説明

テレビジョン

【課題】テレビジョンの色表現力を有効利用しつつ、各画像の各パーツに合わせた最適な画質調整を実行可能なテレビジョンを提供する。
【解決手段】略同サイズの領域を複数組み合わせた画質取得枠で、画面上をスキャンするスキャン手段と、スキャンされた各領域に対応する分映像信号を前記映像信号から抽出するデータ抽出手段と、前記部分映像信号の比較により、前記画質取得枠を構成する各領域間の画質相違度合を検出する画質相違検出手段と、前記領域に対して施す画質調整を前記画質相違度合に応じて選択する画質調整選択手段と、を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンに関し、特に、入力されたテレビ放送信号から抽出された映像信号に基づく映像を画面に表示させるテレビジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョンにおいては、画質向上の為に、特定の青色を別の青(例えば空色)に置き換える等の処理により画質向上が行われていた。また、テレビジョンで映画等のように画面全体が黒側に沈んでしまうシーンを見やすくするために、Y信号で画像の極めて暗いシーンを検出し、ブライドネスやコントラスト調整を自動的に行って見やすい画面設定にする技術も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
その他、特許文献2には、コンピュータに接続されることを前提とした画像表示装置において、自然画の表示領域を予めコンピュータで判別して垂直同期信号や水平同期信号に自然画の領域を示す判別信号を重畳しておき、該判別信号に基づいて各領域の強調度合を変更することについて記載されている。また、特許文献3には、デジタルカメラ等の撮影時に予め各対象物との位置関係情報を付与しておき、各対象物の位置関係から主要対象物と背景とを分けて、各対象物に予め指定されている画像処理を行うことについて記載されている。ただし、特許文献2,3の技術は、テレビジョンを前提としたものではない。
【特許文献1】特開2000−78496号公報
【特許文献2】特開2000−310988号公報
【特許文献3】特開2005−175956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、NTSC(National Television Standards Committee)の規定するテレビジョン規格(以下、この規格をNTSCと称する。)では、各フレームが約1600万色で表現可能である。しかしながら前述のように、特定の青色を別の青に置き換える等の色の置き換え処理をしていたので、1600万色以上の表現力があるにも関わらず、特定の色しか使わないもったいない使い方になっていた。一方で、特許文献1のように画面全体に同一の画質調整を行うと、特定の部位では画質が向上するが、他の部位では逆に画質が低下するといった不本意な状況が発生しうる。
【0005】
これに対し、前述の特許文献2,3の技術は画像の各部位に最適な画質調整を行う技術ではあるが、テレビジョンへの適用は難しい。すなわち、特許文献2,3の技術では、何れの領域にどのような対象物が存在しているかを示す領域情報が、予め画像データ中に設定されていることが前提の技術だからである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、テレビジョンの色表現力を有効利用しつつ、各画像の各パーツに合わせた最適な画質調整を実行可能なテレビジョンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のテレビジョンは、入力されたテレビ放送信号から抽出された映像信号に基づく映像を画面に表示させるテレビジョンであり、各領域が複数画素を含むように構成された略同サイズの領域を複数組み合わせた画像取得枠で、前記画面上をスキャンするスキャン手段と、スキャンされた各領域に対応する部分映像信号を前記映像信号から抽出するデータ抽出手段と、前記部分映像信号の比較により、前記画像取得枠を構成する各領域間の画質相違度合を検出する画質相違検出手段と、前記領域に対して施す画質調整を前記画質相違度合に応じて選択する画質調整選択手段と、を具備する構成としてある。ここで、前記部分映像信号とは、前記被スキャン領域となる画面に映像を表示するために使用される映像信号である。但し、画面の画素数に一致している必要は無く、スケーリング処理の前後を問わない。
【0008】
