タイヤ加硫方法
【課題】加硫時間を短縮し、生産性を向上することが可能なタイヤ加硫方法を提供する。
【解決手段】グリーンタイヤ１をタイヤ搬入装置２により把持してタイヤ加硫機３に搬入する際に、タイヤ加硫機３のブラダー５と当接するグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱する。
【解決手段】グリーンタイヤ１をタイヤ搬入装置２により把持してタイヤ加硫機３に搬入する際に、タイヤ加硫機３のブラダー５と当接するグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、タイヤの加硫方法に関し、更に詳しくは、加硫時間の短縮により生産性を高めることができるタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、タイヤの加硫は、グリーンタイヤをローダー（タイヤ搬入装置）で把持してタイヤ加硫機に搬入し、該搬入したグリーンタイヤを加圧媒体によりインフレートしたブラダーにより保持してタイヤ加硫機の金型にセットした後、加熱加圧媒体によりインフレートしたブラダーをグリーンタイヤの内面に押し当て、タイヤ内側からもグリーンタイヤを加熱しながら行うようにしている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
ところで、近年、市場での競争の激化に伴い、タイヤの生産性の向上が強く求められている。タイヤの加硫工程においても、加硫時間の短縮が求められており、その提案が強く望まれていた。
【特許文献１】特開２００３−２８５３３１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、加硫時間を短縮し、生産性を向上することが可能なタイヤ加硫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記目的を達成する本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤをタイヤ搬入装置により把持してタイヤ加硫機に搬入する際に、該タイヤ加硫機のブラダーと当接するグリーンタイヤの内面を予熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【０００６】
上述した本発明によれば、ブラダーが接触するグリーンタイヤの内面を予め加熱するようにしたので、グリーンタイヤとの接触による高温のブラダーの温度低下を抑え、加硫開始時にブラダーの温度を従来より高く維持することができる。そのため、加硫初期においてグリーンタイヤの温度上昇を早めることができるので、タイヤ加硫機における加硫時間を短縮し、生産性を向上することができる。
【０００７】
また、グリーンタイヤの搬入工程と並行してグリーンタイヤの内面を予熱するので、グリーンタイヤの予熱工程を加えても、搬入開始から加硫終了までのトータルの加硫時間の増加を招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図１は本発明のタイヤ加硫方法の一実施形態の要部を示し、１はグリーンタイヤ、２はグリーンタイヤ１を把持してタイヤ加硫機３に搬入するローダー（タイヤ搬入装置）、４はタイヤ加硫機３の金型、５はブラダー、６はグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するための予熱手段である。
【０００９】
本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤ１をローダー２の把持アーム７により把持し、把持したグリーンタイヤ１をローダー２によりタイヤ加硫機３まで搬送し、タイヤ加硫機３に搬入する。その搬送中に、予熱手段６の吹き付け口６ａから温風をグリーンタイヤ１の内面１ａに吹き付け、グリーンタイヤ１の内面１ａを全面にわたって予熱する。
【００１０】
ここでは、吹き付け口６ａから温風をグリーンタイヤ１の内面１ａに吹き付けることにより、グリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するようにしたが、それに代えて、マイクロ波や赤外線などを用いてグリーンタイヤ１の内面１ａ全体を予熱するようにしてもよい。
【００１１】
以下、従来と同様にして、内面１ａを予熱したグリーンタイヤ１を圧力媒体によりインフレートしたブラダー５により保持して、タイヤ加硫機３の金型４にセットする。次いで、図１（ｂ）に示すように、加熱加圧媒体によりインフレートしたブラダー５をグリーンタイヤ１の内面１ａに押し当てて、グリーンタイヤ１をブラダー５内に供給された加熱加圧媒体及び金型４側から供給される熱によりタイヤ内側及び外側から加熱することにより加硫する。
