説明

ダイレクトサンプリング回路

【課題】時分割統合された信号系列に対して、時分割で兼用する場合であっても、各系統間で信号の混ざりを回避するダイレクトサンプリング回路を提供する。
【解決手段】スイッチトキャパシタフィルタ160の前段に系統毎にヒストリキャパシタ153,155を接続し、スイッチトキャパシタフィルタ160の後段に系統毎にバッファキャパシタ173,175を接続し、スイッチトキャパシタフィルタ160のローテーションキャパシタと接続するヒストリキャパシタ及びバッファキャパシタを入力している時分割系統毎に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割統合された入力信号にダイレクトサンプリング処理を行うダイレクトサンプリング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線受信機の小型低消費電力化やアナログ信号処理部とデジタル信号処理部の一体化を目指すため、高周波信号を直接離散時間的にサンプリングして受信処理する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図8を用いて従来の離散時間的処理を用いた離散時間ダイレクトサンプリング回路の構成と動作の一例について説明する。図8は全体として、離散時間ダイレクトサンプリング回路を示す。離散時間ダイレクトサンプリング回路は、電圧電流変換器(TA)1と、サンプリングスイッチ2と、ヒストリキャパシタ(C)3と、ローテーションキャパシタ群4a〜4hと、バッファキャパシタ(C)5と、ダンプスイッチ6と、リセットスイッチ7と、積分スイッチ群8a〜8hと、放出スイッチ群9a〜9hと、デジタルコントロールユニット10とを備えている。
【0004】
電圧電流変換器(TA)1は、受信した無線周波数(RF)信号を電流に変換し、アナログRF電流信号として出力する。サンプリングスイッチ2は、例えばFETで構成され、ローカル周波数信号入力(LO)に応じて、入力されるアナログRF電流信号をサンプリングする。
【0005】
ヒストリキャパシタ(C)3は、サンプリングスイッチ2から出力される電流により供給される電荷を充電する。ローテーションキャパシタ群4a〜4hは、複数種類のスイッチを介してヒストリキャパシタ3とバッファキャパシタ5と並列に接続され、各々のスイッチのオン、オフ制御に応じて電荷の充電もしくは放電をする複数のローテーションキャパシタ(C)により構成されている。
【0006】
バッファキャパシタ(C)5は、複数のローテーションキャパシタ4に充電されている電荷と共有接続され、電荷信号をバッファする。ダンプスイッチ6は、ローテーションキャパシタ群4a〜4hの各々とバッファキャパシタ5の接続をオン、オフする。リセットスイッチ7は、バッファキャパシタ5と電荷共有した後で、ローテーションキャパシタ4に蓄えられている電荷を接地する。
【0007】
積分スイッチ群8a〜8hは、複数の積分スイッチにより構成されており、ヒストリキャパシタ3とローテーションキャパシタ群4a〜4hにおける各々のローテーションキャパシタとの接続をオン、オフする。放出スイッチ群9a〜9hは、複数の放出スイッチにより構成されており、ローテーションキャパシタ群4a〜4hにおける各々のローテーションキャパシタとバッファキャパシタ5との接続をオン、オフする。
【0008】
ダンプスイッチ6、リセットスイッチ7、積分スイッチ群8a〜8h及び放出スイッチ群9a〜9hは、例えばFET(n型)で構成されている。n型FETは、ゲート電圧が高い状態(ハイ)でオン(導通)し、ゲート電圧が低い状態(ロー)でオフ(遮断)する。
【0009】
デジタルコントロールユニット10は、積分スイッチ群8a〜8h、放出スイッチ群9a〜9h、ダンプスイッチ6及びリセットスイッチ7に対して制御信号を生成して供給する。
【0010】
なお、ここでは一例としてローテーションキャパシタCが8個設けられた場合を仮定し、これに応じて積分スイッチ8a〜8h、放出スイッチ9a〜9hもそれぞれ8個設けられているものとし、それぞれの構成要素の付番の末尾にアルファベット順にa〜hを付している。また、実際には、差動動作をする構成とすることも可能であり、その構成は特許文献1で開示されているが、ここでは簡単化のために説明を割愛する。
