説明

テスト回路を内蔵した集積回路

【課題】集積回路の動作を検証するために、波形測定装置のような高価で扱いが難しい測定装置を用いて端子の波形を測定していたので、測定装置の操作に不慣れな検証者には扱い難かった。本発明は、単体で簡単に動作検証ができる集積回路を提供することを目的にする。
【解決手段】マッピング制御回路を用いて既存の内蔵メモリの一部をテストデータ格納領域として確保し、サンプリング制御回路でサンプリングしたテストデータをテストデータ格納領域に格納する。また、テスト終了後にこの領域を開放するようにする。集積回路単体で動作検証でき、またテスト専用メモリが不要なので、チップサイズが増加しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、I/O端子等の電圧をサンプリングして保存する回路を内蔵することにより、単体で内部回路のテストを行うことができるテスト回路を内蔵した集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組み込み用機器で用いられるマイクロプロセッサは、内蔵されているROM等に格納されたプログラムに基づいて動作する。このマイクロプロセッサが意図した動作をするかどうかの単体検証を行うために、マイクロプロセッサの入出力端子の波形を観測し、正常に動作しているかどうかを確認する。
【0003】
図4に、マイクロプロセッサのような集積回路の動作を検証する動作検証装置の構成を示す。図4において、10はマイクロプロセッサ等の集積回路であり、11a〜11dの入出力端子を具備している。なお、集積回路10は多数の入出力端子を具備しているが、図4では4つのみ記載している。
【0004】
入出力端子11a〜11dの電圧はそれぞれプローブ12a〜12dを介して波形測定装置13に入力され、測定される。波形測定装置13が測定する電圧と意図した電圧を比較することにより、集積回路10の動作を検証することができる。
【0005】
特許文献1には、簡単な構成で半導体集積回路内部の複数のデジタル信号をモニタすることができるテストセレクト回路が記載されている。以下、図5を用いてこの発明の概要を説明する。
【0006】
図5において、制御回路20には制御信号Scntが入力される。制御回路20は、制御信号Scntに基づいて制御データDcntを生成し、この制御データDcntを選択レジスタ21に出力する。選択レジスタ21は複数のフリップフロップで構成され、入力された制御データDcntを保持すると共に、選択信号Sselとして選択回路22に出力する。
【0007】
選択回路22には選択信号Sselおよび複数のデジタル信号SIG1〜SIGnが入力される。選択回路22は、選択信号Sselに基づいてデジタル信号SIG1〜SIGnのうち1つを選択し、SigOutとして外部に出力する。制御信号Scntを操作することによって所望のデジタル信号を選択することができるので、テストのための出力端子数、すなわち検査用パッドの数を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−303859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4の動作検証装置および図5のテストセレクト回路には次のような課題があった。
【0010】
図4の動作検証装置は、検証する度に集積回路10の入出力端子11a〜11dにプローブ12a〜12dを接続し、このプローブ12a〜12dを波形測定装置13に接続してその電圧を測定しなければならず、装置のセッティングおよび測定が面倒であるという課題があった。特に、動作検証する担当者がプローブの接続や波形測定装置のセッティングに不慣れな場合は、検証を実施することができないという課題もあった。
【0011】
また、測定する信号がデジタル信号の場合は高レベルか低レベルかを判定するだけでよく、高精度な電圧測定は必要ないが、その場合でも高価で扱いが難しい波形測定装置を用いなければならないという課題もあった。
【0012】
図5のテストセレクト回路は、同時に2つ以上の信号を測定することができないので、2つ以上の信号の相互関係(タイミング等)を検証することができないという課題があった。
【0013】
本発明の目的は、構成が簡単であり、かつロジックアナライザやオシロスコープなどの波形測定装置を必要としない、テスト回路を内蔵した集積回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
メモリを内蔵した集積回路において、
前記メモリのマッピングを変更し、テストを行うときにテストデータを格納するテストデータ格納領域を前記メモリに確保し、テストを行わないときに前記テストデータ格納領域を開放するマッピング制御回路と、
テストを行う点の電圧が入力され、この電圧をサンプリングして、このサンプリングしたデータを前記テストデータ格納領域に格納するサンプリング制御回路と、
を備えたものである。電圧測定装置を用いなくても、集積回路の動作を検証できる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記サンプリング制御回路は、サンプリングした電圧を2値データに変換して、前記テストデータ格納領域に格納するようにしたものである。簡単に動作を検証できる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1若しくは請求項2に記載の発明において、
