説明

タイヤ製造方法

【課題】台タイヤのトレッド貼着面に貼着されるクッションゴムの厚さを円周方向に沿って均一な状態とすることにより、加硫済みタイヤトレッドと一体化されたタイヤのユニフォーミティを向上させることが可能がタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、台タイヤを一定速度で回転させ、当該回転中の台タイヤに対してスクリューの回転速度を漸減しながらクッションゴムを吐出する工程を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関し、特にユニフォーミティを向上させることが可能なタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの土台となる台タイヤと、当該台タイヤの外周面に貼着され、路面と接地する加硫済みタイヤトレッドとを一体化する更生タイヤの製造方法としては、加硫済み台タイヤの外周面と加硫済みタイヤトレッドの内周面とを切削し、切削後の台タイヤの外周面にクッションゴムと呼ばれる未加硫のゴムを配置した後に、当該クッションゴムを介して加硫済みタイヤトレッドを貼着し、加硫缶と呼ばれる加硫装置内に投入することにより、加硫済み台タイヤと加硫済みタイヤトレッドとが一体化された更生タイヤを得る方法が知られている。
例えば、特許文献1には、台タイヤを回転可能に保持し、押出し機によって吐出されたクッションゴムを台タイヤの外周面に貼着する方法が開示されており、台タイヤと押出し機のスクリューとを一定速度で回転させつつ、台タイヤの外周面に対して押出すクッションゴムの圧力を一定とすることによって、クッションゴムの厚さを円周方向に沿って均一にすることが可能な方法が提案されている。
【0003】
図7のグラフにおいて、波形f1は従来の方法により台タイヤのトレッド貼着面にクッションゴムを貼着した時のタイヤ1周分の稼働時間とクッションゴムの厚さの変化量との関係を示し、f2はタイヤ1周分の稼働時間と吐出時のクッションゴムの温度との関係を示す。
波形f2のように、吐出時のクッションゴムの温度は、押出し機の稼働時間が増加するにつれて上昇し、波形f1のように、クッションゴムの温度が上昇するに従ってクッションゴムの厚さが増加するように変化量が増加している。
当該事実は、押出し機の稼働時間の増加により、押出し機内部に貯留されたクッションゴムの温度が上昇し、クッションゴムの温度上昇に伴いクッションゴムの粘度が減少することによって、単位時間当たりのクッションゴムの吐出量が増加することに起因するものと推定される。
このように、台タイヤに貼着されるクッションゴムの厚さが不均一となると、後工程においてクッションゴムを介して貼着される加硫済みタイヤトレッドについても不均一な状態で貼着されることとなり、クッションゴムを加硫することにより一体化されたタイヤ(製品タイヤ)のユニフォーミティの低下やバラツキの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−239864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、台タイヤのトレッド貼着面に貼着されるクッションゴムの厚さを円周方向に沿って均一な状態とすることにより、加硫済みタイヤトレッドと一体化されたタイヤのユニフォーミティを向上させることが可能なタイヤの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の第一の形態として、クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、台タイヤを一定速度で回転させ、当該回転中の台タイヤに対してスクリューの回転速度を漸減しながらクッションゴムを吐出する工程を有する形態とした。
本発明によれば、一定速度で回転する台タイヤに対して、スクリューの回転速度を漸減しながらクッションゴムを吐出することにより、温度上昇によって粘度が減少した時の単位時間当たりのクッションゴムの吐出量を一定に保つことが可能となり、台タイヤのトレッド貼着面に貼着されるクッションゴムの厚さを円周方向に沿って均一とすることができる。よって、ユニフォーミティに優れた製品タイヤを得ることが可能となる。