【0011】
図9は、デジタルコントロールユニット10が生成する各制御信号のタイミングチャートを示す。ローカル周波数信号(LO)は、サンプリングスイッチ2のゲートに供給される。制御信号S1〜S8は、それぞれ積分スイッチ8a〜8hのゲートに供給される。制御信号SAZは、放出スイッチ9a〜9dのゲートに供給される。制御信号SBZは、放出スイッチ9e〜9hのゲートに供給される。制御信号Dはダンプスイッチ6のゲートに、制御信号Rはリセットスイッチ7のゲートにそれぞれ供給される。
【0012】
以下、図8に示す離散時間ダイレクトサンプリング回路の動作について説明する。電圧電流変換器1は、入力されたアナログRF信号をアナログRF電流信号に変換し、サンプリングスイッチ2に出力する。アナログRF電流信号は、サンプリングスイッチ2でアナログRF電流信号とほぼ同じ周波数を持ったローカル周波数信号LOでサンプリングされ、ヒストリキャパシタ3とローテーションキャパシタ4a〜4hによって電荷が積分されることにより、時間的に離散化された離散信号とされる。
【0013】
離散信号は、ヒストリキャパシタ3とローテーションキャパシタ群4a〜4hのうちの一つとにより並列接続状態に構成されたキャパシタによって、ローカル周波数信号LOのクロック長よりも長い時間に亘って積分される。これによりフィルタ処理とデシメーション(decimation:間引き)が行われる。
【0014】
具体的には、初めに、制御信号S1により積分スイッチ8aがオンし、ローテーションキャパシタ4aがヒストリキャパシタ3と接続され、制御信号S1がハイになっている期間(例えば、ローカル周波数信号LOの8周期分)に亘って前記2つのキャパシタに供給された電荷が積分される。
【0015】
制御信号S1がローになると、ヒストリキャパシタ3はローテーションキャパシタ4aとの接続がオフとなり、制御信号S2によりローテーションキャパシタ4bとの接続がオンとなる。ローテーションキャパシタ4bは、制御信号S2がハイの期間に亘って離散信号の電流により供給される電荷を積分した後、ヒストリキャパシタ3との接続をオフする。同様にして、ローテーションキャパシタ4c〜4hは、制御信号S3〜S8により、ローカル周波数信号LOの8周期ごとに順番にヒストリキャパシタ3と接続され、2つのキャパシタによって離散信号の電流により供給される電荷が積分される。
【0016】
このようにして、ローカル周波数信号LOの8周期分の離散信号の電流により供給される電荷を積分することで、8タップのFIR(Finite Impulse Response)フィルタの特性が実現される。また、ローカル周波数信号LOの8周期分の信号を積分することによって1サンプル分の電荷量が得られるため、サンプリングレートは1/8にデシメーションされる。このフィルタ特性を実現する機能部を第1のFIRフィルタと呼ぶことにする。
【0017】
また、ヒストリキャパシタ3にローテーションキャパシタ4a〜4hが順に接続されることでIIR(Infinite Impulse Response)フィルタの特性が実現される。このフィルタ特性を実現する機能部を第1のIIRフィルタと呼ぶことにする。
【0018】
次に、制御信号SAZにより放出スイッチ9a〜9dがオンされることによって、ローテーションキャパシタ4a〜4dとバッファキャパシタ5とが導通され、ローテーションキャパシタ4a〜4dに充電された電荷がバッファキャパシタ5との間で共有される。この結果、ローテーションキャパシタ4a〜4dのそれぞれの電荷の一部がバッファキャパシタ5に移動し、電荷量が合成される。
【0019】
ローテーションキャパシタ4a〜4dとバッファキャパシタ5との間の電荷共有の後、ダンプスイッチ6は、制御信号Dによりオフとされ、電荷共有状態が解消される。次に、制御信号Rによりリセットスイッチ7がオンとされ、ローテーションキャパシタ4a〜4dに残っていた電荷が接地によりリセットされる。
【0020】
このようにして、ローテーションキャパシタ4a〜4dの各々に充電された電荷の一部をバッファキャパシタ5に移動して合成することで、4タップのFIRフィルタの特性が実現される。4サンプル分の離散信号が合成されて1サンプル分の離散信号が出力されるため、サンプリングレートは1/4にデシメーションされる。
