説明

タイヤ加硫装置

【課題】ラグ部材の嵌め込み忘れを確実に防止するとともに、嵌め込み姿勢を適正化し、常に安定した形状のタイヤを精度よく得ることが可能なタイヤ加硫装置を提供する。
【解決手段】加硫済みのラグ部材が嵌め込まれる複数の凹部を有する金型と、該金型における複数の凹部に対応して埋設され、各凹部に嵌め込まれるラグ部材の表面と接触する受圧部が凹部を形成する表面から凹部内に突出し、受圧部の受圧動作により検出信号を出力する検出センサーとを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの加硫装置に関し、特にタイヤの回転方向に沿って所定の間隔をもって形成された複数のラグを有するタイヤを精度よく製造することが可能な加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿地や地盤が脆弱な土地において使用される農業用車両、或いは、不整地を走行する頻度が高い建設用車両等に採用されるタイヤとしては、高いトラクション性を得る観点から、トレッド部にタイヤの回転方向(円周方向)に沿って所定の間隔をもって形成された複数のラグを有するラグ付きタイヤが普及している。ラグ付きタイヤの製造に際しては、一対のビード部に対してトロイダル状に積層されたカーカス層、トレッドゴム層等を有する未加硫のグリーンタイヤをラグに対応する所定形状の凹部が形成された金型を備える加硫装置内に投入して加硫成形することが一般的である。
加硫装置内に投入されたグリーンタイヤは、ブラダーと呼ばれる押圧手段によりトレッドゴム層の表面が金型側に押圧された状態で加熱され、トレッドゴム層が金型に形成された所定形状の複数の凹部に流れ込むことにより、タイヤの回転方向に沿って互いに所定の間隔をもって突出する複数のラグを有するラグ付きタイヤが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−68044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、トレッド層が積層されたグリーンタイヤを加硫装置内に投入してラグ付きタイヤを得る従来の製造方法に代わる新たな製造方法の研究開発がなされている。その製造方法とは、予め所定形状に加硫成形された複数のラグ部材を既存の加硫装置の金型が有する複数の凹部に嵌め込んだ状態にセットし、更に金型内にタイヤの本体部となる未加硫のタイヤケースを配設して加硫を実行することにより、タイヤケースの円周方向表面に複数のラグ部材を加硫接着してラグ付きタイヤを得るものである。
しかしながら、上記製造方法においては、複数のラグ部材を金型に形成された複数の凹部に個別に嵌め込む作業が必要となるため、一部の凹部にラグ部材を嵌め込むのを忘れる嵌め込み忘れや、凹部に対するラグ部材の嵌め込み姿勢が不適正な嵌め込み不足といった人的ミスが生じ易く、加硫後のタイヤが有するラグの欠損や、形状の不具合が生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ラグ部材の嵌め込み忘れを確実に防止するとともに、嵌め込み姿勢を適正化し、常に安定した形状のタイヤを精度よく得ることが可能なタイヤ加硫装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための加硫装置の構成として、加硫済みのラグ部材が嵌め込まれる複数の凹部を有する金型と、該金型における複数の凹部に対応して埋設され、各凹部に嵌め込まれるラグ部材の表面と接触する受圧部が凹部を形成する表面から凹部内に突出し、受圧部の受圧動作により検出信号を出力する検出センサーとを備えた構成とした。
本構成によれば、金型における複数の凹部に対応して埋設される検出センサーが、各凹部に嵌め込まれるラグ部材の表面と接触する受圧部を有し、凹部を形成する表面から凹部内に突出した受圧部の受圧動作によって検出信号を出力することから、金型の目視による確認作業を不要とすることができるとともに、各凹部に対応して埋設された検出センサーからの検出信号の有無によってラグ部材の嵌め込み忘れや、嵌め込み不足を確実に防止できる。
【0007】
また、受圧部を凹部におけるラグ部材の踏面と対向する表面から凹部内に突出するものとすれば、前記構成から生じる効果に加え、ラグ部材の踏面が凹部における最深部にまで到達したことを確実に検出でき、嵌め込み不足を一層確実に防止できる。
【0008】
