説明

テンプレートを用いる複合印刷版の作製方法

【課題】テンプレートを用いる複合印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】本発明は、テンプレートを用いて感光性エレメントとキャリヤーとから複合印刷版を作製する方法に関する。感光性エレメントは、テンプレート中の切抜き部分を介してエレメントを定置することによりキャリヤー上に位置決めされる。本方法は、凸版印刷用の複合印刷版の作製、特定的には、段ボール基材にフレキソ印刷するための複合印刷版の作製にとくに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合印刷版の作製方法、特定的には、凸版印刷に使用するための複合印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、段ボール箱、ボール箱、紙の連続ウェブ、およびプラスチックフィルムの連続ウェブをはじめとする包装材料に印刷するために広く使用されている。フレキソ印刷版とは、インクが隆起画像表面から移行されて基材に転写される凸版印刷版のことである。フレキソ印刷版は、(特許文献1)および(特許文献2)に記載されるように、典型的にはエラストマーバインダーと少なくとも1種のモノマーと光開始剤とを含む光重合性組成物から作製可能である。感光性エレメントは、一般に、支持体と、カバーシートまたは多層カバー要素との間に介挿された、光重合性組成物の固体層を有する。
【0003】
凸版画像印刷版を用いて印刷される段ボール箱および他の比較的大きい対象物は、多くの場合、それらの全表面領域のごく小部分に実際の印刷が施されるにすぎない。当業者は、多くの場合、複数の凸版画像印刷版を共通のキャリヤーシート上に取り付けることにより作製される複合印刷版を用いて比較的大きい対象物に印刷する。しかしながら、個々の版は、実際に印刷する必要のある対象物の部分に対応するキャリヤーの部分のみに取り付けられる。しかしながら、構成要素の凸版画像版を取り付けるためのこのシステムでは、労力がかかり、しかも高品質の印刷および多色再現を行うためにオンプレスで正確な位置合せを確保しつつキャリヤーに版を注意深く接着することが必要である。個々の色のそれぞれを印刷するために単一の版を使用する多色再現の場合、版の相互の正確な位置合せがとくに重要である。
【0004】
複合印刷版の他の作製方法は、たとえば、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、および(特許文献7)に提案されており、それらは、構成要素の光硬化性エレメントの正確な位置合せを必要としない。一般的には、こうした方法は、少なくとも1つの光硬化性エレメントをキャリヤーの表面上に近似的位置合せで配設する工程と、次に、コンピューター生成ネガ画像をエレメントの表面に転送する工程と、を含む。こうした方法は、光硬化性エレメントの定置を反映するように意図された印刷エレメントすなわちキャリヤーのいかなる目視認識可能な修正に関する位置合せ情報をも転送することを含む。ネガ画像またはマスクは、エレメントの表面上にインクを噴射することによりまたはレーザー線で露光してエレメントの表面から照射線不透過性層を選択的に除去することにより形成可能である。
【0005】
段ボールおよび他の大きい対象物に印刷する他の方法は、対象物の全表面領域に対応する表面領域を有する単一の凸版画像版を作製することである。しかしながら、対象物の表面のごく一部分に印刷する必要があるにすぎないので、凸版画像版のごく一部分が実際にインクの転写に使用されるにすぎないであろう。版の残りの部分は未使用になり、凸版画像の部分が形成されると同時にウォッシュアウト処理により除去される。しかしながら、未使用部分を除去する際、ウォッシュアウト装置および凸版画像版に極度の応力が加わる。したがって、大きい未使用部分すなわち非画像化部分は、処理前に切除される。
【0006】
基材に対して印刷画像の位置合せを行うために、印刷胴上またはキャリヤー上に取り付ける時に1つもしくは複数の凸版印刷版の正確な定置を確保することが望ましい。印刷胴の軸に平行に印刷されるように、すなわち、斜めに印刷されないように、凸版印刷版を胴上に定置しなければならない。多色印刷の場合、異なる色の印刷画像が互いに位置合せされるように、印刷されるそれぞれの色の凸版印刷版をアライメントしなければならない。位置合せ誤差により、色の重なり、色のない隙間、色のずれ、および/または画像細部の劣化を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,323,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,759号明細書
【特許文献3】米国特許第5,846,691号明細書
【特許文献4】米国特許第6,312,871号明細書
【特許文献5】米国特許第6,312,872号明細書
【特許文献6】米国特許第6,399,281号明細書
【特許文献7】米国特許第6,472,121号明細書
【特許文献8】米国特許第5,262,275号明細書
【特許文献9】米国特許第5,719,009号明細書
【特許文献10】欧州特許第0741330B1号明細書
【特許文献11】米国特許第5,506,086号明細書
【特許文献12】米国特許第5,607,814号明細書
【特許文献13】米国特許第5,766,819号明細書
【特許文献14】米国特許第5,840,463号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0891877A号明細書
【特許文献16】米国特許第5,760,880号明細書
【特許文献17】米国特許第5,654,125号明細書
【特許文献18】米国特許出願第12/349608号明細書
【特許文献19】米国特許出願第12/401106号明細書
【特許文献20】独国特許出願公開第3828551号明細書
【特許文献21】米国特許第3,796,602号明細書
【特許文献22】米国特許第5,015,556号明細書
【特許文献23】米国特許第5,175,072号明細書
【特許文献24】米国特許第5,215,859号明細書
【特許文献25】国際公開第98/13730号パンフレット
【特許文献26】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献27】特許協力条約出願PCT/US00/24400号明細書
【特許文献28】欧州特許出願公開第0017927号明細書
【特許文献29】米国特許第4,806,506号明細書
【特許文献30】米国特許第5,562,039号明細書
【特許文献31】米国特許第5,292,617号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来の方法を用いる場合でさえも、複合印刷版を作製するための代替プロセスが当技術分野で依然として必要とされている。特定的には、複合印刷版に対して構成要素の凸版画像印刷版の正確な位置合せを行うための使用しやすい代替プロセスが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
a)光重合性組成物の層と光重合性層の上に配設された赤外感光性層とを含む感光性エレメントを提供する工程と、
b)シートの一部分を除去して切抜き部分を形成することによりシートからテンプレートを形成する工程と、
c)テンプレートをキャリヤーに隣接して定置する工程と、
d)エレメントをテンプレートの切抜き部分内に挿入することによりエレメントをキャリヤーに固定する工程と、
e)赤外感光性層を赤外レーザー線で画像様露光してエレメント上にマスクを形成する工程と、
f)マスクを介してエレメントを化学線で全面露光する工程と、
g)f)のエレメントを処理してキャリヤー上に凸版構造体を形成する工程と、
を含む、複合印刷版の作製方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、テンプレートを用いて少なくとも1つの感光性エレメントとキャリヤーとから複合印刷版を作製する方法である。本方法は、凸版印刷用の複合印刷版の作製、特定的には、段ボール基材にフレキソ印刷するための複合印刷版の作製にとくに適する。複合印刷エレメントは、テンプレートにより少なくとも1つの切抜き部分に保有された基本的な位置合せ情報に従って少なくとも1つの感光性エレメントをキャリヤーの面上に取り付けるにより作製される。
