説明

ダイシング・ダイボンド用接着テープ

【解決手段】 基材上に形成された粘着層の上に、接着剤層を積層してなり、該接着剤層が、(A)シロキサン結合を有するポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒を必須成分として含み、かつヤング率が10MPa以上の接着剤組成物からなると共に、粘着層と接着剤層の粘着力が0.2〜2.0N/25mmであることを特徴とするダイシング・ダイボンド用接着テープ。
【効果】 本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープによれば、これを用いることにより、半導体製造工程におけるダイシング、ダイボンド工程を安定に行うことができ、また加湿後の高接着性、高温時の高接着性、高強度を有することにより高信頼性の半導体装置を形成し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造のウエハーダイシング工程で用いられるウエハーの固定、及びダイシングによって加工されたチップのリードフレームへの接着機能を有するダイシング・ダイボンド用接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、一般に、大径のシリコンウエハーを粘着テープ(ダイシングテープ)により固定し、ダイシング(切断分離)工程で半導体チップに加工され、次いでこのチップをダイシングテープより剥離、取り出され(ピックアップ)、リードフレームに硬化性の液状接着剤(ダイボンド剤)等で熱圧着、接着固定し製造されている。最近では、このダイシングとダイボンド工程の連続に行えることによる工程の合理化を実現でき、液状接着剤の流動成分による半導体部品の汚染及びチップ固定部位からのはみ出し等を避けることのできる、液状でない接着剤からなる接着層を有する、ダイシングテープのウエハー固定機能とダイボンド材の接着機能を兼ね備えた接着シートからなるダイシング・ダイボンドテープが望まれてきている。即ち、このテープは、ダイシング時にはダイシングにより切断されたチップが飛ばないように固定力があり、またダイボンド時にはチップに接着層が付着した状態で容易に取り出すことができ(ピックアップ)、更にダイボンド工程ではリードフレームに強固に接着する機能を有するものである。
【0003】
このダイシング・ダイボンドテープとして、特開平9−67558号公報(特許文献1)ではプラスチックフイルム基材上にダイシング・ダイボンド層として熱可塑性のポリイミド系樹脂を形成したシートが提案されている。この実施形態は、ダイシング時にウエハーを基材に密着したポリイミド樹脂層上に熱圧着固定してダイシングを行い、ポリイミド樹脂層が付着したチップ取り出し(ピックアップ)、リードフレームへ熱圧着固定、加熱接着するものである。
【0004】
ウエハーの固定、チップ取り出し(ピックアップ)性は、ポリイミド樹脂層とウエハーは熱圧着により強固に密着しているため、基材とポリイミド樹脂層との密着性に依存し、容易にはコントロールできない。また、接着層は熱可塑性のポリイミド系樹脂であるため、接着性、特に半導体装置の製造工程である、ワイヤボンド、封止、ハンダリフロー工程で要求される加湿後の接着性、高温時での接着性及び強度が不十分であるなどの欠点がある。
【0005】
また、特開2002−256236号公報(特許文献2)では、特許第2984549号公報(特許文献3)で報告されているような密着性(粘着性)を制御できる放射線重合性粘着層を形成したフイルム基材上に、加湿後の接着性、高温時での接着性を改良した(A)ポリイミド系樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)フェノール樹脂、(D)硬化促進剤からなる樹脂層を形成したダイシング・ダイボンドテープが提案されている。
【0006】
この接着層成分の(B)エポキシ樹脂、(C)フェノール樹脂として柔らかい樹脂、特に流動性の樹脂を用いた場合には、配合組成によっては、接着層が柔らかくなり、ダイシング工程でチップクラックが発生する。
【0007】
更にまた、このダイボンド層は、硬化性のエポキシ樹脂組成物を含有するため、加湿後の接着性、高温時での接着性、強度は改善されるが、ダイシング後のチップ取り出し(ピックアップ)性が困難になる場合がある。即ち、特許第2984549号公報で報告されている基材とダイボンド層の密着性をコントロールする放射線重合性粘着層は、(メタ)アクリレート共重合体ポリマー、(メタ)アクリル基含有ポリマーあるいは多官能性アクリル化合物と光重合開始剤とからなる組成物であり、ダイボンド層と相溶し易いことによる、紫外線照射による反応、あるいはダイシング工程におけるウエハー固定の熱圧着により軟化したダイボンド層と粘着層との融着などにより、密着力が増大し、容易にチップ取り出し(ピックアップ)できなくなる。また、経時によりダイボンド層と放射線重合性粘着層との密着力(粘着力)が変化(増大)し、同様にチップ取り出し(ピックアップ)ができなくなるなどの問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−67558号公報
【特許文献2】特開2002−256236号公報
【特許文献3】特許第2984549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ダイシングに耐えるウエハーの固定、ダイシング時のチップクラックの発生がなく、またチップ取り出し(ピックアップ)の容易なダイボンド層との密着力(粘着力)安定性を備え、更にリードフームとの優れた接着性を有するダイシング・ダイボンド用接着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ウエハーの熱圧着可能なダイ接着剤層として、接着性に優れ、あるヤング率値以上のポリイミド/エポキシ樹脂硬化性組成物の接着剤層とこのダイ接着剤層と基材との層間の粘着層として、特にダイ接着剤層と非相溶のシリコーン粘着層からなる構造のダイシング・ダイボンドテープを用いることにより、安定したダイシング性、チップクラック発生及び密着力経時変化のない良好なチップ取り出し性(ピックアップ性)及び優れたダイ接着性が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
