説明

ダイレクト成形機

【課題】成形中に基材の上面に対して補助的な作業をするためのスペースを確保できるダイレクト成形機の提供。
【解決手段】本発明のダイレクト成形機1は、第1の金型22と射出装置3とを備え、あらかじめ成形された板状の基材Bが第1の金型22の上にセットされ、第1の金型22と基材Bとが接触することにより第1の金型22と基材Bの表面とで限られたキャビティCが形成され、射出装置3は基材Bより下に配設され、かつ第1の金型22を通じてキャビティC内に樹脂材料を射出し、樹脂部品を射出成形しながら基材Bに固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクト成形機に関する。詳しくは、あらかじめ成形された板状の基材に樹脂部品を射出成形しながら固定するダイレクト成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明におけるダイレクト成形とは、あらかじめ成形された基材(以下単に基材という)に対して金型を接触させ、基材の表面と金型とで限られたキャビティに樹脂材料を射出し、リベット、クリップ、リブ等の樹脂部品を成形しながら基材に固定する成形方法のことである。このダイレクト成形によれば、基材を成形する金型に変更を加えることなく、基材の自由な箇所へ目的とする形状の樹脂部品を成形できる利点がある。また、ダイレクト成形で結合部品を成形することによって2枚の基材を結合すれば、従来別個に用意していた結合部品の管理費用等がかからず、低コストに2枚の基材を結合することができる。なお、樹脂部品の樹脂材料としては220度程度で溶融するポリプロピレン等の樹脂が使用される。
このようなダイレクト成形を行うダイレクト成形機として、従来、下記特許文献1に開示されているような竪型射出成形機の技術が応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特に板状の基材に対しては、ダイレクト成形機によってダイレクト成形が行われている間に、基材の上面に対してビスやリベット等の別部材の取り付けや接着剤の塗布等の補助的な作業を同時並行で行うことができれば、成形サイクルのコストを下げることができる。しかしながら、上述のような一般の射出成型機の技術をそのまま応用したダイレクト成形機では、材料供給上の利点から射出装置が金型の上に配置されていた。そのため、基材の上面に対して上記のような補助的な作業を行おうとすると、射出装置の本体及びこれに付属する機器が嵩張り邪魔になっていた。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、成形中に基材の上面に対して補助的な作業をするためのスペースを確保できるダイレクト成形機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るダイレクト成形機は以下のように構成される。本発明の第1の発明は、第1の金型と射出装置とを備え、あらかじめ成形された板状の基材が第1の金型の上にセットされ、第1の金型と基材とが接触することにより第1の金型と基材の表面とで限られたキャビティが形成され、射出装置は基材より下に配設され、かつ第1の金型を通じてキャビティ内に樹脂材料を射出し、樹脂部品を射出成形しながら基材に固定するダイレクト成形機である。
【0007】
これによれば、基材が金型の上にセットされた状態で、基材より下に金型及び射出装置が存在することとなり、基材の上には射出装置がない分だけスペースが開放される。したがって、ダイレクト成形の最中でも、射出装置が邪魔にならず、基材の上面に対して補助的な作業をするためのスペースが確保できる。
【0008】
本発明の第2の発明は、請求項1のダイレクト成形機であって、第2の金型と型締装置とを備え、第2の金型はセットされる前記の基材より上に配設され、型締装置は第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させてそれぞれ基材と接触させ、前記キャビティは第1の金型と基材の表面と第2の金型とで限られて形成されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、型締装置が第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させ、第1の金型と第2の金型が基材と接触することでキャビティが形成される。したがって、キャビティの形成を型締装置によって行うことができ、ダイレクト成形の効率が向上する。
