説明

ターボチャージャ

【課題】リンク機構の寸法を変更させた場合であっても、その他の部品を共通化することができるターボチャージャを提供する。
【解決手段】排気ノズル6は、タービンインペラ2の周囲に支持軸7によって回動可能に支持された複数のノズルベーン8と、支持軸7を回動させるリンク機構20と、を備え、リンク機構20のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向の両側には、係止部(排気導入壁10、屈曲部16a)がリンク機構20の一部を挟んで対向するように設けられ、係止部のいずれか一方とリンク機構20との間に、リンク機構20のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向への可動域を調整する調整部材18が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、スクロール流路内からタービンインペラ側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズルと、を備えた可変容量型のターボチャージャが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のターボチャージャでは、排気ノズルを開閉するリンク機構の寸法が個々の仕様により異なるという課題がある。
図6に示すように、従来のターボチャージャ901は、タービンインペラ902を回転可能に支持するベアリングハウジング903と、タービンインペラ902に排気ガスを供給するスクロール流路904が形成されたタービンハウジング905と、スクロール流路904内からタービンインペラ902側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズル906と、を備えている。
【0004】
排気ノズル906は、タービンインペラ902の周囲に支持軸907によって回動可能に支持された複数のノズルベーン908と、支持軸907を回動させるリンク機構920と、を備えている。リンク機構920は、周方向に回動可能に設けられた駆動リング921と、駆動リング921の周方向に配置された複数のリンク板922と、を備えている。リンク板922の各々は、リンクピン924により一端部が駆動リング921に回動可能に連結され、他端部がノズルベーン908の各々の支持軸907にそれぞれ連結されている。
【0005】
このような構成により、リンク機構920の駆動リング921を周方向に回動させると、リンクピン924を介して駆動リング921に連結されたリンク板922の各々が支持軸907を中心として回動し、リンク板922に連結された支持軸907が回動して、支持軸907に支持された排気ノズル906のノズルベーン908が回動する。これにより、排気ノズル906のノズルベーン908の開度を調整し、スクロール流路904内からタービンインペラ902側に供給される排気ガスの圧力を調整する。
【0006】
このようなターボチャージャ901に排気ブレーキに適用する場合には、排気ガスの圧力が高くなる。排気ガスの圧力が高くなると、排気ノズル906を開閉するリンク機構920を大型化させる必要がある。リンク機構920が大型化すると、ベアリングハウジング903、タービンハウジング905、及びこれらの間に配置される遮熱板917等の部品の寸法を、排気ノズル906及びリンク機構920の寸法に合わせて大型化させなくてはならない。
【0007】
一方、ターボチャージャ901に排気ブレーキに適用しない場合には、排気ガスの圧力が低いため、リンク機構920は小型化する。このとき、ベアリングハウジング903、タービンハウジング905、及びこれらの間に配置される遮熱板917等の部品の寸法をリンク機構920に合わせて小型化させないと、リンク機構920のタービンインペラ902の軸902a方向に空隙が生じ、リンク機構920が不安定になってしまう。したがって、リンク機構920が小型化した場合には、その他の部品を小型化させる必要があり、大型のリンク機構920を用いるターボチャージャ901と小型のリンク機構を用いるターボチャージャの部品を共通化することが困難であった。
【0008】
