説明

タイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法

【課題】加硫時間を短縮し、稼働効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】媒体供給路25から媒体流通経路20に供給する窒素ガスを、シースヒータ43で予め所定温度まで加熱し、保温しておく。加硫時に媒体供給路25から媒体流通経路20に供給される窒素ガスは、昇温された状態で媒体流通経路20に流入するので、媒体流通経路20に供給された窒素ガスによって、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの温度が低下するのが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤを加硫成形するタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫機においては、金型内に収容された生タイヤの内部空間に高温かつ高圧の加熱加圧媒体を供給し、生タイヤを金型の内面に押圧することにより、生タイヤを加硫成形している。生タイヤに供給される加熱加圧媒体は、シースヒータ等によって予熱される。
【0003】
特許文献1には、加熱加圧媒体が流通する流路を内部に有する加熱体を電磁誘導加熱することで、流路を流通する加熱加圧媒体を加熱するタイヤ加硫機が開示されている。加熱体を発熱させて加熱加圧媒体を加熱するので、加熱加圧媒体の温度の立ち上がりを早くすることができる。
【0004】
また、タイヤ加硫機においては、加硫中に加熱加圧媒体の圧力が低下するため、加熱加圧媒体が流通する系に新たな高圧の加熱加圧媒体を供給する必要がある。特許文献2には、加硫後に加熱加圧媒体が流通する系から排気される高温低圧の加熱加圧媒体から回収した余熱で、加硫中に新たに系に供給される低温高圧の加熱加圧媒体を予熱する加硫機が開示されている。系から排気される加熱加圧媒体の余熱を利用することで、熱利用効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255535号公報
【特許文献2】特開2010−76454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加熱加圧媒体が流通する系に新たに供給された低温高圧の加熱加圧媒体によって、系内の加熱加圧媒体の温度が低下する。そこで、加硫中に系内の加熱加圧媒体を再加熱するのであるが、その間は生タイヤに与える熱量が不足するので、加硫時間を長くせざるを得ない。
【0007】
また、加熱加圧媒体が流通する系から排気される高温低圧の加熱加圧媒体が窒素ガス等である場合、定圧比熱が小さくなり、熱交換の効率が極めて悪くなる。そのため、加硫開始の際に新たに系に供給された低温高圧の加熱加圧媒体に対する入熱量が小さく、加硫開始の際の温度低下を熱交換で解消することは困難である。そのため、タイヤ加硫機の稼働効率の面でも改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、加硫時間を短縮し、稼働効率を向上させることが可能なタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明におけるタイヤ加硫機は、生タイヤを着脱可能に収容するモールドと、前記生タイヤの内部空間に連通し、加硫開始前まで当該内部空間から遮断されて所定圧力の加熱加圧媒体が循環する媒体循環経路を備えた媒体流通経路と、前記媒体流通経路中に設けられ、加硫開始前に前記媒体循環経路を流通する前記加熱加圧媒体を所定温度まで加熱する第1加熱部と、前記媒体流通経路に接続された媒体供給路と、前記媒体供給路に前記所定圧力の前記加熱加圧媒体を供給する供給源と、前記媒体供給路中に設けられ、前記媒体供給路内に供給された所定量の前記加熱加圧媒体を前記媒体供給路内に貯留させる貯留部材と、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を前記所定温度まで加熱する第2加熱部と、前記媒体供給路中に設けられ、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、前記媒体供給路内に貯留されて加熱された前記所定圧力で前記所定温度の前記加熱加圧媒体を前記媒体流通経路に供給する供給部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、加硫が開始されると、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下する。一方、予め媒体供給路内には、加硫開始直前で圧力低下前に媒体流通経路を流通していた所定圧力で所定温度の加熱加圧媒体と同等の圧力及び温度に保持された所定量の加熱加圧媒体が貯留されている。そして、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、媒体供給路内の所定圧力で所定温度の加熱加圧媒体を媒体流通経路に供給することによって、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力が上昇するとともに、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の温度が低下するのが抑制される。これにより、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体を再加熱する時間が短縮されるので、生タイヤに与える熱量の不足を早期に解消することができる。よって、加硫時間を短縮することができるとともに、タイヤ加硫機の稼働効率を向上させることができる。また、再加熱に要する熱量を削減することができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
