説明

ディスプレイ装置

【課題】低消費電力でありながら、レーザー光を走査して明るく色再現領域の広く、スペックルノイズを低減したフルカラー映像を表示することができるディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】カラー映像を表示するディスプレイ装置1は、近紫外の励起用レーザー光UVの照射で緑色光を発光する緑蛍光体が透光性基材の中に分散されている蛍光体層18を有するスクリーンシート11と、励起用レーザー光UVを出射する励起用レーザー光源3と、赤色レーザー光Rを出射する赤色レーザー光源2と、青色レーザー光Bを出射する青色レーザー光源4と、各レーザー光源2,3,4から出射されたレーザー光R,UV,Bをカラー映像信号に基づいて変調してスクリーンシート11の蛍光体層18に走査させる走査部6とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光をスクリーンシートに走査してカラー映像を表示するディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー映像を表示するための3原色になる赤色レーザー光、緑色レーザー光、及び青色レーザー光をスクリーンに走査して、明るく色再現領域の広いフルカラー映像を表示するディスプレイ装置が近年開発されており、このようなディスプレイ装置が例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたディスプレイ装置では、赤色レーザー光、及び青色レーザー光を出射する光源に半導体レーザーを用い、緑色レーザー光を出射する光源にSHG(Second Harmonic Generation)レーザーを用いている。半導体レーザーは、赤色や青色のレーザー光を直接発光するので、発光効率が高く低消費電力なものであるが、緑色レーザー光を直接発光するものは現在製品レベルの実用化はなされていない。そのため、緑色レーザー光を得るために、赤外半導体レーザーの発光する赤外レーザー光を非線形光学素子などで歪ませて、その2次高調波を緑色レーザー光として出射するSHGレーザーが用いられている。
【0004】
SHGレーザーは、赤外レーザー光を非線形光学素子で波長変換しており、その変換効率が低いので、高い光出力を得るためには大きな駆動電流が必要となり、直接発光の半導体レーザーに比べて消費電力がかなり大きいものである。さらに上述のとおり波長変換効率が低いため、高い光出力を得るためには大きな駆動電流を必要とするので、光出力の変調速度の高速化が困難となり、光出力を高速変調するためには光出力を低くせざるを得ない。したがって、SHGレーザーをスクリーンに走査するディスプレイ装置は、消費電力が大きく、映像を明るくし難いという問題がある。
【0005】
また、特許文献1に記載されたディスプレイ装置では、半導体レーザーを所望の壁面などに射出することによりカラー映像を表示するが、レーザー光はコヒーレント光であるため表示されたカラー映像にはスペックルノイズが発生する。スペックルノイズは光の干渉現象により引き起こされ、表示されたカラー映像にギラつきを引き起こすため、表示されたカラー映像の印象を劣化させる場合があり問題となる。スペックルノイズを低減させるためにレーザー光源を駆動する信号のノイズ低減を図るなどが検討されているが、有効な手法は現在提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−258142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、低消費電力でありながら、レーザー光を走査して明るく色再現領域の広いフルカラー映像を表示することができ、またスペックルノイズを低減できるディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のディスプレイ装置は、カラー映像を表示するディスプレイ装置であって、近紫外の励起用レーザー光の照射で緑色光を発光する緑蛍光体が透光性基材の中に分散されている蛍光体層を有するスクリーンシートと、該励起用レーザー光を出射する励起用レーザー光源と、赤色レーザー光を出射する赤色レーザー光源と、青色レーザー光を出射する青色レーザー光源と、該各レーザー光源から出射された該各レーザー光をカラー映像信号に基づいて変調して該スクリーンシートの該蛍光体層に走査させる走査部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記各レーザー光源が半導体レーザーであることを特徴とする。
【0010】
請求項3のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記緑蛍光体が、
Al、Mn、Cu、Ce、Sm、Eu、Tb、及びAuから選ばれる少なくとも1種の発光中心原子を含有しており、アルミン酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体、リン酸ホウ酸塩蛍光体、ハロケイ酸塩蛍光体、チオガレート蛍光体、スカンジウム酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、硫化物蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、及びチオアルミネート蛍光体から選ばれる少なくとも1種の無機蛍光体、
及び/又は
ピリジン−フタルイミド誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、キナゾリノン誘導体、クマリン誘導体、キノフタロン誘導体、ナフタル酸イミド誘導体、ペリレン誘導体、及びテルビウム有機錯体から選ばれる少なくとも1種の有機蛍光体
であることを特徴とする。
【0011】
請求項4のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記透光性基材の材料が、シリコーン、水ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂のうちのいずれか1種であることを特徴とする。
【0012】
請求項5のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記蛍光体層が光散乱材を含有していることを特徴とする。
【0013】