【0021】
ローテーションキャパシタ4e〜4hも同じように、制御信号SBZにより放出スイッチ9e〜9hがオンされ、それぞれのローテーションキャパシタに充電されている電荷の一部がバッファキャパシタ5との間で共有されることにより、4タップのFIRフィルタ処理と1/4デシメーションが行われる。このフィルタ特性を第2のFIRフィルタと呼ぶことにする。
【0022】
また、ローテーションキャパシタ4a〜4d及び4e〜4hの各グループを、バッファキャパシタ5と交互に電荷共有状態にすることで、IIRフィルタ特性が実現される。このフィルタ効果を第2のIIRフィルタと呼ぶことにする。
【0023】
図10に、ローカル周波数信号LOの周波数を2.4GHz、ヒストリキャパシタ3の容量を15pF、ローテーションキャパシタ4a〜4hの各々の容量を0.5pF、バッファキャパシタ5の容量を15pF、電圧電流変換器1の相互コンダクタンスを7.5mSとしたときのフィルタ特性を示す。
【0024】
図10(a)は第1のFIRフィルタの特性、(b)は第1のIIRフィルタの特性、(c)は第2のFIRフィルタの特性、(d)は第2のIIRフィルタの特性、(e)は離散時間ダイレクトサンプリング回路全体の特性を示しており、(f)は(e)の特性のうち2.4GHz近傍の周波数範囲を拡大したものである。なお、DC利得を0dBで正規化している。
【0025】
以上のように、離散時間ダイレクトサンプリング回路は、第1のFIRフィルタと第1のIIRフィルタと第2のFIRフィルタと第2のIIRフィルタの各特性を合わせた特性のフィルタ処理を施した信号を後段の回路に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0083033号明細書、”Direct Radio Frequency Sampling with Recursive Filtering Method”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、近年、MIMO(Multiple Input Multiple Output)、MRC(Maximum Ratio Combining)及びダイバーシティなどの複数の高周波部が必要なシステムにおいて、回路規模を削減するために高周波部を時分割使用し、回路を兼用することが要求されている。
【0028】
しかしながら、図8で示したような従来のダイレクトサンプリング回路では、回路の時分割兼用を考えた場合、一般に、時分割統合された信号に対して、フィルタ効果のあるオペレーションを実施すると、各系統間で信号の混ざりが発生し、その出力を各系統に分離することが困難になる。IIRフィルタ効果を有するダイレクトサンプリング回路も時分割統合された信号を処理した場合、各系統間で信号が混ざり、所望のダイレクトサンプリング演算を実施することが困難になる。
【0029】
本発明の目的は、時分割統合された信号系列に対して、時分割で兼用する場合であっても、各系統間で信号の混ざりを回避するダイレクトサンプリング回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明のダイレクトサンプリング回路は、複数系統の入力信号が1系統に時分割統合された信号をフィルタリングするスイッチトキャパシタフィルタと、前記スイッチトキャパシタフィルタの前段に系統毎に設けられ、フィルタリングする系統毎に前記スイッチトキャパシタフィルタ内のローテーションキャパシタと接続するヒストリキャパシタと、前記スイッチトキャパシタフィルタの後段に系統毎に設けられ、フィルタリングする系統毎に前記スイッチトキャパシタフィルタ内のローテーションキャパシタと接続するバッファキャパシタと、フィルタリングされた前記信号を系統毎に分離する分離手段と、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、時分割統合された信号系列に対して、時分割で兼用する場合であっても、各系統間で信号の混ざりを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る時分割ダイレクトサンプリングミキサの構成を示す図
【図2】図1に示したスイッチトキャパシタフィルタの内部構成を示す図
