説明

チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子

【課題】チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子を提供する。
【解決手段】バックゲート基板と、基板上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上のグラフェン層と、グラフェン層の第1領域上に順次に積層された半導体層及び第1電極と、グラフェン層で第1領域と離隔している第2領域上の第2電極と、を備え、バックゲート基板とグラフェン層とは、半導体層を介して対向し、半導体層は、n型またはp型にドーピングされたチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューナブル半導体バリアを備えるスイッチング素子に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元六方晶系炭素構造を持つグラフェンは、半導体を代替できる新たな物質であり、最近では全世界的に活発に研究が進められつつある。特に、グラフェンはゼロギャップ半導体であり、チャネル幅を10nm以下にしてグラフェンナノリボン(GNR)を製作する場合、サイズ効果によってバンドギャップが形成されて常温で作動可能な電界効果トランジスタを製作できる。
【0003】
しかし、GNRを用いたグラフェントランジスタの製作時に、グラフェントランジスタのオン/オフ比は良くなるが、GNRの不規則的なエッジによりGNRでの移動度が大きく低下し、グラフェントランジスタのオン電流(on current)が小さくなるという短所がある。このようなGNRの対応策として、最近では二層グラフェンに垂直方向の電界をかけてバンドギャップを形成することができる。しかし、この方法は、大面積CVD方法であって、均一な二層構造のグラフェンを成長させ難く、ランダムドメインのため実用化が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子は、GNRの代りに半導体バリアを使用してエネルギーギャップを形成したグラフェンスイッチング素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子は、バックゲート基板と、前記基板上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上のグラフェン層と、前記グラフェン層の第1領域上に順次に積層された半導体層及び第1電極と、前記グラフェン層で前記第1領域と離隔している第2領域上の第2電極と、を備え、前記バックゲート基板と前記半導体層とは、前記グラフェン層を介して対向し、前記半導体層は、n型またはp型にドーピングされたチューナブルバリアを備える。
【0006】
前記半導体層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体を含む。
【0007】
前記グラフェン層は、前記第1電極と離隔している。
【0008】
前記半導体層は、1nm〜10nmの厚さを持つ。
【0009】
前記第1電極及び第2電極は、金属またはポリシリコンからなる。
【0010】
前記グラフェンスイッチング素子は、前記半導体層の不純物の極性と同じ極性のユニポーラトランジスタである。
【0011】
前記半導体層は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成し、前記バックゲート電極に印加されるゲート電圧によって前記エネルギーギャップが変わる。
【0012】
前記グラフェン層は、1層ないし4層のグラフェンからなる。
【0013】
本発明の他の実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子は、導電性半導体基板と、前記基板上で互いに離隔した第1領域及び第2領域にそれぞれ配された第1電極及び絶縁層と、前記基板上で前記第1電極と前記絶縁層との間から前記絶縁層上に延びているグラフェン層と、前記第2領域の前記グラフェン層上で前記絶縁層と対向する第2電極と、前記グラフェン層を覆うゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を備え、前記基板は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成する半導体層であるチューナブルバリアを備える。
【0014】
前記グラフェン層と前記第1電極との間のギャップは、1nm〜30nmである。
【0015】
本発明の他の実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子は、第1面と第2面を持つグラフェン層と、n型不純物またはp型不純物を含み、前記グラフェン層の前記第1面の第1部分または前記グラフェン層の前記第2面の第1部分に接触する半導体層と、前記半導体層と接触し、前記グラフェン層と離隔している第1電極と、前記グラフェン層の前記第1面の第2部分と接触する第2電極と、ゲート電極と、前記グラフェン層と前記ゲート電極と接触し、前記ゲート電極と前記半導体層との間に配されたゲート絶縁層と、を備えるチューナブルバリアを備える。
【0016】
前記半導体層は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成し、前記エネルギーギャップは、前記ゲート電極に印加されるゲート電圧によって変わる。
【0017】
