説明

タッチパネル用電極フィルム及びタッチパネル

【課題】(i)抵抗値が5〜5000Ω/□で、(ii)柔軟性(フレキシビリィティ)に富み、(iii)導電性部と透明基材との密着性が高く、(iv)可視光領域において70%以上の光線透過率を有し、かつ、製造コストを低減できるタッチパネル用電極フィルム及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】プライマー層のうち導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含み、該導電パターン層中の該導電体粒子の分布は、(i)相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電パターンの頂部近傍において密である、又は(ii)相対的に、該導電体粒子の間隔が該プライマー層近傍において大であり、該凸状パターン層の頂部近傍において小である、ことを特徴とするタッチパネル用電極フィルム、及びそれを用いたタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用電極フィルム及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の画面上に装着された入力装置として使用されている。タッチパネルの形式は、入力位置の検出方法により、静電容量方式、光学方式、超音波方式、抵抗膜(薄膜抵抗)方式等が提案されているが、特に薄膜抵抗方式のタッチパネルは、構造や検出方法が単純であることから広く普及している。一般的な薄膜抵抗方式のタッチパネルは、表面にITO(スズ添加酸化インジウム)等の透明導電膜を形成した電極フィルムを2枚用い、透明電極膜側が向かい合うようにそれぞれの電極フィルムを対向させ、スペーサ等で一定間隔を隔てるように構成されている。
【0003】
こうした従来の薄膜抵抗方式のタッチパネルには、タッチパネル用途として要求される適度な導電性(適度な電気抵抗値)を維持しつつ光の透過率を向上させるという課題があった。この課題に対し、下記特許文献1では、ITO薄膜からなる電極フィルムに形成された透明導電膜に欠落部を設け、その欠落部の存在によって光の透過率を向上させた電極フィルムが提案されている。
【0004】
しかしながら、従来の薄膜抵抗方式のタッチパネルには、特許文献1の場合も含めて、ITO等の透明導電膜が形成されているが、この透明導電膜は、脆く、曲げ等によって亀裂が生じたり、剥離したりするという問題が残っていた。この問題に対し、下記特許文献2では、ITO薄膜の透明導電膜を用いない電極フィルムが提案されている。具体的には、レジスト膜で格子網目状の開口パターンを形成し、その開ロパターンに無電解メッキで格子網目状の金属膜を形成してなる電極フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−326152号公報
【特許文献2】特開2004−192093号公報
【特許文献3】WO2008−149969パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の電極フィルムは、共に成膜速度が遅い真空蒸着やスパッタによるITO膜を形成したり、無電解めっき法により導電性金属膜を形成する方法で得られるものなので、生産性の点で劣り、製造コストの低減を図ることができないという難点がある。
【0007】
一方、透明な導電性フィルムが要求される技術として、プラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするための電磁波シールド材がある。
本出願人は、タッチパネルにも応用が可能な導電性フィルムの技術に関して、特定の凹版印刷により導電性材料組成物を透明基材上に転写し、導電性を有するパターンを形成してなる電磁波シールド材において、導電性材料組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材を提案している(特許文献3参照)。
この方法により得られる導電性フィルムは、真空蒸着やスパッタに比べて高速生産が可能で、而かもITO薄膜に比べて可撓性も高く曲げた時の亀裂も生じ難く、且つタッチパネル用途として要求される適度な導電性との両立も可能なものである。
但し、かかる方法においても、なお、以下の如き要解決課題が残存していることが判明した。
【0008】
〔課題1〕
最近の傾向として、タッチパネル用電極用途の場合に於いては、適度な導電性と高透明性との両立性を要求されている。特に、特許文献1記載の導電性フィルムのように、導電性組成物から成る細線パターンの場合においては、より高透明のものを得る為には、パターンの線幅を、より一層微細化することが求められている。具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められて来ている。
一方で、導電体粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物から成る導電パターン層の線幅が此のように細くなると;
(1)一般に物体の電気抵抗Rは、其の長さL及び体積抵抗率ρに比例し、その断面積Sに反比例する。即ち、R=ρL/Sとなる。其の為、同じ導電性組成物(ρ一定)で同じ平面視パターン形状(L一定)で、且つ、同じ厚みのパターンを印刷形成する場合、線幅の減少に比例して断面積Sも減少し、導電パターン部分の電気抵抗Rは高くなる。これに伴い、タッチパネル用電極フィルムとしての表面抵抗率も増大し、適正範囲から逸脱する。
(2)印刷厚みを一定として、パターン線幅が狭くなり、線幅と導電体粒子径とが近付いてくると、同じ粒子径及び粒子形状の導電体粒子であっても、該細線パターンの単位断面積中に於ける該導電体粒子同士が接触する部分の総面積の比率は低下する。其の結果、幾何学的断面積SGEOに比べて、現実の電流通路となり得る導電体粒子(群)の有効総断面積SAVは低下し(SAV<SGEO)、導電パターン部分の電気抵抗Rは、線幅減少による幾何学的要因(断面積S)の影響以上に高くなるため、タッチパネル用電極フィルムの表面抵抗率も線幅から単純計算した値以上に上昇してしまう。其の結果、タッチパネル用電極フィルム特性は低下する。この状況は、線幅を変えずに厚みを薄くした場合でも同様に生じるため、印刷厚みが薄くなり導電体粒子径と近づいた場合も、急激に表面抵抗率が増大するという結果となる。
勿論、該導電パターン層上に、電解めっき等によって、低体積抵抗率の金属層を形成すれば、此の電気抵抗の上昇分は相殺し得る。しかし、その場合は、工程数及び材料費の増加と歩留まりの低下を生じる為、好ましい形態とは言えなかった。
【0009】
〔課題2〕
又、導電体粒子は一般に可視光線反射率も高い為、導電性組成物は可視光線反射率が高くなる。特に金属粒子はこの傾向が強く、中でも低抵抗化する為に通常採用される鱗片状の導電体粒子の場合、導電パターン表面には大局的に見た場合に鏡面に近い面が形成される為、かかる反射は鏡面反射に近くなる。高可視光線反射率、中でも鏡面反射成分が多い場合、該導電パターン表面は(透明基材側面及び透明基材とは反対側面の両面とも)電燈光、日光等の外光、或いはディスプレイ装置からの画像光を反射し、画面が白化したり、画像コントラストが低下したりする問題が生じる。
勿論、黒鉛のような可視光線反射率の低い導電体粒子を使用すれば、導電パターンによる此の様な画面の白化、コントラスト低下は防げる。しかし、其の場合は、黒鉛の体積抵抗率が銀等の金属にくらべて高いため、同じ導電パターン設計をした場合には導電性が劣る。これは、線幅が広い場合は比較的問題になり難いが、導電パターンを細線化した場合には、前記の如く幾何学的要因による電気抵抗の上昇とも相俟って、タッチパネル用電極フィルム性能の不足につながると云う問題が生じる。更に、黒鉛のような炭素の粒子は、導電性組成物の構造粘性を上昇させ、流動性を低下させる場合も多い為、これが細線パターンの再現性不良、転移率低下の傾向を生じさせることも問題となる。
【0010】
〔課題3〕
またさらに、課題として、該転写工程において、版面との広い接触面積を占めるプライマー層と版面との離型(以下、「離版」という。)が円滑でない(重い)と図7(A)に示すように正常ならば凹版ロール62とニップロール67の接線位置である、シートの剥離開始点(正常点)Pが、凹版ロール62の移動に引きずられ、例えば図7(B)に示す限界点P'に達して、再度正常点P迄戻る動作を周期的に繰返し、振動的離版状態を呈することがある。かかる振動的離版状態では、導電パターン表面に振動的に厚みの増減等の変調がかかり図10(A)に示すような外観上の縞状ムラSが発生する。また、離版時の振動で、パターン状線部の未硬化状態の導電性インキ組成物の一部が、開口部に点状に飛散するという問題が発生した。かかる飛散物Gは、図10(B)に示すように、開口部に存在すると、外観不良や光透過率の低下を招来し、タッチパネル用電極フィルムとして使用不可となる場合がある。