また、検出センサーを凹部の幅方向に沿って複数埋設した構成とすれば、前記構成から生じる効果に加え、タイヤケースの幅方向に延在するラグ部材の凹部に対する姿勢を複数個所で検出でき、嵌め込み不足を一層確実に防止できる。
【0009】
また、検出センサーを金型の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する保護部材により被覆した構成とすれば、前記構成から生じる効果に加え、金型を伝わる熱によって検出センサーが破損することを防止できる。
【0010】
また、検出センサーと接続された加硫制御部を更に設け、加硫制御部が、金型に埋設された全ての検出センサーからの検出信号の入力に基づいて加硫を開始する構成とすれば、加硫後のタイヤにラグの欠損や、形状の不具合が生じることがなくなり、常に安定した形状のタイヤを精度よく得ることが可能となる。
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ラグ付きタイヤ及びラグ部材を示す斜視図である。
【図2】加硫装置を示す断面図である。
【図3】凹部、検出センサー及びラグ部材を示す断面図である。
【図4】凹部、検出センサー及びラグ部材を示す断面図である(他の実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る加硫装置1によって成形されたラグ付きタイヤ10、及び、ラグ付きタイヤ10が有するラグ15を拡大して示す斜視図である。
同図においてラグ付きタイヤ10は、概略、タイヤ本体部11と、タイヤ本体部11の外周面11A上において円周方向に沿って互いに所定の間隔離間して形成された複数のラグ15とから構成される。本実施形態におけるラグ付きタイヤ10は、タイヤ本体部11に対応する未加硫のタイヤケース20と、ラグ15に対応する加硫済みのラグ部材25とを図2に示す加硫装置1内において加硫接着して一体化することにより成形される。
【0013】
図2に示すように、タイヤケース20は、一対のビードコア21;21の周囲において折り返され、ビードコア21;21間をトロイダル状に跨って延長し、サイド部Ts及びトレッド部Ttを形成するカーカスプライ22、トレッド部Ttにおいてカーカスプライ22上に積層されたベルト23、及び、径方向最外に積層される最外ゴム24を備える。カーカスプライ22及びベルト23は、未加硫のゴムシートにスチールや有機繊維などのコードが埋設されてなるものであって、製造対象となるタイヤの種類に応じて材質や枚数等を適宜選択することができる。
【0014】
図1,図2に示すように、ラグ部材25は、タイヤケース20の幅方向に沿って長尺な断面が略台形状の部材であって、タイヤケース20の外周面20Aから径方向外側に突出した状態で配設される。また、ラグ部材25におけるタイヤケース20の外周面20Aと対向する表面26は、タイヤケース20の表面形状に対応して緩やかに湾曲する曲面として形成され、タイヤケース20の外周面20Aに密着する。また、ラグ部材25における路面と接地する踏面27は、タイヤケース20に加硫接着された状態において、タイヤケース20のセンターからショルダー側にかけて徐々に径方向内側に傾斜する面として形成される。
なお、ラグ部材25の全体形状や踏面27の形状は、上記例に限られるものではなく、製造対象となるタイヤの種類に応じて適宜変更可能である。
以下、上記構成からなるタイヤケース20及びラグ部材25を加硫接着し、ラグ付きタイヤ10を得ることが可能な加硫装置1の構成について説明する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る加硫装置1を示す断面図である。
同図において加硫装置1は、概略、下プラテン2、下金型3、下ビードリング4、上金型5、上プラテン6、上ビードリング7、ブラダー8、トレッド金型9、検出センサー40、トレッドセグメント12、アウターリング13、固定盤14、昇降機構16及び加硫制御部18を備える。
【0016】
下プラテン2は、円環状の板体であって、図外の熱源供給装置から内部に高温高圧の蒸気や、液体等の加熱媒体が供給される流路2Aを有する。流路2Aは、タイヤケース20の下側のサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の流路である。下プラテン2は、主として上方に位置する下金型3を介して下側のサイド部Tsを加熱する熱源として機能する。
【0017】
