説明

ターボ過給機付エンジンの潤滑装置

【課題】この発明は、ターボ過給機の軸受部を潤滑するオイルが排気管や触媒コンバータの熱で加熱されて劣化することを防止し、軸受部の潤滑性を向上させてターボ過給機の耐久性を高めることを目的とする。
【解決手段】この発明は、ターボ過給機付エンジンの幅方向一側にターボ過給機を補機の鉛直方向上方に配置し、ターボ過給機のタービンの出口部に接続される排気管および触媒コンバータをターボ過給機および補機のベルトと離間する端部の側方に鉛直方向に並ぶように配置し、ターボ過給機付エンジンのオイル供給口とターボ過給機の軸受部とをオイル供給管によって連結したターボ過給機付エンジンの潤滑装置において、オイル供給口をターボ過給機付エンジンの幅方向一側かつ鉛直方向で補機と重なる高さ位置に配置し、補機によってオイル供給管の一部を覆ったことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はターボ過給機付エンジンの潤滑装置に係り、特に、ターボ過給機の軸受部に供給されるオイルの加熱を防止し、ターボ過給機の潤滑性を向上させたターボ過給機付エンジンの潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ過給機付エンジンでは、特開2007−309124号公報に開示されるように、排気圧を利用して過給を行うターボ過給機の軸受部に潤滑装置でオイルを供給し、軸受部を潤滑している。ターボ過給機付エンジンの潤滑装置では、オイルをオイル供給管によって軸受部に供給し、軸受部を潤滑したオイルをオイル排出管によってエンジンに戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−309124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボ過給機には、熱源となる排気管および触媒コンバータが接続されている。このターボ過給機を幅方向一側に配置したターボ過給機付エンジンでは、ターボ過給機の鉛直方向下方に、空調用コンプレッサ等の補機類が配設される場合がある。この補機類を避けてエンジン本体とターボ過給機との間を連絡するオイル供給管やオイル排出管を配置しようとすると、オイル供給管やオイル排出管が前記熱源である触媒コンバータに近づいてしまい、触媒コンバータから発生する熱を受熱しやすくなる。オイル供給管内を流れるオイルの温度が上昇すると、オイル劣化・粘度低下を招くため軸受部の潤滑性が低下し、ターボ過給機の耐久性を低下させることになる。
そこで、オイル供給管の温度上昇を防止するために、前記特許文献1のように、遮熱板を設けてオイルの加熱防止を図ったものがある。しかし、遮熱板を設けることは、部品点数の増加を招くことになる。
【0005】
この発明は、ターボ過給機の軸受部を潤滑するオイルが排気管や触媒コンバータの熱で加熱されて劣化することを防止し、軸受部の潤滑性を向上させてターボ過給機の耐久性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ターボ過給機付エンジンのクランク軸方向一端部側に配置されるクランクプーリからベルトを介して駆動される補機を前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側下部に配置し、前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側であって前記ベルトと近接する側にコンプレッサを配置するとともに、軸受部を挟んで前記コンプレッサと反対側にタービンを配置してなるターボ過給機を、前記補機の鉛直方向上方に配置し、前記タービンの出口部に接続される排気管および触媒コンバータを、前記ターボ過給機および前記補機の前記ベルトと離間する端部の側方に鉛直方向に並ぶように配置し、前記ターボ過給機付エンジンのオイル供給口と前記ターボ過給機の軸受部とをオイル供給管によって連結したターボ過給機付エンジンの潤滑装置において、前記オイル供給口を前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側かつ鉛直方向で前記補機と重なる高さ位置に配置し、前記補機によって前記オイル供給管の一部を覆ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明のターボ過給機付エンジンの潤滑装置は、オイル供給口を補機と重なる高さ位置に配置したことによって、オイル供給口を触媒コンバータから離れた熱影響を受けにくい位置に配置できる。そのため、このターボ過給機付エンジンの潤滑装置は、オイル供鉛管を流れるオイルが触媒コンバータの熱で加熱されることが防止できる。