また、本発明におけるタイヤ加硫機において、前記第2加熱部は、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体によって、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を加熱してもよい。上記の構成によれば、第1加熱部により加熱されながら媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体を熱源として、媒体供給路内に貯留された加熱加圧媒体が加熱されるので、媒体供給路内に貯留された加熱加圧媒体を加熱する熱源及びその制御手段を別途設ける必要がない。
【0012】
また、本発明におけるタイヤ加硫方法は、モールドに着脱可能に収容された生タイヤの内部空間に連通する媒体流通経路における加硫開始前まで当該内部空間から遮断されている媒体循環経路を流通する所定圧力の加熱加圧媒体を所定温度まで加熱する工程と、前記媒体流通経路に接続された媒体供給路に供給源から前記所定圧力の前記加熱加圧媒体を供給して、前記媒体供給路内に所定量の前記加熱加圧媒体を貯留させる工程と、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を前記所定温度まで加熱する工程と、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、前記媒体供給路内に貯留されて加熱された前記所定圧力で前記所定温度の前記加熱加圧媒体を前記媒体流通経路に供給する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、加硫が開始されると、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下する。一方、予め媒体供給路内には、加硫開始直前で圧力低下前に媒体流通経路を流通していた所定圧力で所定温度の加熱加圧媒体と同等の圧力及び温度に保持された所定量の加熱加圧媒体が貯留されている。そして、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、媒体供給路内の所定圧力で所定温度の加熱加圧媒体を媒体流通経路に供給することによって、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の圧力が上昇するとともに、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体の温度が低下するのが抑制される。これにより、媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体を再加熱する時間が短縮されるので、生タイヤに与える熱量の不足を早期に解消することができる。よって、加硫時間を短縮することができるとともに、タイヤ加硫機の稼働効率を向上させることができる。また、再加熱に要する熱量を削減することができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0014】
また、本発明におけるタイヤ加硫方法においては、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体によって、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を加熱してもよい。上記の構成によれば、加熱されながら媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体を熱源として、媒体供給路内に貯留された加熱加圧媒体が加熱されるので、媒体供給路内に貯留された加熱加圧媒体を加熱する熱源及びその制御手段を別途設ける必要がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法によると、加硫が開始されて媒体流通経路を流通する加熱加圧媒体を再加熱する時間が短縮されるので、加硫時間を短縮することができるとともに、タイヤ加硫機の稼働効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タイヤ加硫機を示す模式図である。
【図2】タイヤ加硫機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
[第1実施形態]
(タイヤ加硫機の構成)