【0010】
本発明の第3の発明は、請求項2のダイレクト成形機であって、前記型締装置は第2の金型を下降させるのみによって第1の金型と第2の金型とを接近させることを特徴とする。
【0011】
これによれば、型締装置によるキャビティの形成に伴って基材が上下に移動することがない。したがって、基材の上面に対して補助的な作業をする場合、作業の高さが変わらず作業者の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本実施形態のダイレクト成形機の正面図である。
【図2】図2は本実施形態のダイレクト成形機の射出装置を示す側面図である。
【図3】図3はダイレクト成形前の射出ノズル、金型及び基材を示す断面図である。
【図4】図4はダイレクト成形中の射出ノズル、金型及び基材を示す断面図である。
【図5】図5は上型を備えず基材と下型のみでキャビティを形成するダイレクト成形機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態のダイレクト成形機を示す正面図である。本実施形態のダイレクト成形機1は、図1に示すように、下部と上部にそれぞれ基板(後述の固定側取付盤11がこの機能を兼ねる)と天板12とを備えている。天板12と基板(固定側取付盤11)は四隅がそれぞれタイバー13で垂直に結ばれている。またダイレクト成形機1は、金型21,22及び射出装置3を取り付けるための対向する取付面を有する一対の取付盤として、可動側取付盤14と固定側取付盤11とを備えている。可動側取付盤14は、天板12と基板(固定側取付盤11)との間において、四隅にタイバー13が挿通された状態で設けられている。可動側取付盤14は、ダイレクト成形機1の上部に設けられた油圧シリンダ等の型締装置15によって駆動され、タイバー13に沿って昇降可能となっている。
【0014】
ダイレクト成形機1は、基材Bに対する成形位置に合わせて、3対の金型が備え付けられている。固定側取付盤11の取付面には、各対の金型に対して樹脂材料を可塑化して射出する射出装置3が固定されている。射出装置3の最上部には、各々対を成す金型のうち第1の金型として下型22が、後述のように螺合により取り付けられている。また、可動側取付盤14の取付面には、各々下型22と対を成す第2の金型として上型21が直接固定されている。
【0015】
次に図2を参照して射出装置3を説明する。図2は本実施形態のダイレクト成形機1の射出装置3を示す側面図である。射出装置3は、材料供給部4と材料射出部5とがひとつのユニットを成したものである。
材料供給部4は、材料投入口41から投入された樹脂材料を供給スクリュー43へ落下させるホッパ42と、樹脂材料を材料射出部5へ送り込む供給スクリュー43と、供給スクリュー43を回転させるスクリュー駆動手段44とを備えている。本実施形態におけるスクリュー駆動手段44は、スクリュー駆動シリンダ441で動力を発生させ、これをリンク機構442及びワンウェイクラッチ443の組み合わせで一方向の回転運動に変換している。
【0016】
材料射出部5は、射出シリンダ6と射出ノズル7とを備えている。射出シリンダ6は、樹脂材料を射出ノズル内へ突き上げる射出プランジャ61と、この射出プランジャ61を上下に駆動するプランジャ駆動源62とを備えている。
【0017】
次に、図3を参照して射出ノズル7及び下型22を説明する。図3はダイレクト成形前の射出ノズル7及び金型を示す図である。射出ノズル7は円筒状であり、軸線上の先端に樹脂材料のノズル出口71を備えている。射出ノズル7内部の樹脂通路には、樹脂材料の流路を外側に制限し可塑化を助ける紡錘形のトーピード72が挿入されている。トーピード72は、下型22のゲート222を開閉するニードル弁73を、その先端に備えている。ニードル弁73は、トーピード72内部にある図示しないばねによって射出方向に付勢され、下型22のゲート222を塞いでいる。また、射出ノズル7はトーピード72を支えるため内部通路が下部で縮径している。射出ノズル7の外側には、樹脂材料を可塑化する円筒状のヒータ74が差し込まれている。
【0018】
射出ノズル7の先端部には、下型22が螺合により取り付けられている。下型22には、この取り付け状態においてノズル出口71と連通する受入口221と、キャビティCへの入口であるゲート222が形成されている。受入口221はゲート222まで縮径する錐面を有する。このように、射出ノズル7と下型22は組み付け状態において一体的な樹脂通路を形成し、下型22のゲート222が可塑化樹脂の射出口となっている。下型22の周縁近傍には、樹脂の冷却水を通す冷却水路223が設けられている。
