説明

ダイヤフラム型ポンプ

【課題】本発明はダイヤフラム型ポンプに関し、例えば家庭用浄化槽や養魚用水槽における酸素の補給、または公害監視における検査ガスサンプリングに使用され、動作中および停止中での振動子の変位を防止し、電磁石と振動子との間の間隙を適正に維持しようとする。
【解決手段】ケーシング1内に配置される電磁石2,2と、電磁石の間に所定の間隔Sにて配置される永久磁石3,3を有する振動子4と、ダイヤフラム5,5′と、ケーシングの両端に固定されるポンプケーシング6,6′と、該ポンプケーシングに設けられる吸引弁7を吸入口8に有する吸引室9、および吐出弁10を吐出口11に有する吐出室12と、振動子に偏位振動防止手段13と、を備え、偏位振動防止手段が、軸受部材14を介して回転可能に設けられているか、または、軸体52を回転可能に受部材により受けるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラム型ポンプに関し、例えば家庭用浄化槽や養魚用水槽における酸素の補給、または公害監視における検査ガスサンプリングに使用され、動作中および停止中での振動子の変位を防止し、電磁石と振動子との間の間隙を適正に維持しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用浄化槽や養魚用水槽における酸素の補給等に使用されるダイヤフラム型ポンプには、例えばケーシング内に対向して配置される一対の電磁石と、該電磁石の間に所定の間隔をおいて配置される永久磁石を有する扁平形状の振動子と、該振動子の両端に連結されるダイヤフラムと、前記ケーシングの両端に固定されるポンプケーシングと、該ポンプケーシングに設けられる吸引弁を吸入口に有する吸引室、および吐出弁を吐出口に有する吐出室と、前記振動子に該振動子の偏位振動を防止する偏位振動防止手段として設けられたスペーサと、を備え、例えば、ダイヤフラムが運転中に、疲労によりひび割れ、破損等により偏位振動を生ずる場合に、前記振動子に設けられた前記スペーサにより、一対の前記電磁石の間の空隙を確保するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−50965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された上記従来のダイヤフラム型ポンプでは、例えば、ダイヤフラムが疲労によりひび割れ、破損を生じている場合に、運転時においてスペーサと電磁石との接触を完全に避けることができず、スペーサは電磁石との接触による摩耗のため、寿命が短く、消耗品の1つとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであり、ダイヤフラムが運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段の軸受部材が電磁石との接触による摩耗を軽減するか、または、偏位振動防止手段が、受部材により電磁石と振動子及び永久磁石との接触を受部材により防止することにより、機械的寿命を長くできるダイヤフラム型ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、ケーシング内に対向して配置される一対の電磁石と、該電磁石の間に所定の間隔をおいて配置される永久磁石を有する扁平形状の振動子と、該振動子の両端に連結されるダイヤフラムと、前記ケーシングの両端に固定されるポンプケーシングと、該ポンプケーシングに設けられる吸引弁を吸入口に有する吸引室、および吐出弁を吐出口に有する吐出室と、前記振動子に該振動子の偏位振動を防止する偏位振動防止手段と、を備えたダイヤフラム型ポンプであって、
前記偏位振動防止手段が、軸受部材を介して回転可能に設けられているか、または、軸体を回転可能に受部材にて受けるように設けられている
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
該軸体の外周に外挿されるころがり軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1において、
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
該軸体が内挿されるすべり軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1において、
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
組付前には前記電磁石に接触可能な略円盤状のカラーを一端に有し、前記軸体の外周に外挿される軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1において、
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子の厚み方向に対向して前記ケーシングに設けられる数個の軸体と、
前記軸体に外挿され、前記振動子を移動可能にその外側を挟持する軸受部材と、により構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1において、
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子の側面に対向して設けられた受部材としての溝の中に可動部材から突出された軸体の一部を受けて回転可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項5において、