【００１２】
本発明者は、従来のブラダーを使用するタイヤの加硫方法において、加硫時間の短縮の可能性について鋭意検討したところ、以下のことを知見した。
【００１３】
一般に、タイヤの加硫は、予め成形しておいたグリーンタイヤをローダーで把持し、搬送ラインを搬送してタイヤ加硫機に搬入する。搬入されたグリーンタイヤを、加圧媒体によりインフレートしたブラダーにより保持して金型にセットし、ブラダー内に供給された加熱加圧媒体及び金型側から供給される熱によりタイヤ内外から加熱して加硫する。
【００１４】
タイヤの加硫が終了してタイヤ加硫機から加硫済タイヤを排出すると、続いて次のグリーンタイヤをタイヤ加硫機に搬入する。搬入されたグリーンタイヤを再びブラダーが保持して金型にセットするが、その際に既に高い温度になっているブラダーが常温に近い温度のグリーンタイヤに接触するため、ブラダーの温度が大きく低下し、それが加硫初期において、グリーンタイヤの温度上昇を遅らせる一因になっていた。
【００１５】
従って、ブラダーの温度低下を抑えて、加硫開始時にブラダーを高い温度に維持することができれば、グリーンタイヤの温度上昇を早めてタイヤ加硫機での加硫時間を短縮することができるのである。
【００１６】
因みに、ある稼動中のタイヤ加硫機において、ブラダーの表面温度を測定したところ、グリーンタイヤ搬入直前の表面温度が約１５０℃であったのに対して、加硫開始時の表面温度は約７０℃であり、略８０℃も温度が低下していた。
【００１７】
そこで、本発明では、上述したようにグリーンタイヤ１をローダー２により把持してタイヤ加硫機３に搬入する工程において、ブラダー５が接触するグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するようにしたのである。
【００１８】
これにより、グリーンタイヤ１の内面１ａと接触するブラダー５の温度低下を抑制し、加硫開始時にブラダー５の温度を従来より高く維持することができる。そのため、加硫初期においてグリーンタイヤ１の温度上昇を早めて加硫時間を短縮することができるので、生産性の向上が可能になる。
【００１９】
また、グリーンタイヤ１の搬入工程と並行してグリーンタイヤ１の予熱工程を行うので、グリーンタイヤ１の予熱工程の増加に伴う、搬入開始から加硫終了までのトータルの加硫時間の増大を招くこともない。
【００２０】
本発明において、グリーンタイヤ１の内面１ａを予熱する温度としては、加硫時間をより効果的に短縮するため、８０℃以上にするのがよい。予熱温度の上限値としては、１００℃以下にするのがグリーンタイヤ１の形状保持の点から好ましい。
【実施例】
【００２１】
グリーンタイヤの内面を表１のように予熱する本発明のタイヤ加硫方法１，２（実施例１，２）と、グリーンタイヤの内面を予熱しない従来のタイヤ加硫方法（従来例）により、グリーンタイヤ（タイヤサイズ１９５／５０Ｒ１５）を同じタイヤ加硫機を用いて加硫し、加硫開始から終了までの加硫時間を測定したところ、表１に示す結果を得た。
【００２２】
なお、ブラダー内には、加硫開始時に２００℃のスチームを充填し、次いで加硫中期に常温の窒素ガスを充填した。金型温度は、いずれも１８０℃である。表１の加硫時間は、従来のタイヤ加硫方法による加硫時間を１００とする指数値で表している。この指数値が低いほど、加硫時間が短い。
【００２３】
【表１】
【００２４】
表１から、本発明のタイヤ加硫方法は、加硫時間を短縮できるのがわかる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明のタイヤ加硫方法の一実施形態の要部を示し、（ａ）はグリーンタイヤをローダーにより搬入する工程と、グリーンタイヤの内面を予熱する工程を示す説明図、（ｂ）はグリーンタイヤを加硫する工程を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【００２６】
１ グリーンタイヤ
１ａ 内面
２ ローダー（タイヤ搬入装置）
３ タイヤ加硫機
４ 金型
５ ブラダー
６ 予熱手段
【技術分野】
【０００１】
本発明は、タイヤの加硫方法に関し、更に詳しくは、加硫時間の短縮により生産性を高めることができるタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、タイヤの加硫は、グリーンタイヤをローダー（タイヤ搬入装置）で把持してタイヤ加硫機に搬入し、該搬入したグリーンタイヤを加圧媒体によりインフレートしたブラダーにより保持してタイヤ加硫機の金型にセットした後、加熱加圧媒体によりインフレートしたブラダーをグリーンタイヤの内面に押し当て、タイヤ内側からもグリーンタイヤを加熱しながら行うようにしている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