一形態によれば、前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極上に配され、前記グラフェン層は、前記ゲート絶縁層上に配され、前記半導体層は、前記グラフェン層上に配されて前記グラフェン層の前記第1面の前記第1部分と接触する。
【0018】
他の形態によれば、前記半導体層は、前記グラフェン層の前記第2面の前記第1部分と接触し、前記グラフェン層は、前記半導体層上に配され、前記第1電極は、前記半導体層上に配され、前記ゲート絶縁層は、前記グラフェン層上に配され、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に配される。
【0019】
前記半導体層の表面に沿って前記グラフェン層と前記第1電極との間を概略1nm〜30nm離隔させるギャップが形成される。
【0020】
前記ゲート絶縁層は、前記グラフェン層と前記第1電極とを離隔させる前記ギャップを満たす。
【0021】
前記半導体層及び前記グラフェン層の前記第2表面の第2部分の間に絶縁層をさらに備え、前記グラフェン層は、前記絶縁層と前記第2電極との間に延びている。
【0022】
前記グラフェン層は、ゲート電圧が前記ゲート電極に印加される時、前記グラフェン層を介して電子または正孔が通過する通路として作用する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子は、半導体バリアであって、電極とグラフェン電流経路との間にエネルギーギャップを形成することでGNRなどの幅の制限を受けないので、グラフェンパターニング過程におけるグラフェンの欠陥を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による半導体バリアを含むチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子を概括的に示す断面図である。
【図2A】図1のグラフェンスイッチング素子の作用を説明するエネルギーバンドダイアグラムである。
【図2B】図1のグラフェンスイッチング素子の作用を説明するエネルギーバンドダイアグラムである。
【図2C】図1のグラフェンスイッチング素子の作用を説明するエネルギーバンドダイアグラムである。
【図2D】図1のグラフェンスイッチング素子の作用を説明するエネルギーバンドダイアグラムである。
【図3】本発明の実施形態によるn型グラフェンスイッチング素子のI−V特性曲線である。
【図4】本発明の実施形態によるp型グラフェンスイッチング素子のI−V特性曲線である。
【図5】本発明の他の実施形態による半導体バリアを含むチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子を概括的に示す断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子を概括的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。この過程で図面に示した層や領域の厚さは、明細書の明確性のために誇張して示している。明細書にわたって実質的に同じ構成要素には同じ参照番号を使用し、詳細な説明は省略する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による半導体バリアを含むチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100を概括的に示す断面図である。
【0027】
図1を参照すれば、基板110上にゲート絶縁層120が形成されている。ゲート絶縁層120上にはグラフェン層130が形成される。グラフェン層130で第1領域上には半導体層140が形成され、半導体層140上には第1電極151が形成される。グラフェン層130で第1領域と離隔している第2領域上には第2電極152が形成される。
【0028】
第1電極151と第2電極152とは、それぞれソース電極及びドレイン電極のうち相異なる一つでありうる。第1電極151及び第2電極152は、金属またはポリシリコンで形成される。
【0029】
基板110はバックゲートとして作用し、不純物でドーピングされた半導体基板または金属で形成される。
【0030】
ゲート絶縁層120は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で形成される。
【0031】
グラフェン層130は、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)で製造されたグラフェンが転写された後、パターニングされて形成される。グラフェン層130は、1層ないし4層のグラフェンからなる。グラフェン層130は、キャリアが移動する通路であり、バンドギャップがゼロまたは30meVでありうる。
【0032】
半導体層140は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体などで形成される。半導体層140の厚さは、キャリアのトンネリングが可能な厚さに形成され、その厚さは物質によって異なるが、概略1nm〜10nm厚さに形成される。半導体層140は、n型不純物またはp型不純物のうちいずれか一つでドーピングされる。半導体層140は、図1に示したように、グラフェン層130を介してゲート電極(バックゲート基板110)と対向するように配される。半導体層140は、ゲート電圧によりエネルギーギャップが調節される。したがって、半導体層140はチューナブルバリアであり、半導体バリアとも称する。