また、本発明の第二の形態として、クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、台タイヤを回転速度が漸増するように回転させ、当該回転中の台タイヤに対して一定速度で回転するスクリューによりクッションゴムを吐出する工程を有する形態とした。
本発明によれば、回転速度が漸増する台タイヤに対して、一定速度で回転するスクリューによりクッションゴムを吐出することから、温度上昇によって粘度が減少するクッションゴムの単位面積当りの貼着量を一定に保つことが可能となり、台タイヤのトレッド貼着面に貼着されるクッションゴムの厚さを円周方向に沿って均一とすることができる。よって、ユニフォーミティに優れた製品タイヤを得ることが可能となる。
また、本発明の第三の形態として、クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、台タイヤを回転速度が漸増するように回転させ、かつ、当該回転中の台タイヤに対してスクリューの回転速度を漸減しながらクッションゴムを吐出する工程を有する形態とした。
本発明によれば、上記第一,第二の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るクッションゴム貼着装置の概略図。
【図2】制御装置と各装置との電気的接続を示すブロック図。
【図3】回転速度制御データを示すグラフ。
【図4】クッションゴムの厚さの変化量を示したグラフ。
【図5】他の実施形態における制御装置と各装置との電気的接続を示すブロック図。
【図6】他の実施形態における回転速度制御データを示すグラフ。
【図7】従来の方法によりクッションゴムを貼着した時のクッションゴムの厚さの変化量及び吐出時のクッションゴムの温度を示すグラフ。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
図1は、クッションゴム貼着装置1の概略図である。
同図を用いて、クッションゴム貼着装置1の構造及びクッションゴム3の貼着方法について説明する。クッションゴム貼着装置1は、加硫済みの台タイヤ2のトレッド貼着面2Aに未加硫のクッションゴム3を円周方向(台タイヤ2の回転方向)に沿って貼着する装置であって、台タイヤ2を回転させる手段としての台タイヤ保持装置10と、台タイヤ2に対してクッションゴム3を吐出する手段としての押出し装置20とを備え、台タイヤ保持装置10及び押出し装置20は、制御装置30によって制御される。
台タイヤ2は、例えばトレッド貼着面2Aを成型可能なモールドにより成型された新規のタイヤ、或いは、所謂使用済みタイヤのトレッド部をバフ掛けすることによってトレッド貼着面2Aが形成されたタイヤであってもよい。
【0010】
台タイヤ保持装置10は、概略、床面上に敷設されたレール11と、当該レール11上を転動可能な車輪によりレール11上を進退可能な基台12と、基台12上に搭載された装置本体13とを備える。装置本体13には、制御装置30からの制御信号により駆動するモータ14が内蔵され、当該モータ14の出力軸は図外の伝達機構を介して回転軸15と接続される。回転軸15は、装置本体13内部から外部へ延在する軸体であって、端部にリム体16が取り付けられる。
【0011】
リム体16は、円筒状のホイールが回転軸15を中心として放射状に分割された複数のリムピースにより構成され、複数のリムピースが図外の拡縮機構によって半径方向に拡縮動作することで種々のサイズの台タイヤ2を保持することができる。また、リム体16には、リム体16の外周面を包囲する図外のシール体が配設される。
台タイヤ2をリム体16に保持させるには、各リムピースを縮径させた状態で、台タイヤ2をリムピースの外周面に配置して拡縮機構によってリムピースを半径方向外側に拡径し、台タイヤ2のビード部をリム体16の外周面に密着させることにより行われる。
この状態において、台タイヤ2のビード部は、シール体を介してリム体16の外周面と接触するため、台タイヤ2内に充填された空気が外部に漏れることはない。つまり、リム体16は、台タイヤに内圧が印加された状態で回転不能に保持し、モータ14の駆動により回転軸15が一定方向に回転することにより回転する。
【0012】
押出し装置20は、概略、クッションゴム3を内部に貯留するシリンダ21と、シリンダ21内にクッションゴム3の組成物を投入するためのホッパ22と、シリンダ21内のクッションゴム3を混練するスクリュー23と、スクリュー23の回転動作により押出されるクッションゴム3を台タイヤ2に対して吐出する吐出口25と、スクリュー23を回転駆動させるスクリューモータ26とを備える。
