説明

ディーゼルエンジンを有する輸送用車両のための酸化触媒

ディーゼルエンジンを有する輸送用車両の排ガスを浄化するための酸化触媒であって、担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒を記載する。酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物の両方の酸化物担体材料は、白金により触媒活性となっており、その際、比較的大量の白金が活性酸化アルミニウム上に存在している。この酸化触媒は、硫黄化合物に対する高い被毒抵抗性と同時に、良好なNO酸化速度によって優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンを有する輸送用車両の排ガス浄化、特にこの適用分野にとって特に好適な酸化触媒に関する。
【0002】
ディーゼル酸化触媒、特にPt/アルミナベースの酸化触媒は従来技術において周知である。これらは、ディーゼルエンジンの排ガス中に含有されている有害ガスである一酸化炭素COおよび炭化水素HCを、ディーゼル排ガス中に比較的大量に含有されている酸素を用いて無害な化合物である二酸化炭素CO2および水素へと酸化するために使用される。一酸化炭素COおよび炭化水素HC以外に、ディーゼルエンジンの排ガスは、窒素酸化物NOxおよび、シリンダー中、低温でディーゼル燃料および潤滑油の不完全燃焼によって生じ、かつ主として煤の残留物と、場合により有機凝集物とからなる粒子を含有している。
【0003】
輸送用車両、たとえば市街バス、ゴミ収集車、建設機械または農具はしばしば、ディーゼル乗用車とは基本的に異なった運転ルートで利用される。そのため、著しく低い排ガス温度および異なった排ガス組成により異なった排ガス特性を生じる。たとえばディーゼル乗用車の排ガスと比較して、窒素酸化物の含有率は明らかに低いが、しかし粒子の排出割合は場合によっては著しく高い。さらに、ディーゼル乗用車の排ガスと同様に、輸送用車両の排ガスは、ディーゼル燃料中の硫黄を含有するオルガニルの燃焼に起因する硫黄酸化物SOxの痕跡を含有している。硫黄酸化物は触媒毒として作用する。というのも、硫黄酸化物は活性な白金中心に化学吸着され、ひいては白金中心は所望の触媒反応に対してブロックされるからである。ディーゼル乗用車中で、このような被毒は時として富化および排ガス温度の400℃以上への上昇、ならびにここから生じる熱脱着により除去される。ディーゼル乗用車では似たような方法で時折、粒子フィルターの活性な再生が行われ、その際、フィルター中に堆積した煤粒子は排ガス中に含有されている酸素によって触媒作用により燃焼される。これは、この方法が他の実施態様に使用されるとしても、特に粒子フィルターがウォールフロー粒子フィルターである場合に該当する。
【0004】
多くの輸送用車両の適用では、排ガス温度が低すぎるために、活性な熱による脱硫および活性な粒子フィルターの再生は不可能である。これらは多くの場合、輸送用車両にとって典型的な運転プロファイルに基づいて、付加的な加熱措置を行わなければ適用することができず、これは認容できない燃料消費の上昇につながる。従って輸送用車両のための排ガス浄化装置は、硫黄による被毒に対して抵抗性があり、CO、HCおよび粒子の放出物を効果的に除去し、その際、機能性を得るために活性な粒子フィルターの再生または特殊な脱硫措置が不要である排ガス浄化装置を備えていなくてはならない。
【0005】
このために、開放型粒子フィルター支持体が使用される限りで、EP−B−0341832に記載の酸化触媒と粒子フィルターとからなる組み合わせが基本的に提供されている。この場合、粒子フィルターの再生は、フィルター織布中に堆積した煤粒子と、前方接続された酸化触媒により発生されるNO2との反応により現場で行われる。その際、白金が酸化アルミニウム上に担持された、典型的な酸化触媒が使用される。EP−A−1147801にはさらに、約5質量%の二酸化ケイ素により安定化された酸化アルミニウムが、NO2を生じる酸化触媒中の白金のための担体材料として適切であることが記載されている。
【0006】
1もしくは複数の担体酸化物、たとえば酸化アルミニウム、アルミニウム・ケイ素混合酸化物、酸化セリウムまたはゼオライト上に均質に分散した白金を含有する従来技術による酸化触媒は、HC、COおよびNOに関して良好な酸化性能を有しており、しばしば優れた熱老化安定性を特徴としている。しかしこれらは硫黄酸化物により被毒されやすいため、長期間に亘る使用の際には熱による脱硫が避けられない。従って、これらの触媒は記載の排ガスプロファイルを有する輸送用車両で使用する場合には満足のゆく結果は得られない。
【0007】
本発明の課題は、ディーゼルエンジンで運転される、粒子フィルターを有する輸送用車両のための酸化触媒であって、排ガス温度が低い場合でも高いNO酸化速度によって、良好な長時間安定性によって、および硫黄化合物に対する優れた被毒抵抗性によって優れている酸化触媒を提供することである。
