説明

ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置

【課題】給気、排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うことなく、且つ燃料消費率の悪化を回避して、エンジンの特に低負荷において、排ガス温度を上昇させDOC、及びDPFを正常にさせ得るディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置において、DPF122の下流にDPF通過後の排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器6を設置し、DOC121の排ガス入口部に加熱熱交換器6で蓄熱した受熱媒体の熱とDOCの排ガス入口部の排ガスとを熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出する放熱熱交換器7を設置し、加熱熱交換器6と放熱熱交換器7との間に熱媒体通路8を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンのDPF(粒子状物質除去装置)の再生装置等に用いられ、排気ターボ過給機出口の排ガスをDOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を通して、前記DOCで排ガス中の燃料を酸化させ、前記DPFで前記DOCにて燃料酸化後の排ガス中のPM(粒子状物質)を燃焼させて、該排ガスを浄化するディーゼルエンジンの排ガス後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6はDOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)装置を備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。
図6において、ディーゼルエンジン(以下エンジン100という)は、排気タービン109とこれに同軸駆動されるコンプレッサ108を有する排気ターボ過給機110を備えており、該過給機110のコンプレッサ108から吐出された空気は空気管107を通って空気冷却器106に入り、該空気冷却器106で冷却される。
該空気冷却器106で冷却された空気は、吸気スロットル弁105で開度を制御された後、給気管104を通り、シリンダ毎に設けられた給気ポートからエンジン100に吸入される。
エンジン100においては、コモンレール(蓄圧器)102にて蓄圧された高圧燃料が、コモンレール制御装置103により噴射時期及び噴射量を制御され、かかる噴射時期及び噴射量にて、シリンダ毎に設けられた燃料噴射弁101から噴射される。噴射された高圧燃料は前記空気との混合によって燃焼される。
【0003】
また、前記排気集合管111の途中から、EGR(排ガス再循環)管116が分岐されて、排ガス120の一部(EGRガス)はEGR管116を通り、EGRクーラ115で降温され、EGR弁114で流量を制御されて、給気管104の吸気スロットルバルブ105に下流部位に投入される。
そして、エンジン100で燃焼された燃焼ガス即ち排ガス120は、シリンダ毎に設けられた排気ポートが集合した排気集合管111を通って、前記排気ターボ過給機110の排気タービン109を駆動して前記コンプレッサ108の動力源となった後、排気管112を通って排ガス後処理装置1のDOC121に入る。
【0004】
そして、該DOC121で排ガス120中の燃料を酸化させて昇温された後、排ガス後処理装置1のDPF122に送り込まれる。
DPF122においては、前記DOCでHC(炭化水素)成分を酸化しこのとき発生する反応熱で、DPF122に堆積されているPM(粒子状物質)が燃焼処理される。燃焼処理され後の排ガスは排気出口管113から外部に排出される。
【0005】
尚、特許文献(特開2004−339971号公報)においては、その特に図3には、DOC3Aaの下流とDPF3Abとの間に、燃料噴射弁43を配置して該燃料噴射弁43から、所定の時期に燃料を噴射して、DPF3Aの温度を上昇させたDOCおよびDPFをそなえたディーゼルエンジンの排ガス後処理装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−339971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6に示されるディーゼルエンジンの排ガス後処理装置は、DPF122再生時には、DOC121の上流側に燃料を供給し、DOC121にて該燃料を酸化させることで、DOC121後の排ガス温度を、DPF122でPMが燃焼する温度(一般的には600〜650℃)まで昇温させる。
この際に、低負荷時でもDOC121が、燃料を酸化させることができる温度(一般的には250℃以上)に到達している必要がある。
【0008】
エンジンの負荷が低い場合、即ち低負荷時にはDOC121入口の排ガス温度は100〜150℃程度であり、かかる温度ではDOC121にて燃料を酸化させることができない。
このため、従来のエンジンにおいては給気のスロットル弁105を絞ったり、あるいは排気のスロットル弁(図示省略)を 絞るという操作を行って、DOC121入口の排ガス温度を上昇させるための制御を行っている。
かかる排ガス温度を上昇させるための制御は、即ち給気のスロットル弁や排気のスロットル弁を絞る制御は、エンジンの熱効率を低下させる、また結果的にはエンジンの燃料消費率が悪化するという問題がある。
【0009】
尚、前記特許文献1には、DOCの下流とDPFとの間に、燃料噴射弁から、所定の時期に燃料を噴射して、DPFの温度を上昇させたDOCおよびDPFをそなえた排ガス後処理装置が開示されているのみで、前記問題点を解決する手段は示されていない。