前記構成において、スキャン手段は、略同サイズの領域を複数組み合わせた画像取得枠で、テレビ放送信号の各フレームで前記画面上をくまなくスキャンし、スキャンされた各領域に対応する部分映像信号をデータ抽出手段が前記映像信号から抽出する。抽出された各領域に対応する部分映像信号は、画質相違検出手段によって比較され、画質相違度合が検出される。この画質相違度合としては、画像を構成する輝度情報や色情報の比較により検出されるものであり、例えば輝度相違度合や色相違度合である。そして、画質調整選択手段が、検出された画質相違度合に応じた画質調整を各領域に設定する。設定される画質調整は、映像中で主要な対象物を含む領域であるか、背景を含む領域であるか、もしくは背景が連続する領域であるか、などの基準により選択される。
【0009】
よって、1フレームの映像中であっても、背景と主要対象物とで異なる画質調整が可能になる。すなわち、主要対象物にはフォーカスが合うとともに、背景はフォーカスがずれてぼやけた映像となるように画像表示させることができる。また、実際の映像に含まれる背景や主要対象物に合わせて画質調整を設定するため、表示色が特定の色に集中することが無く、テレビジョンの色表現力を有効利用しつつ、各画像の各パーツに合わせた最適な画質調整を実行可能となる。
【0010】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出する構成としてもよい。コントラスト差とは、各領域の平均輝度の差分である。コントラスト差が大きいと、一方の領域に含まれる対象物が主要対象物であり、他方の領域に含まれる対象物が背景であると判断することが出来る。一方、コントラストが小さいと、双方の領域ともに背景もしくは主要対象物であると判断することができる。
【0011】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、前記画質調整選択手段は、近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域の鮮鋭度を向上させる画質調整を選択する構成としてもよい。近接領域とは、画像取得枠において隣り合う領域であるが、必ずしも接している必要は無い。主要対象物の含まれる領域の鮮鋭度を向上させることにより、主要対象物にピントの合った映像が表示できる。
【0012】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、前記画質調整選択手段は、近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域の輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける画質調整を選択する構成としてもよい。領域の輝度分布とは、領域に含まれる各画素の輝度を階調毎に統計したものである。一方、機器ダイナミックレンジとは、テレビジョンで表示可能な輝度範囲である。従って、輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づけることで、領域内の画像データにおける最大輝度から最小輝度までの範囲が拡大され、表現力が向上することが期待できる。すなわち、主要対象物がはっきりと表示されるようになる。但し、輝度分布においてノイズレベルと判断しうる量しか存在しない輝度レベルは、無視する必要がある。
【0013】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、前記画質調整選択手段は、近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域のシャープネスを上昇させる画質調整を選択する構成としても良い。シャープネスを上昇させると、映像のエッジが強調されるため、主要対象物を含む領域でシャープネスを上昇させると、主要対象物の輪郭がくっきり表示されるようになる。
【0014】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合として各領域間の色情報の変化度合を検出し、前記画質調整選択手段は、前記色情報の変化度合が所定値よりも小さい領域に対し、該領域の平滑度合を上昇させる(ぼかす)画質調整を選択する構成としてもよい。すなわち、色情報の変化の少ない領域が連続する場合は、背景であると判断される。従って、主要対象物に対する鮮鋭度を向上させつつ、前記色情報の変化度合が所定値よりも小さい領域をぼかすことにより、全体としてメリハリの利いた映像となる。
【0015】
