説明

チューブポンプ及び液体噴射装置

【課題】チューブ等のチューブ部の外径等が大幅に細くなった場合でも、インク等の液体
の吸引量等が低下し難いチューブポンプ等を提供すること。
【解決手段】液体を吸引するチューブ部110と、チューブ部を配置するフレーム部12
0と、チューブ部に対して当接すると共に、チューブ部に沿って移動する移動当接部13
0と、移動当接部を移動させる駆動源であるモータ部21と、を有し、フレーム部に配置
されているチューブ部の長さを変更するためのチューブ長さ変更部152が形成されてい
るチューブポンプ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸引等するためのチューブポンプ及び液体噴射装置に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット式記録装置は、記録用紙等にインクを吐出するためのインク
ジェット式記録ヘッドを有している。このインクジェット式記録ヘッドは、ノズルを介し
てインクを記録用紙等に吐出するため、ノズル近傍においてインクが増粘したり、ノズル
内に気泡が混入したりして、インクの吐出が良好に行えなくなるおそれがあった。
このため、インクジェット式記録装置には、これらの現象を回避するためヘッドクリー
ニング装置が備えられている。
【0003】
ヘッドクリーニング装置は、ノズルを覆うように配置されるキャッピング部と、このキ
ャッピング部内を負圧にするためのポンプを有し、ノズル近傍等のインクをポンプで吸引
することで、クリーニングする構成となっている。
ポンプとしては、比較的構造が簡単で、且つ小型化が図り易いチューブポンプが用いら
れている(例えば、特許文献1)。
特許文献1のチューブポンプ12は、同文献の図2等に示すように、ローラ26a、2
6bがポンプホイル23のチューブ支持面22に向かって可撓性チューブ21を押し潰す
ように押圧する構成となっている。そして、このように押し潰すことで、チューブポンプ
12は、可撓性チューブ21を減圧(負圧状態)してインクを吸引する構成となっている

【0004】
このようにチューブポンプ12は、チューブ21の側面をローラ26a等によって順次
押し潰す作用を繰り返し受けるため、チューブポンプ12の累積回転数に応じてチューブ
21の側面が徐々に削れるなどして損傷を受けることになる。これではチューブ21の外
径が実質的に細くなりポンプ効率を低下させるという問題を起こしていた。
そこで、特許文献1では、吸引ポンプの回転駆動量を補正する駆動補正手段等を用いて
チューブポンプの吸引量が一定になるように補正している。
【特許文献1】特開2003−39709号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような吸引ポンプの補正は、チューブ21の外径が僅かに細くな
った場合は有効であるが、チューブ21の外径が大幅に細くなった場合は、吸引ポンプの
回転駆動量を補正しても、補正できない程、チューブポンプ21のインクの吸引量等が低
下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、チューブ等のチューブ部の外径等が大幅に細くなった場合でも、イ
ンク等の液体の吸引量等が低下し難いチューブポンプ及び液体噴射装置を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、液体を吸引するチューブ部と、前記チューブ部を配置す
るフレーム部と、前記チューブ部に対して当接すると共に、前記チューブ部に沿って移動
する移動当接部と、前記移動当接部を移動させる駆動源であるモータ部と、を有し、前記
フレーム部に配置されている前記チューブ部の長さを変更するためのチューブ長さ変更部
が形成されていることを特徴とするチューブポンプにより達成される。
【0008】
前記構成によれば、フレーム部に配置されているチューブ部の長さを変更するためのチ
ューブ長さ変更部が形成されている。このため、移動当接部によってチューブ部の側面等
が徐々に削れ、チューブ部が細くなっても、チューブ長さ変更部がチューブ部の長さを短
くすることで、常に、移動当接部がチューブ部を適切に押し潰すことができ、チューブポ
ンプの液体の吸引量を適正な範囲内に維持させることができる。したがって、信頼性の高
いチューブポンプとなる。
【0009】
