説明

ダイアフラム弁

【課題】製造が容易であり、止水が確実なダイアフラム弁を提供する。
【解決手段】ダイアフラム弁10は、中心部に貫通孔20hが貫通して形成された可撓性を有するダイアフラム20と、このダイアフラム20に組み付けられダイアフラム20の可動面21を軸心方向に沿って弾性変位をさせることにより、ダイアフラム20に弁座3への離着座動作を行わせるためのディスク部材30とを有している。ディスク部材30は可動面21に対向可能な基板31と、この基板31の中心部から軸方向に沿って突出しダイアフラム20の貫通孔20hへ挿通可能な軸部32と、この軸部32の外周から径方向外方へ張り出し基板31との間でダイアフラム20の可動面21を挟持した状態で係止する抜け止め用の張り出し部32tとを備えて一体成形される。基板31と可動面21との間のうち弁座3に対向する領域には、これらの間を離間させるスペーサ部材40が介在されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイアフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2に従来のダイアフラム弁が開示されている。このダイアフラム弁は、中心部に貫通孔が貫通して形成された可撓性を有するダイアフラムと、このダイアフラムに組みつけられ同ダイアフラムの可動面を軸心方向に沿って弾性変形をさせることにより、ダイアフラムに弁座への離着座動作を行なわせるためのディスク部材とを有している。ディスク部材は可動面に対向可能な基板と、この基板の中心部から軸方向に沿って突出しダイアフラムの貫通孔へ挿通可能な軸部と、この軸部の外周から径方向外方へ張り出し基板との間でダイアフラムの可動面を挟持した状態で係止する抜け止め用の張り出し部とを備えて一体成形される。
【0003】
このような構成である従来のダイアフラム弁では、ダイアフラムの可動面をディスク部材の抜け止め用の張り出し部に係止し、ダイアフラムとディスク部材とを組み付けることができるため、ダイアフラムとディスク部材との組み付けを容易に行なうことができる。また、硬質樹脂で形成されたディスク部材によりダイアフラムを弁座に離着座させるため、ダイアフラムの弁座への離着座を確実に行なうことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−2448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のダイアフラム弁では、ディスク部材の軸部に張り出し部を備えているため、ディスク部材を成形するには、少なくとも平面方向に二分割する金型を用いなければならない。成形条件によっては、ディスク部材の基板上のパーティングラインにバリが生じることがある。この場合、バリによる凹凸が原因で、ダイアフラムの弁座への着座時に、ダイアフラムと弁座との間に隙間が生じ、止水不良になることがある。このため、ディスク部材の基板にバリが生じると、ダイアフラム弁の止水不良を回避するために、ディスク部材の表面に生じたバリをやすり等で除去する手間を要している。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造が容易であり、止水が確実なダイアフラム弁を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のダイアフラム弁は、中心部に貫通孔が貫通して形成された可撓性を有するダイアフラムと、このダイアフラムに組み付けられ同ダイアフラムの可動面を軸心方向に沿って弾性変位をさせることにより、前記ダイアフラムに弁座への離着座動作を行わせるためのディスク部材とを有してなり、
前記ディスク部材は前記可動面に対向可能な基板と、この基板の中心部から軸方向に沿って突出し前記ダイアフラムの前記貫通孔へ挿通可能な軸部と、この軸部の外周から径方向外方へ張り出し前記基板との間で前記ダイアフラムの可動面を挟持した状態で係止する抜け止め用の張り出し部とを備えて一体成形されるダイアフラム弁において、
前記基板と前記可動面との間のうち前記弁座に対向する領域には、これらの間を離間させるスペーサ部材が介在されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成である本発明のダイアフラム弁は、ディスク部材の基板とダイアフラムの可動面との間のうち弁座に対向する領域にスペーサ部材を介在させたことにより、ディスク部材の基板にバリが生じても弁座に対向する領域ではバリがダイアフラムの可動面に接触することがない。このため、ダイアフラムは弁座に着座する領域が平坦となり、弁座に対して隙間なくダイアフラムを着座させることができる。また、ディスク部材の基板に形成されたバリをやすり等で除去する必要がなくなる。