前記軸受部材の周面には、前記振動子の移動方向の上下に突設されたレール部に摺動可能に嵌入される案内溝が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項6において、
前記可動部材は、前記振動子に対し、ケーシング内に設けられた電磁石の上の枠に前記振動子の移動方向とは平面略直角方向に配置されたピンに沿って前記電磁石に通電するスイッチ手段をオン・オフ可能に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、ケーシング内に対向して配置される一対の電磁石と、該電磁石の間に所定の間隔をおいて配置される永久磁石を有する扁平形状の振動子と、該振動子の両端に連結されるダイヤフラムと、前記ケーシングの両端に固定されるポンプケーシングと、該ポンプケーシングに設けられる吸引弁を吸入口に有する吸引室、および吐出弁を吐出口に有する吐出室と、前記振動子に該振動子の偏位振動を防止する偏位振動防止手段と、を備えたダイヤフラム型ポンプであって、前記偏位振動防止手段が、軸受部材を介して回転可能に設けられているか、または、軸体を回転可能に受部材にて受けるように設けられているので、運転時にはケーシング内に対向して配置される一対の電磁石に通電されると、この電磁石と該電磁石の間に所定の間隔をおいて配置される永久磁石との相互の磁気的な吸引、反発力によりダイヤフラムに支持されている振動子は振動される。そして、振動子が振動されると、ダイヤフラムと、ポンプケーシングとの間に設けられた吸引室が左右背反的に増減変化し、左右交互に空気(酸素)の吸入と排出が行われる点は、例えば特許文献1に記載の従来のダイヤフラム型ポンプと同様である。そして、ダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段を構成している軸受部材が電磁石に回転しながら接触するか、または、軸体は受部材の溝に受けられて電磁石に振動子が接触するのを電磁石への通電を遮断することで防止し、電磁石との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段の機械的寿命は長くなり、適正に振動子を振動することができる。
【0015】
本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記偏位振動防止手段が、前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、該軸体の外周に外挿されるころがり軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、ダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段を構成しているころがり軸受が電磁石に回転しながら接触することにより、電磁石との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段の機械的寿命は長くなり、適正に振動子を振動することができる。また、偏位振動防止手段は、軸体と、軸体の外周に外挿されるころがり軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も少なく、製作および組付けは容易に行える。
【0016】
本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1において、前記偏位振動防止手段が、前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、該軸体が内挿されるすべり軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、ダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段のすべり軸受が電磁石に対して回転しながら電磁石に接触することになり、電磁石との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段の機械的寿命は長くなり、適正に振動子を振動することができる。また、偏位振動防止手段は、軸体と、軸体が内挿されるすべり軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も少なく、製作および組付けは容易に行える。
【0017】
本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1において、前記偏位振動防止手段が、前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、組付前には前記電磁石に接触可能な略円盤状のカラーを一端に有し、前記軸体の外周に外挿される軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、ダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段の軸受が電磁石に対して回転しながら電磁石に接触することになり、電磁石との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段の機械的寿命は長くなり、適正に振動子を振動することができる。そして、組付前には軸受の一端に設けられた略円盤状のカラーが、電磁石に接触することにより電磁石と振動子とを組付ける時に、電磁石との間隔を特別な治具を用いることなく、容易かつ確実に確保できる。また、偏位振動防止手段は、軸体と、軸体の外周に外挿される軸受と、前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も少なく、製作および組付けは容易に行える。