【0033】
チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100は、半導体層140の極性によってn型トランジスタまたはp型トランジスタになるユニポーラトランジスタである。すなわち、半導体層140がn型不純物でドーピングされた場合、チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100はn型トランジスタになり、半導体層140がp型不純物でドーピングされた場合、チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100はp型トランジスタになる。したがって、グラフェン層130は、基板110に印加されたゲート電圧によって静電気的にドーピングされうる。
【0034】
図2Aないし図2Dは、図1のグラフェンスイッチング素子100の作用を説明するエネルギーバンドダイアグラムである。
【0035】
図2A及び図2Bは、n型グラフェンスイッチング素子の作用を説明する図面である。図2Aは、ゲート電圧を印加する前の状態であり、図2Bは、ゲート電圧を印加した状態を示す図面である。
【0036】
図2Aを参照すれば、ゲート電極の基板110にゲート電圧が印加されていない状態で、半導体層140の両側にそれぞれ、グラフェン層130及び第1電極151のそれぞれの仕事関数に対応するエネルギーバンド構造が形成される。グラフェンスイッチング素子はn型半導体層140を含むので、メインキャリアは電子となる。第1電極151とグラフェン層130との間の半導体層140は、これらの間のエネルギー障壁となる。本発明では、半導体層140を半導体バリアとも称する。グラフェン層130と半導体層140との間のエネルギーギャップEgによりキャリアの移動が制限される。図2A及び図2Bで、Eは、グラフェン層130のフェルミエネルギー準位を示す。
【0037】
図2Bを参照すれば、第1電極151及び第2電極152に所定の電圧を印加した状態で、バックゲートである基板110に所定のポジティブゲート電圧+Vgを印加すれば、半導体層140のエネルギーギャップEgが、点線で図示されたように低くなる。したがって、グラフェン層130から、電子が容易に第1電極151に移動する。これは、ゲート電圧によりグラフェンスイッチング素子100に電流が流れることを意味し、したがって、グラフェンスイッチング素子100は電界効果トランジスタの役割を行う。グラフェン層130はキャリア通路になり、伝統的な電界効果トランジスタのチャネルとは区別される。
【0038】
一方、エネルギーギャップEgの減少で、半導体層140のトンネル効果により、電子は半導体層140を通過して移動してもよい。
【0039】
ゲート電圧が増大するにつれて半導体層140のエネルギーギャップEgはさらに低くなる。したがって、半導体層140のエネルギーギャップEgは調節可能である。
【0040】
図3は、本発明の実施形態によるn型グラフェンスイッチング素子のI−V曲線である。
【0041】
図3を参照すれば、ソース−ドレイン電圧がポジティブである時、ゲート電圧の増大につれてエネルギーギャップが低減しつつドレイン電流が矢印A方向に増大する。
【0042】
一方、図2A及び図2Bで、n型半導体層140を含むグラフェンスイッチング素子100の第1電極151にネガティブ電圧を印加すれば、電子がエネルギー障壁なしによく流れるが、ポジティブ電圧を印加すれば、エネルギー障壁により電流がうまく流れない。したがって、グラフェンスイッチング素子100はダイオードの作用をする。この時にもゲート電圧でエネルギー障壁のサイズが調節されるので、電流は矢印B方向に増大してダイオード特性が調節される。
【0043】
図2C及び図2Dは、p型グラフェンスイッチング素子の作用を説明する図面である。図2Cは、ゲート電圧を印加する前の状態であり、図2Dは、ゲート電圧を印加した状態を示す図面である。
【0044】
図2Cを参照すれば、ゲート電極の基板110にゲート電圧が印加されていない状態で、半導体層140の両側にそれぞれ、グラフェン層130及び第1電極151のそれぞれの仕事関数に対応するエネルギーバンド構造が形成される。グラフェンスイッチング素子はp型半導体層140を含むので、メインキャリアは正孔になる。第1電極151とグラフェン層130との間の半導体層140は、これらの間のエネルギー障壁になる。グラフェン層130と半導体層140との間のエネルギーギャップEgによりキャリアの移動が制限される。図2C及び図2Dで、Eは、グラフェン層130のフェルミエネルギー準位を示す。
【0045】
図2Dを参照すれば、第1電極151及び第2電極152に所定の電圧を印加した状態で、バックゲートの基板110に所定のゲートネガティブ電圧−Vgを印加すれば、半導体層140のエネルギーギャップEgが点線で図示されたように小さくなる。したがって、グラフェン層130から、正孔が容易に第1電極151に移動する。これは、ゲート電圧によりグラフェンスイッチング素子100に電流が流れることを意味し、したがって、グラフェンスイッチング素子100は電界効果トランジスタの役割を行う。
【0046】
一方、エネルギーギャップEgの減少で、半導体層140のトンネル効果により、正孔は半導体層140を通過して移動してもよい。
【0047】
ゲート電圧の増大につれて、半導体層140のエネルギーギャップEgはさらに低くなる。したがって、半導体層140のエネルギーギャップEgは調節可能である。
【0048】
図4は、本発明の実施形態によるp型グラフェンスイッチング素子のI−V曲線である。
