説明

チタノシリケート及び該チタノシリケートを触媒とするオレフィンオキサイドの製造方法

【課題】過酸化水素などの酸化剤と、プロピレンなどのオレフィン化合物とから、優れた収率でオレフィンオキサイドの製造可能な触媒を提供する。
【解決手段】下記に示す値のX線回折パターンを有するチタノシリケートであり、該チタノシリケートの嵩密度は0.05〜0.15g/mlであることを特徴とするチタノシリケート。
X線回折パターン
格子面間隔d/Å(オングストローム)
12.4±0.8
10.8±0.5
9.0±0.3
6.0±0.3
3.9±0.1
3.4±0.1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタノシリケート及び該チタノシリケートを触媒とするオレフィンオキサイドの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキサイドなどのオレフィンオキサイドの製造方法には、チタノシリケートが触媒として用いられている。かかる触媒としては、例えば、特許文献1に、ホウ素含有化合物、オルトチタン酸テトラブチル、ヒュームドシリカ及びピペリジンを170℃の温度下、水熱合成し、得られた層状化合物(as−synthesizedサンプルとも称される)を還流条件下、硝酸水溶液と接触させて得られるチタノシリケートが記載されている。そして、特許文献1には、該チタノシリケートを触媒として用いることにより、過酸化水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造する方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262164号公報(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のチタノシリケートを触媒とするプロピレンオキサイドの製造方法は、例えば、過酸化水素あたりのプロピレンオキサイドの収率など、酸化剤あたりのオレフィン化合物の収率(以下、単に「収率」と略記することがある)が必ずしも十分ではなかった。
本発明の目的は、酸化剤とオレフィン化合物とから、優れた収率でオレフィンオキサイドを製造し得る触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、嵩高いチタノシリケートが優れた収率でオレフィンオキサイドを製造し得る触媒であることを見出し、以下の本発明に至った。
<1> 下記に示す値のX線回折パターンを有するチタノシリケートであり、該チタノシリケートの嵩密度は0.05〜0.15g/mlであることを特徴とするチタノシリケート。
X線回折パターン
格子面間隔d/Å(オングストローム)
12.4±0.8
10.8±0.5
9.0±0.3
6.0±0.3
3.9±0.1
3.4±0.1
<2> 嵩密度が0.08〜0.11g/mlであることを特徴とする請求項1記載のチタノシリケート。
【0006】
<3> 下記の第1工程及び第2工程を有することを特徴とするチタノシリケートの製造方法。
第1工程:構造規定剤、周期表の13族元素を含有する化合物、チタン含有化合物、ケイ素含有化合物および水を含有する混合物を、155℃未満の最大温度まで加熱して固体を得る工程。
第2工程:無機酸およびチタン含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と第1工程で得られた固体とを接触させる工程。
<4> 周期表の第13族元素を含む化合物がホウ素含有化合物であることを特徴とする<3>記載のチタノシリケートの製造方法。
<5> 構造規定剤がピペリジンまたはヘキサメチレンイミンであることを特徴とする<3>又は<4>記載のチタノシリケートの製造方法。
【0007】
<6> 第2工程で得られたチタノシリケートを250〜1000℃の温度範囲で加熱する第3工程をさらに有する<3>〜<5>いずれか記載の製造方法。
<7> 第2工程又は第3工程で得られたチタノシリケートと構造規定剤とを接触する第4工程をさらに有する<3>〜<6>いずれか記載の製造方法。
<8> 第2工程、第3工程又は第4工程で得られたチタノシリケートをシリル化剤でシリル化する第5工程をさらに有する<3>〜<7>いずれか記載の製造方法。
<9> 第2工程、第3工程、第4工程又は第5工程で得られたチタノシリケートと過酸化水素とを接触する第6工程をさらに有する<3>〜<8>いずれか記載の製造方法。
<10> <3>〜<9>のいずれか記載の製造方法で得られたチタノシリケート。
【0008】
<11> <1>、<2>又は<10>記載のチタノシリケートからなるオレフィンオキサイド製造用触媒。
<12> <11>記載の触媒存在下、オレフィン化合物を酸化剤で酸化させる工程を含むオレフィンオキサイドの製造方法。
<13> オレフィン化合物がプロピレンであり、酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする<12>記載のオレフィンオキサイドの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化剤あたりの収率がより優れたオレフィンオキサイドの触媒として、新規なチタノシリケートが提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られたチタノシリケートの電子顕微鏡写真
【図2】参考例1で得られたチタノシリケートの電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のチタノシリケートは、前記に示す値のX線回折パターンを有し、かつ、その嵩密度は0.05〜0.15g/ml、好ましくは、0.08〜0.11g/mlである。この様な特性を有するチタノシリケートは、優れた収率でオレフィンオキサイドが製造可能な触媒である。以下、上記特性を有するチタノシリケートからなる触媒を本触媒と記すことがある。本触媒は、後述するように、オレフィンオキサイドの製造方法に用いられる触媒として極めて有用である。
【0012】
ここで、チタノシリケートとは、二酸化ケイ素骨格のケイ素原子の一部が、チタン原子に置き換わったものである。
二酸化ケイ素骨格のケイ素原子の一部が、チタン原子に置き換わったことは、当該チタノシリケートの200nm〜400nmの波長領域における紫外可視吸収スペクトルが、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れることから確認することができる(例えば、Chemical Communications 1026−1027,(2002) 図2(d)、(e)参照)。上記紫外可視吸収スペクトルは、拡散反射装置を付属した紫外可視分光光度計を用いて、拡散反射法にて測定することができる。
【0013】
本触媒は、チタノシリケートの中でも下記X線回折パターンを有する。
X線回折パターン
(格子面間隔d/Å)
12.4±0.8
10.8±0.5
9.0±0.3
6.0±0.3
3.9±0.1
3.4±0.1
上記X線回折パターンは、銅K−アルファ放射線を使用したX線回折装置を用いて求められる。詳細な分析条件は後述の[実施例]の項で説明する。
【0014】
本触媒の嵩密度は、タップ密度法によって求められる。すなわち、メスシリンダーに本触媒を入れて、その重量を測定し、続いて、当該メスシリンダーをタッピングし、本触媒の容量が減少しなくなるまでタッピングし、タッピング後の本触媒の容量を測定する。かくして得られた前記重量と前記容量とから嵩密度(g/ml)を計算する。
【0015】
従来のチタノシリケートは1次粒子が凝集して2次粒子を形成する。一方、本触媒は、チタノシリケートの1次粒子が集合して外殻部を構成した2次粒子(例えば、2〜4μm程度)が内部に空間を有するものであるため、低い嵩密度であると考えられる。