好ましくは、前記チューブ長さ変更部には、チューブ長さの変更基準となるチューブ長
さ変更基準部が形成されていることを特徴とするチューブポンプである。
【0010】
前記構成によれば、チューブ長さ変更部には、チューブ長さの変更基準となるチューブ
長さ変更基準部が形成されている。このため、この変更基準部を目安にチューブ部の長さ
を変更することで、チューブ部の長さを異常に短くする等の弊害の発生を未然に防ぐこと
ができる。
【0011】
前記課題は、本発明によれば、液体をターゲットに噴射する液体噴射ヘッドと、前記タ
ーゲットを前記液体噴射ヘッドに対して配置させるためのターゲット搬送部と、前記液体
噴射ヘッドのクリーニングをするために用いられるチューブポンプと、を有する液体噴射
装置であって、前記チューブポンプは、前記液体を吸引するチューブ部と、前記チューブ
部を配置するフレーム部と、前記チューブ部に対して当接すると共に、前記チューブ部に
沿って移動する移動当接部と、を有し、前記移動当接部を移動させるモータ部が、前記タ
ーゲット搬送部も駆動させ、前記ターゲット搬送部が、前記ターゲットをターゲット排出
側へ搬送する方向に移動した際に、前記移動当接部が前記チューブポンプにおいて液体を
吸引する方向に移動する構成となっており、前記チューブポンプの前記フレーム部に配置
されている前記チューブ部の長さを変更するためのチューブ長さ変更部が形成されている
ことを特徴とする液体噴射装置により達成される。
【0012】
前記構成によれば、移動当接部を移動させるモータ部が、ターゲット搬送部も駆動させ
、モータ部がターゲットをターゲット排出側へ搬送する方向に移動した際に、移動当接部
がチューブポンプにおいて液体を吸引する方向に移動する構成となっている。
このため、液体噴射ヘッドがターゲットに対して液体を噴射し印字等をする場合、すなわ
ち、ターゲットがターゲット排出側へ搬送されるときは、移動当接部はチューブポンプで
液体を吸引する方向に移動することになる。
これは、換言すれば、ターゲットに印字等している間は、移動当接部はチューブ部を押
し潰しながら移動し、液体を吸引状態となっていることを意味する。
【0013】
これでは、チューブポンプに負荷がかかりすぎて、チューブポンプに不具合が発生し易
い状態となってしまう。このため、従来では、モータ部の一方向の回転で、ターゲット搬
送部が、ターゲットをターゲット排出側へ搬送する方向に移動する場合は、そのモータ部
の同一の回転では、移動当接部がチューブポンプにおいて液体を吸引しない方向に移動す
る構成としている。
これにより、ターゲットへの印字等の際におけるチューブポンプの液体の吸引が回避で
き、チューブポンプの不具合の発生を未然に防止していた。
【0014】
しかし、このように構成すると、チューブポンプがクリーニングの全ての動作を完了し
なければ、液体噴射ヘッドは印字等の動作を行うことができず、印字等の効率が悪いとい
う問題があった。
この点、前記構成では、チューブポンプには、フレーム部に配置されているチューブ部
の長さを変更するためのチューブ長さ変更部が形成されている。
これにより、液体噴射ヘッドがターゲットに印字等をする場合は、チューブ長さ変更部
がチューブ部の長さを長くし、移動当接部がチューブ部を押し潰さない状態とすることが
できる。
すると、移動当接部がターゲット搬送部の移動と同期して、チューブ部に沿って移動し
ても液体を吸引しないこととなり、移動当接部による無用な液体の吸引を回避し、チュー
ブポンプに負荷がかかりすぎるのを未然に防ぐができる。
一方、ターゲット搬送部が印字等の状態で移動している場合で、移動当接部で液体を吸
引したいときは、チューブ長さ変更部を動作させ、フレーム部内のチューブ部を短くし、
移動当接部がチューブ部を押し潰す状態に変更すればよいこととなる。
【0015】
このように、液体噴射ヘッドによる印字等とチューブポンプによるインク吸引を並列に
も行うことができるので、効率良く印字等を行うことができる液体噴射装置となる。
また、チューブポンプによる液体の吸引動作は、上述のように、チューブ長さ変更部の
操作で任意に停止させることができるので、チューブポンプに無用な負荷が加わらず、信
頼性の高い液体噴射装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい
種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定す
る旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明のチューブポンプを有する液体噴射装置の第1の実施の形態にかかるイ
ンクジェット式記録装置(以下「記録装置」という)10を示す概略斜視図である。
図1に示すように、記録装置10は、フレーム11を有し、フレーム11にはプラテン
12が配置されている。このプラテン12上には、ターゲットである例えば、用紙Pが、
紙送りローラ18により給送される構成となっている。
また、記録装置10は、キャリッジ13を有し、キャリッジ13は、ガイド部材14を
介してプラテン12の長手方向へ移動可能に支持され、キャリッジモータ15によりタイ
ミングベルト16を介して往復運動される構成となっている。
【0018】
キャリッジ13には、その下部に、インクジェット式記録ヘッド(以下「記録ヘッド」
という)20を搭載している。記録ヘッド20は、用紙Pに対して液体である例えば、イ
ンクを噴射する構成となっている。
具体的には、記録ヘッド20は、インクを吐出するノズルを有し、圧電振動子の伸縮等
によりノズルからインク滴が吐出される構成となっている。
このように、図1の紙送りローラ18は、用紙Pを記録ヘッド20に対して配置させる
ためのターゲット搬送部の一例となっている。
また、記録装置10には、この紙送りローラ18を駆動するためのモータ部である例え
ばモータ21を有している。
【0019】
また、キャリッジ13上には、インクを収容するインクカートリッジ17が着脱可能に
搭載され、インクカートリッジ17から記録ヘッド20へインクが供給される構成となっ
ている。
すなわち、キャリッジ13がプラテン12に沿って移動しながら、印刷データに基づい
て、圧電振動子が伸縮されることで、記録ヘッド20から用紙Pにインクが吐出されて、
印刷が行われる構成となっている。
【0020】
また、図1のフレーム11には、用紙Pが配置され、用紙Pに対して印字が行われる印
刷領域Tを有している。また、フレーム11は、その一端側に非印刷領域であるホームポ
ジションHを有している。
そして、キャリッジ13は、プラテン12に沿って移動することで、印刷領域Tとホー
ムポジションHとの間を移動可能な構成となっている。
【0021】
ホームポジションHには、図1に示すように、ヘッドクリーニング機構30が配置され
ている。ヘッドクリーニング機構30には、キャップホルダ34とチューブポンプ100
を有している。キャップホルダ34は、図示しない公知の昇降手段により上下動可能にフ
レーム11に設置されている。
【0022】
また、ヘッドクリーニング機構30は、キャップ32を有している。キャップ32は、
その上端縁が記録ヘッド20のノズルプレート等に当接して、記録ヘッド20のノズルを
封止することが可能な構成となっている。
【0023】
ところで、図1に示すように、記録装置10には、ブレード19が備わっている。この
ブレード19は、記録ヘッド20のノズルプレートに当接し、インクを拭き取ることでワ
イピング動作を行う構成となっている。
【0024】
図2は、図1のヘッドクリーニング機構30等を示す概略図である。
キャップ32には、その底部に図2に示すように、シート状のスポンジ32aが配置さ
れている。このスポンジ32aは、キャップ32が記録ヘッド20に当接した状態で、記
録ヘッド20のノズルと所定間隔をおいて対向し、記録ヘッド20のノズルから吐出され
るインクを吸収する構成となっている。
【0025】
さらに、図2に示すように、キャップ32には、その底面を貫通するように排出口32
bが形成されている。
チューブポンプ100は、キャップ32が記録ヘッド20のノズルを封止した状態で、
キャップ32内を減圧し、負圧にし、記録ヘッド20のノズルからインクを吸引し、フレ
ーム11内に設けられている廃インクタンク33にインクを排出する構成となっている。
【0026】
図3は、チューブポンプ100の主な構成を示す概略図である。図3に示すように、チ
ューブポンプ100には、モータ21が接続されている。
また、チューブポンプ100には、インクを吸引するチューブ部である例えば、チュー
ブ110を有している。
チューブ110は、図3に示すように、ゴムや樹脂等で一体的に形成され、単一の長尺
状となっている。
また、チューブ110の両端側には、それぞれインクを図2のキャップ32と接続され
ているキャップ側開口111と、図2の廃インクタンク33に接続されている廃インクタ