【0011】
本発明は、複合印刷版の作製時に個々の凸版印刷エレメントを手動で位置合せしなければならないという厄介な要件を排除する方法を提供する。とくに段ボールに印刷するいくつかの最終使用用途では、段ボール基材から形成された構成部分の全サイズに対して段ボール基材の比較的小さい領域のみを印刷する必要があるにすぎない。したがって、印刷に必要な位置でのみ感光性エレメントの1つ以上の部分をキャリヤー上に選択的に取り付けることが望ましい。本発明に係る方法によれば、最終的に基材に印刷する領域に対して位置合せすることなくおよその位置で、所要の好適なサイズの1つ以上の感光性エレメントをキャリヤー上に取り付ける。次に、複合版に対してコンピューターから生成されたディジタル情報を用いてマスク画像を形成することにより、少なくとも1つの感光性エレメントの正確な位置合せを達成する。これはまた、キャリヤー上のマークに揃えるために各感光性エレメントの凸版画像中に位置合せマークを含む従来の方法の複雑さを回避する。また、本発明は、複合印刷版の通常の製造プロセスに容易に統合可能である。本方法を達成するのに追加の装置はまったく必要ない。段ボールならびに包装用および表示用の他の剛性材料のプロッティング、カッティング、およびクリージングですでに使用されているディジタル変換テーブル装置は、本プロセス、とくにテンプレートの形成に使用可能である。キャリヤー上に定置すべく感光性エレメントが挿入される切抜き部分を有するテンプレートを用いて複合印刷版を作製する本方法は、とくに、感光性エレメントを位置決めすべくキャリヤーを直接マーキングする従来の方法と比較して、いくつかのさらなる利点を提供する。テンプレートの使用により、消費される材料の節約ならびに材料のコストおよび/または複合印刷版の作製時間の削減が可能になる。同一もしくは類似のデザイン特性を有する後続の複合印刷版、すなわち、キャリヤー上の同一もしくは実質的に同一の位置に少なくとも1つの感光性エレメントを有する複合印刷版を作製するために、テンプレートを再利用することが可能である。こうすれば、後続のキャリヤーをマーキングする必要がないので、後続の複合印刷版の作製時間を削減することも可能になる。キャリヤーは後続の感光性エレメントの定置を繁雑にするマークをなんら有していないので、後続の印刷版を作製するためにキャリヤーを再利用することも可能である。さらに、カスタマーショップの作業者は、前の作業からの残りである感光性エレメントの未使用部分またはスクラップ部分が現在の複合印刷版を作製するのに好適であるかを決定するために、キャリヤーを使用するよりも容易に、切抜き部分を有するテンプレートを使用することが可能である。本発明で使用するのに好適なテンプレートは、ほとんどの実施形態では、スクラップ感光性エレメントへの移動およびその上への定置を容易に行える軽量のフィルムシートである。これに反して、キャリヤーは、より重く(テンプレート用のシートよりも)かつキャリヤーのサイズが原因でより嵩高い材料から作製されることが多いので、キャリヤーは、スクラップ感光性エレメントへの移動およびその上への定置を行ううえで扱いにくい可能性がある。
【0012】
凸版印刷用の複合印刷版の作製に使用される感光性エレメントは、少なくとも1層の光重合性層を含む。ほとんどの実施形態では、凸版印刷用の複合印刷版の作製に使用される感光性エレメントは、支持体と支持体に隣接する少なくとも1層の光重合性層とを含む。光重合性層は、バインダーと少なくとも1種のモノマーと光開始剤とを含むエラストマー層である。キャリヤー上に版を取り付けるいくつかの先行技術の方法では、版の凸版画像は、キャリヤー上への取付け前にすでに形成されているが、それとは異なり、本方法では、未硬化または「未処理」の感光性エレメントをキャリヤー上に固定する。感光性エレメントは、ディジタル情報に基づいてマスク画像を形成しうる赤外感光性層を光重合性層の上に配設して(支持体に対向して)含む。赤外感光性層は、感光性エレメントと一体化可能であるか、または一緒になって集成体を形成する別のエレメントに結合可能である。赤外感光性層に結合された未硬化感光性エレメントは、本明細書中ではディジタル感光性エレメントと記されることもある。本方法では、切抜き部分を有するテンプレートを用いてキャリヤーと組み合わされたディジタル感光性エレメントを提供することにより複合印刷版を作製する。キャリヤー上に取り付けるのに適切なサイズであれば、感光性エレメントは、入手したままの状態で使用可能である。ディジタル感光性エレメントは、平面状領域、すなわち、長さとその厚さよりも大きい幅とを有し、かつ2つの実質的にフラットな対向する主要面を有する。他の選択肢として、ディジタル感光性エレメントは、キャリヤー上に選択的に取り付けられるかまたはそれに固定される1つ以上のより小さいサイズのセグメントに切断可能である。キャリヤーに固定されたディジタル感光性エレメントのセグメントは、複合印刷版により印刷するのに好適な凸版構造体をキャリヤー上に形成する。キャリヤー上のディジタル感光性エレメントは、正確な位置合せを確保する一体型マスク画像を感光性エレメント上に形成するディジタル法を実施することと、一体型マスクを有する感光性エレメントを化学線で露光することと、処理して凸版を形成することと、により、キャリヤー上の凸版構造体に変換される。ディジタル法とは、コンピューターから生成されたグラフィック情報(データファイル)たとえばテキストおよび画像を複合印刷版上の感光性エレメントにディジタル方式で(すなわちコンピューター制御方式で)転送する任意の方法を指す。ほとんどの実施形態では、ディジタル法は、不透過性領域と透過性領域とを含む一体型マスク画像として機能するように感光性層の上に配設されかつ感光性エレメントと一体化された画像の形成を含む。ディジタル法はまた、コンピュータートゥプレート技術またはコンピュータートゥプレート法と呼ばれることもある。ディジタル法はまた、本明細書中ではディジタル技術またはディジタル画像技術と記されることもある。
【0013】
当業者には周知のように、複合印刷版により印刷されるグラフィック情報たとえばテキストおよび画像のデザインは、ページレイアウトデータを含むデータファイルを生成するようにコンピューターソフトウェアにより取り込まれて操作される。ページレイアウトデータは、グラフィック情報が「ページ」上または基材上に印刷される1つ以上の位置を表すベクトルデータまたはビットマップデータに基づきうる。ページレイアウトデータを用いて、複合印刷版に必要とされる感光性エレメントの数およびサイズを決定することが可能である。ページレイアウトデータに基づくいくつかの実施形態では、コンピューターによりディジタル感光性エレメント用の切断ガイドが生成される。切断ガイドとは、複合印刷版により印刷される画像に望まれるサイズおよび形状に基づいて大きい感光性エレメントを1つ以上のより小さいセグメント(スラグと呼ばれることもある)に切断する指標となるパターンのことである。一実施形態では、感光性エレメントは、コンピューターに接続された自動切断用テーブル上に配置され、そして切断ガイドに基づいて適切なサイズのスラグに切断される。とくに好適な切断用テーブルは、EskoArtwork製のKongsbergディジタル変換テーブルである。他の実施形態では、ページレイアウトデータに基づいて感光性エレメントを適切なサイズのスラグに手動で切断することが可能である。感光性エレメントは、所要の適切なサイズに切断可能であるか、または所要のサイズよりもわずかに大きなサイズに切断可能である。
【0014】
