デキサメタゾン誘導体及び類似体並びにオリムス薬を含むコーティング
本発明は、基材表面上のコーティング、及びコーティングされた基材を包含する。コーティングは、ポリマー、オリムス薬(シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス等)及びデキサメタゾン誘導体を含む。ポリマーは、疎水性ポリマー、好ましくはフッ素ポリマー、より好ましくは少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを有するフッ素ポリマーであってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型医療デバイス(IMD)の分野、より特定すると、コーティングを有し、患者の体内の標的部位にてそのコーティングから薬物(1種又は複数)が放出され得る埋め込み型医療デバイス、更により特定すると、オリムス薬並びにデキサメタゾン誘導体及び類似体を含むコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の考察は、単に背景的情報として本発明の理解を助けることを目的としており、この項において、本発明の先行技術であることが意図されているもの、又は本発明の先行技術と解釈すべきものは何もない。
【0003】
1980年代中頃まで、アテローム性動脈硬化、即ち冠状動脈(1つ又は複数)の狭窄に対する治療として認められていたのは冠状動脈バイパス手術であった。バイパス手術は、効果的であり、このような侵襲的手法にしては安全度が比較的高いところまで発達してきたが、依然として重大な合併症を伴う可能性があり、最良の場合でも長期の回復期間を伴う。
【0004】
1977年の経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)の出現で状況は劇的に変化した。元々心臓検査用に開発されたカテーテル技術を用い、動脈中の閉塞領域を再開通させるためにインフレータブルバルーンが使用された。この手技は比較的非侵襲的であり、バイパス手術に比べて非常に短時間ですみ、回復時間は最低限であった。しかしながら、PTCAは、達成したことの多くを元に戻してしまう可能性のある、伸張した動脈壁の弾性反跳という別の問題をもたらし、加えてPCTAは、治療した動脈が再び詰まる再狭窄という別の問題を十分に改善できなかった。
【0005】
1980年代中頃に進歩した次なる改善は、PTCAの後にステントを用いて血管壁を支えて開放させることであった。これにより弾性反跳はほとんど決着したが、再狭窄の問題が完全に解決されることはなかった。即ち、ステントの導入前には、PTCAを受けた患者の30〜50%で再狭窄が起こっていた。ステントによりこれが約15〜30%に減少し大きく改善したが、更にこれ以上の改善が望ましかった。
【0006】
2003年には、薬物溶出ステント(即ちDES)が導入された。DESと共に最初に使用された薬物は、再狭窄に寄与していた細胞増殖を抑える化合物である細胞増殖抑制化合物であった。その結果、再狭窄は約5〜7%という比較的満足できる数字にまで減少した。今日、DESはアテローム性動脈硬化治療の業界デフォルトスタンダードであり、浅大腿動脈の末梢血管形成術等の、冠状動脈以外の血管の狭窄の治療に関して、急速に支持を得ている。
【0007】
DESにおける1つの改善は多剤DESである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材用コーティング、特にコーティングされた埋め込み型医療デバイス、及びそのデバイスを用いる治療方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様においては、本発明は、外表面を有するデバイス本体とコーティングとを含む医療デバイスに関する。コーティングは、表面上に配置された1つ又は複数のコーティング層、疎水性ポリマー、オリムス薬、及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む。コーティング中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、実質的に非晶質である。
【0010】
したがって、別の態様においては、本発明は、これまでに記載したコーティングされたデバイスを、それを必要とする患者に埋め込むことにより患者の病態を治療する方法に関する。
【0011】
本発明のある態様においては、オリムス薬の用量は約10〜約600μg/cm2であり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量は10〜約600μg/cm2である。
【0012】
本発明のある態様においては、1つのコーティング層は、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む。
【0013】
本発明のある態様においては、オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量比は約1:1〜約1:4である。
【0014】
本発明のある態様においては、デバイスは埋め込み型医療デバイスである。
【0015】
本発明のある態様においては、埋め込み型医療デバイスはステントである。
【0016】
本発明のある態様においては、デバイスはカテーテルバルーンである。
【0017】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーはフッ素ポリマーである。