下プラテン2の上面側には、下金型3が配設される。下金型3は、例えばアルミニウム製の円環金属体であって、下方に位置する熱源としての下プラテン2からの熱をタイヤケース20に伝達する。下金型3におけるタイヤケース20の下側のサイド部Tsと対向する内周面は、型付面3Aとして形成される。型付面3Aは、タイヤケース20の下側のサイド部Tsを囲繞するように湾曲した面である。
【0018】
下金型3の上方側には、着脱自在な下ビードリング4が取着される。下ビードリング4は、主としてタイヤケース20におけるビードコア21の周囲の型付けを行うとともに、把持部を介して後述のブラダー8を保持する円環体である。
【0019】
上金型5は、下金型3と対をなす円環金属体であって、上方に位置する熱源としての上プラテン6からの熱をタイヤケース20に伝達する。上金型5におけるタイヤケース20の上側のサイド部Tsと対向する内周面は、型付面5Aとして形成される。型付面5Aは、タイヤケース20の上側のサイド部Tsを囲繞するように湾曲した面である。
【0020】
上金型5の上方側には、上プラテン6が配設される。上プラテン6は、下プラテン2と対をなすように平行に配置され、昇降機構16によって昇降し、下プラテン2に対して上下方向に近接,離間可能である。また、上プラテン6は、下プラテン2と同様に、円環状の板体であって、加硫時に高温高圧の加硫媒体が図外の熱源供給装置から供給される流路6Aを有する。流路6Aは、タイヤケース20の上側のサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の流路である。上プラテン6は、主として下方に位置する上金型5を介して上側のサイド部Tsを加熱する熱源として機能する。
【0021】
上金型5の下方側には、着脱自在な上ビードリング7が取着される。上ビードリング7は、下ビードリング4と対をなすものであって、ビードコア21の周囲の型付け及びブラダー8を保持する円環体である。
【0022】
下ビードリング4及び上ビードリング7によって把持されるブラダー8は、伸縮可能な袋状のゴム体であり、タイヤケース20の内周面に沿って密着するように配置される。
ブラダー8には、加硫時に高温高圧の加熱媒体が図外の熱源供給装置から供給される。加熱媒体が供給されるとブラダー8は、タイヤケース20の内部において、タイヤケース20の内周面に沿って密着しながら外側に膨張する。これにより、下金型3、下ビードリング4、上金型5、上ビードリング7及び後述のトレッド金型9によって形成される加硫空間内に配置されたタイヤケース20は、加硫時にブラダー8の膨張に伴って、下金型3、下ビードリング4、上金型5、上ビードリング7及びトレッド金型9に押し付けられながら加熱され、トレッド金型9の凹部35内に予め嵌め込まれたラグ部材25と一体化されながら加硫される。
【0023】
トレッド金型9は、下金型3及び上金型5の半径方向外側に位置する円環金属体であって、放射状に均等分割されたトレッドセグメント12に対して個別に保持される金型である。トレッド金型9は、アウターリング13が有する流路13Aから発せられる熱をタイヤケース20のトレッド部Tt側に伝達する。
各トレッド金型9の内周面には、タイヤケース20の外周面20Aと対向する型付面9Aと、予め加硫成形されたラグ部材25が嵌め込まれる単数又は複数の凹部35が形成される。なお、凹部35の数は、ラグ部材25の間隔によって適宜設定可能である。
型付面9Aは、トレッド部Ttの幅方向端部から幅方向中央位置まで延長する面である。型付面9Aは、タイヤケース20の外周面20Aを囲繞するように湾曲した面として形成され、加硫完了後におけるタイヤ本体部11の外周面11Aを形成する面である。以下、図3を用いて、トレッド金型9に形成される凹部35の形状、及び、トレッド金型9内に埋設される検出センサー40について説明する。
【0024】
図3は、トレッド金型9に形成される凹部35の幅方向断面図(図1のA−A断面)であって、(a)はラグ部材25が凹部35内に嵌め込まれる前の状態を示し、(b)はラグ部材25が凹部35内に嵌め込まれた後の状態を示す。凹部35は、タイヤケース20の外周面20Aと対向する型付面9Aから径方向外側に向かって窪む溝であって、予め加硫成形されたラグ部材25の形状と略一致する空間を有する。