ところで、近年、市場での競争の激化に伴い、タイヤの生産性の向上が強く求められている。タイヤの加硫工程においても、加硫時間の短縮が求められており、その提案が強く望まれていた。
【特許文献１】特開２００３−２８５３３１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、加硫時間を短縮し、生産性を向上することが可能なタイヤ加硫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記目的を達成する本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤをタイヤ搬入装置により把持してタイヤ加硫機に搬入する際に、該タイヤ加硫機のブラダーと当接するグリーンタイヤの内面を予熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【０００６】
上述した本発明によれば、ブラダーが接触するグリーンタイヤの内面を予め加熱するようにしたので、グリーンタイヤとの接触による高温のブラダーの温度低下を抑え、加硫開始時にブラダーの温度を従来より高く維持することができる。そのため、加硫初期においてグリーンタイヤの温度上昇を早めることができるので、タイヤ加硫機における加硫時間を短縮し、生産性を向上することができる。
【０００７】
また、グリーンタイヤの搬入工程と並行してグリーンタイヤの内面を予熱するので、グリーンタイヤの予熱工程を加えても、搬入開始から加硫終了までのトータルの加硫時間の増加を招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図１は本発明のタイヤ加硫方法の一実施形態の要部を示し、１はグリーンタイヤ、２はグリーンタイヤ１を把持してタイヤ加硫機３に搬入するローダー（タイヤ搬入装置）、４はタイヤ加硫機３の金型、５はブラダー、６はグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するための予熱手段である。
【０００９】
本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤ１をローダー２の把持アーム７により把持し、把持したグリーンタイヤ１をローダー２によりタイヤ加硫機３まで搬送し、タイヤ加硫機３に搬入する。その搬送中に、予熱手段６の吹き付け口６ａから温風をグリーンタイヤ１の内面１ａに吹き付け、グリーンタイヤ１の内面１ａを全面にわたって予熱する。
【００１０】
ここでは、吹き付け口６ａから温風をグリーンタイヤ１の内面１ａに吹き付けることにより、グリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するようにしたが、それに代えて、マイクロ波や赤外線などを用いてグリーンタイヤ１の内面１ａ全体を予熱するようにしてもよい。
【００１１】
以下、従来と同様にして、内面１ａを予熱したグリーンタイヤ１を圧力媒体によりインフレートしたブラダー５により保持して、タイヤ加硫機３の金型４にセットする。次いで、図１（ｂ）に示すように、加熱加圧媒体によりインフレートしたブラダー５をグリーンタイヤ１の内面１ａに押し当てて、グリーンタイヤ１をブラダー５内に供給された加熱加圧媒体及び金型４側から供給される熱によりタイヤ内側及び外側から加熱することにより加硫する。
【００１２】
本発明者は、従来のブラダーを使用するタイヤの加硫方法において、加硫時間の短縮の可能性について鋭意検討したところ、以下のことを知見した。
【００１３】
一般に、タイヤの加硫は、予め成形しておいたグリーンタイヤをローダーで把持し、搬送ラインを搬送してタイヤ加硫機に搬入する。搬入されたグリーンタイヤを、加圧媒体によりインフレートしたブラダーにより保持して金型にセットし、ブラダー内に供給された加熱加圧媒体及び金型側から供給される熱によりタイヤ内外から加熱して加硫する。
【００１４】
タイヤの加硫が終了してタイヤ加硫機から加硫済タイヤを排出すると、続いて次のグリーンタイヤをタイヤ加硫機に搬入する。搬入されたグリーンタイヤを再びブラダーが保持して金型にセットするが、その際に既に高い温度になっているブラダーが常温に近い温度のグリーンタイヤに接触するため、ブラダーの温度が大きく低下し、それが加硫初期において、グリーンタイヤの温度上昇を遅らせる一因になっていた。
【００１５】
従って、ブラダーの温度低下を抑えて、加硫開始時にブラダーを高い温度に維持することができれば、グリーンタイヤの温度上昇を早めてタイヤ加硫機での加硫時間を短縮することができるのである。
