説明

タイヤ加硫方法

【課題】ドームタイプ加硫装置を用いて、安定した品質のタイヤを生産性高く製造することが可能なタイヤ加硫方法を提供する。
【解決手段】加硫時における加熱が、ドーム温度を、所定時間、所定のタイヤ表面最高到達温度を2〜15℃上回る温度に保持する第1加熱ステップと、ドーム温度を、所定の加硫量となるまでの時間、タイヤ表面最高到達温度と同じ温度に保持する第2加熱ステップにより行われ、全体の加熱時間をtとし、第1加熱ステップの時間をtとしたとき、tおよびtには、式1の関係があることを特徴とするタイヤ加硫方法。
0.1≦t/t≦0.4 ・・・・・ (式1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤの加硫形成を行うタイヤ加硫方法に関する。特にタイヤの性能を変えることなく生産能力の高いタイヤの加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫装置として、従来、タイヤ加硫用金型とそのタイヤ加硫用金型を包囲するドームとを有するドームタイプ加硫装置が知られている。このドームタイプ加硫装置は、ドームの下方側面部に供給路が設けられ、蒸気等の加熱媒体がこの供給路を介してドーム内に供給されて充満し、タイヤ加硫用金型を外部から加熱して、金型内部の生タイヤを加硫している。
【0003】
そして、このドームタイプ加硫装置においては、タイヤの性能を均一化し、品質向上を図るために、ドーム内の温度を一定に制御して、タイヤ全体を均一に加硫することが必要であり、特許文献1などにそのための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−025331号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年のモータリゼーションの発展に伴って、タイヤの生産能力を向上させることが強く望まれており、生タイヤの加硫に要する時間を短縮させることが検討されている。
【0006】
その手段の1つとして、ドーム内の温度を高くして、加硫時間の短縮を図ることが考えられる。しかし、加硫時間の短縮のために単にドーム内の温度を高くするのでは、加硫時におけるタイヤ表面到達最高温度も高くなってタイヤの性能を変化させる恐れがあり、安定した品質のタイヤを得ることが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、ドームタイプ加硫装置を用いて、従来より短い加硫時間でありながら、安定した品質のタイヤを生産性高く製造することが可能なタイヤ加硫方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤ加硫方法は、
ドームタイプ加硫装置を用いて生タイヤの加硫を行う加硫方法であって、
加硫時における加熱が、
ドーム温度を、所定時間、所定のタイヤ表面最高到達温度を2〜15℃上回る温度に保持する第1加熱ステップと、
その後、ドーム温度を、所定の加硫量となるまでの時間、前記タイヤ表面最高到達温度と同じ温度に保持する第2加熱ステップにより行われ、
全体の加熱時間をtとし、第1加熱ステップの時間をtとしたとき、
前記tおよびtには、式1の関係があることを特徴とする。
0.1≦t/t≦0.4 ・・・・・ (式1)
【0009】
そして、前記のタイヤ加硫方法は、
前記tおよびtには、式2の関係があることを特徴とする。
0.2≦t/t≦0.3 ・・・・・ (式2)
【0010】
また、前記のタイヤ加硫方法は、
前記第1加熱ステップにおけるドーム温度が、所定のタイヤ表面最高到達温度を2〜10℃上回る温度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイヤ表面到達最高温度が従来よりも高くなることを抑制しながら、加硫時における加熱を2段階で行っているため、従来より短い加硫時間で、タイヤの性能を変化させることなく、必要な加硫量を得ることができる。
【0012】
即ち、本発明によれば、
従来より短い加硫時間でありながら、安定した品質のタイヤを生産性高く製造することが可能なタイヤ加硫方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ドームタイプの加硫装置の概要を示す断面図である。
【図2】従来の加硫方式と本発明の加硫方式における加熱時間とドーム温度との関係を模式的に示すグラフである。