前記集積回路は、プロセッサを内蔵したものである。内蔵メモリを保有していることが多いマイクロプロセッサに用いて好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、および3の発明によれば、テストを行うときにマッピング制御回路を用いてメモリ中にテストデータ格納領域を確保し、サンプリング制御回路でサンプリングしたテストデータをこのテストデータ格納領域に格納するようにした。また、テストが終了するとテストデータ格納領域を開放するようにした。
【0018】
波形測定装置のような高価で扱いが難しい測定装置を用いなくても、測定点の波形を観測することができるので、単体で集積回路の動作を検証できるという効果がある。
【0019】
また、同時に複数の測定点の波形を観測することができるので、容易に波形相互間の比較を行うことができるという効果もある。
【0020】
また、テスト時に既存の内蔵メモリの一部をテストデータ格納領域として用いるようにしたので、テストデータ格納用のメモリを必要としない。このため、集積回路のチップサイズの増加を抑えることができるという効果もある。
【0021】
また、テスト終了後にテストデータ格納領域を開放するようにしたので、集積回路の通常の動作を妨げることがないという効果もある。
【0022】
さらに、マイクロプロセッサを内蔵することにより、テストデータ格納領域に格納されたテストデータを簡単に読み出すことができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】内部メモリのマッピングを示した図である。
【図3】サンプリングしたデータおよびその波形を示した図である。
【図4】従来の動作検証装置の構成図である。
【図5】従来のテストセレクト回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るテスト回路を内蔵した集積回路の一実施例を示した構成図である。なお、図4と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0025】
図1において、30は内部メモリ、31はこの内部メモリ30を制御する内部メモリ制御回路である。内部メモリ30には内部メモリ制御回路31からアドレス(AD)、ライトイネーブル信号(WE)、書き込みデータ(WDA)が供給される。また、内部メモリ30から内部メモリ制御回路31に読み出したデータ(RDA)が出力される。
【0026】
32はプロセッサ制御回路、33はマイクロプロセッサである。プロセッサ制御回路32はマイクロプロセッサ33にデータを出力し、またマイクロプロセッサ33が出力したデータが入力される。すなわち、プロセッサ制御回路32は、マイクロプロセッサ33のインターフェイス回路として動作する。
【0027】
34はI/O制御回路であり、I/Oにデータを出力し、またI/Oが出力したデータが入力される。すなわち、I/Oのインターフェイス回路として動作する。I/Oとしては、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、PCI(Peripheral Component Interconnect)、USB(Universal Serial Bus)等がある。内部メモリ制御回路31、プロセッサ制御回路32、I/O制御回路34は、内部バス35で接続される。
【0028】
36は内部回路であり、バッファ37a〜37dを介して入出力端子11a〜11dが接続される。通常入出力端子は多数用いられるが、図1では4本のみ記載している。内部回路36はハードウエアロジック回路で構成され、所望の機能を実現する。
【0029】
38はサンプリング制御回路であり、入出力端子11a〜11dの電圧が入力され、また内部バス35と接続される。サンプリング制御回路38は、入力されるクロックに同期して入出力端子11a〜11dの電圧をサンプリングし、その結果を内部バス35、内部メモリ制御回路31を経由して内部メモリ30に書き込む。
【0030】
39はマッピング制御回路である。マッピング制御回路39は、内部メモリ制御回路31を制御して、内部メモリ30の一部をテストデータ格納用に確保する。
【0031】
なお、内部メモリ30、内部メモリ制御回路31、プロセッサ制御回路32、マイクロプロセッサ33、I/O制御回路34、内部回路36、サンプリング制御回路38、マッピング制御回路39にはクロックCLKが入力される。また、サンプリング制御回路38、マッピング制御回路39には、テスト中であることを表すテスト中信号が入力される。
【0032】
次に、この実施例の動作を説明する。図2は内部メモリ30のマッピングを表した図であり、(A)はテストを行わないとき、(B)はテストを行うときのマッピングを表している。なお、内部メモリ30は0xFFFF(64kバイト)のメモリ容量を有している。
【0033】
