説明

ディスペンサー及び塗布剤の塗布方法

【課題】ボンディングされるワークの傾きの発生を抑える。
【解決手段】ボンディングポイントBPにクロス形状43を成すようにエポキシ樹脂71を塗布し(S1)、ボンディングポイントBPの塗布画像72を取得する(S2)。塗布画像72にてクロス形状43を成すエポキシ樹脂71の重心を求め、この面積重心O’の座標を重心位置(X,Y)として取得する(S3)。ティーチングデータを用いて、次のパッドで使用する補正量を中心オフセット(X,Y)として自動計算し(S4)、この中心オフセット(X,Y)を用いてクロス形状43の初期形状61を修正し、修正した修正形状62での重心が中心点Oとなるように設定する。中心オフセット(X,Y)で分布を変化させた修正形状62に基づいて、次のボンディングポイントBPにおいてエポキシ樹脂71を塗布する(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象箇所に塗布剤を塗布するディスペンサー及び塗布剤の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等のチップをリードフレームのボンディングポイントにボンディングする際には、ボンディング装置が用いられており、該ボンディング装置には、チップをボンディングする前工程において前記ボンディングポイントにエポキシ樹脂を塗布するディスペンサーが設けられている。
【0003】
このディスペンサーは、図6の(a)に示すように、前記エポキシ樹脂801をドット状に塗布するドッティングにおいて、塗布したエポキシ樹脂801の画像を処理して、塗布位置とボンディングポイント802とが一致するように、オフセットを加えて塗布位置を修正する機能を備えている。
【0004】
また、前記ディスペンサーは、ボンディングされたチップが傾斜するダイチルトを調整する為に、意図的に塗布位置をオフセットさせる機能も備えている。
【0005】
一方、比較的大きなチップをボンディングする際には、図6の(b)に示すように(複数のライティング形状を示す図)、エポキシ樹脂801を予め記憶された所定形状に基づいてライン状に塗布するが、このライティング時においても、所定形状に塗布されたエポキシ樹脂801の重心とボンディングポイント802とが一致するように、オフセットを加えて塗布位置を修正できるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなディスペンサーにあっては、塗布される所定形状全体をオフセットするように構成されている。
【0007】
このため、ボンディングしたチップにダイチルトが発生した場合、前述したオフセット機能によって、これを修正することができず、ダイチルトの対策に苦労を要した。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ボンディングされるワークの傾きの発生を抑えることができるディスペンサー及び塗布剤の塗布方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のディスペンサーにあっては、ワークがボンディングされるボンディングポイントに塗布剤を塗布するディスペンサーにおいて、前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように前記塗布剤を塗布する塗布手段と、該塗布手段で形成された前記所定形状の重心を求める重心演算手段と、該重心演算手段で求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する形状修正手段と、を備えている。
【0010】
すなわち、ボンディングポイントに塗布剤を塗布する際には、塗布剤が前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように当該塗布剤を塗布した後、前記所定形状での重心を求める。
【0011】
そして、この求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する。
【0012】
このため、次に前記ボンディングポイントに塗布剤を塗布する際には、この修正形状に基づいて前記塗布剤を塗布することによって、前記修正形状の前記塗布剤の重心が、前記ボンディングポイントの中心点に配置される。
【0013】
また、請求項2のディスペンサーにおいては、前記重心演算手段は、前記塗布手段で前記所定形状に塗布された前記塗布剤の画像を取得し、この塗布画像における前記塗布剤が占める面積の分布から重心を求める。
【0014】
すなわち、前記所定形状に塗布された前記塗布剤の画像を取得するとともに、この塗布画像を解析することによって、前記所定形状の前記塗布剤が占める面積の分布から重心が求められる。
【0015】
そして、請求項3の塗布剤の塗布方法にあっては、ワークがボンディングされるボンディングポイントに塗布剤を塗布する塗布剤の塗布方法において、前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように前記塗布剤を塗布する塗布工程と、該塗布工程で形成された前記所定形状の重心を求める重心演算工程と、該重心演算工程で求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する形状修正工程と、を備えている。
【0016】
すなわち、ボンディングポイントに塗布剤を塗布する際には、塗布剤が前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように当該塗布剤を塗布した後、前記所定形状での重心を求める。
【0017】
そして、この求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する。
【0018】
このため、次に前記ボンディングポイントに塗布剤を塗布する際には、この修正形状に基づいて前記塗布剤を塗布することによって、前記修正形状の前記塗布剤の重心が、前記ボンディングポイントの中心点に配置される。