【0018】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーは少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むフッ素ポリマーである。
【0019】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーはPVDF−HFPである。
【0020】
本発明のある態様においては、オリムス薬は、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス、AP23572、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0021】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せである。
【化1】
式中、R1は、
【化2】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、(C1〜C16)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、フェニル、エステル、カーボネート、エーテル及びケトンからなる群より選択される。シクロアルキル又は芳香環上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、アルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよく、R2上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、塩素、フッ素又はそれらの組合せで置換されていてもよい。R2中の炭素原子の総個数は16以下である。
【0022】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せである。
【化3】
式中、R1は、
【化4】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートからなる群より選択される。
【0023】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンパルミテート、デキサメタゾンジエチルアミノアセテート、デキサメタゾンイソニコチネート、デキサメタゾンtert−ブチルアセテート、デキサメタゾンテトラヒドロフタレート及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0024】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体はデキサメタゾンアセテートである。
【0025】
本発明のある態様においては、オリムス薬の累積薬物放出量は、24時間の時点でオリムス薬総含量の50%以下である。
【0026】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の累積薬物放出量は、24時間の時点でデキサメタゾン誘導体若しくは類似体薬物総含量の50%以下である。
【0027】
本発明のある態様においては、コーティングは、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートを含む。
【0028】
別の態様においては、コーティングは、エベロリムス及び/又はゾタロリムス並びにデキサメタゾンアセテートを含む。デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量は、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下であり、ゾタロリムス及び/又はエベロリムスの累積薬物放出量は、24時間の時点でゾタロリムス及び/又はエベロリムス総含量の50%以下である。
【0029】
本発明のある態様においては、治療される病態は、再狭窄、アテローム性動脈硬化、血栓症、出血、血管の解離若しくは穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、(静脈及び人工グラフトに対する)吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞又はそれらの組合せより選択される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】図1Aは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図1B】図1Bは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2A】図2Aは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2B】図2Bは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2C】図2Cは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2D】図2Dは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図3A】図3Aは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3B】図3Bは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3C】図3Cは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3D】図3Dは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図4】図4は、コーティングされたステントの表面のSEMを表したものである。