【0019】
次に、図2及び図3を参照して射出装置3の動作を簡単に説明する。材料投入口41から投入されたペレット状の樹脂材料は、一時的にホッパ42に蓄えられてから供給スクリュー43の場所へ落下する。スクリュー駆動手段44が供給スクリュー43を駆動し、ホッパ42から落下してきた樹脂材料を定量ずつ強制的に射出シリンダ6内へと供給する。次いで、射出シリンダ6のプランジャ駆動源62が射出プランジャ61を駆動し、射出シリンダ6内へ定量供給された樹脂材料を射出ノズル7へ突き上げ圧力を加える。突き上げられた樹脂材料は、トーピード72の脇を通るうちに、射出ノズル7の外側に差し込まれたヒータ74によって熱せられ可塑化する。可塑化した樹脂材料の射出圧が高まると、トーピード72のニードル弁73が圧力を受けて後退し、下型22のゲート222が開かれ射出可能となる。射出圧が弱まるとニードル弁がばねの作用で再び進出してゲート222を塞ぎ、樹脂の流れを遮断する。
【0020】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態のダイレクト成形機1によるダイレクト成形の具体例を説明する。図4はダイレクト成形中の射出ノズル7、上型21、下型22及びフロアカバーB1,B2の断面図である。ここでは、基材Bとして自動車のフロアカバーB1,B2を2枚重ね、この重なり部分に樹脂部品としてリベットRを成形しそれらを接合する場合を例にとる。このフロアカバーB1,B2は樹脂製である。まず、2枚のフロアカバーB1,B2の重なり部分において、リベットRを成形したい位置にあらかじめ貫通孔Hを形成しておく。このように準備したフロアカバーB1,B2を下型22の上に搬送し、図3に示すように、貫通孔Hの位置が下型22のゲート222の上に来るように位置を合わせる。
【0021】
フロアカバーB1,B2がセットされると、型締装置15が上型21を支持する可動側取付盤14を下降させ、上型21と下型22とをそれぞれフロアカバーB1,B2に接触させる。このとき、フロアカバーB1,B2に形成された貫通孔Hが上型21と下型22とによって完全に囲われ、上型21とフロアカバーB1,B2の表面と下型22とで限られた成形形状のキャビティCを形成する。ここで射出装置3は、既述の動作により、下型22のゲート222を通じてキャビティC内に樹脂を射出する。キャビティC内に注入された樹脂は、フロアカバーB1,B2の貫通孔Hを通って上型21側にも充填される。キャビティCに完全に充填された樹脂は冷却され、目的のリベットRが成形されるとともにフロアカバーB1,B2に対して固定される。そして上型21と下型22を型開きし、成形品を取り出し搬送する。以上によりダイレクト成形の1サイクルが完了する。なお、フロアカバーB1,B2がセットされてから取り出されるまでの間、ダイレクト成形工程と同時並行で、フロアカバーB1,B2の上面に対して、図4に示すような他のリベットR2の取り付け等、補助的な作業を作業員やロボットにより行うことができる。
【0022】
本発明は以上のように構成される。この構成によれば、フロアカバーB1,B2が下型22の上にセットされた状態で、フロアカバーB1,B2より下に下型22及び射出装置3が存在することとなり、フロアカバーB1,B2の上には射出装置3がない分だけスペースが開放される。したがって、フロアカバーB1,B2に対してダイレクト成形を行っている最中でも、射出装置3の本体及びこれに付属する図示しない機器が邪魔にならず、フロアカバーB1,B2の上面に対して別部材の取り付けや接着剤の塗布等の補助的な作業をするためのスペースが確保できる。
【0023】
また、この構成によれば、型締装置15が下型22と上型21とを相対的に接近させ、下型22と上型21とがフロアカバーB1,B2と接触することでキャビティCが形成される。したがって、キャビティCの形成を型締装置15によって行うことができ、ダイレクト成形の効率が向上する。
【0024】
また、この構成によれば、射出装置3及び下型22が固定側取付盤11に固定され、上型21が可動側取付盤14に固定されている。これによれば、型締装置15は射出装置3を移動させないためその分の動力が不要となる。したがって型締めの動力源である型締装置15を小型化できる。また、これによれば、型締装置15によるキャビティCの形成に伴ってフロアカバーB1,B2が上下に移動することがない。したがって、フロアカバーB1,B2の上面に対して上述の補助的な作業をする場合、作業の高さが変わらず作業者の作業性が向上する。