【0018】
本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1において、前記偏位振動防止手段が、前記振動子の厚み方向に対向して前記ケーシングに設けられる数個の軸体と、前記軸体に外挿され、前記振動子を移動可能にその外側を挟持する軸受部材と、により構成されているので、ダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段が電磁石に代わって、振動子に対して回転しながら接触することになり、振動子との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段の機械的寿命は長くなり、適正に振動子を振動することができる。また、変位振動防止手段自体、振動子の外部において、厚み方向に対向してケーシングに設けられる軸体と、該軸体に外挿される軸受部材とよりなる簡単な構造なので、製作および組付けは容易である。
【0019】
本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1において、前記偏位振動防止手段が、前記振動子の側面に対向して設けられた受部材としての溝の中に可動部材から突出された軸体の一部を受けて回転可能に設けられているので、振動子の両端が支持されているダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により振動子が偏位振動を生じた場合、振動子の側面に設けられた受部材としての溝の中に突出して設けられた偏位振動防止手段の軸体は受けられて接触され、軸体が押されるため、可動部材がピンに沿って移動し、可動部材の押圧部がリミットスイッチのスイッチノブを押圧あるいは放圧することにより、電磁石への通電が遮断され、振動子の動きを停止し、電磁石との接触を防ぐことができる。
【0020】
本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項5において、前記軸受部材の周面には、前記振動子の移動方向の上下に突設されたレール部に摺動可能に嵌入される案内溝が設けられているので、振動子が偏位振動を起こした時、振動子の移動方向の上下に突設されたレール部と、このレール部に摺動可能に嵌入される案内溝を有する軸受部材との表面との間で、相互に接触し合う構造になっているため、振動子の大きな偏位を伴う異常振動の発生を防止でき、ダイヤフラムの疲労、ひび割れ等による破損の発生を、早い段階で防止でき、ダイヤフラムの運転寿命を長くすることができる。
【0021】
本発明の請求項8に記載の発明によれば、請求項6において、前記可動部材は、前記振動子に対し、ケーシング内に設けられた電磁石の上の枠に前記振動子の移動方向とは平面略直角方向に配置されたピンに沿って前記電磁石に通電するスイッチ手段をオン・オフ可能に移動可能に設けられているので、振動子の両端が支持されているダイヤフラムが疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により振動子が偏位振動を生じた場合、振動子の側面に設けられた受部材としての溝内に、この溝の中に突出して設けられた偏位振動防止手段の軸体を受けて接触することにより、軸体が押されるため、可動部材がピンに沿って振動子の移動方向とは平面略直角方向に移動され、可動部材の押圧部がスイッチ手段としてのリミットスイッチのスイッチノブを押圧あるいは放圧することにより、電磁石への通電が遮断され、振動子の動きを停止することができ、振動子の大きな偏位を伴う異常振動の発生を防止でき、ダイヤフラムの疲労、ひび割れ等による破損の発生を、早い段階で防止でき、ダイヤフラムの運転寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態1を示す縦断面図である。
【図2】図2は同じく図1のA矢視拡大図である。
【図3】図3は同じく拡大水平断面図である。
【図4】図4は同じく本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態2を示し、図1のA′矢視拡大図である。
【図5】図5は同じくその拡大水平断面図である。
【図6】図6は同じく本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態3を示し、図1のA″矢視拡大図である。
【図7】図7は同じくその拡大水平断面図である。
【図8】図8は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態4を示す拡大平面図である。
【図9】図9は同じく図8のE−E矢視図である。
【図10】図10は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態5を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0024】
<実施形態1>