請求項6のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記蛍光体層には、その少なくとも一面側に光を散乱させる凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記蛍光体層が、前記カラー映像の画素毎に隔壁で区画されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8のディスプレイ装置は、請求項7に記載されたもので、前記隔壁が、前記画素毎の大きさで貫通孔が形成された金属板若しくは樹脂板、又は、透光性を有するシリコーン板、ガラス板、アクリル板、フッ素樹脂板、シクロオレフィン樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、及びポリエチレンテレフタレート樹脂板から選ばれる透光性板を該画素毎の大きさで窪ませた凹部の側壁、若しくは平坦な該透光性板上に該画素毎に仕切るように印刷塗料が印刷された印刷膜であり、該貫通孔、該凹部又は該印刷膜で囲まれた内側に前記蛍光体層が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9のディスプレイ装置は、請求項8に記載されたもので、前記蛍光体層が、前記印刷膜で囲まれた内側に印刷されて形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10のディスプレイ装置は、請求項7に記載されたもので、前記隔壁には、光反射材を含む光反射層が付されていることを特徴とする。
【0018】
請求項11のディスプレイ装置は、請求項7に記載されたもので、前記蛍光体層が前記カラー映像の画素ごとに赤色用、緑色用、青色用の3つの画素に前記隔壁で分けて区画されていて、前記走査部が、前記赤色レーザー光を該赤色用の該画素に、前記励起用レーザー光を該緑色用の該画素に、前記青色レーザー光を該青色用の画素に、走査することを特徴とする。
【0019】
請求項12のディスプレイ装置は、請求項1に記載されたもので、前記スクリーンシートの前記各レーザー光を走査する走査面の対面側を映像視認面とするリアプロジェクション型に構成され、又は、該スクリーンシートの該走査面を映像視認面とするフロントプロジェクション型に構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13のディスプレイ装置は、請求項12に記載されたもので、前記リアプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記映像視認面側に、前記励起用レーザー光を吸収、及び/又は反射する励起光透過防止板が付されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14のディスプレイ装置は、請求項12に記載されたもので、前記リアプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記映像視認面側に、透光性の保護板が付されていて、該保護板の少なくとも一面側には光を散乱させる凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項15のディスプレイ装置は、請求項12に記載されたもので、前記フロントプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記走査面の対面側に、光反射板を有していることを特徴とする。
【0023】
請求項16のディスプレイ装置は、請求項12に記載されたもので、前記スクリーンシートの前記映像視認面側、該前記映像視認面側に付される透光性の保護板の表面、又は該映像視認面側に付される励起光透過防止板の表面のいずれかに、ブラックマトリックスが付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のディスプレイ装置によれば、透光性基材の中に緑蛍光体を分散した蛍光体層を有するスクリーンシートに、近紫外の励起用レーザー光、赤色レーザー光、及び青色レーザー光を走査するので、励起用レーザー光の照射で緑蛍光体が緑色光を発光して蛍光体層が緑色に光り、赤及び青色レーザー光が緑蛍光体で散乱しつつ透光性基材を透過して蛍光体層が赤及び青色に光るので、この赤,緑,青色光を3原色とするカラー映像をスクリーンシートに表示することができる。緑蛍光体は発光効率が高く、励起用レーザー光の照射で明るく純度の高い緑色光を発光することから、赤及び青色レーザー光と合わせて、明るく色再現領域の広いフルカラー映像を表示することができる。
【0025】
本発明のディスプレイ装置によれば、各レーザー光源が半導体レーザーであることにより、緑色光用にSHGレーザーを用いるディスプレイ装置よりも、大幅に低消費電力であると共に、光変調速度の高い高画質なディスプレイ装置とすることができる。
【0026】
本発明のディスプレイ装置によれば、透光性基材の材料がシリコーン、水ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかであることにより、各レーザー光に対する耐光性や透光性に優れているため、長期間に亘って透光性を有して明るい映像を表示することができる。
【0027】
本発明のディスプレイ装置によれば、蛍光体層が光散乱材を含有していること、蛍光体層の少なくとも一面側に光を散乱させる凹凸形状が形成されていること、透光性の保護板の少なくとも一面側に光を散乱させる凹凸形状が形成されていることにより、赤及び青色レーザー光や発光した緑色光が良く散乱するため、広い視野角で映像をスクリーンシートに表示することができ、スペックルノイズを低減することができる。
【0028】
本発明のディスプレイ装置によれば、蛍光体層がカラー映像の画素毎に隔壁で区画されていることにより、隣の画素の光が隔壁で遮蔽されて各画素が独立して光るため、色の滲みを防止でき、所期の解像度及び色調で映像を明瞭に表示することができる。
【0029】
本発明のディスプレイ装置によれば、画素毎の大きさで貫通孔が形成された金属板若しくは樹脂板、又は、透光性を有するシリコーン板、ガラス板、アクリル板、フッ素樹脂板、シクロオレフィン樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、及びポリエチレンテレフタレート樹脂板から選ばれる透光性板を画素毎の大きさで窪ませた凹部の側壁、若しくはその透光性板上に画素毎に仕切るように印刷塗料が印刷された印刷膜を隔壁としていることにより、蛍光体層を区画しつつ、スクリーンシートに機械的強度を持たせることができる。
【0030】
