート25、流体シリンダ26、成形スリーブ30、中間バンド31は一体となって軸線回りに回転しているため、前述した中間バンド31は円板状部材39によって環状溝32内に周方向に順次押し込まれ、これにより、該中間バンド31の軸方向両端部は環状溝32と重なる位置(ここでは軸方向に離れた3箇所)において全周に亘り局所的な塑性変形によって略V字形に折曲げられ、くせ付けされる。そして、前記円板状部材39が通過した後の中間バンド31の軸方向両端部は、図4に仮想線で示すように鉤状に屈曲しくせ付け部31aが形成される。
【0024】
このように成形ドラム11の軸方向両端部外側に環状溝32を有する成形スリーブ30を嵌合させた後、カーカスプライ20を成形ドラム11の周囲に巻付けて軸方向両端部が成形スリーブ30の外側にそれぞれ位置する円筒状の中間バンド31を成形し、その後、円板状部材39により中間バンド31を環状溝32内に押し込むことで、中間バンド31を全周に亘り折曲げてくせ付けするようにしたので、従来のような作業者による手作業が不要となって生産能率の向上および省力化を図ることができるとともに、中間バンド31はくせ付け時に成形スリーブ30に密着したままであるので、中間バンド31に対し良好なくせ付けを容易に施すことができる。また、タイヤの種類、サイズの変更に伴って環状溝32の本数、環状溝32間の間隔等に変更がある場合には、成形ドラム11より小型部品である成形スリーブ30を対応するものに交換するだけでよく、この結果、準備保管しておく成形スリーブ30の製作費が安価となり、また、交換作業も容易となって生産能率が向上する。
【0025】
ここで、前述のように成形スリーブ30および円板状部材39を成形ドラム11の軸方向両側にそれぞれ設置し、これら成形スリーブ30および円板状部材39により中間バンド31の軸方向両端部を同時にくせ付けするようにすれば、該中間バンド31に対するくせ付け作業の生産能率を容易に向上させることができる。また、前述のように中間バンド31に対してくせ付けする際、成形ドラム11、成形スリーブ30および中間バンド31を該成形ドラム11の軸線を中心として一体回転させる一方、円板状部材39を周方向位置が不動の一定位置に静置させるようにすれば、成形ドラム11の駆動部13(回転機構)をくせ付けにそのまま用いることができるため、構造が簡単となり製作費を安価とすることができる。なお、この発明においては、中間バンド31に対してくせ付けする際、成形ドラム11、成形スリーブ30および中間バンド31の回転を停止する一方、円板状部材39を中間バンド31上において転動、即ち、中間バンド31の回りに公転させながら自転させることで、円板状部材39により中間バンド31を環状溝32に押込みくせ付けするようにしてもよい。
【0026】
さらに、前述のように中間バンド31に対してくせ付けをする際、円板状部材39をフリー回転可能とすることで、該円板状部材39を成形ドラム11、成形スリーブ30に追従回転させてもよいが、このようにすると、円板状部材39の回転抵抗や円板状部材39と中間バンド31との間に生じる抵抗により、中間バンド31に対するくせ付け位置にずれが生じたり、中間バンド31そのものに変形が生じることがある。このため、この実施形態においては、出力軸が回転軸38に連結された駆動機構としての駆動モータ42を揺動アーム37の先端部に取付けて、該駆動モータ42からの回転駆動力を円板状部材39に付与し、該円板状部材39を自身の軸線回りに強制回転させるようにしている。これにより、前述のような抵抗を消失させることができ、中間バンド31に対し良好なくせ付けを施すことができる。なお、前述の駆動モータ42としては、例えば電動モータ、油圧モータ、エアモータを用いることができる。
【0027】
そして、前記駆動モータ42によって強制回転される円板状部材39の外周における周速は、成形ドラム11の定速回転時における中間バンド31の軸方向両端部における周速より大とすることが好ましい。その理由は、前述のようにすると、中間バンド31に対してくせ付けを行う際、円板状部材39の進行方向直前に位置する中間バンド31の一部が該円板状部材39によって若干引き込まれながらくせ付けが行われることになるため、中間バンド31に対しさらに良好なくせ付けを施すことができるからである。なお、このときの両者の周速差は、円板状部材39の外周における周速の2〜3%程度とすることが好ましい。また、前述のような事態があまり問題とならない場合には、周速差を零、即ち同一周速度で回転させてもよい。
【0028】