このように、再現性に変動があり、良製品の歩留まりが必ずしも満足できないことや、タッチパネル用電極フィルムとして使用するためには、抵抗値をさらに調整する必要があることなどが判明した。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、パターンの線幅を、より一層微細化、具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められているタッチパネル用電極フィルムにおいて、(i)導電体粒子の分散状態乃至は導電体粒子間の電気的接触を改良してなり、抵抗値が5〜5000Ω/□で、(ii)柔軟性(フレキシビリィティ)に富み、(iii)導電性部と透明基材との密着性が高く、(iv)可視光領域において70%以上の光線透過率を有し、かつ、製造コストを低減できるタッチパネル用電極フィルム及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる導電パターン層を有するタッチパネル用電極フィルムであって、前記プライマー層のうち前記導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、しかも該導電体粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎に、又該導電パターン層の頂部近傍において密であるように、又は該導電体粒子の間隔が該プライマー層近傍において大であり、該導電パターン層の頂部近傍において小であるように構成し、導電ペースト引抜き時の振動的離版による開口部の点状飛散物G及び導電パターン層の縞状ムラSの発生を防止するには、プライマー層に離型剤を添加し、必要に応じて表面抵抗率をより一層低減するには、導電層を形成する硬化工程と同時又は硬化工程以降に該導電層を水又は酸と接触させる処理を施すことで解決しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる導電パターン層を有するタッチパネル用電極フィルムであって、
前記プライマー層のうち前記導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電パターン層の頂部近傍において密である、ことを特徴とするタッチパネル用電極フィルム、
(2)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる導電パターン層を有するタッチパネル用電極フィルムであって、
前記プライマー層のうち前記導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電パターン層中の該導電体粒子の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、該凸状パターン層の頂部近傍において小である、ことを特徴とするタッチパネル用電極フィルム、及び
(3)2枚の電極フィルムそれぞれの電極面を一定間隔で対向させてなるタッチパネルであって、少なくとも一方側の電極フィルムに前記(1)又は(2)に記載のタッチパネル用電極フィルムを用いることを特徴とするタッチパネル、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により得られるタッチパネル用電極フィルムは、(i) 導電パターン層(導電性部)と透明基材との密着性が高く、(ii)表面電気抵抗が5〜5000Ω/□に調整され、(iii)柔軟性(フレキシビリィティ)に富み、(iv)可視光領域において70%以上の光線透過率を有しており、かつ、低コスト化を図ることができる。
タッチパネルの透明電極としての使用に際して、操作者側に配置するものは、透明基材側から導電パターン層を見ることになるが、その場合、導電パターン層形成部においてプライマー層近傍の導電体粒子の分布が疎なので、導電体粒子による反射が抑制され、液晶表示装置等ディスプレイの表示装置のコントラストを阻害されることがなく、また、導電パターン層の頂部付近は導電体粒子の分布が密なので、タッチパネルの他方の電極との接触時の導通がよく、軽いタッチで機能を発現させることができる。
また、必要に応じて、電気抵抗低減化処理を行えば、導電体粒子の添加量を低減することができ、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの3例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの代表的な模式平面図である。
【図3】導電パターン(導電メッシュ)を拡大した模式斜視図である。
【図4】図1に示すタッチパネル用電極フィルムを入力側と表示装置側の両方の電極フィルムとして配置したタッチパネルを示す模式断面図である。
【図5】図1に示すタッチパネル用電極フィルムを入力側の電極フィルムとして配置したタッチパネルを示す模式断面図である。
【図6】本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】導電性材料組成物をプライマー層上に転写する工程において(A)正常な離版状態、(B)異常な離版状態、の説明図である。
【図8】本発明のタッチパネル用電極フィルムにおける導電パターンの断面SEM写真である。
【図9】導電体粒子が一部融合した導電パターンの断面SEM写真である。
【図10】(A)導電パターン層の縞状ムラの説明図、(B)導電パターンの開口部における飛散物の説明図である。
【図11】マルチタッチタイプのタッチパネルに用いる電極フィルムの一例を示す模式平面図である。
【図12】導電パターン層における導電体粒子密度分布の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
本発明に係るタッチパネル用電極フィルム10(以下、単に「電極フィルム10」という。)は、図1に示すように、透明基材1と、透明基材1の一方の面S1に設けられたプライマー層2と、プライマー層2上に所定のパターンで設けられた導電性組成物からなる導電パターン層(導電メッシュ)3と、透明基材1の他方の面S2に必要に応じて設けられるハードコート層4とを有している。
【0018】
図1(A)〜(C)のうち、図1(A)に示す電極フィルム10Aは、透明基材1の一方の面S1上に、プライマー層2及び導電パターン層3がその順で設けられ、透明基材1の他方の面S2上にハードコート層4が設けられた態様である。図1(B)に示す電極フィルム10Bは、透明基材1の一方の面S1上に、プライマー層2及び導電パターン層3がその順で設けられ、透明基材1の他方の面S2上に易接着層5、ハードコート層4及びAR層(反射防止層)6が、その順で設けられた態様である。図1(C)に示す電極フィルム10Cは、透明基材1の他方の面S1上にプライマー層2及び導電パターン層3がその順で設けられ且つ導電メッシュ間の開口部19に充填層9が設けられ、透明基材1の他方の面S2上に易接着層5、ハードコート層4及びAR層(反射防止層)6がその順で設けられた態様である。
【0019】
また、電極フィルム10の平面形態は、図2に示すように、中央部に位置して表示装置の表示面に対峙する導電パターン層からなる導電メッシュパターン部7と、その導電メッシュパターン部7の周りには導電メッシュパターンが形成されていない周辺部8(配線は省略している。)とを有しているが、必ずしも図示の形態に限定されない。なお、図3は、線幅W、線間ピッチPで形成された導電パターン層3を拡大した状態を模式的に示す斜視図である。
【0020】
本発明に係るタッチパネル50A、50Bは、図4及び図5に示すように、2枚の電極フィルム(10と20、又は、10と30)それぞれの電極面を一定間隔Gで対向させてなるタッチパネルであって、少なくとも入力ペン等40が接触する入力側の電極フィルム10が、導電パターン層(導電メッシュ)3を電極として有している。
なお、表示装置(固定)側の電極フィルムは、本発明に係る電極フィルム20であってもよいし、従来の電極フィルム、図5に示すように、ITO等の透明導電膜23が透明基材21上に成膜された電極フィルム30であってもよい。
【0021】
なお、図11は、マルチタッチ用のタッチパネルを構成する電極フィルム70である。
マルチタッチ用の電極フィルム70は、図11に示すように、複数に領域分割された導電メッシュ71として透明基材上に設けられている。符号72は個々の導電メッシュ71からの配線である。図示しないが、配線は、導電メッシュ71の右側からも出ている。
こうしたマルチタッチ用の電極フィルム70でタッチパネルを構成する場合は、図11の電極フィルム70を2枚用い、1枚の電極フィルム70は図11に図示の如く長手方向が左右方向に向く導電メッシュ71とし、もう1枚の電極フィルム70は、導電メッシュ71の長手方向を上下にして、2枚の電極フィルム70の導電メッシュ71の長手方向が互いに直交するように配置することが望ましい。本発明の電極フィルム70は、導電メッシュ71を印刷手段により形成できるので、こうした形態の導電メッシュパターンに対しても容易に対応できるという利点がある。
【0022】
以下、各構成について詳しく説明する。
【0023】
(透明基材)
透明基材1は、電極フィルム10の基材であり、所望の透明性、機械的強度、プライマー層2との接着性等の要求適性を勘案の上、タッチパネル用として好ましい各種材料の各種厚さのものを選択すればよい。透明基材1の材料としては、樹脂基材であってもよいし、硝子基材等無機基材であってもよいが、入力側の電極フィルム10として利用する場合には、対向する電極フィルム(図4及び図5の符号20と符号30)に導体接触できる程度の柔軟性があることが必要である。一方、表示装置側の電極フィルム20,30(図4及び図5参照)として利用する場合には、そうした柔軟性はあってもなくてもよい。また、厚さ形態としては、フィルム状、シート状、或いは板状でもよいが、タッチパネル用の電極として利用できる程度の厚さであることが必要であり、入力側の電極フィルム10の場合は、通常は、フィルム又はシート状の樹脂基材が好ましく用いられる。一方、表示装置側の電極フィルム20、30の場合は、特に制限されず、樹脂基材であっても無機基材であってもよいし、フィルム状、シート状、板状の何れでも良い。
【0024】
透明基材1としては、アクリル樹脂(ここでは、所謂、メタクリル樹脂も包含する概念として用いる)、或いはポリエステル樹脂等をベースとするフィルムが好ましいが、これに限定されない。樹脂材料としては、具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル等が使用できる。中でも、二軸延伸PETフィルムが透明性、耐久性に優れ、しかもその後の工程で紫外線照射処理や加熱処理を経た場合でも熱変形等しない耐熱性を有する点で好適である。