本触媒の1次粒子は、例えば、六角平板の形状を有するチタノシリケートを挙げることができる。該六角平板の1辺は、例えば、0.05〜0.2μm程度であり、その厚さは、例えば、10〜50nm程度である。その代表例として、後述する実施例1で得られるチタノシリケートの電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0016】
本触媒は、例えば、下記の第1工程及び第2工程を有する製造方法により製造することができる。
第1工程:構造規定剤、元素周期表の13族元素を含有する化合物、チタン含有化合物、ケイ素含有化合物および水を含有する混合物を、最大155℃未満の温度条件まで加熱して固体を得る工程。
第2工程:無機酸およびチタン含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と第1工程で得られた固体とを接触させる工程。
【0017】
以下、第1工程に用いられる、元素周期表の13族元素を含有する化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び構造規定剤について説明する。
元素周期表の13族元素を含有する化合物(以下、13族元素含有化合物と記すことがある。)としては、例えば、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物、ガリウム含有化合物を挙げることができる。
ホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸;ホウ酸塩;酸化ホウ素;ハロゲン化ホウ素;炭素数1〜4のアルキル基を有するトリアルキルホウ素含有化合物等が挙げられ、アルミニウム含有化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等が挙げられ、ガリウム含有化合物としては、例えば、酸化ガリウムが挙げられる。
好ましい13族元素含有化合物としては、例えば、ホウ素含有化合物等を挙げることができ、より好ましくは、ホウ酸が挙げられる。
【0018】
ケイ素含有化合物としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、ヒュームドシリカ、テトラアルキルオルトケイ酸エステルおよびコロイダルシリカ等を挙げることができ、好ましくはヒュームドシリカである。
【0019】
チタン含有化合物としては、例えば、チタンアルコキシド、チタンの有機酸塩、チタンの無機酸塩、ハロゲン化チタン、酸化チタン等を挙げることができる。
チタンアルコキシドとは、炭素数1〜4のアルコキシル基を有する化合物であり、例えば、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトライソプロピルオルソチタネート、及びテトラ−n−ブチルオルソチタネート等が挙げられる。
チタンの有機酸塩としては、例えば、酢酸チタン等が挙げられ、チタンの無機酸塩としては、例えば、硝酸チタン、硫酸チタン、リン酸チタン、過塩素酸チタン等が挙げられ、ハロゲン化チタンとしては、例えば、四塩化チタン等が挙げられ、酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン等が挙げられる。
チタン含有化合物としては、チタンアルコキシドが好ましく、中でもテトラ−n−ブチルオルソチタネートが好ましい。
本触媒のチタン原子含有量は、本触媒に含まれるケイ素原子1モルに対して、例えば、0.005〜0.05モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは0.01〜0.05モルの範囲である。
本触媒に含まれるチタン原子含有量の調整方法としては、例えば、第1工程に用いられるチタン含有化合物及びケイ素含有化合物のそれぞれの使用量を、上記範囲内の所定のチタン原子含有量になるように適宜、調整すればよい。
【0020】
構造規定剤とは、ゼオライト構造の形成に寄与する窒素含有有機化合物を意味する。かかる構造規定剤は、その周囲にポリケイ酸イオンやポリメタロケイ酸イオンを組織することによりゼオライト構造の前駆体を形成することができる(ゼオライトの科学と工学33−34頁 2000年 講談社サイエンティフィク 参照)。
構造規定剤としては、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等の有機アミン;N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩(N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムイオダイド等)やChemistry Letters 916−917(2007)記載のオクチルトリメチルアンモニウム塩(オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド等)等の4級アンモニウム塩が挙げられる。構造規定剤は、1種類用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
好ましい構造規定剤としては、ピペリジン、ヘキサメチレンイミンおよびそれらの混合物である。
【0021】
次に、第1工程について説明する。
第1工程に用いられる水の量は、第1工程で用いられるケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対し、5〜200モルの範囲、好ましくは10〜50モルの範囲に調整して用いればよい。
第1工程をさらに詳しく説明すると、構造規定剤、13族元素含有化合物、チタン含有化合物、ケイ素含有化合物および水を含有する混合物を、オートクレーブ等の密閉容器に入れ、最大155℃未満の温度範囲まで加熱する。好ましくは、100℃以上、155℃未満の温度範囲内、好ましくは、130℃〜150℃の温度範囲内で加熱する。100℃以上であると、本触媒の結晶性に優れる傾向があることから好ましく、155℃未満であると嵩密度0.15g/ml以下の本触媒を与えることができる。
ここで上記温度範囲とは、密閉容器の外表面の温度ではなく、混合物に直接あるいは鞘管等を使用し間接的に接触された温度計が表示する温度を意味する。
【0022】
第1工程における加熱時間は、第1工程で得られる固体が前記X線回折パターンを与えるまでの時間であり、加熱温度及び原料の使用量によっても異なるが、100℃以上、155℃未満の温度範囲内で、例えば、10〜200時間の範囲内を挙げることができる。
【0023】
第1工程で得られた混合物は、例えば、濾過等により固液分離して、固体を得ることができる。
得られた固体は、第2工程に供する前に、構造規定剤、13族元素含有化合物、チタン含有化合物、ケイ素含有化合物などの未反応の原料等を除去するため、さらに、水等で洗浄することが好ましい。ここで、洗浄は、洗浄された液のpHが10〜11となるまで行うことが好ましい。
洗浄された固体を、例えば、通風乾燥、減圧乾燥、真空凍結乾燥等により、固体の重量減少が無くなるまで乾燥することが好ましい。
【0024】
第2工程は、無機酸およびチタン含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と第1工程で得られた固体とを接触する工程である。
ここで、無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸およびこれらの混合物等を挙げることができ、好ましくは、例えば、硝酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸またはこれらの混合物等が挙げられる。
無機酸は、溶媒と混合した溶液であることが好ましく、かかる溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒及びこれらの混合物等を挙げることができ、好ましくは、水である。
無機酸の濃度としては、例えば、0.01M〜20M(M:無機酸のモル数/無機酸溶液の容量(L))の範囲、好ましくは1M〜5Mの範囲等を挙げることができる。