【0010】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、給気、排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うことなく、且つ燃料消費率の悪化を回避して、エンジンの特に低負荷において、排ガス温度を上昇させDOC、及びDPFを正常にさせ得るディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる課題を解決するもので、エンジンの排気ターボ過給機出口の排ガスをDOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を通して、前記DOCで排ガス中の燃料を酸化させ、前記DPFで前記DOCにて燃料酸化後の排ガス中のPM(粒子状物質)を燃焼させて該排ガスを浄化するディーゼルエンジンの排ガス後処理装置において、
前記DPFの下流にDPF通過後の排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器を設置し、前記DOCの排ガス入口部に前記加熱熱交換器で蓄熱した受熱媒体の熱と前記DOCの排ガス入口部の排ガスとを熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出する放熱熱交換器を設置し、前記加熱熱交換器と放熱熱交換器との間は、前記加熱熱交換器で受熱媒体に蓄熱した熱を外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器に送る熱媒体通路を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
かかる発明において、前記加熱熱交換器から熱媒体通路を通って前記放熱熱交換器を循環する熱媒体循環路を形成し、前記熱媒体通路中に前記受熱媒体に循環力を与える移送ポンプを設ける(請求項2)。
【0013】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り前記放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、外気中に排出する排出路を設けたことを特徴とする(請求項3)。
【0014】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り前記放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、前記DOCの排ガス入口管に接続する戻し通路を設けたことを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、DPFの下流にDPF通過後の排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器を設置し、DOCの排ガス入口部に前記加熱熱交換器で蓄熱した受熱媒体の熱と前記DOCの排ガス入口部の排ガスとを熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出する放熱熱交換器を設置し、前記加熱熱交換器と放熱熱交換器との間は、前記加熱熱交換器で受熱媒体に蓄熱した熱を外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器に循環させる熱媒体通路を設け(請求項1)、特に、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通って前記放熱熱交換器を循環する熱媒体循環路を形成し、前記熱媒体通路中に前記受熱媒体に循環力を与える移送ポンプを設けて(請求項2)構成することによって、DPF通過後の高温ガス(前記600〜650℃程度)を、前記排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器を用いて受熱媒体に蓄熱し、この受熱媒体の熱を、外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器に送る熱媒体通路を通して、前記DOCの排ガス入口部に設置した放熱熱交換器で受けて、該放熱熱交換器で排ガスとを熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出する。
これにより、受熱媒体の熱でDOC入口の排ガスを加熱することとなり、DPF通過後の高温(600〜650℃)排ガスの熱を、前記加熱熱交換器と放熱熱交換器を用いて効率良く、DOCの排ガス入口部の排ガス温度を高めることができ、排ガス温度を高めるための燃料の量を低減できる。
【0016】
これにより、エンジンの特に低負荷において、DOC入口に排ガス温度を250℃以上のDPF作動温度まで上昇させることが容易となって、従来技術のような、給気、排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うことなく、且つ排ガス温度を高めるための燃料の量の増加を回避することによって、燃料消費率の悪化の回避効果が大きい。
【0017】
また、本発明は、排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記発明と同様な加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り、前記発明と同様な放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、外気中に排出する排出路を設けるように構成することによって(請求項3)、加熱熱交換器に、DPF通過後の高温ガス(前記600〜650℃程度)に加えて、排気ターボ過給機出口の排ガス通路から分岐した加熱ガスの熱を加えるので、加熱熱交換器での受熱媒体の温度が前記何れの場合よりも高くなり、排ガス温度を高めるための燃料の量を前記の場合よりもより多く低減できる。
【0018】