【図3】従来の加硫方式と本発明の加硫方式における加熱時間とタイヤ表面温度との関係を模式的に示すグラフである。
【図4】図1の一部を拡大した断面図である。
【図5】本発明の加硫方式と従来の加硫方式によるサーモテストの結果を示す図である。
【図6】本発明の加硫方式と従来の加硫方式によるサーモテストの結果を示す図である。
【図7】本発明の加硫方式と従来の加硫方式によるサーモテストの結果を示す図である。
【図8】本発明の加硫方式と従来の加硫方式によるサーモテストの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0015】
(実施の形態)
1.ドームタイプ加硫装置
はじめにドームタイプ加硫装置について説明する。図1は、ドームタイプの加硫装置の概要を示す断面図である。図1に示すように、本加硫装置はドーム2を有し、ドーム2の内部には金型3が設けられている。また、ドーム2には、高温の蒸気等の加熱媒体をドーム2の上部空間13や下部空間14内に導入する供給路9や金型3の内部に高温・高圧の蒸気等の加熱媒体を導入する中心機構7等が設けられている。
【0016】
そして、生タイヤ6およびブラダー8を金型3にセットし、ドーム2内に所定温度の加熱媒体を導入して金型3を加熱すると共に、ブラダー8内に所定の温度・圧力を有する加熱媒体を供給して生タイヤ6を金型3の内面に押しつけ、所定時間加熱することにより加硫が行われる。
【0017】
2.ドーム温度、タイヤ表面温度、加硫量
次に、本実施の形態における加硫時のドーム温度、タイヤ表面温度、加硫量について説明する。
(1)ドーム温度
まず、ドーム温度について説明する。本実施の形態では、加硫を第1加熱ステップと第2加熱ステップの2つの加熱ステップで行い、ドーム温度を第1加熱ステップと第2加熱ステップの2段階で制御する。
【0018】
以下、図2に基づいてドーム温度の制御について具体的に説明する。図2は従来の加硫方式と本発明の加硫方式における加熱時間、即ち加硫時間とドーム温度との関係を模式的に示すグラフであり、(a)は加硫中はドーム温度を一定温度に保つ従来の加硫方式、即ち一定温度加硫方式、(b)は本実施の形態のドーム温度を2段階で制御する加硫方式、即ち2段階制御加硫方式の場合を示している。
【0019】
(a)の一定温度加硫方式では、ドーム温度を所定のタイヤ表面最高到達温度Tに設定し、加硫開始から所定の加硫量Sが得られる時間tの間、ドーム温度を一定温度Tに保って加熱している。
【0020】
これに対して、(b)の2段階制御加硫方式では加硫開始から時間tの間、ドーム温度を前記所定のタイヤ表面最高到達温度Tに比べて2〜15℃、より好ましくは2〜10℃高い一定温度Tに保って加熱を行う第1加熱ステップと、第1加熱ステップに引き続き加硫量が前記所定の加硫量Sに到達するまでの時間(t−t、t:全加熱時間)の間、ドーム温度を一定温度Tに保って加熱する第2加熱ステップにより加硫を行う。なお、このときt/tは0.1〜0.4、より好ましくは0.2〜0.3に設定される。
【0021】
なお、前記所定のタイヤ表面最高到達温度Tは、従来の一定温度加硫方式において、タイヤの要求性能に応じて最適な加硫状態を得ることができるように、経験的に定められた温度である。
【0022】
(2)タイヤ表面温度
次に、加硫時におけるタイヤ表面温度について説明する。図3は図2に示した一定温度加硫方式と2段階制御加硫方式におけるタイヤ表面温度と加硫時間の関係を模式的に示す図である。図3より、前記の所定の条件の下でドーム温度を2段階に制御する2段階制御加硫方式の場合、一定温度加硫方式に比べてタイヤ表面温度が速く上昇しながらも、タイヤ表面最高到達温度が所定のタイヤ表面最高到達温度Tを上回らないことが分かる。そして、2段階制御加硫方式を採用することにより、加硫に要する時間を短縮できる(t→t)ことが分かる。
【0023】
(3)加硫量
次に、加硫量について説明する。タイヤの加硫速度Kは、以下に示すアーレニウスの反応速度式に従う。
K=Ae−E/RT
但し、A:定数、E:活性化エネルギー(kJ/mol)、R:気体常数(8.318J/mol・deg)、T:タイヤの温度(K)
そして、加硫量はタイヤに加えられた熱量(温度141℃で1分間加硫を行ったときの加硫量=1ECUとする)で表される。
【0024】
