説明

ディスプレイパネル用フレキシブル基板及びその製造方法

【課題】本発明は、ディスプレイパネル用フレキシブル基板及びその製造方法に関し、本発明の目的は、透明でかつ薄膜でありながら、熱膨張係数が低く、柔軟性、耐熱性、及び表面粗さに優れたディスプレイパネル用フレキシブル基板を提供することである。
【解決手段】本発明にかかるディスプレイパネル用フレキシブル基板は、第1の耐熱性樹脂の内部にガラスクロスが含浸された第1のフィルムと、第1のフィルムの耐熱性樹脂と同等の透過率及び耐熱性を有する樹脂であって、前記第1のフィルムの少なくとも片面に塗布される中間材と、第2の耐熱性樹脂から前以って製造されたフィルムであって、前記中間材の上にラミネートされる第2のフィルムとを含む、フィルム複合構造で構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル用フレキシブル基板及びその製造方法に関し、より詳細には、ガラスクロス(Glass Cloth)を含んだ第1のフィルム上に第2のフィルムをラミネート(Laminating)することにより、透明で且つ薄膜であり、熱膨張係数が低く、さらに、柔軟性、耐熱性及び表面粗さに優れたディスプレイパネル用フレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広範囲に普及されているディスプレイ装置(例えば、液晶表示装置)には、ガラス素材からなる透明電極基板が使用されている。しかし、ガラス基板は、板厚の厚さと重量の重さのために、液晶表示装置の薄形化及び軽量化には限界がある。また、耐衝撃に脆弱であり、特に、ガラス素材の脆性によって、フレキシブルディスプレイに使用するには不適合である。
【0003】
これにより、プラスチック光学フィルム素材のフレキシブル基板が、従来のガラス基板に代わる素材として脚光を浴びている。フレキシブル基板は、液晶ディスプレイをはじめとし、有機EL、電子ペーパー等のような次世代のディスプレイ装置に非常に適した特性を有している。
【0004】
プラスチック光学フィルム素材で形成されるフレキシブル基板は、従来、ディスプレイパネルとして使用されていたガラス基板に比して、薄くて軽く、フレキシブルな軟性を有しており、様々な形態で加工することが可能である。したがって、次世代のディスプレイ装置において核心的に求められている軽量化、薄形化、及び曲面表示機能などを具現することができるようになる。
【0005】
上述したようなフレキシブル基板の長所により、フレキシブル基板の素材及び構造等に対する多様な研究開発が行われている。
【0006】
具体的に検討すると、開発の初期には、単純に、プラスチック高分子からなる透明フィルム素材を採用したフレキシブル基板が使用された。その後、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、アルコール硬化触媒を用いた組成物などをフレキシブル基板の素材に適用した。
【0007】
しかしながら、上記のような素材で構成されたフレキシブル基板は、線膨張係数が大きいという問題があり、特に、上記のような素材で構成されたフレキシブル基板をアクティブマトリックス表示素子基板として使用する場合、製造工程の途中にタワミが生じて、アルミニウム配線の断線が生じるなどのような問題点が惹き起こされた。また、上記のような素材は、ガラスに比して、耐熱性、熱膨張係数(CTE)のような熱的特性、及び透明性や、屈折率のような光学的な特性が脆弱であり、フレキシブル基板として使用するには限界があった。
【0008】
したがって、プラスチック光学フィルム素材をディスプレイパネル用基板、特に、液晶表示素子用基板として使用するためには、耐熱性が良く、高い透過率を有しながら、熱膨張係数及びフィルムの表面粗さの低いプラスチック光学フィルム素材を開発することが、必ず必要となった。
【0009】
このような要求に応えるべく、プラスチック光学フィルム素材の熱膨張係数を減少するための従来の公知の技術を検討すると、樹脂にガラスパウダーやガラスクロス等の無機フィラーを配合して構成した複合フィルム構造体に関するものがあることが分かる。例えば、日本国特開2004-51960号には、エポキシ樹脂及びガラス織物状のガラスファイバー剤を含んだ樹脂シートが開示されており、日本国特開2004-233851号には、ガラスクロスと樹脂からなる透明基板が開示されている。
【0010】
しかし、ガラスクロスを樹脂に含浸して透明基板を製造する従来のフィルム構造体及びその製造方法には、以下のような問題点があった。
第一、ガラスファイバーを織物状で製造する工程は簡単ではなく、特に、ホットプレス工法などを用いてフィルムを大型に製造する場合、フィルムのカールなどを誘発するため、工程が長くなり、その上複雑となって、生産コストを増大させる。
【0011】
第二、UV硬化樹脂を用いて、ガラスクロスが含浸されたフィルムを製造する場合、ガラスファイバーが織物状で構成された構造的な特性とガラスクロスの収縮現象とによって、完成されたフィルムは、表面粗さが平坦ではなく、非常に粗くなり、ディスプレイ装置の画質不良をもたらすという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-51960号