また、この発明のターボ過給機付エンジンの潤滑装置は、補機によってオイル供給管の一部を覆われているため、補機を遮熱材として利用でき、オイル供給管内を流れるオイルが触媒コンバータの熱で加熱されることを防止できる。
よって、このターボ過給機付エンジンの潤滑装置は、オイル供給管内を流れるオイルの熱劣化を防止し、軸受部の潤滑性を向上させてターボ過給機の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】潤滑装置を備えたターボ過給機付エンジンの正面図である。(実施例)
【図2】潤滑装置を備えたターボ過給機付エンジンの側面図である。(実施例)
【図3】ターボ過給機付エンジンの潤滑装置の拡大平面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図1・図2において、1はターボ過給機付エンジンである。ターボ過給機付エンジン1は、シリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3を取り付け、シリンダヘッド3の上部にシリンダヘッドカバー4を取り付け、シリンダブロック2の下部にクランク軸5を軸支し、シリンダブロック2の下部にオイルパン6を取り付け、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とのクランク軸方向一端部にエンジンカバー7を取り付けている。
ターボ過給機付エンジン1は、図2に示すように、クランク軸方向一端部側のエンジンカバー7からクランク軸5を突出させ、クランクプーリ8を取り付けている。クランク軸方向一端部側に配置されるクランクプーリ8には、ベルト9を捲掛けている。ターボ過給機付エンジン1は、クランク軸方向一端部側に、クランク軸5によって駆動される補機としてオイルポンプ10を配置し、クランクプーリ8からベルト9を介して駆動される補機として空調用コンプレッサ11とウォータポンプ12とジェネレータ13とを配置している。
前記オイルポンプ10は、クランク軸5が突出された部位のエンジンカバー7内に配置している。前記空調用コンプレッサ11は、ターボ過給機付エンジン1のクランク軸方向と交差する幅方向一側下部のシリンダブロック2外側に配置し、コンプレッサ軸14にコンプレッサプーリ15を取り付けている。前記ウォータポンプ12は、過給機付エンジン1の幅方向一側のエンジンカバー7内に配置し、ウォータポンプ軸16にウォータポンププーリ17を取り付けている。前記ジェネレータ13は、過給機付エンジン1の幅方向他側のシリンダブロック2外側に配置し、ジェネレータ軸18にジェネレータプーリ19を取り付けている。
前記ターボ過給機付エンジン1は、クランクプーリ8とコンプレッサプーリ15とウォータポンププーリ17とジェネレータプーリ19とテンショナ20とにベルト9を捲掛け、クランク軸5の回転をコンプレッサ軸14とウォータポンプ軸16とジェネレータ軸18とに伝達し、空調用コンプレッサ11とウォータポンプ12とジェネレータ13とを駆動する。なお、オイルポンプ10は、クランク軸5で直接駆動される。
【0011】
前記エンジンカバー7に内蔵したオイルポンプ10は、オイルパン6内のオイルを吸引してエンジンカバー7に形成されたカバー側サブギャラリ21に吐出する。カバー側サブギャラリ21のオイルは、オイルフィルタ22により濾過されてエンジンカバー7に形成されたカバー側第1オイル通路23に供給される。カバー側第1オイル通路23のオイルは、シリンダブロック2のメインギャラリに供給されて各部を潤滑するとともに、エンジンカバー7に形成されたカバー側第2オイル通路24を介してシリンダヘッド3に供給され、各部を潤滑する。
前記空調用コンプレッサ11は、図1に示すように、上下にそれぞれ上側取付部25・26および下側取付部27・28を設けている。ターボ過給機付エンジン1は、幅方向一側下部のシリンダブロック2とエンジンカバー7にそれぞれ上側取付ボス部29・30および下側取付ボス部31・32を突出させて設けている。空調用コンプレッサ11は、上側取付部25・26および下側取付部27・28を、それぞれ上側取付ボス部29・30および下側取付ボス部31・32に、上側取付ボルト33・34および下側取付ボルト35・36で取り付けている。これにより、空調用コンプレッサ11は、ターボ過給機付エンジン1の幅方向一側下部の、シリンダブロック2とエンジンカバー7との接合面Sに跨る位置に配置している。