ンク側開口112とが形成されている。
また、図3に示すように、チューブポンプ100は、チューブ110を円形に配置する
ためのフレーム部である例えば、フレーム120を有している。
また、チューブ110の内側には、チューブ110に沿って回動するポンプホイル14
0が形成されている。ポンプホイル140は、モータ21により、図3の矢印L方向又は
矢印R方向に回動するように構成されている。
【0027】
また、チューブポンプ100は、図3に示すように、チューブ110に対して押し潰す
ように当接すると共に、チューブ110に沿って移動する移動当接部である例えば、ロー
ラ130が配置されている。ローラ130は、ローラ軸131を中心に回動可能に配置さ
れている。
以下、ローラ130の移動について説明する。図3のポンプホイル140には、チュー
ブ110を押し潰す方向にローラ130を配置させるための吸引部141aと、チューブ
110から離間する方向にローラ130を配置させるためのレリース部141bとを有し
ている。
また、ポンプホイル140は、この吸引部141aとレリース部141bとを連結する
連結部141cを有している。
そして、これら吸引部141a、レリース部141b及び連結部141cにより貫通孔
であるローラ軸溝141が形成されている。
すなわち、図3のローラ130は、ローラ軸131を介してローラ軸溝141内を移動
可能な構成となっている。
【0028】
ローラ130の動きを、例えば、ローラ130が図3のレリース部141bに配置され
た場合を例に以下、説明する。
ローラ130がレリース部141bに配置されたときは、ローラ130がチューブ11
0を押し潰さない状態であるため、ローラ130がポンプホイル140と共にチューブ1
10に沿って、矢印L方向に移動しても、適度な負圧が発生せず、インクを吸引すること
はない。
具体的には、ローラ軸131は、図3に示すようにローラ軸溝141のレリース部14
1bである端部に配置されているので、ポンプホイル140の回転で、ローラ軸溝141
が矢印L方向に移動しても、ローラ軸131は、依然としてレリース部141bの端部に
押し付けられる状態となるからである。
【0029】
しかし、ポンプホイル140が逆回転し、ローラ軸溝141が、矢印R方向に移動する
と、ローラ軸131は、レリース部141bの端部側に押し付けられる状態から開放され
る。
また、ローラ130は、チューブ110に当接している。このため、ローラ軸溝141
が、図3の矢印R方向に移動しても、ローラ130は、チューブ110との摩擦力によっ
て移動せず、その場に止まる。
したがって、ローラ130は、ローラ軸溝141の矢印R方向の移動によって、相対的
に、連結部141c内を吸引部141a側へ移動し、吸引部141aに達する。
吸引部141aに達したローラ130のローラ軸131は、吸引部141aの端部側に押
し付けられて、ローラ軸溝141と共に矢印R方向に移動を開始する。
このとき、吸引部141aに配置されたローラ130は、チューブ110を押し潰す状
態となっているので、チューブ110に適度の負圧を発生させながら、インクをキャップ
側開口111から廃インクタンク側開口112に導くことになる。以上のようにして、イ
ンクはキャップ32から廃インクタンク33に導かれる。
このようにモータ21は、ローラ130を移動させる駆動源となっている。
【0030】
インクの吸引が終了すると、ポンプホイル140は、逆回転、すなわち矢印L方向に回
転する。すると、ローラ軸溝141も矢印L方向に移動する。しかし、ローラ130はチ
ューブ110との摩擦力で、上述のようにその場に止まり、ローラ130はレリース部1
41bに配置され、チューブポンプ100はインクの非吸引状態となる。
【0031】
このように、チューブポンプ100は、ローラ130をチューブ110との摩擦力を利
用して吸引部141aとレリース部141bとの間で移動させ、インクの吸引状態又は非
吸引状態に切り替えている。
【0032】
以上のように、チューブポンプ110がインクを吸引する際は、チューブ110を押し
潰すように、ローラ110を配置することが必要である。
しかし、チューブ110は押し潰されるため、チューブポンプ110の累積回転数に応
じてチューブ110の表面が削られチューブ110の外径が細くなる場合がある。
チューブポンプ100において、ローラ130とチューブ110との距離は図3に示すよ