凹部35は、ラグ部材25の踏面27の形状と対応するように幅方向に傾斜して対向する底面35Aと、ラグ部材25の幅方向端面の形状と対応するように底面35Aの幅方向端部から径方向内側に延在する幅方向端面35B;35Bと、タイヤケース20と加硫接着された場合におけるラグ部材25の周方向両端面の形状と対応するように底面35Aの周方向端部から径方向内側に延在する不図示の周方向両端面とにより四方が囲まれた空間である。
つまり、凹部35は、予め加硫成形されたラグ部材25を嵌め込み可能な空間として形成され、ラグ部材25が凹部35内に適正に嵌め込まれた場合、ラグ部材25の表面は、凹部35を形成する各面に密着した状態で囲繞されることとなる。
【0025】
トレッド金型9に形成された凹部35の底面35Aと対応する位置には、検出センサー40が埋設される。検出センサー40は、凹部35における幅方向中央付近に埋設される押込み式のスイッチであって、凹部35内において露出した受圧部46がラグ部材25の踏面27によって押し込まれることにより、検出信号を加硫制御部18に対して出力する。
【0026】
以下、図3(a)を参照し、検出センサー40について説明する。検出センサー40は、概略、ケース41、固定接点42、可動接点43、押圧部44、コイルバネ45及び受圧部46とから構成される。可動接点43は、半径方向内側に僅かに撓んだバネ部材であって、円弧状の固定接点42と離間した状態でケース41内に収容される。押圧部44は、可動接点43よりも半径方向内側に配置される。押圧部44は、半径方向内側に位置するコイルバネ45と接続され、受圧部46の受圧動作により可動接点43を固定接点42側に押圧する。コイルバネ45は、押圧部44及び受圧部46の間に挿入される。コイルバネ45は、受圧部46の受圧動作により圧縮変形するとともに、押圧部44を押圧する。また、コイルバネ45は、受圧動作が解除されることにより自然長に復帰し、受圧部46を凹部35内において突出,露出した状態に維持する。
【0027】
受圧部46は、コイルバネ45により径方向内側に付勢され、凹部35の底面35Aよりも半径方向内側に突出する釦である。受圧部46は、凹部35内に嵌め込まれたラグ部材25の踏面27と当接する受圧面46Aを有し、受圧面46Aが踏面27と当接して圧力を受けることにより凹部35内において突出,露出していた受圧部46がケース41内に収容される。
【0028】
図3(b)に示すように、ラグ部材25が凹部35内に適正に嵌め込まれると、受圧部46は、受圧動作によりケース41内に収容されるとともに、コイルバネ45を介して押圧部44を半径方向外側へと移動させる。押圧部44の移動により可動接点43が半径方向外側に対して押圧されて反転し、半径方向外側に湾曲した状態となる。可動接点43は、さらなる押圧に伴って固定接点42と接触し、導通状態となる。
【0029】
このように、検出センサー40の受圧部46を底面35Aより凹部35内に突出,露出させた状態とし、受圧部46の受圧動作によってラグ部材25を検出する構成としたことにより、加硫装置1内に複数存在する凹部35内に対してラグ部材25を嵌め忘れることを確実に防止できる。また、受圧部46を底面35Aより突出,露出させたことにより、ラグ部材25の踏面27が凹部35の最深部に位置する底面35Aに到達したことを確実に検出でき、嵌め込み量が不十分である場合や、凹部35に対するラグ部材25の嵌め込み姿勢が不適切である場合であっても、これらの不都合を直ちに検出することが可能となる。
なお、本実施形態においては、検出センサー40の受圧部46を底面35Aより露出,突出させた構成としたが、これに限られるものではなく、例えば凹部35を形成する幅方向端面35Bや周方向端面より露出,突出させる構成としてもよい。また、検出センサー40の態様についても何等限定されるものではなく、例えば圧電素子を採用したセンサーや、光学式のセンサーであってもよい。
【0030】
前述の検出センサー40は、保護部材47によって被覆された状態で埋設される。保護部材47は、ケース41を外周面から覆う部材であって、トレッド金型9と検出センサー40とが直接接触することを防止する。保護部材47は、トレッド金型9の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する素材から形成される。具体的には、グラスウール等の断熱材が採用され、トレッド金型9に伝達される熱から検出センサー40を保護する。このように検出センサー40が、トレッド金型9よりも熱伝導率の低い素材から形成される保護部材47により被覆された状態で埋設されることから、加硫時において後述の流路13Aからトレッド金型9に伝わる熱により検出センサー40が破損することを防止できる。なお、保護部材47は、グラスウールに限られず、実質的にトレッド金型9に伝達される熱から検出センサー40を保護できるものであればよい。