【図5A】図5Aは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図5B】図5Bは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図6A】図6Aは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図6B】図6Bは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図7】図7は、コーティングが本発明の実施形態であるコーティングされたステントからの、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体の累積放出プロファイルを表したものである。
【図8】図8は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての狭窄率を表したものである。
【図9】図9は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての炎症を表したものである。
【図10】図10は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての肉芽腫率を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、基材の表面上に配置されたコーティング、コーティングされた基材、及びコーティングされた医療デバイスを利用する治療方法を包含する。コーティングは、ポリマー、オリムス薬、並びに、デキサメタゾン誘導体及び類似体より選択される薬物を含む。ポリマーは、疎水性ポリマー、好ましくはフッ素ポリマー、より好ましくはフッ化ビニリデンを少なくとも25重量%有するフッ素ポリマーであってもよい。
【0032】
上記で概説したように、DESは、再狭窄を減少させる助けとなるように導入された。血管の再狭窄に至る細胞機構は数多く提案されてきている。これらの機構のうちの2つが、(1)平滑筋細胞の、損傷部位への遊走及び損傷部位での増殖、並びに(2)損傷及び異物の存在に対する急性及び慢性炎症反応である。
【0033】
動脈へのステント挿入は、血管損傷に至る場合がある。これは、一つには、内皮露出及び血管損傷を生じ得るステントの埋め込みに誘発される機械的損傷が原因である。内皮露出は、炎症反応を刺激し得る、血管壁における病巣の形成に直接関与している。血管を裏打ちしている内皮細胞が炎症を起こすと、好中球、単球及びその他の白血球を損傷部位に引き寄せる、ケモカインと呼ばれる物質が生成される。内皮細胞が膨張すると、内皮細胞間の密着結合が破壊され、好中球及び単球が周囲組織へ遊出できるようになる。それに続いて好中球及び単球が組織内へ動員されるのは、治癒過程の通常の一部分である。しかしながら、炎症が慢性化すると、好中球、マクロファージ及びリンパ球の滞留が長引くため、実際、治癒が阻害され、元々の損傷からの組織障害が悪化する恐れがある。組織修復が起きても調節不全が起こり得、長引く炎症と合わさると、このことが過剰な新生内膜形成及び瘢痕につながる可能性がある。
【0034】
不安定プラーク(VP)は、慢性動脈硬化性疾患と血管壁での脂質及び泡沫細胞の蓄積とが合わさって引き起こされると考えられる、動脈内の脂肪の蓄積を指す。VPは、破裂して血栓形成に至る恐れのある薄い線維性被膜で覆われている。VPの部位は、他のタイプの動脈硬化病巣よりもマクロファージ及びリンパ球の密度が高いため、これらの部位にステント挿入すると、平滑筋細胞増殖を促進するサイトカイン(IL−1、TNF−α)が大量に生成されると予測されている。先の動物(ブタ)試験では、炎症によりバルーン血管形成及びステント留置の部位にて増殖が促進されることが実証されている(Kornowskiら、Coron Artery Dis.12(6):513〜5ページ(2001))。
【0035】
細胞増殖を減少させるために、いくつかのDESは細胞毒性化合物を含んでいる。細胞毒性化合物であるパクリタキセルは、内皮の遊走を強力に抑制することが予想され、結果として起こる可能性がある再内皮化は治癒反応の遅れになる(米国特許出願公開第2008/0004694号、図面を含み完全に記載されているかのように、参照により本明細書に援用される)。対照的に、デキサメタゾンは、内皮の遊走に対してプラスの効果があり、血管腔に投与すると血管の治癒を促進し得ることがわかっている。パクリタキセル及びゾタロリムスは内皮細胞増殖を抑制するが、デキサメタゾンは抑制しない。更には、パクリタキセルはin vitroにおけるヒト冠状動脈内皮細胞の遊走を抑制するが、ゾタロリムスやデキサメタゾンは抑制しない。パクリタキセルと比べると、デキサメタゾンとゾタロリムスの組合せは、血管領域の再内皮化に対する抑制が少ないと予想される。
【0036】