シリンダ21は、中空の円筒体であって、内部に取着された図外のヒーターにより、内部に貯留されるクッションゴム3を加熱する。ホッパ22は、シリンダ21の後端部に設けられるシリンダ21の内部と連通する上方開口の投入口である。ホッパ22から投入されたクッションゴム3の組成物は、シリンダ21内のヒーターにより加熱されながらスクリュー23の回転により混練されてクッションゴム3として生成される。
スクリュー23は、シリンダ21の後端部に取り付けられたスクリューモータ26の駆動によって回転する螺旋体であって、シリンダ21内においてシリンダ21の延長方向に沿って延在する。スクリュー23は、回転中心軸としての軸部23Aと、当該軸部23Aに対して螺旋状に延びる羽根部23Bとからなり、シリンダ21内のクッションゴム3はスクリュー23の回転動作により、徐々に吐出口25の方向へと搬送される。吐出口25は、先端部が先細りとなるように形成された開口であって、当該吐出口25から台タイヤ2のトレッド貼着面2Aに対して吐出されるクッションゴム3は、トレッド貼着面2Aの幅よりも僅かに幅広な帯状に成型される。
【0013】
スクリューモータ26は、図外の伝達機構を介してスクリュー23の軸部23Aと接続される。また、スクリューモータ26は、制御装置30から出力される回転速度制御信号又は回転停止信号により、回転又は停止する。
クッションゴム3の吐出動作は、台タイヤ2の一本分毎に行われ、吐出口25から吐出されるクッションゴム3の一回の押出し量は、台タイヤ2の外周(周長)1周分と略同一である。
【0014】
なお、本実施形態では、押出し装置20から吐出されたクッションゴム3を台タイヤ2のトレッド貼着面2Aに直接吐出する形態としたが、押出し装置20と台タイヤ2との間に吐出されたクッションゴム3を搬送する搬送装置を設けても良い。
具体的には、押出し装置20により吐出されたクッションゴム3を搬送装置によって連続的に搬送し、クッションゴム3をトレッド貼着面2Aに貼着する形態、或いは、クッションゴム3を台タイヤ2の外周1周分の周長となるまで吐出後、搬送装置によって搬送し、トレッド貼着面2Aに貼着する形態としても良い。
【0015】
図2は、制御装置30により制御される台タイヤ保持装置10と押出し装置20との電気的接続を示すブロック図である。
制御装置30は、所謂コンピュータであって、演算手段としてのCPU、記憶装置手段としてのROM,RAM、通信手段としての入出力インターフェースを備える。制御装置30は、入力手段としての貼着開始スイッチからの貼着開始信号に基づいて動作する。
制御装置30は、保持装置制御手段32、押出し装置制御手段33及び計時手段34を備える。制御装置30は、保持装置制御手段32に貼着開始スイッチ31から出力される貼着開始信号が入力されることにより台タイヤ2の回転を開始させる回転開始信号をモータ14に出力する。また、制御装置30は、保持装置制御手段32に後述の押出し装置制御手段33から出力される停止信号が入力されることにより台タイヤ2の回転を停止させる回転停止信号をモータ14に出力する。
【0016】
計時手段34は、制御装置30内に内蔵されるタイマーであって、貼着開始スイッチ31から出力される貼着開始信号が入力されることにより押出し装置20の稼働時間の計測を開始する。また、計時手段34は、台タイヤ2の外周1周分に相当するクッションゴム3の押出しに要する時間が経過した時に押出し装置20によるクッションゴム3の押出しを停止させるための稼働終了信号を押出し装置制御手段33に出力する。
【0017】
押出し装置制御手段33は、押出し装置20から吐出され、トレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の単位面積当りの貼着量を一定に保ち、クッションゴム3の厚さが均一となるように押出し装置20を制御する。
具体的には、押出し装置制御手段33は、押出し装置20のスクリュー23の回転速度を押出し装置20の稼働時間に応じて制御するための回転速度制御データM1を記憶し、当該回転速度制御データM1に基づいて回転速度制御信号をスクリューモータ26に出力する。図3に示すように、回転速度制御データM1は、押出し装置20の稼働時間に応じて、スクリュー23の回転速度を直線的に減少させる制御を行うためのものである。回転速度制御データM1は、例えば、スクリュー23の回転速度を一定とした時に、押出し装置20の稼働時間に対して台タイヤ2の外周面に貼着されたクッションゴム3の厚さを実験的に測定することにより作成される。