【0031】
図2に戻り、引き続き加硫装置1の他の構造について説明する。
複数のトレッド金型9よりも半径方向外側には、各トレッド金型9に対応したトレッドセグメント12が複数配置される。トレッドセグメント12は、円周方向に沿って放射状に分割されたトレッド金型9の固定部材である。トレッドセグメント12は、トレッド金型9と後述するアウターリング13との間に位置し、図外の転動手段により下プラテン2上を半径方向に移動可能である。トレッドセグメント12の外周面は、下方から上方に向かって漸次半径方向内側に傾斜する傾斜面12Aとして形成される。傾斜面12Aは、昇降機構16によって上下動するアウターリング13が降下した状態において、アウターリング13の傾斜面13Bと対向するテーパ面として形成される。
【0032】
アウターリング13は、上金型5及び上プラテン6を半径方向外側から囲繞するように、昇降機構16に固定された固定盤14に対して直交して延長する下方開口の円環体である。アウターリング13は、下プラテン2及び上プラテン6と同様に、加硫時に高温高圧の加硫媒体が図外の熱源供給装置から供給される流路13Aを有する。流路13Aは、タイヤケース20のトレッド部Ttやラグ部材25に対応する位置に形成される環状の流路である。流路13Aは、主として半径方向内側に位置するトレッド金型9を介してトレッド部Ttを加熱する熱源として機能する。
【0033】
また、アウターリング13におけるトレッドセグメント12の傾斜面12Aと対向する傾斜面13Bは、上方から下方に向かって漸次径方向外側に傾斜する逆テーパ面として形成される。
つまり、傾斜面12Aと傾斜面13Bとは、同一勾配の傾斜面であって、加硫開始動作に伴って昇降機構16が降下を開始し、固定盤14を介して一体的に取り付けられたアウターリング13の傾斜面13Bがトレッドセグメント12の傾斜面12Aと摺接することにより、複数のトレッドセグメント12が径方向内側に縮径され、トレッド金型9がタイヤケース20の外周面20Aを囲繞した状態となる。一方で、加硫が終了し、昇降機構16が上昇を開始すると、複数のトレッドセグメント12が径方向外側に拡径され、タイヤケース20がトレッド金型9より開放された状態となり加硫完了後のラグ付きタイヤ10を脱型することができる。
【0034】
昇降機構16は、加硫装置1の半径方向中心に位置し、内部にピストンを有するシリンダーである。昇降機構16は、固定盤14を貫通し、上プラテン6まで延長する。昇降機構16の下端には、可動プレート17が連結される。可動プレート17は、固定盤14と同様の方向に延長し、延長方向に細長い板体であって、昇降機構16の下端部に取付けられる。可動プレート17の両端部は、円環状の上プラテン6と連結される。これにより、昇降機構16の昇降動作によって、固定盤14に連結された上金型5、上プラテン6及びアウターリング13が一体的に昇降動作し、下方に位置する下プラテン2及び下金型3に対して接近、又は離間可能となる。
【0035】
そして、前述のとおり、アウターリング13の降下に伴って、複数のトレッドセグメント12が縮径すると各トレッドセグメント12に固定されたトレッド金型9がタイヤケース20の円周方向を囲繞した状態となり、複数のトレッド金型9、下金型3、下ビードリング4、上金型5、上ビードリング7により密閉された加硫空間が形成される。当該加硫空間内に収容された未加硫のタイヤケース20、及び、予め凹部35内に嵌め込まれたラグ部材25は、下プラテン2、上プラテン6及びアウターリング13から供給される熱によって徐々に加硫が進行し、タイヤケース20の外周面20Aと接する複数のラグ部材25がタイヤケース20の円周方向に沿って加硫接着され、加硫完了後にはタイヤケース20とラグ部材25とが一体化されたラグ付きタイヤ10を得ることができる。
【0036】
加硫制御部18は、加硫装置1全体の制御を司る部分であって、演算手段としてのCPU、記憶装置手段としてのROM、RAM等を備え、トレッド金型9の各凹部35に埋設される複数の検出センサー40からの検出信号が入力される。加硫制御部18は、作業者によるラグ部材25の凹部35への事前の嵌め込み作業が完了し、例えば図外の加硫開始スイッチの入力がなされたことに基づいて、各検出センサー40からの検出信号の入力を判定する。判定の結果、全ての検出センサー40からの入力がある場合、昇降機構16を作動させ加硫操作を開始させる。一方で、一部の検出センサー40からの入力がない場合、昇降機構16を作動させることなく、例えば図外のモニター上にラグ部材25が未検出の凹部35を有するトレッド金型9の位置を報知する。