うにチューブ110の交差部Cで大となる構成となっている。
したがって、チューブ130の外径が細くなると、図3に示すように、交差部Cではロ
ーラ130がチューブ110を押し潰すことができず、インクの吸引不良が発生する場合
がある。
【0033】
そこで、本実施の形態では、図3に示すように、フレーム120に配置されているチュ
ーブ110の長さを変更するためのチューブ長さ変更部152を有している。
チューブ長さ変更部152は、本実施の形態では、廃インクタンク側開口112近傍に
あるが、逆にキャップ側開口111に設けても良いし、あるいは、両方に設けても良い。
チューブ長さ変更部152は、チューブ110に設けられたホルダチューブ151と、こ
のホルダチューブ151を移動させるためのラックピニオン機構150を有している。ラ
ックピニオン機構150は、ピニオン150aとラック150bを有している。
すなわち、このラックピニオン機構150を動作させ、ホルダチューブ151を図3の
矢印B方向に移動させることで、フレーム120に配置されているチューブ110の長さ
を短くすることができる構成となっている。
すなわち、ラックピニオン機構150を動作させ、ホルダチューブ151を介して、フ
レーム120内のチューブ110を短くすることで、交差部Cおけるローラ130とチュ
ーブ110との距離が近づき、ローラ130がチューブ110を適切に押し潰すことがで
きる構成となっている。
これにより、チューブポンプ100のインクの吸引量を適正な範囲内に維持させること
ができ、チューブポンプ100の信頼性を向上させることができる構成となっている。
【0034】
また、図3のラックピニオン機構150には、チューブ長さの変更基準となるチューブ
長さ変更基準部である例えば、ホルダチューブ当接面153が形成されている。
このホルダチューブ当接面153は、フレーム120内のチューブ110とローラ13
0との距離が適切となる目安として機能する。すなわち、ホルダチューブ151を矢印B
方向に移動させる移動量の目安となっている。
このため、ホルダチューブ151がホルダチューブ当接面153に当接するまで、ラッ
クピニオン機構150で、ホルダチューブ151を移動させることで、ローラ130とチ
ューブ110との距離を適切に保つことができる。すなわち、フレーム120内のチュー
ブ110の長さを異常に短くしたため、ローラ130がチューブ110を押し潰し過ぎる
等の弊害の発生を未然に防ぐことができる構成となっている。
【0035】
本実施の形態に係る記録装置10は以上のように構成されているが、以下、その動作等
について説明する。
図4は、本実施の形態に係る記録装置10の主な動作等を示す概略フローチャートであ
る。
先ず、図4のST1に示すように、記録装置10の利用者がクリーニング機構30の動
作を指示する(例えば、クリーニングスイッチを押す)と、ST2で、記録装置10は、
クリーニングカウンタが所定回以上であるか否かを判断する。
ここで、1回のクリーニング動作には、図2のキャップ32が記録ヘッド20に当接し
、チューブポンプ100でインクを吸引を行い、その後、キャップ32内に残存している
インクをチューブポンプ100で吸引(空吸引)を行う動作が含まれる。
そして、かかるクリーニング動作が終了すると、記録装置10に配置されているクリー
ニングカウンタがクリーニング回数を加算する構成となっている。
そして、ST2では、このようにクリーニング回数が加算されたクリーニングカウンタ
のクリーニング回数が所定回、例えば、500回以上であるか否かを判断する。
【0036】
すなわち、クリーニング動作が行われると、図3のローラ130がチューブ110を押
し潰しながらチューブ110に沿って移動するため、ローラ130によってチューブ11
0の表面が削られチューブ110の外径が細くなることがある。このとき、図3の交差部
Cでは、図3に示すようにローラ130がチューブ110を充分に押し潰せないことで、
チューブポンプ100が吸引不良を起こすことになる。
そこで、本実施の形態では、チューブ110が削られ細くなっているか否かの基準とし
て、クリーニング回数を用い、クリーニング回数が所定回以上の場合は、チューブ110
が削られ細くなっていると判断することとしている。
【0037】
したがって、クリーニング回数が所定回以上の場合は、図4のST3のように、ホルダ
チューブ151をホルダチューブ当接面153まで移動させる。