【特許文献2】特開2004-233851号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述したような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、基板の表面粗さ問題を改善して、ディスプレイ装置の最適の画質を保障することができるフレキシブル基板を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、基板の表面粗さを改善することができると共に、低い熱膨張係数を確保することが可能となり、高温の工程において、基板の収縮膨張によるパターンセルの位相差変化を最小化することができるフレキシブル基板を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、従来の場合、基板を大型に製造するときに発生していたフィルムのカール問題を最小化し、簡単な工程で基板の大型化を具現することができるフレキシブル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、第1の耐熱性樹脂の内部にガラスクロスが含浸された第1のフィルムと、前記第1のフィルムの少なくとも片面にラミネートされて、第2の耐熱性樹脂からなる第2のフィルムとを含んだフィルム複合構造で構成されることを特徴とするディスプレイパネル用フレキシブル基板によって達成することができる。
【0017】
本発明のまた別の目的は、ディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法であって、ガラスファイバーを織物状で構成してガラスクロスを製造し、前記ガラスクロスを第1の耐熱性樹脂に含浸して第1のフィルムを製造する第1ステップと、第2の耐熱性樹脂を硬化して構成した第2のフィルムを前もって製造し、前記前もって製造した前記第2のフィルムを前記第1のフィルムの少なくとも片面にラミネート加工する第2ステップと、を含むことを特徴とするディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法によって達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るディスプレイパネル用フレキシブル基板、及びその製造方法によると、第1のフィルムと第2のフィルムとの有機的な結合を通じて、第1のフィルムによる熱膨張係数の減少効果を保障すると共に、第2のフィルムによる表面粗さの改善効果を確保することができるため、ディスプレイパネル基板の寸法安全性及び表面粗さを向上することができる顕著な効果がある。
【0019】
また、固形化された第2のフィルムが第1のフィルム上に粘着または接着されるフィルム複合構造を通じて、基板の収縮膨張によるカールの発生を防止することができるため、大型化が容易となり、製造工法が簡単であるため、生産性を向上することができる顕著な効果がある。
【0020】
さらに、表面粗さを改善するための第2のフィルムの製造時、前記第2のフィルムを構成する樹脂として複屈折のない耐熱透明樹脂を用いると、第1のフィルムとの屈折率のマッチングを考慮する必要がないため、適用可能な樹脂の種類が広くなり、これにより、製造費用の節減が可能となるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)乃至(c)は、本発明に係るディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造過程を示した図である。
【図2】図1の製造過程を通じて最終完成されたフレキシブル基板の断面図である。
【図3】本発明に係るディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法の作業手順を示した作業フロー図である。
【図4】本発明に係るさらに別の一実施例のフレキシブル基板断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
説明に先立って、以下において記述する好ましい実施例は、液晶表示装置、有機EL、及び電子ペーパーを含む多様なディスプレイ装置のうちから、液晶表示装置のような透明基板を要求するパネルに関する、最善のフレキシブル基板及びその製造方法についてのものであることを明らかにしておく。
【0023】
つまり、本発明に係るフレキシブル基板は、“85%以上の透過率”という光学的な特性と、“20ppm以下の熱膨張係数”という熱的特性を確保することができ、特に、基板の表面粗さ(Roughness)を改善することによって液晶表示装置のパネルの製造時、基板の表面粗さによるコントラストの低下問題を防止することができ、大型化が容易となる技術的な特徴を提示する。
【0024】
