説明

テレコンバータレンズ及びそれを有する撮像装置

【課題】 マスターレンズに装着しても全系の収差変動が小さく、良好な光学性能の画像が得られるテレコンバータレンズを得ること。
【解決手段】 マスターレンズの物体側に装着するテレコンバータレンズであって、
物体側から像側へ順に、光軸方向に最も広い空気間隔を境に、正の屈折力の前群と負の屈折力の後群より成り、
該前群は、負の屈折力の第11レンズと正の屈折力の第12レンズとを接合した、全体として正の屈折力の第1接合レンズ、正の屈折力の第13レンズより成り、
該後群は、正の屈折力の第21レンズと負の屈折力の第22レンズとを接合した、全体として負の屈折力の第2接合レンズより成り、
該第11レンズと第12レンズの材料のアッベ数を各々ν11、ν12とするとき
30<ν11<50
25<ν12−ν11
なる条件を満足すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、放送用カメラなどに用いられる撮影レンズ(マスターレンズ)の物体側に着脱可能に装着して、全系の焦点距離をマスターレンズの本来の焦点距離に比べて長い方へ変化させるテレコンバータレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にマスターレンズ(撮影レンズ)の焦点距離を望遠側に変移させる(長い方に変移させる)方法として、マスターレンズの物体側にアフォーカルレンズを着脱可能に装着するフロント方式のテレコンバータレンズが知られている。この方式は、焦点距離を変移させても、マスターレンズのFナンバーを犠牲にしない(変化させない)という利点がある。
【0003】
近年、デジタルカメラ、ビデオカメラにおいてはCCDセンサ等の固体撮像素子の高画素化が進み、それらに用いる撮影レンズには色収差を含めて高い光学性能を有することが要求されている。
【0004】
したがって、撮影レンズに装着するテレコンバータレンズにも同様の高い光学性能が要求されている。
【0005】
更にテレコンバータレンズには、よりアフォーカル倍率が高い(高倍率)ことが求められている。
【0006】
このフロント方式のテレコンバータレンズとして、物体側より像側へ順に正の屈折力の前群と、負の屈折力の後群より成るものが知られている。
【0007】
このうち前群を1枚の負レンズと2枚の正レンズより構成し、後群を正レンズと負レンズを有するように構成したテレコンバータレンズが知られている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開平10−197792号公報
【特許文献2】特開2001−228393号公報
【特許文献3】特開2002−82367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テレコンバータレンズは、マスターレンズに装着したとき、高い光学性能を維持するため、収差変動か少ないことが要望される。
【0009】
一般に、テレコンバータレンズをマスターレンズの物体側に装着し、全系の焦点距離を長い方へ変移させると、望遠側において球面収差、軸上色収差、倍率色収差等が大きく変化してくる。
【0010】
尚、ここで望遠側とは単一焦点距離のマスターレンズのときは、拡大された焦点距離のことである。以下同じである。
【0011】
特許文献1の実施例4に示されたテレコンバータレンズでは、正の屈折力の前群を、物体側から順に、負レンズと正レンズとの接合レンズ、両凸レンズで構成して、正レンズを2枚に分割している。
【0012】
しかしながら、2つの正レンズ間で構成される空気レンズの屈折力が極めて弱く、前群の正の屈折力を複数の正レンズで効果的に分担しているとは言い難い。
【0013】
このような構成では前群の屈折力を強めた際の球面収差、像面湾曲が補正不足となる。
【0014】
特許文献2に示されたテレコンバータレンズでは、正の屈折力の前群を、物体側から順に、正レンズ、正レンズと負レンズとの接合レンズで構成している。接合レンズの構成としては、順に負レンズ、正レンズとした場合に比べて正レンズの有効径が大きくなるため、接合レンズ全体として大型化しやすい。
【0015】
特許文献3に示されたテレコンバータレンズでは、正の屈折力の前群を、物体側から順に負レンズと正レンズとの接合レンズと正レンズで構成しており、アフォーカル倍率が1.9以上を達成している。
【0016】
しかしながらテレコンバータレンズを装着したときの全系でのg線の軸上色収差がマスターレンズ単体のときに比べ大きく悪化している。
【0017】
本発明は、マスターレンズに装着したときの諸収差の変動が少なく、特にg線の軸上色収差を小さく、青にじみが少ない、高い光学性能を有するテレコンバータレンズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のテレコンバータレンズは、マスターレンズの物体側に装着するテレコンバータレンズであって、