【0025】
一方、無機基材を構成する無機材料としては、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛硝子、硼珪酸硝子、石英硝子、燐酸硝子等の硝子、結晶質石英(水晶)、方解石(炭酸カルシウム)、ダイヤモンド(金剛石)等の透明無機結晶、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)等の透明セラミックス等が挙げられる。
【0026】
透明基材1は、ロール・トウ・ロールで加工可能な連続な長尺帯状フィルムであってもよいし、所定の大きさからなる枚葉フィルムであってもよい。なお、ここで「ロール・トウ・ロール」とは、長尺帯状の基材を巻取(ロール)の形態で供給し、その巻取から帯状シートを巻き出して所定の加工をし、しかる後に再度巻取の形態に巻き取って保管、搬送するフィルムの利用形態を意味する。
【0027】
透明基材1の厚さは、その材質によっても異なるが、入力側の電極フィルム10として好ましく利用される例えばPET基材の場合には、通常は100μm〜188μm程度が好ましい。一方、表示装置側の電極フィルム20,30として利用する樹脂基材や無機基材(ガラス基材)の場合は特に限定されないが、通常は50μm〜5000μm程度である。
【0028】
透明基材1の光透過率としては、タッチパネル50A,50Bが表示装置の前面に設置されるものであるため、100%のものが理想であるが、好ましくは透過率70%以上、より好ましくは80%以上のものを選択する。透明基材1の表面には、必要に応じて、後述するプライマー層2と透明基材1との密着性を改善するために易接着層(図示しない)を設けたり、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理を行ったりしてもよい。易接着層としては、透明基材1とプライマー層2との両方に接着性のある樹脂から構成する。易接着層の樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン等の樹脂の中から適宜選択する。
【0029】
(プライマー層)
プライマー層2は、透明基材1上に密着性よく設けられる。そして、このプライマー層2上には導電パターン層3が密着性よく設けられる。したがって、プライマー層2は、透明基材1と導電パターン層3の両方に対して密着性がよい材料であることが好ましく、また、表示装置の前面に設けられるタッチパネル50A,50Bの構成層であるので、当然のことながら透明であることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を塗工してなる層であることが好ましい。また、密着性、耐久性改善、各種物性付与のために各種添加剤や変性樹脂を使用してもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー(単量体)、或いはプレポリマーやオリゴマーが用いられる。
モノマーとしては、例えば、ラジカル重合性モノマー、具体的には、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートモノマーがあげられる。その他、カチオン重合性モノマー、具体的には、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、プレポリマー(乃至はオリゴマー)としては、例えば、ラジカル重合性プレポリマー、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレー卜、トリアジン(メタ)アクリレー卜、等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレー卜、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマー、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエステル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。ここで、(メタ)アタリレートという表記は、アクリレー卜又はメタクリレートという意味である。
【0032】
これらモノマー、或いはプレポリマレーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0033】
光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマレーの場合には、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系等の化合物が、また、カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して0.1〜5質量部程度添加する。
【0034】
なお、電離放射線としては、紫外線又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0035】
必要に応じて適宜添加剤を添加する。該添加剤としては、例えば、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、光拡散剤等が挙げられる。
【0036】
プライマー層を版表面で硬化させた後に剥離する際、剥離が重い(版との密着が良い)材料系を用いる場合には、版表面に離型加工をしたり、離型材を塗布したりするなどの方法もとられるが、加工コストや離型能力の寿命などと勘案し、必要に応じてプライマー層に離型剤を添加する。本発明において用いる離型剤とは、タッチパネル用電極フィルムの製造において、プライマー硬化工程を経た透明基材上のプライマー層が、版面からの剥離に要する力(剥離力)を小さくして、円滑に剥がれるように剥離性を向上させるための添加剤をいう。かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等が挙げられる。
【0037】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルであるものが好ましい。一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
これらの中では、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のステアリン酸エステルが、透明性、離型性の観点から特に好ましい。
これらの離型剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
離型剤は、プライマー層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物全量に基づき、0.1〜5質量%添加することが好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。0.1質量%未満では、プライマー層の版面からの離型性が向上せず、5質量%を超えて添加しても離型性能は飽和し経済的でない。
【0038】
当該電離放射線硬化性樹脂組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、加工コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。外観改善や塗工適性改善などのために溶剤を添加する場合には乾燥が必要となるが、溶剤の添加量が数%程度の量であるならば、硬化後に乾燥させてもよい。残留溶剤量はなるべく少ない方が好ましいが、物性、耐久性に影響が無ければ完全にゼロでなくても良い。
【0039】
プライマー層2の厚さは特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層2の厚さは、通常は、導電パターン層3の厚さとプライマー層2の厚さの合計値の1〜50%程度である。なお、後の製造方法の説明欄で説明するが、導電性組成物3’がプライマー層2上に転写され、さらにその導電性組成物3’を硬化させて電極フィルム10を製造した後におけるプライマー層2は、図6(D)に示すように、導電パターン層3が形成されている部分の厚さTAが、導電パターン層3が形成されていない部分の厚さTBよりも厚いものとなっている。
【0040】
(導電パターン層)
導電パターン層3は、プライマー層2上に所定のパターンで設けられている。該パターンとしては、メッシュ(網目模様又は格子模様)パターンが代表的なものであるが、其の他、ストライプ(縞模様乃至平行線群)パターン、スパイラル(螺旋乃至渦巻)パターン等も用いられる。この導電パターン層3を形成する導電性組成物は、種々の工程を経た後に最終的に導電性の層になっているものであれば特に限定されない。代表的な導電メッシュパターンの場合では、図3に示すように、例えば、線幅Wは5〜200μmとすることができ、線間ピッチPは100〜1000μmとすることができる。開口率(導電メッシュパターンの全面積中における開口部19の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。
【0041】
また、導電パターン層3の厚さTc(図6(D)参照)は、その導電パターン層3の抵抗値によっても異なるが、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
【0042】