【図3】制御信号S0〜S3及び選択信号SW1,SW2の説明に供するタイミングチャート
【図4】本発明の実施の形態2に係る時分割DSMの構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に係るヒストリキャパシタ部の内部構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態3に係るバッファキャパシタ部の内部構成を示す図
【図7】本発明の実施の形態4に係るバッファキャパシタ部の内部構成を示す図
【図8】従来の離散時間ダイレクトサンプリング回路の構成を示す図
【図9】図8に示したデジタルコントロールユニットが生成する各制御信号の説明に供するタイミングチャート
【図10】従来の離散時間ダイレクトサンプリング回路により実現されるフィルタ特性の例を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る時分割ダイレクトサンプリングミキサ(以下、「時分割DSM(Direct Sampling Mixer)」という)100の構成を示す図である。以下、時分割DSM100の構成について図1を用いて説明する。
【0035】
時分割統合スイッチ120は、選択信号SW1に従って、A系統を入力するA入力とB系統を入力するB入力の2つの入力を切り替えて、A系統とB系統の2系統を1系統信号に時分割統合して、トランスコンダクタンスアンプ(TA)130に出力する。
【0036】
トランスコンダクタンスアンプ130は、時分割統合スイッチ120から出力された信号を電流に変換して、サンプラ140に出力し、サンプラ140は、トランスコンダクタンスアンプ130から出力された信号にサンプリング処理を施して、ダウンコンバートした信号をスイッチトキャパシタフィルタ(SCF)160に出力する。
【0037】
スイッチトキャパシタフィルタ160は、4つの制御信号S0,S1,S2,S3の入力を受けて、ローテーションキャパシタの充放電を繰り返し、サンプラ140から出力された信号にフィルタ処理を施して、分離スイッチ180に出力する。なお、スイッチトキャパシタフィルタ160の詳細については後述する。
【0038】
サンプラ140とスイッチトキャパシタフィルタ160との間には、ヒストリキャパシタ部150が接続されており、ヒストリキャパシタ部150には、系統毎に対応した容量の異なるヒストリキャパシタ153,155がそれぞれスイッチ152,154を介して接続されている。スイッチ152,154は、選択信号SW1の入力によって処理する系統毎に接続を切り替える。なお、この選択信号SW1は、時分割統合スイッチ120に入力される選択信号SW1と同一である。
【0039】
また、スイッチトキャパシタフィルタ160と分離スイッチ180との間には、バッファキャパシタ部170が接続されており、バッファキャパシタ部170には、系統毎に対応した容量の異なるバッファキャパシタ173,175がそれぞれスイッチ172,174を介して接続されている。スイッチ172,174は、選択信号SW2の入力によって処理する系統毎に接続を切り替える。
【0040】
この選択信号SW2は、選択信号SW1を1タイムサイクル遅延させた信号である。これは、スイッチトキャパシタフィルタ160の出力信号が、スイッチトキャパシタフィルタ160のフィルタ処理によって入力信号に対して常に1タイムサイクル遅延するためである。
【0041】
分離スイッチ180は、選択信号SW2に従って、スイッチトキャパシタフィルタ160から出力された信号をA出力とB出力の各系統に分離する。具体的には、選択信号SW2がA出力の選択を示している場合、スイッチ181が入力ノードと接続され、スイッチ182が0Vと接続される。一方、選択信号SW2がB出力の選択を示している場合、スイッチ182が入力ノードと接続され、スイッチ181が0Vと接続される。なお、選択信号SW2は、バッファキャパシタ部170に入力される選択信号SW2と同一である。
【0042】
分離スイッチ180からのA出力は、ダイレクトサンプリング処理が施されたA入力がゼロパディングされた信号となり、分離スイッチ180の後段に用意された図示せぬ補間フィルタが、系統切り替えによって生じる信号の折り返し信号を除去し、所望の帯域の信号を抽出する。B出力についても同様に処理される。