即ち、本発明は、基材上に形成された粘着層の上に、接着剤層を積層してなり、該接着剤層が、(A)シロキサン結合を有するポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒とを必須成分として含み、かつヤング率が10MPa以上の接着剤組成物からなると共に、粘着層と接着剤層の粘着力が0.2〜2.0N/25mmであることを特徴とするダイシング・ダイボンド用接着テープを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープによれば、これを用いることにより、半導体製造工程におけるダイシング、ダイボンド工程を安定に行うことができ、また加湿後の高接着性、高温時の高接着性、高強度を有することにより高信頼性の半導体装置を形成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープは、基材上に形成された粘着層の上に、(A)ポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)エポキシ樹脂硬化触媒を必須成分とする接着剤組成物からなる接着剤層を備えるものである。
【0014】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープにおける粘着層基材として具体的には、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリブタジエンフイルム、ポリブテンフイルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフイルム、またこれらの共重合体フイルム等のポリオレフィンフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリブチレンテレフタレートフイルム等のポリエステルフイルム、(メタ)アクリル酸共重合体フイルム、酢酸ビニル共重合体フイルム、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルスルフォンフイルム、ポリアミドフイルム、ポリイミドフイルム、ポリエーテルイミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリスチレンフイルム等が挙げられるが、ダイシング工程後チップ取り出しを容易にするため、基材を引き伸ばすことにより(エキスパンド)、切断されたチップを隔離することが必要であるため、延伸性のあるフイルム、具体的には、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム等の汎用フイルムが挙げられる。また、これらを架橋したもの、表面をプラズマ、コロナ処理したもの、これらフイルム同士又は別のフイルムを積層したものであってもよい。
【0015】
この基材フイルムの膜厚は、フイルムの種類及び要望される延伸性によるが、通常は20〜400μm、好ましくは30〜150μmである。
【0016】
上記基材上に形成される粘着層としては、天然ゴム及び合成ゴムからなるゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられるが、接着剤層と相溶しない粘着剤が好ましく、特にシリコーン粘着剤が好ましい。該シリコーン粘着剤としては、一般的に使用されている加熱硬化型の鎖状のオルガノポリシロキサンと、固体状のシリコーンレジンからなる粘着剤を用いることができる。加熱硬化型のシリコーン粘着剤としては、有機過酸化物硬化型と白金付加硬化型があるが、基材として延伸性のポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルムを用いる場合、熱により変形する場合があるため、比較的低温で硬化することのできる白金付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いることが特に好ましい。
【0017】
ここで、有機過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤は、鎖状のオルガノポリシロキサンと(R13SiO1/2)単位と(SiO2)単位(R1は置換もしくは非置換の一価炭化水素基)からなるオルガノポリシロキサン共重合体レジン((SiO2)単位に対する(R13SiO1/2)単位のモル比が0.5〜1.5)とのオルガノポリシロキサン混合物、及び架橋硬化剤としてのベンゾイルパーオキサイド、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物を含有するものである。白金付加硬化型のシリコーン粘着剤は、鎖状のビニル基含有オルガノポリシロキサン、前記オルガノポリシロキサン共重合体レジン、及び架橋硬化剤としてケイ素結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、触媒として塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体等の白金族金属系触媒を含有するものである。
【0018】
このシリコーン粘着剤を用いた粘着層は、本発明の接着剤層に対して0.2〜2.0N/25mmの粘着力を有するものである。粘着力が0.2N/25mmより小さいと、ダイシング時にチップが接着剤層と共に剥れてしまい、飛ぶ場合がある。また、粘着力が2.0N/25mmより大きいと、チップ取り出し(ピックアップ)が困難となり、好ましくは0.3〜1.5N/25mmである。なお、この粘着力は、粘着剤の架橋密度、シリコーンレジン成分の含有量によって容易に変えることができる。
【0019】
次に、本発明の接着剤層(ダイ接着剤層)は、(A)ポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒を必須成分として含む接着剤組成物からなるものであり、常温で形状を保ち、フイルム状薄膜を形成し、加熱により可塑状態を経て、硬化するもので、基材に対し優れた接着性を有するものである。
【0020】
(A)成分のポリイミド樹脂は、一般式(1)で表されるその前駆体であるポリアミック酸樹脂も用いることができるが、ダイボンド工程の加熱硬化時にイミド化(脱水閉環)により水が副生し、接着面の剥離等が生じる場合があり、予めイミド化(脱水閉環)した下記一般式(2)で表されるポリイミド樹脂が好ましい。また、接着性の点からフェノール性の水酸基を骨格中に有することが好ましい。
【0021】
【化1】