加硫制御部18が、当該判定を実行することにより、ラグ部材25が一部の凹部35に嵌め込まれないままの状態、或いは、ラグ部材25の嵌め込み量や姿勢が不適切な状態で加硫が実行されることを確実に防止でき、加硫後のラグ付きタイヤ10にラグの欠損や、形状の不具合が生じる虞がなくなる。また、複数存在する凹部35の目視による確認作業が不要となるため、作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0037】
図4は、他の形態に係る凹部35の幅方向断面図(図1のA−A断面)であって、(a)はラグ部材25が凹部35内に嵌め込まれる前の状態を示し、(b)はラグ部材25が凹部35内に嵌め込まれた後の状態を示す。本実施形態においては、検出センサー40が凹部35の幅方向に沿って複数埋設された点で上述の実施形態と異なる。なお、上記実施形態と同一構成については、同一符号を用い、その説明を省略する。
同図に示すように検出センサー40は、凹部35の幅方向に沿って複数埋設される。具体的には、検出センサー40が凹部35の幅方向内側と幅方向外側とにそれぞれ個別に埋設される。
各検出センサー40は、凹部35内にラグ部材25が嵌め込まれると、いずれも受圧部46の受圧動作により、加硫制御部18に対して検出信号を出力する。そして、本実施形態においても加硫制御部18は、トレッド金型9の凹部35に対応して埋設された全ての検出センサー40からの検出信号の入力に基づいて加硫を開始する。
【0038】
本実施形態によれば、凹部35の幅方向に沿って複数の検出センサーを埋設したことにより、幅方向に延在するラグ部材25の凹部35に対する姿勢を複数個所で検出可能となるため、例えばラグ部材25の踏面27が凹部35の底面35Aに対して傾斜した状態で嵌め込まれた場合において、単一の検出センサー40を埋設した場合と比べ、ラグ部材25の嵌め込み不足や嵌め込み不良を一層確実に防止可能となる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 加硫装置、9 トレッド金型、10 ラグ付きタイヤ、11 タイヤ本体部、
15 ラグ、18 加硫制御部、20 タイヤケース、25 ラグ部材、
27 踏面、35 凹部、40 検出センサー、46 受圧部、47 保護部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫済みのラグ部材が嵌め込まれる複数の凹部を有する金型と、
前記金型における複数の凹部に対応して埋設され、前記各凹部に嵌め込まれるラグ部材の表面と接触する受圧部が前記凹部を形成する表面から凹部内に突出し、前記受圧部の受圧動作により検出信号を出力する検出センサーと、
を備えたタイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記受圧部が前記凹部における前記ラグ部材の踏面と対向する表面から凹部内に突出する請求項1記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記検出センサーが、前記凹部の幅方向に沿って複数埋設された請求項1又は請求項2記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記検出センサーが、前記金型の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する保護部材により被覆された請求項1乃至請求項3記載のタイヤ加硫装置。
【請求項5】
前記検出センサーと接続された加硫制御部を更に備え、
前記加硫制御部が、前記金型に埋設された全ての検出センサーからの検出信号の入力に基づいて加硫を開始する請求項1乃至請求項4記載のタイヤ加硫装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−971(P2013−971A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134033(P2011−134033)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】