本方法の他の工程は、少なくとも1つの切抜き部分を有するテンプレートを形成することである。テンプレートは、シートの一部分を除去して切抜き部分を生成することによりシートから形成される。テンプレートの切抜き部分のサイズは、ページレイアウトデータに基づく印刷画像のサイズに少なくとも一致するが、わずかにオーバーサイズに切断された感光性エレメントを収容するように調整することが可能である。少なくとも1つの切抜き部分は、キャリヤー上の感光性エレメントのセグメントすなわちスラグの少なくとも1つの位置に対応する。したがって、感光性エレメント用の適切に位置決めされた切抜き部分を有することにより、テンプレートを用いて、感光性エレメントのセグメントをキャリヤーに対してほぼ位置合せすることが可能である。テンプレートもまた、ページレイアウトデータの情報に基づいて切断される。シートは、Kongsbergテーブルのような自動切断用テーブル上に配置され、そしてテーブル上で基準点に対して方向付けされる。切断用テーブルは、ページレイアウトデータから決定される1つ以上の位置でかつ所要のサイズでシートを切断してシートの除去後に切抜き部分を形成するコンピューター駆動式切断工具を含む。ほとんどの実施形態では、テンプレートは、キャリヤーと同一もしくは実質的に同一のサイズを有する。テンプレートのサイズは、テンプレートに使用されるシートの幅および長さの平面状領域に基づく。他の実施形態では、テンプレートは、幅および長さの一方または両方の寸法がキャリヤーのサイズよりも大きいサイズを有しうる。他の実施形態では、テンプレートのサイズがキャリヤーに対する位置合せ用の適切な孔を収容できるのであれば、テンプレートは、キャリヤーの幅および長さの一方または両方の寸法よりも小さいサイズを有しうる。印刷画像の配置に関して第2の複合印刷版のグラフィックデザインが第1の複合印刷版と類似もしくは同一であるいくつかの実施形態では、第2のキャリヤー上に感光性エレメントのセグメントを位置決めするために、テンプレートをリサイクルすなわち再利用することが可能である。ほとんどの実施形態では、1つのテンプレートを使用して感光性エレメントの少なくとも1つのセグメントをキャリヤー上に定置する。いくつかの実施形態では、2つ以上のテンプレートを逐次的に使用して感光性エレメントの2つ以上のセグメントをキャリヤー上に定置することが可能である。シートとして使用するのに好適な材料は、限定されるものではなく、たとえば、ポリエステルフィルムのような高分子フィルム、ビニル樹脂、プラスチック、金属、紙、およびカード紙が挙げられうる。テンプレートに好適なシートの一実施形態は、印刷版の作製時にフィルム画像群を集成するために印刷工業で一般に使用されるゴールデンロッドフィルムである。
【0015】
キャリヤーは、印刷のために感光性エレメントの位置または感光性エレメントの各セグメントの位置を保持および維持する。ほとんどの実施形態では、キャリヤーは、シートの形態をとるが、そのように限定されるものではなく、円筒形状の形態を包含しうる。キャリヤーは、サイズ領域または平面状領域を有し、すなわち、長さとその厚さよりも実質的に大きい幅とを有し、かつキャリヤーに使用されるシートの実質的にフラットな対向する主要面を有する。キャリヤーが円筒形状である実施形態では、サイズは、少なくとも1つの感光性エレメントを固定する円筒形状のキャリヤーの外表面の表面領域に基づき(円筒の端表面を除外する)、この場合、長さは、円筒状キャリヤーの外表面の外周に相当し、かつ幅は、円筒状キャリヤーの高さに相当する。本発明ではキャリヤーシートをマーキングしないので、いくつかの実施形態では、第1の複合印刷版のキャリヤーから感光性エレメントのセグメントを取り外した後、第2の複合印刷版で第1の複合印刷版のキャリヤーをリサイクルすなわち再利用することが可能である。(キャリヤーを再利用する場合、位置合せインジケーターでキャリヤーを不可逆的にマーキングすると、第2の複合印刷版用の感光性エレメントのセグメントを配置する際に混乱を生じる可能性がある。)
【0016】
シートキャリヤーとして使用するのに好適な材料は、印刷胴の周りにラッピングするために可撓性であり、とくに印刷時の変形および伸長に対して耐性を有し、かつ処理による変形またはサイズ変化に対して耐性を有するものであれば、いずれであってもよい。キャリヤーとして好適な材料の例としては、ビニルプラスチック、リノリウム、金属、および高分子フィルムたとえばポリエステルフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。キャリヤーの好適な厚さは、0.005〜0.185インチ(0.013〜0.47cm)である。多くの実施形態では、キャリヤーは、0.010〜0.030インチ(0.025〜0.076cm)の厚さを有するポリビニルクロリド(PVC)またはポリエチレンテレフタレートの高分子フィルムである。円筒形状のキャリヤーとして使用するのに好適な材料は、円筒状印刷版に使用するための支持体(印刷スリーブまたはスリーブと一般に呼ばれる)であれば、いずれであってもよい。スリーブまたは円筒状支持体のタイプは、本発明により限定されるものではない。スリーブは、可撓性材料の単一層または複数層から形成可能である。いくつかの実施形態では、高分子フィルムで作製された可撓性スリーブが好適である。他の実施形態では、ニッケルのような金属のスリーブまたはガラスエポキシのスリーブが好適である。スリーブは、10ミル(0.025cm)未満〜80ミル(0.203cm)以上の壁厚を有しうる。また、任意の適切な手段、たとえば、溶融融着、テーピング、スティッチング、クランピング、ステープリング、テーピング、グルーイング、およびソーイングにより、キャリヤーシートの対向端を接合して円筒形状のキャリヤーを形成することが可能であると考えられる。キャリヤーは、感光性エレメントをキャリヤーシートに固定する前に、好ましくは固定した後で、円筒形状に形成することが可能である。キャリヤーそれ自体は、位置合せ情報、すなわち、キャリヤー上に取り付けられる少なくとも1つの感光性エレメントの位置情報を有するように改変されることはない。
【0017】
キャリヤー(シートの形態)およびテンプレートは両方とも、少なくとも2つの開口または孔が位置決めされた先端を有する。少なくとも2つの孔は、先端の近傍かつそれに平行に位置決めされて1列に離間して配置される。孔(少なくとも2つよりも多い孔)のサイズ、形状、および数は、本発明の目的ではとくに限定されるものではない。キャリヤーおよびテンプレートの先端の少なくとも2つの孔は、キャリヤーに対してテンプレートを位置合せする能力を提供する。キャリヤーの先端の少なくとも2つの孔はまた、キャリヤーを取付け用の取付けバーに固定するためにおよび印刷胴に対してキャリヤーの位置合せを確保するために使用可能である。キャリヤーおよびテンプレートの先端の孔は、従来の装置により、マシニング、パンチング、またはドリリングが可能である。従来のパンチング装置の供給元は、Stoesser、Burgess Industries、およびCarlsonのような印刷工業用のフィルムパンチの製造業者である。キャリヤーおよびテンプレートの先端のそれぞれに孔をパンチングした後、テンプレートをキャリヤーに隣接して定置する。ほとんどの実施形態では、切抜き部分を目で見て利用できるようにテンプレートをキャリヤーの上に定置する。キャリヤーが透過性材料で作製される他の実施形態では、切抜き部分を目で見ることができるようにキャリヤーをテンプレートの上に定置することが可能である。一実施形態では、先端の少なくとも2つの孔をバー上の少なくとも2つのピンに揃えてキャリヤーをピンバーに一時的に取り付けることと、テンプレートをキャリヤーに揃えるようにテンプレートの先端の少なくとも2つの孔をバーの対応するピンと共に位置決めしてテンプレートをキャリヤーの上に配置することと、により、テンプレートをキャリヤーに隣接して定置する。
【0018】
キャリヤーが円筒形状である実施形態では、キャリヤーは、画像形成装置または他の装置に結合された支持円筒上に(予備)取付け可能であり、かつそれ自体、円筒状キャリヤーに隣接してテンプレートを揃え、および定置するのに用いられる基準マークまたは他の手段を含みうる。テンプレートの1つ以上の端をキャリヤーにテープ留めまたはピン留めすることにより、セグメントを取り付ける間、テンプレートをキャリヤー上の所定の位置に保持することが可能である。
【0019】