導電パターン層3は、図6に示すように、導電性組成物3’を印刷版62の版面63に設けられた凹部64に充填し、それをプライマー層2上に転写して形成される。そうした導電性組成物3’は、版62の凹部64内に充填する時点では流動性を有し、所望のパターンに形成し、硬化せしめた以降の時点で所望の導電性を発現するものであれば特に限定はなく、各種材料、形態のものが使用可能である。代表的なものは、導電体粒子とバインダー樹脂とを含み、さらに必要に応じてその樹脂を溶解乃至分散する溶剤乃至分散剤を含んだ流動性を有するインキ又はペースト状の材料を挙げることができる。この導電性組成物3’からなる導電パターン層3は、導電性組成物3'を乾燥ないし硬化させた後の固形物からなる塗膜のことである。なお、溶解乃至分散としたのは、導電性組成物3’が、溶液状の他、コロイド状である場合も含むからである。
かかる導電体粒子とバインダー樹脂とを含んでなる導電性組成物からなる導電パターン層3は、特に、図12の概念図に示すように、導電体粒子Cpが後述の如く、及び図12乃至図8に図示の如く特定の分布状態にて分布し、そして、図8に図示の如く、導電体粒子Cpの少なくとも一部に於いて、隣接する導電体粒子Cp同士が接触乃至は融合して構成される連なりからなる電流の通路となる経路が形成されてなることを特徴とする。これら導電体粒子Cpの間には、隣接する導電体粒子間の接触乃至融合した部分を除いた間隙にバインダー樹脂Rが介在し、導電パターン層3内の導電体粒子Cp同士を結着してなる。
【0043】
導電性組成物3'の粘度は、例えば後述するように、プライマー層2中のプライマー成分が導電性組成物3'中に浸入して増粘させたり、プライマー一層2と導電性組成物3’とを同時硬化させたりする場合等、その製造工程上との関係で好ましい粘度の大小を一概には言えないが、使用可能な範囲としては、通常、100mPa・s〜1000000mPa・sの範囲内であり、好ましくは、数千mPa・s〜数万mPa・sの範囲内である。
【0044】
導電性組成物3'を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。なお、後述の電気抵抗低減化処理を施す場合は、酸又は温水にて溶解することの無い非水溶性樹脂を用いる。かかるバインダー樹脂を例示すると、熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマー層用の材料として前記したものを挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いても良く、複数の樹脂を混合して用いても良い。
なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、必要に応じて重合開始剤を添加してもよい。
【0045】
また、版62の凹部64への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、メチルエーテル、エチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酢酸ジエチレングリコール−n一ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル頬、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プチルアルコール、ターピネオール等のアルコール類、水等の中から適宜選択した1種乃至2種以上が用いられる。溶剤の含有量は通常、10質量%〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ない方が好ましい。
また、紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化塑性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0046】
また、導電性組成物3'を構成する導電体粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、パラジウム、ニッケル、アルミニウム等の低抵抗率金属粒子、或いは低抵抗率金属以外の材料からなる粒子(上記低抵抗率金属以外の金属粒子、アクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂粒子、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機粒子)の表面に金や銀等の低抵抗率金属をめっきしてなる粒子、グラファイト、カーボンブラック等の導電性炭素の粒子を好ましく挙げることができる。また、導電性セラミックス、或いは導電性有機高分子化合物の粒子も使用できる。形状も球状、回転楕円体状、多面体状、鱗片状、円盤状、繊維状(乃至針状)等から選ぶことができる。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電体粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、例えば、鱗片状の銀粒子の場合には粒子の平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いることができ、カーボンブラック粒子の場合には平均粒子径が0.01〜1μm程度のものを用いることができる。
【0047】
導電性組成物3'中の導電体粒子の含有量は、導電体粒子の導電性や粒子の形態に応じで任意に選択されるが、タッチパネル用電極フィルムとして好適な電気抵抗の発現、導電パターンの機械的強度の維持、及び印刷適正を兼ね備えるためには、例えば導電性組成物3'の固形分100質量部のうち、導電体粒子を40〜99質量部、好ましくは90〜97質量部の範囲で含有させることができる。なお、本願において、平均粒子径というときは、粒度分布計、又はTEM観察で測定した値を指している。また、多面体状、繊維状等の非球面形状の場合は、通常、外接球の直径、対角線長、或いは最長辺の辺長をもって粒子径を定義する。
【0048】
本発明では、バインダー樹脂成分と導電性成分とを有する導電性組成物3'を印刷(凹版から透明基材上への転写)して導電パターン層3が形成されているので、導電性成分の配合を調整すれば、導電パターン層3の抵抗値を容易にコントロールすることができる。一方、そのバインダー樹脂成分には、硬いものや柔らかいものがあり、さらには耐光性にも差があるので、その種類と配合量を調整すれば、導電パターン層3の耐久性をコントロールすることができる。その結果、導電パターン層3が破壊されず、所望の抵抗値を持つ導電パターン層3を設けることができる。
【0049】
また、導電性組成物3'には、必要に応じて、品質向上等を目的に適当な添加物を加えてもよい。例えば、カーボンブラックはそれ自体が黒色であるので必要ないが、黒色顔料や黒色染料を必要に応じて所定量添加することで、タッチパネル50A,50Bを構成したときのコントラストを向上させ、視認性を向上させることができる。また、金属層を設ける場合の金属光沢による反射防止、色ムラ、金属色等の抑制のためには、こうした黒色顔料や黒色染料を含有させることが望ましい。黒色顔料としては、導電体粒子としても機能するカーボンブラック、Fe34、CuO−Cr23、CuO−Fe34−Mn23、CoO−Fe23−Cr23等が挙げられるが、その種類や形状は特に制限はなく、バインダー樹脂中に分散容易な平均粒子径0.1μm以下の着色力の大きな黒色顔料又は黒色染料が好ましい。なお、カーボンブラックを用いる場合には、チャンネルブラック、ファーネスブラック又はランプブラック等の色材用カーボンブラックや、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック等を挙げることができ、中でも平均粒子径が20nm以下のものが好ましく用いられる。また、黒色染料としては、アニリンブラック等の染料を用いることができる。また、導電性組成物3'の流動性や安定性を改善するために、導電性や、プライマー層2との密着性に悪影響を与えない限りにおいて、適宜フィラーや増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
なお、一般に「ナノ粒子」と呼ばれるような平均粒子径が数十nmと小さい粒子はコスト高につながり、また、バインダー樹脂を入れると性能が低下し、インキとしての安定性も低下する。また、粒子径の分布については、得られる導電パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いよりも、図8の如く、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系から成る方が良い。例えば、粒子径が0.01μm〜1μmの範囲の小粒子径粒子と粒子径5〜10μmの範囲の大粒子径粒子との混合系が好ましい。かかる混合系に於ける両粒子の混合比は、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=1:9〜9:1、特に、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=5:5〜9:1の範囲が好ましい。当然のことながら、パターンの線幅や厚みよりも大きな粒子が混入すると、印刷時に抜けやスジなどの不良が多発するため、大粒子径粒子の平均サイズ、あるいは最大粒子径はパターン設計により変わってくる。
また、異なる平均粒子径を持つ複数種類の粒子を混合する以外に、ある程度の粒度分布を持った粒子を最初から用いても良い。
【0050】
なお、該導電体粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすると該導電性組成物(から成る導電パターン層)の表面抵抗率が低下する理由としては、かかる系から成る導電パターン層の断面を顕微鏡観察すると、大粒子径粒子の分布する間隙に小粒子径粒子が充填されて分布した形態が観察されることから推して、大粒子径粒子同士の接触が無い部分の間隙を、そこに介在する小粒子径粒子の接触によって補強し、導電性組成物内に分散する大小粒子相互の電気的接触面積の総和が増大する為(前記の式R=ρL/Sにおいて断面積Sが増加したことに相当)と考えられる。