本発明の実施形態1は、図1に示すように、ケーシング1内に対向して配置される一対の電磁石2,2と、該電磁石2,2の間に所定の間隔Sをおいて配置される永久磁石3,3を有する扁平形状の振動子4と、該振動子4の両端に連結されるダイヤフラム5,5′と、前記ケーシング1の両端に固定されるポンプケーシング6,6′と、該ポンプケーシング6,6′に設けられる吸引弁7を吸入口8に有する吸引室9、および吐出弁10を吐出口11に有する吐出室12と、前記振動子4に該振動子4の偏位振動を防止する偏位振動防止手段13と、を備えたダイヤフラム型ポンプである点は、例えば特許文献1に記載の従来のダイヤフラム型ポンプと同様である。
【0025】
しかしながら、本実施形態1では図2、および図3に示すように、前記偏位振動防止手段13が、軸受部材14を介して回転可能に設けられている。
【0026】
そして、前記偏位振動防止手段13が、前記振動子4に固定された一対の対向して設けられた前記永久磁石3,3の間に設けられる軸体15と、該軸体15の外周に外挿されるころがり軸受16と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されている。前記ころがり軸受16は、例えば金属製、合成樹脂製、セラミック製、または金属と非金属との混合材の何れかにより形成される。
【0027】
本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態1は以上の構成からなり、運転時には、ケーシング1内に対向して配置される一対の電磁石2,2に通電されると、この電磁石2,2と該電磁石2,2の間に所定の間隔Sをおいて配置される永久磁石3,3との相互の磁気的な吸引、反発力によりダイヤフラム5,5′に支持されている振動子4は振動される。そして、振動子4が振動されると、ダイヤフラム5,5′と、ポンプケーシング6,6′との間に設けられた吸引室9,9′が左右背反的に増減変化し、左右交互にエアの吸入と排出が行われる点は、例えば特許文献1に記載の従来のダイヤフラム型ポンプと同様である。
【0028】
そして、ダイヤフラム5,5′が疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段13の軸受部材14としてのころがり軸受16が軸体15を中心に電磁石2,2に対して回転しながら電磁石2,2にその一部が接触することになり、電磁石2,2との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段13の機械的寿命は長くなり、適正に振動子4を本来の移動方向Pに振動し、安定した運転を継続することができる。
【0029】
また、本実施形態1では、図2および図3に示すように、偏位振動防止手段13が、前記振動子4に固定された一対の前記永久磁石3,3の間に設けられる軸体15と、該軸体15の外周に外挿されるころがり軸受16と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も軸体15と、ころがり軸受16と、止めねじ17とで構成されて少なく、製作および組付けは容易に行える。
【0030】
<実施形態2>
図4および図5は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態2を示し、この実施形態2では、前記偏位振動防止手段13が、前記振動子4に固定された一対の前記永久磁石3,3の間に設けられる軸体15と、該軸体15が内挿されるすべり軸受20と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されている。前記すべり軸受20は、金属製、合成樹脂製、セラミック製、または金属と非金属との混合材により形成される。21は、すべり軸受20と軸体15との間に設けられたブッシュであり、このブッシュ21は軸体15とのすべり性を改善するためのものであり、例えば含油金属や合成樹脂により図示では略筒状に形成されるが、必ずしも必要とすることなく、すべり軸受20のみを単独に用いてもよい。
【0031】
そして、本実施形態2では、ダイヤフラム5,5′が疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段13のすべり軸受20が電磁石2,2に対して回転しながら電磁石2,2に接触することになり、電磁石2,2との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段13の機械的寿命は長くなり、適正に振動子4を振動し、安定した運転を継続することができる。また、偏位振動防止手段13は、軸体15と、軸体15が内挿されるすべり軸受20と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も軸体15と、すべり軸受20と、止めねじ17とにより構成され、少なく、製作および組付けは容易に行えるという前記実施形態1と同様の構成、作用である。
【0032】
<実施形態3>
図6および図7は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態3を示し、この実施形態3では、前記偏位振動防止手段13が、前記振動子4に固定された一対の前記永久磁石3,3の間に設けられる軸体15と、組付前には前記電磁石2,2に接触可能な略円盤状のカラー31を一端に有し、前記軸体15の外周に外挿される軸受30と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されている。
【0033】