これにより、エンジンの特に低負荷において、DOC入口に排ガス温度を250℃以上のDPF作動温度まで上昇させることが前記の何れの場合よりも容易となって、従来技術のような、給気、排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うことなく、且つ排ガス温度を高めるための燃料の量の増加を回避することによって、燃料消費率の悪化の回避効果が大きくなる。
また、排気ターボ過給機出口の排ガス通路から分岐した加熱ガスの速度により、ガスの送り作用が得られるため、前記のような移送ポンプは不要となり、装置コストを低減できる。
【0019】
また、本発明は、排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り前記放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、前記DOCの排ガス入口管に接続する戻し通路を設けるように構成することによって(請求項4)、加熱熱交換器から熱媒体通路を通り放熱熱交換器を通って放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、戻し通路により前記DOCの排ガス入口管に戻して、その戻しガスをDOCの排ガス入口管の排ガスを加熱に利用するので、前記の場合よりも排ガス温度を高めるための燃料の量の増加の回避効果が大きくなって、燃料消費率の悪化の回避効果も大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】参考例に係るDOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)装置を備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】参考例に係る排ガス後処理装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る排ガス後処理装置の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る図1対応図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る図1対応図である。
【図6】従来技術に係るDOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)装置を備えたディーゼルエンジンの全体構成図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1は本発明の基本構成に係る参考例を示し、DOC(酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)装置を備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。
図1において、ディーゼルエンジン(以下エンジン100という)は、排気タービン109とこれに同軸駆動されるコンプレッサ108を有する排気ターボ過給機110を備えており、該過給機110のコンプレッサ108から吐出された空気は空気管107を通って空気冷却器106に入り、該空気冷却器106で冷却される。
該空気冷却器106で冷却された空気は、吸気スロットル弁105で開度を制御された後、給気管104を通り、シリンダ毎に設けられた給気ポートからエンジン100に吸入される。
【0023】
エンジン100においては、コモンレール(蓄圧器)102にて蓄圧された高圧燃料が、コモンレール制御装置103により噴射時期及び噴射量を制御され、かかる噴射時期及び噴射量にて、シリンダ毎に設けられた燃料噴射弁101から噴射される。噴射された高圧燃料は前記空気との混合によって燃焼される。
【0024】
また、前記排気集合管111の途中から、EGR(排ガス再循環)管116が分岐されて、排ガス120の一部(EGRガス)はEGR管116を通り、EGRクーラ115で降温され、EGR弁114で流量を制御されて、給気管104の吸気スロットルバルブ105に下流部位に投入される。
そして、エンジン100で燃焼された燃焼ガス即ち排ガス120は、シリンダ毎に設けられた排気ポートが集合した排気集合管111を通って、前記排気ターボ過給機110の排気タービン109を駆動して前記コンプレッサ108の動力源となった後、排気管112を通って排ガス後処理装置1に入る。
【0025】
以上の構成は、図6に示す従来技術と同様である。
本発明は、前記排ガス後処理装置1の構成に関するものである。
【0026】
図2は、参考例に係る排ガス後処理装置の断面図である。
図2及び図1において、前記排気管112を通った排ガスは、排ガス後処理装置1の入口室123から前記DOC121及びDPF122に入る。
即ち前記エンジン100からの排ガスは、前記排気管112から排ガス後処理装置1の入口室123を通ってDOC121に入る。
【0027】
本発明においては、かかる排ガス後処理装置1を次のように構成している。
即ち、図2及び図1において、ケース122a内には、DOC121と間隔123aを隔ててDPF122が収納されている。
前記DPF122の下流の下流室124には、DPF122通過後の排ガスの熱を受熱する伝熱板3を設置し、前記DOC121の排ガス入口部を構成する上流室123には、前記伝熱板3から伝送された熱を放出する放熱板2を設置している。
そして、前記伝熱板3と放熱板2との間を、外部との間に遮熱性を有する熱伝導体4で接続している。
【0028】
前記伝熱板3及び放熱板2は、多くの孔が穿孔された多孔板、あるいは扁平状に且つ排ガス通過が可能に設けられた伝熱チューブの何れかよりなり、また前記熱伝導体4は遮熱性を有する熱伝導体即ちヒートパイプ(金属管の中に冷媒を入れ、液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用して熱移動、排熱を行う)、あるいは外部への放熱機能を遮断した伝熱パイプにより構成されている。このように、かかる伝熱板3及び放熱板2及び熱伝導体4は、きわめて簡単かつ低コストの装置で構成されている。
【0029】
