タイヤモールドの製造方法
【課題】成形面の真円度不良を改善したタイヤモールドを早期かつ低コストで製造できるタイヤモールドの製造方法を提供する。
【解決手段】順に、マスター型の表面形状を転写したゴム型6、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型、石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するにあたり、ゴム型6を製造した際のバックアップ型2aとは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型2b、2cを製造して複数種類のバックアップ型2a、2b、2cを用意しておき、石膏鋳型を製造する際に、用意したバックアップ型2a、2b、2cの中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させて、このゴム型6の表面に石膏を流し込んでゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型を製造する。
【解決手段】順に、マスター型の表面形状を転写したゴム型6、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型、石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するにあたり、ゴム型6を製造した際のバックアップ型2aとは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型2b、2cを製造して複数種類のバックアップ型2a、2b、2cを用意しておき、石膏鋳型を製造する際に、用意したバックアップ型2a、2b、2cの中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させて、このゴム型6の表面に石膏を流し込んでゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモールドの製造方法に関し、さらに詳しくは、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、その真円度不良を改善したタイヤモールドを早期かつ低コストで製造できるタイヤモールドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤモールドの製造方法は、種々提案されており(例えば、特許文献1参照)、その製造手順を以下に例示する。まず、図5のようなマスター型1を作製し、次いで、図6に例示するようにマスター型1を型枠9aの中に配置して、マスター型1とバックアップ型2aとの間にゴム材料Rを充填することにより、マスター型1の表面形状を転写したゴム型6を製造する。次いで、図7に例示するようにバックアップ型2aに裏打ちされたゴム型6を配置した型枠9bの中に石膏Pを流し込むことにより、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7を製造する。
【0003】
次いで、図8に例示するように石膏鋳型7と一体化したゴム型6の裏面からバックアップ型2aを取り外し、次いで、図9に例示するように石膏鋳型7からゴム型6を引き剥がす。次いで、図10に例示するように型枠9cの中に配置した石膏鋳型7の表面に溶融金属Mを流し込む。これにより、石膏鋳型7の表面形状を転写した図11に例示するようなタイヤモールド8が製造される。このタイヤモールド8の凹状表面がタイヤの成形面8aになる。
【0004】
ところで、同じ成形面8aを有するタイヤモールド8を製造する場合であっても、タイヤモールド8を取り付ける加硫機の大きさ等に応じて、図12(a)、(b)に例示するようにモールド厚さt1、t2等を変えることがある。このような場合、鋳込む溶融金属Mのボリュームが変わる等の影響により、溶融金属Mが冷却する際の収縮具合が変化して、製造されたタイヤモールド8の成形面8aの真円度が所定の規格を外れる(以下、真円度不良という)場合がある。タイヤモールド8の成形面8aに真円度不良が生じると、このタイヤモールド8により製造されるタイヤのユニフォミティ等が低下するという問題が生じる。
【0005】
そのため、タイヤモールド8の成形面8aの真円度不良が生じた場合は、新たにマスター型1を作成して、順次、ゴム型6、石膏型7、タイヤモールド8を製造しなければならず、多大な時間とコストが必要になるという問題があった。
【特許文献1】特開2006−116887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、その真円度不良を改善したタイヤモールドを早期かつ低コストで製造できるタイヤモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤモールドの製造方法は、バックアップ型の凹状表面とマスター型の凸状表面とが対向するように、バックアップ型およびマスター型を配置し、この対向した凹状表面と凸状表面との間の空間にゴム材料を充填してマスター型の表面形状を転写したゴム型を製造し、次いでゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、次いで石膏鋳型の表面に溶融金属を流し込んで石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するタイヤモールドの製造方法であって、前記ゴム型を製造した際のバックアップ型とは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して複数種類のバックアップ型を用意しておき、前記石膏鋳型を製造する際に、用意した複数種類のバックアップ型の中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させて、このゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記複数種類のバックアップ型の凹状表面に位置決め用の溝を形成しておき、この溝にゴム型の裏面に形成した突状部を嵌合させることもできる。