【0043】
図2は、図1に示したスイッチトキャパシタフィルタ160の内部構成を示す図である。また、図3は、制御信号S0〜S3及び選択信号SW1,SW2のタイミングチャートを示す図である。以下、図2及び図3を用いてスイッチトキャパシタフィルタ160の動作について説明する。ここでは、トランジスタスイッチ(トランジスタSW)240〜トランジスタSW244までのブランチを例に説明する。
【0044】
時刻T0では、制御信号S0だけがハイになることによって、トランジスタSW242が導通し、ローテーションキャパシタ241に充電されている電荷が全て放電される。
【0045】
時刻T1では、制御信号S1だけがハイになることによって、トランジスタSW243が導通し、プリチャージ電圧からローテーションキャパシタ241に初期電荷が充電される。
【0046】
時刻T2では、制御信号S2だけがハイになることによって、トランジスタSW240が導通し、スイッチトキャパシタフィルタ160の前段にあるヒストリキャパシタ153又は155と、ローテーションキャパシタ241とが並列接続される。その結果、1タイムサイクル前の初期電荷と、接続されているヒストリ容量Chとローテーション容量Crの容量比に応じた電荷を加算した電荷がローテーションキャパシタ241に充電される。
【0047】
時刻T3では、制御信号S3だけがハイになることによって、トランジスタSW244が導通し、スイッチトキャパシタフィルタ160の後段にあるバッファキャパシタ173又は175とローテーションキャパシタ241とが並列接続される。その結果、接続されているバッファ容量Cbとローテーション容量Crの容量比に応じた電荷がローテーションキャパシタ241に充電される。時刻T4以降では、時刻T0〜T3の処理が繰り返される。
【0048】
トランジスタSW220〜トランジスタSW224のブランチ、トランジスタSW230〜トランジスタSW234のブランチ、トランジスタSW250〜トランジスタSW254のブランチでも、タイムステップをずらしながら同様の処理がなされる。
【0049】
このように、スイッチトキャパシタフィルタ160前段のヒストリキャパシタ部150と、スイッチトキャパシタフィルタ160内のローテーションキャパシタとの間で電荷共有を行うことにより、IIRフィルタ操作が行われる。同様に、スイッチトキャパシタフィルタ160後段のバッファキャパシタ部170と、スイッチトキャパシタフィルタ160内のローテーションキャパシタとの間で電荷共有を行うことにより、IIRフィルタ操作が行われる。これにより、2次のIIRフィルタを形成することになる。
【0050】
なお、選択信号SW1は、図3に示すように、制御信号と同期している必要があり、ハイ区間及びロー区間の長さは制御信号の自然数倍である必要がある。ここでは、ハイ区間及びロー区間は、それぞれ4タイムサイクルである。選択信号SW2は、上述したように、選択信号SW1を1タイムサイクル遅延させた信号である。
【0051】
本実施の形態に係る時分割DSM100では、分離スイッチ180からの出力において、系統切り替えによる折り返し信号が発生する。この折り返し信号は、分離スイッチ180の後段に用意するフィルタで除去する必要があるが、選択信号SW1と選択信号SW2の動作速度を高速にすれば、折り返し信号の発生周波数が大きくなるため、後段に必要となるフィルタの要求特性を緩くすることができる。
【0052】
上述したように、本実施の形態に係る時分割DSM100で実現されるIIRフィルタ特性は、ヒストリキャパシタ部150に含まれるヒストリ容量Ch(ヒストリキャパシタ153の容量又はヒストリキャパシタ155の容量)とスイッチトキャパシタフィルタ160を構成するローテーションキャパシタ221、231、241、251のいずれかの容量Crとの比、及び、バッファキャパシタ170に含まれるバッファ容量Cr(バッファキャパシタ173の容量又はバッファキャパシタ175の容量)とスイッチトキャパシタフィルタ160を構成するローテーションキャパシタ221、231、241、251のいずれかの容量Crとの比、の2つの比によって決定される。
【0053】