本実施形態によるタイヤ加硫機1は、図1に示すように、生タイヤを着脱可能に収容するモールド31と、生タイヤを加硫成形するための不活性ガス等のガス又は空気又はそれらの混合ガスからなる所定圧力の加熱加圧媒体を流通させるための媒体流通経路20とを備えている。以下、所定圧力を高圧といい、所定圧力よりも低い圧力を低圧という場合がある。媒体流通経路20は、加熱加圧媒体を予備加熱するために循環させる媒体循環経路21と、媒体循環経路21に連結され、加熱加圧媒体を生タイヤの内部空間内に供給する媒体供給経路22と、媒体循環経路21に連結され、加熱加圧媒体を生タイヤの内部空間から媒体循環経路21に回収する媒体回収経路23と、を有している。尚、以下の説明においては、加熱加圧媒体として窒素ガスを用いた例について説明する(他の実施形態においても同様)。
【0019】
モールド31内に収容された生タイヤの内側には、弾性を有する材料(例えば、ブチルゴム)からなる伸縮自在のブラダ(図示せず)が配置される。このブラダ内(生タイヤの内部空間でもある。)に高温、高圧の窒素ガスを供給し、ブラダを伸展させて生タイヤの内壁面に密接させ、ブラダを介して生タイヤをモールド31の内壁面に押圧し、生タイヤを加硫成形する。尚、ブラダを用いないブラダレス方式のタイヤ加硫機に本発明を適用することも可能である。
【0020】
また、タイヤ加硫機1は、媒体循環経路21中に設けられ、媒体流通経路20を流通する所定圧力の窒素ガスを所定温度まで加熱するヒータ(第1加熱部)としてシースヒータ13を有している。以下、所定温度を高温といい、所定温度よりも低い温度を低温という場合がある。媒体循環経路21中には、窒素ガスを循環させるための媒体循環装置11と、窒素ガスの温度を測定するための温度センサ12と、シースヒータ13と、媒体供給経路22と媒体回収経路23との間に配置されたバイパス弁14と、が配置されている。
【0021】
また、媒体供給経路22中には、媒体循環経路21と媒体供給経路22とを仕切るための媒体供給弁15が配置されている。
【0022】
また、媒体回収経路23中には、媒体回収経路23と媒体循環経路21とを仕切るための媒体回収弁16が配置されている。また、モールド31と媒体回収弁16との間の媒体回収経路23には、排出経路24が接続されている。排出経路24中には、排気弁17が配置されている。
【0023】
ここで、媒体循環装置11は、例えば、電動機駆動のブロアであり、ガス流量を可変できるようにインバータ駆動される。この媒体循環装置11は、窒素ガスを予備加熱するために、媒体循環経路21中において窒素ガスを循環させる。また、媒体循環装置11は、媒体供給経路22を介して窒素ガスを生タイヤの内部空間に供給したり、媒体回収経路23を介して窒素ガスを生タイヤの内部空間から回収したりする。
【0024】
温度センサ12は、媒体循環経路21中の窒素ガスの温度を測定するためのものであり、例えば、熱電対などである。温度センサ12は、媒体供給経路22の直近に配置されている。これにより、媒体循環経路21、媒体供給経路22、及び、媒体回収経路23が同じ系の状態(媒体供給弁15及び媒体回収弁16が開の状態で、バイパス弁14が閉の状態)、或いは、媒体循環経路21が個別の系の状態(媒体供給弁15及び媒体回収弁16が閉の状態で、バイパス弁14が開の状態)のいずれの状態であっても、生タイヤの内部空間に供給する窒素ガスの温度を適切に測定することができる。
【0025】
第1加熱部であるヒータは、媒体循環経路21を流通する窒素ガスを加熱するものであるが、窒素ガスを加硫に要する所定温度に加熱するものであればシースヒータに限らず、電磁誘導加熱手段、プレートヒータ、カートリッジヒータ、バンドヒータ、及び鋳込ヒータ等のヒータであってもよい。窒素ガスとヒータとの温度差が大きいほど、窒素ガスを早急に昇温させることができる。
【0026】
シースヒータ13のシースは、高温になると材質変化を起こす。そこで、シースヒータ13には、シースヒータ13の表面温度を測定するヒータ側温度センサ19が設けられている。
【0027】
温度センサ12、シースヒータ13、および、ヒータ側温度センサ19は、温度コントローラ18に電気的に接続されている。温度コントローラ18は、温度センサ12からの信号を受信し、シースヒータ13に対して窒素ガスが所定温度になるよう適宜指令を出す。また、温度コントローラ18は、ヒータ側温度センサ19からの信号を受信し、シースヒータ13のシースの温度が材質変化を起こす温度を超えないように、シースヒータ13に対して適宜指令を出す。即ち、温度コントローラ18は、窒素ガスの温度を所定温度に保ち、シースヒータ13のシースが材質変化を起こさないように、シースヒータ13に対してON/OFF制御やPID制御をおこなっている。
【0028】
また、タイヤ加硫機1は、媒体流通経路20の媒体循環経路21に接続された媒体供給路25を有している。媒体供給路25は、媒体循環装置11からみて窒素ガスが流れる方向における上流側であって、媒体回収経路23と媒体循環装置11との間の媒体循環経路21に接続されている。
【0029】
また、タイヤ加硫機1は、媒体供給路25に低温高圧の窒素ガスを供給するガス供給源(供給源)41と、媒体供給路25中に設けられたチェックバルブ42およびチェックバルブ45と、媒体供給路25内に貯留されている窒素ガスを所定温度まで加熱するヒータ(第2加熱部)としてシースヒータ43とを有している。媒体供給路25には、上流から下流に向かって、ガス供給源41、チェックバルブ42、シースヒータ43、安全弁44、および、チェックバルブ45がこの順で配置されている。
【0030】