したがって、基板の透過率を考慮する必要のないディスプレイパネル(例えば、有機EL、電子ペーパー、太陽電池、光回路基板など)に本発明のフレキシブル基板を適用しようとする場合は、本発明のフレキシブル基板の透過率に影響を及ぼす技術的な特徴を考慮する必要がなく、熱的特性及び表面粗さを向上させるための構成のみを取り合わせて適用することができるのは言うまでも無い。
【0025】
以下において、図1乃至図3を参照して本発明に係るフレキシブル基板の特徴、好ましい実施例、及び長所について詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明に係るディスプレイパネル用フレキシブル基板は、第1の耐熱性樹脂110の内部にガラスクロス100が含浸されている第1のフィルムと、前記第1のフィルムの少なくとも片面にラミネートされて、第2の耐熱性樹脂からなる第2のフィルムとを含んだフィルム複合構造を提示する。
【0027】
本発明のフィルム複合構造を通じてフレキシブル基板の物性を改善することにより、適正透過率を保障し、従来におけるプラスチック基板の熱膨張係数の減少の限界を克服することが可能であり、特に、従来のガラスクロスを含む樹脂シートの表面粗さによるコントラストの低下問題を除去することができるという長点を確保するようになる。
【0028】
具体的に検討すると、本発明に係るフレキシブル基板は、第1の耐熱性樹脂110の内部にガラスクロス100を含んだ第1のフィルムを製造するステップと、製造された第1のフィルムの両外側面に、第1のフィルムの耐熱性樹脂110と同一の樹脂、または透明性および耐熱性の確保された樹脂からなる中間材120を塗布するステップと、第2の耐熱性樹脂から前もって製造された第2のフィルム200を前記中間材120の上にラミネートするステップと、を通じて製造される。
【0029】
(1)第1のフィルムの製造ステップ
本発明に係る第1のフィルムは、ガラスファイバーを織物状で構成してガラスクロス100を製造し、製造されたガラスクロス100を、液状の第1の耐熱性樹脂に浸漬した後、液状の第1の耐熱性樹脂を硬化することにより完成される。
【0030】
したがって、第1のフィルムは、硬化された第1の耐熱性樹脂110の内部にガラスクロス100が含浸状態で含まれている樹脂シート構造を有し、第1の耐熱性樹脂110の内部に含まれたガラスクロス100は、ガラス素材の有する低熱膨張係数によって、第2の耐熱性樹脂そのものが有する高い熱膨張係数を打ち消すことにより、パネル工程から発生し得る基板の変形を減少してくれる役割を果たすようになる。
【0031】
本発明の第1のフィルムを構成する第1の耐熱性樹脂110は、フィルムの透過率が85%以上であり、UV硬化または熱硬化性樹脂を使用して、具体的には、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、及びポリアリレート(PAR)のように、ガラス転移点が200℃以上である耐熱性樹脂のうちから選択した少なくともいずれか1つを使用することが好適であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0032】
これは、本発明に係るフレキシブル基板を180℃以上の温度の液晶表示装置の工程に適用するとき、樹脂そのものが有する高い熱膨張係数による基板の変形を最小化して、寸法安全性を確保しなければならないことからである。
【0033】
また、本発明に係るフレキシブル基板を液晶表示装置のように透明基板を要求するディスプレイパネルに適用するためには、低い熱膨張係数だけではなく、屈折率及び透過率のような光学的な特性も考慮しなければならない。
【0034】
液晶表示装置のパネルの場合、液晶によって選択的に透過された光が、フレキシブル基板を透過した後、使用者に到達する構造を有する。本発明に係るフレキシブル基板を構成する第1のフィルムは、樹脂シートの内部にガラスクロス100が含浸されている構造を有するため、第1の耐熱性樹脂110とガラスクロス100の互いの間の屈折率差を最小化してこそ、鮮やかな映像を表示することができる。
【0035】
したがって、第1のフィルムを構成するガラスクロス100は、第1の耐熱性樹脂110と屈折率がマッチングしなければならない。具体的には、第1のフィルムを構成するガラスクロス100は、第1の耐熱性樹脂110と±0.01以内の屈折率差を有するガラス纎維素材で構成することが好ましい。
【0036】
本発明の好ましい実施例による第1のフィルムは、第1の耐熱性樹脂110としては、屈折率1.556を有するUV硬化樹脂を使用し、ガラスクロス100には、屈折率1.55を有するガラス纎維を使用して形成した。
【0037】
また、本発明に係るフレキシブル基板の板厚は、ディスプレイ装置に適用する場合に十分なフレキシブル機能を与えるために、30〜200μmが適合であり、好ましくは、50〜100μmの板厚で構成することが好ましい。
【0038】
さらに、本発明の第2のフィルム200の膜厚は、第1のフィルムの膜厚よりも薄厚で構成することが好ましい。これは、第2のフィルム200の膜厚が第1のフィルムの膜厚よりも大きくなると、第1のフィルムによる熱膨張の減少効果が第2のフィルム200によって打ち消され、熱膨張係数が再び上昇するようになって、フレキシブル基板の寸法安全性が低下する問題が発生するおそれがあるからである。