即ち、押出し装置制御手段33は、貼着開始スイッチ31から貼着開始信号が出力されると、回転速度制御データM1を参照して稼働時間に応じた回転速度で押出し装置20のスクリュー23が回転するように制御する。そして、押出し装置制御手段33は、計時手段34から台タイヤ2の1周分に相当する稼働時間となった時に稼働終了信号が入力されると押出し装置20のスクリューモータ26に回転停止信号を出力する。また、押出し装置制御手段33は、計時手段34から入力される時間信号に基づいて台タイヤ2の回転を停止させる停止信号を保持装置制御手段32に出力する。
よって、回転速度制御データM1に基づいて、押出し装置制御手段33は、吐出開始からスクリュー23の回転速度を漸次減少させることで吐出量を制御し、トレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の単位面積当りの貼着量を一定にしてクッションゴム3の厚さが均一となるように制御する。
なお、回転速度制御データM1は、稼働時間に応じてスクリュー23の回転速度を直線的に減少させるとして説明したが、稼働時間に応じてスクリュー23の回転速度を段階的に減少させるようにしても良く、また、曲線的に漸減するようにしても良い。
【0018】
以下、クッションゴム貼着装置1により、台タイヤ2にクッションゴム3を貼着する動作について図1を用いて説明する。
まず、作業者により、あらかじめトレッド貼着面2Aの成型された台タイヤ2が台タイヤ保持装置10のリム体16に配設される。次に、作業者が貼着開始スイッチ31を操作することにより貼着開始信号が制御装置30に出力され、クッションゴム3の貼着が開始される。
貼着開始信号が入力された制御装置30は、計時手段34が貼着動作の稼働時間の計時を開始し、保持装置制御手段32からモータ14に回転開始信号を出力し、押出し装置制御手段33からスクリューモータ26に回転速度制御信号を出力する。
【0019】
よって、台タイヤ保持装置10の台タイヤ2が回転を開始し、押出し装置20のスクリュー23が回転速度制御データM1に従って設定された所定の回転速度で回転を開始する。そして、押出し装置20は、回転速度制御データM1に従って回転開始から回転終了までの間に漸次減少するようにスクリュー23の回転速度が制御され、台タイヤ2の外周に貼着されるクッションゴム3の厚さが均一となるようにクッションゴム3を連続的に吐出する。なお、スクリュー23の具体的な回転速度の制御は、スクリューモータ26に印加する電圧値、電流値、或いは周波数等により行われる。
【0020】
台タイヤ2へのクッションゴム3の貼着が開始されて所定時間が経過し、計時手段34は台タイヤ2の外周1周分の吐出時間に相当する稼働時間が経過した時に、押出し装置制御手段33に稼働終了信号を出力する。そして、押出し装置制御手段33は、押出し装置20のスクリューモータ26に回転停止信号を出力してスクリュー23の回転を停止する。また、押出し装置制御手段33は、回転停止信号を出力してから所定時間経過後に、停止信号を保持装置制御手段32に出力して、台タイヤ2の回転を停止することにより、台タイヤ2のトレッド貼着面2Aへのクッションゴム3の貼着が終了する。
【0021】
図4は、上記クッションゴム貼着装置1により台タイヤ2にクッションゴム3を貼着した時の効果を検証するために、押出し装置20の稼働時間に対するクッションゴム3の厚さの変化を調べた結果である。同図において、横軸は押出し装置20の稼働時間、縦軸は貼着位置P1におけるクッションゴム3の厚さを測定した時の厚さの変化量である。クッションゴム3の厚さは、非接触式の変位センサにより測定される。非接触式の変位センサには、例えば、レーザセンサが挙げられる。そして、クッションゴム3の厚さの変化量は、円周方向に沿ってクッションゴム3を貼着する時の貼着位置P1におけるクッションゴム3の表面から図外の変位センサまでの距離の変化により算出される。なお、クッションゴム3の円周方向に沿った厚さは、上記変化量とクッションゴム3貼着前におけるセンサからトレッド貼着面2Aまでの距離との差によって算出される。
【0022】