【0049】
図4を参照すれば、ソース−ドレイン電圧がネガティブである時、ゲート電圧の増大につれてエネルギーギャップが低減しつつドレイン電流が矢印C方向に増大する。
【0050】
一方、図2C及び図2Dで、p型半導体層140を含むグラフェンスイッチング素子100の第1電極151にポジティブ電圧を印加すれば、正孔がエネルギー障壁を超えて流れるが、ネガティブ電圧を印加すれば、エネルギー障壁により正孔がうまく流れない。したがって、グラフェンスイッチング素子100はダイオードの作用を行いうる。この時にも、ゲート電圧の増大でエネルギー障壁のサイズが低く調節されるので、正孔は矢印D方向に増大してダイオード特性が調節される。
【0051】
従来のグラフェンチャネルを使用する電界効果トランジスタは、グラフェン層にバンドギャップを形成するために、グラフェンをパターニングしてGNRチャネルを形成したが、該パターニング過程でグラフェンチャネルは損傷しうる。しかし、本発明によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100は、第1電極151とグラフェン層130との間に半導体バリア140を配することで、第1電極151とグラフェン層130との間にエネルギーギャップを形成でき、グラフェン層130は単にキャリア通路の役割を行うので、グラフェン層130を使用して電界効果トランジスタを具現しつつも、グラフェンの幅に対して実質的に制限されないので、GNRチャネルの形成過程における収率低下を回避できる。
【0052】
図5は、本発明の他の実施形態による半導体バリアを含むチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子200を概括的に示す断面図である。
【0053】
図5を参照すれば、基板210上の第1領域に第1電極251が配され、第1領域と離隔している第2領域に絶縁層220が形成されている。基板210上で第1電極251と離隔しており、第1領域と第2領域との間から延びて絶縁層220上にグラフェン層230が形成される。グラフェン層230と第1電極251との離隔距離dは、約1nm〜30nmの厚さに形成される。そして、第2領域でグラフェン層230を介して、絶縁層220と対向するように第2電極252が形成される。基板210上には、グラフェン層230の一部を覆うゲート絶縁層260が形成されている。ゲート絶縁層260上にはゲート電極270が形成される。
【0054】
第1電極251と第2電極252とはそれぞれ、ソース電極及びドレイン電極のうち相異なる一つでありうる。第1電極251及び第2電極252は、金属またはポリシリコンで形成される。
【0055】
基板210は半導体基板である。半導体基板210は、前述したスイッチング素子100の半導体層140に該当する。半導体基板210は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体などで形成される。半導体基板210は、n型不純物またはp型不純物のうちいずれか一つでドーピングされる。半導体基板210は、図3に示したように、グラフェン層230を介してゲート電極270と対向するように配される。したがって、ゲート電圧により半導体基板210のエネルギーバンドが影響を受ける。
【0056】
ゲート絶縁層260は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で形成される。
【0057】
グラフェン層230は、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)で製造されたグラフェンが転写された後、パターニングされて形成される。グラフェン層230は、1層ないし4層のグラフェンで形成される。グラフェン層230は、キャリアが移動する通路であり、バンドギャップがゼロまたは30meV以下でありうる。
【0058】
グラフェン層230と半導体基板210との接合時、半導体基板210の一部は、半導体基板210上にグラフェン層230を蒸着する前に露出される。半導体基板210上に絶縁層を形成する場合は、接合領域の絶縁層をエッチングして、その下部の半導体基板210を露出させる。そして、半導体基板210の露出された部分に直接グラフェンを蒸着できる。
【0059】
チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子200は、半導体バリアである半導体基板210の極性によって、n型トランジスタまたはp型トランジスタになるユニポーラトランジスタでありうる。すなわち、半導体基板210がn型不純物でドーピングされた場合、チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子200はn型トランジスタになり、半導体基板210がp型不純物でドーピングされた場合、チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子200はp型トランジスタになる。
【0060】
図5の実施形態によるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子200の作用は、図1のチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子100の作用と実質的に同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