【００１６】
因みに、ある稼動中のタイヤ加硫機において、ブラダーの表面温度を測定したところ、グリーンタイヤ搬入直前の表面温度が約１５０℃であったのに対して、加硫開始時の表面温度は約７０℃であり、略８０℃も温度が低下していた。
【００１７】
そこで、本発明では、上述したようにグリーンタイヤ１をローダー２により把持してタイヤ加硫機３に搬入する工程において、ブラダー５が接触するグリーンタイヤ１の内面１ａを予熱するようにしたのである。
【００１８】
これにより、グリーンタイヤ１の内面１ａと接触するブラダー５の温度低下を抑制し、加硫開始時にブラダー５の温度を従来より高く維持することができる。そのため、加硫初期においてグリーンタイヤ１の温度上昇を早めて加硫時間を短縮することができるので、生産性の向上が可能になる。
【００１９】
また、グリーンタイヤ１の搬入工程と並行してグリーンタイヤ１の予熱工程を行うので、グリーンタイヤ１の予熱工程の増加に伴う、搬入開始から加硫終了までのトータルの加硫時間の増大を招くこともない。
【００２０】
本発明において、グリーンタイヤ１の内面１ａを予熱する温度としては、加硫時間をより効果的に短縮するため、８０℃以上にするのがよい。予熱温度の上限値としては、１００℃以下にするのがグリーンタイヤ１の形状保持の点から好ましい。
【実施例】
【００２１】
グリーンタイヤの内面を表１のように予熱する本発明のタイヤ加硫方法１，２（実施例１，２）と、グリーンタイヤの内面を予熱しない従来のタイヤ加硫方法（従来例）により、グリーンタイヤ（タイヤサイズ１９５／５０Ｒ１５）を同じタイヤ加硫機を用いて加硫し、加硫開始から終了までの加硫時間を測定したところ、表１に示す結果を得た。
【００２２】
なお、ブラダー内には、加硫開始時に２００℃のスチームを充填し、次いで加硫中期に常温の窒素ガスを充填した。金型温度は、いずれも１８０℃である。表１の加硫時間は、従来のタイヤ加硫方法による加硫時間を１００とする指数値で表している。この指数値が低いほど、加硫時間が短い。
【００２３】
【表１】
【００２４】
表１から、本発明のタイヤ加硫方法は、加硫時間を短縮できるのがわかる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明のタイヤ加硫方法の一実施形態の要部を示し、（ａ）はグリーンタイヤをローダーにより搬入する工程と、グリーンタイヤの内面を予熱する工程を示す説明図、（ｂ）はグリーンタイヤを加硫する工程を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【００２６】
１ グリーンタイヤ
１ａ 内面
２ ローダー（タイヤ搬入装置）
３ タイヤ加硫機
４ 金型
５ ブラダー
６ 予熱手段
【特許請求の範囲】
【請求項１】
グリーンタイヤをタイヤ搬入装置により把持してタイヤ加硫機に搬入する際に、該タイヤ加硫機のブラダーと当接するグリーンタイヤの内面を予熱するタイヤ加硫方法。
【請求項２】
前記グリーンタイヤの内面を８０〜１００℃に予熱する請求項１に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項３】
前記グリーンタイヤの内面をマイクロ波、赤外線、または温風により予熱する請求項１または２に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項１】
グリーンタイヤをタイヤ搬入装置により把持してタイヤ加硫機に搬入する際に、該タイヤ加硫機のブラダーと当接するグリーンタイヤの内面を予熱するタイヤ加硫方法。
【請求項２】
前記グリーンタイヤの内面を８０〜１００℃に予熱する請求項１に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項３】
前記グリーンタイヤの内面をマイクロ波、赤外線、または温風により予熱する請求項１または２に記載のタイヤ加硫方法。
【図１】
【公開番号】特開２００７−７６１５０（Ｐ２００７−７６１５０Ａ）
【公開日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２６６６８１（Ｐ２００５−２６６６８１）
【出願日】平成１７年９月１４日（２００５．９．１４）
【出願人】（０００００６７１４）横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年９月１４日（２００５．９．１４）
【出願人】（０００００６７１４）横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Ｆターム（参考）】
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