【0019】
また、請求項4の塗布剤の塗布方法においては、前記重心演算工程は、前記塗布工程で前記所定形状に塗布された前記塗布剤が占める面積の分布から重心を求める。
【0020】
すなわち、前記所定形状に塗布された前記塗布剤が占める面積の分布から重心が求められる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の請求項1のディスペンサー及び請求項3の塗布剤の塗布方法にあっては、修正が加えられた修正形状に基づいて塗布剤を塗布することによって、前記修正形状の前記塗布剤の重心を、前記ボンディングポイントの中心点に合わせることができる。
【0022】
このため、所定形状に塗布された塗布剤全体をオフセットする従来では抑制することができなかったワークの傾きを抑えることができる。これにより、前記修正形状に塗布された塗布剤上に載置したワークを水平に維持することができる。
【0023】
また、請求項2のディスペンサー及び請求項4の塗布剤の塗布方法においては、前記所定形状に塗布された前記塗布剤が占める面積の分布から重心を求めることができる。
【0024】
このため、前記重心の算出の簡素化を図ることができる。
【0025】
また、画像処理による重心の算出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布剤の塗布方法を実施する為のディスペンサー1を示すブロック図である。
【0027】
このディスペンサー1は、ワークとしての半導体チップをリードフレームのボンディングポイントにボンディングするボンディング装置に設けられており、当該ディスペンサー1は、前記半導体チップをボンディングする前工程において、前記ボンディングポイントに塗布剤としてのエポキシ樹脂を塗布する装置である。これにより、前記ボンディングポイントに塗布された前記エポキシ樹脂上に、ウェーハリングから移送された半導体チップを載置することによって、当該半導体チップを前記ボンディングポイントにボンディングできるように構成されている。
【0028】
前記ディスペンサー1は、制御部11を中心に構成されており、該制御部11には、画像処理部12が接続されている。該画像処理部12には、リードフレームの状態を検出する為に前記ボンディング装置に設けられたカメラが接続されており、前記リードフレームのパッドに設定されたボンディングポイントの画像を取得できるように構成されている。
【0029】
また、前記制御部11には、入出力部21が接続されており、該入出力部21は、モニターやキーボード等によって構成されている。これにより、ボンディング装置を操作するオペレータが前記モニターの表示に従って前記キーボードを操作することによって、設定値などのデータを当該ディスペンサー1に入力できるように構成されている。
【0030】
さらに、前記制御部11には、塗布装置駆動部31が接続されており、塗布剤としてのエポキシ樹脂を塗布する図外の塗布装置に制御信号を出力し、当該塗布装置を駆動できるように構成されている。
【0031】
そして、前記制御部11は、ROMやRAMを内蔵したマイコンを中心に構成されている。前記ROMには、処理手順を示すプログラム等が記憶されており、前記マイコンが前記ROMに記憶されたプログラムに従って動作するように構成されている。また、前記RAMには、前記入出力部21から入力された設定値や処理過程で使用するデータが記憶されるように構成されている。
【0032】
このディスペンサー1は、比較的大きな半導体チップをボンディングする際に、予め登録された所定形状に基づいて、前記エポキシ樹脂をライン状に塗布できるように構成されており、前記制御部11の前記ROMには、予め設定された複数の所定形状が記憶されている。
【0033】
すなわち、図2は、前記ROMに記憶された所定形状の例を示す図であり、その所定形状の例として、ライン(X)形状41と、ライン(Y)形状42と、クロス形状43と、ダブルクロス形状44と、ダブルY(X)形状45と、ダブルY(Y)形状46と、スノー形状47とが示されている。
【0034】
また、この図2には、前記リードフレームのパッドに設定されたボンディングポイントBPと、該ボンディングポイントBPの中心点Oとが示されているとともに、該中心点Oに対する前記各形状での初期形状61,・・・と、修正が加えられた修正形状62,・・・の例とが示されている。
【0035】
以上の構成にかかる本実施の形態にかかる前記ディスペンサー1の動作を、図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0036】
すなわち、ディスペンサー1の作動を開始した際には、ボンディングポイントBPが設定されたパッドがディスペンスユニットの下部に移動された時点で、前記塗布装置駆動部31に制御信号を出力することによって、前記パッドに設定されたボンディングポイントBPにエポキシ樹脂を塗布しながら、前記入出力部21で予め設定された所定形状に従って前記ディスペンスユニットを移動する(S1)。
【0037】
これにより、前記ボンディングポイントBPには、例えば図4に示すように(クロス形状43を図示)、ボンディングポイントBPの中心点Oを中心とした所定形状としての前記クロス形状43を成すように前記エポキシ樹脂71が塗布される。
【0038】
このエポキシ樹脂71の塗布が完了した際には、前記画像処理部12に接続されたカメラによって前記ボンディングポイントBPの画像を取得するとともに、この画像を処理することによって、エポキシ樹脂71の塗布領域を明確化した塗布画像72を取得する(S2)。
【0039】
この塗布画像72において、例えば塗布画像72内にて区画された各領域での前記エポキシ樹脂71の面積をそれぞれ算出するとともに、これに基づいて当該塗布画像72内における前記エポキシ樹脂71の分布を求める。そして、この結果に基づいて前記クロス形状43を成す前記エポキシ樹脂71の重心を求め、これを面積重心O’の座標を、重心位置(X,Y)として取得する(S3)。