(式中、Xは芳香族環又は脂肪族環を含む四価の有機基、Yは二価の有機基、nは1〜300の整数)
【0022】
【化2】

(式中、Xは芳香族環又は脂肪族環を含む四価の有機基、Yは二価の有機基、nは1〜300の整数)
【0023】
一般式(1)で表されるポリアミック酸樹脂は下記構造式(3)
【化3】


(但し、Xは上記と同様の意味を示す。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記構造式(4)
2N−Y−NH2 (4)
(但し、Yは上記と同様の意味を示す。)
で表されるジアミンとを常法に従ってほぼ等モルで有機溶剤中で反応させることによって得られる。
【0024】
なお、上記式(1)においてnは1〜300の整数、好ましくは2〜300の整数、特には5〜300の整数であるが、このような繰り返し数を有するポリアミック酸樹脂は、上記の方法により容易に得ることができる。更に一般式(2)で表されるポリイミド樹脂については、上記一般式(1)で表されるポリアミック酸樹脂を常法により脱水、閉環することで得られる。
【0025】
ここで、上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例を具体的に示すと下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化4】

【0027】
なお、上記式(3)のテトラカルボン酸二無水物は、所望により上記のものの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0028】
上記式(4)で表されるジアミンのうち、好ましくは1〜80モル%、更に好ましくは1〜50モル%は下記構造式(5)
【化5】


(式中、R2は炭素原子数3〜9の二価の有機基、R3、R4は炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、mは1〜200の整数である。)
で表されるジアミノシロキサン化合物であることが、有機溶剤への溶解性、基材に対する接着性、柔軟性の点から好ましい。
【0029】
一般式(5)で表されるシロキサンジアミン化合物(又はα,ω−ジアミノシロキサン)において、R2で表される炭素原子数3〜9の二価の有機基としては、例えば、−(CH23−,−(CH24−,−CH2CH(CH3)−,−(CH26−,−(CH28−等のアルキレン基、
【化6】


等のアリーレン基、これらを組み合わせたアルキレン・アリーレン基、−(CH23−O−,−(CH24−O−等のオキシアルキレン基、
【化7】


等のオキシアリーレン基やこれらを組み合わせた
【化8】


等のオキシアルキレン・アリーレン基などの、エーテル酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基が挙げられる。
【0030】
3、R4で表される炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換された基、例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が挙げられ、中でもメチル基及びフェニル基が好ましい。mは1〜200の整数であり、好ましくは1〜100の整数、より好ましくは1〜80の整数である。
【0031】
一般式(5)で表されるシロキサンジアミン化合物の例としては、具体的には、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】

【0032】
これらの上記式(5)で表されるジアミノシロキサン化合物は所望により1種単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0033】
更に上記式(4)で表されるジアミンのうち、上記式(5)で表されるジアミノシロキサン化合物以外のジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(m−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(m−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]パーフルオロプロパン等の芳香族環含有ジアミン等が挙げられ、好ましくはp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等である。
【0034】
また、接着性の点から本発明のポリイミド成分のポリマー骨格にフェノール性の水酸基を有することが好ましく、この水酸基の導入はフェノール性の水酸基を有するジアミン化合物を用いることにより得ることができ、下記構造のものを例示することができる。
【0035】
【化10】


(式中、R5は独立に水素原子又はフッ素、臭素、よう素等のハロゲン原子、あるいは炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、トリフルオロメチル基、フェニル基等の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、各芳香族環についている置換基は全て同じでも構わないし、全て異なっていても構わない。ここでqは0〜5の整数である。A,Bはそれぞれ1種でもよく、2種以上であってもよい。Rは水素原子、ハロゲン原子又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。)
【0036】
ここで、R5の炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基としては、上記R3、R4で例示したものと同様のもの、またエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。また、Rの非置換もしくは置換の一価炭化水素基も、上記R5で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0037】
なお、このフェノール性水酸基を有するジアミン化合物の使用量は、ジアミン化合物全体の5〜60質量%、特に10〜40質量%であることが好ましい。配合量が少なすぎると接着力が低くなる場合があり、また多すぎると接着層の強度が不足する場合がある。
【0038】
また、フェノール性水酸基の導入のためにモノアミンを用いることもでき、下記の構造を例示することができる。
【0039】
【化11】