本発明のディスプレイ装置によれば、蛍光体層が、印刷膜で囲まれた内側に印刷されて形成されていることにより、蛍光体層及び隔壁を簡便に形成することができる。
【0031】
本発明のディスプレイ装置によれば、隔壁に光反射材を含む光反射層が付されていることにより、隔壁に当たった赤,緑,青色の光が高反射率で反射されて隔壁で減衰しないため、明るい映像を表示することができる。
【0032】
本発明のディスプレイ装置によれば、蛍光体層が画素ごとに赤色用、緑色用、青色用の3つ画素に隔壁で分けて区画されていて、走査部が、赤色レーザー光を赤色用の画素に、励起用レーザー光を緑色用の画素に、青色レーザー光を青色用の画素に、走査することにより、各色の滲みを防止でき、所期の解像度及び色調で映像を明瞭に表示することができる。
【0033】
本発明のディスプレイ装置によれば、リアプロジェクション型に構成して大画面で薄型の筐体一体型ディスプレイ装置としたり、フロントプロジェクション型に構成して壁面等に設置したスクリーンシートに映像を投影して表示するディスプレイ装置としたり、様々な態様のディスプレイ装置とすることができる。
【0034】
本発明のディスプレイ装置によれば、リアプロジェクション型に構成されたスクリーンシートの映像視認面側に、励起光透過防止板が付されていることにより、鑑賞者が励起用レーザー光を視認可能な場合に、青味が強い映像のように視認してしまうことが防止され、所期の色彩で映像を表示することができる。また、鑑賞者に励起用の光が当たることを防止できる。
【0035】
本発明のディスプレイ装置によれば、フロントプロジェクション型に構成されたスクリーンシートの走査面の対面側に、光反射板が付されていることにより、光が映像視認面側に反射されるため、カラー映像を一層明るく表示することができる。
【0036】
本発明のディスプレイ装置によれば、スクリーンシートの映像視認面側、保護板表面、励起光透過防止板表面のいずれかにブラックマトリックスが付されていることにより、カラー映像の画素間の色の滲みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用するリアプロジェクション型のディスプレイ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用する図1のディスプレイ装置のスクリーン部を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明を適用する他のスクリーンシートを示す断面図である。
【図4】本発明を適用するディスプレイ装置のスクリーンシートへの水平走査の様子を示す平面図である。
【図5】本発明を適用するディスプレイ装置のスクリーンシートへの他の水平走査の様子を示す平面図である。
【図6】本発明を適用するリアプロジェクション型のディスプレイ装置のスクリーンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0039】
図1に示すように、本発明の一例であるリアプロジェクション型のディスプレイ装置1は、赤色レーザー光源2、励起用レーザー光源3、青色レーザー光源4、スクリーン部5、及び走査部6を備え、走査部6がレーザー光R,UV,Bをスクリーン部5に走査してカラー映像を表示するものである。
【0040】
赤色レーザー光源2は、半導体レーザーであり、625〜740nmの発光ピーク波長の赤色レーザー光Rを出射する。特に発光ピーク波長が642nmの半導体レーザーを用いることが好ましい。
【0041】
励起用レーザー光3は、半導体レーザーであり、200〜410nmの近紫外の励起用レーザー光UVを出射する。特に発光ピーク波長が405nmの半導体レーザーを用いることが発光効率や入手性の観点から好ましい。
【0042】
青色レーザー光源4は、半導体レーザーであり、440〜485nmの発光ピーク波長の赤色レーザー光Rを出射する。特に発光ピーク波長が445nmの半導体レーザーを用いることが好ましい。
【0043】
スクリーン部5は、一例として、スクリーンシート11、ブラックマトリックス12、保護板13、及び励起光透過防止板14がこの順で密着して、又は近接して重ねて配置されたものである。スクリーン部5は、スクリーンシート11の同図の観察面側がレーザー光R,UV,Bの走査面になり、その対面側(非観察面側)がカラー映像を視認可能な映像視認面になる。このスクリーン部5の断面図を図2に示す。
【0044】
スクリーンシート11は、カラー映像を表示させる画素毎の大きさで孔開けされた貫通孔16を有する金属板17、及びその各貫通孔16の中に形成された蛍光体層18によって構成されている。これにより蛍光体層18は、金属板17の隣り合う貫通孔16の内壁の間が隔壁となって画素毎に区画されている。
【0045】
貫通孔16は、一例として金属板17をエッチングして形成されている。
【0046】
貫通孔16の内壁は、カラー映像の画素間の色滲み防止の観点から、遮光性を有することが好ましい。さらに貫通孔16の内壁は、カラー映像を明るく表示させるという観点から、高い光反射性を有することがより好ましい。金属板17がアルミニウム製であると、貫通孔16の内壁は高い光反射性を有し、しかも軽くて必要な機械的強度を有するので好ましい。貫通孔16の内壁に、光反射材を塗布した光反射層(不図示)を形成してもよい。また、金属板17に換えて樹脂板を用いてもよい。
【0047】
蛍光体層18は、一例として0.1mm〜10mm程度の金属板17の板厚と同程度かそれ以下の厚みで形成されている。
【0048】
蛍光体層18は、緑蛍光体20と必要に応じて光散乱材(不図示)とが透明又は半透明な透光性基材19の中に分散されて形成されたものである。緑蛍光体20は、透光性基材100重量部に対して、10〜300重量部、望ましくは30〜100重量部分散させることが好ましい。
【0049】
緑蛍光体20は、励起用レーザー光UVの照射で励起されて、一例として500〜560nmの発光ピーク波長の緑色光Gを発光するものである。また、緑蛍光体20は、赤色レーザー光R及び青色レーザー光Bの照射で励起されず非発光であることが、カラー映像の各原色の純度を高くできるという観点から好ましい。
【0050】
また、緑蛍光体20は、粒径が0.1μm〜70μmのものであることが、光の散乱性の観点から好ましい。また、同理由から、緑蛍光体20を透光性基材19に均一に分散させることが好ましい。
【0051】
緑蛍光体20は、