具体的には、図3のラックピニオン機構150を動作させ、ホルダチューブ151を矢
印B方向に移動させる。するとフレーム120内のチューブ110の長さが短くなり、チ
ューブ110の円環の径が小さくなる。このため、チューブ110の図3に示す交差部C
においてローラ130とチューブ110の距離が適切な範囲内となるので、ローラ130
がチューブ110を十分に押し潰すことができ、チューブポンプ100のインクの吸引不
良が発生しない状態となる。
【0038】
その後、図4のST4で、上述したクリーニング動作を行うことで、吸引不良が発生し
ないクリーニングが実行されることになる。
そして、クリーニング動作が終了すると、ST5のように、クリーニングカウンタにク
リーニング回数を1加えることとなる。
【0039】
(第1の実施の形態の変形例)
本変形例にかかる記録装置の多くの構成は、上述の第1の実施の形態にかかる記録装置
10と共通するため、共通する構成は同一符号等して説明を省略し、以下相違点を説明す
る。
本実施の形態では、第1の実施の形態の図3のホルダ当接面153の代わりにセンサが
配置されている。センサは例えば、メカ接点センサである。
すなわち、本実施の形態では、図3のホルダチューブ当接面153をセンサが果たすこ
とになる。具体的には、ホルダチューブ151が矢印B方向に移動し、所定位置まで達す
ると、センサがその位置を検知し、記録装置がラックピニオン機構150の動作を停止さ
せる構成となっている。
【0040】
図5は、本変形例に係る記録装置の主な動作等を示す概略フローチャートである。図5
のST11、ST12、ST15及びST16は、図4のST1、ST2、ST4及びS
T5と同様であるため、その説明を省略する。
ST13で、図3のラックピニオン機構150がホルダチューブ151を図3の矢印B
方向に移動させる。
そして、ST14でセンサがホルダチューブ151を検出したか否かを判断し、検出し
た場合は、記録装置10はラックピニオン機構150を停止させ、ST15のクリーニン
グ動作を行う。
したがって、本変形例では、ホルダチューブ151の位置をより正確に制御でき、チュ
ーブ110の矢印B方向への移動し過ぎ等を未然に精度良く防止することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
本実施の形態に係る記録装置の多くの構成は上述の第1の実施の形態の記録装置と同様
であるため同一の構成は同一符号等として説明を省略し、以下相違点を中心に説明する。
本実施の形態では、図1及び図3のモータ21は、チューブポンプ100を駆動すると
共に、図1の紙送りローラ18も駆動する構成となっている。
また、図1のモータ21が一方向に回転し、用紙Pがターゲット排出側へ搬送される方
向に紙送りローラ18が回転させられると、同時に図3のチューブポンプ100のローラ
130がインクの吸引方向(図3の矢印R方向)移動する構成となっている。
【0042】
このような構成は、従来、以下のような問題があるとされていた。つまり、図1の記録
ヘッド20が用紙Pに対してインクを噴射して印字等を行う場合、換言すれば、用紙Pが
ターゲット排出側へ搬送されるときは、図3のローラ130は、チューブポンプ100に
おいて、インクの吸引方向(矢印R方向)に移動する構成となっている。
これは、用紙Pに印字等している間は、ローラ130はチューブ110を押し潰しなが
ら矢印R方向に移動し、インクを吸引している状態となることを意味する。
【0043】
これでは、チューブポンプ100に負荷がかかりすぎて、チューブポンプ100に不具
合が発生し易い状態となってしまう。
このため、従来は、モータの一方向の回転で、紙送り搬送ローラが、用紙を記録ヘッド
側へ搬送する方向に回転する場合は、そのモータの同一回転で、チューブポンプのローラ
がインクを吸引しない方向(例えば、図3の矢印L方向)に移動する構成としている。こ
れにより、用紙への印字等の間において、チューブポンプがインクの吸引が回避でき、チ
ューブポンプの不具合の発生を未然に防止していた。
【0044】
しかし、従来のように構成すると、チューブポンプがクリーニングのすべての動作を完
了しなければ、記録ヘッドは印字等の動作を行うことができず、印字等の効率等が悪いと
いう問題があった。
具体的には、クリーニング動作の際、最後にキャップ32の空吸引を行う。これは、キ
ャップ32が既に記録ヘッド20から離れた後、キャップ32内のインクをチューブポン