物体側から像側へ順に、光軸方向に最も広い空気間隔を境に、正の屈折力の前群と負の屈折力の後群より成り、
該前群は、負の屈折力の第11レンズと正の屈折力の第12レンズとを接合した、全体として正の屈折力の第1接合レンズ、正の屈折力の第13レンズより成り、
該後群は、正の屈折力の第21レンズと負の屈折力の第22レンズとを接合した、全体として負の屈折力の第2接合レンズより成り、
該第11レンズと第12レンズの材料のアッベ数を各々ν11、ν12とするとき
30<ν11<50
25<ν12−ν11
なる条件を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マスターレンズに装着しても全系の収差変動が小さく、良好な光学性能の画像が得られるテレコンバータレンズが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
【実施例1】
【0021】
以下、本発明のテレコンバータレンズ及びそれをマスターレンズ(主レンズ系)に装着したときの撮影系及び該撮影系を用いた撮像装置について説明する。尚、本発明のテレコンバータレンズは、カメラ本体と一体的に構成されたマスターレンズ、或いはカメラ本体に脱着可能な交換レンズいずれかの物体側に装着可能なレンズである。
【0022】
図1は、本発明の実施例1のテレコンバータレンズのレンズ断面図である。
【0023】
図2は、本発明のテレコンバータレンズを着脱自在に装着する一例として選んだズーミング作用を有するマスターレンズMの広角端におけるレンズ断面図である。
【0024】
尚、マスターレンズMは単一焦点距離の撮影レンズであっても良い。
【0025】
図3は、本発明の実施例1のテレコンバータレンズをマスターレンズMの物体側に装着したときの望遠端のズーム位置におけるレンズ断面図である。
【0026】
図4、5は、本発明の実施例1のテレコンバータレンズをマスターレンズMの物体側に装着したときの中間のズーム位置と望遠端のズーム位置における収差図である。
【0027】
図6、図7は、マスターレンズMのみの中間のズーム位置と望遠端のズーム位置における収差図である。
【0028】
図8は、本発明の実施例2のテレコンバータレンズのレンズ断面図である。
【0029】
図9、図10は、本発明の実施例2のテレコンバータレンズをマスターレンズMの物体側に装着したときの中間のズーム位置と望遠端のズーム位置における収差図である。
【0030】
図11は、本発明の実施例3のテレコンバータレンズのレンズ断面図である。
【0031】
図12、図13は、本発明の実施例3のテレコンバータレンズをマスターレンズMの物体側に装着したときの中間のズーム位置と望遠端のズーム位置における収差図である。
【0032】
図14は、本発明の実施例4のテレコンバータレンズのレンズ断面図である。
【0033】
図15、図16は、本発明の実施例4のテレコンバータレンズをマスターレンズMの物体側に装着したときの中間のズーム位置と望遠端のズーム位置における収差図である。
【0034】
図17は、本発明のテレコンバータレンズを有する撮像装置の説明図である。
【0035】
レンズ断面図において、Tはテレコンバータレンズ、Mはマスターレンズである。
【0036】
レンズ断面図において、左方が物体側で、右方が像側である。
【0037】
収差図において、ΔMはメリディオナル像面、ΔSはサジタル像面、倍率色収差はg線によって表わしている。
【0038】
fnoはFナンバーである。ωは半画角である。
【0039】
各実施例のテレコンバータレンズTは、マスターレンズMの物体側に装着して全系の焦点距離をマスターレンズ単独のときの焦点距離に比べて拡大する方向へと変化させている。
【0040】
各実施例のテレコンバータレンズTはアフォーカル系を構成している。そして、物体側から数えて像側へ順に最も広い空気間隔を境にして、正の屈折力(焦点距離の逆数、光学的パワー)の前群LFと負の屈折力の後群LRより成っている。
【0041】
図1、図11、図14に示した実施例1、3、4のテレコンバータの構成を説明する。
【0042】
前群LFは、物体側より像側へ順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の屈折力(以下「負」と略す)の第11レンズ11と物体側に凸面を向けた正の第12レンズ12とを接合した全体として正の屈折力の第1接合レンズ1Cを有する。更に、物体側に凸面を向けた正の第13レンズ13を有している。
【0043】