【0008】
NOをNO2へと酸化する性能と、硫黄酸化物に対する被毒抵抗性との間では目的が対立し、その原因は、窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)の酸性の特性にある。良好なNO変換率を示す触媒は多くの場合、わずかに塩基性の担体酸化物を含有しており、この担体上で硫黄酸化物も良好に化学吸着される。従ってたとえば酸化アルミニウム単独および/または希土類により安定化された酸化アルミニウムに担持された白金は、SOxに対して高い親和性を示し、ひいては高い被毒傾向を示す。これに対して、白金がわずかに酸性の担体酸化物上に、たとえば二酸化ケイ素またはアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に均質に分散している触媒は、長期間に亘る老化条件下で多くの場合、良好なSOx被毒抵抗性を示すが、しかしNO変換率は中庸である。
【0009】
ところで発明者らは意外にも、担体酸化物材料である活性な酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に、触媒中で使用される白金全量が規定のとおりに分布していることにより、NO酸化性能と硫黄酸化物による被毒傾向との間の目的の対立が有利に解消されることを確認した。
【0010】
その際、「活性酸化アルミニウム」という用語は、以下の微粒子状材料を表す:活性アルミナ、熱分解法酸化アルミニウム、α−酸化アルミニウム、δ−酸化アルミニウム、θ−酸化アルミニウム、および特にγ−酸化アルミニウム、ダイアスポア、およびベーマイト。しかし「活性酸化アルミニウム」という用語は、希土類またはその他の酸化物がドープされた、またはこれらにより安定化された酸化アルミニウム、ならびに酸化アルミニウムと他の酸化物との均質な混合酸化物もしくは固溶体を含まない。
【0011】
「アルミニウム・ケイ素混合酸化物」という用語には、以下の微粒子状担体酸化物がまとめられる:アルミノケイ酸塩(テクトケイ酸塩)(これは四価のケイ素原子がSiO2立体網状構造において三価のアルミニウム原子により置換されているものを除いたゼオライト)、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、イノケイ酸塩およびフィロケイ酸塩(基本構造単位として四面体の[SiO4]単位を有する)、(これらは対カチオンとしてアルミニウムイオンを有する)、二酸化ケイ素によりドープされた、もしくは安定化された酸化アルミニウムの意味でのケイ酸アルミニウム(これらは基本構造単位として、四面体の[SiO4]単位ならびに場合により[AlO6]単位以外に八面体の[AlO6]単位を有していてもよい)、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素の均質な混合酸化物および固溶体、前記化合物の混合物。
【0012】
この認識によって、本発明の根底にある課題は、担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒によって解決されるが、この酸化触媒の特徴は、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物が白金により触媒活性となっており、その際、触媒中に存在する白金量の55〜95質量%は活性酸化アルミニウム上に存在しており、かつ白金の残量はアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に担持されていることである。本発明による触媒中で、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物は、互いに1:1.5〜1:4の量比で存在している。
【0013】
有利には本発明による触媒中で酸化アルミニウムとアルミニウム・ケイ素混合酸化物とは、相互に1より大:1.5〜1まで:4の量比で存在している。この場合、発明者の認識によれば両方の酸化物担体材料上への白金分布の様式は、主としてNO酸化特性に影響を与え、他方、酸化アルミニウム対アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比は主として、硫黄化合物に対する被毒抵抗性に影響を与える。これは、発明にとって本質的な数値範囲内で酸化触媒の組成を、その都度の目的とする適用に合わせて最適に調整するために利用することができる。たとえば受動的に再生されるディーゼル粒子フィルターを考慮してできる限り多くのNO2が供給されなくてはならない適用のための本発明による酸化触媒では、触媒中に存在する白金量の有利に60〜80質量%が、特に有利には70〜75質量%が活性酸化アルミニウム上に存在している。さらに、浄化すべき排ガスが高いSOx含有率を有しており、従って特に高い被毒抵抗性が必要とされる場合には、酸化アルミニウム対アルミニウム・ケイ素混合酸化物の比は有利には1:2〜1:4の範囲である。たとえば良好な燃料品質が保証されている使用の場合には排ガス中で低いSOx含有率が予測されるので、NO酸化特性を支援するために酸化アルミニウム対アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比は、1より大:1.5〜1まで:2.5が有利であり、1より大:1.5〜1まで:2は特に有利である。