ここで、前述の実施形態においては、環状溝32と同数の円板状部材39を単一の回転軸38に固定することで同軸上に配置するようにしたが、この発明においては、環状溝32と同数本の回転軸を揺動アーム37の先端部に周方向に離して支持させるとともに、これら回転軸にそれぞれ1個の円板状部材39を取り付け、中間バンド31に対しくせ付け位置を周方向にずらしながら環状溝32と同数本のくせ付けをほぼ同時に施すようにしてもよい。また、単一の回転軸38に1個だけ円板状部材39を取り付けることで、該円板状部材39により中間バンド31に対し軸方向内側から軸方向外側に向かって順次1本ずつくせ付けを行うように、あるいはい、逆に軸方向外側から軸方向内側に向かって順次1本ずつくせ付けを行うようにしてもよい。この際、起立したくせ付け部31aが邪魔なときには、該くせ付け部31aを成形スリーブ30の外周に押付け部材により強制的に押し付けるようにすればよい。
【0029】
45は成形ドラム11より駆動部13側に配置された支持プレート25と駆動部13との間に設置され前記成形ドラム11と同軸であるバンド成形ドラムであり、このバンド成形ドラム45の主軸46は駆動部13に片持ちで支持されている。そして、前記バンド成形ドラム45は駆動部13から駆動力を受けると、主軸46と共に軸線回りに一体となって回転する。このバンド成形ドラム45の側方には前記搬送コンベア15に平行に延びる搬送コンベア47が設置され、この搬送コンベア47から前記バンド成形ドラム45に複数枚のベルトプライが次々と供給されて巻き付けられると、ベルト層48が成形され、その後、該ベルト層48の外側にトレッド49が供給されて巻き付けられると、全体として円筒状をしたベルト・トレッドバンド50が成形される(図8参照)。
【0030】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
成形ドラム11に対し駆動部13から駆動力を付与することで該成形ドラム11を軸線回りに回転させるとともに、搬送コンベア15からゴムチェーファー16、サイドトレッド17がプリセットされたインナーライナー18およびワイヤーチェーファー19を成形ドラム11の外側に次々に供給して該成形ドラム11の周囲に巻付け、その後、これらゴムチェーファー16、サイドトレッド17、インナーライナー18、ワイヤーチェーファー19の始終端同士を接合して円筒状とする。このときの状態が図5(a)に示されている。
【0031】
次に、流体シリンダ26を作動してピストンロッド27を突出させ、円筒状の成形スリーブ30を待機位置Bから成形ドラム11の軸方向内側に向かってそれぞれ移動させる。これにより、該成形スリーブ30は成形ドラム11の軸方向両端部外側に嵌合され、くせ付け位置Aに到達する。ここで、前述のように成形スリーブ30の内径はゴムチェーファー16、サイドトレッド17等の最大外径より大径であるため、成形スリーブ30が待機位置Bからくせ付け位置Aに移動しても、該成形スリーブ30がワイヤーチェーファー19等に接触することはなく、成形スリーブ30がこれらを傷付ける事態を確実に阻止することができる。なお、このときの状態が図5(b)に示されている。
【0032】
次に、搬送コンベア15からカーカスプライ20が、回転している成形ドラム11、成形スリーブ30の周囲に供給されて巻き付けられる。このとき、カーカスプライ20の幅方向中央部は成形ドラム11の周囲に巻き付けられ、一方、幅方向両端部は成形スリーブ30の周囲に巻き付けられる。その後、このカーカスプライ20の始終端同士が全幅に亘って突き合わせ接合され、軸方向両端部が成形スリーブ30の外側にそれぞれ位置している円筒状の中間バンド(カーカス層)31が成形される。次に、図5(c)に示すように、揺動機構により揺動アーム37を揺動させて円板状部材39を中間バンド31に接近させ、該円板状部材39の半径方向外端部により中間バンド31の環状溝32に重なり合っている部位を環状溝32内に押し込む一方、駆動部13から成形ドラム11に回転駆動力を付与し、成形ドラム11、成形スリーブ30、中間バンド31を軸線回りに一体的に回転させる。
【0033】
この結果、中間バンド31は円板状部材39によって環状溝32内に周方向に次々と押し込まれ、これにより、該中間バンド31の軸方向両端部は環状溝32と重なる軸方向に離れた3箇所において全周に亘り略V字形に同時に折曲げられ、局部的な塑性変形によりくせ付けされる。そして、前記円板状部材39が通過した後の中間バンド31の軸方向両端部は、図6(a)に示すように前記くせ付けされた3箇所において屈曲し、鉤状をしたくせ付け部31aが全周に亘って形成される。このとき、成形ドラム11、成形スリーブ30および中間バンド31を1回転を超えて回転させ、くせ付けの開始部に対し円板状部材39により再度くせ付けを施すことが好ましい。その理由は、中間バンド31に対するくせ付けの開始直後はくせ付け作業が不安定となって、くせ付け形状に乱れが生じることがあるが、前述のようにすれば、このような乱れを矯正することができ、全周に亘って良好なくせ付けを施すことができるからである。
【0034】