本方法は、エレメントをテンプレートの切抜き部分内に挿入することにより感光性エレメントをキャリヤーに固定することを含む。2つ以上の感光性エレメントをキャリヤー上に固定する場合、エレメントを切抜き部分内に挿入することにより感光性エレメントを固定する工程は、感光性エレメントの各セグメントに必要な回数だけ反復される。感光性エレメントの各セグメントは、ディジタル法による画像の位置合せを可能にする位置でキャリヤー上に確実に存在するように、テンプレートの対応する適切なサイズの切抜き部分内に挿入される。したがって、ディジタル感光性エレメントのうちの1つ以上は、最終的に基材に印刷する領域に対するガイドとしてのテンプレートを介して近似的位置合せでキャリヤー上に取り付けられる。感光性エレメントのセグメントは、赤外感光性層(すなわち一体型マスクを有するようになる層)に対向するエレメントの側がキャリヤー上に存在するかまたはそれに隣接するように、キャリヤー上に取り付けられる。ほとんどの実施形態では、感光性エレメントの支持体がキャリヤーに隣接するであろう。感光性エレメントは、なんら特定の精度で取り付ける必要はないが、テンプレートの関連する切抜き部分内に位置決めする必要がある。必要とされるのは、最終的に凸版画像を担持するようになるキャリヤーの部分上に感光性エレメントを固定するかまたは取り付けることだけである。複合印刷版に対する正確な位置合せは、キャリヤー上に取り付けられた感光性エレメントの外表面(支持体に対向する)へのグラフィック情報のコンピューター制御ディジタル転送により達成される。
【0020】
感光性エレメントは、当業者に公知の多くの手段のいずれかを用いて固定可能であるかまたは取付け可能である。ほとんどの実施形態は、テンプレートに基づいて切抜き位置で感光性エレメント、キャリヤー、またはその両方に両面接着テープまたはなんらかの他の好適な接着剤を適用することを含む。いくつかの実施形態では、両面接着テープを感光性エレメントの支持体に適用する。他の実施形態では、支持体を感光性エレメントから除去し、支持体がそれまで存在していた感光性エレメントの表面に両面接着テープを適用する。感光性エレメントのセグメントをテンプレートに挿入してキャリヤーに固定した後、テンプレートをキャリヤーから除去または分離する。
【0021】
マスクを介して感光性エレメントを化学線で全面露光する本方法の次の工程に備えて、in situマスク画像を支持体に対向する光重合性層の表面上に形成するかまたはその表面の上に配設する。in−situマスクはまた、一体型マスク画像と呼ばれることもある。IR感光性層は、それ自体が感光性エレメントに対する一体型マスキング層を形成可能であるか、またはエレメント上に一体型マスク層を形成する1層以上の隣接層(照射線不透過性)と組み合わせて使用可能である。マスクは、不透過性領域と画像を形成する「透過性」領域とを含む。マスクの不透過性領域は、下側の光重合性材料が照射線で露光されるのを防止する。したがって、暗領域により覆われた光重合性層のこうした領域では、重合が起こらない。マスクの「透過性」領域では、化学線で光重合性層が露光されて重合または架橋が起こる。光重合性層の画像様露光に必要な画像は、任意のディジタル法により生成可能である。キャリヤー上の感光性エレメント中の凸版画像の正確な位置合せは、エレメントを近似的に位置決めしてキャリヤーに固定した後で行われるディジタル技術によるエレメント上の一体型マスク画像の生成を介して達成される。
【0022】
ディジタル感光性エレメントは、レーザー線を用いて感光性エレメントに対するマスクを形成する(従来のフォトツールフィルム画像の代わりに)ディジタル画像技術に使用される赤外感光性層を含み、この層はまた、いくつかの実施形態では、化学線不透過性層としても機能しうる。ディジタル法では、レーザー線を用いてマスク画像をin situで光重合性層上に生成するかまたはその上に配設する。マスク画像を生成するディジタル法は、画像様露光の前に感光性エレメントを作製する1つ以上の工程を必要とする。一般的には、in situマスク形成を行うディジタル法では、支持体に対向する感光性エレメントの表面から照射線不透過性層を除去するかまたはその表面に選択的に転写するかのいずれかである。赤外感光性層中には、黒色の材料、たとえば、カーボンブラックやグラファイトのような暗色の無機顔料、顔料の混合物、金属、および金属合金が存在し、赤外感光性材料としても照射線不透過性材料としても機能する。赤外線レーザー露光は、750〜20,000nmの範囲内で発光する種々のタイプの赤外線レーザーを用いて実施可能である。780〜2,000nmの範囲内で発光するダイオードレーザーおよび1064nmで発光するNd:YAGレーザーをはじめとする赤外線レーザーが好ましい。in situマスク画像は、化学線で全面露光を行う後続の工程のために感光性エレメント上に残存する。感光性エレメントの表面上にin−situマスクをディジタル形成するために使用される好適な赤外線レーザー露光装置の1つは、CYREL(登録商標) Digital Imager(EskoArtwork(Gent,Belgium)により販売されている)である。従来的には、レーザー露光装置は、平面状感光性印刷エレメントの一端を保持してレーザー画像形成時にエレメントをドラムに確実に取り付けるクランプを有する回転ドラムを含む。ドラムは、平面状エレメントの他端を保持するための第2のクランプを含みうる。レーザー露光装置のドラムおよび/またはクランプは、複合印刷版の取付けに適合するように改変可能である。一実施形態では、複合印刷版をレーザー照射装置に取り付けるために、取外し可能な取付けバーを使用することが可能である。取外し可能な取付けバーは、ドラム上のクランプの長さ(すなわち幅)と同一もしくは実質的に同一の長さを有する。その長さに沿って、取付けバーは、ドラムに揃えるための1つ以上の開口と、複合印刷版を取付けバー(およびドラム)に揃えるための1つ以上の隆起ピンと、を含む。ドラムは、取付けバー中の1つ以上の開口に嵌合する1つ以上のピンをクランプに有しうるかまたはそれに隣接して有しうる。ドラムピンと取付けバー中の開口との嵌合により、ドラム(およびレーザー)に対する取付けバーの位置合せが行われる。取付けバー上の隆起ピンは、キャリヤーの先端の孔に対応するように定置される。複合印刷版は、キャリヤーの先端の孔を取付けバー上の隆起ピンに係合させてキャリヤーの先端をクランプで掴持することにより、ドラムに固定される。取付けバーおよび複合印刷版をクランプにより固定する時に取付けバー上の隆起ピンを収容するように、クランプの部分をその長さに沿って切除することが可能である。いくつかの実施形態では、ドラム用の取付けバーは、複合印刷版を印刷胴に固定するために使用される取付けバーから独立した、異なるものである。他の実施形態では、複合印刷版を印刷胴に固定するために使用される取付けバーと同一の取付けバーを収容するように、レーザー露光装置のドラムおよびクランプを改変することが可能である。
【0023】
ディジタル法の1つでは、感光性エレメントは、最初、光重合性層の全表面を覆うかまたは実質的に覆う赤外感光性層を含む。赤外感光性層は、赤外レーザー線で画像様露光されて画像すなわちin situマスクを光重合性層上に形成するかまたはその上に配設する。Fanにより(特許文献8)および(特許文献9)にならびにFanにより(特許文献10)に開示されるように、赤外レーザー線により光重合性層から赤外感光性層(すなわち照射線不透過性層)を選択的に除去することが可能である(たとえば、融除するかまたは気化させることが可能である)。(特許文献11)でVan Zoerenにより開示されるように、感光性エレメントから材料を除去する際に材料を捕獲するために、赤外感光性層に隣接する材料捕獲シートをレーザー露光時に存在させてもよい。感光性エレメントから除去されなかった赤外感光性層の部分だけは、エレメント上に残存して照射線不透過性材料のin situマスクを形成する。
【0024】
マスク形成を行う他のディジタル法では、感光性エレメントは、最初、赤外感光性層を含まないであろう。赤外感光性層を照射線不透過性層として担持する個別のエレメントは、支持体に対向する感光性エレメント(典型的には光重合性層である)の表面に照射線不透過性層が隣接するように、感光性エレメントと共に集成体を形成するであろう。(光重合性層に結合されたカバーシートは、存在したとしても、集成体の形成前に除去される)。個別のエレメントは、ディジタル露光プロセスを支援する1層以上の他の層、たとえば、イジェクション層または加熱層を含みうる。こうした他の層はまた、赤外感光性層とみなすことも可能である。この点に関して、照射線不透過性層もまた、赤外線に対して感光性である。集成体は、Fanらにより(特許文献12)に、ならびにBlanchettにより(特許文献13)、(特許文献14)、および(特許文献15)に開示されるように、赤外レーザー線で画像様露光されて照射線不透過性層を選択的に転写しかつ画像を光重合性層上に形成するかまたはその上に配設する。転写された照射線不透過性層の部分だけが感光性エレメント上に存在してin situマスクを形成するであろう。