Al、Mn、Cu、Ce、Sm、Eu、Tb、及びAuから選ばれる少なくとも1種の発光中心原子を含有しており、アルミン酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体、リン酸ホウ酸塩蛍光体、ハロケイ酸塩蛍光体、チオガレート蛍光体、スカンジウム酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、硫化物蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、及びチオアルミネート蛍光体から選ばれる少なくとも1種の無機蛍光体、
及び/又は
ピリジン−フタルイミド誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、キナゾリノン誘導体、クマリン誘導体、キノフタロン誘導体、ナフタル酸イミド誘導体、ペリレン誘導体、及びテルビウム有機錯体から選ばれる少なくとも1種の有機蛍光体、
が挙げられる。
【0052】
前記の無機蛍光体を具体的に示すと、
BaMgAl10O17:Eu,Mn、BaMg2Al16O27:Eu,Mn、(Ca,Sr,Ba)MgAl10O17:Eu,Mn、等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、
SrAl2O4:Eu、Sr4Al14O25:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、
(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)6O24:Eu等のEu付活ケイ酸塩蛍光体、
Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活ケイ酸塩蛍光体、
Sr2P2O7-Sr2B2O5:Eu等のEu付活リン酸ホウ酸塩蛍光体、
Sr2Si3O8-2SrCl2:Eu等のEu付活ハロケイ酸塩蛍光体、
SrGaS4:Eu等のEu付活チオガレート蛍光体、
Zn2SiO4:Mn等のMn付活ケイ酸塩蛍光体、
CeMgAl11O19:Tb、Y3Al5O12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、
Ca2Y8(SiO4)6O2:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活ケイ酸塩蛍光体、
(Sr,Ba,Ca)Ga2S4:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、
Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、
Ca3Sc2Si3O12:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si3O12:Ce等のCe付活ケイ酸塩蛍光体、
CaSc2O4:Ce等のCe付活スカンジウム酸化物蛍光体、
Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、
(La,Gd,Y)2O2S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、
LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、
ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、
(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd2B2O7:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B2O6:Ce,Tb等のCe,Tb付活ホウ酸塩蛍光体、
Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロケイ酸塩蛍光体、
(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)2S4:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、
(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロケイ酸塩蛍光体、
が挙げられる。()内に示した元素は、その1種又は複数種を選択的に用いることが可能であることを示す。
【0053】
特に緑蛍光体20として、赤及び青色レーザー光R,Bの照射で発光しない、BaMgAl10O17:Eu,Mn、BaMg2Al16O27:Eu,Mn、(Ca,Sr,Ba)MgAl10O17:Eu,Mn、等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体であることが好ましい。
【0054】
前記の有機蛍光体を具体的に示すと、ペリレン誘導体であるBASF社製Lumogen F Yellow 083(Lumogenは登録商標)等が挙げられる。
が挙げられる。
【0055】
上記に例示した緑蛍光体20は、いずれか1種を単独で使用しても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いても良い。
【0056】
光散乱材としては、酸化チタンや炭酸カルシウムが挙げられる。
【0057】
透光性基材19の材料は、レーザー光R,UV,Bに対して高い耐光性及び透光性を有するものであることが好ましく、例えばシリコーン、水ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
【0058】
具体的には、シリコーンは、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム等であるシリコーン組成物が挙げられる。
【0059】
パーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン(分子量:50万〜90万)、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0060】
パーオキサイド系架橋剤として、具体的に、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0061】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や性能に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100部に対し、0.01〜10部、好ましくは0.1〜2部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋速度が速すぎて成形できない。