【0009】
したがって、本発明のダイアフラム弁は、製造が容易であり、止水を確実におこなうことができる。
【0010】
本発明のダイアフラム弁において、スペーサ部材は、その中心部に貫通孔と同軸で開口し軸部を貫通可能な軸部挿通孔を有する平板状に形成され、かつスペーサ部材が基板と対向する面のうちディスク部材を成形するときの基板上のパーティングラインを含む領域にはパーティングラインに沿って凹部が形成されていることが好ましい。
【0011】
この場合、スペーサ部材に形成された凹部にディスク部材の成形時に基板上のパーティングラインに形成されたバリを収納することができる。このため、ダイアフラム弁に組み付けられたスペーサ部材が、バリによりがたつくことを防止できるため、より確実にダイアフラムを弁座に隙間なく着座させることができる。
【0012】
本発明のダイアフラム弁において、軸部挿通孔の孔縁には軸部の外周面に当接可能な複数のがた止め用突起が突出形成されていることが好ましい。
【0013】
この場合、ディスク部材にスペーサ部材を組み付ける際に、がた止め用突起がディスク部材の軸部に係止して、スペーサ部材が軸部から脱落することを防止することができる。このため、ディスク部材にスペーサ部材を組み付ける作業が容易かつ確実に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のダイアフラム弁10は、ダイアフラム20とディスク部材30とを有している。ダイアフラム20は軟質樹脂により一体に成形されており、円盤状の可動面21とこの可動面の全周縁に沿って断面下向きU字状に形成された撓み許容部22とからなっている。可動面21は、中心部に貫通孔20hを貫通して形成され、対向する径方向の外周部の2ヶ所に貫通小孔20sが貫通して形成されている。
【0016】
図2に示すように、ディスク部材30は硬質樹脂にて一体に成形されており、ダイアフラム20の可動面21に対向可能な基板31を有する。この基板31の外周縁には段差を介して大径部35が形成され、ダイアフラム20の撓み許容部22を上方から覆うことができるようになっている。また、基板31の下面側には軸心に沿って軸部32が突設される一方、上面側にも同軸で膨出突部37が設けられ膨出突部37は上記大径部35の上面から僅かに突出する程度の長さをもって形成されている。また、軸部32の中心には下端側へ開口するパイロット孔10pが軸心に沿って形成されている。パイロット孔10pは軸部32の下端から膨出突部37の途中高さ位置に至るまでの間は同一径をもって形成されるが、膨出突部37の上端開口部はこれよりも小径に形成されている。
【0017】
また、軸部32の付け根部分には軸部32より大径に形成された円盤状の基部32bが同心で形成され、かつ基部32bとは所定間隔(ダイアフラムの厚みに相当する間隔)をおいて張り出し部32tが張り出し形成されていて、基部32bと張り出し部32tとの間でダイアフラム20を挟み付けることができる。さらに、基板31の外周縁部であって、軸部32をはさんで対称位置には2個の小突起33、34が下向きに突出形成されている。
【0018】
また、両小突起33、34の付け根部には軸部の基部と同じ厚み寸法(後述するスペーサ部材と同一の厚み寸法)をもってベース部33b、34bが張り出し形成されるとともに、小突起33、34の先端寄りには鍔部33t、34tが張り出し形成されている。但し、両鍔部33t、34tのうち軸部と対向する面は垂直な切り落とし面が形成されている。また、両小突起33、34のうち、一方のもの(図1の右側に位置するもの)34には軸芯に沿って小孔10sが貫通している。
【0019】
上記したように、ディスク部材30は、軸部32に張り出し部32t及び小突起33、34に鍔部33t、34tを備えているため、軸部32及び小突起33、34の中心を通る線分により二分割された金型を使用して成形される。両金型においては、上記した線分がパーティングラインを構成するため、図2に示すように成形条件によっては、パーティングライン上のいずれかの箇所においてバリBが生じることがある。
【0020】