ゾタロリムス等のオリムス薬に抗炎症薬を加えると、オリムス薬のみを担持したステントが埋め込まれる場合よりも、ステントの埋め込みに対する炎症反応がより一層抑えられる。炎症が、通常の治癒に求められるものを超えており、且つ慢性である場合、抗炎症薬を加えることは治癒の助けとなり得る。炎症反応自体は新生内膜増殖を悪化させる。活性化された血小板、マクロファージ及び好中球は全て増殖促進サイトカインを分泌する。オリムス薬と抗炎症薬の両方による二重薬物システムは、複数の新生内膜増殖の経路を阻害するため、オリムス薬単独よりもより大きな抗再狭窄効果を有し得る。この特性を利用して、高レベルの有効性を維持しながらオリムス薬の用量や薬物放出の期間を減らすことにより、治癒を促進することが可能である。
【0037】
したがって、1つのDESの中でデキサメタゾンとゾタロリムスを組み合わせると有利であり、1つのコーティング層の中でこの2つを組み合わせるとより一層有利である。
【0038】
多剤DESには課題もある。エベロリムスを含むDESは米国において使用が認可されているが、デキサメタゾンをこのコーティングに加えると、ポリマーコーティング内でデキサメタゾンの大量の結晶化が起こる。デキサメタゾンは、薬物の中のグルココルチコイド又はステロイドファミリーに属する。このファミリーは、全体的に結晶化傾向が強い。この傾向は、分子に内部自由度をほとんど与えず、分子が非常に効率的に積み重なることを可能にする、平面且つ強固な4員環構造により強まっている。このクラスの化合物にしては融点が高いが、それは形成された結晶が熱力学的に安定であることを示すものである。コーティング内での薬物の結晶化は、放出速度に影響を与える場合がある。表面上の結晶もまた塞栓症の危険をもたらす可能性があると考えられている。更には、表面上の結晶は美感上の問題をもたらす。デキサメタゾンの一部のみが結晶化し得るため、結晶化度の経時的な変化によって安定性の問題が発生し得る。デキサメタゾンを含有するDESは、いくつかの親水性基を有するポリマーを利用して製造することができる。しかしながら、コーティングにそのようなポリマーを用いると、デキサメタゾンの速放性放出につながる。
【0039】
より脂溶性であるデキサメタゾンの誘導体若しくは類似体とエベロリムス(又はゾタロリムス)との組合せを、疎水性ポリマーを含むコーティング層において適切な薬物の質量パーセントで用いると、デキサメタゾンとエベロリムスの組合せよりも結晶化のレベルが低くなることがわかっている。より脂溶性であるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体によって、薬物の結晶化の原動力が疎水性ポリマー内で低下する。これは、脂溶性のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体のポリマー内における安定性が増すためである。この改善された適合性は、エチレンオキシドでデバイスを滅菌した後でも維持される。加えて、疎水性ポリマーは、オリムス薬、及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の両方の制御放出をもたらす。
【0040】
本発明の目的のため、コーティングは、ステントを例とする多くの基材に塗布することができる。コーティング又はコーティングされた基材に言及する場合、「あるオリムス薬」、「あるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体」及び「あるポリマー」について説明することがあるが、本発明の実施形態は、1種又は複数のオリムス薬、1種又は複数のデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループ、並びに1種又は複数のポリマーを包含する。いくつかの実施形態においては、臨床的有効性は、薬物を組み合わせて使用することにより得られるが、その組合せの個々の薬物のそれぞれの投与量を単独で用いると臨床的に有効ではない。
【0041】
定義
特に明記しない限り、本明細書で用いる、限定するものではないが、「約」、「本質的に」、「実質的に」等の近似を表すあらゆる単語は、そのように修飾されている要素が、記載された通りのものである必要はないが、本発明の範囲を超えることなく記載から±15%程度は異なっていてもよいということを意味する。
【0042】
本明細書で用いる「薬物」は、疾患又は病態を患う患者に治療上有効な量で投与した際に患者の健康及び幸福に治療上有益な効果を有するいずれかの物質を指す。個人の健康及び幸福への治療上有益な効果としては、限定するものではないが、(1)疾患又は状態を治癒すること、(2)疾患又は状態の進行を遅らせること、(3)疾患又は状態の退行を起こすこと、又は、(4)疾患又は状態の1つ又は複数の症状を緩和することが挙げられる。
【0043】
本明細書で用いる薬物は、ある疾患に特にかかりやすいことが知られているか又は疑われている患者に予防上有効な量で投与した際に、患者の健康及び幸福に予防上有益な効果を有するいずれかの物質も含む。患者の健康及び幸福への予防上有益な効果としては、限定するものではないが、(1)まず初めの段階で疾患若しくは状態の発症を防止若しくは遅延させること、(2)予防上有効な量で用いられる物質と同じであっても異なっていてもよい、治療上有効な量の物質によって退行レベルを一旦達成した後に、疾患又は状態をかかるレベルに維持すること、又は(3)予防上有効な量で用いられる物質と同じであっても異なっていてもよい、治療上有効な量の物質による治療過程の終了後に疾患又は状態の再発を防止若しくは遅延させることが挙げられる。
【0044】
本明細書で用いる「薬物」は、限定するものではないが、塩、エステル、アミド等を含む、医薬として許容できる、薬理学的に活性な、本明細書で具体的に言及するその薬物の誘導体も指す。
【0045】