これにより、一般的なDSMによって実現されるIIRフィルタ特性を、本実施の形態に係る時分割DSM100によって実現する場合、1つの信号系統当たり、一般的なDSMの半分の容量のヒストリ容量Ch(153、155)で実現することができる。同様に、バッファ容量も1つの信号系統当たり、一般的なDSMの半分の容量のバッファ容量Cb(173、175)で実現することができる。つまり、2系統を時分割使用する時分割DSMにおいて、一般的なDSMと同等のIIRフィルタ効果を実現するには、必要となるヒストリ容量Chの総和とバッファ容量Cbの総和を一般的なDSMのヒストリ容量とバッファ容量と同じ大きさで済ませることができる。
【0054】
一般的なDSMにおいては、ヒストリ容量Chとバッファ容量Cbは回路規模が大きく、これらの回路が最も支配的である。これに対して、本実施の形態に係る時分割統合DSM100では、ヒストリ容量Chとバッファ容量Cbとは、同等の回路規模で、2系統の回路を実現することができる。
【0055】
このように実施の形態1によれば、スイッチトキャパシタフィルタの前段に系統毎にヒストリキャパシタを接続し、スイッチトキャパシタフィルタの後段に系統毎にバッファキャパシタを接続し、スイッチトキャパシタフィルタのローテーションキャパシタと接続するヒストリキャパシタ及びバッファキャパシタをフィルタリングする系統毎に切り替えることにより、系統毎にIIRフィルタ特性を切り替えることができるので、各系統間で信号の混ざりを回避することができると共に、回路規模を削減することができる。
【0056】
また、複数のヒストリキャパシタ及び複数のバッファキャパシタのうち、それぞれ1つのヒストリキャパシタ及び1つのバッファキャパシタが用いられるので、消費電力を低減することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、A系統とB系統の2系統に対してIIRフィルタ操作がかかるアクティブ区間が同一である場合について説明したが、2系統のうち一方を重要なデータとし、他方を重要ではないデータとした場合、重要なデータについてはアクティブ区間を長くし、重要ではないデータについてはアクティブ区間を短くしてもよい。これにより、重要なデータについてはゲインを増やすことができる。このような重要なデータの例として、2ストリームのダイバーシティにおいて、一方のストリームが高性能である場合が挙げられ、重要ではないデータの例として、他方のストリームが高性能ではない場合が挙げられる。
【0058】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る時分割DSM200の構成を示す図である。図4が図1と異なる点は、バッファキャパシタ部170をバッファキャパシタ部270に変更し、分離スイッチ180を分離スイッチ280に変更した点である。
【0059】
分離スイッチ280は、選択信号SW2に従って、スイッチトキャパシタフィルタ160から出力された信号をA出力とB出力の各系統に分離する。具体的には、選択信号SW2がA出力の選択を示している場合、分離スイッチ280がA出力ノードと接続される。一方、選択信号SW2がB出力の選択を示している場合、分離スイッチ280がB出力ノードと接続される。
【0060】
バッファキャパシタ部270は、分離スイッチ280がA出力ノードと接続されたとき、バッファキャパシタ271がスイッチトキャパシタフィルタ160のローテーションキャパシタと接続され、分離スイッチ280がB出力ノードと接続されたとき、バッファキャパシタ272がスイッチトキャパシタフィルタ160のローテーションキャパシタと接続され、それぞれIIRフィルタ操作が行われる。
【0061】
このような構成により、分離スイッチ280において選択されていない出力ノード側のバッファキャパシタには、電荷が保持された状態となり、出力電圧は直前に選択された状態の電圧となる。この結果、A出力とB出力に含まれる所望波スペクトルを基準として折り返し信号のスペクトルの大きさが小さくなり、時分割DSM200後段のフィルタに要求される特性をさらに緩和することができる。
【0062】
このように実施の形態2によれば、スイッチトキャパシタフィルタに系統毎の信号に分離する分離スイッチを接続し、分離スイッチ後段にバッファキャパシタを系統毎に接続することにより、時分割DSM後段のフィルタに要求される特性をさらに緩和し、回路を構成する部品点数を減らすことができる。