【0025】
第2工程に用いられるチタン含有化合物としては、第1工程で用いられるチタン含有化合物と同じものが例示される。
第2工程に用いられるチタン含有化合物の使用量としては、固体1重量部に対し、例えば、10重量部以下を挙げることができ、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0026】
第2工程における接触温度としては、例えば、20〜150℃の温度範囲を挙げることができ、好ましくは、50〜104℃の温度範囲が挙げられる。
第2工程は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでもよいが、好ましくは、ゲージ圧力で0〜10MPa程度の範囲の微加圧下で行う。
また、第2工程は、溶媒存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、無機酸に混合される溶媒として前記に例示された溶媒が好ましい。
【0027】
第2工程で得られた本触媒は層状構造を有し、さらに脱水縮合された本触媒はTi−MWWを形成する。ここで、Ti−MWWとは、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードでMWW構造を有することを意味する。
【0028】
第2工程で得られたチタノシリケートは、本触媒であるが、さらに、第3工程、すなわち、第2工程で得られたチタノシリケートをさらに250〜1000℃の温度範囲で加熱して得られたチタノシリケートも本触媒である。
第3工程を具体的に説明すると、例えば、第2工程で得られたものを電気などの加熱炉内に置き、1〜24時間かけて、250〜1000℃の温度範囲内、好ましくは300〜600℃の温度範囲内まで昇温し、その温度で更に1〜24時間保温し、炉内で自然放冷する工程等を挙げることができる。
第3工程は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス;空気、酸素、二酸化炭素等の酸化性ガス;水素、一酸化炭素、プロピレン等の還元性ガスの雰囲気下の加熱炉内で行うことが好ましい。
第3工程によって、第2工程で得られたチタノシリケートは脱水縮合される。
【0029】
第2工程又は第3工程で得られたチタノシリケートと構造規定剤とを接触する工程(以下、第4工程と記すことがある)を経て得られたチタノシリケートも本触媒である。
第4工程の操作を具体的に説明すると、例えば、第2工程で得られたチタノシリケート又は第3工程で得られたチタノシリケートと、構造規定剤と、必要に応じて溶媒とをオートクレーブ等の密閉容器に入れ、加熱しつつ加圧する操作、例えば、大気下、ガラス製フラスコ等の容器内に、第2工程で得られたチタノシリケート又は第3工程で得られたチタノシリケートと、構造規定剤と、必要に応じて溶媒とを攪拌混合する操作、例えば、大気下、ガラス製フラスコ等の容器内に、第2工程で得られたチタノシリケート又は第3工程で得られたチタノシリケートと、構造規定剤と、必要に応じて溶媒とを静置混合する操作等を挙げることができる。
第4工程で用いられる溶媒としては、水、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒及びこれらの混合物等を挙げることができ、好ましくは、水である。
また、構造規定剤としては、第1工程で用いられる構造規定剤と同様のものが例示される。
【0030】
第4工程のチタノシリケートと構造規定剤との接触時における温度の下限は、例えば、0℃を挙げることができ、好ましくは20℃、より好ましくは50℃、とりわけより好ましくは100℃を挙げることができる。第4工程のチタノシリケートと構造規定剤との接触時における温度の上限は、例えば、250℃を挙げることができ、好ましくは200℃、より好ましくは180℃を挙げることができる。
第4工程のチタノシリケートと構造規定剤との接触時における圧力は、常圧下、減圧下、加圧下を挙げることができ、好ましくは、ゲージ圧力で0〜10MPaの常圧下から加圧下が好ましい。第4工程を経て得られたチタノシリケートは、例えば、ろ過により分離される。必要により、分離した固体を、さらに、洗浄、乾燥等の後処理を行ってもよい。
【0031】
第2工程、第3工程又は第4工程で得られたチタノシリケートをシリル化剤でシリル化する工程(以下、第5工程と記すことがある)を経て得られたチタノシリケートも本触媒である。
第5工程を具体的に説明すると、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤を用い、第2工程で得られたチタノシリケート、第3工程で得られたチタノシリケート又は第4工程で得られたチタノシリケートをヨーロッパ公開特許EP1488853A1記載の方法に準じてシリル化する工程等を挙げることができる。
【0032】
第2工程、第3工程、第4工程又は第5工程で得られたチタノシリケートと過酸化水素とを接触する工程(以下、第6工程と記すことがある)を経て得られたものも本触媒である。
第6工程に用いられる過酸化水素の濃度は、例えば、0.0001重量%〜50重量%の範囲である。
ここで、過酸化水素溶液の溶媒としては、第4工程で例示された溶媒を挙げることができ、好ましくは、例えば、水、アセトニトリル及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
第6工程における温度としては、例えば、0℃〜100℃の範囲、好ましくは0℃〜60℃の範囲を挙げることができる。
【0033】
本発明のオレフィンオキサイドの製造方法は、本触媒を用いる方法である。すなわち、本発明のオレフィンオキサイドの製造方法は、本触媒存在下、オレフィン化合物を酸化剤で酸化させる工程(以下、酸化反応と記すことがある)を含む。
酸化剤とはオレフィン化合物に酸素原子を与える化合物を意味する。酸化剤としては、例えば、酸素および過酸化物等が挙げられる。該過酸化物としては、例えば過酸化水素および有機過酸化物が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド、テトラリンヒドロペルオキシド、イソブチルベンゼンヒドロペルオキシド、エチルナフタレンヒドロペルオキシドおよび過酢酸が挙げられる。酸化剤として、上記例示した過酸化物を2種以上混合して使用することもできる。
過酸化水素は、市販されたものでよいし、酸化反応と同じ反応系内で貴金属の存在下に酸素と水素とから製造されたものでもよい。
好ましい酸化剤としては、過酸化物が挙げられ、より好ましくは過酸化水素が挙げられ、とりわけより好ましくは、0.0001重量%以上、100重量%未満の範囲の濃度の過酸化水素水溶液が挙げられる。
【0034】
酸化剤の使用量は、オレフィン化合物の種類や反応条件等に応じて任意に選択することができ、オレフィン化合物100重量部に対して、例えば、0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。酸化剤の上限の使用量は、オレフィン化合物100重量部に対して、例えば、1000重量部を挙げることができ、好ましい上限として、例えば、100重量部が挙げられる。
【0035】
酸化反応に用いられるオレフィン化合物とは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基または水素がオレフィン二重結合を構成する炭素原子に結合した化合物である。
ヒドロカルビル基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。ヒドロカルビル基としては、飽和のヒドロカルビル基が例示され、飽和のヒドロカルビル基としてはアルキル基が例示される。
オレフィン化合物としては、具体的には、炭素数2〜10のアルケン、炭素数4〜10のシクロアルケンが例示される。
