説明

タイヤ加硫装置

【課題】従来のプラダを用いたタイヤ加硫装置においては、生タイヤの加硫成形時、プラダからの押圧力により金型へ押し付けられたタイヤ幅方向中心部、即ち、トレッド形成部の生ゴムが、タイヤ幅方向両側となるサイドウォール形成部へ集まってしまう傾向があった。
【解決手段】生ゴムからなる生タイヤにブラダを装着して金型に組み込み、加熱・加圧状態で、ブラダにより生タイヤを金型に押し付け加硫成形を行うタイヤ加硫装置において、ブラダ11を、ゴム部材と、生タイヤ14が金型12に押し付けられた際に生ゴムが生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属プレート13とを組み合わせて形成した。金属プレート13が、少なくとも生タイヤ14のタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ加硫装置に関し、特に、成形された生ゴムのタイヤを金型とブラダを用いて加熱・加圧することにより加硫成形するタイヤ加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形された生ゴムのタイヤ(グリーンタイヤ)を金型(モールド)の中に入れると共に、グリーンタイヤの内部にゴム風船状の圧縮装置であるブラダを配置し、高温・高圧の蒸気を供給してブラダを膨張させ、グリーンタイヤを内側から金型に向けて押し付けることにより、加硫を行うタイヤ加硫装置が知られている。
このようなタイヤ加硫装置に用いられるプラダとして、例えば、生タイヤの加硫成形時に加圧媒体が供給されることによりタイヤ内壁面をモールド方向に押圧する「ブラダ」(特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−317942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプラダを用いたタイヤ加硫装置においては、生タイヤの加硫成形時、プラダからの押圧力によりモールドへ押し付けられたタイヤ幅方向中心部、即ち、トレッド形成部の生ゴムが、タイヤ幅方向両側となるサイドウォール形成部へ集まってしまう傾向があった。
つまり、生タイヤの加硫成形時、即ち、生タイヤへの圧力負荷時、プラダと金型により両側から挟み込まれた生タイヤには、プラダを介した内側からの圧力と金型を介した外側からの圧力とが加わることになり、プラダからの押圧力によって金型へ押し付けられたタイヤ幅方向中心部の生ゴムは、その両側へと押し出され、タイヤ幅方向両側へと流れ出てしまう。
【0005】
従って、プラダを用いて加硫成形した後の加硫済みタイヤは、サイドウォール部を形成するタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうので、プラダを用いたタイヤ加硫装置により、タイヤサイド部のゲージが薄い薄ゲージタイヤを形成することは困難であった。
この発明の目的は、生タイヤに対しプラダを用いた加硫成形を行ってもタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうのを防ぎ、タイヤサイド部のゲージが薄い薄ゲージタイヤを形成することができるタイヤ加硫装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明に係るタイヤ加硫装置は、生ゴムからなる生タイヤにブラダを装着して金型に組み込み、加熱・加圧状態で、前記ブラダにより前記生タイヤを前記金型に押し付け加硫成形を行うタイヤ加硫装置において、前記ブラダを、ゴム部材と、前記生タイヤが前記金型に押し付けられた際に前記生ゴムが前記生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属部材とを組み合わせて形成したことを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置は、前記金属部材が、少なくとも前記生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部に位置することを特徴としている。
【0007】
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置は、前記金属部材が、前記生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部のみに位置することを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置は、前記金属部材が、前記ゴム部材の内部に配置されていることを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置は、前記金属部材が、前記ゴム部材に接着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るタイヤ加硫装置によれば、生ゴムからなる生タイヤに装着されたブラダが、ゴム部材と、生タイヤが金型に押し付けられた際に生ゴムが生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属部材とを組み合わせて形成されているので、生タイヤに対しプラダを用いた加硫成形を行ってもタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうのを防ぎ、タイヤサイド部のゲージが薄い薄ゲージタイヤを形成することができる。
【0009】