また、該導電パターン層内に於ける該導電体粒子の分布は、所望の特性や製造適性に応じて各種形態を選択可能であるが、該導電パターン層内のある一端から他の一端に至る電流の流れ得る経路が1つ以上確保されている必要が有る。其の為には、図8の如く、隣接する該導電体粒子同士が粒子間の間隔が0で接触又は融合した構造が連なって出来る経路が1つ以上存在することが必要である。かかる経路を形成せしめる為の特に好ましい形態としては、図8の電顕写真に示す如く、該導電パターン層の頂部近傍(プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が小さくなり、一方、該導電パターン層の底部近傍(プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が大きくなる分布が挙げられる。
その為には、
(i)図12に概念的に図示する如く、導電パターン層内に於ける粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数を、相対的に、頂部近傍に於いて高く(密に)、又プライマー層近傍に於いて粒子数密度が低く(疎或いは粗)なるように分布させる。
(ii)導電パターン層内に於ける粒子数密度は一定とし、粒子径を、相対的に、頂部近傍に於いて大きく、又プライマー層近傍に於いて小さくなるように分布させる。
(iii)相対的に、頂部近傍に於いて粒子数密度を高く且つ粒子径を大きくし、又プライマー層近傍に於いて粒子数密度を低く且つ粒子径を小さくなるように分布させる。
のいずれかの分布形態を採用する。尚、図8及び図9は、(iii)の形態に相当する。
【0051】
かかる凸状パターン層内に於ける導電体粒子の数密度の分布について詳細に説明すれば、本発明においては図12に概念的に示す様に、導電パターン層3内部の導電体粒子Cpの分布は、相対的に、プライマー層2の近傍に於いて分布が疎であり、頂部P近傍に於いて分布が密であることが好ましい。
即ち、導電パターン層3(凸部)の内部では、導電体粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電体粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマー層2の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。
密とは単位体積中の導電体粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電体粒子Cpの数密度が、プライマー層2近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。
【0052】
そして、プライマー層との界面14に隣接する領域に於ける導電体粒子Cpの数密度を1としたときの導電パターン層3の頂部Pに於ける導電体粒子Cpの数密度の比は、大きいほどかかる導電体粒子の数密度の分布による効果を奏する上では有利である。
一方、当該数密度の比を大きくするほど、その製造条件が制約され且つ実現の際の難度も増大し、又、導電体粒子の粒径による高密度化の物理的限界(最密充填構造を超える高密度化は不能)も有る。これらを考慮すると、前記の如き、導電体粒子の材料と平均粒径、導電パターン層の線幅、製造方法、及び良好なタッチパネル用電極フィルム性能を勘案した場合、当該数密度の比、即ち〔「頂部Pに於ける導電体粒子Cpの数密度」/「プライマー層との界面に隣接する領域に於ける導電体粒子Cpの数密度」〕は、1.5〜10程度の範囲が好ましい。
【0053】
導電パターン層3中に於ける導電体粒子Cpの分布状態は、該導電パターン層3が透明基材1上で延びる方向には依存性を持たないと判断される。つまり、図12で示す導電パターン層3の凸状部の断面図は、凸状部が延びる方向に直交し且つ透明基材1のシート面に垂直な面である主切断面の断面図であり、紙面に垂直な方向が導電パターン層の延びる方向(延在方向)であるが、該延在方向では、主切断面内での位置が同じであれば単位体積中の粒子の数密度は一定であると見なされる。なぜならば、導電パターン層3は後述する方法で、同一の導電性樹脂組成物を凹版に塗布し連続的に製造されるからである。
その為、この様な単位体積中の導電体粒子Cpの数密度は、任意の導電パターン層3の主切断面に於ける単位面積中の導電体粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。
即ち、図12の如く、主切断面内に於いて、導電体粒子Cpの面密度がプライマー層2の界面に隣接する領域に比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であれば、導電体粒子Cpの体積密度もプライマー層2近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
【0054】
また、導電パターン層の導電体粒子の密度分布は、導電パターン層において隣り合う導電体粒子間の距離(以下、「粒子間隔」と表記する。)の厚み方向の分布を測定することによっても表現することができる。ここにおいて、厚み方向の層としては、導電パターン層の輪郭線に沿って存在する導電体粒子を結びつける化想線で形成される頂部としての最外層(以下、「最外層の導電体粒子間隔」ということがある。)、及びプライマー層近傍に存在する導電体粒子を結びつける化想線で形成される最内層(以下、「最内層の導電体粒子間隔」ということがある。)を代表的な層とすることができる。そしてこれらの層内に於けるそれぞれの導電体粒子の粒子間隔、すなわち最外層の導電体粒子間隔を測定し其の平均を求め、又最内層の導電体粒子間隔を測定しその平均を求めることによって、導電パターン層の導電体粒子の分布の指標とすることができる。各層に於ける導電体粒子間隔の測定データ数としては、3以上、好ましくは10程度のデータを取り、これを平均する。又導電体粒子間隔は、主切断面の顕微鏡写真を撮影し、此処から隣接する2つの導電体粒子同士の間隔を測定する。
さらに、該導電体粒子間隔は、導電パターン層における両サイドエッジ部間の距離wに対して、頂点を中心として幅がそのw/2に相当する中央部における最外層の導電体粒子間隔及び最内層の導電体粒子間隔が、導電パターン層の導電体粒子の分布の違いを顕著に表すので、それらの値をもって、粒子間隔の違いとすることができる。
高導電性を示す平均導電体粒子間隔としては、最外層が0〜0.5μm、最内層が0.5〜3μmの範囲が好適である。
【0055】
かかる粒子密度の疎密又は導電体粒子間隔の違いを実現する、即ち、導電パターン層の頂部Pの方(最外層)に導電体粒子Cpを偏在させるには、例えば、図6に示すような特定の凹版印刷方法を採用し、且つプライマー流動層2を形成済みの透明基材1を版面に圧着する圧接力を強くすると共に、導電性組成物3'は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。
その他、導電体粒子Cpとバインダー樹脂との比重差、固化前の導電性組成物3'の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電体粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化(硬化)条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電体粒子Cpとバインダー樹脂との比重差については、通常は、金属粒子である 導電体粒子Cpの比重 > バインダー樹脂の比重、となる為、プライマー層2に対して頂部P(最外層)を重力の向きと同じ向き(下向き)にして導電性組成物層3'を固化させると良い。
【0056】
以上述べたような凸状パターン層の頂部近傍とプライマー層の界面近傍において、導電体粒子の密度の疎密、又は導電体粒子間隔の違いがある場合の効果として次のものを挙げることができる。
(i)数密度が大きい、又は導電体粒子間隔が小さい方が導電体粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、このように導電体粒子Cpの数密度に疎密の分布又は導電体粒子間隔の違いが存在すると、例え、導電パターン層3中の導電体粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同数の導電体粒子Cpを、数密度を一様に均一に分布させた場合又は導電体粒子間隔を均等に分布した場合に比べて、数密度が大きい部分又は導電体粒子間隔が小さい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、導電性能が向上する。
(ii)プライマー層2との境界近傍での導電体粒子Cpの数密度が小さいこと又は導電体粒子間隔が大きいことによって、導電パターン層3とプライマー層2との密着性が向上する。
(iii)例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の画面上に装着された入力装置として使用する場合、タッチパネル用電極フィルムの透明基材1側(図8においては下側)から入射する光が導電パターン層3とプライマー層2との界面において反射する場合に、拡散反射成分が増加し鏡面反射成分が減少する。その為、画像表示装置から入射する画像光が該界面と画面とで多重反射することによる画像コントラストの低下を軽減させることができる。