図4の波形f3に示すように、回転速度制御データM1に基づき、押出し装置20の稼働時間の増加に従ってスクリュー23の回転速度を漸次減少させてクッションゴム3をトレッド貼着面2Aに吐出させることにより、台タイヤ2のトレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の厚さは、クッションゴム3の貼着開始から終了までの間ほとんど変化していない。
一方、波形f1は、台タイヤ2の回転速度及びスクリュー23の回転速度を常に一定とし、トレッド貼着面2Aにクッションゴム3を貼着したので、押出し装置20の稼働時間が増加するに従って、クッションゴム3の厚さが増加している。
以上説明したとおり、本実施形態によれば、押出し装置20の稼働時間が増加するに従ってクッションゴム3の温度が上昇し、粘度が減少することによってクッションゴム3の吐出量が増加した場合であっても、押出し装置20の稼働時間に従って、スクリュー23の回転速度を漸次減少させるようにしたことにより、押出し装置20から単位時間当たりに吐出されるクッションゴム3の吐出量を一定とすることができるので、クッションゴム3の厚さを台タイヤ2の円周方向に沿って均一にすることができる。そして、上記装置によってクッションゴム3が貼着された台タイヤ2に加硫済みタイヤトレッドが配設された製品タイヤは、当該製品タイヤの中心から外周面までの距離が円周方向に沿って一定になるので、ユニフォーミティに優れた製品タイヤとなる。
【0023】
台タイヤ2のトレッド貼着面2Aにクッションゴム3の貼着を終えた台タイヤ2は、トレッド貼付け工程及び加硫工程を経て、最終的に製品タイヤとして成形される。具体的には、クッションゴム3を貼着した台タイヤ2の外周面に、トレッドパターンが成型された加硫済みタイヤトレッドを1周分巻回し、当該加硫済みタイヤトレッドを台タイヤ2に密着させるための加硫治具を装着した後に、加硫缶と呼ばれる図外の加硫装置に投入し、クッションゴム3を加硫することにより台タイヤ2と加硫済みタイヤトレッドとを一体化し、製品としての機能を発揮し得る製品タイヤとして製造する。
【0024】
上記実施形態1では、押出し装置制御手段33とは別に計時手段34を制御装置30に設けたが、押出し装置制御手段33に計時手段34が含まれるようにしても良い。また、制御装置30に計時手段34を設けずに、回転速度制御データM1をトレッド貼着面2Aの1周分となるように構成し、貼着開始スイッチ31の操作により押出し装置制御手段33に記憶される回転速度制御データM1に基づいてスクリュー23の回転速度を制御するようにしても良い。
【0025】
実施形態2
図5は、実施形態2におけるクッションゴム貼着装置1の電気的接続を示すブロック図である。
以下、本発明の他の実施形態(実施形態2)について説明する。本実施形態においては、クッションゴム3の厚さを台タイヤ2の円周方向に沿って一定とするために、押出し装置20の稼働時間の増加に従って、台タイヤ2の回転速度を漸次増加させた点で上記実施形態1と異なる。即ち、実施形態1では、クッションゴム3の厚さを台タイヤ2の円周方向に沿って均一とするために、押出し装置20のスクリュー23の回転速度が漸次減少するように制御したが、実施形態2では、押出し装置20の稼働時間の増加に伴って台タイヤ2の回転速度を漸次増加させるように制御して、台タイヤ2のトレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の厚さが均一となるようにしている。
【0026】
以下、実施形態2について説明するが、実施形態1と同一構成については、同一の符号を用い、また、その説明を省略する。
保持装置制御手段32は、押出し装置20から吐出されるクッションゴム3の厚さが一定となるように台タイヤ保持装置10を制御する。
具体的には、保持装置制御手段32は、台タイヤ保持装置10のリム体16によって保持される台タイヤ2の回転速度を押出し装置20の稼働時間に応じて制御するための回転速度制御データM2を記憶し、当該回転速度制御データM2に基づいて回転速度制御信号をモータ14に出力する。図6に示すように、回転速度制御データM2は、押出し装置20の稼働時間に応じて、台タイヤ2の回転速度を直線的に増加させる制御を行うためのものである。回転速度制御データM2は、例えば、押出し装置20のスクリュー23の回転速度と、押出し装置20の回転速度とを一定とした時に、押出し装置20の稼働時間に対して台タイヤ2の外周面に吐出されるクッションゴム3の厚さをあらかじめ実験的に測定することにより作成される。
【0027】