また、前記バックアップ型の凹状表面に吸引孔を形成し、この吸引孔を通じて吸引することにより、バックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶融金属が固化する際の収縮具合に変化が生じて、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、予め用意した凹状表面の曲率半径が異なる複数種類のバックアップ型の中から、溶融金属の収縮具合に応じた適切な1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させることにより、ゴム型の表面が、密着させたバックアップ型の凹状表面の曲率半径に応じた形状になる。これに伴い、ゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、この石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造することにより、タイヤモールドの成形面(表面)の真円度を所定の規格内にすることができる。
【0010】
そのため、煩雑で多大な時間を要するマスター型を新たに作製する必要がなく、短時間および低コストで、真円度不良を改善したタイヤモールドを製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のタイヤモールドの製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
マスター型1から順次、ゴム型6、石膏鋳型7、タイヤモールド8を製造する基本的な手順は既述したとおりである。
【0013】
まず、図5に例示するように、製造するタイヤと同じ表面形状を有するマスター型1を作製する。この実施形態では、マスター型1は、製造するタイヤを周方向に複数分割した分割体を形成するように作製されている。マスター型1の材質は、例えば、樹脂等である。
【0014】
次いで、図6に例示するように、マスター型1をその凸状表面を上側にして型枠9aの中に配置する。型枠9aの上方には、凹状表面を有するバックアップ型2aを配置して、バックアップ型2aの凹状表面とマスター型1の凸状表面とを対向させた状態にする。バックアップ型2aの材質は、例えば、樹脂等である。
【0015】
このように対向したバックアップ型2aの凹状表面と、マスター型1の凸状表面との間の空間にゴム材料Rを充填する。充填したゴム材料Rが固化すると、マスター型1の表面形状を転写したゴム型6が製造されることになる。
【0016】
次いで、図7に例示するように、ゴム型6の裏面にバックアップ型6の凹状表面を密着させた状態にして、ゴム型6をその凹状表面を上側にして型枠9bの中に配置する。そして、ゴム型6の表面に石膏Pを流し込む。流し込んだ石膏Pが固化すると、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7が製造されることになる。
【0017】
次いで、図8に例示するように、石膏鋳型7と一体化したゴム型6の裏面からバックアップ型2aを取り外す。次いで、図9に例示するように、石膏鋳型7からゴム型6を変形させつつ引き剥がす。
【0018】
次いで、図10に例示するように、石膏鋳型7をその凸状表面を上側にして型枠9cの中に配置する。そして、石膏鋳型7の凸状表面に、例えば、アルミニウム材料等の溶融金属Mを流し込む。流し込んだ溶融金属Mが固化した後、石膏鋳型7を除去すると、図11に例示するように、石膏鋳型7の表面形状を転写したタイヤモールド8が製造される。このタイヤモールド8の凹状表面がタイヤの成形面8aになる。
【0019】
既述したように、タイヤモールド8は、取り付けるタイヤ加硫装置の大きさや仕様に応じて、図12(a)、(b)に例示するように、モールド厚さt1、t2等を異ならせることがある。このようにモールド厚さt1、t2等に相違があると、図10に例示した工程で流し込んだ溶融金属Mが固化する際の収縮具合に変化が生じる場合がある。
【0020】
例えば、図12(a)、(b)に例示するタイヤモールド8では、モールド厚さt1、t2が異なるため、同じバックアップ型2a、ゴム型6を用いて製造しても、それぞれの成形面8aの曲率半径Ra、Rbに違いが生じている。例えば、図12(a)のタイヤモールド8の曲率半径Raの成形面8aは、所定の規格を満足する真円度になっており、図12(b)のタイヤモールド8の曲率半径Rbの成形面8aは、真円度不良になっている。
【0021】