【0063】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る時分割DSMの構成は、実施の形態1の図1に示した構成と同様であり、ヒストリキャパシタ部とバッファキャパシタ部の内部構成が異なるのみである。
【0064】
図5は、本発明の実施の形態3に係るヒストリキャパシタ部300の内部構成を示す図である。以下、ヒストリキャパシタ部300の構成について図5を用いて説明する。ヒストリキャパシタ部300は、1つ目の系統用のヒストリキャパシタ群320と、2つ目の系統用のヒストリキャパシタ群360と、それらを導通又は遮断に切り替えるスイッチ310、350から構成される。
【0065】
スイッチ310、350は、外部から入力される選択信号SW1によって互いに排他的に導通と遮断とを切り替えられる。
【0066】
ヒストリキャパシタ群320内の構成は、1つのスイッチと1つのヒストリキャパシタとを1組とすると、これらがN組み設けられている。これらN個のヒストリキャパシタの接続と非接続との切り替えは、選択信号SEL1に基づいて行われる。選択信号SEL1は、さまざまな通信システムへの適応や、システム構成要素の個体ばらつきなどによる特性の微調整に用いられ、ある一つの通信時には変更されず固定である。
【0067】
ヒストリキャパシタ群360は、ヒストリキャパシタ群320と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0068】
図6は、本発明の実施の形態3に係るバッファキャパシタ部400の内部構成を示す図である。以下、バッファキャパシタ部400の構成について図6を用いて説明する。バッファキャパシタ部400は、1つ目の系統用のバッファキャパシタ群420と、2つ目の系統用のバッファキャパシタ群460と、それらを導通又は遮断に切り替えるスイッチ410、450から構成される。
【0069】
スイッチ410、450は、外部から入力される選択信号SW2によって互いに排他的に導通と遮断とを切り替えられる。
【0070】
バッファキャパシタ群420内の構成は、1つのスイッチと1つのバッファキャパシタとを1組とすると、これらがN組み設けられている。これらN個のバッファキャパシタの接続と非接続との切り替えは、選択信号SEL2に基づいて行われる。選択信号SEL2は、選択信号SEL1と同様、特性の微調整に用いられ、ある一つの通信時には変更されず固定である。
【0071】
バッファキャパシタ群460は、バッファキャパシタ群420と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施の形態に係る時分割DSMは、信号線に容量成分が付加されると、フィルタ特性が劣化してしまうが、上述した構成により、ヒストリキャパシタ及びバッファキャパシタの個数を増加させても信号線に直接付加される容量成分を小さく抑えることができるので、フィルタ特性の劣化を抑えることができる。
【0073】
このように実施の形態3によれば、スイッチトキャパシタフィルタの前段及び後段に接続するヒストリキャパシタ及びバッファキャパシタを系統毎に複数備え、ヒストリキャパシタ及びバッファキャパシタを選択的に切り替えることにより、さまざまな通信システムへの適応、また、システム構成要素の個体ばらつきなどによる特性の微調整を行うことができる。
【0074】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る時分割DSMの構成は、実施の形態2の図4に示した構成と同様であり、バッファキャパシタ部の内部構成が異なるのみである。
【0075】
図7は、本発明の実施の形態4に係るバッファキャパシタ部500の内部構成を示す図である。以下、バッファキャパシタ部500の構成について図7を用いて説明する。バッファキャパシタ部500は、1つ目の系統用のバッファキャパシタ群520と、2つ目の系統用のバッファキャパシタ群550とから構成される。
【0076】
バッファキャパシタ群520内の構成は、1つのスイッチと1つのバッファキャパシタとを1組とすると、これらがN組み設けられている。これらN個のバッファキャパシタの接続と非接続との切り替えは、選択信号SEL3に基づいて行われる。選択信号SEL3は、さまざまな通信システムへの適応や、システム構成要素の個体ばらつきなどによる特性の微調整に用いられ、ある一つの通信時には変更されず固定である。