【0062】
付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万〜10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンの組成物、
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンのようなアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンのような酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0063】
これらの組成物から付加型シリコーンゴムを調製する加工条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、1分〜24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0064】
縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン(分子量:0.05万〜20万)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフルオロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ−n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランのような架橋剤との組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンのような末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0065】
これらの組成物から縮合型シリコーンゴムを調製する加工条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜100℃で、10分〜24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0066】
フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン系、フッ化ビニリデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系等が挙げられる。
【0067】
水ガラスは、例えばSiO/NaOのモル比が2〜3のようなアルカリ−ケイ酸塩系ガラスの濃厚水溶液が挙げられる。
【0068】
透光性基材19にシリコーンを用いる場合は、シリコーンゴムに緑蛍光体20や光散乱材を添加して均一に分散させたものを、成形用の金型のキャビティ内に入れ、これを加熱プレスして蛍光体層18が得られる。画素毎の蛍光体層18を貫通孔16に嵌め込んでスクリーンシート11とする。なお、金属板11と共にシリコーンゴムを加熱プレスして蛍光体層18を形成してもよい。
【0069】
また必要に応じて、蛍光体層18の少なくとも一面側には、同図中に拡大して示すように、光を散乱させる微細な凹凸形状を形成してもよい。この凹凸形状は、成形する際の金型に凹凸形状を付すことで成形時に形成してもよいし、成形後にサンドブラストによって形成してもよい。この凹凸形状は、同図の反対面側に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0070】
透光性基材19に水ガラスを用いる場合は、水ガラスの濃厚溶液中に緑蛍光体20や光散乱材を添加して、撹拌して均一に分散させる。この濃厚溶液を貫通孔16内に注入して蛍光体層18とする。この場合、金属板17の両面に透光性の保護フィルム(不図示)を貼付して水ガラスを保護する。
【0071】
なお、図1,2では、蛍光体層18が金属板17で区画されているスクリーンシート11について例示したが、色滲み等が問題にならなければ、金属板17を用いることなく、スクリーンシート11全体の大きさの1枚のシート状に形成した蛍光体層(不図示)をスクリーンシートとしてもよい。この場合、シリコーンを透光性基材として用いて、可撓性を有するスクリーンシートに形成してもよい。また、保護板13の一面全体に水ガラスを塗布して、スクリーンシートとしてもよい。
【0072】
また、図2に示したスクリーンシート11を、図3(a)に示すスクリーンシート11a、又は図3(b)に示すスクリーンシート11bに換えてスクリーン部5を構成してもよい。
【0073】
図3(a)に示すスクリーンシート11aは、透光性を有するガラス板31(透光性板)の一面側(図の上部側)に、画素毎の大きさで窪ませた凹部32が形成されていて、この凹部32の中に蛍光体層18が形成されているものである。蛍光体層18は、隣り合う凹部32の側壁の間が隔壁となって区画されている。凹部32は、一例としてガラス板をエッチングして形成される。ガラス板31を、シリコーン板、アクリル板、フッ素樹脂板、シクロオレフィン樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、又はポリエチレンテレフタレート樹脂板に換えてもよい。
【0074】
この凹部33の環状の内側壁に、光反射材を含む光反射層を付すことが好ましい。
【0075】
図3(b)に示すスクリーンシート11bは、透光性を有する平坦なガラス板33(透光性板)の一面側(図の上部側)に、画素毎に仕切るように印刷塗料が印刷された印刷膜34が形成されていて、この印刷膜34で囲まれた内側(印刷膜34の無い部分)のガラス基板33上に蛍光体層18が形成されている。したがって、蛍光体層18は、印刷膜34が隔壁となって区画されている。この場合、蛍光体層18も印刷して形成することが好ましい。
【0076】
図2に示すブラックマトリックス12は、遮光性を有する黒色の板材やフィルムに、各画素の位置に画素の大きさで孔開けしたものである。保護板13は、スクリーンシート11を保護するための、透光性を有する例えばガラス板又はアクリル板である。必要に応じて、保護板13の少なくとも一面側に、同図に拡大して示すように、光を散乱させる微細な凹凸形状を形成してもよい。
【0077】
励起光透過防止板14は、励起用レーザー光UVの光を吸収、及び/又は反射すると共に、緑蛍光体20の緑色光G、及び赤,青色レーザー光R,Bの光を透過させるものである。例えば、励起光透過防止板14として、近紫外線吸収フィルム、又は近紫外線を反射して赤,緑,青色の光を透過するダイクロイックミラーを使用する。