即ち、保持装置制御手段32は、貼着開始スイッチ31から貼着開始信号が出力されると、回転速度制御データM2を参照して稼働時間に応じた回転速度で台タイヤ2が回転するように制御する。そして、保持装置制御手段32は、計時手段34から台タイヤ2の外周1周分に相当する稼働時間となった時に稼働終了信号が入力されると台タイヤ保持装置10のモータ14に回転停止信号を出力する。また、保持装置制御手段32は、計時手段34から入力される時間信号に基づいて台タイヤ2の回転を停止させる停止信号を押出し保持装置制御手段33に出力する。
よって、保持装置制御手段32は、回転速度制御データM2に基づいて押出し装置20の吐出開始から台タイヤ2の回転速度を漸次増加させることでトレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の単位面積当りの貼着量を一定にしてクッションゴム3の厚さが均一になるように制御する。
なお、回転速度制御データM2は、稼働時間に応じて台タイヤ2の回転速度を直線的に増加させるとして説明したが、稼働時間に応じて台タイヤ2の回転速度を段階的に増加させるようにしても、曲線的に漸増するようにしても良く、台タイヤ2に貼着するクッションゴム3の厚さが円周方向に沿って均一となるように適宜設定すれば良い。
また、台タイヤ2の具体的な回転速度の制御は、モータ14に印加する電圧値、電流値、或いは周波数等を変更することにより行われる。
【0028】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、押出し装置20の稼働時間が増加するに従ってクッションゴム3の温度が上昇して粘度が減少し、クッションゴム3の吐出量が増加する場合であっても、吐出量の増加に従って台タイヤ2の回転速度を漸次増加させることにより、トレッド貼着面2Aに単位時間当たりに貼着するクッションゴム3の貼着量が一定となり、台タイヤ2の円周方向に沿って貼着するクッションゴム3の厚さを一定にすることができる。
【0029】
上記実施形態2では、保持装置制御手段32とは別に計時手段34を制御装置30に設けたが、保持装置制御手段32に計時手段34が含まれるようにしても良い。また、制御装置30に計時手段34を設けずに、回転速度制御データM2をトレッド貼着面2Aの1周分となるように構成し、貼着開始スイッチ31の操作により保持装置制御手段32に記憶される回転速度制御データM2に基づいて台タイヤ2の回転速度を制御するようにしても良い。
【0030】
実施形態3
以下、本発明の他の実施形態(実施形態3)について説明する。本実施形態においては、クッションゴム3の厚さを台タイヤ2の円周方向に沿って一定とするために、押出し装置20の稼働時間の増加に伴って、スクリュー23の回転速度を漸次減少させ、かつ台タイヤ2の回転速度を漸次増加させる点で上記実施形態1及び実施形態2と異なる。つまり、本実施形態は、実施形態1及び実施形態2を組み合わせた形態である。
即ち、押出し装置制御手段33はスクリュー23の回転速度を制御する回転速度制御データM1′を記憶し、保持装置制御手段32は台タイヤ2の回転速度を制御する回転速度制御データM2′を記憶する。よって、押出し装置制御手段33は記憶する回転速度制御データM1′に基づいて、押出し装置20の稼働時間の増加に伴いスクリュー23の回転速度を漸次減少させる信号をスクリューモータ26に出力する。また、保持装置制御手段32は記憶する回転速度制御データM2′に基づいて押出し装置20の稼働時間の増加に伴い台タイヤ2の回転速度を漸次増加させる信号をモータ14に出力する。
例えば、押出し装置制御手段33の記憶する回転速度制御データM1′と保持装置制御手段32の記憶する回転速度制御データM2′とを実施形態1及び実施形態2の回転速度制御データM1と回転速度制御データM2との勾配を半分にしたものとし、スクリュー23及び台タイヤ2の両方の回転速度を制御することによりトレッド貼着面2Aに貼着するクッションゴム3の単位面積当りの貼着量を一定にしてクッションゴム3の厚さを均一にすることができる。
【0031】
以上説明したとおり、実施形態3によれば、押出し装置20の稼働時間が増加するに従ってクッションゴム3の温度が上昇し、粘度が減少することによって単位時間当たりのクッションゴム3の吐出量が増加する場合であっても、稼働時間の増加に従って押出し装置20のスクリュー23の回転速度を漸次減少させ、台タイヤ2の回転速度を漸次増加させたので、上記実施形態1及び実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0032】