後群LRは、物体側より像側へ順に、正の第21レンズ21と負の第22レンズ22とを接合した全体として負の屈折力の第2接合レンズ2Cで構成されている。
【0044】
図8に示した実施例2のテレコンバータの構成を説明する。実施例2のテレコンバータレンズTは、後群LRを物体側から像側へ順に負の第21レンズ21aと正の第22レンズ22aとを接合した第1接合レンズ2Cで構成した点が実施例1、2、3と異なる。
【0045】
各実施例のテレコンバータレンズTでは、前群LFと後群LRが共に正レンズと負レンズを少なくとも1枚ずつ有している。
【0046】
本構成により、マスターレンズMに装着したときの全系の軸上色収差と倍率色収差とをバランス良く補正している。
【0047】
前群LFの正の屈折力を、第1接合レンズ1Cとその後方の正の第13レンズ13とで分担することにより球面収差と像面湾曲を良好に補正している。
【0048】
このような構成は特に前群LFの屈折力を強めてアフォーカル倍率の高倍率化とコンパクト化を両立させる上で有効である。
【0049】
さらに前群LFを構成する第1接合レンズ1Cを物体側より像側へ順に、負の第11レンズ11と、正の第12レンズ12で構成している。これにより、逆の順番に構成した場合と比べて、正の第12レンズ12をマスターレンズM側に近づけることができ、レンズ系全体の有効径を小さくすることができる。
【0050】
一般に正レンズはレンズ加工上ある程度の縁厚(コバ厚)を確保する必要がある。
【0051】
縁厚を加工上必要な最小限の寸法としてレンズを極力薄肉化する場合、正レンズをマスターレンズMに近づけるほど有効径を小さくすることができる。この分、中心肉厚も薄く出来、レンズの小型軽量化が可能となる。
【0052】
なお負の第11レンズ11に関しては、正レンズと負レンズの順にした構成より有効径が大きくなるが、負の第11レンズ11は加工上の縁厚の制約がないため強度が維持できれば特に中心肉厚を気にする必要はない。
【0053】
結果的に第1接合レンズ1C全体としては物体側より像側へ順に負レンズと、正レンズの順序とする方が逆の順序に構成した場合に比べて小型、軽量化が図れる。
【0054】
なお図2に示したマスターレンズ部Mの望遠端の画角2ωは12.1°である。
【0055】
このような画角のマスターレンズMに装着するテレコンバータレンズTでは、図1に示すように後群LRの第2の接合レンズ2Cの像側の面を凹形状にするのが良い。そしてテレコンバータレンズTとマスターレンズMとの間の空気レンズの形状をコンセントリックに近い形状とするのが好ましい。
【0056】
このような構成では、後群LRの第2接合レンズ2Cの像側のレンズ面において軸外光束の射出角が極端に大きくならないため、非点隔差、倍率色収差の高次成分の発生が低減されるというメリットがある。
【0057】
図2のマスターレンズMとして用いたズームレンズの構成は、次のとおりである。
【0058】
図2のレンズ断面図において、L1は正の屈折力(光学パワー=焦点距離の逆数)の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群である。SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の物体側に位置している。
【0059】
Gは光学フィルター、フェースプレート等に相当する光学ブロックである。IPは像面であり、ビデオカメラやデジタルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が、銀塩フィルム用カメラの撮像光学系とし使用する際にはフィルム面に相当する。
【0060】
広角端から望遠端へのズーミングに際して矢印のように、第1レンズ群L1及び第3レンズ群は広角端に比べて望遠端で物体側に位置するように移動する。また第2レンズ群L2は像側に凸の軌跡となるように移動し、第4レンズ群L4は物体側に凸の軌跡となるように移動する。
【0061】
また第4レンズ群L4を光軸上移動させてフォーカシングを行うリアフォーカス式を採用している。第4レンズ群L4に関する実線の曲線4aと点線の曲線4bは、各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの変倍に伴う像面変動を補正するための移動軌跡である。
【0062】
又、望遠端において無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合には、矢印4cに示すように第4レンズ群L4を前方に繰り出すことで行っている。
【0063】
各実施例では、負の第11レンズ11と正の第12レンズ12の材料のアッベ数を各々ν11、ν12とする。このとき
30<ν11<50 (1)
25<ν12−ν11 (2)
なる条件を満足している。
【0064】