チェックバルブ(貯留部材)42とチェックバルブ(貯留部材)45とは、ガス供給源41から媒体供給路25に供給された低温高圧の窒素ガスの逆流を防止することで、所定量の窒素ガスを媒体供給路25内に貯留させる。シースヒータ43は、ガス供給源41から供給されて媒体供給路25内に貯留されている窒素ガスを所定温度まで加熱し、保温する。安全弁44は、媒体供給路25内の窒素ガスの圧力が一定以上になると窒素ガスの一部を媒体供給路25外に放出することで、窒素ガスの加熱膨張による圧力上昇で媒体供給路25が破損するのを防止する。また、チェックバルブ(供給部材)45は、後述するように、加硫開始直後に媒体流通経路20中の窒素ガスの圧力及び温度が低下したタイミングで開弁することにより、媒体供給路25内に貯留されている高温高圧(所定温度で所定圧力)の窒素ガスを媒体循環経路21に供給する。
【0031】
ここで、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25の配管容量(所定量)は、加硫終了時に排出経路24から排出される窒素ガスの排出量と同等以上となるように設計されている。また、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25には、媒体供給路25内の窒素ガスの温度を測定する温度センサ46が設けられている。なお、シースヒータ43の表面温度を測定する、ヒータ側温度センサ19と同様のヒータ側温度センサをシースヒータ43に設けてもよい。
【0032】
シースヒータ43および温度センサ46は、温度コントローラ18に電気的に接続されている。温度コントローラ18は、温度センサ46からの信号を受信し、シースヒータ43に対して窒素ガスが所定温度になるよう適宜指令を出す。即ち、温度コントローラ18は、窒素ガスの温度を所定温度まで昇温させ、所定温度で保温するように、シースヒータ43に対してON/OFF制御やPID制御をおこなっている。
【0033】
(タイヤ加硫機の動作)
次に、本実施形態に係るタイヤ加硫機1の動作を説明する。
【0034】
まず、媒体循環経路21中において、窒素ガスが予備加熱される。ここでは、媒体回収弁16及び媒体供給弁15は閉にされ、バイパス弁14は開にされる。このようにして、バルブの開閉により、媒体循環経路21中で窒素ガスが予熱のために循環することのできるクローズドサーキットが形成される。そして、ガス供給源41からの高圧の窒素ガスが媒体供給路25から媒体循環経路21に導入され、導入された窒素ガスは、媒体循環装置11により媒体循環経路21中を循環する。そして、媒体循環経路21中を循環する窒素ガスは、温度コントローラ18により制御されるシースヒータ13によって、所定温度になるよう温度調節される。
【0035】
窒素ガスを媒体供給経路22に流す前に予備加熱することにより、加硫開始直後に生タイヤの内部空間に供給される窒素ガスの供給温度が所定温度へ昇温する立ち上がり時間を早くすることができる。
【0036】
また、媒体循環経路21中を循環する窒素ガスが所定温度になるよう温度調節されている最中に、ガス供給源41から供給された所定量の窒素ガスが、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25内において、媒体循環経路21中の窒素ガスと同等の圧力(所定圧力)で貯留される。そして、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスは、シースヒータ43により所定温度、即ち、媒体循環経路21中の窒素ガスと同等の温度まで加熱される。
【0037】
その一方で、ブラダを生タイヤの内側に挿入しながら生タイヤをモールド31内にセットする(図示せず)。そして、低圧媒体供給源(図示せず)から低圧の窒素ガスをブラダ内に供給してブラダを伸展させ、モールド31内(ブラダ内)が所定の圧力に達すると、生タイヤをシェーピングして保持する。そして、モールド31を全閉状態にしてロックし、モールド31の型締を完了する。
【0038】
媒体循環経路21中の窒素ガスが所定温度まで昇温し、媒体供給路25中の窒素ガスが所定温度まで昇温するとともに、モールド31の型締が完了していることを確認した後、加硫を開始する。即ち、バイパス弁14を閉にすると共に、媒体供給弁15及び媒体回収弁16を開にすることによって、高温高圧の窒素ガスを媒体供給経路22を介して生タイヤの内部空間に供給する。生タイヤの内部空間に供給された高温高圧の窒素ガスにより、生タイヤは、ブラダを介してモールド31内壁面に押圧され、加硫成形される。
【0039】
ここで、加硫の開始直後に、生タイヤの内部空間の窒素ガスは、モールド31の外部へ排出され、媒体回収経路23を経由して媒体循環経路21に戻される。このとき、媒体循環経路21内の窒素ガスは、媒体供給経路22、モールド31、および、媒体回収経路23を連通させたことにより、温度及び圧力が低下する。つまり、媒体流通経路20中の窒素ガスの温度及び圧力が低下する。このタイミングで、圧力差によりチェックバルブ45が開き、媒体供給路25内に貯留されて予め昇温されていた高温高圧の窒素ガスが媒体循環経路21に供給される。
【0040】