【0077】
バッファキャパシタ群550内の構成は、1つのスイッチと1つのバッファキャパシタとを1組とすると、これらがN組み設けられている。これらN個のバッファキャパシタの接続と非接続との切り替えは、選択信号SEL4に基づいて行われる。選択信号SEL4は、選択信号SEL3と同様、特性の微調整に用いられ、ある一つの通信時には変更されず固定である。
【0078】
このように実施の形態4によれば、スイッチトキャパシタフィルタに系統毎の信号に分離する分離スイッチを接続し、分離スイッチ後段にバッファキャパシタを系統毎に複数備え、バッファキャパシタを選択的に切り替えることにより、時分割DSM後段のフィルタに要求される特性をさらに緩和することができると共に、さまざまな通信システムへの適応、また、システム構成要素の個体ばらつきなどによる特性の微調整を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかるダイレクトサンプリング回路は、時分割統合された信号系列に対して、時分割で兼用する場合であっても、各系統間で信号の混ざりを回避するものとして有用である。
【符号の説明】
【0080】
120 時分割統合スイッチ
130 トランスコンダクタンスアンプ
140 サンプラ
150、300 ヒストリキャパシタ部
152、154、172、174、181、182、310、330、331、332、339、350、370、371、372、379、410、430、431、432、439、450、470、471、472、479、530、531、532、539、560、561、562、569 スイッチ
153、155、340、341、342、349、380、381、382、389 ヒストリキャパシタ
160 スイッチトキャパシタフィルタ
170、270、400、500 バッファキャパシタ部
173、175、271、272、440、441、442、449、480、481、482、489、540、541、542、549、570、571、572、579 バッファキャパシタ
180、280 分離スイッチ
220、222、223、224、230、232、233、234、240、242、243、244、250、252,253、254 トランジスタスイッチ
221、231、241、251 ローテーションキャパシタ
320、360 ヒストリキャパシタ群
420、460、520、550 バッファキャパシタ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数系統の入力信号が1系統に時分割統合された信号をフィルタリングするスイッチトキャパシタフィルタと、
前記スイッチトキャパシタフィルタの前段に系統毎に設けられ、フィルタリングする系統毎に前記スイッチトキャパシタフィルタ内のローテーションキャパシタと接続するヒストリキャパシタと、
前記スイッチトキャパシタフィルタの後段に系統毎に設けられ、フィルタリングする系統毎に前記スイッチトキャパシタフィルタ内のローテーションキャパシタと接続するバッファキャパシタと、
フィルタリングされた前記信号を系統毎に分離する分離手段と、
を具備するダイレクトサンプリング回路。
【請求項2】
前記バッファキャパシタは、前記分離手段の後段に設けられた請求項1に記載のダイレクトサンプリング回路。
【請求項3】
前記ヒストリキャパシタ及び前記バッファキャパシタは、系統毎にそれぞれ複数設けられ、選択的に接続を切り替えられる請求項1に記載のダイレクトサンプリング回路。
【請求項4】
前記バッファキャパシタは、系統毎に複数設けられ、選択的に接続を切り替えられる請求項2に記載のダイレクトサンプリング回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−23615(P2012−23615A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160721(P2010−160721)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】