一方、半導体基板210を備えるグラフェンスイッチング素子200は、半導体基板210のドーピング極性によって順方向に流れる電圧の極性が定められるので、ダイオードの役割を行うこともできる。この時にも、ゲート電圧の印加でエネルギー障壁のサイズが調節されるので、ダイオード特性が調節される。
【0062】
図6は、本発明のさらに他の実施形態によるグラフェンスイッチング素子200’の概括的な断面図である。
【0063】
図6を参照すれば、グラフェンスイッチング素子200’は、第1電極251’、ゲート絶縁層260’及び絶縁層220’の構造を除き、図5のグラフェンスイッチング素子200と類似している。
【0064】
図6で、絶縁層220’の一部が、第1電極251’と基板210との間にある。絶縁層220’の一部は、ホールHを限定する。第1電極251’は、ホールHを通じて延びて基板210と接触する。第1電極251’に隣接しているゲート絶縁層260’の一部は、第1電極251’と隣接している絶縁層220’の一部上に形成される。第1電極251’、ゲート絶縁層260’及び絶縁層220’の物質は、それぞれ図5の第1電極251、ゲート絶縁層260及び絶縁層220の物質と同一でありうる。
【0065】
以上、図面を参照して説明された本発明の実施形態は例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということを理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は特許請求の範囲のみにより定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、チューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0067】
100 グラフェンスイッチング素子
110 基板
120 ゲート絶縁層
130 グラフェン層
140 半導体層
151 第1電極
152 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックゲート基板と、
前記基板上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のグラフェン層と、
前記グラフェン層の第1領域上に順次に積層された半導体層及び第1電極と、
前記グラフェン層で前記第1領域と離隔している第2領域上の第2電極と、を備え、
前記バックゲート基板と前記半導体層とは、前記グラフェン層を介して対向し、前記半導体層は、n型またはp型にドーピングされたチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子。
【請求項2】
前記半導体層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体を含む請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項3】
前記グラフェン層は、前記第1電極と離隔している請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項4】
前記半導体層は、1nm〜10nmの厚さを持つ請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項5】
前記第1電極及び第2電極は、金属またはポリシリコンからなる請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項6】
前記グラフェンスイッチング素子は、前記半導体層の不純物の極性と同じ極性のユニポーラトランジスタである請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項7】
前記半導体層は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成し、前記バックゲート電極に印加されるゲート電圧によって前記エネルギーギャップが変わる請求項6に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項8】
前記グラフェン層は、1層ないし4層のグラフェンからなる請求項1に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項9】
導電性半導体基板と、
前記基板上で互いに離隔した第1領域及び第2領域にそれぞれ配された第1電極及び絶縁層と、
前記基板上で前記第1電極と前記絶縁層との間から前記絶縁層上に延びているグラフェン層と、
前記第2領域の前記グラフェン層上で前記絶縁層と対向する第2電極と、
前記グラフェン層を覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を備え、
前記基板は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成する半導体層であるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子。
【請求項10】
前記基板は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体を含む請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項11】
前記第1電極は、前記グラフェン層と離隔している請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項12】