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置によれば、金属部材が、少なくとも生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部に位置しているので、生タイヤに対しプラダを用いた加硫成形を行ってもタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうのを効果的に防止することができる。
また、この発明の他の態様に係るタイヤ加硫装置によれば、金属部材が、生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部のみに位置しているので、必要とする金属部材の大きさを最小とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施の形態に係るタイヤ加硫装置の構成を示す説明図である。
【図2】生タイヤの加硫成形に際し生タイヤにブラダを装着した状態を示す説明図である。
【図3】ブラダが装着された生タイヤが金型に組み込まれ加硫成形中の状態を示す説明図である。
【図4】加硫成形時にブラダと金型により生タイヤに圧力が付加された状態を示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係るタイヤ加硫装置の構成を示す説明図である。図1に示すように、タイヤ加硫装置10は、ブラダ11と金型(モールド)12を有しており、生ゴムからなる生タイヤ(グリーンタイヤ)にブラダ11を装着して金型12に組み込み、加熱・加圧状態で、ブラダ11により生タイヤを金型12に押し付けて加硫成形を行う。
【0012】
ブラダ11は、柔軟性に優れた、例えば、ブチルゴム等のゴム部材からなる、加圧媒体が供給されることにより膨張する風船状に形成されており、ブラダ11の気密状態を保持して装着され、ブラダ11を拡大縮小することができるセンターポスト部11aを有している。
このブラダ11のタイヤサイド当接部、即ち、タイヤ加硫装置10による加硫成形時、生タイヤに装着されたブラダ11が生タイヤのタイヤサイドに当接するタイヤサイド当接部には、金属プレート(金属部材)13が配置されている。
【0013】
金属プレート13は、生タイヤのタイヤサイド部、即ち、加硫成形した後の加硫済みタイヤのサイドウォール部を形成するタイヤサイド部に当接する、ブラダ11のタイヤサイド当接部のみに位置して設けられている。金属プレート13を設けたことにより、ゴム部材からなるブラダ11のタイヤサイド当接部は、剛性を高めて形状保持力が強化されることになる。
【0014】
このため、加硫成形時、生タイヤのタイヤ幅方向中心部から両側へと押し出された生ゴムが、ブラダ11と金型12の間隙に入り込み間隙を押し広げようとしても、ブラダ11のタイヤサイド当接部の形状が保持されてブラダ11と金型12の離間距離が変化せず、押し出された生ゴムがブラダ11と金型12の間隙に入り込むのを阻止することができる。
【0015】
つまり、ブラダ11は、ゴム部材と、タイヤ加硫装置10による加硫成形時、生タイヤが金型12に押し付けられた際に生ゴムが生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属プレート13とを組み合わせて形成されており、金属プレート13は、ゴム部材からなるブラダ11に接着剤により接着されている。この金属プレート13とブラダ11とを組み合わせる方法としては、例えば、射出成形金型のキャビティ(図示しない)に金属プレート13を設置し、ブラダ11を形成するためのゴム部材をインジェクションする方法がある。このとき、予め、金属プレート13にゴム部材と金属部材を接着する接着剤を塗布しておいても良い。
【0016】
この金属プレート13は、生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部のみに位置させて設けることで、必要とする金属プレート13の大きさを最小とすることができるが、タイヤサイド当接部のみに限らず、生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部を含む範囲に設けられていれば良い。金属プレート13が、少なくともタイヤサイド当接部に位置することで、生タイヤの加硫成形時に押し出された生ゴムがブラダ11と金型12の間隙に入り込むのを阻止することができる。
【0017】
また、金属プレート13は、必ずしもプレート状に形成されていなくても良く、生タイヤが金型12に押し付けられた際に生ゴムが生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ剛性を確保することができる形状の金属部材であれば良い。
また、金属プレート13は、ゴム部材からなるブラダ11の内部空間に面する内面側に露出した状態(図1参照)に配置されているが、金型12に面する外面側に露出した状態或いはブラダ11の内部に埋設された状態で配置されていても良い。つまり、金属プレート13とブラダ11の接続部分は、ブラダ11の外面形状と生タイヤの内面形状が一致しているときは凹凸の無い連続体としても良いが、若干の段差(ギャップ)があっても良い。
【0018】
なお、ブラダ11は、加硫成形時においてはタイヤ内壁面を押圧するように十分に伸展する必要があるが、生タイヤへの装着時や加硫成形後の加硫済みタイヤの搬出時においてはタイヤビード径よりも小さな径となるように縮小する必要があるので、均等な押圧力(伸び率)でタイヤ内壁面を押圧可能であると共に縮小可能であるように、ブラダ11の生ゴムを加硫成形時のタイヤ内壁面に対応する形状に一定厚みで形成されている。
【0019】
続いて、図1に示すタイヤ加硫装置10による生タイヤの加硫成形方法を説明する。