【0039】
上述したような点を考慮するとき、本発明の好ましい実施例による第1のフィルムは、20〜90μmの膜厚を有するように構成して、前記第1のフィルムにラミネートされる第2のフィルム200は、10〜50μmの膜厚を有するように構成し、前記第1のフィルムと第2のフィルム200との間に塗布される中間材120は、0.5〜5μmの厚さを有するように構成することが好ましい。
【0040】
すなわち、本発明に係るフレキシブル基板は、20〜90μmの膜厚で構成された第1のフィルムと、10〜50μmの膜厚で構成された第2のフィルムとの有機的な結合を通じて、第1のフィルムによる熱膨張係数の減少効果を保障すると共に、第2のフィルムによる表面粗さの改善効果も確保することが可能となる技術的な特徴を有する。
【0041】
(2)中間材塗布ステップ
第1のフィルムの製造が終わると、第1のフィルムの両外側面に中間材120を塗布する。中間材120は、本発明の第2のフィルム200を第1のフィルムにラミネート加工するためのものであって、第1のフィルムと同様に、UV硬化または熱硬化性樹脂を使用する。
【0042】
具体的に検討すると、中間材120は、第1のフィルムを構成する第1の耐熱性樹脂110と同一の樹脂、または第1の耐熱性樹脂110と透過率及び耐熱性が類似した樹脂で構成することが好ましい。例えば、第1のフィルムを製造する際にポリアリレート系樹脂を使用したなら、中間材120もまたポリアリレート系樹脂を使用した方が良い。これは、第1のフィルムを構成する第1の耐熱性樹脂110と同一の屈折率を有する素材が前記第1のフィルム上に積層されるようにすることで、液晶表示装置の光学的な性能を最善に具現することができるようにするためである。
【0043】
中間材120は、第2のフィルム200を第1のフィルムに安定的に結合することができる最小限の膜厚で塗布するのが好ましく、具体的には、0.5〜5μmの厚さの中間材120を第1のフィルムの上に塗布すれば良い。中間材120の厚さを0.5μmよりも薄く塗布する場合、十分な接着力を確保することができなくなり、第2のフィルム200を第1のフィルムの上に安定的にラミネートすることができない問題が発生する。
【0044】
さらに、20〜90μmの膜厚で構成された第1のフィルムに5μm以上の厚さを有する中間材120を塗布して本発明のフレキシブル基板を構成すると、耐熱性樹脂で構成された中間材120の高い熱膨張係数によって第1のフィルムによる熱膨張係数の減少効果が打ち消され、基板の寸法安全性を低下させることがあり、基板の透過率の低下及びヘイズ(Haze)の増加を誘発して、フレキシブル基板の光学的な特性を低下させる可能性があるからである。
【0045】
したがって、基板の光学的な特性を考慮する必要のないディスプレイパネル(例えば、有機EL)に本発明のフレキシブル基板を適用する場合は、中間材120の透過率を考慮する必要がないため、様々なフィルム粘着剤またはフィルム接着剤を適用することができることは言うまでも無い。
【0046】
(3)第2のフィルムの事前製造及びラミネーティングステップ
本発明にかかるフレキシブル基板の主要な技術的特徴のうちの1つは、低い熱膨張係数を有する第1のフィルムの場合、表面粗さが若干粗いという問題を補うために、前もって製造された第2のフィルム200を第1のフィルムとラミネートすることである。
【0047】
すなわち、第1のフィルム上に液状の樹脂を塗布し、塗布した樹脂を硬化させることによりもう1つのコーティング層を形成する方法とは異なって、本発明においては、表面粗さの良好な固形の樹脂フィルムを前もって製造して用意した後、用意した固形の樹脂フィルムを、中間材120を用いて第1のフィルムにラミネートするものである。
【0048】
前もって製造される第2のフィルム200は、複屈折のない第2の耐熱性樹脂で構成され、第2の耐熱性樹脂としては、平坦度に優れ、フィルムの透過率が85%以上であり、ヘイズは4.6以下を満足し、160℃以上のガラス転移点を有する樹脂であれば、種類に関係無く使用することができる。
【0049】
すなわち、液状樹脂を第1のフィルムに塗布し、塗布した樹脂を硬化させる従来技術のフィルム構造とは異なって、別途の工程で形成した平坦度の良い第2のフィルムを第1のフィルムにラミネートする技法を用いる。したがって、本発明に従ってフレキシブル基板を製造するとき、第1のフィルムと第2のフィルム200を結合するのにおいて、第1の耐熱性樹脂110にガラスクロス100を含浸する工程のような含浸工程を必要としないため、第2のフィルム200を選択するとき、第1の耐熱性樹脂110またはガラスクロス100との屈折率のマッチングを特別に考慮することが不要であるという長所がある。
【0050】