本明細書で用いる、指し示された基材の「上に配置された」と記述されている材料は、例えば、基材の表面の少なくとも一部の上に直接的又は間接的に堆積させた材料のコーティング層を指す。直接堆積とは、コーティング層が基材の表面に直接塗布されていることを意味する。間接堆積とは、コーティング層が、基材の上に直接的又は間接的に堆積させた介在層に塗布されていることを意味する。コーティング層は、基材の表面上に直接的に堆積しているか間接的に堆積しているかに関わらず、基材の表面によって支持されている。用語「層」及び「コーティング層」は、本明細書中交換可能に用いられる。本明細書で用いる用語「コーティング」は、基材上に堆積させた1つ又は複数の層を指す。
【0046】
本明細書で用いる「無視できるレベルの結晶」及び「無視できる結晶化」は、目に見える結晶の数が1cm2当たり100以下であるか、或いは、X線結晶学、示差走査熱量測定、固体NMR又はIR分析で求めた結晶化した薬物の割合が、適切であれば、約10%以下であることを意味する。直交偏光子を用いる反射顕微鏡観察によりデバイスを検査することが、薬物の結晶を視覚化する効果的な方法である。この方法により、結晶が鮮明に輝き、手動での計数又は画像解析による定量化が行いやすくなる。
【0047】
デキサメタゾン誘導体及び類似体
本発明の実施形態は、デキサメタゾンよりも脂溶性であるデキサメタゾン誘導体及び類似体、並びにこれらのデキサメタゾン誘導体及び類似体いずれかの組合せを包含する。
【0048】
デキサメタゾンは、以下の式の化合物である。
【化5】
デキサメタゾンの分子量は392.45であり、融点は約262〜264℃である。
【0049】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、以下の式の化合物を包含する。
【化6】
(式中、R1は、
【化7】
のうちの1つであり、式中、R2は以下に概説する通り疎水性部分であってもよい。)
【0050】
本明細書で用いる「アルキル」は、直鎖、分岐鎖の完全飽和(二重結合や三重結合がない)炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。本明細書で用いる「アルキル」は「アルキレン」基を含み、「アルキレン」基は、他の基と結合するために1つではなく2つの開放原子価を有する、直鎖又は分岐鎖の完全飽和炭化水素基を指す。アルキレン基の例としては、限定するものではないが、メチレン、−CH2−、エチレン、−CH2CH2−、プロピレン、−CH2CH2CH2−、n−ブチレン、−CH2CH2CH2CH2−、sec−ブチレン、−CH2CH2CH(CH3)−等が挙げられる。
【0051】
本明細書で用いる「Cm〜Cn」(m及びnは整数)は、示された基中に存在し得る炭素原子の数を指す。即ち、基は、「m」から「n」まで(mとnも含む)の炭素原子を含み得る。例えば、限定するものではないが、本発明のアルキル基は3〜8個の炭素原子からなっていてもよいが、その場合は、(C3〜C8)アルキル基、と表される。これらの数は、その始めと終わりの数も含んでおり、示された数の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖構造体が組み込まれている。例えば、限定するものではないが、「C1〜C4アルキル」基は、1〜4個の炭素を有する全てのアルキル基、即ち、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、CH3CH(CH3)−、CH3CH2CH2CH2−、CH3CH2CH(CH3)−及び(CH3)3CH−を指す。
【0052】
本明細書で用いるシクロアルキル基は、アルキル鎖の末端炭素原子が互いに共有結合しているアルキル基を指す。数、「m」及び「n」は、形成された環中の炭素原子の数を指す。したがって、例えば、(C3〜C8)シクロアルキル基は、3、4、5、6、7、又は8員環、即ち、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びシクロオクタンを指す。
【0053】
本明細書で用いる「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を含む炭化水素基を指す。
【0054】
本明細書で用いる「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合を含む炭化水素基を指す。
【0055】
本明細書で用いる「芳香族」は、
【化8】
で表される、ベンゼン環を含む炭化水素化合物を指す。
【0056】
本出願を通じて、当業者に周知の標準的な略語が用いられている。したがって、意図されている構造は、いずれかの特定の原子が必要とする原子価に基づき、必要な全ての水素原子が提供されているという理解の下、当業者であれば容易に認識することができる。例えば、−COR又は−C(O)Rは、炭素は四価であるため、
【化9】
の構造を指していなければならないが、これが、その構造中に示されていない水素又は他の原子を加えることなく炭素が四価となり得る唯一の方法だからである。
【0057】
同様に、
【化10】
で例示されるいわゆる枝状構造(stick structure)は、
【化11】
の構造を示すこと、即ち、各末端はCH3基でキャッピングされ、且つそれぞれの角の先端は必要な数の水素原子が結合した炭素原子であることは、化学分野の当業者であれば理解できる。
【0058】
上記R1置換基のR2部分は、水素、炭素及び酸素を含むいずれかの部分であってもよいが、酸素が存在する場合は、エステル
【化12】