上記の式より、加硫速度Kはタイヤの温度Tの関数であり、加硫中のタイヤの温度が高い程加硫速度Kが大きいことが分かる。本発明においては2段階制御加硫方式によりタイヤ表面温度、即ちタイヤの温度Tを速く上昇させるため、加硫速度が速く上昇し、一定時間内における加硫量が多くなる。この結果、加硫量を所定の加硫量に到達させるまでに必要な加熱時間を短縮することができる。
【0025】
(4)タイヤ表面最高到達温度とタイヤの性能
但し、前記のように所定のタイヤ表面最高到達温度Tは最適なタイヤの加硫状態が得られるように定められた温度であり、加硫中にタイヤ表面温度が所定のタイヤ表面最高到達温度Tを上回るとゴムのモジュラスが低下する等のタイヤの性能に影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。本実施の形態では、ドーム温度を前記した所定の条件で2段階制御を行うため、第1加熱ステップにおけるドーム温度を高くしてもタイヤ表面温度が所定のタイヤ表面最高到達温度Tを上回ることがない。このため、従来と変わらない性能のタイヤを提供することができる。
【0026】
3.ドーム温度の制御方法
次に、ドーム内への加熱媒体の導入機構、ドーム温度の2段階制御の方法について加熱媒体として蒸気を用いる場合を例に採って具体的に説明する。
【0027】
(1)ドーム内への蒸気の導入機構
図1に示すように、ドーム2は、ベース1の上部に、金型3を包囲する短管状の下部ドーム2aと中間ドーム2b、及び、金型3の上方位置でこれらを施蓋する略円弧断面の上ドーム2cとを具備し、ベース1と共働して密封状態となるように設けられている。金型3の上プラテン4の上方には上部空間13が設けられ、ドーム2のベース1と金型3の下プラテン5の間および中心機構7の周囲には下部空間14が設けられている。また、金型3と下部・中間ドーム2a、2bとの間には、隙間15が設けられている。
【0028】
図4は図1の一部を拡大した断面図である。図4に示すように、供給路9は、下部ドーム2aの下方側面壁に接続され、開口部16を有しており、上流側は、図外の2つの異なる温度T、Tの蒸気を供給する2つの蒸気発生器、第1ボイラー、第2ボイラーと接続され、切替弁(図示せず)によって適宜何れか一方のボイラーから蒸気が供給される。供給路9から供給された蒸気の一部は供給口17からドーム2内に供給され、衝突板18により上方へ流れ、隙間15を通って上部空間13(図1参照)に供給される。また、供給路9の内部には、枝分かれ供給管10が内装され、この枝分かれ供給管10は、供給路9の開口部16より上流側で開口して分岐部11を構成しており、図1に示すように枝分かれ供給管10の噴出口12は、下部空間14内で開口している。供給路9から供給された蒸気の一部は、枝分かれ供給管10を通って下部空間14に供給される。また、ベース1には、排気装置に連結された配管19が設けられており、第1加熱ステップから第2加熱ステップへ移行する際にドーム内の温度Tの蒸気を配管19から排気した後、温度Tの蒸気を供給することによりドーム内の蒸気を迅速に入替えることができる。
【0029】
(2)ドーム温度の2段階制御
イ.加硫開始時のドーム内への蒸気の供給
図1に示すように、生タイヤ6およびブラダー8を金型3にセットした後、ドーム2内のガスを排気し、その後、供給路9をボイラー1に連結して温度Tの蒸気をドーム2に供給する。
【0030】
ロ.ドーム温度の維持
下部ドーム2aの周壁には、温度センサー21が設けられ、ドーム2内の温度を測定している。上部ドーム2cにはエアートラップ20が設けられており、ドーム2内の上部のガスを排出することで供給路9からドーム2内への蒸気の供給を容易にしている。そして、温度センサー21による温度の測定結果に基づいて所定温度の蒸気を適宜ドーム2内に供給することにより、ドーム温度がTに保たれるように制御する。
【0031】
ハ.ドーム温度の変更
加硫開始後、t後に配管19よりドーム2内の温度Tの蒸気を除去した後、供給路9をボイラー2に連結し、温度Tの蒸気をドームに供給することによりドーム温度をTからTに変更させる。なお、ドーム温度の変更は加硫工程のシーケンスの中に組込まれており、自動で行われる。
【0032】
(3)オーバースピューの抑制効果