条件式(1)は前群LFの第1接合レンズ1Cを構成する負の第11レンズ11の材料のアッベ数を規定する式である。
【0065】
一般に色消しが十分になされたテレコンバータレンズTをマスターレンズMに装着した場合、軸上色収差はマスターレンズMの収差量にテレコンバータのアフォーカル倍率を乗じた量となる。
【0066】
そのためテレコンバータレンズTのアフォーカル倍率を高倍率化すると、マスターレンズM単体でとしては問題とならない軸上色収差が、テレコンバータレンズTの装着時にはアフォーカル倍率分だけ大きくなり、色のにじみとして問題となる。
【0067】
ガラスの材料の屈折率は、短波長側で単位波長あたりの屈折率変化が大きい。このため、一般的なC線とf線で軸上色収差が一致するような色消しを行ったマスターレンズにおいては、g線の軸上色収差はプラス(オーバー)となる。
【0068】
この残存軸上色収差は、マスターレンズM単体では通常は問題とならない程度に補正されている。
【0069】
このマスターレンズMにテレコンバータレンズTを装着したとする。このとき、テレコンバータレンズT単体で発生する軸上色収差がゼロの理想的な色消しが行われたと仮定しても、全系のg線の軸上色収差はマスターレンズMの残存軸上色収差にテレコンバータレンズTのアフォーカル倍率を乗じた値となる。
【0070】
そのためマスターレンズM単体では問題とならなかった軸上での青色のにじみが、テレコンバータレンズTの装着により肥大化する。
【0071】
この肥大化はアフォーカル倍率に比例するため、高倍率のテレコンバータレンズTを装着した場合ほど顕著に現われ、青フレアやパープルフリンジと呼ばれる画質劣化の要因となる。
【0072】
各実施例では、テレコンバータレンズTをマスターレンズに装着時、該テレコンバータレンズTで発生するg線の軸上色収差をマスターレンズMにおいてアンダー側に生じさせている。これにより、軸上での青色のにじみを低減させている。
【0073】
条件式(1)の下限を超えてアッベ数が小さくなりすぎる場合、すなわち分散が大きすぎる場合は、前群LFの第1接合レンズ1Cを構成する負の第11レンズ11で発生するg線の軸上色収差がオーバー側に大きくなる。
【0074】
このため、軸上色収差と倍率色収差とを同時に良好に補正することが困難となる。
【0075】
条件式(1)は、負の第11レンズ11で発生する軸上2次スペクトルを補正する観点からも重要である。軸上2次スペクトルを低減するには、アッベ数と部分分散比θg,Fの関係にて硝材を適切に選択する必要がある。
【0076】
例えば縦軸に部分分散比θg,Fの値を取り、横軸にアッベ数νdを取るグラフを用いる。このとき(株)オハラ社製の商品名PBM2(νd=36.26、θg,F=0.5828)の点と(株)オハラ社製の商品名NSL7(νd=60.49、θg,F=0.5436)の点を結んだ線を基準線とする。
【0077】
このグラフ上での光学ガラスの分布としては、アッベ数νdが35程度より小さい高分散ガラスは基準線より上側に位置するものが多い。
【0078】
そのため条件式(1)の下限を超えて負の第11レンズ11の材料のアッベ数が小さすぎる場合、g線での軸上2次スペクトルもオーバー側に大きくなり、他の波長での軸上色収差を補正しながら、g線の軸上色収差をアンダー側に生じさせることが困難となる。
【0079】
また、上限を超えてアッベ数が大きすぎる場合は、正の第12レンズ12の材料とのアッベ数差が十分に取ることが出来なくなるため、第1接合レンズ1Cでの色消しが不十分となりよくない。
【0080】
条件式(2)は前群LFの第1接合レンズ1Cを構成する負の第11レンズ11と正の第12レンズ12の材料のアッベ数差を規定する式である。条件式(2)の下限を超えてアッベ数差が小さすぎる場合は、前群LF内での色消しにおいて補正不足となるため、前群LFを第1接合レンズ1cとしても色収差の補正を行う効果が薄れるのでよくない。
【0081】
なお条件式(1)は、第1接合レンズ1Cでの色消し効果と軸上色収差の2次スペクトルの補正効果を高めるためには、次の如くに設定すると良い。
【0082】
30<ν11<45 (1a)
さらに好ましくは、以下を満足するとなおよい。
【0083】
32<ν11<40 (1b)
また条件式(2)は、第1接合レンズ1Cでの色収差の補正をより十分に行うためには、アッベ数差が大きいほど接合レンズ1Cでの色消し効果が高まる。このため、特に上限を定めていないが、現在知られている硝材のアッベ数の範囲からあえて設定すると、次の如くに設定するのが良い。
【0084】
28<ν12−ν11<60 (2a)
更に好ましくは以下を満足するのが良い。
【0085】
28<ν12−ν11<40 (2b)
ΦFを前群LFの屈折力とする。Φcを前群LFの第1接合レンズ1Cの接合面の屈折力とする。