また、本発明の他の一態様として、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差並びに、各領域間の色情報の変化度合を検出し、前記画質調整選択手段は、該変化度合が所定値よりも大きく且つ、該コントラスト差が所定量を下回る場合、該色情報に合わせたぼかし処理を画質調整として選択する構成としても良い。すなわち、色の変化はあるもののコントラスト差が少ないことから、両領域共に主要対象物ではなく、各領域で異なる背景であることが判断される。従って、各領域の色情報にあわせたぼかし処理を適用することでそれぞれの背景に対して適切なぼかし処理が選択される。
【0016】
また、本発明の他の一態様として、前記テレビ放送信号から抽出された映像信号をYUV形式で記憶するフレームメモリを備えており、前記スキャン手段と前記データ抽出手段と前記画質相違度合検出手段と前記画質調整選択手段とは、マイコンの処理により実現されており、前記スキャン手段の設定する画質取得枠は、枡状領域を縦横に2×2で並べた矩形枠として構成され、前記データ抽出手段は、前記画質取得枠の各領域に対応する画像データを前記フレームメモリから取得し、取得した画像データの輝度と色情報とを各領域で平均化した平均色情報および平均輝度情報を作成し、前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合として前記平均輝度情報のコントラスト差並びに、各領域間の平均色情報の変化度合を検出し、前記画質調整選択手段は、近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域のうちフレームの平均輝度から離れた輝度を有する領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域の輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける画質調整及び、該領域のシャープネスを上昇させる画質調整を選択し、前記色情報の変化度合が所定値よりも小さい領域に対し、該領域の平滑度合を上昇させる画質調整を選択し、該変化度合が所定値よりも大きく且つ、該コントラスト差が所定量を下回る場合、該色情報に合わせたぼかし処理を画質調整として選択する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、テレビジョンの色表現力を有効利用しつつ、各画像の各パーツに合わせた最適な画質調整を実行可能なテレビジョンの提供することが可能となる。
また請求項2にかかる発明によれば、コントラスト差を利用した主要対象物の判別が可能となる。
そして請求項3にかかる発明によれば、主要対象物の含まれる領域の鮮鋭度を向上させることにより、主要対象物にピントの合った映像が表示できる。
さらに請求項4にかかる発明によれば、領域内の画像データにおける最大輝度から最小輝度までの範囲が拡大され、表現力が向上することが期待でき、主要対象物がはっきりと表示されるようになる。
また請求項5にかかる発明によれば、主要対象物を含む領域でシャープネスを上昇させると、主要対象物の輪郭がくっきり表示されるようになる。
そして請求項6にかかる発明によれば、主要対象物に対するメリハリの利いた映像表示が可能となる。
さらに請求項7にかかる発明によれば、各領域の色情報にあわせたぼかし処理を適用することでそれぞれの背景に対して適切なぼかし処理が選択されるようになる。
さらに請求項8のような、より具体的な構成において、上述した請求項1〜請求項7の各発明と同様の作用を奏することはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)テレビジョンの構成:
(2)画質調整処理:
(3)変形例:
【0019】
(1)テレビジョンの構成:
まず、テレビジョンのハードウェア構成について説明する。図1は、テレビジョンの概略構成を示すブロック図である。同図において、テレビジョン100は、概略、チューナ10と、RGB信号生成回路20と、ドライバ回路30と、表示器40と、マイコン50と、を備える。
【0020】
前記構成において、マイコン50は、IICバス70を介して各部10,20,30,40と接続されており、CPU51が、ROM52やRAM53などのメモリに書き込まれた各プログラムに従って、テレビジョン100全体を制御する。また、マイコン50には、操作パネル54と、リモコンI/F55とが接続されており、同操作パネル54を介しての入力信号や、リモコンI/F55を介してなされるリモコンによる入力信号によって、テレビジョン100における種々の処理を制御できる。