エーテル(−R5−O−R6)、
カーボネート
【化13】
及び/又はケトン
【化14】
の一部であり、ここで、R5及びR6置換基はそれぞれ、エステル、カーボネート及びケトン基に結合している少なくとも1個の炭素原子を含む(即ちR5及びR6はHや−OHではない)。R2部分中の炭素原子の総個数は16以下である。
【0059】
R2部分は、C1〜C16アルキル等の飽和炭化水素、又は不飽和炭化水素、即ちC2〜C16アルケニル、C2〜C16アルキニル、若しくは二重及び三重炭素−炭素結合の両方を含む部分、等の、1〜16個の炭素を含んだ炭化水素であってもよい。R2部分は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。R2部分は、C3〜C10シクロアルキル等の脂環式基、芳香族基、並びに/或いは1つ若しくは複数の二重及び/又は1つ若しくは複数の三重炭素−炭素結合を含むその他の炭化水素環構造体を含んでいてもよい。必要に応じて、1つ又は複数の置換基が環に結合していてもよい。
【0060】
R2部分が環を含む場合、環は、直接又は置換基を介して、
【化15】
に結合していてもよい。
【0061】
R2部分についての上記記述は、R5及びR6部分、並びに環上のいずれかの任意の置換基にも適用できるが、ただし、R2部分中の炭素原子の総個数が16以下であるように、それぞれの中の炭素原子の数は限定される。したがって、R2部分中には複数のエステル、カーボネート及び/又はケトン基が存在していてもよく、またこれらのうちのいずれかの1つ又は複数が置換基上に存在していてもよい。言い換えれば、R5及びR6部分もまた、エステル、カーボネート及び/又はケトンより独立して選択される1つ又は複数の基を含んでいてもよいが、ただし、エステル、カーボネート及び/又はケトン基のそれぞれの各側には炭素原子が結合している。環上の置換基が別の環を形成してもよい。
【0062】
R2部分はまた、ベンジル、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン又はメタスルホベンゾエートであってもよい。
【0063】
考えられるR2部分のいずれにおいても、水素原子の1個又は複数は、限定するものではないが、フッ素及び/又は塩素等のハロゲン原子で置き換えられていてもよい。
【0064】
R2基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる。
【化16】
上記の例において、m及びnは整数を表す。
【0065】
好ましいR2部分のリストには、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートが含まれる。
【0066】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、溶解パラメーターが10(cal/cm3)1/2以下であるデキサメタゾンの誘導体若しくは類似体も包含する。
【0067】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、限定するものではないが、以下の特定の化合物も包含する。
【化17】
デキサメタゾンアセテート
【化18】
デキサメタゾンパルミテート(リメタゾン)
【化19】
デキサメタゾンジエチルアミノアセテート(SOLU−FORTE−CORTIN(登録商標))
【化20】
デキサメタゾンイソニコチネート
【化21】
デキサメタゾンテトラヒドロフタレート
【化22】
デキサメタゾンtert−ブチルアセテート
【0068】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量は、10〜600μg/cm2、好ましくは20〜400μg/cm2、より好ましくは30〜200μg/cmの範囲であってもよい。
【0069】
オリムス薬
本発明の実施形態は、1種又は複数のオリムス薬を含む。
【0070】
本明細書で用いる用語「オリムス薬」は、ラパマイシン(シロリムス)及びその機能的又は構造的誘導体を指す。これらの誘導体としては、限定するものではないが、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン(ラパマイシンの構造的誘導体)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン(ラパマイシンの構造的誘導体)、40−O−テトラゾリルラパマイシン及び40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシンが挙げられる。オリムス薬に含まれるものとしてはまた、ラパマイシンの42炭素又は40炭素に相当する炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0071】
オリムス薬の用量は、10〜600μg/cm2、好ましくは20〜400μg/cm2、より好ましくは30〜200μg/cm2の範囲であってもよい。
【0072】
疎水性ポリマー
本発明の実施形態は、1種又は複数の疎水性ポリマーを包含する。「疎水性ポリマー」であることを特徴としないポリマーも、本発明のコーティングに含まれ得る。
【0073】