そこで、この発明は、リンク機構の寸法を変更した場合であっても、その他の部品を共通化することができるターボチャージャを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のターボチャージャは、タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記スクロール流路内から前記タービンインペラ側に供給される前記排気ガスの圧力を調整する排気ノズルと、を備えた可変容量型のターボチャージャにおいて、前記排気ノズルは、前記タービンインペラの周囲に支持軸によって回動可能に支持された複数のノズルベーンと、前記支持軸を回動させるリンク機構と、を備え、前記リンク機構の前記タービンインペラの軸と平行な方向の両側には、係止部が前記リンク機構の一部を挟んで対向するように設けられ、前記係止部のいずれか一方と前記リンク機構との間に、前記リンク機構の前記タービンインペラの軸と平行な方向への可動域を調整する調整部材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のターボチャージャは、前記リンク機構は、周方向に回動可能に設けられた駆動リングと、該駆動リングの前記周方向に配置された複数のリンク板と、を備え、前記リンク板の各々は、一端部が前記駆動リングに回動可能に連結され、他端部が前記ノズルベーンの各々の前記支持軸にそれぞれ連結され、前記調整部材は、前記係止部のいずれか一方と前記駆動リングとの間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のターボチャージャは、前記排気ノズルは、前記排気ガスの流路を形成すると共に前記ノズルベーンの支持軸を回動可能に支持する支持穴が形成された排気導入壁を備え、前記係止部の一方は前記排気導入壁であり、前記排気導入壁と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のターボチャージャは、前記係止部の一方は前記軸受けハウジングまたは前記タービンハウジングに設けられた係止面であり、該係止面と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のターボチャージャは、前記係止部の一方は、前記駆動リングの内周側と摺動する保護部材に設けられた屈曲部であり、前記屈曲部と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のターボチャージャは、前記保護部材は、前記タービンインペラと前記タービンハウジングとの間に設けられた遮熱板と一体的に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のターボチャージャは、前記駆動リングは、中央部の貫通孔に面する内壁が前記タービンインペラの軸と平行な方向に沿って前記排気導入壁側に延びるように形成された当接部を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のターボチャージャは、前記調整部材は、リング状に形成されて肉厚の異なる厚肉部と薄肉部とを有し、前記厚肉部の内径は前記薄肉部の内径と等しく、前記厚肉部の外径は前記薄肉部の外径よりも大きく形成され、前記薄肉部と前記駆動リングの当接部とは、内径及び肉厚が略等しく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のターボチャージャは、係止部のいずれか一方とリンク機構との間に、リンク機構のタービンインペラの軸と平行な方向への可動域を調整する調整部材が配置されている。そのため、排気ノズルおよびリンク機構の寸法が変更になった場合に、一方の係止部とリンク機構との間に配置された調整部材を、他方の係止部とリンク機構との間に移動させることで、大型のリンク機構と小型のリンク機構のそれぞれの一部を、一対の係止部と調整部材とによって挟持することができる。
【0018】
これにより、大型のリンク機構と小型のリンク機構のそれぞれがタービンインペラの軸と平行な方向へ移動することを防止できる。したがって、本発明のターボチャージャによれば、排気ノズル及びリンク機構の寸法を変更した場合であっても、それ以外のターボチャージャの部品を共通化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のターボチャージャは、例えば自動車のエンジンの回転数の増減に基づいてタービンインペラに供給する排気ガスの圧力を調整可能な可変容量型のターボチャージャである。
以下では、まず、大型のリンク機構を適用した場合のターボチャージャの構成について説明する。図1は、本実施形態のターボチャージャの部分断面図である。図2は、図1のターボチャージャのベアリングハウジング側から見た平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のターボチャージャ1は、タービンインペラ2を回転可能に支持するベアリングハウジング(軸受けハウジング)3と、タービンインペラ2に排気ガスを供給するスクロール流路4が形成されたタービンハウジング5と、スクロール流路4内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズル6と、を備えている。