【0021】
チューナ10は、マイコン50の制御により、アンテナ10aを介してテレビ放送信号を受信する。そして、チューナ10は、所定の信号増幅処理等を行いつつ、テレビ放送信号から中間周波信号としての合成映像信号を抽出し、RGB信号生成回路20のA/D変換回路21へ出力する。また、チューナ10は中間周波信号から同期信号を分離し、IICバスを介して各回路に供給する。A/D変換回路21は、入力された合成映像信号を、その信号レベルに応じてデジタル信号化する。
【0022】
以下、RGB信号生成回路20における、デジタル信号化された合成映像信号に対する一般的な処理を説明する。RGB信号生成回路20は、A/D変換回路21と、Y/C分離回路23と、画質調整回路24と、色復調回路25と、マトリクス回路26と、フレームメモリ27と、を備えている。RGB信号生成回路20では、各回路が各々フレームメモリ27をワークエリアとして利用しつつ処理を行う。
【0023】
まず、A/D変換回路21が、チューナ10から入力されたアナログ映像信号を所定のサンプリングレートでデジタル化し、YUV信号として(YUV形式で)フレームメモリ27に記憶させる。フレームメモリ27には、各画素の画像データが予め定められた所定のアドレスに格納されることになる。
【0024】
次に、Y/C分離回路23が、デジタル化されたYUV信号をフレームメモリ27から取得しつつ、輝度信号と色信号への分離を行う。分離された輝度信号は、画質調整回路24に入力され、コントラスト調整等の所定の画質調整が行われた後、マトリクス回路26に出力される。一方、分離された色信号は、色復調回路25において、R‐Y及びB‐Yの色差信号に復調された後、マトリクス回路26に出力される。マトリクス回路26においては、入力された輝度信号と色差信号とに基づいてマトリクス変換処理を行い、画像データとしてのRGB信号を生成する。
【0025】
生成されたRGB信号はドライバ回路30に出力される。ドライバ回路30は、画素数変換回路31と、画質調整回路32と、出力処理回路33と、フレームメモリ34とを有している。画素数変換回路31は、入力されたRGB信号に対して、スケーリング処理を行って、表示器40に表示される1画面分のRGB信号を生成する。そして、1画面分のRGB信号を画素情報としてフレームメモリ34に格納する。
【0026】
画質調整回路32は、画素数変換回路31によってスケーリング処理が施され、フレームメモリ34に格納されたRGB信号に対して、ブライトネス、コントラスト、シャープネス、黒バランスおよび白バランスの調整を行う。出力処理回路33は、画質調整回路32によって画質調整が施されたRGB信号に対して、マイコン50の制御に従って、ガンマ補正、ディザ処理等を行うとともに、背景信号、OSD信号、ブランキング信号等を付加して表示器40に出力し、画像を表示させる。
【0027】
(2)画質調整処理:
次に、図2〜図7を参照して、映像信号に応じて該映像信号の各部に対する画質調整を自動的に選択する画質調整処理について説明する。図2は、画質調整処理の流れを示すフローチャート、図3,4は画質取得枠を説明する図、図5,6はダイナミックレンジを説明する図、図7はシャープネス処理を説明する図、である。
【0028】
以下、図2の画質調整処理の流れに沿って説明を行う。
処理が開始されると、ステップS10で、画質取得枠Fが初期位置に設定される。ここで、画質取得枠Fの設定の仕方について説明する。画質取得枠Fは、画質調整処理において、テレビジョン100の画面上に仮想的に設定される。画質取得枠Fは、複数の領域の組合せで構成されており、例えば図3のように枡状領域A1〜A4を縦横に2×2で並べた矩形枠として構成される。無論、各領域の形状は枡状に限るものではなく、例えば六角形、六角形と五角形、三角形、円形、等、様々な形状を採用可能であるし、領域の数も4つに限るものではなく、2以上の任意の数を採用可能である。また、本実施形態においては、画質取得枠Fは左上隅を初期位置としてあるが、無論、画面上の何れの位置を初期位置としても構わない。
【0029】
続くステップS12では、画質取得枠Fの各領域に対応する画像データを、フレームメモリ27から取得する。すなわち、設定された画質取得枠Fの各領域A1〜A4に対応する部位の画像データD1〜D4を、マイコン50が、フレームメモリ27から取得する。このとき、フレームメモリ27の画像データが、予め画質取得枠Fの領域単位でメモリアドレスが連続するように記憶されていると、画像データの取得処理が容易になり好適である。