【0078】
励起光透過防止板14の映像視認面側には、可視光の反射を防止するための反射防止フィルムを付したり、または反射防止膜をコーティングして付してもよい。このような反射防止フィルムや反射防止膜はAR(Anti−Reflection)フィルムやAR膜とも呼ばれている。反射防止フィルム等を付すことで、例えば蛍光灯などが映像視認面に映り込んでしまったり、光が反射して映像を視認し難くなったりすることを防止することができる。このような反射防止フィルムや反射防止膜としては、公知の種々のものを用いることができる。
【0079】
図1,2では、ブラックマトリックス12と保護板13とを別体で構成した例を示したが、保護板13の表面に黒色のブラックマトリックスを印刷して形成することで、両者を兼用する構成としてもよい。また、励起光透過防止板14の表面に黒色のブラックマトリックスを印刷して兼用する構成としてもよい。
【0080】
スクリーン部5は、ブラックマトリックス12、保護板13、及び励起光透過防止板14を全て備えることが好ましいが、これらは必要性に応じて一種、又は複数種を選択的に備えてもよい。
【0081】
図1に示す走査部6は、赤色光変調器21、緑色光変調器22、青色光変調器23、赤色反射ミラー24、励起光反射ミラー25、青色反射ミラー26、水平走査ミラー27、及び垂直走査ミラー28を備えている。
【0082】
光変調器21,22,23は、赤,緑,青のカラー映像信号Sr,Sg,Sbに基づいて、赤色レーザー光R、励起用レーザー光UV,青色レーザー光Bの強度を可変させて通過させる。なお、光変調器21,22,23を用いずに、レーザー光源2,3,4をカラー映像信号Sr,Sg,Sbで制御して、出射するレーザー光R,UV,Bの強度を可変させてもよい。
【0083】
赤色反射ミラー24は、赤色レーザー光Rを90度反射させる。励起光反射ミラー25は、ダイクロイックミラーであり、赤色反射ミラー24によって反射された赤色レーザー光Rを透過させると共に、励起用レーザー光UVを90度反射させる。青色反射ミラー26は、ダイクロイックミラーであり、励起光反射ミラー25を透過した赤色レーザー光R、及び励起光反射ミラー25で反射した励起用レーザー光UVを透過させると共に、青色レーザー光Bを90度反射させる。これにより、レーザー光R,UV,Bは合成される。
【0084】
水平走査ミラー27は、同図に円弧状の矢印で示すように、垂直軸を回転軸として角度を変えてレーザー光R,UV,Bを水平走査するものである。垂直走査ミラー28は、同図に円弧状の矢印で示すように水平軸を回転軸として角度を変えてレーザー光R,UV,Bを垂直走査するものである。水平走査ミラー27や垂直走査ミラー28は、公知の種々の駆動方式で機構されるものを用いることができるが、特にマイクロ電子機械システム(Micro−Electro−Mechanical Systems:MEMS)技術によって微小なミラーを高速に駆動可能なマイクロスキャニングミラーを用いることが好ましい。
【0085】
走査部6には、レーザー光R,UV,Bの光路上に、必要に応じて走査範囲を広げたり、映像の歪みを補正したりするためのレンズや曲面ミラー(共に不図示)を配してもよい。
【0086】
次に、ディスプレイ装置1の動作について説明する。
【0087】
図1に示すように、レーザー光源2,3,4によって出射されたレーザー光R,UV,Bは、走査部6によってカラー映像信号Sr,Sg,Sbで変調されつつスクリーンシート11の走査面に水平及び垂直走査(ラスタースキャン)される。
【0088】
この状態を図2を用いて説明すると、走査部6によって走査されるレーザー光R,UV,Bは、同図に矢印で示すように、スクリーンシート11に、その走査面側(図の下方側)から照射される。
【0089】
照射された励起用レーザー光UVは、蛍光体層18の緑蛍光体20を励起して、緑蛍光体20が緑色光Gを発光する。この緑色光Gは、他の緑蛍光体20や光散乱材で散乱しつつ蛍光体層18から出る。また貫通孔16の内壁に当たる緑色光Gは高反射率で反射するので、内壁で減衰せずに蛍光体層18から出る。
【0090】
照射された赤及び青色レーザー光R,Bは、蛍光体層18の緑蛍光体20及び光散乱材に当たって散乱しつつ、またその散乱光の一部は貫通孔16の内壁で高反射率で反射して赤及び青色光が蛍光体層18から出る。
【0091】
蛍光体層18から出た赤,緑,青色光R,G,Bは、ブラックマトリクス12によって隣の画素の領域に洩れずに保護板13に入って保護板13を透過し、励起光透過防止板14を透過する。これにより、スクリーン部5の映像視認面側(図の上部側)に矢印で示される赤,緑,青色光R,G,Bからなるカラー映像が表示される。
【0092】
蛍光体層18を透過した近紫外レーザー光UVは、励起光透過防止板14で阻止されて透過しない。このため、スクリーン部5の映像視認面側に、近紫外レーザー光UVが漏れ出ない。
【0093】
また、赤,緑,青色光R,G,Bは、蛍光体層18や保護板13を透過する際に、それらの表面の凹凸形状で散乱されるので、カラー映像が広い視野角でスクリーン部5の映像視認面に表示される。
【0094】
走査部6(図1参照)は、図4に示すように、スクリーンシート11の走査面に対して、同じ画素(蛍光体層18)上に各レーザー光R,UV,Bの照射スポットが一致するように走査する構成とすることもできるし、図5に示すように、レーザー光R,UV,Bの照射スポットの位置をずらして、赤色用の画素(蛍光体層18)上に赤色レーザー光Rを走査し、緑色用の画素(蛍光体層18)上に励起用レーザー光UVを走査し、青色用の画素(蛍光体層18)上に青色レーザー光Bを走査する構成としてもよい。
【0095】
図5に示すように走査する場合、スクリーンシート11には、カラー映像の1画素に対して赤色用、緑色用、青色用の3つの貫通孔16を形成して、各々の貫通孔16の中に蛍光体層18を形成する。これにより、蛍光体層18がカラー映像の画素ごとに赤色用、緑色用、青色用の3つの画素に隔壁で分けて区画される。この場合、例えば走査部6(図1参照)は、ミラー24,25,26の中央部に対するレーザー光源2,3,4の光軸位置をずらして配置することで、レーザー光R,UV,Bの光路をずらし、それらの照射スポットの位置をずらす構成としてもよいし、レーザー光源2,3,4のそれぞれに対して、水平走査ミラー27及び垂直走査ミラー28を別個に設けて照射スポットの位置をずらす構成としてもよい。