【0021】
排気ノズル6は、タービンインペラ2の周囲にタービンインペラ2の軸2aと略平行に設けられた支持軸7によって回動可能に支持された複数のノズルベーン8を備えている。また、排気ノズル6は、排気ガスの流路を形成すると共にノズルベーン8の支持軸7を回動可能に支持する支持穴9が形成された排気導入壁10を備えている。
ノズルベーン8は、図1及び図2に示すように、流線型の翼状の板材により形成され、支持軸7が固定されて支持軸7と一体的に設けられている。
【0022】
排気導入壁10,11は、図1に示すように、スクロール流路4からタービンインペラ2へ排気ガスを供給する排ガス導入路12の内壁を構成する対向して配置された一対のリング状の部材である。また、一対の排気導入壁10,11は、周方向に配置された複数の連結ピン13によって、間隔が一定になるように連結されている。
連結ピン13は、例えば端部を塑性変形させてかしめることにより、一対の排気導入壁10,11を一体的に連結している。
【0023】
また、一対の排気導入壁10,11は、ノズルベーン8を挟持して、ノズルベーン8を支持軸7回りに回動可能にタービンインペラ2の周囲に保持している。
また、一体的に組み立てられた一対の排気導入壁10,11のうち、タービンハウジング5側に配置された排気導入壁11は、複数の取付ボルト14及びナット15によって、タービンハウジング5に固定されている。取付ボルト14は、排ガス導入路12側の先端部がかしめられて排気導入壁11に固定されている。
【0024】
ノズルベーン8の支持軸7は、図1に示すように、アクチュエータの動力を支持軸7に伝達して回動させるリンク機構20に連結されている。
リンク機構20は、図2に示すように、周方向に回動可能に設けられた駆動リング21と、駆動リング21の周方向に配置された複数のリンク板22と、を備えている。
【0025】
駆動リング21は、図1に示すように、中央部の貫通孔21aに面する内壁21bが、タービンインペラ2の軸2aと平行な方向に沿って排気導入壁10側に延びるように形成され、断面視で略L字型の形状に形成されている。内壁21bの排気導入壁10側の端部は、平坦な当接部21dとなっている。
駆動リング21は、図2に示すように、平面視で中央部の貫通孔21aが円形に形成されたリング状の形状に形成され、外縁部は波状の形状に加工されている。波状に形成された外縁部の山の部分には、図1に示すように貫通孔21cが設けられ、リンクピン24が挿通されて固定されている。リンクピン24は、貫通孔21cの外側に突出した端部を塑性変形させてかしめることで、駆動リング21に固定されている。
【0026】
リンク板22は、片方の端部が二股に分かれたフォーク状の形状を有し、二股の爪の間には略U字型のスライド溝22aが形成されている。リンク板22のスライド溝22aが形成された端部の反対側の端部には貫通孔22bが形成されている。
リンク板22の一方の端部に設けられたスライド溝22aには、図2に示すように、平面視で矩形の筒状に形成されたスライド部材25が、スライド溝22aの延在方向にスライド可能に嵌合している。また、各々のリンク板22の他方の端部に形成された貫通孔22bには、各々のノズルベーン8の支持軸7が挿通されている。支持軸7の貫通孔22bから突出した部分はかしめられて、リンク板22と支持軸7とが連結されている。
【0027】
リンクピン24は、図2に示すように、鍔状に形成された頭部24aを有し、スライド部材25の中央部に形成された貫通孔25aに挿通され、例えば先端部がかしめられて駆動リング21に固定されている。これにより、スライド部材25は、リンクピン24の頭部24aと駆動リング21との間に、リンクピン24に対して回動可能な状態で保持されている。
リンク板22の各々は、スライド溝22aがスライド部材25とスライド可能に嵌合することで、駆動リング21に回動可能に連結されている。
【0028】
波状の形状に形成された駆動リング21の外縁部には、図2に示すように、隣接する2つの山を繋げて径方向に延出させた延出部21eが設けられている。
延出部21eの頂点の近傍には、リンク板22と駆動リング21とを連結するリンクピン24と同様の駆動リンクピン26が取り付けられている。
駆動リンクピン26は、スライド部材25と同様の矩形筒状の駆動スライド部材27に挿通され、例えば端部をかしめることで、駆動スライド部材27を延出部21eに回動可能に保持している。
【0029】
駆動スライド部材27は、リンク板22のスライド溝22aと同様の駆動スライド溝28aを備えた駆動リンク板28にスライド可能に嵌合している。