(式中、R5は独立に水素原子又はフッ素、臭素、よう素等のハロゲン原子、あるいは炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、トリフルオロメチル基、フェニル基等の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、上記R5と同様のものが例示され、各芳香族環についている置換基は全て同じでも構わないし、全て異なっていても構わない。Dは1種でも2種を併用してもよい。また、pは1〜3の整数である。)
【0040】
アミン化合物はこれらに限定されるものではなく、またこれらのジアミン化合物も所望により1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0041】
ポリアミック酸樹脂及びポリイミド樹脂の生成反応について具体的な例を挙げると、上述の出発原料を、不活性な雰囲気下で溶媒に溶かし、通常、80℃以下、好ましくは0〜40℃で反応させて、ポリアミック酸樹脂を合成する。更に得られたポリアミック酸樹脂を、通常、100〜200℃、好ましくは150〜200℃に昇温させることにより、ポリアミック酸樹脂の酸アミド部分を脱水閉環させ、目的とするポリイミド樹脂を合成する方法が採られる。上記反応に使用する有機溶媒は、得られるポリアミック酸に不活性なものであれば、前記出発原料を完全に溶解できるものでなくともよい。例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられ、好ましくは非プロトン性極性溶媒、特に好ましくはN−メチルピロリドン、シクロヘキサノン及びγ−ブチロラクトンである。これらの溶剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記の脱水閉環を容易にするためには、トルエン、キシレンなどの共沸脱水剤を用いるのが望ましい。また、無水酢酸/ピリジン混合溶液を用いて低温で脱水閉環を行うこともできる。
【0043】
なお、樹脂の分子量を調整するために、無水マレイン酸、無水フタル酸などのジカルボン酸無水物及び/又はアニリン、n−ブチルアミン、上記に挙げたフェノール性の水酸基を有するモノアミンを添加することもできる。但し、ジカルボン酸無水物の添加量は、ジカルボン酸二無水物100質量部当たり、通常、0〜2質量部であり、モノアミンの添加量は、ジアミン100質量部当たり、通常、0〜2質量部である。
【0044】
本発明で用いられる(B)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物が好ましく、分子構造、分子量などは特に制限はない。このようなエポキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン又はこのハロゲン化物のジグリシジルエーテル及びこれらの縮重合物(いわゆるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等)、ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、レゾルシンのジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ジフェニルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキセン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、1,2−ジオキシベンゼンあるいはレゾルシノール、多価フェノール又は多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシグリシジルエーテルあるいはポリグリシジルエステル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂(あるいはハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂)とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック(即ち、ノボラック型エポキシ樹脂)、過酸化法によりエポキシ化したエポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ポリブタジエン、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0045】
(B)成分のエポキシ樹脂の配合量は、(A)成分のポリイミド樹脂100質量部に対して5〜200質量部、特に10〜100質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂の配合量が少なすぎると接着力が劣る場合があり、多すぎると硬化後の接着剤層の柔軟性が不足する場合がある。
【0046】
なお、上記のエポキシ基を1分子中に少なくとも2個有するエポキシ化合物にモノエポキシ化合物を適宜併用することは差し支えなく、このモノエポキシ化合物としては、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、プロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、オクチレンオキシド、ドデセンオキシドなどが例示される。また、用いるエポキシ樹脂は必ずしも1種類のみに限定されるものではなく、2種類もしくはそれ以上を併用することができる。
【0047】
本発明で用いる(C)成分のエポキシ樹脂硬化触媒は特に制限はなく、リン系触媒としてはトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニムトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートや下記に示すような化合物が挙げられる。
【0048】