一般的に、加硫時に生タイヤ6を金型3の内面に押付ける際に生タイヤ6のゴムが金型3を構成するトレッドリング、上下型等の割型からなるモールドの隙間にはみ出し、オーバースピューが生じる。このオーバースピューは、タイヤ性能に悪影響を与える。本実施の形態では、加硫開始時に従来に比べて高温の蒸気を供給するため、金型3の温度上昇が速く、モールドが早期に熱膨張してモールド間の隙間が小さくなるため、オーバースピューの発生が抑制される。
【実施例】
【0033】
次に、実施例により、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、サイズ11R22.5の重荷重用タイヤをドームタイプ加硫装置を用いて2段階制御加硫方式により加硫を行い、サーモテストを行った例である。具体的には、全加熱時間をtとし、第1加熱ステップの時間をtとし、第1加熱ステップにおけるドーム温度を155℃、残りの時間を第2加熱ステップとし、第2加熱ステップにおけるドーム温度を150℃とした。なお、本実施例の第1加熱ステップの加熱時間と全加熱時間の比t/tは0.24である。
【0034】
(比較例1、2)
なお、比較のため、一定温度加硫方式による加硫を行った。比較例1、2共に加熱時間を実施例1の全加熱時間と同じtとし、比較例1ではドーム温度を現行と同じ150℃とし、比較例2ではドーム温度を155℃とした。
【0035】
加硫量は比較例1のドーム温度を150℃の一定温度に保った現行の一定温度加硫方式の加流量、即ち所定の加硫量Sを100として相対値で評価した。実施例1および比較例1、2の試験条件および試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、比較例2(一定温度加硫方式でドーム温度を155℃)の場合にはタイヤ表面最高到達温度が155℃となり所定のタイヤ表面最高到達温度150℃を5℃上回っている。これに対して、実施例1(2段階制御加硫方式)の場合は、初めは155℃であるがその後150℃にしているため、タイヤ表面最高到達温度が150℃で所定のタイヤ表面最高到達温度を上回らないことが確認された。また、2段階制御加硫方式の場合加硫量が105であり、所定の加硫量Sより5大きい。このため、実施例1において第2加熱ステップの加熱時間を短縮しても所定の加硫量Sが得られることが分かった。また、加硫後のタイヤを目視により検査した結果、実施例1の場合、比較例1に比べてオーバースピューが低減していることが確認された。
【0038】
(実施例2)
本実施例は、ドームタイプ加硫装置を用いてサイズ11R22.5の重荷重用タイヤの加硫を、第1加熱ステップと第2加熱ステップのドーム温度をそれぞれ146℃、141℃とする2段階制御加硫方式で加硫を行い、サーモテストを行った例である。なお、全加熱時間をtとし、第1加熱ステップの時間をtとし、残りの加熱時間を第2加熱ステップの加熱時間とした。本実施例の第1加熱ステップの加熱時間と全加熱時間の比t/tは0.24である。なお、参考として下ビード、上ビードについてもタイヤ表面最高到達温度および加硫量を調べた。
【0039】
(比較例3)
比較のため、現行の一定温度加硫方式により加硫を行い、サーモテストを行った。なお、加熱時間を実施例2の全加熱時間と同じとし、この間ドーム温度を141℃の一定温度に保った。
【0040】
(実施例2、比較例3の測定結果)
(1)トレッド表面温度とトレッド内部の加硫量
イ.トレッド表面温度
はじめに、トレッドのサーモテストの結果について説明する。図5、図6は実施例2と比較例3のトレッドのサーモテストのテスト結果を示す図である。図5の(a)は、トレッド表面における測定位置を示す図であり、(c)はトレッド表面温度の経時変化を示すグラフである。また、(b)は(c)の一部を拡大した図である。(b)、(c)より実施例2の方が加硫開始初期におけるトレッド表面温度が速く上昇していることが分かる。また、トレッドのタイヤ表面最高到達温度は所定のタイヤ表面最高到達温度141℃を上回っていないことが分かる。
【0041】
ロ.トレッド内部の加硫量
図6の(a)は、トレッド内部の測定位置を示す図であり、(b)は実施例2および比較例3のトレッド内部の加硫量を示すグラフである。(b)より実施例2の方が比較例3より加硫量が2.9ECU大きいことが分かる。このため、実施例2において第2加熱ステップの加熱時間を短縮しても所定の加硫量でトレッド内部の加硫を行うことができることが分かる。
【0042】
ハ.加硫後の外観検査結果
加硫後の外観を目視で検査した結果、実施例2では比較例3に比べてオーバースピューが低減されていることが確認された。