駆動リンク板28の駆動スライド溝28aが形成された端部と反対側の端部には、例えばアクチュエータ等の動力源により軸回りに回転する駆動軸29が固定されている。これにより、駆動リンク板28は、駆動軸29の回転によって駆動軸29回りに回動するようになっている。
【0030】
本実施形態のターボチャージャ1では、駆動リング21、リンク板22、リンクピン24、スライド部材25等からなるリンク機構20が、タービンインペラ2の軸2aと平行な方向へずれたり振動したりすることを防止するために、ベアリングハウジング3に係止面3aが設けられている。係止面3aは、タービンインペラ2の軸2aと略垂直に設けられている。
また、リンク機構20の係止面3aと反対側には、排気導入壁10がタービンインペラ2の軸2aと略垂直に設けられている。
【0031】
リンク機構20の内周側には、駆動リング21の内壁21bと摺動する保護部材16が設けられている。保護部材16は、例えばステンレス鋼等により形成され、タービンインペラ2の軸2aと垂直な方向に屈曲された屈曲部16aを有している。また、保護部材16は、タービンインペラ2とタービンハウジング5との間に設けられた遮熱板17と一体的に形成されている。
屈曲部16aは、ベアリングハウジング3の係止面3aに沿って屈曲され、駆動リング21のベアリングハウジング3側の面と摺動するようになっている。
【0032】
このように、リンク機構20のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向には、それぞれタービンインペラ2の軸2aと略垂直な排気導入壁10と、同じくタービンインペラ2の軸2aと略垂直な屈曲部16aとが、リンク機構20の内周側の一部を挟んで対向するように設けられている。
すなわち、本実施形態のターボチャージャ1では、排気導入壁10と屈曲部16aとが、リンク機構20のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向へのずれや振動を防止するための係止部として設けられている。
【0033】
ここで、本実施形態のターボチャージャ1では、大型のリンク機構20が適用される場合に、図1に示すように、排気導入壁(係止部)10と駆動リング21との間に、リンク機構20のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向への可動域を調整する調整部材18が配置されている。
調整部材18は、リング状に形成され、肉厚の異なる厚肉部18aと薄肉部18bとを有し、断面視で略L字型に形成されている。排気導入壁10側に配置された厚肉部18aの内径は薄肉部18bの内径と等しく、厚肉部18aの外径は薄肉部18bの外径よりも大きく形成されている。また、調整部材18の薄肉部18bと駆動リング21の当接部21dとは、内径及び肉厚が略等しく形成されている。
【0034】
以上の構成により、本実施形態のターボチャージャ1は、運転時にスクロール流路4内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整する際に、まずアクチュエータ等の動力源によって、図2に示す駆動軸29を回転させる。これにより、駆動リンク板28が駆動軸29を中心として回動する。そして、駆動スライド溝28aの延在方向に駆動スライド部材27をスライドさせつつ、駆動スライド部材27を駆動リング21の周方向に移動させる。すると、駆動スライド部材27に挿通され、駆動リング21の延出部21eに固定された駆動リンクピン26によって、駆動リング21が周方向に回動される。
【0035】
駆動リング21が周方向に回動すると、駆動リング21の外縁部にリンクピン24とスライド部材25とを介して回動可能に連結された複数のリンク板22が、各々、ノズルベーン8の支持軸7を中心として同期して回動する。これにより、支持軸7が回転してノズルベーン8が開閉し、排気ノズル6の開度を調整してスクロール流路4内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整することができる。
【0036】
次に、図1及び図2に示すターボチャージャ1において、大型のリンク機構20を取り外し、小型のリンク機構を適用する場合について説明する。
大型のリンク機構20を取り外す際には、まず、図1に示すようにベアリングハウジング3とタービンハウジング5とを締結するボルト19を取り外し、図2に示すようにタービンハウジング5からベアリングハウジング3を取り外す。このとき、一体的に形成された保護部材16及び遮熱板17と、調整部材18も取り外す。
【0037】