ここで、媒体供給路25における2つのチェックバルブ42,45間には、加硫終了時に排出経路24から排出される窒素ガスの排出量と同等以上となる容量の窒素ガスが、予め所定圧力および所定温度で貯留されていたので、媒体供給路25から媒体循環経路21に供給された窒素ガスによって、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの圧力が上昇するとともに、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの温度が低下するのが抑制される。これにより、媒体流通経路20を流通する窒素ガスをシースヒータ13で再加熱する時間が短縮されるので、生タイヤに与える熱量の不足が早期に解消される。これにより、加硫時間が短縮されるので、タイヤ加硫機1の稼働効率が向上する。また、再加熱に要する熱量が削減される。
【0041】
その後、媒体流通経路20中の窒素ガスの圧力が規定値に達すると、チェックバルブ45が閉じる。なお、媒体流通経路20中の窒素ガスの圧力が規定値に達するまでは、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25内の窒素ガスの圧力が低下するので、チェックバルブ42が開き、ガス供給源41から媒体供給路25内に低温高圧の窒素ガスが供給される。そして、媒体流通経路20中の窒素ガスの圧力が規定値に達することで、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25内の窒素ガスの圧力が規定値に達すると、チェックバルブ42が閉じる。
【0042】
媒体流通経路20中の高圧の窒素ガスは、シースヒータ13により再加熱されて早期に所望の高温高圧の窒素ガスとなり、媒体供給経路22を経由して生タイヤの内部空間に循環供給される。
【0043】
また、チェックバルブ42とチェックバルブ45との間における媒体供給路25内の窒素ガスは、加硫中にシースヒータ43により所定温度まで加熱される。窒素ガスの膨張により圧力が上昇しすぎると、安全弁44が窒素ガスの一部を媒体供給路25外に放出する。
【0044】
加硫が終了すると、バイパス弁14を開にすると共に、媒体供給弁15及び媒体回収弁16を閉にする。これにより、窒素ガスは媒体循環装置11によって媒体循環経路21中を循環する。また、媒体供給経路22、モールド31、および、媒体回収経路23に残存している高温高圧の窒素ガスは、排気弁17から大気に放出されるか、若しくは回収ラインにより回収される。その後、次の生タイヤをモールド31内にセットして、次の加硫が行われる。
【0045】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るタイヤ加硫機1によると、加硫が開始されると、媒体流通経路20を流通する高温高圧(所定圧力で所定温度)の窒素ガスの圧力及び温度が低下する。一方、予め媒体供給路25内には、加硫開始直前で圧力低下前に媒体流通経路20を流通していた高温高圧の窒素ガスと同等の圧力及び温度に保持された所定量の窒素ガスが貯留されている。そして、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの圧力及び温度が低下したタイミングで、媒体供給路25内の高温高圧の窒素ガスを媒体流通経路20に供給することによって、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの圧力が上昇するとともに、媒体流通経路20を流通する窒素ガスの温度が低下するのが抑制される。これにより、媒体流通経路20を流通する窒素ガスを再加熱する時間が短縮されるので、生タイヤに与える熱量の不足を早期に解消することができる。よって、加硫時間を短縮することができるとともに、タイヤ加硫機1の稼働効率を向上させることができる。また、再加熱に要する熱量を削減することができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0046】
[第2実施形態]
(タイヤ加硫機の構成)
次に、本発明の第2実施形態に係るタイヤ加硫機201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。タイヤ加硫機201が第1実施形態のタイヤ加硫機1と異なる点は、図2に示すように、発熱によって媒体供給路25内の窒素ガス(加熱加圧媒体)を加熱するシースヒータ43の代わりに、第1加熱部で加熱された媒体流通経路20中の窒素ガスとの熱交換によって媒体供給路25内の窒素ガスを加熱する熱交換路50を有している点である。
【0047】
熱交換路(第2加熱部)50は、銅管等からなり、図2に示すように、媒体循環装置11の下流側において媒体循環経路21から分岐した往路51と、媒体循環装置11の上流側において媒体循環経路21に接続した復路52と、往路51と復路52との間に設けられ、チェックバルブ42と安全弁44との間において媒体供給路25の周りに巻回された熱交換部53と、を有している。
【0048】
媒体循環経路21を流通する高温高圧の窒素ガスの一部は、往路51を流通し、熱交換部53において媒体供給路25を流通する窒素ガスとの間で熱交換を行った後に、復路52を通って媒体循環経路21に戻る。このように、媒体流通経路20を流通する高温高圧の窒素ガスの熱を利用して、媒体循環経路21を循環する窒素ガスと同等の温度となるように、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスを加熱するので、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスを加熱する熱源及びその制御手段を別途設ける必要がない。