【0030】
続くステップS14では、取得した画像データの輝度と色情報とを、各領域で平均化する。すなわち、マイコン50は、ステップS12で取得した画像データD1〜D4の各画素の色情報と輝度情報(画像情報)を各画像データD1〜D4内で平均化し、平均色情報Cave1〜Cave4および平均輝度情報Yave1〜Yave4を作成する。
【0031】
続くステップS16では、画質取得枠Fを構成する各領域間で、平均輝度情報の比較と、平均色情報の比較とを行う。これらの比較により、主要対象物を含む領域と背景の領域とが識別される。主要対象物と背景の識別は、以下のように行われる。
まず、図4のように画質取得枠F1内に、主要対象物と背景とが両方含まれる場合は、主要対象物を含む領域A1,A3,A4と主要対象物を含まない領域A2との間でコントラストが大きくなる(所定の閾値よりもコントラスト差が大きくなる)。ただし、例えば、図4のように太陽の下で撮影した映像であれば、主要対象物である岩は背景に対して暗くなる場合が多いのに対し、夜景をバックに撮影した人物映像等であれば、主要対象物となる人物は背景に対して明るくなる場合が多い等、主要対象物と背景とでいずれが明るいかは必ずしも明確ではない。従って、いずれの領域に主要対象物が含まれるかは、対象物の判断を実行中の画質取得枠F1よりも外側の映像との比較で行われる。
【0032】
例えば、画面全体の平均輝度情報Yaveとの比較を行うことが考えられる。すなわち各フレームに画質取得枠Fを設定するにあたり、フレーム内の平均輝度情報Yaveを算出しておき、Yaveに近い平均輝度情報を有する領域を背景と判断し、Yaveから遠い平均輝度情報を有する領域を主要対象物を含む領域と判断するのである。
【0033】
また、例えば、対象物の判断を実行中の画質取得枠Fの周辺画像との比較を行うことも考えられる。すなわち、領域間のコントラストが大きいことを検出すると、検出時点で設定されている画質取得枠Fの設定位置を周囲にずらし、ずらした先で平均輝度情報を作成して周辺の平均輝度情報との比較を行うのである。この場合、周辺の平均輝度情報に近い平均輝度情報を有する側の領域を背景と判断することができる。このように、画質取得枠Fの外側の映像と比較することにより、画質取得枠F内に主要対象物と背景との双方を含む場合であっても、何れの領域が主要対象物を含むかを適切に判断可能となる。
【0034】
次に、画質取得枠F2のように、画質取得枠内にモノトーンの背景のみが含まれる場合は、領域間のコントラストが小さく(所定の閾値よりもコントラスト差が小さい)、色情報の変化も小さくなる(所定の閾値よりも色情報の変化度合が小さい、モノトーンである)。背景にはぼかし処理が実行されるが、その際、色情報に応じて背景の種類を判断し、どの程度のぼかし処理を行うかを選択する。例えば、青系統の色であれば、背景であり且つ空であると判断できるため、比較的強めのぼかし処理を選択する。これに対し、緑系統の色であれば、背景であり且つ森や林や草原などの植物であると判断できるため、青系統に比して弱めのぼかし処理を選択する。
【0035】
さらに、画質取得枠F3,F4のように、画質取得枠内に複数種類の背景が含まれる場合は、領域間のコントラストが小さい(所定の閾値よりもコントラスト差が小さい)けれども、領域間で色情報の変化がある(所定の閾値よりも色情報の変化度合が大きい)ことになる。このときもぼかし処理が実行されるが、モノトーンの場合よりもぼかしの度合を少なめに設定することで、複数種類の背景間の境界が不明瞭にならない程度のぼかし処理が行われる。
【0036】
続くステップS18では、比較結果に基づいて各領域に適用する画質調整を設定する。比較結果に基づいて実行される画質調整画質調整は、主に、画像のフォーカスを合わせるための鮮鋭化処理(例えば、輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける処理、シャープネス処理等)と、画像のフォーカスをずらすぼかし処理(平滑化処理等)に大別される。より具体的には、鮮鋭化処理は、フレーム内の主要な被写体となる主要対象物に対して適用され、ぼかし処理は、フレーム内の背景に対して適用される。
【0037】
輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける処理では、まず、図5のように、主要対象物の存在する領域内の輝度分布のヒストグラムを作成する。このヒストグラムにおいて、実線に示す分布を取る場合、領域内の最も明るい画素の輝度と最も暗い画素の輝度との差が少ないが、輝度の分布が一点鎖線に示すように広がれば明るい画素の輝度と暗い画素の輝度との差が大きくなり、輝度表現の幅が広がることになる。ここで、図5は輝度分布を拡大する(コントラストを拡大する)ための輝度変換を示している。変換元の輝度yと変換後の輝度Yとの間において、
Y=ay+b
なる関係で変換させるとすると、変換元の最大輝度Ymaxと最小輝度Yminの画素の差はa>1の場合において変換後において大きくなり、図5に示すように輝度の分布が広がることになる。
【0038】
従って、このようなヒストグラムを作成にあたって、輝度の最大値から輝度の最小値までの間隔を輝度分布の幅として集計処理することが必要である。本実施形態においては、上述したようにフレームメモリ27の画像データはYUV256階調で表現されているので、Yを輝度情報として使用できる。無論、直接には輝度の値を持っていないRGBで表現された画像データであっても、次の変換式を利用すれば、輝度を取得可能であるので、フレームメモリ34に記憶されている画像データから輝度情報を作成しても構わない。
y=0.30R+0.59G+0.11B
【0039】
輝度分布は図5に示すように概ね山形に表れる。むろん、その位置、形状については様々である。輝度分布の幅はこの両端をどこに決めるかによって決定されるが、単に裾野が延びて分布数が「0」となる点を両端とすることはできない。裾野部分では分布数が「0」付近で変移する場合があるし、統計的に見れば限りなく「0」に近づきながら推移していくからである。
【0040】
このため、図6のように、分布範囲において最も輝度の大きい側と小さい側からある分布割合だけ内側に寄った部分を分布の両端とする。無論、この割合については、適宜、変更することが可能である。このように、ある分布割合だけ上端と下端をカットすることにより、ノイズなどに起因して生じている白点や黒点を無視することもできる。すなわち、このような処理をしなければ一点でも白点や黒点があればそれが輝度分布の両端となるので、255階調の輝度値であれば、多くの場合において最下端は階調「0」であるし、最上端は階調「255」となるが、例えば、上下端部から0.5%の画素数だけ内側に入った部分を端部とすることにより、このようなことが無くなる。そして、実際に得られたヒストグラムに基づいて画素数に対するカット割合を演算し、再現可能な輝度分布における上端の輝度値と下端の輝度値から順番に内側に向かいながらそれぞれの分布数を累積し、0.5%の値となった輝度値が最大輝度Ymaxと最小輝度Yminとなる。
【0041】
輝度分布の幅Ydifは最大輝度Ymaxと最小輝度Yminの差であり、
Ydif=Ymax−Ymin
となる。コントラストを拡大する画像処理としては、輝度の分布に応じて傾きaとオフセットbを決定すればよい。例えば、
a=255/(Ymax−Ymin)
b=−a・Yminあるいは255−a・Ymax
とおくと、せまい幅を持った輝度分布を機器ダイナミックレンジまで広げることができる。ただし、再現可能な範囲を最大限に利用して輝度分布の拡大を図った場合、ハイライト部分が白く抜けてしまったり、ハイシャドウ部分が黒くつぶれてしまったりすることが起こる。
【0042】
これを防止するには機器ダイナミックレンジの上端と下端に拡大しない範囲として輝度値で「5」位を残すようにすればよい。この結果、変換式のパラメータは次式のようになる。
a=245/(Ymax−Ymin)
b=5−a・Yminあるいは250−a・Ymax
そして、この場合にはY<Yminと、Y>Ymaxの範囲においては変換を行わないようにするとよい。このように機器ダイナミックレンジを有効活用するように画質調整することにより、主要対象物内でのコントラストが向上し、主要対象物の細部にまでフォーカスを合わせること可能となる。
【0043】
次に、シャープネス処理では、エッジ強調処理が行われる。このエッジ強調処理では図7に示すようなアンシャープマスクが利用される。強調前の各画素の輝度Yに対して強調後の輝度Y’は、
Y’=Y+Eenhance ・(Y−Yunsharp )
として演算される。Eenhanceはエッジの強調度合に応じて所望の値を採用可能である。ここで、Yunsharp は各画素の画像データに対してアンシャープマスク処理を施したものであり、アンシャープマスクは、中央の「10」の値をマトリクス状の画像データにおける処理対象画素Y(x,y)の重み付けとし、その周縁画素に対して同マスクの升目における数値(負の値)に対応した重み付けをして積算するのに利用される。図6に示すアンシャープマスクを利用するのであれば、