(式中、R6〜R13は水素原子又はフッ素、臭素、よう素などのハロゲン原子、あるいは炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基などの非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、総ての置換基が同一でも、おのおの異なっていても構わない。)
【0049】
ここで、R6〜R13の一価炭化水素基としては、上記R5で例示したものと同様のもの、またメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などを挙げることができる。
【0050】
また、アミン系触媒としては2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体などを配合することができる。
【0051】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化触媒は、これらの中から1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、(C)成分のエポキシ樹脂硬化触媒の配合量は、触媒量とすることができ、通常(B)成分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0052】
本発明の接着剤組成物には、エポキシ樹脂の硬化剤を用いることができる。この硬化剤としては、従来から知られているエポキシ樹脂用の種々の硬化剤を使用することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メンタンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどのアミン系化合物;エポキシ樹脂−ジエチレントリアミンアダクト、アミン−エチレンオキサイドアダクト、シアノエチル化ポリアミンなどの変性脂肪族ポリアミン;ビスフェノールA、トリメチロールアリルオキシフェノール、低重合度のフェノールノボラック樹脂、エポキシ化もしくはブチル化フェノール樹脂あるいは“Super Beckcite”1001[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、“Hitanol”4010[(株)日立製作所製]、Scado form L.9(オランダScado Zwoll社製)、Methylon 75108(米国ゼネラルエレクトリック社製)などの商品名で知られているフェノール樹脂などの、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を含有するフェノール樹脂;“Beckamine”P.138[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、“メラン”[(株)日立製作所製]、“U−Van”10R[東洋高圧工業(株)製]などの商品名で知られている炭素樹脂;メラミン樹脂、アニリン樹脂などのアミノ樹脂;式HS(C24OCH2OC24SS)n24OCH2OC24SH(n=1〜10の整数)で示されるような1分子中にメルカプト基を少なくとも2個有するポリスルフィド樹脂;無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸、ドデシル無水こはく酸、無水クロレンディック酸などの有機酸もしくはその無水物(酸無水物)などが挙げられる。上記した硬化剤のうちでもフェノール系樹脂(フェノールノボラック樹脂)が、本発明の組成物に良好な成形作業性を与えるとともに、優れた耐湿性を与え、また毒性がなく、比較的安価であるので望ましいものである。上記した硬化剤は、その使用にあたっては必ずしも1種類に限定されるものではなく、それら硬化剤の硬化性能などに応じて2種類以上を併用してもよい。
【0053】
この硬化剤の使用量は、その具体的種類によって好適な配合量が相違するが、一般には前記(B)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲であることが好ましい。硬化剤の使用量が1質量部未満では、本発明の組成物を良好に硬化させることが困難となる場合があり、逆に100質量部を超えると、経済的に不利となるほか、エポキシ樹脂が希釈されて硬化に長時間を要するようになり、更には硬化物の物性が低下するという不利が生じる場合がある。
【0054】
なお、(A)成分として骨格中にフェノール性の水酸基を有するポリイミド樹脂を用いる場合には、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂硬化剤との配合比は重要である。この場合、フェノール性の水酸基とエポキシ基との反応を利用して硬化反応が行われるが、エポキシ基が少なすぎると被着体との接着力が十分でなくなるおそれがあり、また多すぎるとエポキシ樹脂により弾性率が上昇する場合があるため、柔軟な接着剤シートを作製するには不適となる。よってエポキシ樹脂とフェノール系樹脂硬化剤との混合配合量は、ポリイミド樹脂100質量部に対して、1〜900質量部、好ましくは5〜400質量部であることが望ましい。
【0055】
ここで、エポキシ樹脂に対するフェノール系樹脂硬化剤と骨格中にフェノール性の水酸基を有するポリイミド樹脂の総和の化学当量比は特に制限されないが、0.7〜1.3の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2である。この範囲を超えると特性の経時変化をきたす場合がある。
【0056】
エポキシ樹脂硬化剤としてフェノール系樹脂を用いない場合においても、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂との配合量及び当量比は前記と同様とすることができる。
【0057】
更に、本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損わない範囲内で、シリカ微粉末、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、導電性粒子等の充填剤、無機系あるいは有機系の顔料、染料等の着色剤、濡れ向上剤、酸化防止剤、熱安定剤等の添加剤などを目的に応じて添加することができる。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、上記(A)ポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒、及び必要によりその他の成分を常法に準じて混合することにより調製することができる。
【0059】
この場合、本発明の未硬化の接着剤層は、ダイシング時のチップクラック防止のため、ヤング率を10MPa以上とすることが必要であり、(A)ポリイミド樹脂及び(B)エポキシ樹脂と組み合わせる前述のエポキシ樹脂硬化剤の種類と配合量を、該ヤング率となるように選択することが必要である。なお、ヤング率のより好ましい範囲は15MPa以上、特に20MPa以上である。その上限は特に制限されないが、通常3,000MPa以下、特に2,000MPa以下である。
【0060】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープの製造方法を説明すると、先ずプラスチックフイルム基材上に、前記したシリコーン粘着剤を塗布し、熱により硬化して粘着層を形成する(以下、これを粘着フイルムと称する)。ここで、プラスチックフイルム基材は、前記で例示したものを用いることができるが、延伸性のあるフイルムが好ましく、特に汎用のポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルムを用いることが好ましい。また、この粘着層の厚さは5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。硬化条件としては、プラスチックフイルム基材の耐熱性にもよるが、通常60〜120℃である。
【0061】
次に、本発明の(A)ポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒とを必須成分として含む接着剤組成物をトルエン、シクロヘキサノン、NMPなどの非プロトン性極性溶媒に適当な濃度に溶解し、支持基材上に塗布、乾燥し、接着層を形成したフイルムを得る(以下、これを接着フイルムと称する)。支持基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、紙、金属箔等、あるいはこれらの表面を離型処理したものを用いることができる。
【0062】
この接着層の膜厚は、制限はなく、目的に応じ選択することができ、通常10〜100μmである。
【0063】
接着剤組成物を接着剤層とした際の乾燥条件としては、常温〜200℃、特に80〜150℃で1分〜1時間、特に3〜10分間とすることが好ましい。
【0064】
このようにして得られた粘着フイルムのシリコーン粘着層面と接着フイルムの接着剤層面とを圧着によって張り合わせることにより、本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープを得ることができる。ここで、粘着フイルムと接着フイルムとを圧着させる際の圧着条件としては、常温で0.01〜2MPa、特に0.1〜1MPaとすることが好ましい。
【0065】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープの使用方法は、接着剤層側の基材フイルムを剥離し、ウエハーを接着剤層に熱圧着してダイシング・ダイボンド用接着テープに固定する。熱圧着条件は、接着剤層の組成により種々選択することができるが、通常は40〜120℃で0.01〜0.2MPaである。次いで、ダイシング装置に固定し、ダイシング後、粘着層及び基材を剥離して接着剤層の付着したチップを取り出し(ピックアップ)、このチップをリードフレームに熱圧着、加熱硬化することにより接着させる。この熱圧着条件は、ウエハーと接着剤層の熱圧着条件と同様にすることができ、また加熱硬化条件は、接着剤層の組成により種々選択することができるが、通常は120〜250℃である。
【0066】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープは、例えば図1,2に示す構成とすることができる。ここで、図1,2において、1は粘着フイルム基材、2は粘着層、3は接着剤層、4は接着フイルム基材であり、図2のテープは接着剤層3の大きさをこれが接着されるシリコンウエハーの形状、大きさに応じて粘着層より小さく形成されているものである。なお、図3,4は図1,2のテープを接着フイルム基材を除去してシリコンウエハー5に接着した状態を示すものである。
【0067】
本発明のダイシング・ダイボンド用接着テープは、半導体装置の製造だけでなく、接着及びダイシングの伴う種々の装置の製造工程で用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0069】
[合成例1]
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、下記式
【化12】