次に、図1に示す取付ボルト14を固定するナット15を取り外す。これにより、一体的に組み立てられた排気ノズル6とリンク機構20とを、タービンハウジング5から取り外すことができる。次いで、一体的に組み立てられた小型のリンク機構と排気ノズルとを、大型のリンク機構30と排気ノズル6の場合と同様に、タービンハウジング5に取り付ける。
【0038】
図3は、本実施形態のターボチャージャ1に小型のリンク機構30を適用したときの部分断面図である。図4は、図3のターボチャージャ1をベアリングハウジング3側から見た平面図である。
図3及び図4に示す小型のリンク機構30は、図1及び図2に示す大型のリンク機構20と同様に、周方向に回動可能に設けられた駆動リング31と、駆動リング31の周方向に配置された複数のリンク板32と、を備えている。
【0039】
図3に示すように、駆動リング31は、図1に示す駆動リング21と同様に、中央部の貫通孔31aに面する内壁31bが、タービンインペラ2の軸2aと平行な方向に沿って排気導入壁10側に延びるように形成され、断面視で略L字型の形状に形成されている。また、内壁31bの排気導入壁10側の端部は平坦な当接部31dとなっている。ここで、内壁31bのタービンインペラ2の軸2aと平行な方向の寸法Lは、図1に示す駆動リング21の同寸法Lと等しくなっている。
【0040】
図4に示すように、駆動リング31は、図2に示す駆動リング21と同様に、平面視でリング状の形状に形成され、外縁部は波状の形状に加工されている。波状に形成された外縁部の山の部分には、同様に貫通孔31cが設けられ、リンクピン34が挿通されて固定されている。リンクピン34は、例えば貫通孔31cの外側に突出した端部を塑性変形させてかしめることで、駆動リング31に固定されている。
【0041】
また、リンク板32、リンクピン34、及びスライド部材35は、図1及び図2に示すリンク機構20のリンク板22、リンクピン24、及びスライド部材25と同様に設けられている。すなわち、各々のリンク板32の端部には各々のノズルベーン8の支持軸7が挿通されて固定され、リンクピン34はスライド部材35に挿通されて駆動リング31に固定され、スライド部材35はリンクピン34の頭部34aと駆動リング31との間にリンクピン34に対して回動可能な状態で保持されている。
したがって、リンク板32の各々は、リンク機構20のリンク板22と同様に、一方の端部に設けられたスライド溝32aがスライド部材35とスライド可能に嵌合することで、駆動リング31に対して回動可能に連結されている。
【0042】
図4に示すように、波状の形状に形成された駆動リング31の外縁部には、図2に示す延出部21eと同様に、波状の形状の隣接する二つの山を連結させて形成された連結部31eが設けられている。
連結部31eには、図2に示す延出部21eと同様に、駆動スライド部材37と駆動リンクピン36とが設けられている。また、駆動スライド部材37は、駆動リンク板38の駆動スライド溝38aにスライド可能に嵌合している。駆動リンク板38の駆動スライド溝38aの反対側の端部には、例えばアクチュエータ等の動力源により回転する駆動軸(図示略)が連結されている。これにより、駆動リンク板38は、駆動軸の回転によって駆動軸回りに回動するようになっている。
【0043】
ここで、本実施形態のターボチャージャ1は、小型のリンク機構30が適用される場合には、図3に示すように、一対の係止部のうちの一方である保護部材16の屈曲部16aと、駆動リング21との間に、リンク機構30のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向への可動域を調整する調整部材18が配置されている。
【0044】
以上の構成により、本実施形態のターボチャージャ1は、運転時にスクロール流路4内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整する際に、まずアクチュエータ等の動力源によって、駆動リンク板38に連結された駆動軸を回転させる。これにより、駆動リンク板38が駆動軸回りに回動して、駆動スライド部材37を駆動リング31の周方向に回動させる。すると、駆動スライド部材37に挿通され、駆動リング31の連結部31eに固定された駆動リンクピン36によって、駆動リング31が周方向に回動される。
【0045】
駆動リング31が周方向に回動すると、駆動リング31の外縁部にリンクピン34とスライド部材35とを介して回動可能に連結された複数のリンク板32が、各々、ノズルベーン8の支持軸7を中心として同期して回動する。これにより、支持軸7が回転してノズルベーン8が開閉し、排気ノズル6の開度を調整してスクロール流路4内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整することができる。
【0046】