(iv)また、本発明のタッチパネル用電極フィルムを画像ディスプレイ装置の前面に設置する汎用の使用形態での入力側のタッチパネル用電極フィルム10に於いて、即ち、該導電パターン層3側がディスプレイ装置側に向かい、該透明基材1側が画像の観察者側に向かう向きで使用する場合において、観察者側に対峙する該導電体粒子は、密度が疎の為、外来光(電燈光、日光等)を散乱させて、観察者の目に入る反射光、特に鏡面反射光を低減する。その結果、外来光存在下に於ける画像の白化、周囲の風景の映り込みを防止し、画像コントラストの低下を防止することができ、好ましい。
【0057】
この効果をより一層有効に発現させる為には、該導電体粒子形状としては、鱗片状よりも、多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状を選択する方が、該導電パターン層のプライマー層側表面に鏡面に近い面が形成され難い為、好ましい。又、該導電体粒子形状としては、鱗片状の物を採用する場合は、該導電パターン層中のプライマー層側近傍に於ける鱗片状導電体粒子の配向方向(例えば、該鱗片の一番広い面の法線方向として定義される)を乱雑(random)に分布するようにすると、鏡面反射が低減し、好ましい。尚、該導電体粒子形状が多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状の場合でも、其の配向方向を乱雑化することは、鏡面反射光の低減の点では好ましい。
且つ、同時に、頂部近傍に於ける該導電体粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電極フィルムとして対向する電極フィルムとの導通性も高まる。尚、当然、かかる高密度に分布する導電体粒子は可視光線の反射率も高いが、該導電体粒子は画像観察者の目に触れない側(観察者と反対側)の面に位置せしめることにより、画像コントラスト等の低下の心配は無い。
また、該導電パターン層の頂部近傍において粒子が緻密に存在するという構造は、本メッシュをタッチパネル用電極フィルムとして利用すれば、抵抗値を低下させ、操作性の高いタッチパネルを得ることができるという効果を有している。
【0058】
導電パターン層3の形成は、図7(A)の製造工程図に示すように、先ず、所定のメッシュパターンで凹部64が形成された板状又は円筒状の版面63に導電性組成物3'(15)を塗布した後、その凹部64内以外に付着した導電性組成物をドクターブレード65やワイビングロール等(図示しない)で掻き取って凹部64内に導電性組成物3'を充填する。次に、流動性を保持したプライマー層2を一方の面に形成した透明基材1を準備し、その透明基材1のプライマー層2側と、導電性組成物3'を凹部64内に充填した版面63とを圧着することにより、導電性組成物3'とプライマー層2とを隙間なく密着させ、その状態のまま又はその状態でプライマー層2の流動性をなくした(硬化させた)後、導電性組成物3'をプライマー層2上に転写し、所定のメッシュパターンからなる導電性組成物3'を形成する。
なお、導電性組成物3'をプライマー層2上に転写した後においては、導電性組成物3'を硬化処理(例えば、乾燥処理、紫外線・電子線照射処理、加熱処理、冷却処理等)を行って導電パターン層3が形成される。
【0059】
本発明においては、上記したように、ドクターブレードやワイビングロール等によって凹部64内以外の余分な導電性組成物が掻き取られる際に、図6(A)に示すように、凹部64内の導電性組成物3’の上部に生じる凹み13内に、流動性を保持したプライマー層2が充填し、導電性組成物3'とプライマー層2とを隙間なく密着した状態でプライマー層2が半硬化又は硬化するので、プライマー層2上に導電性組成物3’を転写不良なく転写することができる。
【0060】
上記においては、導電性組成物3'として、主に導電体粒子とバインダー樹脂とで構成されたものについて説明した。こうした導電性組成物3'は、それ自体が導電パターン層3になるものであるが、本発明においては、他の導電性組成物を適用してもよい。例えば、有機金属化合物のゾル(分散液)を導電性組成物3'として用い、例えば転写工程の前後で加熱固化し、さらに必要に応じて焼成し、導電性の金属ないし金属化合物からなる導電パターン層3としても良い。また、例えば、ポリチオフェン等の公知の導電性樹脂を導電性組成物3'として用い、それ自体を導電パターン層3としても良い。
【0061】
得られた導電パターン層3は、(1)プライマー層2との界面14が非直線状に入り組んだ形態、(2)プライマー層2との界面14の近傍に、プライマー層2に含まれるプライマー成分と、導電性組成物3'を構成する成分とが混合する領域が存在している形態、(3)導電パターン層3を構成する導電性組成物中に、プライマー層2に含まれるプライマー成分が存在している形態、のいずれか1又は2以上で形成されている。
【0062】
上記(1)の形態は、その界面が、プライマー2を構成する樹脂と導電パターン層3を構成する樹脂又はフィラーとの界面14であるように構成されている場合である。この場合の「フィラー」とは、任意の粒子であり、導電体粒子であっても非導電体粒子であっても構わない。例えば、導電性組成物3'が導電体粒子とバインダー樹脂とで構成されている場合には、その界面14は、導電パターン層3中の導電体粒子とバインダー樹脂とプライマー層2を構成する樹脂とが入り組んだ非直線状の態様で形成される。このときの入り組みの程度は、導電体粒子の形状や大きさに影響を受ける。また、例えば、導電性組成物3’がフィラーを含まず、導電性樹脂や導電性化合物を含有する場合には、プライマー層2を凹部内に圧着する際の圧力等によって、プライマー層2と導電パターン層3との界面14が入り組んだ形態になっている。こうした導電パターン層3は、界面14が非直線状に入り組んだ形態になっているので、所謂投錨効果により、プライマー層2と導電パターン層3との密着性が著しく高くなっている。
【0063】
上記(2)の形態は、プライマー層2と導電パターン層3との界面14の近傍に、プライマー層2に含まれるプライマー成分と、導電性組成物3'を構成する成分とが混合する領域が存在している形態である。このとき、界面14が明確に現れている場合でもよいし、明瞭でない暖味な界面14が現れている場合でもよい。また、混合領域は、界面14を上下に挟むように存在する。この場合は、プライマー層2中のプライマー成分(例えば溶剤など)と導電パターン層3中の任意の成分(例えばモノマー成分など)とが両層内に相互に浸入する場合である。なお、混合領域が界面14の上側のみに存在しても下側のみに存在してもよい。混合領域が界面14の上側のみに存在する場合としては、プライマー層2中のプライマー成分が導電パターン層3内に浸入し、導電パターン層3中の任意の成分がプライマー層2内に浸入しない場合であり、一方、混合領域が界面14の下側のみに存在する場合としては、導電パターン層3中の任意の成分がプライマー層2内に浸入し、プライマー層2中のプライマー成分が導電パターン層3内に浸入しない場合である。なお、混合領域の厚さは特に限定されない。こうした導電パターン層3は、界面14近傍に混合領域を有するので、プライマー層2と導電パターン層3との密着性が著しく高くなっている。
【0064】
上記(3)の形態は、導電パターン層3を構成する導電性組成物3'中に、プライマー層2に含まれるプライマー層成分が存在している形態である。この形態は、プライマー成分が界面14付近で多く、頂部に向かって少なくなってゆく場合が多いが、こうした態様には特に限定されず、要するに、プライマー成分が導電パターン層3内に存在していればよい。プライマー成分は、導電パターン層3の頂部から検出される程度に導電パターン層3内に浸入していてもよいし、界面14近傍で検出される程度であってもよい。なお、この(3)の形態において、特に、プライマー層成分が導電パターン層3内に存在している領域が界面14の近傍に局在化している場合が、上記(2)の形態において混合領域が界面14の上側にのみ存在する形態に相当するといえる。こうした導電パターン層3も上記(1)、(2)の形態の場合と同様、そもそも平坦面でない山型のプライマー層2上に導電パターン層3が形成されていることをもってしても密着性が良いのに加え、上記のようにプライマー成分が導電パターン層3に存在する程度に浸入しているので、プライマー層2と導電パターン層3との密着性が著しく高くなっている。
【0065】
導電パターン層が、特に、メッシュ形状となる形態(この形態を凸状メッシュパターン層或いは導電メッシュ(層)とも呼称する)では、互いに方向の異なる2群以上の平行線群がから成る線部が交差して、これら線部に囲繞されて開口部(パターン非形成部)が形成される。なお、3群以上の平行線群(線部)が交叉する場合も、其の基本的な設計要領及び作用効果は共通の為、以下、通常広く用いられている2群の場合を例に絞って説明する。
また、各線群の交叉角度、即ち、第一方向線部と第二方向線部との交叉角度θは、0°<θ<180°の範囲から選択できるが、θ=90°が通常広く用いられている。
本発明のタッチパネル用電極フィルムとしてのメッシュ形状においては、透明基材、プライマー層、メッシュ開口部、保護層を含めた光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。メッシュの開口率も、光線透過率を考慮して前述の50〜95%の範囲から決定される。
【0066】
(電気抵抗低減化処理工程)
なお、以上のようにして形成された導電パターン層3それ自体がタッチパネル用途として適正な電気抵抗を有する場合は、其の儘でタッチパネル用電極フィルムとして使用する。
但し、形成された導電パターン層3それ自体の電気抵抗がタッチパネル用途として適正な電気抵抗よりも高い場合は、導電性組成物3’を凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写させて導電パターン層3とした後、更に、以下の(i)乃至(iii)の如き電気抵抗低減化処理工程を行う。