そこで、本発明では、図6で例示したゴム型6を製造する工程で用いたバックアップ型2aとは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して、図1(a)、(b)、(c)に例示するように複数種類のバックアップ型2a、2b、2cを予め用意しておく。図1(a)のバックアップ型2aは図6で例示したものであり、曲率半径がR1の凹状表面を有している。図1(b)のバックアップ型2bは曲率半径がR2の凹状表面を有し、図1(c)のバックアップ型2cは曲率半径がR3の凹状表面を有している。この曲率半径R1、R2、R3は、モールド厚さの違いにより生じる溶融金属Mが固化する際の収縮具合等によって適宜設定しておく。また、予め用意するバックアップ型2a、2b、2cの種類は3種類に限らず、適当な数の種類とする。
【0022】
そして、石膏鋳型7を製造する際には、用意した複数種類のバックアップ型2a、2b、2cの中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させる。ゴム型6の表面は、密着させるバックアップ型2a、2b、2cの凹状表面の曲率半径R1、R2、R3に応じて、その曲率半径が変化する。
【0023】
そのため、溶融金属Mの収縮具合に応じた適切な1つのバックアップ型を選択して、そのバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させて、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7を製造し、次いで、この石膏鋳型7の表面形状を転写したタイヤモールド8を製造することにより、タイヤモールド8の成形面8aの真円度を所定の規格内にすることができる。
【0024】
したがって、製造するタイヤモールド8の厚さ等の違いによって、成形面8aに真円度不良が生じる場合であっても、煩雑で多大な時間を要するマスター型1を新たに作製する必要がなく、短時間および低コストで、真円度不良を改善した所定の真円度の成形面8aを有するタイヤモールド8を製造することが可能になる。これにより、製造されるタイヤのユニフォミティを所定水準に保つことができる。
【0025】
予め用意する複数種類のバックアップ型は、図2に例示する単純な凹状表面3を有するバックアップ型2aだけでなく、図3に例示するように、凹状表面3に位置決め用の溝4を形成したバックアップ型2dにすることもできる。この場合、ゴム型6の裏面には突状部が形成され、その突状部が溝4に嵌合する。このようにバックアップ型2dの溝4とゴム型6の突状部とを嵌合させることにより、バックアップ型2dの凹状表面3の所定の位置で、バックアップ型2dの凹状表面3の曲率半径R1に一段と沿うように、ゴム型6の裏面を密着させることができる。
【0026】
また、図4に例示するように、凹状表面3に吸引孔5を形成したバックアップ型2eにすることもできる。そして、この吸引孔5を通じて吸引ポンプ等で空気を吸引することにより、バックアップ型2eの凹状表面3にゴム型6の裏面を密着させるようにすることもできる。これにより、バックアップ型2eの凹状表面3の曲率半径R1に一段と沿うように、ゴム型6の裏面を密着させることができる。
【0027】
尚、バックアップ型の凹状表面3には、図3に例示した位置決め用の溝4を形成するとともに、図4に例示した吸引孔5を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】バックアップ型の凹状表面に、ゴム型の裏面を密着させている状態を例示する断面図である。
【図2】図1のバックアップ型を例示する斜視図である。
【図3】図2のバックアップ型の変形例を示す斜視図である。
【図4】図2のバックアップ型の別の変形例を示す斜視図である。
【図5】マスター型を例示する斜視図である。
【図6】ゴム型を製造する工程を例示する断面図である。
【図7】石膏鋳型を製造する工程を例示する断面図である。
【図8】ゴム型からバックアップ型を取り外す工程を例示ずる断面図である。
【図9】石膏鋳型からゴム型を取り外す工程を例示ずる断面図である。
【図10】溶融金属を石膏鋳型の表面に流し込んでタイヤモールドを製造する工程を例示するである。
【図11】製造されたタイヤモールドを例示する断面図である。
【図12】厚さの異なるタイヤモールドを例示する断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 マスター型
2a、2b、2c、2d、2e バックアップ型
3 凹状表面
4 溝
5 吸引孔
6 ゴム型
7 石膏鋳型
8 タイヤモールド
8a 成形面
9a、9b、9c 型枠
M 溶融金属
P 石膏
R ゴム材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモールドの製造方法に関し、さらに詳しくは、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、その真円度不良を改善したタイヤモールドを早期かつ低コストで製造できるタイヤモールドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤモールドの製造方法は、種々提案されており(例えば、特許文献1参照)、その製造手順を以下に例示する。まず、図5のようなマスター型1を作製し、次いで、図6に例示するようにマスター型1を型枠9aの中に配置して、マスター型1とバックアップ型2aとの間にゴム材料Rを充填することにより、マスター型1の表面形状を転写したゴム型6を製造する。次いで、図7に例示するようにバックアップ型2aに裏打ちされたゴム型6を配置した型枠9bの中に石膏Pを流し込むことにより、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7を製造する。