プ100が吸引する動作である。
この空吸引はキャップ32内のインクの吸引であり、記録ヘッド20のインクの吸引で
はないので、空吸引のときは、同時に記録ヘッド20が用紙Pに印字等することが望まし
い。
しかし、従来は、空吸引でチューブポンプが回転しているときは、紙送りローラが用紙
を記録ヘッド側へ搬送できないという問題があり、チューブポンプが空吸引すると共に記
録ヘッドが用紙に印字等をすることはできず、印字等の効率等が悪くなっていた。
【0045】
そこで、本実施の形態では、図3に示すチューブ長さ変更部152によってかかる問題
を解決している。
すなわち、図3のラックピニオン機構150を動作させ、ホルダチューブ151を介し
て、チューブ110をF方向に移動させると、フレーム120内のチューブ110の長さ
が長くなり、チューブ110の円環の径が大きくなりローラ130とチューブ110との
距離が長くなる。
このとき、ローラ130はチューブ110を十分に押し潰さないため、チューブポンプ
100に負荷がかかりすぎることを防止することができる。
一方、図3のラックピニオン機構150を動作させ、ホルダチューブ110を図3のB
方向に移動させると、フレーム120内のチューブ110の長さが短くなり、ローラ13
0とチューブ110との距離が短くなる。このため、チューブポンプ100はインクを吸
引することができる。
【0046】
図6は、本実施の形態にかかる記録装置の主な動作を示す概略フローチャートである。
先ず、図6のST21に示すように、印刷中に記録装置の利用者からクリーニング動作
が指示される。このとき、モータ21は図1の紙送りローラ18は、用紙Pをターゲット
排出側へ搬送する方向に回転している。
したがって、図3のチューブポンプ100のローラ130はインクの吸引方向(図3の
矢印R方向)に移動している。しかし、このとき、フレーム120内のチューブ110は
、ラックピニオン機構151で矢印F方向に移動され、ローラ130とチューブ110と
の距離が長くなるように構成されている。
このため、チューブポンプ100はインクを吸引せず、ローラ130が強くチューブ1
10を押し潰さないので、チューブポンプ100に負荷がかかりすぎることを防止するこ
とができる。
【0047】
次に、ST22ではST21の指示に基づき、記録ヘッド20を図1の印字領域Tから
ホームポジションHへ移動させるため、記録装置が印刷動作を中断する。
次に、記録装置は、図3のラックピニオン機構150を動作させ、チューブ110を矢
印B方向に移動させる。具体的には、ホルダチューブ151がホルダチューブ当接面15
3に当接するまで移動させる。
すると、図3のローラ130とチューブ110との距離が近づき、ローラ130が矢印
R方向に移動することで、インクの吸引動作が行われる(ST24)。
【0048】
次に、インクの吸引動作が終了し、図1のキャップ32が記録ヘッド20から離間する
と、キャリッジ13と共に、記録ヘッド20はホームポジションHから印字領域Tへ移動
を開始し、その際、図1のブレード19でワイピングされる(ST25)。
次に、印字領域Tに戻った記録ヘッド20に対して、紙送りローラ18が回転して用紙
Pを供給し、印刷が再開される(ST26)。
このとき、図3のチューブポンプ100では、ローラ130が矢印R方向であるインク
の吸引方向に移動するので、チューブポンプ100はキャップ32内に残存しているイン
クを吸引する空吸引を行う(ST27)。
したがって、従来のように、チューブポンプが空吸引を終了するまで、紙送りローラが
用紙を記録ヘッド側へ搬送できないという事態の発生を回避できるので、効率良く印字等
を行うことができる。
【0049】
また、記録装置は、チューブポンプ100の空吸引が終了すると、ラックピニオン15
0を動作させ、チューブ110を矢印F方向に移動させ、ローラ130とチューブ110
との距離を長くする。すなわち、ホルダチューブ151をホルダチューブ当接面153か
ら離間させる(ST28)。
これにより、たとえローラ130が吸引方向(矢印R方向)に移動していても、チュー
ブポンプ100は、インクを吸引することなく、且つチューブポンプ100に無用な負荷
がかかることがないので、チューブポンプ100に不具合が発生し難い記録装置となる。
また、これにより信頼性の高い記録装置となる。