バリが生じうるラインのうち軸部32の基部32bと両小突起33、34のベース部33b、34bとの間は後述する弁座の上端縁の幅領域の真上において対応する領域であるため、ダイアフラム20がバリと接触することは回避されねばならない。そこで、図1に示すように、ディスク部材30の基板31とダイアフラム20の可動面21との間の内弁座に対向する領域には、これらの間を離間させるスペーサ部材40が介在されている。
【0021】
スペーサ部材40は合成樹脂によって一体に形成されており、図3に示すように、中心部にディスク部材30の軸部32の基部32bを挿通可能な軸部挿通孔40hが貫通したリング状に形成されている。また、スペーサ部材40における対向する径方向の周縁の2ヶ所にはディスク部材30の小突起33、34のベース部33b、34bを適合して嵌入可能な切欠き部40kが形成されている。かくして、スペーサ部材40は基板31に対して基部32b及び両ベース部33b、34bのみは露出させるが、残りの部分は全て覆い隠した状態でかつ周方向に位置決めがされた状態でディスク部材30に装着される。
【0022】
また、スペーサ部材40は、ディスク部材30の基板31と対向する面41のうち、ディスク部材30を成形するときの基板31上のパーティングラインを含む領域には、パーティングラインに沿って凹部42が形成されており、図に示すものでは軸部挿通孔40hと切欠き部40kとの間をつなぐようにして形成されている。
【0023】
また、スペーサ部材40の軸部挿通孔40hの孔縁には軸部32の基部32bの外周面に当接可能な複数のがた止め用突起43が突出形成されている。なお、この実施形態においてはがた止め用突起43は凹部42を避けた位置に計三箇所、等角度毎に配置されている。がた止め用突起43はスペーサ部材40の装着時において基部32bとの間の摩擦力を低減させて作業者がスペーサ部材の装着作業を途中で中断させてしまう事態を回避させる目的もある。スペーサ部材40が基板31に対して浮いた状態で装着されてしまうとダイアフラム20と弁座とのシール状況が不安定化する虞があるため、これを未然に回避するものである。また、同様な配慮はダイアフラム20をディスク部材30に装着する際にもなされている。つまり、ダイアフラム20の抜け止めの張り出し構造である、32t、33t、34tにはダイアフラム20の装着方向へ上り勾配となる傾斜面がそれぞれ形成されていて、ダイアフラム20の装着の円滑化が図られている。
【0024】
次に、ダイアフラム弁10の組み付け手順について説明する。
【0025】
先ず、スペーサ部材40の凹部42が形成された面41をディスク部材30の基板31に対向するようにして軸部挿通孔40hをディスク部材30の軸部32に挿入する。スペーサ部材40の切欠き部40kがディスク部材30の小突起33、34のベース部33b、34bを嵌入するようにスペーサ部材40をディスク部材30の基板31に当接させて、図4に示すように、ディスク部材30にスペーサ部材40を組み付ける。この際、切欠き部40kと小突起33、34のベース部33b、34bとの嵌り合いを通じてスペーサ部材40はディスク部材30に対して周方向に位置決めされた状態で装着されるため、両凹部42は自動的にパーティングラインに沿って位置する。したがって、スペーサ部材40がディスク部材30に装着されると、両凹部42内にパーティングラインに形成されたバリBが収納される。また、スペーサ部材40の軸部挿通孔40hの孔縁に形成されたがた止め用突起43が軸部32の基部32bの外周面に当接する。
【0026】
次に、ダイアフラム20の貫通孔20hを軸部32に挿入し、2個の貫通小孔20sを小突起33、34に挿入する。ダイアフラム20の可動面21は、張り出し部32t及び鍔部33t、34tに係止され、かくしてダイアフラム20は基板31との間で挟持された状態で抜け止めされる。以上のようにしてダイアフラム弁10の組みつけがなされる。
【0027】
図5は本実施例のダイアフラム弁10を用いたパイロット方式の電磁弁Vを示している。電磁弁Vは、流入管路1と流出管路2との間に弁座3を有している。ダイアフラム20の可動面21が弁座3上にシール状態で載せられている。
【0028】
電磁弁Vは、ソレノイド4を有し、その中心には軸芯に沿って上下動可能なプランジャが設けられている。また、プランジャの下端面にはパイロット弁4aを有している。ソレノイド4に通電を開始すると、プランジャが上方へ吸引されることに伴いパイロット弁4aが上昇し、パイロット孔10pを開放する。その後、背圧室5内の流体がパイロット孔10pを通じて流出管路2へ流出すると、背圧室5内の圧力が低下し、ダイアフラム20が弁座3から離れ、電磁弁Vは開弁する。また、ソレノイド4への通電を停止すると、戻しばね4cのばね力によってプランジャが下降することに伴いパイロット弁4aも下降し、パイロット孔10pを閉鎖する。その後、背圧室5内にディスク部材30に貫設された小孔10sを通じて流入管路1から流体が流入すると、背圧室5内の圧力が上昇し、ダイアフラム20が弁座3に着座し、電磁弁Vは閉弁する。