【0003】
次いで、図8に例示するように石膏鋳型7と一体化したゴム型6の裏面からバックアップ型2aを取り外し、次いで、図9に例示するように石膏鋳型7からゴム型6を引き剥がす。次いで、図10に例示するように型枠9cの中に配置した石膏鋳型7の表面に溶融金属Mを流し込む。これにより、石膏鋳型7の表面形状を転写した図11に例示するようなタイヤモールド8が製造される。このタイヤモールド8の凹状表面がタイヤの成形面8aになる。
【0004】
ところで、同じ成形面8aを有するタイヤモールド8を製造する場合であっても、タイヤモールド8を取り付ける加硫機の大きさ等に応じて、図12(a)、(b)に例示するようにモールド厚さt1、t2等を変えることがある。このような場合、鋳込む溶融金属Mのボリュームが変わる等の影響により、溶融金属Mが冷却する際の収縮具合が変化して、製造されたタイヤモールド8の成形面8aの真円度が所定の規格を外れる(以下、真円度不良という)場合がある。タイヤモールド8の成形面8aに真円度不良が生じると、このタイヤモールド8により製造されるタイヤのユニフォミティ等が低下するという問題が生じる。
【0005】
そのため、タイヤモールド8の成形面8aの真円度不良が生じた場合は、新たにマスター型1を作成して、順次、ゴム型6、石膏型7、タイヤモールド8を製造しなければならず、多大な時間とコストが必要になるという問題があった。
【特許文献1】特開2006−116887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、その真円度不良を改善したタイヤモールドを早期かつ低コストで製造できるタイヤモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤモールドの製造方法は、バックアップ型の凹状表面とマスター型の凸状表面とが対向するように、バックアップ型およびマスター型を配置し、この対向した凹状表面と凸状表面との間の空間にゴム材料を充填してマスター型の表面形状を転写したゴム型を製造し、次いでゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、次いで石膏鋳型の表面に溶融金属を流し込んで石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するタイヤモールドの製造方法であって、前記ゴム型を製造した際のバックアップ型とは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して複数種類のバックアップ型を用意しておき、前記石膏鋳型を製造する際に、用意した複数種類のバックアップ型の中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させて、このゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記複数種類のバックアップ型の凹状表面に位置決め用の溝を形成しておき、この溝にゴム型の裏面に形成した突状部を嵌合させることもできる。また、前記バックアップ型の凹状表面に吸引孔を形成し、この吸引孔を通じて吸引することにより、バックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶融金属が固化する際の収縮具合に変化が生じて、タイヤモールドの成形面に真円度不良が生じた場合に、予め用意した凹状表面の曲率半径が異なる複数種類のバックアップ型の中から、溶融金属の収縮具合に応じた適切な1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させることにより、ゴム型の表面が、密着させたバックアップ型の凹状表面の曲率半径に応じた形状になる。これに伴い、ゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、この石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造することにより、タイヤモールドの成形面(表面)の真円度を所定の規格内にすることができる。
【0010】
そのため、煩雑で多大な時間を要するマスター型を新たに作製する必要がなく、短時間および低コストで、真円度不良を改善したタイヤモールドを製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のタイヤモールドの製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
マスター型1から順次、ゴム型6、石膏鋳型7、タイヤモールド8を製造する基本的な手順は既述したとおりである。
【0013】
まず、図5に例示するように、製造するタイヤと同じ表面形状を有するマスター型1を作製する。この実施形態では、マスター型1は、製造するタイヤを周方向に複数分割した分割体を形成するように作製されている。マスター型1の材質は、例えば、樹脂等である。
【0014】