【0014】
本発明による触媒の有利な実施態様では、酸化アルミニウム上の白金の局所的な濃度は、アルミニウム・ケイ素混合酸化物上の白金の局所的な濃度よりも少なくとも2倍である。有利には酸化アルミニウム上に施与された白金および酸化アルミニウムの全質量に対する酸化アルミニウム上の白金濃度は、アルミニウム・ケイ素混合酸化物上の白金およびアルミニウム・ケイ素混合酸化物の全質量に対するアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に施与された白金の濃度の2倍〜6倍である。
【0015】
本発明による酸化触媒の被毒抵抗性に対しては、アルミニウム・ケイ素混合酸化物中の二酸化ケイ素SiO2の含有率も影響を与える。有利にはアルミニウム・ケイ素混合酸化物の全質量に対して5〜40質量%のSiO2を含有し、かつ60m2/g(BET)より大の比表面積を有する高表面積のアルミニウム・ケイ素混合酸化物を使用する。アルミニウム・ケイ素混合酸化物の全質量に対して5〜25質量%のSiO2を含有するアルミニウム・ケイ素混合酸化物は有利である。NO形成特性に特に注意が向けられている触媒の実施態様では、アルミニウム・ケイ素混合酸化物の全質量に対して5〜10質量%のSiO2と、150〜220m2/gの比表面積を有するアルミニウム・ケイ素混合酸化物がとりわけ有利に使用される。
【0016】
本発明による触媒中で、課題を満足する特性を達成するためには、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物以外に付加的な酸化物担体材料は必要とされない。特に本発明による触媒中で付加的な塩基性酸化物は望ましくない。というのも、塩基性酸化物は、硫黄に対する被毒抵抗性を明らかに低下させるからである。酸化触媒の有利な実施態様は、希土類酸化物を含有しておらず、特に酸化セリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジムおよび酸化ネオジムを含有していない。さらに、触媒の有利な実施態様は、4オングストローム(Å)より大きい下限流路幅を有するゼオライト化合物およびゼオライト類似の材料を含有していない。というのも、このような材料は炭化水素を貯蔵し、ひいては特に200℃を下回る温度でこの中に貯蔵された炭化水素とNOもしくはNO2とのレドックス反応によりNO2の形成速度を低下しうるために望ましくないからである。
【0017】
本発明による酸化触媒の白金含有率は、触媒担体の体積に対して、有利には0.07〜7グラム/リットル[g/L]である。白金含有率は、触媒担体の体積に対して、有利には0.15〜1.5g/L、特に有利には0.17〜0.7g/Lである。他の貴金属、特にパラジウムおよびロジウムは、場合により触媒のNO酸化特性および/または被毒抵抗性に否定的な影響を及ぼしうる。イリジウム、ルテニウムおよび金は、触媒の性能特性に不利な影響を及ぼしうる。さらに、白金および/またはロジウムを追加で使用することにより、望ましくないコストの増加を生じうる。従って本発明による触媒は、その有利な実施態様では、白金以外に、別の貴金属、特にパラジウムおよびロジウムを含有していない。本発明による触媒は有利にはイリジウム、ルテニウムおよび金からなる群から選択される貴金属も含有していない。
【0018】
白金は通常の、従来技術に記載されている方法により、含浸、吸着、沈殿、および文献公知の「初期湿潤(incipient wetness)」法により触媒に導入することができる。有利には白金は適切な水溶性前駆体化合物の形で、酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム・ケイ素混合酸化物を含有する被覆懸濁液に導入し、かつ規定の方法で吸着および/または沈殿によって担体酸化物上に固定される。このようにして準備した、白金が本発明による量比で酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に予め固定されて存在する被覆懸濁液を粉砕し、従来の浸漬法、吸収法およびポンプ法でセラミック製もしくは金属製のハニカム成形体上に、または有利な場合には金属製もしくはセラミック製のフィルター上に施与する。こうして得られた被覆支持体を、本発明による触媒の完成のためにか焼し、かつ場合によりフォーミングガスを含有する雰囲気中で熱により還元する。
【0019】