そして、本実施形態3では、ダイヤフラム5,5′が疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段13の軸受30が電磁石2,2に対して回転しながら電磁石2,2に接触することになり、電磁石2,2との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段13の機械的寿命は長くなり、適正に振動子4を振動することができる。そして、組付前には軸受30の一端に設けられた略円盤状のカラー31が、電磁石2,2に接触することにより電磁石2,2と振動子4とを組付ける時に、電磁石2,2との間隔Sを特別な治具を用いることなく、容易かつ確実に確保できる。また、偏位振動防止手段13は、軸体15と、軸体15の外周に外挿される軸受30と、前記軸体15を前記振動子4に対して軸方向Iに固定する止めねじ17と、により構成されているので、構造簡単であり、部品点数も少なく、製作および組付けは容易に行えるという前記実施形態1,2と同様の構成、作用である。
【0034】
<実施形態4>
図8および図9は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態4を示し、前記実施形態1乃至実施形態3においては、振動子4に固定された一対の永久磁石3,3の間に軸体15を設け、この軸体15の外周に軸受部材としてのころがり軸受16、すべり軸受20、軸受30を設けるとともに、止めねじ17によって軸体15を振動子4によって軸方向Iに固定しているが、本実施形態4では、前記偏位振動防止手段13が、前記振動子4の厚み方向Tに対向して前記ケーシング1に設けられる数個の軸体40と、前記軸体40に外挿され、前記振動子4を移動可能にその外側を挟持する軸受部材41と、により構成されている。
【0035】
また、前記軸受部材41の周面には、前記振動子4の移動方向Pの上下に突設されたレール部42,43に摺動可能に嵌入される案内溝44が設けられ、軸受部材41としては図示では具体的にローラ41Aが用いられる構成としている。前記案内溝44は図示では断面V溝が形成され、また前記レール部42,43は前記V溝に略合致する断面V突状として形成されるが、前記案内溝44と、前記V突状とは図示するものに限らず、要は前記振動子4が摺動可能に略合致する形状であればよい。なお、前記軸体40と前記軸受部材41との設置個数の増減変更は自由に行える。
【0036】
そして、ダイヤフラム5,5′が疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段13の軸受部材41が電磁石2,2に代わって、振動子4対して回転しながら接触することにより、振動子4との接触による摩耗を軽減するため、偏位振動防止手段13の機械的寿命は長くなり、適正に振動子4を振動することができるという実施形態1乃至実施形態3と同様の効果を奏するほか、偏位振動防止手段13自体、振動子4の外部において、ケーシング1に設けられる軸体40と、該軸体40に外挿される軸受部材41とよりなる簡単な構造なので、製作および組付けは容易である。
【0037】
また、本実施形態では、前記軸受部材41の周面には、前記振動子4の移動方向Pの上下に突設されたレール部42,43に摺動可能に嵌入される案内溝44が設けられているので、振動子4の移動方向の上下に突設されたレール部42,43と、このレール部42,43に摺動可能に嵌入される案内溝44を有する軸受部材41との表面との間で、振動子4が偏位振動を起こした時に、相互に接触し合う構造になっているため、振動子4の大きな偏位を伴う異常振動の発生を防止でき、ダイヤフラム5,5′の疲労、ひび割れ等による破損の発生を、早い段階で防止することにより、ダイヤフラム5,5′の運転寿命を長くすることができるという、実施形態1乃至実施形態3には見られない格別な効果を発揮する。
【0038】
<実施形態5>
図10は本発明のダイヤフラム型ポンプの実施形態5を示し、この実施形態5では、偏位振動防止手段13が、前記振動子4の側面(図10では上部)に対向して移動方向Pに設けられた受部材としての溝51の中に可動部材50の対向面(図10では下部)に突出された軸体52の一部を受けて回転可能に設けられている。また、前記可動部材50は、前記振動子4に対し、ケーシング1内に設けられた電磁石2の上の枠53に前記振動子4の移動方向Pとは平面略直角方向Qに配置されたピン54に沿って移動可能に設けられている。55は前記可動部材50の側面に対向して前記枠53に設けられたスイッチ手段としてのリミットスイッチであり、このリミットスイッチ55のスイッチノブ55aは前記可動部材50の側面に対向して突設された押圧部56により、押込まれて前記電磁石2への通電をオン・オフさせるようになっている。この押圧部56は、スイッチノブ55aを押し込み操作し易く、且つ動作を正確にするために、前後に斜面部56a,56bを有する横断面略台形に形成される。57は前記ピン54の両端部54a,54bを前記枠53に左右対向して設けられた収納凹部53a,53a内に収容することにより、ピン54を枠53に固着するための板状の押さえ部材である。前記枠53は例えば図10に示されるように平面略矩形に形成される。
【0039】