かかる参考例において、前記DPF122では、該DPF122に堆積したPMを燃焼させ、燃焼ガスは出口室124から排気出口管113に排出される。このときの、DPF122通過後の排ガス温度は600〜650℃と高温である。
参考例においては、前記伝熱板3を用いて、該伝熱板3を前記600〜650℃程度の排ガス温度で加熱し、この伝熱板3を、外部との間に遮熱性を有する熱伝導体4を介して、DOC121の排ガス入口部を構成する上流室123に設置された放熱板2に接続し、該熱伝導体4からの伝熱板3の熱を放熱板2に伝達して、該放熱板2によりDOC121入口の排ガス中に放熱して、DOC121入口の排ガスを加熱している。
これにより、DPF122通過後の高温(600〜650℃)排ガスの熱を用いて、DOC121の排ガス入口部の排ガス温度を高めることができ、従って、排ガス温度を高めるための燃料の量を低減できる。
この場合、前記DOC121とDPF122との間隔123aの温度は、250〜600℃程度となり、エンジン100の低負荷でもDPF122の作動に十分な温度である。
【0030】
これにより、エンジン100の特に低負荷において、DOC121入口に排ガス温度を250℃以上のDPF作動温度まで上昇させることが可能となって、従来技術のような、給気のスロットル弁105や排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジン100の熱効率を低下させる制御を行うことがなくなる。また、排ガス温度を高めるための燃料の量の増加を回避することによって燃料消費率の悪化を回避できる。
【0031】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る排ガス後処理装置の断面図である。
この第1実施形態においては、前記DPF122の下流室124にDPF122通過後の排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器6を設置し、前記DOC121の排ガス入口部(上流室123)に放熱熱交換器7を設置し、前記加熱熱交換器6で蓄熱した受熱媒体の熱を前記DOC121の排ガス入口部(上流室123)の排ガス中に放出する。前記加熱熱交換器6と放熱熱交換器7との間は、前記加熱熱交換器6で受熱媒体に蓄熱した熱を、外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器7に循環させる熱媒体通路8を設けている。
【0032】
そして、かかる第1実施形態においては、前記加熱熱交換器6から前記熱媒体通路8を通って前記放熱熱交換器7を循環する熱媒体循環路8aを形成し、熱媒体通路8中に前記受熱媒体に循環力を与える移送ポンプ9を設けている。
【0033】
かかる第1実施形態によれば、DPF122通過後の高温ガス(前記600〜650℃程度)を、前記排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器6を用いて受熱媒体に蓄熱し、この受熱媒体の熱を、外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器に送る熱媒体通路8を通して、前記DOC121の排ガス入口部即ち上流室123に設置した放熱熱交換器7で受けて、該放熱熱交換器7で排ガスと熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出している。
【0034】
これにより、前記受熱媒体の熱でDOC121入口の排ガスを加熱することとなり、DPF122通過後の高温(600〜650℃)排ガスの熱を、前記加熱熱交換器6と放熱熱交換器7を用いて効率良く、DOC121の排ガス入口部(上流室123)の排ガス温度を高めることができ、排ガス温度を高めるための燃料の量を低減できる。
【0035】
従って、エンジンの特に低負荷において、DOC121入口に排ガス温度を必要な250℃以上のDPF作動温度まで上昇させることが前記参考例の場合よりも容易となって、従来技術のような、給気のスロットル弁105や排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うのを回避できる。
また、排ガス温度を高めるための燃料の量の増加を回避できることによって、前記参考例の場合よりも、燃料消費率の悪化の回避効果が大きくなる。
その他の構成は、前記参考例(図2)と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る図1対応図である。
この第2実施形態においては、排気ターボ過給機110の排気タービン109出口の排気管112から分岐した加熱ガスを通す加熱管11を前記第1実施形態と同様な加熱熱交換器6の受熱媒体入口に接続している。
さらに、加熱熱交換器か6から前記熱媒体通路8を通り、前記第1実施形態と同様な放熱熱交換器7を通って、該放熱熱交換器7で排ガス入口部の上流室123で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、外気中に排出する排出路11bを設けている。
【0037】
このように構成すれば、加熱熱交換器6に、DPF122通過後の高温ガス(前記600〜650℃程度)に加えて、排気ターボ過給機110の排気タービン109の入口から分岐した加熱ガスを通す加熱管11を、前記第1実施形態と同様な加熱熱交換器6の受熱媒体入口に接続している。
従って、加熱熱交換器6に、DPF122通過後の高温ガス(前記600〜650℃程度)に加えて、排気ターボ過給機110の排気タービン109出口の排気管112から分岐した加熱管11により、加熱ガスの熱を加えるので、加熱熱交換器6での受熱媒体の温度が前記参考例、第1実施形態の何れの場合よりも高くなり、排ガス温度を高めるための燃料の量を前記参考例、第1実施形態の場合よりもより多く低減できる。
【0038】