【0043】
(2)下ビード表面温度と下ビード内部の加硫量
イ.下ビード表面温度
次に、参考として行った下ビードのテスト結果について説明する。図7は実施例2および比較例2の下ビードのテスト結果を示す図である。(a)は、下ビード表面および内部の測定位置を示す図であり、(b)は実施例2および比較例3の下ビードのタイヤ表面温度の経時変化を示すグラフである。(b)より実施例2の方が加硫開始初期における下ビード表面温度が速く上昇していることが分かる。また、実施例2の下ビードのタイヤ表面最高到達温度は比較例3、即ち現行の下ビードのタイヤ表面最高到達温度と大きく相違しないことが分かる。
【0044】
ロ.下ビード内部の加硫量
(c)は実施例2と比較例3の下ビード内部の加硫量を示すグラフである。(c)より、実施例2の方が比較例より加硫量が1.1ECU大きいことが分かる。このため、前記したトレッドのサーモテストのテスト結果に基づいて第2加熱ステップの加熱時間を短縮した場合でも現行と同程度の加硫量、即ち所定の加硫量で下ビード内部の加硫を行うことができることが分かる。
【0045】
(3)上ビード表面温度と上ビード内部の加硫量
イ.上ビード表面温度
次に、参考として行った上ビードのテスト結果について説明する。図8は実施例2および比較例2の上ビードのテスト結果を示す図である。(a)は、上ビード表面および内部の測定位置を示す図であり、(b)は実施例2および比較例3の上ビードのタイヤ表面温度の経時変化を示すグラフである。(b)より実施例2の方が加硫開始初期における上ビード表面温度が速く上昇していることが分かる。また、実施例2の上ビードのタイヤ表面最高到達温度は比較例3、即ち現行の上ビードのタイヤ表面最高到達温度と大きく相違しないことが分かる。
【0046】
ロ.上ビード内部の加硫量
(c)は実施例2と比較例3の上ビード内部の加硫量を示すグラフである。(c)より、実施例2の方が比較例3より加硫量が1.3ECU大きいことが分かる。このため、前記したトレッドのサーモテストのテスト結果に基づいて第2加熱ステップの加熱時間を短縮した場合でも現行と同程度の加硫量、即ち所定の加硫量で上ビード内部の加硫を行うことができることが分かる。
【0047】
以上のように、本発明によれば加硫工程において、タイヤ表面温度を所定のタイヤ表面最高到達温度を上回ることなく、加硫速度を向上させることができ、この結果、タイヤの性能を変えることなく加硫時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ベース
2 ドーム
3 金型
4 上プラテン
5 下プラテン
6 生タイヤ
7 中心機構
8 ブラダー
9 供給路
10 枝分かれ供給管
11 分岐部
12 噴出口
13 上部空間
14 下部空間
15 隙間
16 開口部
17 供給口
18 衝突板
19 配管
20 エアートラップ
21 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドームタイプ加硫装置を用いて生タイヤの加硫を行う加硫方法であって、
加硫時における加熱が、
ドーム温度を、所定時間、所定のタイヤ表面最高到達温度を2〜15℃上回る温度に保持する第1加熱ステップと、
その後、ドーム温度を、所定の加硫量となるまでの時間、前記タイヤ表面最高到達温度と同じ温度に保持する第2加熱ステップにより行われ、
全体の加熱時間をtとし、第1加熱ステップの時間をtとしたとき、
前記tおよびtには、式1の関係があることを特徴とするタイヤ加硫方法。
0.1≦t/t≦0.4 ・・・・・ (式1)
【請求項2】
前記tおよびtには、式2の関係があることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
0.2≦t/t≦0.3 ・・・・・ (式2)
【請求項3】
前記第1加熱ステップにおけるドーム温度が、所定のタイヤ表面最高到達温度を2〜10℃上回る温度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−260212(P2010−260212A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111427(P2009−111427)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】