上記実施形態3では、保持装置制御手段32と押出し装置制御手段33とは別に計時手段34を制御装置30に設けたが、保持装置制御手段32又は押出し装置制御手段33のいずれかに計時手段34が含まれるようにしても良い。
また、制御装置30に計時手段34を設けずに、回転速度制御データM1と回転速度制御データM2とをそれぞれトレッド貼着面2Aの1周分となるように構成し、貼着開始スイッチ31の操作により回転速度制御データM1と回転速度制御データM2とに基づいてスクリュー23と台タイヤ2との回転をそれぞれ制御するようにしても良い。
【0033】
上記実施形態1乃至実施形態3では、押出し装置20の稼働時間の増加により、押出し装置20内部に貯留されたクッションゴム3の温度が上昇し、クッションゴム3の温度上昇に伴いクッションゴム3の粘度が減少することによって単位時間当たりのクッションゴム3の吐出量が増加するため、台タイヤ2に貼着するクッションゴム3の単位面積あたりの貼着量が一定となるようにスクリュー23や台タイヤ2の回転速度を制御したが、押出し装置20の温度や押出し装置20に貯留されるクッションゴム3の温度を計測し、押出し装置20やクッションゴム3の温度が所定の温度以下の時に上述のスクリュー23や台タイヤ2の回転速度の制御を行うようにしても良い。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記実施形態1乃至実施形態3において、押出し装置20から吐出されるクッションゴム3が、予め台タイヤ2のトレッド幅と対応する幅に成型される形態としたが、クッションゴム3の幅をトレッド幅よりも狭くし、台タイヤ2を複数回回転させて台タイヤ2の外周1周分のクッションゴム3を貼着する形態としてもよい。
また、押出し装置20の吐出口25付近にクッションゴム3の温度を測定するセンサを設け、センサからの出力信号に基づいて、スクリュー23、又は、台タイヤ2、若しくは、スクリュー23と台タイヤ2との両方の回転速度を制御する形態とすることにより、台タイヤ2に貼着されるクッションゴム3の厚さの精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 クッションゴム貼着装置、2 台タイヤ、3 クッションゴム、
10 台タイヤ保持装置、20 押出し装置、30 制御装置、
32 保持装置制御手段、33 押出し装置制御手段、34 計時手段、
M1 回転速度制御データ、M2 回転速度制御データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、前記トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、
前記台タイヤを一定速度で回転させ、当該回転中の台タイヤに対して前記スクリューの回転速度を漸減しながら前記クッションゴムを吐出する工程を有することを特徴とするタイヤ製造方法。
【請求項2】
クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、前記トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、
前記台タイヤを回転速度が漸増するように回転させ、当該回転中の台タイヤに対して一定速度で回転する前記スクリューにより前記クッションゴムを吐出する工程を有することを特徴とするタイヤ製造方法。
【請求項3】
クッションゴム吐出手段のスクリューの回転により吐出される未加硫のクッションゴムを台タイヤのトレッド貼着面に貼着し、前記トレッド貼着面にタイヤトレッドを配置して加硫することによりタイヤを製造する方法であって、
前記台タイヤを回転速度が漸増するように回転させ、かつ、当該回転中の台タイヤに対して前記スクリューの回転速度を漸減しながら前記クッションゴムを吐出する工程を有することを特徴とするタイヤ製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−106377(P2012−106377A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255862(P2010−255862)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】