上記炭素数2〜10のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、2−ブテン、イソブテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、2−オクテン、3−オクテン、2−ノネン、3−ノネン、2−デセン及び3−デセン等が例示される。
上記炭素数4〜10のシクロアルケンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン等が例示される。
本発明において、オレフィン化合物としては、炭素数2〜10のアルケンが好ましく、炭素数2〜5のアルケンがより好ましく、プロピレンがとりわけ、より好ましい。
【0036】
酸化反応において、オレフィン化合物の量は、その種類や反応条件等に応じて任意に選択することができ、例えば、酸化反応の反応溶液の合計量100重量部に対して、0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。オレフィン化合物の量は、反応溶液の合計量100重量部に対して、上限が1000重量部を挙げることができ、好ましくは100重量部が挙げられる。
【0037】
酸化反応は、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、水、有機溶媒あるいはその両者の混合物等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エステル溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。
脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5〜10の脂肪族炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、炭素数1〜6の1価アルコール、炭素数2〜8のグリコール等が挙げられる。アルコール溶媒としては、炭素数1〜8の脂肪族アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびt−ブタノール等の炭素数1〜4の1価アルコールがより好ましく、t−ブタノールが更に好ましい。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ブチロニトリル等の炭素数2〜4のアルキルニトリルおよびベンゾニトリル等を挙げることができ、好ましくは、アセトニトリルである。
酸化反応に用いる溶媒としては、触媒活性、選択性の観点から、水、アルコール溶媒、ニトリル溶媒およびこれらの混合溶媒が好ましい。
【0038】
酸化反応において、本触媒の量は、オレフィン化合物の種類に応じて適宜選択することができるが、溶媒の合計量100重量部に対して、例えば、下限は、0.01重量部、好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.5重量部を挙げることができ、上限は、例えば、20重量部、好ましくは10重量部、より好ましくは8重量部を挙げることができる。
【0039】
酸化反応における反応温度の下限としては、例えば、0℃を挙げることができ、好ましくは40℃を挙げることができる。上限としては、例えば、200℃を挙げることができ、好ましくは150℃を挙げることができる。
酸化反応の反応圧力の下限としては、例えば、0.1MPaを挙げることができ、好ましくは1MPaを挙げることができ、上限としては、例えば、20MPaを挙げることができ、好ましくは10MPaを挙げることができる。
【0040】
酸化反応において、酸化剤が過酸化水素である場合、該過酸化水素は、酸化反応と同一反応系内で製造することにより供給してもよい。
該過酸化水素は、酸化反応と同一反応系内で製造する場合、例えば、貴金属触媒の存在下で酸素と水素から製造することができる。
該貴金属触媒としては、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、金等の貴金属、またはそれらの合金もしくは混合物があげられる。好ましい貴金属としては、パラジウム、白金、金があげられる。より好ましい貴金属はパラジウムである。パラジウムとしては、例えば、パラジウムコロイドを用いてもよい(例えば、特開2002−294301号公報、実施例1等参照)。上記貴金属触媒として、酸化反応系内で還元することにより貴金属に変換される貴金属化合物を用いてよい。
【0041】
該貴金属触媒として、パラジウムを用いる場合、更に白金、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム等のパラジウム以外の金属をパラジウムに混合して用いることができる。好ましいパラジウム以外の金属としては、金、白金があげられる。
該パラジウム化合物として、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジブロモテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類が例示される。
【0042】
貴金属は、通常、担体に担持して使用される。貴金属は、本触媒に担持して使用することもできるし、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア等の酸化物、ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸等の水化物、炭素およびそれらの混合物に担持して使用することもできる。本触媒以外に貴金属を担持させた場合、貴金属を担持した担体を本触媒と混合し、当該混合物を触媒として使用することができる。
本触媒以外を担体として用いる場合、炭素が好ましい担体として挙げられる。炭素担体としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等が知られている。
【0043】
貴金属触媒の調製方法としては、例えば、貴金属化合物を担体上に担持した後、還元する方法が知られている。貴金属化合物の担持は、含浸法等の従来公知の方法を用いることができる。
還元方法としては、水素等の還元剤を用いて還元してもよいし、不活性ガス雰囲気下、熱分解時に発生するアンモニアガスで還元してもよい。還元温度は、貴金属化合物の種類等によって異なるが、100〜500℃の範囲が好ましく、200〜350℃の範囲が更に好ましい。
貴金属触媒は、貴金属を、例えば、0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含む。
本触媒に対する貴金属の重量比(貴金属の重量/本触媒の重量)は、好ましくは0.01〜100重量%、より好ましくは0.1〜20重量%である。
【0044】
酸化反応においては、緩衝剤を酸化反応の反応系内に存在させた場合、酸化剤あたりのオレフィンオキサイドの転化率及び収率をより向上させる傾向があることから好ましい。ここで緩衝剤とはpH緩衝作用を与えるアニオン及びカチオンからなる化合物を意味する。
緩衝剤は、酸化反応の反応系内に溶解させることが一般的であるが、同一反応系内で製造した過酸化水素を酸化剤として用いる場合、予め貴金属触媒に緩衝剤を含有させておいてよい。例えば、Pdテトラアンミンクロリド等のアンミン錯体等を担体上に含浸法等によって担持した後、還元し、アンモニウムイオンを残存させ、酸化反応中に緩衝剤を発生させる方法等を挙げることができる。
緩衝剤の添加量は、溶媒1kgあたり、例えば、0.001mmol/kg〜100mmol/kgの範囲等を挙げることができる。
【0045】
緩衝剤としては、1)硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸2水素イオン、ピロリン酸水素イオン、ピロリン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、水酸化物イオンおよび炭素数1〜10のカルボン酸イオンからなる群より選ばれるアニオンと、2)アンモニウム、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム、炭素数7〜20のアルキルアリールアンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれるカチオンとからなる緩衝剤が例示される。
カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、カプリル酸イオン、カプリン酸イオン、安息香酸イオンが挙げられる。
上記アルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属カチオンの例は、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等を挙げることができる。
好ましい緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、ピロリン酸水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩および酢酸アンモニウム等のカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、好ましいアンモニウム塩としては、リン酸2水素アンモニウムが挙げられる。
【0046】
酸化反応が、反応系内で酸素と水素から合成した過酸化水素を酸化剤として使用する場合は、キノイド化合物を酸化反応の反応系内に存在させることにより、オレフィンオキサイドの選択性が増大する傾向があることから好ましい。
キノイド化合物としては、下記式(1)

(式中、R、R、RおよびRは、水素原子を表すかあるいは、RとR、あるいはRとRは、それぞれ独立に、その末端で結合し、それぞれが結合している炭素原子とともに、置換されていてもよいナフタレン環を表し、XおよびYは同一または互いに相異なり、酸素原子もしくはNH基を表す。)
のρ−キノイド化合物およびο−キノイド化合物が例示される。
【0047】
式(1)の化合物としては、
1)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、XおよびYが共に酸素原子であるキノン化合物(1A)、
2)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、Xが酸素原子であり、YがNH基であるキノンイミン化合物(1B)、
3)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、XおよびYがNH基であるキノンジイミン化合物(1C)が例示される。
【0048】
式(1)のキノイド化合物には、下記のアントラキノン化合物(2)が含まれる。

(式中、XおよびYは式(1)において定義されたとおりであり、R、R、RおよびRは、同一または互いに相異なり、水素原子、ヒドロキシル基もしくはアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のC−Cアルキル基)を表す。)
【0049】
式(1)および式(2)において、XおよびYは好ましくは、酸素原子を表す。
上記キノイド化合物としては、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アルキルアントラキノン化合物、ポリヒドロキシアントラキノン、9,10−フェナントラキノン等があげられる。
上記アルキルアントラキノン化合物としては、例えば2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−ブチルアントラキノン、2−t−アミルアントラキノン、2−イソプロピルアントラキノン、2−s−ブチルアントラキノンまたは2−s−アミルアントラキノン等の2−アルキルアントラキノン化合物;1,3−ジエチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,7−ジメチルアントラキノン等のポリアルキルアントラキノン化合物が挙げられる。
上記ポリヒドロキシアントラキノンとしては、2,6−ジヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
【0050】
好ましいキノイド化合物としては、アントラキノンや、2−アルキルアントラキノン化合物(式(2)において、XおよびYが酸素原子であり、Rが2位に置換したアルキル基であり、Rが水素を表し、RおよびRが水素原子を表す。)があげられる。
上記キノイド化合物の使用量としては、溶媒1kgあたり、0.001mmol/kg〜500mmol/kgの範囲を挙げることができる。
好ましいキノイド化合物の量は、0.01mmol/kg〜50mmol/kgである。
本発明のオレフィンオキサイド製造方法においては、アンモニウム、アルキルアンモニウムまたはアルキルアリールアンモニウムからなる塩を同時に酸化反応の反応系内に加えることも可能である。
【0051】
上記キノイド化合物は、そのジヒドロ体を酸化反応の反応系内で酸素等を用いて酸化させることにより調製することもできる。例えばヒドロキノンや、9,10−アントラセンジオール等のキノイド化合物が水素化された化合物を酸化反応の反応系中に添加し、反応器内で酸素により酸化してキノイド化合物を発生させて使用してもよい。
キノイド化合物のジヒドロ体としては、前記式(1)および(2)の化合物のジヒドロ体である下記の式(3)および(4)の化合物が例示される。

(式中、R、R、R、R、XおよびYは、前記式(1)に関して定義されたとおり。)

(式中、X、Y、R、R、RおよびRは前記式(2)に関して定義されたとおり。)
式(3)および式(4)において、XおよびYは、好ましくは酸素原子を表す。
好ましいキノイド化合物のジヒドロ体としては、上述の好ましいキノイド化合物に対応するジヒドロ体が挙げられる。
【0052】
酸化反応は、連続式、回分式、半回分式のいずれの化学反応プロセスに適用可能であり、好ましくは、回分式又は半回分式で行われる。
【0053】
予め製造した過酸化物を用いてオレフィン化合物を酸化する反応の場合、反応ガス雰囲気に制限はない。
【0054】
酸化反応の反応系と同一の反応内で酸素と水素とから過酸化水素が製造される場合、該反応系内に供給される酸素と水素の分圧比は、例えば、酸素:水素=1:50〜50:1の範囲、好ましくは、1:2〜10:1の範囲を挙げることができる。酸素と水素の分圧比(酸素/水素)が50/1以下であるとオレフィンオキサイドの生成速度が向上する傾向があることから好ましい。また、酸素と水素の分圧比(酸素/水素)が1/50以上であると、オレフィン化合物が還元されたアルカン化合物の副生が減少し、オレフィンオキサイドの選択率が向上する傾向があることから好ましい。
【0055】
ここで、酸素および水素は希釈されていてもよい。希釈に用いるガスとしては、窒素,アルゴン,二酸化炭素、メタン,エタン,プロパンがあげられる。希釈用ガスの濃度に制限は無いが、必要により、酸素あるいは水素を希釈して過酸化水素の合成反応が行われる。
酸素としては、酸素をそのまま用いてもよいし、空気等の酸素及び前記の希釈に用いるガスの混合ガスであってもよい。酸素ガスは安価な圧力スウィング法で製造した酸素ガスも使用できるし、必要に応じて深冷分離等で製造した高純度酸素ガスを用いることもできる。
【0056】
酸化反応における反応温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは40℃〜150℃の範囲等が挙げられる。
反応温度が0℃以上であると反応速度が向上する傾向があることから好ましく、反応温度が200℃以下であると、副反応が抑制され、アルキレンオキサイドの選択率が向上する傾向があることから好ましい。
【0057】
酸化反応における反応圧力は、例えば、ゲージ圧力で0.1MPa〜20MPaの範囲の加圧下等を挙げることができ、好ましくは、1MPa〜10MPaの範囲の加圧下が挙げられる。
【0058】