【0025】
さらに、マスク画像を個別のキャリヤー上に生成し、次に、熱および/または圧力を加えることにより支持体に対向する光重合性層の表面に転写することが可能である。光重合性層は、典型的には粘着性であり、転写画像を保持するであろう。場合により、次に、画像様露光前に、個別のキャリヤーをエレメントから除去することが可能である。個別のキャリヤーは、赤外レーザー線で画像様露光されて照射線不透過性材料を選択的に除去しかつ画像を形成する赤外感光性層(同様に照射線不透過性層であるかまたは照射線不透過性層に結合されている)を有しうる。このタイプの個別のキャリヤーの例は、Rexam Inc.製のLaserMask(登録商標)画像形成フィルムである。他の選択肢として、照射線不透過性材料を有する他のエレメントから照射線不透過性材料の画像をレーザー線により個別のキャリヤーに転写することが可能である。個別のキャリヤーは、キャリヤーに隣接してかつキャリヤーに固定された感光性エレメントに揃えて個別のキャリヤーをピンバーに位置決めするために、その前縁に沿って少なくとも2つの孔を含みうる。
【0026】
赤外線レーザー線での画像様露光は、750〜20,000nmの範囲内で発光する種々のタイプの赤外線レーザーを用いて実施可能である。780〜2,000nmの範囲内で発光するダイオードレーザーおよび1064nmで発光するNd:YAGレーザーをはじめとする赤外線レーザーが好ましい。感光性エレメントから化学線不透過性層を画像様に除去するための好ましい赤外線レーザー露光装置およびその方法は、Fanらにより(特許文献16)および(特許文献17)に開示されている。一体型マスク画像は、化学線で全面露光する後続の工程のために感光性エレメント上に残存する。
【0027】
本発明に係る方法の次の工程は、一体型マスク画像を介して化学線で感光性エレメントを全面露光すること、すなわち、ディジタル方式で形成されたマスクを介してエレメントを画像様露光することである。本発明に係る感光性エレメントは、好適な光源からの化学線でマスクを介して露光される。化学線露光時間は、照射線の強度および分光エネルギー分布、感光性エレメントからのその距離、所望の画像解像度、ならびに光重合性組成物の性質および量に依存して、数秒間から数分間までさまざまでありうる。露光温度は、好ましくは、周囲温度またはそれよりもわずかに高い温度、すなわち、約20℃〜約35℃である。露光は、支持体までまたは背面露光層すなわちフロアまで露光領域を架橋するのに十分な持続時間である。画像様露光時間は、典型的には、バックフラッシュ露光時間よりもかなり長く、数分間〜数十分間の範囲内である。
【0028】
化学線源は、紫外および可視の波長領域を包含する。特定の化学線源の適合性は、開始剤の光感度と感光性エレメントの作製に使用される少なくとも1種のモノマーとにより支配される。凸版印刷用の最も一般的な感光性エレメントの好ましい光感度は、より良好なルームライト安定性を与えることからスペクトルのUV領域および深UV領域に存在する。好適な可視光源およびUV光源の例としては、炭素アーク、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、電子フラッシュユニット、電子ビームユニット、レーザー、および写真用フラッドランプが挙げられる。UV線の最も好適な光源は、水銀蒸気ランプ、特定的にはサンランプである。業界標準の照射線源の例としては、Sylvania 350 Blacklight蛍光ランプ(FR48T12/350 VL/VHO/180、115w)およびPhilips UV−A「TL」シリーズ低圧水銀蒸気蛍光ランプが挙げられる。典型的には、水銀蒸気アークまたはサンランプは、感光性エレメントから約1.5〜約60インチ(約3.8〜約153cm)の距離で使用可能である。こうした照射線源は、一般的には、310〜400nmの長波UV線を発光する。こうした特定のUV光源に対して感光性のフレキソ印刷版では、310〜400nmを吸収する光開始剤が使用される。
【0029】
in−situマスクを有する感光性エレメントの化学線による画像様露光は、限定されるものではなく、大気中の酸素の存在下で、大気中の酸素の不在下で、または大気中よりも少ない制御量の酸素を有する雰囲気中で、実施可能である。真空中で露光を行う場合、大気中の酸素は排除される。その層中で起こる重合反応に及ぼす酸素の影響を最小限に抑えるために、真空中で露光を行うことが可能である。マスクは、照射線不透過性材料で光重合性層上にin situで形成されるかまたは画像様に適用され、in−situマスクの十分な接触を確保するために真空を必要性とすることはないので、大気中の酸素の存在下で露光を行うことが可能である。複合印刷版を作製するプロセスのいくつかの実施形態では、全面露光工程は、真空を用いることなく、すなわち、感光性エレメントが大気中の酸素の存在下にある状態で、かつin−situマスクの上に追加の層をなんら存在させることなく、行われる。複合印刷版を作製するプロセスの他の実施形態では、全面露光工程は、不活性ガスと大気中の酸素よりも少ない制御量の酸素とを有する雰囲気中で行われる。不活性ガスと190,000百万分率(ppm)〜100ppmの範囲内の制御酸素濃度とを有する環境中でディジタル感光性エレメントを全面露光する好適な方法は、2009年1月7日出願の(特許文献18)(代理人整理番号IM−1346)および2009年3月10日出願の(特許文献19)(代理人整理番号IM−1359CIP)に記載されている。
【0030】
本発明に係る方法は、通常、背面露光工程すなわちバックフラッシュ工程を含む。これは、感光性エレメントの支持体を介する化学線によるブランケット露光である。それは、光重合性層の支持体側に重合材料の層すなわちフロアを生成するためにおよび光重合性層を増感するために使用される。フロアは、光重合性層と支持体と間の改良された接着を提供し、ドット解像度の増強を支援し、さらには凸版の深さを確保する。バックフラッシュ露光は、他の画像形成工程の前、後、またはその間で行うことが可能である。全面(画像様)化学線露光工程に関連して以上で論述した従来の照射線源はいずれも、バックフラッシュ露光工程に使用することが可能である。露光時間は、一般的には、数秒間から数分間までの範囲内である。キャリヤーおよび取付け手段が化学線に対して十分に透過性であるかぎり、感光性エレメントをキャリヤーに固定した後で背面露光工程を行うことが可能であるが、ほとんどの実施形態では、感光性エレメントをキャリヤーに固定する前に背面露光が行われる。
【0031】
マスクを介するUV線による全面露光の後、感光性印刷エレメントは、光重合性層の未重合領域を除去することにより凸版画像を形成すべく処理される。処理工程では、少なくとも化学線で露光されなかった領域、すなわち、光重合性層の未露光領域または未硬化領域で光重合性層が除去される。エラストマー性キャッピング層を除いて、典型的には、光重合性層上に存在しうる追加の層は、光重合性層の重合領域から除去または実質的に除去される。一体型マスク画像を有する感光性エレメントの場合、マスク画像(化学線で露光された)およびその下側の光重合性層の未露光領域もまた、処理工程で除去される。
【0032】
感光性印刷エレメントの処理は、(1)光重合性層を好適な現像剤溶液に接触させて未重合領域をウォッシュアウトする「湿式」現像と、(2)光重合性層の未重合領域の溶融または軟化または流動を引き起こす現像温度に感光性エレメントを加熱して吸収性材料との接触により吸い取って除去する「乾式」現像と、を包含する。乾式現像はまた、熱現像と呼ばれることもある。
【0033】
湿式現像は、通常、ほぼ室温で行われる。現像剤は、有機溶媒、水性もしくは半水性の溶液、および水でありうる。現像剤の選択は、主に、除去される光重合性材料の化学的性質に依存するであろう。好適な有機溶媒現像剤としては、芳香族もしくは脂肪族の炭化水素溶媒および脂肪族もしくは芳香族のハロ炭化水素溶媒、またはそのような溶媒と好適なアルコールとの混合物が挙げられる。他の有機溶媒現像剤は、(特許文献20)に開示されている。好適な半水性現像剤は、通常、水と水混和性有機溶媒とアルカリ性材料とを含有する。好適な水性現像剤は、通常、水とアルカリ性材料とを含有する。他の好適な水性現像剤の組合せは、(特許文献21)に記載されている。