【数1】

なる演算式に基づいて積算する。同式において、「2」とあるのは重み付け係数の合計値である。また、Mijはアンシャープマスクの升目に記載されている重み係数であり、Y(x,y)は各画素の画像データであり、ijについてはアンシャープマスクにおける横列と縦列の座標値で示している。
【0044】
なお、エッジの強調度合いは、アンシャープマスクの大きさによっても変化するため、エッジ強調度Eenhance をクラス分けするとともに、対応するサイズのアンシャープマスクを用意しておき、対応するサイズのアンシャープマスクを利用するようにしても良い。
【0045】
これに対し、平滑化処理では、強調前の各画素の輝度Yに対して強調後の輝度Y”は前記式(1)を利用して、Y”=Yunsharp、で演算される。
【0046】
続くステップS20では、1フレームの全域に亘って画質取得枠Fの設定が終了したか否かを判断する。終了した場合は、次フレームの画像データがフレームメモリ27に保存されるまで待機する。そして、次フレームの画像データがフレームメモリ27に保存されると、ステップS10からの処理を繰り返す。一方、1フレームの全域に亘って画質取得枠Fの設定が終了していない場合は、ステップS22に進む。
【0047】
続くステップS22では、画質取得枠Fを所定量ずらして再設定する。ずらす方向としては、例えば図3のように左から右にずらしていき、右端に達すると下方にずらして左から右にずらすことを繰り返す等、画面左上から画面右下にかけてなめるように設定することが考えられる。画質取得枠Fの再設定が完了すると、ステップS12からの処理を繰り返す。
【0048】
以上、本実施形態においては、ステップS10,S20,S22を実行するマイコン50がスキャン手段を構成し、ステップS12,S14を実行するマイコン50がデータ抽出手段を構成し、ステップS16を実行するマイコン50が画質相違度合検出手段を構成し、ステップS18を実行するマイコン50が画質調整選択手段を構成する。
【0049】
(3)変形例:
本発明においては、以下のような変形も可能である。
本発明においては、マイコン50がスキャン、画質相違度合検出、画質調整選択、と画像処理の中核を担うため、処理量が過大になる可能性もある。そこで、テレビジョン100全体の制御を行うマイコン50とは別途、画質処理を専用に行うマイコン56を備えさせてもよい。別途マイコン56を設ける場合は、マイコン50とマイコン56とは相互通信や同期処理が可能な、例えばUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)などで接続されると好適である。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】テレビジョンの概略構成を示すブロック図である。
【図2】画質調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】画質取得枠を説明する図である。
【図4】画質取得枠を説明する図である。
【図5】ダイナミックレンジを説明する図である。
【図6】ダイナミックレンジを説明する図である。
【図7】シャープネス処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
10…チューナ、20…RGB信号生成回路、21…A/D変換回路、23…Y/C分離回路、24…画質調整回路、25…色復調回路、26…マトリクス回路、27…フレームメモリ、30…ドライバ回路、31…画素数変換回路、32…画質調整回路、33…出力処理回路、34…フレームメモリ、40…表示器、50…マイコン、54…操作パネル、55…リモコンI/F、70…IICバス、100…テレビジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたテレビ放送信号から抽出された映像信号に基づく映像を画面に表示させるテレビジョンにおいて、
各領域が複数画素を含むように構成された略同サイズの領域を複数組み合わせた画質取得枠で、前記映像信号のフレーム画像上をスキャンするスキャン手段と、
スキャンされた各領域に対応する部分映像信号を前記映像信号から抽出するデータ抽出手段と、
前記部分映像信号の比較により、前記画質取得枠を構成する各領域間の画質相違度合を検出する画質相違検出手段と、
前記領域に対して施す画質調整を前記画質相違度合に応じて選択する画質調整選択手段と、
を具備することを特徴とするテレビジョン。