で示されるジアミノシロキサン[KF−8010(信越化学工業社製)アミン当量422]45.70質量部、反応溶媒として2−メチルピロリドン100質量部を仕込み、80℃で撹拌し、ジアミンを分散させた。これに酸無水物としてベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物:BTDA32.22質量部と2−メチルピロリドン100質量部の溶液を滴下して室温で2時間撹拌反応を行うことにより、酸無水物リッチのアミック酸オリゴマーを合成した。
【0070】
次に、下記式
【化13】

で示されるフェノール性水酸基を有する芳香族ジアミン(ジアミン−1)22.60質量部と100質量部の2−メチルピロリドンを環流冷却器が連結されたコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに仕込み、分散させ、前出の酸無水物リッチのアミック酸オリゴマーを滴下した後、室温で16時間撹拌し、ポリアミック酸溶液を合成した。その後、キシレン25mlを投入してから温度を上げ、約180℃で2時間環流させた。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、水の流出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている流出液を除去しながら、180℃でキシレンを除去した。反応終了後、大過剰のメタノール中に得られた反応液を滴下し、ポリマーを析出させ、減圧乾燥して骨格中にフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂−Iを得た。
【0071】
得られた樹脂の赤外吸収スペクトルを測定したところ、未反応の官能基があることを示すポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm-1及び1,720cm-1にイミド基に基づく吸収を確認し、3,500cm-1にフェノール性水酸基に基づく吸収を確認した。
【0072】
接着剤組成物の調製
合成例1で得られたポリイミド樹脂−Iの40質量部をシクロヘキサノン60質量部に溶解し、この溶液に下記表1に示すエポキシ樹脂及び配合量で混合し、接着剤組成物−I〜VIを調製した。
接着フイルムの作製
前記で得られた接着剤組成物をフッ素シリコーン離型剤を被覆した厚さ50μmのPETフイルム上に塗布し、80℃で30分間加熱乾燥し、約50μmの接着剤層を形成させ、接着フイルムを作製した。各接着剤組成物−I〜VIから作製したフイルムを接着フイルム−I〜VIとする。
【0073】
シリコーン粘着剤組成物及び紫外線硬化型粘着剤組成物の調製
[調製例1]
(CH33SiO1/2単位1.1モルとSiO2単位1モルの割合からなるメチルポリシロキサンレジンを60質量%含むトルエン溶液50質量部、末端及び側鎖にビニル基を100gr当たり0.002モル有する重合度2,000の生ゴム状のジメチルポリシロキサン70質量部とトルエン80質量部を均一になるまで溶解し、次いで、この混合溶液に、下記構造のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン化合物0.64質量部と白金量が40ppmとなるような塩化白金酸の2−エチルヘキサノール変性溶液と反応抑制剤として3−メチル−1−ブチン−3−オール0.15質量部を混合し、シリコーン粘着剤組成物−Iを調製した。
【0074】
【化14】