次いで、図6に例示するように、マスター型1をその凸状表面を上側にして型枠9aの中に配置する。型枠9aの上方には、凹状表面を有するバックアップ型2aを配置して、バックアップ型2aの凹状表面とマスター型1の凸状表面とを対向させた状態にする。バックアップ型2aの材質は、例えば、樹脂等である。
【0015】
このように対向したバックアップ型2aの凹状表面と、マスター型1の凸状表面との間の空間にゴム材料Rを充填する。充填したゴム材料Rが固化すると、マスター型1の表面形状を転写したゴム型6が製造されることになる。
【0016】
次いで、図7に例示するように、ゴム型6の裏面にバックアップ型6の凹状表面を密着させた状態にして、ゴム型6をその凹状表面を上側にして型枠9bの中に配置する。そして、ゴム型6の表面に石膏Pを流し込む。流し込んだ石膏Pが固化すると、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7が製造されることになる。
【0017】
次いで、図8に例示するように、石膏鋳型7と一体化したゴム型6の裏面からバックアップ型2aを取り外す。次いで、図9に例示するように、石膏鋳型7からゴム型6を変形させつつ引き剥がす。
【0018】
次いで、図10に例示するように、石膏鋳型7をその凸状表面を上側にして型枠9cの中に配置する。そして、石膏鋳型7の凸状表面に、例えば、アルミニウム材料等の溶融金属Mを流し込む。流し込んだ溶融金属Mが固化した後、石膏鋳型7を除去すると、図11に例示するように、石膏鋳型7の表面形状を転写したタイヤモールド8が製造される。このタイヤモールド8の凹状表面がタイヤの成形面8aになる。
【0019】
既述したように、タイヤモールド8は、取り付けるタイヤ加硫装置の大きさや仕様に応じて、図12(a)、(b)に例示するように、モールド厚さt1、t2等を異ならせることがある。このようにモールド厚さt1、t2等に相違があると、図10に例示した工程で流し込んだ溶融金属Mが固化する際の収縮具合に変化が生じる場合がある。
【0020】
例えば、図12(a)、(b)に例示するタイヤモールド8では、モールド厚さt1、t2が異なるため、同じバックアップ型2a、ゴム型6を用いて製造しても、それぞれの成形面8aの曲率半径Ra、Rbに違いが生じている。例えば、図12(a)のタイヤモールド8の曲率半径Raの成形面8aは、所定の規格を満足する真円度になっており、図12(b)のタイヤモールド8の曲率半径Rbの成形面8aは、真円度不良になっている。
【0021】
そこで、本発明では、図6で例示したゴム型6を製造する工程で用いたバックアップ型2aとは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して、図1(a)、(b)、(c)に例示するように複数種類のバックアップ型2a、2b、2cを予め用意しておく。図1(a)のバックアップ型2aは図6で例示したものであり、曲率半径がR1の凹状表面を有している。図1(b)のバックアップ型2bは曲率半径がR2の凹状表面を有し、図1(c)のバックアップ型2cは曲率半径がR3の凹状表面を有している。この曲率半径R1、R2、R3は、モールド厚さの違いにより生じる溶融金属Mが固化する際の収縮具合等によって適宜設定しておく。また、予め用意するバックアップ型2a、2b、2cの種類は3種類に限らず、適当な数の種類とする。
【0022】
そして、石膏鋳型7を製造する際には、用意した複数種類のバックアップ型2a、2b、2cの中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させる。ゴム型6の表面は、密着させるバックアップ型2a、2b、2cの凹状表面の曲率半径R1、R2、R3に応じて、その曲率半径が変化する。
【0023】
そのため、溶融金属Mの収縮具合に応じた適切な1つのバックアップ型を選択して、そのバックアップ型の凹状表面にゴム型6の裏面を密着させて、ゴム型6の表面形状を転写した石膏鋳型7を製造し、次いで、この石膏鋳型7の表面形状を転写したタイヤモールド8を製造することにより、タイヤモールド8の成形面8aの真円度を所定の規格内にすることができる。
【0024】
したがって、製造するタイヤモールド8の厚さ等の違いによって、成形面8aに真円度不良が生じる場合であっても、煩雑で多大な時間を要するマスター型1を新たに作製する必要がなく、短時間および低コストで、真円度不良を改善した所定の真円度の成形面8aを有するタイヤモールド8を製造することが可能になる。これにより、製造されるタイヤのユニフォミティを所定水準に保つことができる。
【0025】
予め用意する複数種類のバックアップ型は、図2に例示する単純な凹状表面3を有するバックアップ型2aだけでなく、図3に例示するように、凹状表面3に位置決め用の溝4を形成したバックアップ型2dにすることもできる。この場合、ゴム型6の裏面には突状部が形成され、その突状部が溝4に嵌合する。このようにバックアップ型2dの溝4とゴム型6の突状部とを嵌合させることにより、バックアップ型2dの凹状表面3の所定の位置で、バックアップ型2dの凹状表面3の曲率半径R1に一段と沿うように、ゴム型6の裏面を密着させることができる。
【0026】
また、図4に例示するように、凹状表面3に吸引孔5を形成したバックアップ型2eにすることもできる。そして、この吸引孔5を通じて吸引ポンプ等で空気を吸引することにより、バックアップ型2eの凹状表面3にゴム型6の裏面を密着させるようにすることもできる。これにより、バックアップ型2eの凹状表面3の曲率半径R1に一段と沿うように、ゴム型6の裏面を密着させることができる。