【請求項2】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出する請求項1に記載のテレビジョン。
【請求項3】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、
前記画質調整選択手段は、近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域の鮮鋭度を向上させる画質調整を選択する請求項1または請求項2に記載のテレビジョン。
【請求項4】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、
前記画質調整選択手段は、周辺領域に対して所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域の輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける画質調整を選択する請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のテレビジョン。
【請求項5】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差を検出し、
前記画質調整選択手段は、周辺領域に対して所定量以上のコントラスト差が検出された領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域のシャープネスを上昇させる画質調整を選択する請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のテレビジョン。
【請求項6】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合として各領域間の色情報の変化度合を検出し、
前記画質調整選択手段は、前記色情報の変化度合が所定値よりも小さい領域に対し、該領域の平滑度合を上昇させる画質調整を選択する請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のテレビジョン。
【請求項7】
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合としてコントラスト差並びに、各領域間の色情報の変化度合を検出し、
前記画質調整選択手段は、該変化度合が所定値よりも大きく且つ、該コントラスト差が所定量を下回る場合、該色情報に合わせたぼかし処理を画質調整として選択する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のテレビジョン。
【請求項8】
前記テレビ放送信号から抽出された映像信号をYUV形式で記憶するフレームメモリを備えており、
前記スキャン手段と前記データ抽出手段と前記画質相違検出手段と前記画質調整選択手段とは、マイコンの処理により実現されており、
前記スキャン手段の設定する画質取得枠は、枡状領域を縦横に2×2で並べた矩形枠として構成され、
前記データ抽出手段は、前記画質取得枠の各領域に対応する画像データを前記フレームメモリから取得し、取得した画像データの輝度と色情報とを各領域で平均化した平均色情報および平均輝度情報を作成し、
前記画質相違検出手段は、前記画質相違度合として前記平均輝度情報のコントラスト差並びに、各領域間の平均色情報の変化度合を検出し、
前記画質調整選択手段は、
近接領域との間で所定量以上のコントラスト差が検出された領域のうちフレームの平均輝度から離れた輝度を有する領域に主要対象物が含まれると認識し、該主要対象物を含む領域に対し、該領域の輝度分布を機器ダイナミックレンジに近づける画質調整及び、該領域のシャープネスを上昇させる画質調整を選択し、
前記色情報の変化度合が所定値よりも小さい領域に対し、該領域の平滑度合を上昇させる画質調整を選択し、
該変化度合が所定値よりも大きく且つ、該コントラスト差が所定量を下回る場合、該色情報に合わせたぼかし処理を画質調整として選択する請求項1に記載のテレビジョン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−49807(P2009−49807A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215222(P2007−215222)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】