【0049】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るタイヤ加硫機201によると、第1加熱部(シースヒータ13)により加熱されながら媒体流通経路20を流通する窒素ガスを熱源として、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスが加熱されるので、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスを加熱する熱源及びその制御手段を別途設ける必要がない。
【0050】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0051】
例えば、媒体循環経路21を流通する窒素ガスを加熱する構成としてシースヒータ13を示したが、これに限らず電磁誘導加熱を行う電磁誘導加熱体であってもよい。また、第1実施形態における、媒体供給路25内に貯留された窒素ガスを加熱するシースヒータ43についても、電磁誘導加熱体であってよい。なお、電磁誘導加熱体を用いる場合、ヒータ側温度センサで電磁誘導加熱体の表面温度を測定し、電磁誘導加熱体の温度が材質変化を起こす温度を超えないように、温度コントローラ18により電磁誘導加熱体を制御してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,201 タイヤ加硫機
11 媒体循環装置
12 温度センサ
13 シースヒータ
18 温度コントローラ
19 ヒータ側温度センサ
20 媒体流通経路
21 媒体循環経路
22 媒体供給経路
23 媒体回収経路
25 媒体供給路
31 モールド
41 ガス供給源
42,45 チェックバルブ
43 シースヒータ
46 温度センサ
50 熱交換路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを着脱可能に収容するモールドと、
前記生タイヤの内部空間に連通し、加硫開始前まで当該内部空間から遮断されて所定圧力の加熱加圧媒体が循環する媒体循環経路を備えた媒体流通経路と、
前記媒体流通経路中に設けられ、加硫開始前に前記媒体循環経路を流通する前記加熱加圧媒体を所定温度まで加熱する第1加熱部と、
前記媒体流通経路に接続された媒体供給路と、
前記媒体供給路に前記所定圧力の前記加熱加圧媒体を供給する供給源と、
前記媒体供給路中に設けられ、前記媒体供給路内に供給された所定量の前記加熱加圧媒体を前記媒体供給路内に貯留させる貯留部材と、
前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を前記所定温度まで加熱する第2加熱部と、
前記媒体供給路中に設けられ、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、前記媒体供給路内に貯留されて加熱された前記所定圧力で前記所定温度の前記加熱加圧媒体を前記媒体流通経路に供給する供給部材と、
を有することを特徴とするタイヤ加硫機。
【請求項2】
前記第2加熱部は、前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体によって、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を加熱することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機。
【請求項3】
モールドに着脱可能に収容された生タイヤの内部空間に連通する媒体流通経路における加硫開始前まで当該内部空間から遮断されている媒体循環経路を流通する所定圧力の加熱加圧媒体を所定温度まで加熱する工程と、
前記媒体流通経路に接続された媒体供給路に供給源から前記所定圧力の前記加熱加圧媒体を供給して、前記媒体供給路内に所定量の前記加熱加圧媒体を貯留させる工程と、
前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を前記所定温度まで加熱する工程と、
前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体の圧力及び温度が低下したタイミングで、前記媒体供給路内に貯留されて加熱された前記所定圧力で前記所定温度の前記加熱加圧媒体を前記媒体流通経路に供給する工程と、
を有することを特徴とするタイヤ加硫方法。
【請求項4】
前記媒体流通経路を流通する前記加熱加圧媒体によって、前記媒体供給路内に貯留された前記加熱加圧媒体を加熱することを特徴とする請求項3に記載のタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−6379(P2013−6379A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141639(P2011−141639)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】