(i)水分存在下、且つ室温よりも高温下にて処理する。
(ii)酸に接触させる。
(iii)上記(i)及び(ii)の処理を適宜順序で順次併用する。
かかる電気抵抗低減化処理工程を行うことにより、該導電パターン層の体積抵抗率が低下する。この現象は、特に導電体粒子が銀または銀を含む粒子である場合に観察される。
この電気抵抗低減化処理工程は、いわゆる焼成処理とは異なり、PETなど一般のフィルム基材にダメージを与えるような長時間の加熱処理ではなく、また低温焼成用印刷インキとして知られたナノサイズ粒子の分散液ではなく、樹脂等の結着材を含んだ一般的な性状の導電インキを使用可能である。
【0067】
(i)の室温以上の水分存在下での電気抵抗低減化処理工程に於いては、転写(凹版印刷)工程後、該タッチパネル用電極フィルムを水分と接触した状態の下で室温よりも高温状態に適宜時間放置するものである。水分存在下の条件としては、水蒸気を含む空気中への放置、霧状乃至雨滴状の水粒子の噴霧(吹き付け)、或いは液体の水中への浸漬の何れでも良い。水蒸気を含む空気中への放置の場合、放置する空気(雰囲気)の相対湿度は70%RH以上、好ましくは85%以上とする。かかる高温状態の温度(水蒸気を含む空気中への放置の場合は雰囲気温度、水中浸漬の場合は水温)は摂氏30℃以上、好ましくは60℃以上である。但し、余り高温になるとバインダー樹脂や透明基材の変質、変更を生じることになる為、通常の材料の場合、120℃以下とする。
処理時間は、処理開始後48時間までは、表面抵抗値が時間の経過とともに低下するが、48時間以降は、ほぼ一定となるので、48時間程度とするのがよい。
かかる電気抵抗低減化処理工程によって、導電パターン層全体の表面抵抗率は処理前の80〜50%程度に減少する(見かけの体積抵抗率も同様に処理前の80〜50%程度となる)。
【0068】
次に、(ii)の酸による処理について述べる。本発明において、酸による処理とは、導電性組成物を凹版凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写させて導電パターン層とした後、酸と接触させることによって、導電パターン層の体積抵抗率を低下させる処理をいう。
本発明における酸とは、特に限定されず、種々の無機酸、有機酸から選択することができる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、クエン酸、蓚酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。これらは、強酸であっても、弱酸であってもよい。好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、およびその水溶液であり、より好ましくは塩酸、硫酸、及びその水溶液であり、そして、銀の導電体粒子の場合に特に好ましくは塩酸、及びその水溶液である。
【0069】
酸による処理時間は数分以下で十分であり、処理時間をより長くしても、導電性の向上効果が高まらない場合や、導電性の向上効果が悪化する場合がある。酸による処理時間は、15秒〜60分であることが好ましく、より好ましくは15秒〜1分である。
酸で処理する方法は特に限定されず、例えば、酸や、酸の溶液の中に導電パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を凸状パターン層上に塗布したり、酸や、酸の溶液の蒸気を導電パターン層に当てたり、或いは霧状乃至雨滴状の酸や酸の溶液を噴霧(吹き付け)する方法が用いられる。これらの中でも、酸の溶液の中に導電パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を導電パターン層上に塗布したりするなど、導電パターン層と酸の液体を接触させる方法が、導電性向上効果に優れるため好ましい。すなわち、酸の処理条件としては、40℃以下の温度で、酸の溶液の中に凸導電パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を導電パターン層上に塗布したりすることが好ましい。
【0070】
酸の溶液を用いる場合、酸の濃度は、好ましくは10mol/L以下0.05mol/L以上である。酸の溶液の濃度が高過ぎると、作業性が低下し、生産性が悪化する場合があったり、透明基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には、透明基材を白化させ、透明性を損ねる場合があるため、好ましくない。また、酸の濃度が低過ぎる場合にも、酸による処理の効果が得られないため、好ましくない。
なお、酸の溶液を用いる場合は酸の残渣による悪影響が懸念されるため、処理後にすすぎ、乾燥工程が必要となる。
【0071】
かかる電気抵抗低減化処理工程によって、体積抵抗率が減少する理由は、現時点では未解明であるが、以下のように考えられる。
例えば導電体粒子として銀を用いた場合、導電パターン層を図6に図示の如き特定の凹版印刷で形成した時点での主切断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影したものが図8である。此の段階では、隣接銀粒子の一部は粒子間の境界面(断面上では線)を残した形で接触しており、該接触によって、隣接する銀粒子同士の電気的導通が確保される。但し、該界面での接触抵抗の為、導電パターン層の電気抵抗は、比較的、大きなものとなる。
一方、図8の状態の導電パターン層に前記の如き電気抵抗低減化処理工程を施した後、主切断面をSEMで撮影したものが図9である。隣接する銀粒子間に於いては、両粒子間の境界が消失して隣接粒子間が融合していることが観察される。又、各粒子間距離の減少も観察される。其の為、融合一体化した隣接粒子間では接触抵抗も無くなり、また、融合せず離れた粒子間についても高抵抗の粒子間距離の低下によって電気抵抗は低減される。これらが電気抵抗(体積抵抗率乃至表面抵抗)低減の直接の原因と推定される。
【0072】
(充填層)
充填層9は、図1(C)に示すように、導電メッシュ3の開口部19に任意に設けることができる。開口部19に充填層9を設けることにより、導電メッシュ3の高さ(厚さTc)を低くすることができるので、導電メッシュ3が対向する電極フィルムの導電体(導電メッシュ又は透明導電膜)に接触した場合の導電メッシュ3の強度を高めることができる。なお、充填層9の厚さは、導電メッシュ3の頂部が隠れない厚さであればよく、例えば導電メッシュ3の高さの40%〜80%程度であればよい。
【0073】
充填層9の形成材料としては、特に限定されないが、開口部19のプライマー層2との接着性と光透過性の観点からは、上述したプライマー層2の形成材料と同じ材料で設けることが好ましい。充填層9の形成方法も特に限定されないが、導電メッシュ3が設けられた後の全面に所定量を印刷又は塗布することにより、導電メッシュ3の頂部には乗らない態様で充填層9を設けることができる。
【0074】
(ハードコー卜層)
ハ一ドコート層4は、図1に示すように、透明基材1の導電メッシュ3の形成面S1とは反対側の面S2に必要に応じて設けられる。ハードコート層4が形成される面は、入力ペン等が接触する側の面であり、こうした面S2にハードコート層4を形成することにより、タッチペン摺動耐久テストを行った場合での導電メッシュ3の破壊が著しく低減することができる。そうした作用を奏するハードコート層4の特性としては、その鉛筆硬度が2H〜4Hであることが好ましい。なお、ハードコート層とは、一般に、JIS K 5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。
かかるハードコート層の材料、厚み、製造方法等は公知のものが適宜選択して適用出来る。代表的なものとしては、例えば、(メタ)アクリレート系のモノマー、プレポリマー、或いはモノマーとプレポリマーの混合系の組成物を紫外線又は電子線で硬化してなる厚さ1〜10μm程度の塗膜が挙げられる。
【0075】
また、ハ一ドコート層4は、摩擦係数が低く、入力ペン40が滑らかに滑ることが好ましい。ハードコート層4の表面の摩擦係数としては、0.15〜1.0程度、好ましくは0.15〜0.3である。なお、摩擦係数測定は、ヘイドン表面性試験機で測定した結果得られたものである。
【0076】
(その他の層)
本発明のタッチパネル用電極フィルムには必要に応じて、公知の各種の、反射防止層、防眩層等の光学的機能層を設けることができる。
【0077】
〔タッチパネル〕
本発明のタッチパネルは、動作原理別分類で抵抗膜方式に分類されるタッチパネルにおける抵抗膜として、少なくとも一方側の電極フィルムとして、本発明のタッチパネル用電極フィルムを用いたことを特徴とするものである。本発明のタッチパネル用電極フィルムは、全面が均一な透明な導電パターン層の抵抗膜となっているので、抵抗膜アナログ検出方式のタッチパネルに特に有効である。具体的には、本発明の電極フィルムの対向する辺に電極を配した面を、図4或いは図5の如く、スペーサを介在させて一定間隔Gで向かい合わせに絶縁状態で貼り合わせそれぞれに定電圧を印荷して、接触点の電圧を位置に換算する電圧検知方式、又は電極に定電流を流し電流のバランスから位置を検出する電流検知方式である4線式抵抗膜アナログ検出方式タッチパネルを一例として挙げることができる。
また、前記電圧検知方式において、電圧印荷電極と検出電極を分け、検出用抵抗体以外の抵抗分をキャンセルできる8線式抵抗膜アナログ検出方式タッチパネルも例として挙げることができる。