前記ウォータポンプ12は、空調用コンプレッサ11と後述する触媒コンバータ46との間を通る冷却水インレットパイプ37によりラジエータから冷却された冷却水を吸引し、ターボ過給機付エンジン1内に圧送して各部を冷却する。また、前記ジェネレータ13は、ベルト9を介して駆動され、ターボ過給機付エンジン1の運転に要する電力を発生する。
【0012】
前記ターボ過給機付エンジン1は、前記補機である空調用コンプレッサ11の鉛直方向上方の、シリンダブロック2とエンジンカバー7との接合面Sに跨る位置にターボ過給機38を配置している。ターボ過給機38は、コンプレッサ39と軸受部40とタービン41とからなり、シリンダブロック2の幅方向一側であって前記ベルト9と近接するクランク軸方向一端部側にコンプレッサ39を配置するとともに、軸受部40を挟んでコンプレッサ39と反対側にタービン41を配置している。
ターボ過給機38は、図3に示すように、幅方向一側上部のシリンダヘッド3に取り付けた排気マニホルド42をタービン41の入口部43に接続し、タービン41の出口部44に排気管45を介して触媒コンバータ46を接続し、触媒コンバータ46に後部排気管47を接続している。タービン41の出口部44に接続される排気管45および触媒コンバータ46は、図1に示すように、ターボ過給機38および空調用コンプレッサ11のベルト9と離間する端部の側方に鉛直方向に並ぶように配置している。
前記ターボ過給機付エンジン1は、図1に示すように、シリンダヘッドヘットカバー4上部にエアクリーナ48を配置し、エアクリーナ48のエアクリーナアウトレット49をターボ過給機38のコンプレッサ39の入口部50に接続している。コンプレッサ39の出口部51には、ターボアウトレットホース52を接続している。ターボアウトレットホース52は、クランク軸方向他端部に向かって延びた後にさらに幅方向他側に湾曲して延び、幅方向他側上部のシリンダヘッド3に取付られた吸気マニホルド53(図2参照)に接続している。
また、ターボ過給機38の軸受部40には、冷却水入口管54と冷却水出口管55とが接続されている。軸受部40は、冷却水入口管54と冷却水出口管55とにより冷却水を循環され、冷却される。
前記ターボ過給機付エンジン1は、ターボ過給機38を潤滑する潤滑装置56を備えている。潤滑装置56は、図2に示すように、前記カバー側第1オイル通路23に連通するターボ過給機用オイル通路57をエンジンカバー7に形成している。ターボ過給機用オイル通路57には、エンジンカバー7の幅方向一側に開口するオイル供給口58を形成している。オイル供給口58は、オイル供給管59によってターボ過給機38の軸受部40上部のオイル入口部60に連結している。軸受部40下部のオイル出口部61には、オイル排出管62の一端側を連結している。オイル排出管62は、他端側をシリンダブロック2の下部に形成したオイル戻し口63に連結している。潤滑装置56は、オイル供給管59とオイル排出管62とによりターボ過給機38の軸受部40にオイルを循環させ、軸受部40を潤滑する。
【0013】
このターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、図1に示すように、前記オイル供給口58をターボ過給機付エンジン1の幅方向一側、かつ鉛直方向で前記空調用コンプレッサ11と重なる高さ位置に配置している。潤滑装置56は、空調用コンプレッサ11によってオイル供給口58に連結されるオイル供給管59の一部を覆っている。
潤滑装置56は、図1に示すターボ過給機付エンジン1の正面視でオイル供給口58を空調用コンプレッサ11と重なる高さ位置に配置したことによって、オイル供給口58を触媒コンバータ46から離れた熱影響を受けにくい位置に配置できる。そのため、潤滑装置56は、オイル供鉛管59を流れるオイルが触媒コンバータ46の熱で加熱されることが防止できる。
また、このターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、空調用コンプレッサ11によってオイル供給管59の一部を覆われているため、空調用コンプレッサ11を遮熱材として利用でき、オイル供給管59内を流れるオイルが触媒コンバータ46の熱で加熱されることを防止できる。
よって、このターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、オイル供給管59内を流れるオイルの熱劣化を防止し、軸受部40の潤滑性を向上させてターボ過給機38の耐久性を高めることができる。