【0086】
このとき、各実施例のテレコンバータレンズは以下の条件式を満足している。
【0087】
0.2(1/mm)<ΦF・ν11<0.6(1/mm) (3)
−1.0(1/mm)<Φc/(1/ν11−1/ν12)<−0.3(1/mm) (4)
条件式(3)は前群LFの屈折力(パワー)と負の第11レンズ11の材料のアッベ数との関係を規定したものである。
【0088】
条件式(3)の下限を超えて前群LFの屈折力ΦFが小さくなりすぎる場合、テレコンバータレンズが大型化してくるので良くない。
【0089】
また条件式(3)の上限を超えて前群LFの屈折力ΦFが大きくなりすぎる場合、前群LFで発生する諸収差が大きくなり、これを後群LRで補正することが困難となる。
【0090】
なお条件式(3)はコンパクト化の達成と光学性能のバランスを考えると、次の如くに設定すると良い。
【0091】
0.25(1/mm)<ΦF・ν11<0.5(1/mm) (3a)
さらに好ましくは以下を満足するとよい。
【0092】
0.3(1/mm)<ΦF・ν11<0.4(1/mm) (3b)
また条件式(3)に前群LFの最も物体側の面頂点から最も像側の面頂点までの距離dFを考慮した条件式(6)を満足するとよい。
【0093】
5.0<ΦF・dF・ν11<15.0 (6)
条件式(6)の下限を超えて前群LFの屈折力ΦFが小さくなりすぎる場合、テレコンバータレンズが大型化してくるので良くない。それに加えてdFが小さくなりすぎ、前群LFを構成するレンズに十分な肉厚を与えられないため必要な有効径が確保できない。
【0094】
また条件式(6)の上限を超えて前群LFの屈折力ΦFが大きくなりすぎる場合、前群LFで発生する諸収差が大きくなり、これを後群LRで補正することが困難となる。それに加えてdFが大きくなりすぎ、テレコンバータレンズの大型化を招き良くない。
【0095】
なお条件式(6)はコンパクト化の達成と光学性能のバランスを考えると、次の如くに設定すると良い。
【0096】
7.0<ΦF・dF・ν11<13.0 (6a)
さらに好ましくは以下を満足するとよい。
【0097】
9.0<ΦF・dF・ν11<11.0 (6b)
条件式(4)は前群LFの第1接合レンズ1Cの接合面における、発散性のパワーと色分散の関係を規定する式である。第1接合レンズ1Cの接合面の屈折力パワーΦcは、以下の式で定義される。
【0098】
Φc=(n2−n1)/R12
但し、n1:第1接合レンズ1Cの負の第11レンズ11の材料の屈折率、
n2:第1接合レンズ1Cの正の第12レンズ12の材料の屈折率、
R12:第1接合レンズ1Cの接合面の曲率半径、
である。
【0099】
各実施例ではn1>n2、またR12>0であり、屈折力Φcは負の値を取るため、第1接合レンズ1Cの接合面は負の屈折力を有する発散性の接合面である。
【0100】
条件式(4)の下限を超えて屈折力Φcが小さくなりすぎる場合、第1接合レンズ1Cの接合面で十分な色消し作用を行うことが困難となり、軸上色収差と倍率色収差の両立が困難となりよくない。
【0101】
また条件式(4)の上限を超えて屈折力Φcが大きくなりすぎる場合、接合面での光線の発散力が強くなり高次の収差が発生し、非点隔差や倍率色収差が過多に発生して軸外性能が悪化するのでよくない。
【0102】
なお条件式(4)はさらに好ましくは以下の如く設定すると、軸上色収差と軸外性能が共に良好に補正される。
【0103】
−0.85(1/mm)<Φc/(1/ν11−1/ν12)<−0.3(1/mm) (4a)
なお、さらに好ましくは以下を満足するとよい。
−0.65(1/mm)<Φc/(1/ν11−1/ν12)<−0.35(1/mm) (4b)
また条件式(4)に第1接合レンズ1Cの屈折力φ1cを考慮した条件式(7)を満足するとよい。
−1.6<(Φc/Φ1c)/(1/ν11−1/ν12)/1000<−0.01 (7)
条件式(7)の下限を超えて接合レンズ全体の屈折力Φ1cに対する接合面の屈折力Φcの比が小さくなりすぎる場合、第1接合レンズ1Cの接合面で十分な色消し作用を行うことが困難となり、軸上色収差と倍率色収差の両立が困難となりよくない。
【0104】
また条件式(7)の上限を超えて屈折力Φ1cに対する屈折力Φcの比が大きくなりすぎる場合、接合面での光線の発散力が強くなり高次の収差が発生し、非点隔差や倍率色収差が過多に発生して軸外性能が悪化するのでよくない。
【0105】
なお条件式(7)はさらに好ましくは以下の如く設定すると、軸上色収差と軸外性能が共に良好に補正される。
−1.3<(Φc/Φ1c)/(1/ν11−1/ν12)/1000<−0.04(7a)
なお、さらに好ましくは以下を満足するとよい。
−1.0<(Φc/Φ1c)/(1/ν11−1/ν12)/1000<−0.08(7b)