【0096】
本発明をフロントプロジェクション型のディスプレイ装置に適用することもできる。
【0097】
図6に、本発明のフロントプロジェクション型のディスプレイ装置に用いるスクリーン35を示す。なお、すでに説明した構成と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
スクリーン35は、図の上面側が走査面、及び映像視認面となるものである。このスクリーン35では、1枚のシート状の蛍光体層18がスクリーンシートとなっていて、蛍光体層18の走査面の対面側(図の下側)に、反射板36が付されている。また必要に応じて蛍光体層18の走査面側に、同図に示すように、ブラックマトリックス12を付してもよい。
【0099】
蛍光体層18の透光性基材17の材質は、軽量なシリコーンであることが好ましい。また、蛍光体層18には、緑蛍光体20と共に光散乱材(不図示)が分散されていることが好ましい。
【0100】
反射板36は、赤,緑,青色光R,G,Bを蛍光体層18側に散乱させつつ反射する光反射性を有するものである。反射板36として、例えばアルミニウムなどの金属板、又は表面に光反射層(不図示)を付した金属板や樹脂板を用いる。光反射層は、光散乱材を塗布して形成したり、白色塗料を塗布して形成したりする。
【0101】
このスクリーン35は、部屋の壁などに掛けられて使用される。図1に示すようなレーザー光源2〜4、及び走査部6を筐体ハウジングの中に一体的に配してプロジェクター(不図示)とする。このプロジェクターをスクリーン35から離して設置する。プロジェクターから、レーザー光R,UV,Bを同図の矢印で示す向きでスクリーン35に照射して走査する。
【0102】
励起用レーザー光UVが緑蛍光体20に当たって発光した緑色光Gや、赤、青色レーザー光R,Bは、緑蛍光体20で拡散する。これらの赤,緑,青色光R,G,Bは、反射板36で散乱しつつ反射して、同図中の矢印で示す方向に出る。これにより、スクリーン35の走査面側に明るいカラー映像が表示される。
【0103】
なお、このスクリーンシートとなる蛍光体層18に換えて、図2に示す金属板11で区画されたスクリーンシート11や、図3に示すスクリーンシート11a,11bを用いてもよい。また、カラー映像の明るさは暗くなるが、反射板36を付さない構成とすることもできる。
【実施例】
【0104】
(実施例1〜5)
透光性基材となるシリコーンゴム(KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100重量部に対し、緑蛍光体を50重量部添加し、均一に分散させた。緑蛍光体は、実施例1ではBaMgAl10O17:Eu,Mn、実施例2ではBaMg2Al16O27:Eu,Mn、実施例3ではSrAl2O4:Eu、実施例4ではZnS:Cu,Al、実施例5ではSrGa2S4:Euを用いた。これを金型に入れて加熱プレスして50×50×0.2mmのシート状に成形した。この緑蛍光体シートにキセノンランプから分光した405nm、445nm、642nmの光をそれぞれ照射し、得られる透過光を積分球内に拡散させた後、分光光度計(MCPD−7000:大塚電子株式会社)で透過光の色度を測定した。
【0105】
405nmの近紫外光を照射した場合、いずれの蛍光シートも鮮やかな緑色を発光することが観測された。また、642nmの赤色光を照射した場合、透過光は鮮やかな赤色であり、蛍光シートの色度に大きな差は見られなかった。
【0106】
445nmの青色光を照射した場合でも青色の透過光が得られるが、とくに緑蛍光体としてBaMgAl10O17:Eu,Mn(実施例1)又はBaMg2Al16O27:Eu,Mn(実施例2)を使用した蛍光シートでは色純度の高い青色の透過光が得られることがわかった。
【0107】
赤、青、近紫外レーザー光源を用いてフルカラー映像を描写する場合、色純度の高い赤、緑、青色光が求められる。緑蛍光体を分散させたシートを用いることで赤、緑、青色光がえられたので、フルカラー映像を描写できる。とくに、ユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)で付活したアルミン酸塩(BaMgAl10O17:Eu,Mn、BaMg2Al16O27:Eu,Mn)を用いたシートでは色純度の高い青色光が得られることからディスプレイ用の蛍光体として好適に使用できることがわかった。
【0108】
【表1】

【0109】
(実施例6)
シリコーンゴム(KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100重量部に対し、緑蛍光体(BaMgAl10O17:Eu,Mn)を50重量部均一に分散させ、これを金型に入れて加熱プレスして210×297×0.2mmのシート形状に成形した。
【0110】
光出力150mWの赤色半導体レーザー(642nm)、光出力150mWの青色半導体レーザー(445nm)、及び光出力150mWの近紫外半導体レーザー(405nm)を用い、水平走査ミラーとしてラム波共鳴圧電駆動方式の光スキャナー、垂直走査ミラーとして電磁駆動方式の光スキャナーを使用した。これらを、変調速度70MHz、水平スキャン周波数30kHz、垂直スキャン周波数30Hzで駆動させ、緑蛍光体を分散させたシートに走査させた。その結果、赤、青色レーザー光と緑蛍光体の発光した緑色光とによって、スペックルノイズの低減したカラー映像が得られた。
【符号の説明】
【0111】
1はディスプレイ装置、2は赤色レーザー光源、3は励起用レーザー光源、4は青色レーザー光源、5はスクリーン部、6は走査部、11・11a・11bはスクリーンシート、12はブラックマトリックス、13は保護板、14は励起光透過防止板、16は貫通孔、17は金属板、18は蛍光体層、19は透光性基材、20は緑蛍光体、21は赤色光変調器、22は緑色光変調器、23は青色光変調器、24は赤色反射ミラー、25は励起光反射ミラー、26は青色反射ミラー、27は水平走査ミラー、28は垂直走査ミラー、31はガラス板、32は凹部、33はガラス板、34は印刷膜、35はスクリーン、36は反射板、Bは青色レーザー光、Gは緑色光、Rは赤色レーザー光、Srは赤のカラー映像信号、Sgは緑のカラー映像信号、Sbは青のカラー映像信号、UVは励起用レーザー光である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー映像を表示するディスプレイ装置であって、近紫外の励起用レーザー光の照射で緑色光を発光する緑蛍光体が透光性基材の中に分散されている蛍光体層を有するスクリーンシートと、該励起用レーザー光を出射する励起用レーザー光源と、赤色レーザー光を出射する赤色レーザー光源と、青色レーザー光を出射する青色レーザー光源と、該各レーザー光源から出射された該各レーザー光をカラー映像信号に基づいて変調して該スクリーンシートの該蛍光体層に走査させる走査部とを備えることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記各レーザー光源が半導体レーザーであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記緑蛍光体が、