そして、本実施形態5では、振動子4の両端が支持されているダイヤフラム5,5′が疲労により運転中にひび割れ、破損等の異常により振動子4が偏位振動を生じた場合、振動子4の側面に設けられた受部材の溝51内に、この溝51の中に突出して設けられた偏位振動防止手段13の軸体52が受けられて接触することにより、軸体52は溝51の内壁に受けられて押され、可動部材50がピン54に沿って振動子4の移動方向Pとは平面略直角方向Qに移動し、可動部材50の押圧部56がリミットスイッチ55のスイッチノブ55aを押圧あるいは放圧することにより、電磁石2,2への通電が遮断され、振動子4の動きを停止することができ、振動子4が電磁石2,2との接触を防ぐことができる点が、前記各実施形態とは異なる構成、作用である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明はダイヤフラムが運転中にひび割れ、破損等の異常により偏位振動を生ずることがあっても、偏位振動防止手段の軸受部材が電磁石との接触による摩耗を軽減するか、また、偏位振動防止手段が、受部材により電磁石と振動子及び永久磁石との接触を防止することにより、機械的寿命を長くするという用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0041】
1 ケーシング
2 電磁石
3 永久磁石
4 振動子
5 ダイヤフラム
5′ ダイヤフラム
6 ポンプケーシング
6′ ポンプケーシング
7 吸引弁
8 吸入口
9 吸入室
10 吐出弁
11 吐出口
12 吐出室
13 偏位振動防止手段
14 軸受部材
15 軸体
16 ころがり軸受
17 止めねじ
20 すべり軸受
30 軸受
31 カラー
40 軸体
41 軸受部材
42 レール部
43 レール部
44 案内溝
50 可動部材
51 溝
52 軸
53 枠
54 ピン
55 リミットスイッチ
55a スイッチノブ
56 押圧部
56a 斜面部
56b 斜面部
57 押さえ部材
S 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に対向して配置される一対の電磁石と、該電磁石の間に所定の間隔をおいて配置される永久磁石を有する扁平形状の振動子と、該振動子の両端に連結されるダイヤフラムと、前記ケーシングの両端に固定されるポンプケーシングと、該ポンプケーシングに設けられる吸引弁を吸入口に有する吸引室、および吐出弁を吐出口に有する吐出室と、前記振動子に該振動子の偏位振動を防止する偏位振動防止手段と、を備えたダイヤフラム型ポンプであって、
前記偏位振動防止手段が、軸受部材を介して回転可能に設けられているか、または、軸を回転可能に受部材により受けるように設けられている
ことを特徴とするダイヤフラム型ポンプ。
【請求項2】
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
該軸体の外周に外挿されるころがり軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項3】
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
該軸体が内挿されるすべり軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項4】
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子に固定された前記永久磁石の間に設けられる軸体と、
組付前には前記電磁石に接触可能な略円盤状のカラーを一端に有し、前記軸体の外周に外挿される軸受と、
前記軸体を前記振動子に対して軸方向に固定する止めねじと、により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項5】
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子の厚み方向に対向して前記ケーシングに設けられる数個の軸体と、
前記軸体に外挿され、前記振動子を移動可能にその外側を挟持する軸受部材と、により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項6】
前記偏位振動防止手段が、
前記振動子の側面に対向して設けられた受部材としての溝の中に可動部材から突出された軸の一部を受けて回転可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項7】
前記軸受部材の周面には、前記振動子の移動方向の上下に突設されたレール部に摺動可能に嵌入される案内溝が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のダイヤフラム型ポンプ。
【請求項8】
前記可動部材は、前記振動子に対し、ケーシング内に設けられた電磁石の上の枠に前記振動子の移動方向とは平面略直角方向に配置されたピンに沿って前記電磁石に通電するスイッチ手段をオン・オフ可能に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のダイヤフラム型ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−140937(P2011−140937A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108073(P2010−108073)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000205144)大晃機械工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】