酸化反応が終了した後、オレフィンオキサイドは、例えば、酸化反応の反応生成物を蒸留等によって取り出すことができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により説明する。
<実施例における分析装置>
(元素分析方法)
本触媒に含まれるTi(チタン原子)、Si(ケイ素原子)重量は、ICP発光分析法により求めた。即ち、白金坩堝に試料約20mgを量り取り、試料上に炭酸ナトリウムを被せた後、ガスバーナーで融解操作を行った。融解後、純水及び硝酸で白金坩堝中の内容物を加熱溶解し、その後、純水で定容した後、この測定溶液をICP発光分析装置(ICPS−8000 島津製作所製)にて分析し、各元素の定量を行った。
【0060】
(粉末X線回折法(XRD))
本触媒を以下の装置、条件で粉末X線回折パターンを測定した。
装置:理学電機社製RINT2500V
線源:Cu Kα線
出力 40kV−300mA
走査範囲:2θ=0.75〜20°
走査速度: 1°/分
【0061】
(紫外可視吸収スペクトル(UV−Vis))
本触媒をメノウ乳鉢でよく粉砕し、更にペレット化(7mmφ)することにより測定用サンプルを調製し、該測定用サンプルについて以下の装置、条件で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
装置:拡散反射装置(HARRICK製 Praying Mantis)
付属品:紫外可視分光光度計(日本分光製 V−7100)
圧力:大気圧
測定値:反射率
データ取込時間:0.1秒
バンド幅:2nm
測定波長:200〜900nm
スリット高さ:半開
データ取込間隔:1nm
ベースライン補正(リファレンス):BaSOペレット(7mmφ)
【0062】
(本触媒の嵩密度測定)
乳鉢でよく粉砕した5ml程度の本触媒を正確に秤量し、10mlメスシリンダー中に入れ、本触媒の容量が変化しなくなるまで該メスシリンダーに振動を与えた。秤量した本触媒の重量(g)及び、該メスシリンダーの目盛で測定した本触媒の容量(ml)から、本触媒の嵩密度(g/ml)を求めた。
【0063】
(実施例1)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)899g、イオン交換水2402g、TBOT(テトラ−n−ブチルオルソチタネート、和光純薬株式会社製)46.4g、ホウ酸(和光純薬株式会社製)565gおよびヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gをオートクレーブ中で、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、オートクレーブを密閉した。続いて、ゲルを撹拌しながら8時間かけて該ゲルの温度を150℃になるまで昇温させた後、同温度で120時間保持することにより懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.3になるまで水洗した。得られた固形分を重量減少が見られなくなるまで50℃で乾燥し、524gの固体1を得た。
上記固体1 75gに2M硝酸3750mLおよびTBOT(和光純薬株式会社製)9.5gを加えた後、加熱して、20時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで該固体生成物を150℃で加熱しながら真空乾燥して、59gの白色粉末を得た(触媒A)。この触媒AのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.99重量%であった。さらに、触媒Aの嵩密度は0.10g/mlであった。
【0064】
(実施例2)
実施例1で得られた触媒A 50gを530℃で6時間加熱し、45gの粉末状の触媒Bを得た。得られた触媒BのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することを確認した。紫外可視吸収スペクトル測定結果からチタノシリケートであることが判明した。さらに、触媒Bの嵩密度は0.11g/mlであった。
【0065】
(実施例3)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)899g、イオン交換水2402g、TBOT(和光純薬株式会社製)46g、ホウ酸(和光純薬株式会社製)565g、ヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。続いて、該ゲルを撹拌しながら8時間かけて該ゲルの温度を145℃になるまで昇温させた後、該温度で120時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.5になるまで水洗した。得られた固形分を50℃で重量減少が見られなくなるまで乾燥し、508gの固体2を得た。
上記固体2 15gに2M硝酸750mLおよびTBOT(和光純薬株式会社製)1.9gを加えた後、加熱して、20時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで該固体生成物を150℃で加熱しながら真空乾燥して、11.3gの白色粉末を得た(触媒C)。この触媒CのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.89重量%であった。さらに、触媒Cの嵩密度は0.09g/mlであった。
【0066】
(実施例4)
ピペリジン(広栄化学工業株式会社製)300g、イオン交換水600g、および実施例2で得られた触媒B 80gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。続いて、該ゲルを撹拌しながら4時間かけて該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、該温度で24時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.5になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで該固体生成物を150℃で加熱しながら真空乾燥して、79gの白色粉末を得た(触媒D)。この触媒DのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.1d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は2.08重量%であった。さらに、触媒Dの嵩密度は0.09g/mlであった。
【0067】
(実施例5)
上記触媒Dのシリル化を、特開2003−326171号公報の方法を参考に実施した。すなわち、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(和光純薬社製) 1.0g、トルエン(和光純薬社製)100mL、触媒D 0.5gを混合し、加熱して3時間還流させることでシリル化を行った。さらに、得られた反応混合物をろ過した後、得られた固形物をアセトン500mL、水/アセトニトリル(=1/4、質量比)混合溶媒1Lの順で洗浄し、洗浄後の固形物を質量減少が無くなるまで150℃で真空乾燥し、0.50gの白色粉末(触媒E)を得た。この触媒EのX線回折パターンは、12.5d/Å、11.2d/Å、9.1d/Å、6.2d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、触媒Eの嵩密度は0.08g/mlであった。
【0068】
(参考例1)
Chemistry Letters 774−775 (2000)と同じ方法にてTi−MWW前駆体の合成を行った。即ち、25℃、Air雰囲気下、2Lの樹脂製ビーカー中で、ピペリジン(和光純薬株式会社製)200g、イオン交換水564gを混合し、ピペリジン水溶液を得た。該水溶液を382gずつに2分割し、ピペリジン水溶液(1)、ピペリジン水溶液(2)を準備した。