生じる触媒は、ディーゼル排ガスの処理のために適切であり、その際、排ガスの処理は、排ガスを本発明による酸化触媒に導通することにより行う。特に本発明による触媒は、輸送用車両、たとえば市街バス、ゴミ収集車および建設機械および作業機械に関してよくあるように、酸化触媒の入口における排ガスの温度が常に500℃を下回る場合に、ディーゼル排ガスを処理するために適切である。
【0020】
このために、本発明による触媒は、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置において、粒子フィルターの上流に配置されており、その際、粒子フィルターは有利には、金属製およびセラミック製の貫流式フィルター支持体、燒結金属フィルター、セラミック製および金属製のニット構造体および織布構造体の群から選択される。
【0021】
あるいは本発明による触媒は、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置において、SCR触媒の上流に配置されていてもよい。このSCR触媒によって、必要であれば、窒素酸化物の窒素への還元(排ガスの「脱窒」)を、外部の供給源から排ガスに供給される還元剤を用いて、選択的に触媒作用によって還元することができる(選択的接触還元SCR)。還元剤として、有利にはアンモニアまたはアンモニアを放出する化合物、たとえば尿素またはカルバミン酸アンモニウムを使用する。場合により前駆体化合物から現場で生じるアンモニアは、SCR触媒により排ガスからの窒素酸化物と均等化反応(Komproprtionierungsreaction)において反応して窒素と水とを生じる。SCR触媒による脱窒速度は、輸送用車両の適用において車体底部で予測されるように、排ガス温度が250℃を下回る場合には、SCR触媒の上流に配置された酸化触媒により0.3〜0.7、有利には0.4〜0.6のNO2/NOx比が調整される場合には常に特に良好である。この出願に記載した範囲での白金含有率、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物における白金の分布、および酸化アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比によって、本発明による酸化触媒はこの適用のためにも優れて好適なものとなる。
【0022】
本発明を以下ではいくつかの実施例および以下の図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】SO2含有排ガス中での人工的な老化後の、本発明による触媒K1と、従来技術による触媒VK1とを用いたNOからNO2への変換を示す。
【図2】SO2含有排ガス(K1)中での人工的な老化後の、本発明による触媒の製造したての新鮮な状態(K1″)でのNOからNO2への変換を示す。
【図3】熱水雰囲気中での人工的な老化後の、本発明による触媒K1′と、従来技術による触媒VK1′とを用いたNOからNO2への変換を示す。
【図4】アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物を1:2の量比で含有する本発明による触媒K2と、アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物を2.5:1の量比で含有する比較触媒VK2とを、それぞれSO2含有排ガス中での人工的な老化後に用いたNOからNO2への変換を示す。
【0024】
例1:
酸化アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比が1:2の本発明による触媒を製造した。このためにまず、酸化アルミニウムを水中に懸濁させた。次いで触媒に導入すべき白金量の半分を、従来の水溶性白金前駆体化合物の注入により懸濁液に添加した。アルミニウム・ケイ素混合物(比表面積:〜212m2/g(BET);SiO2 10質量%)を懸濁液に添加した後に、白金の残量を注入した。
【0025】
被覆懸濁液を従来技術による浸漬法によって、1cm2あたり62個のセルを有し、壁厚が0.17mmのコーディエライト・ハニカム成形体上に施与した。被覆したハニカム成形体を乾燥させ、350℃で4時間か焼した。
【0026】
こうして製造した完成触媒は、ハニカム成形体の体積に対して白金を0.883g/L含有していた。この触媒から、触媒活性と老化抵抗性の試験のために、直径25.4mmおよび長さ76.2mmを有する円筒形のコアを3個切り出し、これらを以下ではK1、K1′およびK1″とする。
【0027】
比較例1:
比較試験のために、同じ白金含有率(ハニカム成形体の体積に対して、白金0.883g/L)を有する市販のディーゼル酸化触媒を使用したが、これは白金の全量が、5質量%のSiO2割合を有するアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に担持されて存在しており、かつさらにはゼオライト化合物を含有するものである。この市販のディーゼル酸化触媒もまた、1cm2あたり62個のセルを有し、壁厚が0.17mmの、被覆したコーディエライト・ハニカム成形体として存在していた。