また、ターボ過給機付エンジン1は、図2に示すように、オイルポンプ10を内蔵したエンジンカバー7をクランク軸方向一端部に備え、このエンジンカバー7にターボ過給機用オイル通路57を形成している。このターボ過給機用オイル通路57には、オイル供給口58を形成している。
これにより、ターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、オイル供給口58に繋がるターボ過給機用オイル通路57をエンジンカバー7に形成した構造によって、オイル供給口58をシリンダブロック2に形成されたメインギャラリと関係なく自由な位置に配置できる。
そのため、このターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、オイル供給口58を触媒コンバータ46から離れた熱影響の少ない場所に配置でき、オイル供給管59内を流れるオイルが触媒コンバータ46の熱で加熱されることを防止できる。
さらに、このターボ過給機付エンジン1の潤滑装置56は、図1・図2に示すように、シリンダブロック2エンジンカバー7に設けた空調用コンプレッサ11用の上側取付ボス部29・30の間にオイル供鉛管59を通してターボ過給機38の軸受部40に連結することで、コンパクトなレイアウトにすることができる。
なお、上述実施例においては、エンジンカバー7にオイル供給口58を設けたが、オイル供給口58は触媒コンバータ46と反対方向にあれば良いので、シリンダブロック2・シリンダヘッド3・シリンダヘッドカバー4・オイルパン6の何れに設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明は、ターボ過給機の軸受部に供給するオイルの加熱を防止し、ターボ過給機の潤滑性を向上させるものであり、オイルに限らず、流体が流れる配管の冷却に応用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 ターボ過給機付エンジン
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 シリンダヘッドカバー
5 クランク軸
6 オイルパン
7 エンジンカバー
8 クランクプーリ
9 ベルト
10 オイルポンプ
11 空調用コンプレッサ
23 カバー側第1オイル通路
38 ターボ過給機
39 コンプレッサ
40 軸受部
41 タービン
42 排気マニホルド
43 入口部
44 出口部
45 排気管
46 触媒コンバータ
56 潤滑装置
57 ターボ過給機用オイル通路
58 オイル供給口
59 オイル供給管
62 オイル排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機付エンジンのクランク軸方向一端部側に配置されるクランクプーリからベルトを介して駆動される補機を前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側下部に配置し、
前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側であって前記ベルトと近接する側にコンプレッサを配置するとともに、軸受部を挟んで前記コンプレッサと反対側にタービンを配置してなるターボ過給機を、前記補機の鉛直方向上方に配置し、
前記タービンの出口部に接続される排気管および触媒コンバータを、前記ターボ過給機および前記補機の前記ベルトと離間する端部の側方に鉛直方向に並ぶように配置し、
前記ターボ過給機付エンジンのオイル供給口と前記ターボ過給機の軸受部とをオイル供給管によって連結したターボ過給機付エンジンの潤滑装置において、
前記オイル供給口を前記ターボ過給機付エンジンの幅方向一側かつ鉛直方向で前記補機と重なる高さ位置に配置し、
前記補機によって前記オイル供給管の一部を覆ったことを特徴とするターボ過給機付エンジンの潤滑装置。
【請求項2】
前記ターボ過給機付エンジンはオイルポンプを内蔵したエンジンカバーをクランク軸方向一端部に備え、
前記エンジンカバーにターボ過給機用オイル通路を形成し、
このターボ過給機用オイル通路に前記オイル供給口を形成したことを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付エンジンの潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−140909(P2011−140909A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2081(P2010−2081)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】