さらに、抵抗膜を非電圧印荷側と電圧印荷側とし、電圧印荷側の抵抗膜の4隅に電極を配して、絶縁状態で貼り合わせ、それぞれの電極に電圧を印荷して接触点の電圧を位置に換算する電圧検知方式、又は電極に定電流を流し電流のバランスから位置を検出する電流検知方式である5線式抵抗膜アナログ検出方式タッチパネルを一例として挙げることができる。
また、前記電圧検知方式において、電圧印荷電極と検出電極を分け、検出用抵抗体以外の抵抗分をキャンセルできる7線式抵抗膜アナログ検出方式タッチパネルを例として挙げることができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例により説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0079】
実施例1
〔凹版の準備〕
先ず、凹版ロール62として、線幅が18μmで線ピッチが270μmで格子状のメッシュパターンであり、目標の版深10μmであるグラビア版胴を準備した。
【0080】
〔透明基材の準備〕
次いで、透明基材1として、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。また、離型剤としてステアリン酸エステル1質量%を添加したウレタンアクリレート系プレポリマーから成る紫外線硬化型樹脂組成物を用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、斜線版のグラビアリバースロールコート方式で、該紫外線硬化性樹脂組成物を該PETフィルムの易接着処理面に厚み14μmにコーティングして未硬化状態で流動性のプライマー層2を形成してなる、透明基材を準備した。
【0081】
〔導電性組成物(銀ペースト+カーボンブラック)の作製〕
導電体粒子として平均粒径約2μmの鱗片状銀粒子100質量部と、カーボンブラックとしてアセチレンブラック(平均粒径35nm)45質量部とを配合し、バインダー樹脂として熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂と、溶剤としてブチルカルビト一ルアセテートとをさらに配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電性組成物を作製した。
【0082】
〔タッチパネル用電極フィルムの製造〕
図7(A)に示す装置によりタッチパネル用電極フィルムを製造した。先ず、版パターンが線幅18μm、ピッチ270μm、版深10μmである上記グラビア版ロール62を用い、充填容器68に満たされた導電性材料15である前記の導電性組成物(銀ペースト+カーボンブラック)インキをピックアップロール61により版部にコーティングし、余剰インキをドクターブレード65により掻き取った版面63と、未硬化状態で流動性のプライマー層2が形成された透明基材1(PETフィルム)のプライマー層2側とをニップロール66で圧着し、引続き紫外線照射ゾーン(図示は略すが、図7で「UVゾーン」と示す部位の凹版ロール62の上方に存在)間を走行する間に、高圧水銀燈からの紫外線を照射することによってプライマー層の紫外線硬化樹脂を硬化させた後、ニップロール67を介して、版面63から離版させて、PETフィルム上に硬化したプライマー層2を介して上記版胴表面の版パターンを転写させてメッシュ形状の導電パターン層3となし、電磁波シールド材を製造した。なお、透明基材はエンドレスのロールのものを用い、印刷速度10m/minでロール・トウ・ロール方式にて印刷した。
次いで、印刷後、該電磁波シールド材を、気温80℃、相対湿度90%の雰囲気中で48時間放置して、電気抵抗低減化処理工程を行った後、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中に取り出した。
プライマー層の紫外線硬化型樹脂に離型剤を添加することにより、プライマー層(紫外線硬化樹脂)の凹版印刷版胴からの離型性が向上し、且つ、凹版からの導電性材料の転移量も向上し、版胴からの剥離張力が低下し、正常点P(図7(A)参照)で安定した離版ができたため、未硬化状の導電性材料の飛散りは軽減し、目視で判別不能な程度であった。また、紫外線硬化後の、進行方向とは垂直方向の縞状ムラは見えなかった。
また、転移した該凸状パターンには断線等の転移欠点も認められなかった。印刷された該凸状パターンの厚み(メッシュ非形成部のプライマー層を基準にして測定)は9μmであり、版深と印刷厚みの比で計算した転移率は、(メッシュパターン厚み9μm/版深10μm)×100=90%であったが、実際には銀ペーストインキの溶剤乾燥による体積収縮があるため、ほぼ100%に近い転移がなされていると推定される。
さらに、該プライマー層2と該導電パターン層3との界面の形態は、プライマー層2との界面14が非直線状に交互に入り組んだ前述の(1)の構造を有していた。かかる入り組み構造を電子顕微鏡で拡大撮影して観察した結果、導電パターン層中の導電体粒子(銀粒子)がプライマー層2との界面において上下に不規則に乱雑分布して該界面を構成することが認められた。該導電体粒子の分布は、該導電パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど疎(粗)になる様な疎(粗)密で分布していることが認められた。メッシュ線條部に直交する主切断面内において、単位断面積当たりの導電体粒子の個数は、プライマー層と隣接する部分では、平均1個/μm2に対し、頂部近傍では平均3個/μm2であった。
【0083】
なお、導電性組成物硬化後の導電パターン層3は、その断面の電子顕微鏡写真が図9に示すものであり、プライマー層近傍部を除いた銀微粒子の一部については隣接して距離0で接した銀粒子同士の粒子間は、界面が消失し融合の状態である。この断面写真から、導電パターン層3の頂部の導電体粒子間距離、及びプライマー層との界面近傍の導電体粒子間距離を測定し、それぞれの平均を求めた結果、頂部の平均導電体粒子間距離が0.5μm(個々の数値のうち最小値は0μm)、プライマー層との界面近傍の平均導電性体子間距離は1.5μmであった。
すなわち、導電体粒子の分布は、該導電パターン層の頂部に行くほど粒子間距離が小さくなり、逆にプライマー層側に行くほど粒子間距離が大きくなる様な、疎(粗)密で分布していることが認められた。且つ融合して連なる銀粒子の経路によって、導電パターン層表面に於いて該導電パターン層の幅方向(図9で左右方向)に、最大11μm離れた2点間が連結されていることも認められた。
【0084】
次いで、得られたタッチパネル用電極フィルムの表面(電気)抵抗を測定した。
測定は、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中で実施した。表面抵抗率は700Ω/□であった。また、光線透過率は、82%であった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のタッチパネル用電極フィルムは、抵抗膜方式のタッチパネル等に利用できる。
また、本発明のタッチパネルは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の画面上に装着された入力装置として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 透明基材
2 プライマー層
3 導電パターン層
3’ 導電性組成物
4 ハードコート層
5 易接着層
6 AR(反射防止)層
7 導電メッシュパターン部
8 周縁部
9 充填層
10,10A,10B,10C,10D 電極フィルム
11 金属層
12 スペ一サ
13 凹み
14 プライマー層と導電メッシュとの界面
19 開口部
20,30 表示装置側の電極フィルム
21 透明基材
23 透明導電膜
40 人カペン
50A,50B タッチパネル
61 ピックアップロール
62 凹版ロール
63 版面
64 凹部
65 ドクターブレード
66 ニップロール
67 ニップロール
68 充填容器
100 携帯電話
A 導電性材料層が形成されている部分
TA Aの厚さ
B 導電性材料層が形成されていない部分
TB Bの厚さ
S 縞状ムラ
Cp 導電体粒子
G 飛散物
R バインダー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる導電パターン層を有するタッチパネル用電極フィルムであって、
前記プライマー層のうち前記導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電パターン層の頂部近傍において密である、ことを特徴とするタッチパネル用電極フィルム。
【請求項2】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる導電パターン層を有するタッチパネル用電極フィルムであって、
前記プライマー層のうち前記導電パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電パターン層中の該導電体粒子の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、該凸状パターン層の頂部近傍において小である、ことを特徴とするタッチパネル用電極フィルム。
【請求項3】
2枚の電極フィルムそれぞれの電極面を一定間隔で対向させてなるタッチパネルであって、少なくとも一方側の電極フィルムに請求項1又は2に記載のタッチパネル用電極フィルムを用いることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−96225(P2011−96225A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120898(P2010−120898)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】