【0075】
[調製例2]
調製例1に準じて、(CH33SiO1/2単位1.1モルとSiO2単位1モルの割合からなるメチルポリシロキサンレジンを60質量%含むトルエン溶液66.66質量部、末端及び側鎖にビニル基を100gr当たり0.002モル有する重合度2,000の生ゴム状のジメチルポリシロキサン60質量部、トルエン73.34質量部、上記構造のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン化合物0.55質量部、白金量が40ppmとなるような塩化白金酸の2−エチルヘキサノール変性溶液と反応抑制剤として3−メチル−1−ブチン−3−オール0.15質量部から、シリコーン粘着剤組成物−IIを調製した。
【0076】
[調製例3]
調製例1に準じて、(CH33SiO1/2単位1.1モルとSiO2単位1モルの割合からなるメチルポリシロキサンレジンを60質量%含むトルエン溶液83.33質量部、末端及び側鎖にビニル基を100gr当たり0.002モル有する重合度2,000の生ゴム状のジメチルポリシロキサン50質量部、トルエン66.67質量部、上記構造のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン化合物0.46質量部、白金量が40ppmとなるような塩化白金酸の2−エチルヘキサノール変性溶液と反応抑制剤として3−メチル−1−ブチン−3−オール0.15質量部から、シリコーン粘着剤組成物−IIIを調製した。
【0077】
[調製例4]
調製例1に準じて、(CH33SiO1/2単位1.1モルとSiO2単位1モルの割合からなるメチルポリシロキサンレジンを60質量%含むトルエン溶液25質量部、末端及び側鎖にビニル基を100gr当たり0.002モル有する重合度2,000の生ゴム状のジメチルポリシロキサン85質量部、トルエン90質量部、上記構造のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン化合物0.78質量部、白金量が40ppmとなるような塩化白金酸の2−エチルヘキサノール変性溶液と反応抑制剤として3−メチル−1−ブチン−3−オール0.15質量部から、シリコーン粘着剤組成物−IVを調製した。
【0078】
[調製例5]
ブチルアクリレート75質量部と2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量部からなる重量平均分子量290,000の共重合体の25質量%酢酸エチル溶液100質量部にジブチル錫ジラウレート0.05質量部を添加混合し、この混合溶液に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネ−ト6.7質量部と酢酸エチル7質量部の混合溶液を滴下した。滴下終了後、赤外吸収スペクトル測定によりイソシアネートの吸収が消失するまで、60℃で加熱撹拌し、メタクリル基を有するアクリレート重合体を得た。この溶液71.4質量部、ブチルアクリレート75質量部と2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量部からなる重量平均分子量290,000の共重合体の25質量%酢酸エチル溶液33質量部、多価イソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン社製)0.5質量部、光重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184、チバ・ガイギー社製)1質量部を混合し、紫外線照射により粘着力が低下する紫外線硬化型粘着剤組成物−Vを調製した。
【0079】
粘着フイルムの作製
シリコーン粘着剤組成物−I〜IVを、厚さ100μmの無延伸ポリエチレン(LLDP)上に塗布し、100℃で10分間加熱して15μmのシリコーン粘着層を形成させることにより、シリコーン粘着フイルム−I〜IVを作製した。
紫外線硬化型粘着剤組成物−Vを、表面をコロナ処理した厚さ100μmの無延伸ポリプロピレン上に塗布し、100℃で1分間加熱し15μmの粘着層を形成させ、紫外線硬化型粘着フイルム−Vを作製した。
【0080】
ダイシング・ダイボンドテープの作製
前記で得られたシリコーン粘着フイルムの粘着層面と接着フイルムの接着剤層面を表1に示す組み合わせで、荷重2kg、巾300mmロールにより圧着し、ダイシング・ダイボンドテープ−I〜Xを作製した。
【0081】
上記で得られた接着フイルムI〜VI及びダイシング・ダイボンドテープ−I〜Xを用いて、下記に示す試験方法により、ガラス転移点、ヤング率、接着性試験、湿熱後の接着性試験、粘着力の測定、ダイシング及びチップ取り出し試験を行った。表1にこれらの結果を示す。
ガラス転移点
前記で得られた接着フイルムを175℃で1時間熱処理し、硬化させた。20mm×5mm×50μmのフイルムに関してガラス転移点を測定した。測定には熱機械特性の測定装置のTMA−2000(アルバック理工製)を用い、引張りモード、チャック間距離15mm、測定温度25〜300℃、昇温速度10℃/分、測定荷重10gの条件でガラス転移点を測定した。
ヤング率
前記で得られた接着フイルムを175℃で1時間熱処理し、硬化させた。20mm×5mm×50μmのフイルムに関して動的粘弾性率を測定した。測定には動的粘弾性測定装置を用い、引張りモード、チャック間距離15mm、測定温度25℃、測定周波数30Hzの条件でヤング率を測定した。
接着性試験
前記で得られたダイシング・ダイボンドテープを5mm×5mmに切断して接着剤層側の基材フイルムを剥離し、これを18mm×18mmの42アロイ(凸版印刷社製KAKU−42、42アロイの試験片)に80℃,0.01MPaの条件で30秒熱圧着し、固定した後、粘着層及び基材フイルムを剥離して、再度18mm×18mmの42アロイの試験片を前記と同条件で熱圧着し、固定した。この圧着した積層体を175℃で1時間加熱処理して接着剤層を硬化させ、接着用試験片を作製した。その後、(株)島津製作所製のオートグラフ引張り試験機を用いて、速度2.0mm/分で剪断接着力を測定した。
湿熱後の接着性試験
前記の接着用試験片を85℃/85%RHの条件下で168時間保持した後、(株)島津製作所製のオートグラフ引張り試験機を用いて、速度2.0mm/分で剪断接着力を測定した。
粘着力の測定
前記で得られたダイシング・ダイボンドテープを巾25mmのテープ状に切り出し、接着剤層側の基材フイルムを剥離して、接着剤層側をSUS27CPのステンレス板(厚さ1.0mm、巾30mm)に80℃,0.01MPaの条件で60秒熱圧着し、固定した。この試験体を25±2℃、50±5%RHの恒温恒湿下に30分以上放置した後、接着剤層から粘着フイルムの端を180°に折り返し、300mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離力を測定した。
【0082】
ダイシング及びチップ取り出し試験
前記で得られたダイシング・ダイボンドテープの接着剤層側の基材フイルムを剥離し、6インチウエハーに80℃,0.01MPaの条件で10秒熱圧着し、固定した。これを2mm角のチップにダイシングし、チップクラック発生の有無の観察、直径1.5mmの吸引コレットでチップ取り出しを行い、下記の基準で評価した。
ダイシング条件
装置DAD341((株)デイスコ製)
ブレード ZHT445 2050SE 27EEE
回転数 30,000rpm
送り速度 30mm/sec
チップクラック発生観察
図5に示すダイシングされたウエハー位置1〜5からチップを5個(全数25)取り出し、カット面を顕微鏡で観察し、クラック発生の確認を行った。
チップ取り出し
(ダイシング時のチップ飛び)
○:なし
×:あり
(チップ取り出し)
○:可能
×:不可能
【0083】
【表1】