次に、本実施形態のターボチャージャ1の作用について説明する。
図1及び図3に示すように、本実施形態のターボチャージャ1は、係止部である排気導入壁10または屈曲部16aと、リンク機構20,30との間に、リンク機構20,30のタービンインペラ2の軸2aと平行な方向への可動域を調整する調整部材18が配置されている。
そのため、図1及び図2に示す大型のリンク機構20と排気ノズル6とを、図3及び図4に示す小型のリンク機構30と排気ノズル6とに交換する際に、排気導入壁10と駆動リング21との間に配置された調整部材18を、駆動リング21と屈曲部16aとの間に移動させることで、小型のリンク機構30の内周側の一部を、排気導入壁10と、屈曲部16a及び調整部材18とにより挟持することができる。
【0047】
また、図3及び図4に示す小型のリンク機構30と排気ノズル6とを、図1及び図2に示す大型のリンク機構20と排気ノズル6とに交換する際には、駆動リング31と屈曲部16aとの間に配置された調整部材18を、排気導入壁10と駆動リング21との間に移動させることで、大型のリンク機構20の内周側の一部を排気導入壁10及び調整部材18と、屈曲部16aとにより挟持することができる。
【0048】
これにより、大型のリンク機構20と小型のリンク機構30のそれぞれがタービンインペラ2の軸2aと平行な方向へ移動することを防止できる。したがって、本実施形態のターボチャージャ1によれば、排気ノズル6及びリンク機構20,30の寸法を変更した場合であっても、それ以外の保護部材16、遮熱板17、ベアリングハウジング3、タービンハウジング5等、ターボチャージャ1の部品を共通化することができる。
【0049】
また、駆動リング21,31の内壁21b,31bのタービンインペラ2の軸2aと平行な方向の寸法Lを共通化して、調整部材18を駆動リング21,31と、排気導入壁10または屈曲部16aとの間に配置している。これにより、大型のリンク機構20を適用した場合と小型のリンク機構20を適用した場合の双方の場合に、タービンインペラ2の軸2aと平行な方向のクリアランスを最適化して、大型のリンク機構20と小型のリンク機構30のそれぞれがタービンインペラ2の軸2aと平行な方向へ移動することを防止できる。
【0050】
また、保護部材16に屈曲部16aを設けることで、図1に示すように、大型のリンク機構20を用いる場合であっても、駆動リング21とベアリングハウジング3の係止面3aとが接触することを防止できる。
さらに、保護部材16を例えばステンレス鋼等により形成することで、ベアリングハウジング3が例えば鋳鉄等により形成され、駆動リング21がステンレス鋼等により形成されている場合に、異なる材質が直接摺動することを防止して、駆動リング21を保護することができる。
【0051】
また、保護部材16が駆動リング21の内壁21bとベアリングハウジング3との間に配置されているので、駆動リング21の内壁21bとベアリングハウジング3とが直接摺動することを防止して、駆動リング21を保護することができる。
また、保護部材16は、タービンインペラ2とタービンハウジング5との間に設けられた遮熱板17と一体的に形成されているので、ターボチャージャ1の部品点数を削減し、組立を容易にすることができる。
【0052】
また、駆動リング21は、中央部の貫通孔21aに面する内壁21bがタービンインペラ2の軸2aと平行な方向に沿って排気導入壁10側に延びるように形成された当接部21dを備えている。
そのため、当接部21dは、大型のリンク機構20を適用する場合には、図1に示すように調整部材18と当接する。一方、小型のリンク機構30を用いる場合には、図3に示すように、当接部31dは排気導入壁10と当接する。また、内壁21b,31bは保護部材16に沿うように配置されている。
これにより、駆動リング21,31は、リンク機構20,30の大小に関係なく、ベアリングハウジング3側の面が、タービンインペラ2の軸2aと略垂直な状態で保持される。したがって、リンク機構20,30がタービンハウジング5やベアリングハウジング3と干渉することを防止できる。
【0053】
また、調整部材18は厚肉部18aと薄肉部18bとを有し、薄肉部18bと駆動リング21の当接部21dとは、内径及び肉厚が略等しく形成されている。そのため、大型のリンク機構20を適用する場合には、図1に示すように、リンク板22との干渉を回避することができる。また、小型のリンク機構30を適用する場合には、図3に示すように、駆動リング31と厚肉部18aとを接触させて、調整部材18と駆動リング31との接触面積を増加させ、駆動リング31をより安定的に支持することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のターボチャージャ1によれば、リンク機構20,30の寸法を変更させた場合であっても、その他の部品を共通化することができる。リンク機構20,30以外のターボチャージャ1の部品を共通化することで、著しいコスト削減効果が得られると共に、ターボチャージャ1の汎用性を拡大させることができる。