25℃、Air雰囲気下、ピペリジン水溶液(1)、TBOT(和光純薬株式会社製)5.6g、ヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)49.5gを撹拌することによりゲル(1)を得た。該ゲルを1時間攪拌させた。
一方、25℃、Air雰囲気下、ピペリジン水溶液(2)、ホウ酸(和光純薬株式会社製)136.5g、ヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)49.5gを撹拌することによりゲル(2)を得た。該ゲルを1時間攪拌させた。
25℃、Air雰囲気下、オートクレーブ中で、ゲル(1)およびゲル(2)を混合し、さらに1.5時間攪拌させることによりゲル(3)を得た。ゲル(3)中の混合物の組成(モル)比は、SiO:TiO:B:ピペリジン:HO=1:0.01:0.67:1.4:19であった。上記オートクレーブを密閉し、100rpmの回転速度にて攪拌しながら5.5時間かけて内容物の温度が130℃になるまで昇温した後、該温度で24時間保持した。130℃で保持後、1時間かけて内容物の温度が150℃になるまで昇温した後、該温度で24時間保持した。150℃で保持後、1時間かけて内容物の温度が170℃になるまで昇温した後、該温度で120時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.0になるまで水洗した。得られた固形分を50℃で重量減少が見られなくなるまで乾燥し、117gの固体3を得た。
上記固体3 3gに2M硝酸 60mLを加え、撹拌しながら100℃で20時間保温した。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、150℃で重量減少が見られなくなるまで真空乾燥して2.3gの白色粉末を得た(触媒1)。この触媒1のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、8.8d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は0.76重量%であった。さらに、触媒1の嵩密度は0.18g/mlであった。
【0069】
(参考例2)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)899g、イオン交換水2402g、TBOT(和光純薬株式会社製)47g、ホウ酸(和光純薬株式会社製)565g、ヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。続いて、該ゲルを撹拌しながら8時間かけて該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、該温度で120時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.4になるまで水洗した。得られた固形分を50℃で重量減少が見られなくなるまで乾燥し、508gの固体4を得た。
上記固体4 75gに2M硝酸3750mLおよびTBOT(和光純薬株式会社製)9.5gを加えた後、加熱して、20時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで該固体生成物を150℃まで加熱しながら真空乾燥して、56gの白色粉末を得た(触媒2)。この触媒2のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.89重量%であった。さらに、触媒2の嵩密度は0.35g/mlであった。
【0070】
(参考例3)
参考例1で得られた触媒1 50gを530℃で6時間加熱し、45gの触媒3を得た。この触媒3のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、8.9d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。紫外可視吸収スペクトル測定結果からチタノシリケートであることが分かった。さらに、触媒3の嵩密度は0.35g/mlであった。
【0071】
(参考例4)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)899g、イオン交換水2402g、TBOT(広栄化学工業株式会社製)899g、ホウ酸(米山化学工業株式会社製)565g、ヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。続いて、該ゲルを撹拌しながら8時間かけて該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、該温度で120時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.5になるまで水洗した。得られた固形分を50℃で重量減少が見られなくなるまで乾燥し、508gの固体5を得た。
上記固体5 75gに2M硝酸3750mLを加えた後、加熱して、20時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで該固体生成物を150℃まで加熱しながら真空乾燥して、52gの白色粉末を得た(触媒4)。この触媒4のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、8.9d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.80重量%であった。さらに、触媒4の嵩密度は0.40g/mlであった。
【0072】
(参考例5)
参考例4で得られた触媒4 50gを530℃で6時間加熱し、45gの固体6を得た。得られた固体6のX線回折パターンを測定したところ、特開2005−262164号公報中の図2と比較することにより、この固体がMWW構造を持つことを確認した。紫外可視吸収スペクトル測定結果からチタノシリケートであることが判明した。
ピペリジン(和光純薬株式会社製)45g、イオン交換水90g及び固体6 15gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。該ゲルをさらに1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。続いて、該ゲルを撹拌しながら4時間かけて該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、該温度で16時間保持することにより、懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが9.3になるまで水洗した。得られた固形分を50℃で重量減少が見られなくなるまで乾燥し、13.5gの触媒5を得た。この触媒5のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.1d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認され、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケートであることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.80重量%であった。さらに触媒5の嵩密度は0.39g/mlであった。
【0073】
(過酸化水素処理)
本発明の実施例及び参考例で得られたチタノシリケートは、以下の方法に従い過酸化水素と接触させた。
チタノシリケート0.1g、及び、0.1重量%の過酸化水素を含む水/アセトニトリル=1/4(重量比)の溶液100gの混合物を、室温(約20℃)下、1時間攪拌した後、ろ過し、さらに得られたケークを500mLの水で洗浄し、過酸化水素処理されたチタノシリケートを得た。
【0074】
(プロピレンオキサイドの製造例1:実施例6)