【0034】
現像時間は、さまざまでありうるが、好ましくは約2〜約25分間の範囲内である。現像剤は、浸漬適用、スプレー適用、ブラシ適用、またはローラー適用をはじめとする任意の便利な方法で適用可能である。ブラッシング助剤を用いてエレメントの未重合部分を除去することが可能である。ウォッシュアウトは、現像剤と機械的ブラッシング作用とを使用して版の未露光部分を除去する自動処理装置で行うことが可能であり、その結果、露光画像とフロアとを構成する凸版が得られる。
【0035】
溶液中で現像することにより処理した後、凸版印刷版は、一般的には、吸い取るかまたは払拭することにより乾燥され、次に、強制エアまたは赤外線炉でより十分に乾燥される。乾燥時間および乾燥温度は、さまざまでありうるが、典型的には、版は、60℃で60〜120分間乾燥される。高温は推奨されない。なぜなら、支持体が収縮する可能性があり、これにより位置合せの問題を生じる可能性があるからである。
【0036】
エレメントの熱処理は、光重合性層の未硬化部分の軟化または溶融または流動を引き起こすのに十分な温度に少なくとも1層の光重合性層(および追加の層)を有する感光性エレメントを加熱する工程と、エレメントの最外表面を吸収性表面に接触させて溶融部分または流動部分を吸収するかまたは吸い取ることにより除去する工程と、を含む。光重合性層の重合領域は、未重合領域よりも高い溶融温度を有するので、熱現像温度で溶融も軟化も流動も起こさない。フレキソ印刷版を形成するための感光性エレメントの熱現像は、Martensにより(特許文献22)、(特許文献23)、(特許文献24)に、およびWangらにより(特許文献25)に記載されている。
【0037】
「溶融」という用語は、軟化および粘度低下させて流動および吸収性材料による吸収を可能にする高温に付される光重合性エラストマー層の未照射部分の挙動を記述するために使用される。光重合性層の溶融性部分の材料は、通常、固体と液体との間のシャープな転移を有していない粘弾性材料であり、したがって、プロセスは、吸収性材料中への吸収に対するある閾値を超える任意の温度で加熱された組成物層を吸収するように機能する。本発明の目的で組成物層を「溶融」するために、広い温度範囲を利用することが可能である。奏効的なプロセス操作時、吸収は、温度が低いほど遅くなり、温度が高いほど速くなるであろう。
【0038】
感光性エレメントを加熱する熱処理工程およびエレメントの最外表面を吸収性材料に接触させる熱処理工程は、吸収性材料に接触させた時に光重合性層の未硬化部分が依然として軟質であるかまたは溶融状態にあるかぎり、同時にまたは逐次的に行うことが可能である。少なくとも1層の光重合性層(および追加の層)は、伝導、対流、輻射、または他の加熱方法により、未硬化部分の溶融を引き起こすのに十分であるが層の硬化部分の歪みを引き起こすほど高くない温度に加熱される。光重合性層の上に配設された1層以上の追加の層も同様に、軟化または溶融または流動を起こして吸収性材料により吸収される可能性がある。感光性エレメントは、光重合性層の未硬化部分の溶融または流動を引き起こすために、約40℃超、好ましくは約40℃〜約230℃(104〜446°F)の表面温度に加熱される。吸収性材料と未硬化領域が溶融された光重合性層との多かれ少なかれ十分な接触を保持することにより、光重合性層から吸収性材料への未硬化感光材料の転写が行われる。加熱状態にあるうちに、支持体層に接触する硬化された光重合性層から吸収性材料を分離して、凸版構造体を露出させる。光重合性層を加熱する工程と溶融された(部分)層を吸収性材料に接触させる工程とのサイクルは、未硬化材料を適切に除去しかつ十分な凸版の深さを生成するのに必要な回数だけ反復可能である。しかしながら、好適なシステム性能を得るためにサイクル数を最小限に抑えることが望ましく、典型的には、光重合性エレメントは、5〜15サイクルで熱処理される。吸収性材料と光重合性層との十分な接触(未硬化部分が溶融状態にある間)は、層と吸収性材料とを押圧一体化させることにより保持可能である。
【0039】
感光性エレメントを熱現像するための好ましい装置は、Petersonらにより(特許文献26)に、さらにはJohnsonらにより2000年9月6日出願の(特許文献27)(IM−1289PCT)に開示されている。感光性エレメントは、熱処理を行うためにドラム上または平面状表面上に配置可能である。
【0040】
光重合性層の未硬化部分の溶融温度を超える溶融温度を有しかつ同一の操作温度で良好な耐引裂性を有する吸収性材料が選択される。好ましくは、選択される材料は、加熱時に感光性エレメントを処理するのに必要な温度に耐える。吸収性材料は、不織材料、紙料、繊維状織成材料、連続気泡発泡材料、空隙体積として内包体積の実質的部分を多かれ少なかれ含有する多孔性材料から選択される。吸収性材料は、ウェブまたはシートの形態をとりうる。吸収性材料はまた、溶融されたエラストマー組成物に対して高い吸収性を有していなければならない。好ましいのは、不織ナイロンウェブである。
【0041】
また、感光性エレメントは、凸版を形成するために未硬化部分を十分に除去する1つ以上の処理工程に付すことが可能であると考えられる。凸版を形成するために感光性エレメントを湿式現像および乾式現像の両方に任意の順序で付すことが可能である。光重合性層の上に配設された追加の層のうちの1層以上を除去するために、そのような追加の層がウォッシュアウト溶液によりおよび/または加熱により除去できない場合に予備現像処理工程が必要になることもある。
【0042】
光重合プロセスが終了しかつエレメントが印刷時および貯蔵時に安定な状態を保持することを保証すべく、本発明に係る感光性印刷エレメントを化学線で均一に後露光することが可能である。この後露光工程では、全面主露光と同一の照射線源を利用することが可能である。
【0043】
粘着性除去処理は、感光性印刷エレメントの表面が依然として粘着性である場合に適用しうるオプションの現像後処理であり、そのような粘着性は、一般的には、後露光で除去されない。粘着性は、当技術分野で周知の方法により、たとえば、臭素溶液または塩素溶液による処理により、排除可能である。好ましくは、粘着性除去処理は、(特許文献28)およびGibsonの(特許文献29)に開示されるように、300nm以下の波長を有する照射線源で露光することにより達成される。
【0044】
したがって、処理後、こうして作製された複合印刷版は、印刷胴上に取付け可能な状態である。複合印刷版を取り付ける方法は、限定されるものではない。凸版印刷版を印刷胴上に取り付ける一方法では、Foxらにより(特許文献30)に記載されるように、前縁孔に挿入される取外し可能なピンおよび取付けバーを介して取付けバーを複合印刷版の前縁に装着する。取付けバーを複合印刷版の前縁に固定する他の方法としては、ソーイング、グルーイング、クランピングなどが挙げられる。取付けバーは、基材に位置合せしてかつ必要に応じて多色画像に位置合せして複合印刷版を印刷胴に固定する能力を提供する。
【0045】
感光性エレメント
フレキソ印刷版の作製に使用される感光性エレメントは、少なくとも1層の光重合性組成物層を含む。「感光性」という用語は、少なくとも1層の感光性層が化学線に応答して1つもしくは複数の反応、特定的には光化学反応を開始しうる任意の系を包含する。いくつかの実施形態では、感光性エレメントは、光重合性層に対する支持体を含む。いくつかの実施形態では、光重合性層は、バインダーと少なくとも1種のモノマーと光開始剤とを含むエラストマー層である。いくつかの実施形態では、感光性エレメントは、化学線不透過性材料としても機能しうる赤外感光性材料層を光重合性層に隣接して支持体に対向して含む。
【0046】