図2は、生タイヤの加硫成形に際し生タイヤにブラダを装着した状態を示す説明図である。図3は、ブラダが装着された生タイヤが金型に組み込まれ加硫成形中の状態を示す説明図である。図4は、加硫成形時にブラダと金型により生タイヤに圧力が付加された状態を示す部分説明図である。
【0020】
タイヤ加硫装置10による生タイヤの加硫成形に際し、先ず、図2に示すように、生タイヤ14の内面にブラダ11の外表面が沿うように、ブラダ11を生タイヤ14に装着する。次に、ブラダ11を装着した生タイヤ14を、金型12に組み込んで保持し、その後、図3に示すように、金型12を型締めする。
金型12を型締めした後、ブラダ11の内部に高温・高圧の熱媒体を供給し、ブラダ11を伸展膨張させ、ブラダ11の外表面を生タイヤ14の内壁面に密着状態に接触させる。
【0021】
その後、図4に示すように、ブラダ11を介して生タイヤ14の内壁面を加熱しながら、膨張するブラダ11により、生タイヤ14の内壁面を押圧して金型12方向へと押し出す(図中、白抜き矢印参照)。生タイヤ14の内壁面が金型12方向へと押し出され、生タイヤ14の外表面が金型12の内面に形成されたタイヤ溝形成部に圧着状態に押し当てられることにより、生タイヤ14のトレッド形成部にタイヤ溝(図示しない)が形成される。そして、生タイヤ14にタイヤ溝が形成されると共に、加熱された金型12と高温の熱媒体に接するブラダ11とにより両側から挟持された生タイヤ14はその外側と内側から加熱されることになり、生タイヤ14の加硫成形が行われる。
【0022】
この生タイヤ14の加硫成形時、プラダ11と金型12により両側から挟み込まれた生タイヤ14には、プラダ11を介した内側からの圧力と金型12を介した外側からの圧力とが加わることになり(図4、白抜き矢印参照)、プラダ11からの押圧力によって金型12へと押し付けられたタイヤ幅方向中心部の生ゴムは、その両側へと押し出され、タイヤ幅方向両側へと流れ込もうとする(図3、矢印参照)。
【0023】
しかしながら、ブラダ11のタイヤサイド当接部には、金属プレート13が設けられており、この金属プレート13によって、ゴム部材からなるブラダ11のタイヤサイド当接部は、剛性を高めて形状保持力が強化されているため、加硫成形時、生タイヤ14のタイヤ幅方向中心部から両側へと押し出された生ゴムが、ブラダ11と金型12の間隙に入り込み間隙を押し広げようとしても、ブラダ11のタイヤサイド当接部の形状が保持されてブラダ11と金型12の離間距離が変化せず、押し出された生ゴムがブラダ11と金型12の間隙に入り込むことがない。
【0024】
従って、ゴム部材と金属プレート13を組み合わせたプラダ11を用いて加硫成形した後の加硫済みタイヤの、サイドウォール部を形成するタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうことが無く、プラダ11を用いたタイヤ加硫装置10により、タイヤサイド部のゲージが薄い薄ゲージタイヤを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、生ゴムからなる生タイヤに装着されたブラダが、ゴム部材と、生タイヤが金型に押し付けられた際に生ゴムが生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属部材とを組み合わせて形成されているので、生タイヤに対しプラダを用いた加硫成形を行ってもタイヤサイド部のゲージが厚くなってしまうのを防ぎ、タイヤサイド部のゲージが薄い薄ゲージタイヤを形成することができるため、成形された生ゴムのタイヤを金型とブラダを用いて加熱・加圧することにより加硫成形するタイヤ加硫装置に最適である。
【符号の説明】
【0026】
10 タイヤ加硫装置
11 ブラダ
11a センターポスト部
12 金型
13 金属プレート
14 生タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴムからなる生タイヤにブラダを装着して金型に組み込み、加熱・加圧状態で、前記ブラダにより前記生タイヤを前記金型に押し付け加硫成形を行うタイヤ加硫装置において、
前記ブラダを、ゴム部材と、前記生タイヤが前記金型に押し付けられた際に前記生ゴムが前記生タイヤの両側へ流れ込むのを防ぐ金属部材とを組み合わせて形成したことを特徴とするタイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記金属部材は、少なくとも前記生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部に位置することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記金属部材は、前記生タイヤのタイヤサイド部に当接するタイヤサイド当接部のみに位置することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記金属部材は、前記ゴム部材の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項5】
前記金属部材は、前記ゴム部材に接着されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ加硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183565(P2011−183565A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48055(P2010−48055)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】