エピコート834:ジャパンエポキシジレン社製
EOCN−1020−55:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)、日本化薬社製
NC−3000:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製
RE−310S:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬社製
2PHZ:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成社製
* ダイシング、チップ取り出しが不具合であったため測定不可
** (クラック発生チップ個数)/(観察チップ全数)
*** 500mJ/cm2のエネルギー量の紫外線を照射
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のダイシング・ダイボンドテープの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のダイシング・ダイボンドテープの他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のダイシング・ダイボンドテープにシリコンウエハーを固定した状態の一例を説明する概略断面図である。
【図4】本発明のダイシング・ダイボンドテープにシリコンウエハーを固定した状態の他の例を説明する概略断面図である。
【図5】チップクラック発生観察位置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 粘着フイルム基材
2 粘着層
3 接着剤層
4 接着フイルム基材
5 シリコンウエハー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された粘着層の上に、接着剤層を積層してなり、該接着剤層が、(A)シロキサン結合を有するポリイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化触媒を必須成分として含み、かつヤング率が10MPa以上の接着剤組成物からなると共に、粘着層と接着剤層の粘着力が0.2〜2.0N/25mmであることを特徴とするダイシング・ダイボンド用接着テープ。
【請求項2】
粘着層がシリコーン系の粘着剤である請求項1記載ダイシング・ダイボンド用接着テープ。
【請求項3】
基材が延伸性のあるフイルムである請求項1又は2記載のダイシング・ダイボンド用接着テープ。
【請求項4】
延伸性のあるフイルムがポリエチレン又はポリプロピレンである請求項3記載のダイシング・ダイボンド用接着テープ
【請求項5】
接着剤層の(A)成分のポリイミド樹脂のポリマー骨格にフェノール性の水酸基を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載のダイシング・ダイボンド用接着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−5159(P2006−5159A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179981(P2004−179981)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】