【0028】
この比較触媒から、触媒活性および老化抵抗性の比較試験のために、直径25.4mmおよび長さ76.2mmを有する円筒形のコアを2個切り出し、これらを以下ではVK1およびVK1′とする。
【0029】
例2:
第二の本発明による触媒を製造したが、これは、ハニカム成形体の体積に対して、白金を0.706g/Lのみ含有することが異なっていた。
【0030】
この触媒から、直径25.4mmおよび長さ76.2mmを有する円筒形のコアを1個切り出し、これらを以下ではK2とする。
【0031】
比較触媒2:
例1および2に記載の方法に相応して、別の比較触媒を製造した。これは、白金を0.706g/L含有しており、かつ本発明による2.5:1の酸化アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比を有していなかった。
【0032】
この比較触媒からも、直径25.4mmおよび長さ76.2mmを有する円筒形のコアを1個切り出し、これらを以下ではVK2とする。
【0033】
老化:
切り出したコアのNO酸化特性を試験する前に、製造したばかりの新鮮な状態で測定したコアK1″を例外として、それ以外は特定の条件下で熱により前処理し、こうして人工的な条件下での適切な老化に供した。
【0034】
切り出したコアのK1、VK1、K2およびVK2は、350℃で48時間、窒素中、CO2 10体積%、O2 10体積%、H2O 10体積%、SO2 85Vppm、およびNO 270Vppmからなる雰囲気中(貫流:15000h-1)で処理した。これにより、SO2含有燃焼排ガス中での通常の活性の損失を調整した。
【0035】
切り出したコアK1′およびVK1′を、700℃で16時間、窒素中、H2O 10体積%およびO2 10体積%を含有する雰囲気中で処理した。これにより、熱水排ガス中での長期間の使用における触媒の活性の損失を調整した。
【0036】
異なった老化状態でのNO酸化性能の試験:
全てのコアを実験室用モデルガス装置中で、NO酸化反応におけるその触媒活性に関して試験し、その際、以下の試験条件を調整した:
【表1】

【0037】
図1は、SO2排ガス中での人工的な老化による例1からの本発明による触媒K1および比較例1からの従来技術による比較触媒VK1のNOからNO2への変換率を示している。200〜400℃で、本発明による触媒は、従来技術による触媒よりも明らかにより良好なNO酸化速度を示している。
【0038】
図2は、製造したばかりの新鮮な状態(K1″)と、SO2含有排ガス中での人工的な老化後(K1)の例1からの本発明による触媒のNO変換速度の比較を示している。ここから、SO2含有排ガスによる負荷は、本発明による触媒のNO酸化活性に対して実質的に不利な作用を及ぼさないことが明らかである。
【0039】
例1からの本発明による触媒の長期間安定性を試験するために、K1′のNO酸化活性と、比較例1からの従来技術による比較触媒VK1′とを、熱水条件下での人工的な老化後に試験した。図3は、その結果を示している。200〜400℃の温度範囲でのNO酸化活性の長期間安定性の改善も示していることが明らかである。
【0040】
図4は、NO酸化性能とSO2被毒抵抗性との間の目的の対立を効果的に解決することに対して、担体酸化物の量比の影響がどの程度であるかを示している。1:2の酸化アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比を有する例2からの本発明による触媒K2のSO2含有排ガス中での人工的な老化後の酸化活性と、2.5:1の酸化アルミニウム:アルミニウム・ケイ素混合酸化物の量比を有する比較例2からの比較触媒VK2を対比した。酸化アルミニウムの過剰は、酸化アルミニウム過剰を有する比較触媒の負荷後にNO酸化性能を劇的に損なう一方で、本発明による触媒は、そのNO酸化性能に関してほぼ損なうことなく、SO2含有雰囲気下での負荷に耐えることができたことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒において、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物が白金により触媒活性となっており、その際、触媒中に存在する白金量の55〜95質量%は活性酸化アルミニウム上に存在しており、かつ白金の残量はアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に担持されており、その際、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物は、互いに1:1.5〜1:4の量比で存在していることを特徴とする、担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒。
【請求項2】