【0025】
以上の内容は、あくまで本発明の一実施形態であって、本発明がこの内容に限定されることを意味するものではない。上記の実施形態では、上型21を固定する取付盤が可動、射出装置3及び下型22を固定する取付盤が固定であったが、逆の構成としてもよい。すなわち、上述において型締装置15は上型21を下降させることにより型締めを行っていたが、下型22を上昇させることによって型締めを行う構成に変えてもよい。
【0026】
また、上記の実施形態では、あらかじめ貫通孔Hが形成された基材Bに対して上型21と下型22とを接触させることで、上型21と基材Bと下型22の三者でキャビティCを形成するものであった。しかし、基材Bに貫通孔Hを設けず基材Bと下型22のみでキャビティを形成する構成であってもよい。この場合、上型21は金型ではなく、単に基材Bの上面を受けるための受け部材であればよい。
【0027】
さらに、この場合、型締装置15、可動側取付盤14、受け部材以外の構成によって基材Bを下型22と接触させキャビティを形成した状態で保持できれば、これら型締装置15、可動側取付盤14、受け部材は必ずしも必要ではない。例えば、図5に示すように、ブラケットとビスからなる基材保持手段16がタイバー13に取り付けられ、この基材保持手段16によって基材Bを保持させる構成としてもよい。さらに、基材保持手段16に代えて作業員が手で基材Bを保持してもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、下型22が取り付けられた射出装置3を固定する固定側取付盤11にはタイバー13が挿通され、水平方向には移動不可能であった。これを、タイバー13から独立して回転可能なターンテーブルを備え、ターンテーブル上に射出装置3及び下型22を固定し、ターンテーブルを回転することで任意の射出装置3を任意の回転位置に移動できる構成に変えても良い。この構成によれば、ターンテーブルを回転し、異なる樹脂材料が投入された射出装置3を所望の成形位置に移動するすることにより、樹脂の色替えが容易となる。
【0029】
また、本発明の構成のダイレクト成形機は、既製の基材Bに対して樹脂部品を成形し固定するダイレクト成形の他、単体の樹脂部品を成形する目的で用いることを妨げない。また、金型と射出装置は3組に限らず、取付盤に取り付け可能な限り1組以上であれば何組取り付けても良い。また、上記の実施形態では基材Bとして樹脂製のフロアカバーB1,B2を挙げたが、基材Bは樹脂製に限らず金属製であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 ダイレクト成形機
11 固定側取付盤(基板)
14 可動側取付盤
15 型締装置
21 上型
22 下型
3 射出装置
B 基材
C キャビティ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と射出装置とを備え、
あらかじめ成形された板状の基材が第1の金型の上にセットされ、第1の金型と基材とが接触することにより第1の金型と基材の表面とで限られたキャビティが形成され、
射出装置は基材より下に配設され、かつ第1の金型を通じてキャビティ内に樹脂材料を射出し、樹脂部品を射出成形しながら基材に固定するダイレクト成形機。
【請求項2】
請求項1のダイレクト成形機であって、
第2の金型と型締装置とを備え、
第2の金型はセットされる前記の基材より上に配設され、
型締装置は第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させてそれぞれ基材と接触させ、
前記キャビティは第1の金型と基材の表面と第2の金型とで限られて形成されることを特徴とするダイレクト成形機。
【請求項3】
請求項2のダイレクト成形機であって、
前記型締装置は第2の金型を下降させるのみによって第1の金型と第2の金型とを接近させることを特徴とするダイレクト成形機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152975(P2012−152975A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12780(P2011−12780)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】