とくに指定がないかぎり、「感光性エレメント」という用語は、化学線による露光および処理が施されて印刷に好適な表面を形成しうる印刷用前駆体を包含する。とくに指定がないかぎり、「感光性エレメント」および「印刷版」とは、印刷に好適になるかまたは印刷に好適である任意の形態のエレメントまたは構造体を包含するものであり、たとえば、限定されるものではないが、フラットシート、プレート、プレートオンスリーブ、およびプレートオンキャリヤーが挙げられる。感光性エレメントから得られる印刷版は、フレキソ印刷や活版印刷のような凸版印刷向けの最終使用印刷用途を有すると考えられる。凸版印刷とは、印刷版の画像領域が隆起しかつ非画像領域が陥没した状態で印刷版により画像領域から印刷が行われる印刷方法のことである。
【0047】
感光性エレメントは、少なくとも1層の光重合性組成物層を含む。本明細書中で用いられる場合、「光重合性」という用語は、光重合性、光架橋性、またはその両方の系を包含するように意図される。光重合性層は、バインダーと少なくとも1種のモノマーと光開始剤とを含む組成物で形成される固体エラストマー層である。光開始剤は、化学線に対する感度を有する。本明細書全体を通して、化学光は、紫外線および/または可視光を含むものとする。光重合性組成物の固体層は、1種以上の溶液および/または熱で処理されるとフレキソ印刷に好適な凸版を形成する。本明細書中で用いられる場合、「固体」という用語は、一定の体積および形状を有しかつその体積または形状を変化させようとする力に耐える層の物理的状態を意味する。光重合性組成物層は、約5℃〜約30℃の温度の室温で固体である。ほとんどの実施形態では、光重合性組成物の固体層は、未重合型であるが、光重合性組成物が重合型(光硬化型)または重合型と非重合型との両方であるいくつかの実施形態を含みうる。
【0048】
バインダーは、限定されるものではなく、単一のポリマーまたはポリマーの混合物でありうる。いくつかの実施形態では、バインダーは、エラストマーバインダーである。他の実施形態では、バインダーは、化学線で露光されるとエラストマーになる。バインダーとしては、共役ジオレフィン炭化水素の天然もしくは合成のポリマー、たとえば、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリル、およびジエン/スチレン熱可塑性エラストマーブロックコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、バインダーは、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマーである。ただし、Aは、非エラストマーブロックを表し、かつBは、エラストマーブロックを表す。非エラストマーブロックAは、ビニルポリマーたとえばポリスチレンでありうる。エラストマーブロックBの例としては、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが挙げられる。いくつかの実施形態では、エラストマーバインダーは、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマーおよびポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマーを包含する。バインダーは、水性、半水性、水、または有機溶媒のウォッシュアウト溶液中に溶解可能、膨潤可能、または分散可能である。一般的には、ウォッシュアウト現像に好適なエラストマーバインダーはまた、光重合性層の未重合領域が加熱により軟化、溶融、または流動を起こす熱処理に使用するのにも好適である。
【0049】
光重合性組成物は、透過性非混濁感光性層が生成される範囲内でバインダーと相溶しうる付加重合可能な少なくとも1種の化合物を含有する。付加重合可能な少なくとも1種の化合物はまた、モノマーと呼ばれることもある。光重合性組成物に使用可能なモノマーは、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、少なくとも1つの末端エチレン基を有する付加重合性エチレン性不飽和化合物を包含する。組成物は、単一のモノマーまたはモノマーの組合せを含有しうる。当業者であれば、好適なエラストマー性および他の性質を光重合性組成物に提供するように、モノマーを適切に選択することが可能である。
【0050】
光開始剤は、化学線に対して感光性であり過度の停止を伴うことなく1種もしくは複数種のモノマーの重合を開始するフリーラジカルを生成させる任意の単一の化合物または化合物の組合せでありうる。公知のクラスの光開始剤、特定的にはフリーラジカル光開始剤のいずれも、使用可能である。他の選択肢として、光開始剤は、照射線により活性化される増感剤によりフリーラジカルを提供するようにした時に化合物のうちの1つがフリーラジカルを提供する化合物の混合物でありうる。好ましくは、主露光(ならびに後露光およびバックフラッシュ)用の光開始剤は、310〜400nm、好ましくは345〜365nmの可視線または紫外線に対して感光性である。
【0051】
光重合性組成物は、所望の最終特性に応じて他の添加剤を含有しうる。光重合性組成物への追加の添加剤としては、増感剤、可塑剤、レオロジー改質剤、熱重合禁止剤、着色剤、プロセス助剤、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、染料、および充填剤が挙げられる。
【0052】
光重合性層の厚さは、所望の印刷版のタイプに依存して広範にわたりうる。いくつかの実施形態では、感光性層は、約0.002インチ〜約0.250インチ以上(約0.051mm〜約0.64cm以上)の厚さを有しうる。光重合性層の典型的な厚さは、約0.010インチ〜約0.250インチ(約0.025cm〜約0.64cm)である。いくつかの実施形態では、感光性層は、約0.107インチ〜約0.300インチ(約0.27〜約0.76cm)の厚さを有しうる。
【0053】
感光性エレメントは、典型的には、光重合性組成物層に隣接する支持体を含む。支持体は、印刷版の作製に使用される感光性エレメントと共に従来的に使用される任意の材料または材料の組合せで構成可能である。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体を介する「バックフラッシュ」露光に適合する化学線に対して透過性である。好適な支持体材料の例としては、高分子フィルム、たとえば、付加ポリマーおよび線状縮合ポリマーにより形成されたもの、透過性の発泡体および布、たとえば、繊維ガラスが挙げられる。金属支持体が照射線に対して透過性でないとしても、特定の最終使用条件下では、アルミニウム、鋼、およびニッケルのような金属を支持体として使用することも可能である。いくつかの実施形態では、支持体は、ポリエステルフィルムである。一実施形態では、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。いくつかの実施形態では、支持体は、0.002〜0.050インチ(0.0051〜0.127cm)の厚さを有する。他の実施形態では、シートの形態の支持体の厚さは、0.003〜0.016インチ(0.0076〜0.040cm)である。
【0054】
場合により、エレメントは、支持体と光重合性層との間に接着剤層を含むか、または光重合性層に隣接する支持体の表面は、接着促進性表面を有する。さらに、Feinbergらにより(特許文献31)に開示されるように、支持体を介してエレメントを化学線で露光することにより、支持体に対する光重合性層の接着性を調整することが可能である。
【0055】
典型的には、プレートオンスリーブは、平面状支持体上すなわちプレート上に少なくとも組成物層を含む感光性エレメントであり、このエレメントは、後続的に円筒形状の支持体上に取り付けられる。スリーブ上にラッピングする時、プレートの端を当接または接合させてもまたはさせなくてもよい。プレートオンスリーブはまた、2つ以上のプレートまたはプレートの一部分が種々の離間した位置でスリーブ上に取り付けられる実施形態をも包含する。
【0056】
当業者には周知のように、感光性エレメントは、光重合性層に隣接して、すなわち支持体に対向する光重合性層の側に、1層以上の追加の層を含みうる。所望の使用に応じて、追加の層は、化学線に対して不透過性であっても透過性であってもよく、感光性エレメントに対して1つ以上の機能を有していてもよい。追加の層としては、剥離層、エラストマー性キャッピング層、バリヤー層、接着改質層、感光性エレメントの表面特性を変化させる層、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1つ以上の追加の層は、処理時、その全部または一部が除去可能でありうる。追加の層のうちの1つ以上は、感光性組成物層を覆ってもよいし部分的に覆ってもよい。所望の最終用途に基づいて光重合性層上の追加の層を選択および作製することは、十分に当業者の通常の技能の範囲内にある。