過酸化水素30重量%を含有する水溶液(和光純薬株式会社製)、アセトニトリル(ナカライテスク社製)及びイオン交換水を混合して、0.5重量%の過酸化水素を含むアセトニトリル/水混合溶媒(アセトニトル/水=4/1(重量比))溶液を調製した。調製した溶液60gと、別途、実施例1で得られた触媒Aを前記の過酸化水素処理した触媒A’ 0.010gとを100mLステンレスオートクレーブに充填した。次にオートクレーブを氷浴上に移し、プロピレン1.2gを充填した。さらにアルゴンで2MPa(ゲージ圧)までオートクレーブ内を昇圧した。オートクレーブ内の混合液を攪拌しながら、15分かけて60℃まで昇温し、同温度にて1時間攪拌した。次に、攪拌を止めオートクレーブを氷冷した。
氷冷後、得られた混合液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は49%であった。
【0075】
(プロピレンオキサイドの製造例2:実施例7)
触媒A’の代わりに実施例2で得られた触媒Bを過酸化水素処理した触媒B’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は54%であった。
【0076】
(プロピレンオキサイドの製造例3:実施例8)
触媒A’の代わりに実施例3で得られた触媒Cを過酸化水素処理した触媒C’を用いた以外は、実施例6と同様に行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は51%であった。
【0077】
(プロピレンオキサイドの製造例4:実施例9)
触媒A’の代わりに実施例4で得られた触媒Dを過酸化水素処理した触媒D’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は63%であった。
【0078】
(プロピレンオキサイドの製造例5:実施例10)
触媒A’の代わりに実施例5で得られた触媒Eを過酸化水素処理した触媒E’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は77%であった。
【0079】
(プロピレンオキサイドの参考製造例1:参考例1の触媒1の使用)
触媒A’ 0.010gの代わりに参考例1で得られた触媒1 0.020gを用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は20%であった。
【0080】
(プロピレンオキサイドの参考製造例2:参考例1の触媒1を過酸化水素処理した触媒の使用)
触媒A’の代わりに参考例1で得られた触媒1を過酸化水素処理した触媒1’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は29%であった。
【0081】
(プロピレンオキサイドの参考製造例3:参考例2の触媒2を過酸化水素処理した触媒の使用)
触媒A’の代わりに参考例2で得られた触媒2を過酸化水素処理した触媒2’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は42%であった。
【0082】
(プロピレンオキサイドの参考製造例4:参考例3の触媒3を過酸化水素処理した触媒の使用)
触媒A’の代わりに参考例3で得られた触媒3を過酸化水素処理した触媒3’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は38%であった。
【0083】
(プロピレンオキサイドの参考製造例5:参考例4の触媒4を過酸化水素処理した触媒の使用)
触媒A’の代わりに参考例4で得られた触媒4を過酸化水素処理した触媒4’を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は43%であった。
【0084】
(触媒A及び触媒1のFE−SEM観察)
以下の測定条件にて、実施例1で得られた触媒Aおよび参考例1で得られた触媒1の電子顕微鏡写真を撮影した。図1から触媒Aは中空状の2次粒子となっていることがわかり、図2から触媒1の2次粒子は単に1次粒子が凝集したものであることがわかる。
(測定条件)
測定装置:日立ハイテクノロジーズ社製電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−5500
観察条件:加速電圧30kVで暗視野走査透過像(STEM−DF像)を観察。
前処理方法:試料を常温硬化型エポキシ樹脂(エポキュアー)に混合・脱気して包埋。ミクロトーム(LEICA製ウルトラミクロトームEMUC6)(常温湿式)で膜厚80〜100nmの切片を作製し、観察用Cu製メッシュ上に採取。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、酸化剤あたりの収率がより優れたオレフィンオキサイドの触媒として、新規なチタノシリケートが提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示す値のX線回折パターンを有し、かつ、嵩密度が0.05〜0.15g/mlであることを特徴とするチタノシリケート。
X線回折パターン
格子面間隔d/Å(オングストローム)
12.4±0.8
10.8±0.5
9.0±0.3
6.0±0.3
3.9±0.1
3.4±0.1
【請求項2】
嵩密度が0.08〜0.11g/mlであることを特徴とする請求項1記載のチタノシリケート。
【請求項3】
下記の第1工程及び第2工程を有することを特徴とするチタノシリケートの製造方法。
第1工程:構造規定剤、周期表の13族元素を含有する化合物、チタン含有化合物、ケイ素含有化合物および水を含有する混合物を、155℃未満の温度条件で加熱して固体を得る工程。
第2工程:無機酸およびチタン含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と第1工程で得られた固体とを接触させる工程。
【請求項4】
周期表の第13族元素を含む化合物がホウ素含有化合物であることを特徴とする請求項3記載のチタノシリケートの製造方法。
【請求項5】
構造規定剤がピペリジンまたはヘキサメチレンイミンであることを特徴とする請求項3又は4記載のチタノシリケートの製造方法。
【請求項6】
第2工程で得られたチタノシリケートを250〜1000℃の温度範囲で加熱する第3工程をさらに有する請求項3〜5いずれか記載の製造方法。
【請求項7】
第2工程又は第3工程で得られたチタノシリケートと構造規定剤とを接触する第4工程をさらに有する請求項3〜6いずれか記載の製造方法。
【請求項8】
第2工程、第3工程又は第4工程で得られたチタノシリケートをシリル化剤でシリル化する第5工程をさらに有する請求項3〜7いずれか記載の製造方法。
【請求項9】
第2工程、第3工程、第4工程又は第5工程で得られたチタノシリケートと過酸化水素とを接触する第6工程をさらに有する請求項3〜8いずれか記載の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか記載の製造方法で得られたチタノシリケート。
【請求項11】
請求項1、2又は10記載のチタノシリケートからなるオレフィンオキサイド製造用触媒。
【請求項12】
請求項11記載の触媒存在下、オレフィン化合物を酸化剤で酸化させる工程を含むオレフィンオキサイドの製造方法。
【請求項13】
オレフィン化合物がプロピレンであり、酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする請求項12記載のオレフィンオキサイドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−31010(P2012−31010A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171783(P2010−171783)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】