【0040】
次に、前記RAMに予め記憶されたティーチングデータを用いることによって、次のパッドで使用する補正量を中心オフセット(X,Y)として自動計算する(S4)。
【0041】
ここで、前記ティーチングデータとは、ティーチング時に予め算出されたデータであり、予め設定された中心オフセット(Xn,Yn)とした前記エポキシ樹脂71のライティングをn回行うとともに、ライティングを行ったパッドのエポキシ樹脂71の重心を画像認識で求め、前記各中心オフセット(Xn,Yn)と重心位置(Xn,Yn)との関係(分布データ)から求めたデータである。
【0042】
そして、算出した前記中心オフセット(X,Y)を用いて前記クロス形状43の初期形状61を修正し、修正した修正形状62での重心が前記中心点Oとなるように設定してRAMに記憶するとともに、前記中心オフセット(X,Y)で分布を変化させた前記修正形状62に基づいて、次のボンディングポイントBPにおいて前記エポキシ樹脂71を塗布した後(S5)、前記ステップS2へ移行する。
【0043】
これにより、次のボンディングポイントBPでは、塗布される前記エポキシ樹脂71の分布が前記修正形状62に基づいて滑らかに変更され、前記修正形状62の前記エポキシ樹脂71の重心が、前記ボンディングポイントBPの中心点Oに配置される。
【0044】
このように、修正が加えられた前記修正形状62に基づいて前記エポキシ樹脂71を塗布することによって、前記修正形状62の前記エポキシ樹脂71の重心を、前記ボンディングポイントBPの中心点Oに合わせることができる。
【0045】
このため、図5の(a)に示すように、所定形状81に塗布されたエポキシ樹脂71全体をオフセットする従来では、抑制することができなかった半導体チップのZ方向の傾きを、図5の(b)に示すように、前記エポキシ樹脂71の面積重心O’を移動することによって、抑えることができる。これにより、前記修正形状62に塗布された前記エポキシ樹脂71上に載置した半導体チップを水平に維持することができ、品質を向上することができる。
【0046】
また、前記クロス形状43に塗布された前記エポキシ樹脂71の画像を取得し、この塗布画像72における前記エポキシ樹脂71が占める面積の分布を求めることによって、前記重心を演算することができる。
【0047】
このため、前記重心の算出の簡素化を図ることができる。
【0048】
また、画像処理による重心の算出が可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態では、総ての処理をディスペンサー1によって自動的に行う場合を例に挙げて説明したが、例えば、オペレータが入出力部21を利用して前記中心オフセット(X,Y)を入力することによって、塗布される前記エポキシ樹脂71の重心を前記ボンディングポイントBPの中心点Oに合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態の示すブロック図である。
【図2】同実施の形態のエポキシ樹脂の塗布形状を示す説明図である。
【図3】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態の動作を示す説明図である。
【図5】(a)は従来でのエポキシ樹脂の塗布状態を示す説明図であり、(b)は同実施の形態によるエポキシ樹脂の塗布状態を示す説明図である。
【図6】従来のエポキシ樹脂の塗布状態を示す図で、(a)はドッティング、(b)はライティング形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ディスペンサー
11 制御部
12 画像処理部
31 塗布装置駆動部
61 初期形状
62 修正形状
71 エポキシ樹脂
72 塗布画像
BP ボンディングポイント
O 中心点
O’ 面積重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークがボンディングされるボンディングポイントに塗布剤を塗布するディスペンサーにおいて、
前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように前記塗布剤を塗布する塗布手段と、
該塗布手段で形成された前記所定形状の重心を求める重心演算手段と、
該重心演算手段で求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する形状修正手段と、
を備えたことを特徴とするディスペンサー。
【請求項2】
前記重心演算手段は、前記塗布手段で前記所定形状に塗布された前記塗布剤の画像を取得し、この塗布画像における前記塗布剤が占める面積の分布から重心を求めることを特徴とした請求項1記載のディスペンサー。
【請求項3】
ワークがボンディングされるボンディングポイントに塗布剤を塗布する塗布剤の塗布方法において、
前記ボンディングポイントの中心点を中心とした所定形状を成すように前記塗布剤を塗布する塗布工程と、
該塗布工程で形成された前記所定形状の重心を求める重心演算工程と、
該重心演算工程で求めた重心位置の前記中心点からのズレに基づいて前記所定形状を修正し、修正した修正形状での重心が前記中心点となるように前記塗布剤の分布を変更する形状修正工程と、
を備えたことを特徴とする塗布剤の塗布方法。
【請求項4】
前記重心演算工程は、前記塗布工程で前記所定形状に塗布された前記塗布剤が占める面積の分布から重心を求めることを特徴とした請求項3記載の塗布剤の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−23455(P2008−23455A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198832(P2006−198832)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】