【0029】
このような構成である本実施形態のダイアフラム弁10は、ディスク部材30の基板31とダイアフラム20の可動面21との間にスペーサ部材40を介在させたことにより、ディスク部材30の基板31にバリBが生じてもバリBが可動面21に接触することがない。このため、ダイアフラム20は弁座3に着座する領域が平坦となり、弁座3との隙間なくダイアフラム20を着座させることができる。また、ディスク部材30の基板31に形成されたバリBをやすり等で除去する必要がなくなる。
【0030】
したがって、実施例のダイアフラム弁10は、製造が容易であり、止水を確実におこなうことができる。
【0031】
また、スペーサ部材40に形成された凹部42にディスク部材30の基板31に形成されたバリBが収納される。このため、ダイアフラム弁10に組み付けられたスペーサ部材40が、バリBによりがたつく事を防止できるため、より確実にダイアフラム20を弁座3に着座させることができる。
【0032】
また、がた止め用突起43がディスク部材30の軸部32の基部32bに係止して、スペーサ部材40が軸部から脱落することを防止することができるため、ディスク部材30にスペーサ部材40を組み付ける作業が容易かつ確実におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例のダイアフラム弁の断面図である。
【図2】実施例のダイアフラム弁に係るディスク部材の斜視図である。
【図3】実施例のダイアフラム弁に係るスペーサ部材の斜視図である。
【図4】実施例のダイアフラム弁に係るディスク部材とスペーサ部材とを組み付けた状態を示す正面図である。
【図5】実施例のダイアフラム弁を用いたパイロット方式の電磁弁Vを示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
3…弁座
10…ダイアフラム弁
20…ダイアフラム
20h…貫通孔
21…可動面
30…ディスク部材
31…基板
32…軸部
32t…張り出し部
40…スペーサ部材
40h…軸部挿通孔
42…凹部
43…がた止め用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に貫通孔が貫通して形成された可撓性を有するダイアフラムと、このダイアフラムに組み付けられ同ダイアフラムの可動面を軸心方向に沿って弾性変位をさせることにより、前記ダイアフラムに弁座への離着座動作を行わせるためのディスク部材とを有してなり、
前記ディスク部材は前記可動面に対向可能な基板と、この基板の中心部から軸方向に沿って突出し前記ダイアフラムの前記貫通孔へ挿通可能な軸部と、この軸部の外周から径方向外方へ張り出し前記基板との間で前記ダイアフラムの可動面を挟持した状態で係止する抜け止め用の張り出し部とを備えて一体成形されるダイアフラム弁において、
前記基板と前記可動面との間のうち前記弁座に対向する領域には、これらの間を離間させるスペーサ部材が介在されていることを特徴とするダイアフラム弁。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、その中心部に前記貫通孔と同軸で開口し前記軸部を貫通可能な軸部挿通孔を有する平板状に形成され、かつこのスペーサ部材が前記基板と対向する面のうち前記ディスク部材を成形するときの基板上のパーティングラインを含む領域には同パーティングラインに沿って凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のダイアフラム弁。
【請求項3】
前記軸部挿通孔の孔縁には前記軸部の外周面に当接可能な複数のがた止め用突起が突出形成されていることを特徴とする請求項2記載のダイアフラム弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−208949(P2008−208949A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47552(P2007−47552)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000108557)タイム技研株式会社 (15)
【Fターム(参考)】