前記グラフェン層と前記第1電極との間のギャップは、1nm〜30nmである請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項13】
前記第1電極及び第2電極は、金属またはポリシリコンからなる請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項14】
前記スイッチング素子は、前記基板の不純物の極性と同じ極性のユニポーラトランジスタである請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項15】
前記ゲート電極に印加されるゲート電圧によって前記エネルギーギャップが変わる請求項14に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項16】
前記グラフェン層は、1層ないし4層のグラフェンからなる請求項9に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項17】
第1面と第2面を持つグラフェン層と、
n型不純物またはp型不純物を含み、前記グラフェン層の前記第1面の第1部分または前記グラフェン層の前記第2面の第1部分に接触する半導体層と、
前記半導体層と接触し、前記グラフェン層と離隔している第1電極と、
前記グラフェン層の前記第1面の第2部分と接触する第2電極と、
ゲート電極と、
前記グラフェン層と前記ゲート電極と接触し、前記ゲート電極と前記半導体層との間に配されたゲート絶縁層と、を備えるチューナブルバリアを備えるグラフェンスイッチング素子。
【請求項18】
前記半導体層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、III−V族半導体、II−VI族半導体を含む請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項19】
前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一つは、金属またはポリシリコンからなる請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項20】
前記グラフェン層の少なくとも一部は、1層ないし4層のグラフェンからなる請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項21】
前記スイッチング素子は、前記半導体層の不純物の極性と同じ極性のユニポーラトランジスタである請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項22】
前記半導体層は、前記グラフェン層と前記第1電極との間にエネルギーギャップを形成し、前記エネルギーギャップは、前記ゲート電極に印加されるゲート電圧によって変わる請求項21に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項23】
前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極上に配され、
前記グラフェン層は、前記ゲート絶縁層上に配され、
前記半導体層は、前記グラフェン層上に配されて前記グラフェン層の前記第1面の前記第1部分と接触する請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項24】
前記半導体層の厚さは、1nm〜30nmである請求項23に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項25】
前記半導体層は、前記グラフェン層の前記第2面の前記第1部分と接触し、
前記グラフェン層は、前記半導体層上に配され、
前記第1電極は、前記半導体層上に配され、
前記ゲート絶縁層は、前記グラフェン層上に配され、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に配される請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項26】
前記半導体層の表面に沿って前記グラフェン層と前記第1電極との間を1nm〜30nm離隔させるギャップが形成された請求項25に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項27】
前記ゲート絶縁層は、前記グラフェン層と前記第1電極とを離隔させる前記ギャップを満たす請求項26に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項28】
前記半導体層及び前記グラフェン層の前記第2表面の第2部分の間に絶縁層をさらに備え、
前記グラフェン層は、前記絶縁層と前記第2電極との間に延びている請求項25に記載のグラフェンスイッチング素子。
【請求項29】
前記グラフェン層は、ゲート電圧が前記ゲート電極に印加される時、前記グラフェン層を介して電子または正孔が通過する通路として作用する請求項17に記載のグラフェンスイッチング素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46073(P2013−46073A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183911(P2012−183911)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】