【0050】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。また、本発明は、インクジェット式記録
装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等
のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(
面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に
用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装
置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施の形態にかかるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1のヘッドクリーニング機構等を示す概略図である。
【図3】チューブポンプの主な構成を示す概略図である。
【図4】第1の実施の形態に係る記録装置の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図5】第1の実施の形態の変形例に係る記録装置の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図6】第2の実施の形態にかかる記録装置の主な動作を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
10・・・インクジェット式記録装置、11・・・フレーム、12・・・プラテン、13
・・・キャリッジ、18・・・紙送りローラ、20・・・インクジェット式記録ヘッド、
21・・・モータ、30・・・ヘッドクリーニング機構、100・・・チューブポンプ、
110・・・チューブ、120・・・フレーム、130・・・ローラ、131・・・ロー
ラ軸、140・・・ポンプホイル、150・・・ラックピニオン機構、150a・・・ピ
ニオン、150b・・・ラック、151・・・ホルダチューブ、152・・・チューブ長
さ変更部、153・・・ホルダチューブ当接面、C・・・交差部、P・・・用紙、T・・
・印字領域、H・・・ホームポジション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸引するチューブ部と、
前記チューブ部を配置するフレーム部と、
前記チューブ部に対して当接すると共に、前記チューブ部に沿って移動する移動当接部
と、
前記移動当接部を移動させる駆動源であるモータ部と、を有し、
前記フレーム部に配置されている前記チューブ部の長さを変更するためのチューブ長さ
変更部が形成されていることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記チューブ長さ変更部には、チューブ長さの変更基準となるチューブ長さ変更基準部
が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブポンプ。
【請求項3】
液体をターゲットに噴射する液体噴射ヘッドと、
前記ターゲットを前記液体噴射ヘッドに対して配置させるためのターゲット搬送部と、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングをするために用いられるチューブポンプと、を有す
る液体噴射装置であって、
前記チューブポンプは、
前記液体を吸引するチューブ部と、
前記チューブ部を配置するフレーム部と、
前記チューブ部に対して当接すると共に、前記チューブ部に沿って移動する移動当接部
と、を有し、
前記移動当接部を移動させるモータ部が、前記ターゲット搬送部も駆動させ、
前記ターゲット搬送部が、前記ターゲットをターゲット排出側へ搬送した際に、前記移
動当接部が液体を吸引する方向に移動する構成となっており、
前記チューブポンプの前記フレーム部に配置されている前記チューブ部の長さを変更す
るためのチューブ長さ変更部が形成されていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−262899(P2007−262899A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84938(P2006−84938)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】