次に、流体シリンダ26が作動してピストンロッド27が引っ込むと、成形スリーブ30はくせ付け位置Aから待機位置Bまで軸方向外側に向かって移動し、該成形スリーブ30がワイヤーチェーファー19等と中間バンド31との間から抜き出される。このとき、揺動機構により揺動アーム37を揺動させて円板状部材39を初期位置に復帰させる。その後、成形ドラム11を回転させるとともに、搬送コンベア15から一対のクッションゴム21を前記中間バンド31に供給し、該クッションゴム21を中間バンド31の周囲に巻き付ける。このときの状態が図6(b)に示されている。
【0035】
次に、成形ドラム11より先端側で待機していた一対のビードセッター51が成形ドラム11に向かって移動するが、これらビードセッター51のマグネット52には図7に示すように前記ビードコア22が吸着保持されている。ここで、このビードコア22には略半径方向に延びるリング状をしたスティフナー53の半径方向内端が固着されているが、このビードコア22とスティフナー53の半径方向内端との間には一定幅の環状溝54が形成されており、この環状溝54には前述したくせ付け部31aの外側部が挿入される。また、前記ビードコア22の内径はくせ付け部31aの最大径より若干小径であり、この結果、スティフナー53付きビードコア22を吸着保持したビードセッター51が先端側のくせ付け部31aを通過する際、該くせ付け部31aは図7(a)に実線で示すように弾性変形しながら押し倒される。
【0036】
そして、両ビードセッター51がくせ付け部31a間に位置するまで移動すると、くせ付け部31aは図7(a)に仮想線で示すように弾性復元力により元の形状に復帰する。その後、ビードセッター51を軸方向両側に向かってそれぞれ移動させると、該ビードセッター51によりくせ付け部31aは、図7(b)に実線で示すように弾性変形しながら拡開する。これにより、ビードコア22は成形ドラム11のビードロック体24と重なり合う位置、即ち、半径方向外側まで搬送される。次に、ビードロック体24が半径方向外側に移動して拡径すると、該ビードロック体24はビードコア22をゴムチェーファー16、ワイヤーチェーファー19、中間バンド31を介して半径方向内側から把持する。次に、前記スティフナー53を図示していない倒伏部材により軸方向内側に向かって押し倒し、くせ付け部31aが環状溝54内に侵入し易くなるよう該環状溝54の開口幅を広げる。次に、ビードセッター51を半径方向外側に退避させるとともに、先端側に向かって初期位置まで移動させる。
【0037】
この結果、くせ付け部31aは拡開から解放され、弾性復元力により図7(b)に仮想線で示す初期形状まで復帰してビードコア22の周囲に巻き回される。その後、スティフナー53を図示していない起立部材により半径方向外側に向かって起立させ、くせ付け部31aをビードコア22とスティフナー53との双方に密着させる。
次に、図示していないフリー回転するステッチングローラを軸方向に移動させながら、回転している成形ドラム11に押付けてステッチングを行い、ゴムチェーファー16、サイドトレッド17、インナーライナー18、ワイヤーチェーファー19、中間バンド31、クッションゴム21間に残留しているエアを追い出す。
【0038】
次に、ビードロック体24間に位置するインナーライナー18、中間バンド31(カーカスプライ20)内にエアを供給するとともに、これらビードロック体24を互いに接近するよう軸方向内側に同期移動させる。この結果、ビードロック体24間に位置するインナーライナー18、中間バンド31は半径方向外側に向かって断面円弧状に膨出変形する。このとき、ビードロック体24より軸方向外側に位置しているサイドトレッド17等は、ビードロック体24より軸方向外側の成形ドラム11に設置された図示していない折返しブラダによりビードコア22の回りに折り返される。
【0039】
前述のような作業を行っているとき、バンド成形ドラム45においては、搬送コンベア47から複数枚のベルトプライが供給され次々に巻き付けられることでベルト層48が成形された後、該ベルト層48の外側にトレッド49が供給されて巻き付けられ、円筒状をしたベルト・トレッドバンド50が成形されている。そして、このようなベルト・トレッドバンド50は図示していない搬送手段によりバンド成形ドラム45から前述の円弧状まで膨出変形したインナーライナー18、中間バンド31の半径方向外側に搬送されて貼付けられ、図8に示すようなグリーンタイヤ58が成形される。
【0040】
前述したバンド成形ドラム45、搬送コンベア47、ビードセッター51、ステッチングローラ、倒伏部材、起立部材、折返しブラダは全体として、くせ付けされた中間バンド31を含むグリーンタイヤ58を成形する成形手段60を構成する。なお、前述したステッチング作業後、中間バンド31等を成形ドラム11から取り出して図示していないシェーピングドラムに受渡し、該シェーピングドラム上で前述と同様の作業を行いグリーンタイヤを成形するようにしてもよい。この場合、成形ドラム11における作業時間がシェーピングドラムにおける作業時間より長くなることがあるが、この場合には1台のシェーピングドラムに対し2台の成形ドラムを設置して対応すればよい。そして、前述のようにして成形されたグリーンタイヤ58は成形ドラム11から取り外された後、加硫金型内に搬入され、該加硫金型により加硫されて加硫済タイヤとなる。