各実施例のテレコンバータレンズをマスターレンズに装着し、撮像装置として用いるときは、双方が次の条件式を満足することが良い。
【0106】
δsk(M)をマスターレンズ単体の長焦点距離で無限遠物体におけるd線に対するg線の軸上色収差とする。
【0107】
δsk(T)をマスターレンズMにテレコンバータレンズTを装着時の長焦点距離で無限遠物体におけるd線に対するg線の軸上色収差とする。
【0108】
βをテレコンバータレンズのアフォーカル倍率とする。
【0109】
但し、マスターレンズがズームレンズのときは軸上色収差は望遠端における値である。
【0110】
このとき、
0.4<δsk(T)/(δsk(M)×β)<1.0 (5)
を満足することである。
【0111】
条件式(5)はテレコンバータレンズTによるg線の軸上色収差の補正効果を規定する式である。条件式(5)の下限を超えてマスターレンズMにテレコンバータレンズTを装着時のg線の軸上色収差が小さくなりすぎる場合、g線以外の波長の軸上色収差が増大し軸上色収差のバランスを取ることが困難となりよくない。
【0112】
また条件式(5)の上限を超えてマスターレンズMにテレコンバータレンズTを装着時のg線の軸上色収差が大きくなりすぎる場合、軸上の青色にじみが顕著になるので良くない。
【0113】
なお条件式(5)はさらに好ましくは以下の如く設定すると、g線とそれ以外の波長の軸上色収差がバランス良く補正されよい。
【0114】
0.5<δsk(T)/(δsk(M)×β)<0.9 (5a)
次に、本発明の実施例1〜4のテレコンバータレンズに各々対応する数値実施例1〜4とマスターレンズの数値実施例を示す。
【0115】
各数値実施例においてiは物体側からの光学面の順序を示し、Riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、Diは第i面と第i+1面との間の間隔、Niとνiはそれぞれd線に対する第i番目の光学部材の材料の屈折率、アッベ数を示す。またkを離心率、B、C、D、Eを非球面係数、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点を基準にしてxとするとき、非球面形状は、
【0116】
【数1】

【0117】
で表示される。
【0118】
但しRは曲率半径である。また例えば「E−Z」の表示は「10−Z」を意味する。また、各数値実施例における上述した条件式との対応を表1に示す。fは焦点距離、FnoはFナンバー、ωは半画角を示す。
【0119】
テレコンバータレンズの数値例におけるf、Fno、2ωはテレコンバータレンズをマスターレンズに装着したときの望遠端における値である。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
【表6】

【0126】
次に本発明のテレコンバータレンズをマスターレンズに装着し、撮影光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)の実施例を図17を用いて説明する。
【0127】
図17において、20はカメラ本体、21は本発明のテレコンバータレンズをマスターレンズに装着した撮影光学系である。
【0128】
22はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。
【0129】
23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記憶するメモリである。24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダーである。
【0130】
このように本発明の撮影光学系をデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用することにより、小型で高い光学性能を有する撮像装置を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施例1のテレコンバータレンズのレンズ断面図
【図2】マスターレンズのレンズ断面図
【図3】実施例1のテレコンバータレンズとマスターレンズの望遠端のズーム位置でのレンズ断面図
【図4】実施例1のテレコンバータレンズとマスターレンズの中間のズーム位置での収差図
【図5】実施例1のテレコンバータレンズとマスターレンズの望遠端での収差図
【図6】マスターレンズの中間のズーム位置における収差図
【図7】マスターレンズの望遠端のズーム位置における収差図
【図8】実施例2のテレコンバータレンズのレンズ断面図
【図9】実施例2のテレコンバータレンズとマスターレンズの中間のズーム位置での収差図