このような理由で、本発明に使用可能な第2の耐熱性樹脂の屈折率は、第1の耐熱性樹脂の屈折率よりも0.03を超える屈折率を有していてもよい。したがって、本発明のフレキシブル基板を生成するとき、一般的には、第2の耐熱性樹脂を第1の耐熱性樹脂と異なる物質から形成するはずであるが、必要によっては、同一の物質で形成することもできる。これにより、適用可能な樹脂の種類が広くなり、これは製造費用の節減を可能とする効果がある。
【0051】
具体的に、第2の耐熱性樹脂は、UV硬化または熱硬化性樹脂として、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、及びポリアリレート(PAR)のように、ガラス転移点が200℃以上の耐熱性樹脂のうちから選択された少なくともいずれか1つを使用することが好ましい。しかし、第2の耐熱性樹脂を構成する樹脂としては、上に列挙した物質のみに限定されるものではない。
【0052】
第1のフィルムは、フレキシブル基板の熱的特性を向上させる特性があるが、樹脂内部にガラスクロスが含浸されているため、表面粗さが良くないという特性がある。第2のフィルム200は、良好ではない表面粗さを有する第1のフィルムにラミネートされて、フレキシブル基板の表面粗さを改良するために使用される。しかし、第2のフィルム200を適正な膜厚以上に構成した場合、第2のフィルム200そのものによる熱膨張係数が高くなり、第1のフィルムによる熱膨張の減少効果を打ち消すようになるため、フレキシブル基板の寸法安全性を阻害するようになる。本発明の第2のフィルム200は、第1のフィルムによる熱膨張の減少効果は最大限に維持しながらも、表面粗さを改善することができる膜厚で構成しなければならない。
【0053】
このような理由により、第2のフィルム200の膜厚は、第1のフィルムの膜厚よりも薄厚で構成するようにした。具体的には、第1のフィルムを20〜90μmの膜厚を有するように形成する場合、第2のフィルム200は、10〜50μmの膜厚を有するように構成することが好ましい。
【0054】
上述した実施例では、中間材120を用いて第1のフィルム上に第2のフィルム200をラミネートする構造を提示したが、中間材120を使用せずに、第1のフィルム上に直接第2のフィルム200をラミネートする構造も可能であることは言うまでも無い。この場合、第1のフィルムと第2のフィルム200との境界面が、熱硬化またはUV硬化されて粘着または貼り合わされる。
【0055】
以下においては、本発明に係る第2のフィルムのさらに別の実施例について説明する。本発明に係る第2のフィルム200のさらに別の実施例は、第2の耐熱性樹脂に添加物を添加して低い熱膨張係数を持たせることにより、フレキシブル基板の寸法安全性をより向上するものである。すなわち、本発明の第2のフィルム200を前もって製造するときに、液状の第2の耐熱性樹脂に無機粒子フィラーを分散して、第2のフィルム200の熱的特性及び寸法安全性を改善することである。
【0056】
無機粒子フィラーは、フレキシブル基板を構成する樹脂と屈折率がマッチングする超微粒セラミックス粉末を使用することが好ましい。具体的に、フレキシブル基板を構成する樹脂と±0.01以内の屈折率差を有し、少なくとも200nm以下、好ましくは100nm以下の粒子サイズを有するセラミックス粉末を使用することが好ましい。
【0057】
本発明にかかるフレキシブル基板を、液晶表示装置のパネルのような光を透過する特性を有するディスプレイ装置に適用する場合、液晶によって選択的に透過された光は、第2のフィルム200を透過した後、使用者に到達する。したがって、無機粒子フィラーを含む第2のフィルム200の場合、無機粒子フィラーと樹脂の互いの間の屈折率差を最小化しないと、屈折率による画質の低下問題を防止することができない。
【0058】
また、使用される無機粒子フィラーの粒子サイズが200nmよりも大きくなると、粒子サイズのために樹脂との界面で光が散乱し、ヘイズ(Haze)が増加するため、少なくとも200nm以下の粒子サイズを有する無機粒子フィラーを使用することが好ましい。
【0059】
無機粒子フィラーは、第2のフィルム200の熱膨張係数を低くすることができるように、低熱膨張係数を有する無機物質で構成しなければならず、具体的には、熱膨張係数(CTE)が8ppm以下である超微粉セラミックス粉を使用することが好ましい。
【0060】
ディスプレイ装置が要求する透過率及びヘイズのような光学的な特性を満足する範囲内であれば、第2のフィルム200に分散する無機粒子フィラーの含有量は、特に制限されるものではない。
【0061】
上述したように、無機粒子フィラーが含有された第2のフィルム200は、無機粒子フィラーの有する低い熱膨張係数を用いて第2の耐熱性樹脂の有する高い熱膨張係数を打ち消すようになる。これにより、無機粒子フィラーが含有された第2のフィルム200は、第2の耐熱性樹脂のみで構成される第2のフィルム200に比して、より安定したフレキシブル基板の寸法安全性を提供することが可能となる。
【0062】
また、上述した好ましい実施例では、第2のフィルム200にだけ無機粒子フィラーが分散されて含有されるように説明したが、第1のフィルムも前記無機粒子フィラーを含むように構成することにより、第1のフィルムの熱的な特性を向上させることもできるのは言うまでもない。