テストを行わないとき(A)は、アドレスが0x0000〜0xEFFFの領域はマイクロプロセッサ33が使用し、0xF000〜0xFFFFの領域はI/Oが使用する。それに対してテスト中のとき(B)は、マイクロプロセッサ33が使用する領域の一部(0x6000〜0xEFFF)をテストデータ格納領域として確保する。マッピング制御回路39はテスト中信号を参照して、テスト中信号がアクティブになると図2(B)に示すようにテストデータ格納領域を確保し、テスト中信号がインアクティブになるとこの領域を開放して、マイクロプロセッサ33が使用できるようにする。
【0034】
サンプリング制御回路38はテスト中信号を参照し、このテスト中信号がアクティブ(テスト中)であるときは、一定の周期で入出力端子11a〜11dの電圧をサンプリングし、このサンプリングしたデータを内部メモリ30のテストデータ格納領域に順番に格納する。格納されたテストデータは、テスト終了後にマイクロプロセッサ33によって読み出される。
【0035】
図3に、サンプリング制御回路38がサンプリングし、内部メモリ30に格納された、端子11a〜11dのデータの例を示す。なお、このデータは2値データであるとする。
【0036】
図3(A)はサンプリングしたデータである。サンプリング制御制御回路38は、テスト中信号がアクティブのときに一定周期で端子11a〜11dの電圧をサンプリングし、この電圧を2値化して内部メモリ30のテストデータ格納領域に格納する。サンプリング番号1〜5は、サンプリングした順番を示す。
【0037】
図3(B)は(A)のデータを波形図で表したものであり、横軸は時間である。T1〜T6はデータをサンプリングするタイミング(時刻)を表す。動作検証する担当者は、このデータを参照して、内部回路36の動作を検証する。
【0038】
図4の動作検証装置は、プローブを入出力端子に接続し、また波形測定装置を用いなければならず、セッティングが面倒であるという課題があった。また、図5のテストセレクト回路は、複数のデジタル信号を1つの端子で接続できるので、テストのためのセッティングを簡単にすることができるが、信号相互間の関係を検証することが難しいという課題があった。
【0039】
本発明は入出力端子の電圧をサンプリング制御回路38でサンプリングし、内部メモリ30のテストデータ格納領域に格納するようにしたので、このテストデータ格納領域に格納されたデータを読み出すだけで内部回路36の動作を検証することができる。このため、面倒なセッティングが不要になる。
【0040】
また、マイクロプロセッサ33が使用する内部メモリ30の一部をテストデータ格納領域として使用するので、メモリサイズが増加することはない。このため、チップサイズの増加を抑えることができる。さらに、テストを行わないときはテストデータ格納領域を開放するようにしたので、実動作のときに内部メモリ30のサイズが小さくなることもなくなる。
【0041】
なお、図3ではサンプリングデータを2値としたが、多値データとしてもよい。この場合、サンプリング制御回路38内にアナログデジタル変換器を配置し、このアナログデジタル変換器で入出力端子11a〜11dの電圧をデジタル値に変換してテストデータ格納領域に格納すればよい。
【0042】
また、図1実施例では入出力端子11a〜11dの電圧をサンプリング制御回路38でサンプリングするようにしたが、内部回路36内の外部に出ていない点の電圧をサンプリングするようにしてもよい。
【0043】
また、図1実施例ではマイクロプロセッサ33とは別にプロセッサ制御回路32、I/O制御回路34、内部バス35が配置された回路について説明したが、これらがマイクロプロセッサ33内部に配置された構成であってもよい。さらに、内部メモリ30、内部回路36がマイクロプロセッサ33の一部であるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
11a〜11d 入出力端子
30 内部メモリ
31 内部メモリ制御回路
32 プロセッサ制御回路
33 マイクロプロセッサ
34 I/O制御回路
35 内部バス
36 内部回路
38 サンプリング制御回路
39 マッピング制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリを内蔵した集積回路において、
前記メモリのマッピングを変更し、テストを行うときにテストデータを格納するテストデータ格納領域を前記メモリに確保し、テストを行わないときに前記テストデータ格納領域を開放するマッピング制御回路と、
テストを行う点の電圧が入力され、この電圧をサンプリングして、このサンプリングしたデータを前記テストデータ格納領域に格納するサンプリング制御回路と、
を備えたことを特徴とするテスト回路を内蔵した集積回路。
【請求項2】
前記サンプリング制御回路は、サンプリングした電圧を2値データに変換して、前記テストデータ格納領域に格納するようにしたことを特徴とする請求項1記載のテスト回路を内蔵した集積回路。
【請求項3】
前記集積回路は、プロセッサを内蔵していることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載のテスト回路を内蔵した集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78191(P2012−78191A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223358(P2010−223358)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】