【図10】実施例2のテレコンバータレンズとマスターレンズの望遠端での収差図
【図11】実施例3のテレコンバータレンズのレンズ断面図
【図12】実施例3のテレコンバータレンズとマスターレンズの中間のズーム位置での収差図
【図13】実施例3のテレコンバータレンズとマスターレンズの望遠端での収差図
【図14】実施例4のテレコンバータレンズのレンズ断面図
【図15】実施例4のテレコンバータレンズとマスターレンズの中間のズーム位置での収差図
【図16】実施例4のテレコンバータレンズとマスターレンズの望遠端での収差図
【図17】本発明の撮像装置の概略図
【符号の説明】
【0132】
LF : テレコンバータレンズの前群
LR : テレコンバータレンズの後群
T : テレコンバータレンズ
M : マスターレンズ
L1 : マスターレンズの第1レンズ群
L2 : マスターレンズの第2レンズ群
L3 : マスターレンズの第3レンズ群
L4 : マスターレンズの第4レンズ群
SP : 開口絞り
fno : Fナンバー
ω : 半画角
ΔS : サジタル像面
ΔM : メリディオナル像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターレンズの物体側に装着するテレコンバータレンズであって、
物体側から像側へ順に、光軸方向に最も広い空気間隔を境に、正の屈折力の前群と負の屈折力の後群より成り、
該前群は、負の屈折力の第11レンズと正の屈折力の第12レンズとを接合した、全体として正の屈折力の第1接合レンズ、正の屈折力の第13レンズより成り、
該後群は、正の屈折力の第21レンズと負の屈折力の第22レンズとを接合した、全体として負の屈折力の第2接合レンズより成り、
該第11レンズと第12レンズの材料のアッベ数を各々ν11、ν12とするとき
30<ν11<50
25<ν12−ν11
なる条件を満足することを特徴とするテレコンバータレンズ。
【請求項2】
前記前群の屈折力をΦFとするとき、
0.2(1/mm)<ΦF・ν11<0.6(1/mm)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1のテレコンバータレンズ。
【請求項3】
前記前群の屈折力をΦF、前記前群の最も物体側の面頂点から最も像側の面頂点までの距離をdFとするとき、
5.0<ΦF・dF・ν11<15.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1又は2のテレコンバータレンズ。
【請求項4】
前記第1接合レンズの接合面のパワーをΦcとするとき、
−1.0(1/mm)<Φc/(1/ν11−1/ν12)<−0.3(1/mm)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1乃至3いずれかのテレコンバータレンズ。
【請求項5】
前記第1接合レンズの接合面のパワーをΦc、前記第1接合レンズの屈折力をφ1cとするとき、
−1.6<(Φc/Φ1c)/(1/ν11−1/ν12)/1000<−0.01
なる条件を満足することを特徴とする請求項1乃至4いずれかのテレコンバータレンズ。
【請求項6】
マスターレンズと、該マスターレンズによって形成された像を受光する固体撮像素子とを有する撮像装置の該マスターレンズの物体側に装着可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項のテレコンバータレンズ。
【請求項7】
マスターレンズと、該マスターレンズの物体側に装着可能な請求項1から6のいずれか1項のテレコンバータレンズと、該テレコンバータレンズと該マスターレンズによって形成された像を受光する固体撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
前記マスターレンズと、該マスターレンズに前記テレコンバータレンズを装着した全系における無限遠物体に対するd線とg線の軸上色収差の差を各々δsk(M)、δsk(T)とし、該テレコンバータレンズのアフォーカル倍率をβとするとき、
0.4<δsk(T)/(δsk(M)×β)<1.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項7の撮像装置。
ただしマスターレンズがズームレンズの場合、該軸上色収差は、望遠端での値である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−70433(P2008−70433A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246632(P2006−246632)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】