【0063】
上述した過程を通じて前もって製造された第2のフィルム200を、中間材120が塗布された第1のフィルムの上にラミネートする作業が必要である。中間材120が塗布された第1のフィルムに固形化された第2のフィルム200を積層して、これを紫外線に曝したり、あるいは熱を加えた後に硬化させて、第2のフィルム200が第1のフィルムにラミネート加工されるようにする。
【0064】
また、本発明に係るフレキシブル基板を形成する第1の耐熱性樹脂及び第2の耐熱性樹脂には、UV安全性または熱安全性を確保するために、金属化合物を追加に混合することができる。好ましくは、二酸化チタン(TiO2)微粒子を、第1の耐熱性樹脂及び第2の耐熱性樹脂を構成するUV硬化または熱硬化性樹脂に分散して含有するように構成することにより、本発明のフレキシブル基板を構成する耐熱性樹脂の耐UV性または耐熱性を向上することができる。
【0065】
図4は、本発明に係るさらに別の一実施例のフレキシブル基板の断面図である。図4を参照すると、本発明に係るさらに別の一実施例のフレキシブル基板は、上述の実施例のフレキシブル基板の製造工程と類似するため、両者の相違点に対してのみ説明することとする。図4に示された実施例では、中間材120を第1のフィルムの片面にだけ塗布して、第2のフィルム200もまた、中間材120が塗布された片面上にだけ積層した。図4に示された実施例のフレキシブル基板は、上述の実施例のフレキシブル基板と類似した機能を有するが、表面粗さの改善によるコントラストの向上よりは、熱的安全性をもっと考慮した基板構造に該当する。
【0066】
表1は、上述の方法を用いて製造した本発明に係るフレキシブル基板の実施例と、それぞれの熱的特性及び光学的な特性を測定した実測データである。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の実施例では、第1の耐熱性樹脂として、ビスフェノルAエトキシレートジアクリレート(Bisphenol A ethoxylate diacrylate)UV硬化樹脂を使用しており、第2の耐熱性樹脂としては、化学式1の構造を有し、転移点が320℃付近である熱硬化樹脂で、ポリアリレート樹脂を使用した。
【0069】
【化1】

【0070】
表1の実施例のそれぞれは、ディスプレイ装置が最善のフレキシブル機能を具現するための膜厚に当たる50〜100μmを考慮して、第1のフィルムの膜厚は20乃至50μmの範囲で設定し、第2のフィルム200の膜厚は10乃至40μmの範囲で設定した。表1においてリタデーション(retardation)の項目は、入射光と出射光との間の位相差を意味している。
【0071】
表1に示されているように、第1のフィルムと第2のフィルムとの有機的な結合を通じてフィルム複合体を形成した本発明のフレキシブル基板は、85%以上の透過率と20ppm/℃以下の熱膨張係数を確保しながら、特に表面粗さが12nmまで改善されたディスプレイパネル用フレキシブル基板が得られることが分かる。
【0072】
また、本発明に係るフレキシブル基板は、前以って製造された固形の第2のフィルムを第1のフィルム上にラミネートしてフィルム複合体を構成することにより、提供工法が非常に簡単であり、基板の収縮膨張によるカールの発生を防止することができ、大型化が容易となり、生産性を向上することができる長所を有するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るフレキシブル基板は、簡単な製造工法を通じて、熱膨張係数の減少効果を保証すると共に、表面粗さの改善効果を確保することができ、基板の大型化に有利であるため、産業上の利用可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0074】
100:ガラスクロス
110:耐熱性樹脂
120:中間材
200:第2のフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の耐熱性樹脂の内部にガラスクロスが含浸された第1のフィルムと、前記第1のフィルムの少なくとも片面にラミネートされて、第2の耐熱性樹脂からなる第2のフィルムと、を含んだフィルム複合構造で構成されることを特徴とするディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項2】
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間には、前記第1のフィルムの前記少なくとも片面に塗布され、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを粘着または接着する中間材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項3】
前記中間材は、前記第1の耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項4】