【0055】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態のターボチャージャ101の部分断面図である。
図5に示すように、本実施形態のターボチャージャ101は、タービンインペラ102を回転可能に支持するベアリングハウジング103と、タービンインペラ102に排気ガスを供給するスクロール流路104が形成されたタービンハウジング105と、スクロール流路104内からタービンインペラ102側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズル106と、を備えている。
【0056】
排気ノズル106は、第一実施形態と同様に、複数のノズルベーン108を備えている。また、排気ノズル106は、排気ガスの流路を形成すると共にノズルベーン108の支持軸107を回動可能に支持する支持穴109が形成された排気導入壁110を備えている。
ノズルベーン108の支持軸107は、第一実施形態と同様に、アクチュエータの動力を支持軸107に伝達して回動させるリンク機構120に連結されている。
リンク機構120は、第一実施形態と同様に、周方向に回動可能に設けられた駆動リング121と、駆動リング121の周方向に配置された複数のリンク板122と、を備えている。
【0057】
駆動リング121には、第一実施形態と同様に、リンク板122が回動可能に連結されると共に、駆動軸129に連結された駆動リンク板128が、駆動リング121を周方向に回動させるように連結されている。そして、タービンハウジング105とベアリングハウジング103には、それぞれタービンインペラ102の軸102aと略垂直な係止面103a,105aが、駆動リング121を挟んで対抗する一対の係止部として設けられている。
タービンハウジング105側の係止面(係止部)105aと駆動リング121との間には、リング状の調整部材118が配置されている。
【0058】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
本実施形態のターボチャージャ101は、係止面105aとリンク機構120との間に、リンク機構120のタービンインペラ102の軸102aと平行な方向への可動域を調整する調整部材118が配置されている。そのため、排気ノズル106およびリンク機構120の寸法が変更になった場合に、タービンハウジング105側の係止面105aとリンク機構120との間に配置された調整部材118を、ベアリングハウジング103の係止面103aとリンク機構120との間に移動させることで、大型のリンク機構120と小型のリンク機構(図示略)のそれぞれの一部を、一対の係止面103a,105aと調整部材118とによって挟持することができる。
【0059】
これにより、大型のリンク機構120と小型のリンク機構のそれぞれがタービンインペラ102の軸102aと平行な方向へ移動することを防止できる。したがって、本実施形態のターボチャージャ101によれば、排気ノズル106及びリンク機構120の寸法を変更した場合であっても、それ以外のターボチャージャ101の部品を共通化することができる。
【0060】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、第一実施形態において、係止部は保護部材の屈曲部ではなく、ベアリングハウジングに設けられた係止面であってもよく、該係止面と駆動リングとの間に調整部材が配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一実施形態に係るターボチャージャの部分断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るターボチャージャの分解平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るターボチャージャの部分断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るターボチャージャの分解平面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るターボチャージャの部分断面図である。