Al、Mn、Cu、Ce、Sm、Eu、Tb、及びAuから選ばれる少なくとも1種の発光中心原子を含有しており、アルミン酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体、リン酸ホウ酸塩蛍光体、ハロケイ酸塩蛍光体、チオガレート蛍光体、スカンジウム酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、硫化物蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、及びチオアルミネート蛍光体から選ばれる少なくとも1種の無機蛍光体、
及び/又は
ピリジン−フタルイミド誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、キナゾリノン誘導体、クマリン誘導体、キノフタロン誘導体、ナフタル酸イミド誘導体、ペリレン誘導体、及びテルビウム有機錯体から選ばれる少なくとも1種の有機蛍光体
であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記透光性基材の材料が、シリコーン、水ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂のうちのいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記蛍光体層が光散乱材を含有していることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
前記蛍光体層には、その少なくとも一面側に光を散乱させる凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
前記蛍光体層が、前記カラー映像の画素毎に隔壁で区画されていることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
前記隔壁が、前記画素毎の大きさで貫通孔が形成された金属板若しくは樹脂板、又は、透光性を有するシリコーン板、ガラス板、アクリル板、フッ素樹脂板、シクロオレフィン樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、及びポリエチレンテレフタレート樹脂板から選ばれる透光性板を該画素毎の大きさで窪ませた凹部の側壁、若しくは平坦な該透光性板上に該画素毎に仕切るように印刷塗料が印刷された印刷膜であり、該貫通孔、該凹部又は該印刷膜で囲まれた内側に前記蛍光体層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
前記蛍光体層が、前記印刷膜で囲まれた内側に印刷されて形成されていることを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ装置。
【請求項10】
前記隔壁には、光反射材を含む光反射層が付されていることを特徴とする請求項7に記載のディスプレイ装置。
【請求項11】
前記蛍光体層が前記カラー映像の画素ごとに赤色用、緑色用、青色用の3つの画素に前記隔壁で分けて区画されていて、前記走査部が、前記赤色レーザー光を該赤色用の該画素に、前記励起用レーザー光を該緑色用の該画素に、前記青色レーザー光を該青色用の画素に、走査することを特徴とする請求項7に記載のディスプレイ装置。
【請求項12】
前記スクリーンシートの前記各レーザー光を走査する走査面の対面側を映像視認面とするリアプロジェクション型に構成され、又は、該スクリーンシートの該走査面を映像視認面とするフロントプロジェクション型に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
前記リアプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記映像視認面側に、前記励起用レーザー光を吸収、及び/又は反射する励起光透過防止板が付されていることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置。
【請求項14】
前記リアプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記映像視認面側に、透光性の保護板が付されていて、該保護板の少なくとも一面側には光を散乱させる凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置。
【請求項15】
前記フロントプロジェクション型に構成された前記スクリーンシートの前記走査面の対面側に、光反射板を有していることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置。
【請求項16】
前記スクリーンシートの前記映像視認面側、該前記映像視認面側に付される透光性の保護板の表面、又は該映像視認面側に付される励起光透過防止板の表面のいずれかに、ブラックマトリックスが付されていることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−164537(P2011−164537A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30301(P2010−30301)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高性能AD圧電膜とナノチューブラバーを用いたレーザTV用高安定光スキャナーの基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(595015890)株式会社ファインラバー研究所 (15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504417641)マイクロプレシジョン株式会社 (18)
【Fターム(参考)】