前記第2のフィルムの膜厚は、前記第1のフィルムの膜厚よりも薄厚で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項5】
前記第1の耐熱性樹脂及び前記第2の耐熱性樹脂の少なくとも一方は、ガラス転移点が200℃以上のポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、及びポリアリレート(PAR)のうちから選択された少なくともいずれか1つからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項6】
前記第1の耐熱性樹脂と前記第2の耐熱性樹脂は、同一の物質で形成されることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項7】
前記第2のフィルムは、85%以上の透過率と、4.6以下のヘイズと、160℃以上のガラス転移点とを満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項8】
前記第1のフィルムを構成する前記第1の耐熱性樹脂と前記ガラスクロスとの屈折率の差は、±0.01以内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項9】
前記第2のフィルムは、超微粒セラミックス粉末を分散して含有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項10】
前記超微粒セラミックス粉末は、前記第2の耐熱性樹脂と±0.01以内の屈折率差を有し、200nm以下の粒子サイズを有して、熱膨張係数が8ppm/℃以下であることを特徴とする請求項9に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項11】
前記第1の耐熱性樹脂及び前記第2の耐熱性樹脂の少なくとも一方のUV安全性を向上するために、二酸化チタン(TiO)微粒子が、前記第1の耐熱性樹脂及び前記第2の耐熱性樹脂の少なくとも一方の内部に分散して含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項12】
前記ディスプレイパネル用フレキシブル基板は、全体の厚さが30〜200μmで構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項13】
前記中間材は、0.5〜5μmの厚さで塗布されることを特徴とする請求項2または3に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板。
【請求項14】
ディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法であって、
ガラスファイバーを織物状に構成してガラスクロスを製造し、前記ガラスクロスを第1の耐熱性樹脂に含浸して第1のフィルムを製造する第1ステップと、
第2の耐熱性樹脂を硬化して構成した第2のフィルムを前もって製造し、前記前もって製造した前記第2のフィルムを、前記第1のフィルムの少なくとも片面にラミネートする第2ステップと、
を含むことを特徴とするディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1ステップと前記第2ステップとの間に、前記第1のフィルムの前記少なくとも片面に、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを粘着または接着する中間材を塗布する第3ステップをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法。
【請求項16】
前記第2のフィルムは、前記中間材を紫外線(UV)硬化または熱硬化させて前記第1のフィルムの前記少なくとも片面にラミネートされることを特徴とする請求項15に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法。
【請求項17】
前記第2のフィルムを前もって製造するステップにおいて、
前記第2のフィルムを構成する第2の耐熱性樹脂の内部に超微粒セラミックス粉末を含有させるステップをさらに有することを特徴とする請求項14に記載のディスプレイパネル用フレキシブル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−262257(P2010−262257A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245182(P2009−245182)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(509296432)サムスン・コーニング・プレシジョン・グラス・カンパニー・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Glass Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】