【0057】
一実施形態では、感光性エレメントは、支持体に対向する光重合性層の表面の上に配設された化学線不透過性層でもある赤外感光性層を含む。化学線不透過性層は、光重合性層の表面を実質的に覆ってもよいしその画像形成性部分だけを覆ってもよい。化学線不透過性層は、光重合性材料の感度に対応する化学線に対して実質的に不透過性である。化学線不透過性層は、バリヤー層を併用してまたは併用せずに使用可能である。バリヤー層を併用する場合、バリヤー層は、光重合性層と照射線不透過性層との間に配設される。存在すれば、バリヤー層により光重合性層と照射線不透過性層との間の材料の移行を最小限に抑えることが可能である。化学線不透過性層はまた、不透過性層を選択的に除去または転写しうるレーザー線に対して感光性である。一実施形態では、化学線不透過性層は、赤外レーザー線に対して感光性である。化学線不透過性層は、照射線不透過性材料と赤外線吸収性材料とオプションのバインダーとを含む。暗色の無機顔料、たとえば、カーボンブラックおよびグラファイト、顔料の混合物、金属、および金属合金は、一般的には、赤外感光性材料としても照射線不透過性材料としても機能する。オプションのバインダーは、高分子材料であるが、これに限定されるものではない。化学線不透過性層の厚さは、感度および不透過性の両方を最適化する範囲内にしなければならず、一般的には、約20オングストローム〜約50マイクロメートルである。化学線不透過性層は、化学線および下側の光重合性層の重合を効果的に阻止するために、2.0超の透過光学濃度を有していなければならない。
【0058】
本発明に係る感光性印刷エレメントは、エレメントの最上層の上に一時的なカバーシートをさらに含みうる。カバーシートの目的の1つは、保存時および取扱い時に感光性印刷エレメントの最上層を保護することである。カバーシートに好適な材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアミド、またはポリエステルの薄膜が挙げられる。それらに下地層として剥離層を設けることが可能である。カバーシートは、好ましくは、ポリエステル、たとえば、Mylar(登録商標)ポリエチレンテレフタレートフィルムから作製され、最も好ましくは、カバーシートは5ミルMylar(登録商標)である。
【0059】
複合印刷版上の感光性エレメントは、感光性エレメントの露光(および処理)の後、約20〜約80ショアAのジュロメーター硬度を有する。いくつかの実施形態では、複合印刷版上の(露光および処理の施された)感光性エレメントは、30〜50ショアAのジュロメーター硬度を有する。ショアジュロメーター硬度は、押込みに対する材料の耐性の尺度である。ショアAのジュロメーター硬度は、軟質ゴムまたはエラストマー材料に対して典型的に使用されるスケールであり、値が大きいほど針入に対する耐性が大きい。印刷版のジュロメーター硬度は、DIN53,505またはASTM D2240−00に記載の標準手順に従って測定可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)光重合性組成物の層とこの光重合性層の上に配設された赤外感光性層とを含む感光性エレメントを提供する工程と、
b)シートの一部分を除去して切抜き部分を形成することによりシートからテンプレートを形成する工程と、
c)前記テンプレートをキャリヤーに隣接して定置する工程と、
d)前記エレメントを前記テンプレートの切抜き部分内に挿入することにより前記エレメントを前記キャリヤーに固定する工程と、
e)前記赤外感光性層を赤外レーザー線で画像様露光して前記エレメント上にマスクを形成する工程と、
f)前記マスクを介して前記エレメントを化学線で全面露光する工程と、
g)f)のエレメントを処理して前記キャリヤー上に凸版構造体を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、複合印刷版の作製方法。
【請求項2】
工程a)のエレメントを2つ以上のエレメント部分に切断する工程をさらに含み、前記形成工程が、前記シートの2つ以上の部分を除去して2つ以上の切抜き部分を形成することにより行われ、前記2つ以上の切抜き部分が、サイズに関して前記2つ以上のエレメント部分にほぼ対応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形成工程が、前記テンプレート中の切抜き部分の位置をページレイアウトデータから決定する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記形成工程が、ナイフを有するコンピューター制御式切断用集成体を含む切断用テーブル上に前記シートを配置する工程と、前記ナイフを用いてその位置で前記シートを切断する工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)のエレメントの切断が、ナイフを有するコンピューター制御式切断用集成体を含む切断用テーブル上に前記エレメントを配置する工程と、前記エレメント上で前記ナイフを移動して前記2つ以上のエレメント部分を形成する工程と、を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリヤーの前縁で少なくとも2つの位置合せ孔をパンチングする工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートの前縁で少なくとも2つの位置合せ孔をパンチングする工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記テンプレートの前縁で少なくとも2つの位置合せ孔をパンチングする工程をさらに含み、前記定置工程c)が、前記テンプレートの位置合せ孔を前記キャリヤーの位置合せ孔に揃える工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
取付けバーを工程g)のエレメントの端に装着する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記画像様露光工程e)が、前記光重合性層から前記赤外感光性層を融除する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記画像様露光工程e)が、前記支持体に対向する前記光重合性層の表面に前記赤外感光性層を転写する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリヤーが前記化学線に対して透過性であり、前記方法が、前記キャリヤーを介して前記化学線で前記エレメントを露光する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程g)の後、前記キャリヤーから前記エレメントを除去する工程と、工程b)〜g)に従って第2の感光性エレメントを用いて第2の複合印刷版を作製する時に前記キャリヤーを再利用する工程とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程c)〜g)に従って第2の感光性エレメントを用いて第2の複合印刷版を作製する時に前記テンプレートを再利用する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程d)の前、取付けバーを前記キャリヤーの先端に装着する工程と、前記キャリヤーを有する前記取付けバーを前記画像様露光により位置合せしてドラム上に固定する工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2009−301027(P2009−301027A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−128121(P2009−128121)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】