【0027】
尚、バックアップ型の凹状表面3には、図3に例示した位置決め用の溝4を形成するとともに、図4に例示した吸引孔5を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】バックアップ型の凹状表面に、ゴム型の裏面を密着させている状態を例示する断面図である。
【図2】図1のバックアップ型を例示する斜視図である。
【図3】図2のバックアップ型の変形例を示す斜視図である。
【図4】図2のバックアップ型の別の変形例を示す斜視図である。
【図5】マスター型を例示する斜視図である。
【図6】ゴム型を製造する工程を例示する断面図である。
【図7】石膏鋳型を製造する工程を例示する断面図である。
【図8】ゴム型からバックアップ型を取り外す工程を例示ずる断面図である。
【図9】石膏鋳型からゴム型を取り外す工程を例示ずる断面図である。
【図10】溶融金属を石膏鋳型の表面に流し込んでタイヤモールドを製造する工程を例示するである。
【図11】製造されたタイヤモールドを例示する断面図である。
【図12】厚さの異なるタイヤモールドを例示する断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 マスター型
2a、2b、2c、2d、2e バックアップ型
3 凹状表面
4 溝
5 吸引孔
6 ゴム型
7 石膏鋳型
8 タイヤモールド
8a 成形面
9a、9b、9c 型枠
M 溶融金属
P 石膏
R ゴム材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップ型の凹状表面とマスター型の凸状表面とが対向するように、バックアップ型およびマスター型を配置し、この対向した凹状表面と凸状表面との間の空間にゴム材料を充填してマスター型の表面形状を転写したゴム型を製造し、次いでゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、次いで石膏鋳型の表面に溶融金属を流し込んで石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するタイヤモールドの製造方法であって、前記ゴム型を製造した際のバックアップ型とは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して複数種類のバックアップ型を用意しておき、前記石膏鋳型を製造する際に、用意した複数種類のバックアップ型の中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させて、このゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造するようにしたタイヤモールドの製造方法。
【請求項2】
前記複数種類のバックアップ型の凹状表面に位置決め用の溝を形成しておき、この溝にゴム型の裏面に形成した突状部を嵌合させるようにした請求項1に記載のタイヤモールドの製造方法。
【請求項3】
前記バックアップ型の凹状表面に吸引孔を形成し、この吸引孔を通じて吸引することにより、バックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させるようにした請求項1または2に記載のタイヤモールドの製造方法。
【請求項1】
バックアップ型の凹状表面とマスター型の凸状表面とが対向するように、バックアップ型およびマスター型を配置し、この対向した凹状表面と凸状表面との間の空間にゴム材料を充填してマスター型の表面形状を転写したゴム型を製造し、次いでゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造し、次いで石膏鋳型の表面に溶融金属を流し込んで石膏鋳型の表面形状を転写したタイヤモールドを製造するタイヤモールドの製造方法であって、前記ゴム型を製造した際のバックアップ型とは凹状表面の曲率半径が異なる別のバックアップ型を製造して複数種類のバックアップ型を用意しておき、前記石膏鋳型を製造する際に、用意した複数種類のバックアップ型の中から1つのバックアップ型を選択し、この選択したバックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させて、このゴム型の表面に石膏を流し込んでゴム型の表面形状を転写した石膏鋳型を製造するようにしたタイヤモールドの製造方法。
【請求項2】
前記複数種類のバックアップ型の凹状表面に位置決め用の溝を形成しておき、この溝にゴム型の裏面に形成した突状部を嵌合させるようにした請求項1に記載のタイヤモールドの製造方法。
【請求項3】
前記バックアップ型の凹状表面に吸引孔を形成し、この吸引孔を通じて吸引することにより、バックアップ型の凹状表面にゴム型の裏面を密着させるようにした請求項1または2に記載のタイヤモールドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−248376(P2009−248376A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96362(P2008−96362)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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