これにより、エンジン100の特に低負荷において、DOC121入口に排ガス温度を250℃以上のDPF122作動温度まで上昇させることが、前記参考例、第1実施形態よりも容易となって、従来技術のような、給気スロットル弁105や排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うのを回避できる。
また、排ガス温度を高めるための燃料の量の増加を回避できることによって、前記参考例、第1実施形態の場合よりも、燃料消費率の悪化の回避効果が大きくなる。
また、排気ターボ過給機110の排気タービン109出口の排気管112から分岐した加熱管11での加熱ガスの速度により、ガスの送り作用が得られるため、前記第1実施形態のような移送ポンプ9は不要となり、装置コストを低減できる。
その他の構成は、前記参考例(図1)と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0039】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る図1対応図である。
この第3実施形態においては、前記第2実施形態に、放熱熱交換器7出口の放熱ガスを前記DOC121の排気管112に接続する戻し通路13を設けている。
即ち、排気ターボ過給機110の排気タービン109の入口から分岐した加熱ガスを通す加熱管11を前記加熱熱交換器6の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器6から前記熱媒体通路8を通り、前記放熱熱交換器7で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、前記DOC121の排気管112に接続する戻し通路13を設けている。
【0040】
かかる第3実施形態によれば、加熱熱交換器6から熱媒体通路8を通り放熱熱交換器7を通って該放熱熱交換器7で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、戻し通路13により前記DOC121の排気管112に戻して、その戻しガスをDOC121の排ガス入口管の排ガスの加熱に利用できるので、前記の第2実施形態よりも排ガス温度を高めるための燃料の量の増加の回避効果が大きくなって、燃料消費率の悪化の回避効果も大きくなる。
その他の構成は、前記参考例(図1)と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、給気、排気のスロットル弁を絞る制御つまりエンジンの熱効率を低下させる制御を行うことなく、且つ燃料消費率の悪化を回避して、エンジンの特に低負荷において、排ガス温度を上昇させDOC、及びDPFを正常にさせ得るディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を提供できる。
【符号の説明】
【0042】
1 排ガス後処理装置
2 放熱板
3 伝熱板
4 熱伝導体
6 加熱熱交換器
7 放熱熱交換器
8 熱媒体通路
8a 熱媒体循環路
9 移送ポンプ
11 加熱管
11b 排出路
13 戻し通路
100 エンジン
101 燃料噴射弁
102 コモンレール(蓄圧器)
103 コモンレール制御装置
104 給気管
105 給気スロットルバルブ
110 排気ターボ過給機
111 排気集合管
112 排気管
116 EGR(排ガス再循環)管
120 排ガス
121 DOC
122 DPF


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ターボ過給機出口の排ガスをDOC及びDPFを通して、前記DOCで排ガス中の燃料を酸化させ、前記DPFで前記DOCにて燃料酸化後の排ガス中のPMを燃焼させて該排ガスを浄化するディーゼルエンジンの排ガス後処理装置において、
前記DPFの下流にDPF通過後の排ガスの熱と受熱媒体との熱交換により該受熱媒体に蓄熱する加熱熱交換器を設置し、前記DOCの排ガス入口部に前記加熱熱交換器で蓄熱した受熱媒体の熱と前記DOCの排ガス入口部の排ガスとを熱交換して受熱媒体の熱を排ガス中に放出する放熱熱交換器を設置し、前記加熱熱交換器と放熱熱交換器との間には、前記加熱熱交換器で受熱媒体に蓄熱した熱を外部と遮熱状態で前記放熱熱交換器に送る熱媒体通路を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの排ガス後処理装置。
【請求項2】
前記加熱熱交換器から熱媒体通路を通って前記放熱熱交換器を循環する熱媒体循環路を形成し、前記熱媒体通路中に前記受熱媒体に循環力を与える移送ポンプを設けたことを特徴とする請求項1記載のディーゼルエンジンの排ガス後処理装置。
【請求項3】
前記排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り前記放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、外気中に排出する排出路を設けたことを特徴とする請求項1記載のディーゼルエンジンの排ガス後処理装置。
【請求項4】
前記排気ターボ過給機の排気タービン入口への排ガス通路から分岐した加熱ガスを通す加熱管を前記加熱熱交換器の受熱媒体入口に接続し、前記加熱熱交換器から前記熱媒体通路を通り前記放熱熱交換器を通って前記放熱熱交換器で排ガス中に熱を放出した後の受熱媒体を、前記DOCの排ガス入口管に接続する戻し通路を設けたことを特徴とする請求項1記載のディーゼルエンジンの排ガス後処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67756(P2012−67756A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267308(P2011−267308)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2008−240509(P2008−240509)の分割
【原出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】