アルミニウム・ケイ素混合酸化物が、アルミニウム・ケイ素混合酸化物の全質量に対して5〜40質量%のSiO2を含有していることを特徴とする、請求項1記載の酸化触媒。
【請求項3】
アルミニウム・ケイ素混合酸化物が、60m2/gより大きい比表面積(BET)を有していることを特徴とする、請求項2記載の酸化触媒。
【請求項4】
触媒の白金含有率が、触媒担体の体積に対して1リットルあたり0.07〜7グラムであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項5】
触媒が、白金以外の別の貴金属を含有していない、特にパラジウムおよびロジウムを含有していないことを特徴とする、請求項4記載の酸化触媒。
【請求項6】
触媒が、イリジウム、ルテニウムおよび金からなる群から選択される貴金属を含有していないことを特徴とする、請求項4記載の酸化触媒。
【請求項7】
触媒が、希土類酸化物を含有していない、特に酸化セリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジムおよび酸化ネオジムを含有していないことを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項8】
触媒が、4オングストロームより大きい流路幅下限を有するゼオライト化合物およびゼオライト類似の材料を含有していないことを特徴とする、請求項4から7までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項9】
担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒が粒子フィルターの上流に配置されている、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置において、酸化触媒中で酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物が白金により触媒活性になっており、その際、触媒中に存在する白金量の55〜95質量%は活性酸化アルミニウム上に存在しており、かつ白金の残量はアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に担持されており、その際、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物は、互いに1:1.5〜1:4の量比で存在していることを特徴とする、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置。
【請求項10】
粒子フィルターが、金属製およびセラミック製の流通式フィルター支持体、焼結金属フィルター、セラミックまたは金属製の発泡構造体、ならびにセラミック製および金属製のニット状構造体および織布状構造体の群から選択されていることを特徴とする、請求項9記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
担体と、白金、活性酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物からなる触媒活性被覆とを有する酸化触媒がSCR触媒の上流に配置されている、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置において、酸化触媒中で酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物が白金により触媒活性になっており、その際、触媒中に存在する白金量の55〜95質量%は活性酸化アルミニウム上に存在しており、かつ白金の残量はアルミニウム・ケイ素混合酸化物上に担持されており、その際、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ケイ素混合酸化物は、互いに1:1.5〜1:4の量比で存在していることを特徴とする、ディーゼルエンジンを有する車両のための排ガス浄化装置。
【請求項12】
排ガスを請求項1から8までのいずれか1項記載の酸化触媒に導通することを特徴とする、ディーゼル排ガスの処理法。
【請求項13】
酸化触媒の入口における排ガスの温度が常に500℃を下回っていることを特徴とする、請求項12記載のディーゼル排ガスの処理法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−524252(P2011−524252A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513913(P2011−513913)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004117
【国際公開番号】WO2009/152971
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】