【0041】
なお、前述の実施形態においては、中間バンド31をカーカスプライ20から構成したが、この発明においては、中間バンドをベルトプライから構成してもよい。この場合には、バンド成形ドラム、成形スリーブの周囲に帯状部材としての幅広ベルトプライを巻付けて中間バンドを成形した後、該中間バンドの半径方向外側に幅狭ベルトプライを巻付け、その後、中間バンドの軸方向両端部に対し、1本の環状溝が形成された前記成形スリーブおよび1個の円板状部材を用いてくせ付けを施す。その後、起立したくせ付け部を軸方向内側に折り返して幅狭ベルトプライの幅方向両端部を包み込むことで、フォールドタイプのベルト層を成形することができる。このように成形スリーブには1本以上の環状溝が形成されていればよいのである。また、この発明においては、中間バンドの軸方向片端部のみにくせ付けを施すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、軸方向端部を折曲げた円筒状の中間バンドを一部に用いてタイヤを製造する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
11…成形ドラム 15…供給手段
20…帯状部材 20a…スチールコード
26…移動手段 30…成形スリーブ
31…中間バンド 32…環状溝
39…円板状部材 42…駆動機構
60…成形手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な成形ドラムの軸方向端部外側に、外周に1本以上の周方向に延びる環状溝が形成された円筒状を呈する成形スリーブを嵌合させる工程と、幅方向に延びるスチールコードが埋設された帯状部材を回転する成形ドラムの周囲に供給して巻付け、軸方向端部が成形スリーブの外側に位置している円筒状の中間バンドを成形する工程と、前記中間バンドの環状溝に重なっている部位を円板状部材によって該環状溝内に周方向に順次押し込むことで、該中間バンドを環状溝と重なる位置において全周に亘り折曲げてくせ付けする工程と、くせ付けされた中間バンドを含むグリーンタイヤを成形する工程とを備えたことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記中間バンドに対しくせ付けする際、成形ドラム、成形スリーブおよび中間バンドを該成形ドラムの軸線を中心として一体回転させる一方、円板状部材を周方向位置が不動の一定位置に静置させるようにした請求項1記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記中間バンドに対しくせ付けする際、円板状部材に対して駆動機構から回転駆動力を付与し、該円板状部材を自身の軸線回りに強制回転させるようにした請求項2記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記強制回転している円板状部材の外周における周速を中間バンドの周速より大とした請求項3記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記中間バンドに対しくせ付けする際、成形ドラム、成形スリーブおよび中間バンドを1回転を超えて回転させ、くせ付けの開始部に対し再度くせ付けを施すようにした請求項2〜4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
回転可能な成形ドラムと、外周に1本以上の周方向に延びる環状溝が形成された円筒状を呈する成形スリーブと、該成形スリーブを移動させて成形ドラムの軸方向端部外側に嵌合させる移動手段と、幅方向に延びるスチールコードが埋設された帯状部材を回転する成形ドラムの周囲に供給して巻付け、軸方向端部が成形スリーブの外側に位置している円筒状の中間バンドを成形する供給手段と、前記中間バンドの環状溝に重なっている部位を該環状溝内に周方向に順次押し込むことで、該中間バンドを環状溝と重なる位置において全周に亘り折曲げてくせ付けする円板状部材と、くせ付けされた中間バンドを含むグリーンタイヤを成形する成形手段とを備えたことを特徴とするタイヤの製造装置。
【請求項7】
前記成形スリーブおよび円板状部材を成形ドラムの軸方向両側にそれぞれ設置し、これら成形スリーブおよび円板状部材により中間バンドの軸方向両端部を同時にくせ付けするようにした請求項6記載のタイヤの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20436(P2012−20436A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158677(P2010−158677)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】