【図6】従来のターボチャージャの部分断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ターボチャージャ、2 タービンインペラ、2a 軸、3 ベアリングハウジング(軸受けハウジング)、3a 係止面、4 スクロール流路、5 タービンハウジング、6 排気ノズル、7 支持軸、8 ノズルベーン、9 支持穴、10 排気導入壁(係止部)、11 排気導入壁、12 排ガス導入路(流路)、16 保護部材、16a 屈曲部(係止部)、17 遮熱板、18 調整部材、18a 厚肉部、18b 薄肉部、20 リンク機構、21 駆動リング、21a 貫通孔、21b 内壁、21d 当接部、22 リンク板、30 リンク機構、31 駆動リング、31a 貫通孔、31b 内壁、31d 当接部、32 リンク板、101 ターボチャージャ、102 タービンインペラ、102a 軸、103 ベアリングハウジング(軸受けハウジング)、103a 係止面(係止部)、105a 係止面(係止部)、104 スクロール流路、105 タービンハウジング、106 排気ノズル、107 支持軸、108 ノズルベーン、109 支持穴、110 排気導入壁、118 調整部材、120 リンク機構、121 駆動リング、122 リンク板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記スクロール流路内から前記タービンインペラ側に供給される前記排気ガスの圧力を調整する排気ノズルと、を備えた可変容量型のターボチャージャにおいて、
前記排気ノズルは、前記タービンインペラの周囲に支持軸によって回動可能に支持された複数のノズルベーンと、前記支持軸を回動させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構の前記タービンインペラの軸と平行な方向の両側には、係止部が前記リンク機構の一部を挟んで対向するように設けられ、
前記係止部のいずれか一方と前記リンク機構との間に、前記リンク機構の前記タービンインペラの軸と平行な方向への可動域を調整する調整部材が配置されていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記リンク機構は、周方向に回動可能に設けられた駆動リングと、該駆動リングの前記周方向に配置された複数のリンク板と、を備え、
前記リンク板の各々は、一端部が前記駆動リングに回動可能に連結され、他端部が前記ノズルベーンの各々の前記支持軸にそれぞれ連結され、
前記調整部材は、前記係止部のいずれか一方と前記駆動リングとの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記排気ノズルは、前記排気ガスの流路を形成すると共に前記ノズルベーンの支持軸を回動可能に支持する支持穴が形成された排気導入壁を備え、
前記係止部の一方は前記排気導入壁であり、前記排気導入壁と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記係止部の一方は前記軸受けハウジングまたは前記タービンハウジングに設けられた係止面であり、該係止面と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記係止部の一方は、前記駆動リングの内周側と摺動する保護部材に設けられた屈曲部であり、前記屈曲部と前記駆動リングとの間に前記調整部材が配置されていることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記保護部材は、前記タービンインペラと前記タービンハウジングとの間に設けられた遮熱板と一体的に形成されていることを特徴とする請求項5記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記駆動リングは、中央部の貫通孔に面する内壁が前記タービンインペラの軸と平行な方向に沿って前記排気導入壁側に延びるように形成された当接部を備えていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項8】
前記調整部材は、リング状に形成されて肉厚の異なる厚肉部と薄肉部とを有し、
前記厚肉部の内径は前記薄肉部の内径と等しく、前記厚肉部の外径は前記薄肉部の外径よりも大きく形成され、
前記薄肉部と前記駆動リングの当接部とは、内径及び肉厚が略等しく形成されていることを特徴とする請求項7記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71138(P2010−71138A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237920(P2008−237920)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】