本明細書で用いる「ポリマー」は、本明細書中「構成単位」と呼ぶ、より単純な単位の繰返しからなる分子であり、この構成単位はモノマーの反応に由来するものである。非限定的な例であるCH2=CH2、即ちエチレンは、重合してCH3(CH2)nCH3等のポリエチレンを形成することができるモノマーであり、この場合の構成単位は、重合反応の結果二重結合を失ったエチレンである−CH2−CH2−である。本発明のポリマーは、いくつかの異なるモノマーの重合に由来していてもよく、したがっていくつかの異なる構成単位を含んでいてもよい。このようなポリマーは、「コポリマー」と呼ばれる。ある特定のポリマーを考えた場合、当業者であればそのポリマーの構成単位を容易に認識でき、構成単位の元になっているモノマーの構造も同様に容易に認識できる。本発明のポリマーは、特に明記しない限り、規則性交互ポリマー、ランダム交互ポリマー、規則性ブロックポリマー、ランダムブロックポリマー又は純粋ランダムポリマー(purely random polymer)であってもよい。ポリマーは、架橋してネットワークを形成してもよい。
【0074】
本明細書で用いる「疎水性ポリマー」は、ポリマーによる水分吸収が、生理的条件又はそれに近い条件、即ち約37℃、標準大気圧(約1気圧)及び約pH7.4にて測定した場合に約5重量%以下であるポリマーである。
【0075】
いくつかの実施形態においては、用いる疎水性ポリマーは、37℃及び標準大気圧での水分吸収が、2重量%以下、より厳密には1重量%以下、更により厳密には0.5重量%以下、最も厳密には0.1重量%以下であるポリマーであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態においては、疎水性ポリマーは、溶解パラメーターが約11.5(cal/cm3)1/2以下であるポリマーであってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態においては、疎水性ポリマーはフッ素ポリマーである。フッ素ポリマーは、通常は、同等の非フッ素ポリマー中に1個又は複数の水素原子が存在する位置にフッ素原子を含むポリマーである。フッ素ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(「PDVF−HFP」)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(「PTFE」、即ちTEFLON(登録商標))、フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)(「FEP」)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(「PCTFE」)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)(「PVDF−TFE」)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−プロペン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン−コ−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−フルオロメチルビニルエーテル)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(「ETFE」)、ポリ(エチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化シリコーン、ペルフルオロアルキルビニルエーテルとテトラフルオロエチレンのコポリマー(「PFA」)、二フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー(「TFB」)、ポリフッ化ビニル(「PVF」)、ポリ(テトラフルオロエチレン)とフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−エチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−エチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−トリフルオロエチレン)(「PVDF−TrFE」)並びにポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)が挙げられる。その他のフッ素ポリマーとしては、フルオロアルコキシル含有ポリマー、シリコーンとフッ素ポリマーの混合物が挙げられる。上に列挙したフッ素ポリマーのいずれの組合せも用いることができる。
【0078】
好ましいポリマーのクラスは、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデン、及びPDVF−HFPコポリマーを含むフッ素ポリマーである。より好ましいポリマーのグループは、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むPDVF−HFPポリマーである。
【0079】
コーティング構造物
本明細書で用いる「下塗り層」は、基材の製造材料に対し、また基材上にいかなる材料がコーティングされても良好な接着特性を示すポリマー又はポリマーのブレンドを含むコーティング層を指す。したがって、下塗り層は、基材と、基材が担持する材料との間の接着性中間層として機能し、そのため基材に直接塗布される。
【0080】
本明細書で用いる「薬物貯蔵層」は、1種又は複数の薬物を含む層を指す。層は、混ぜ物無しで、結合剤等の賦形剤とともに、又はポリマーマトリックスの構成成分として適用される1種又は複数の薬物を含んでいてもよい。ポリマー薬物貯蔵層は、いろいろなメカニズムにより、例えば限定するものではないが、溶出により、又はポリマーの生分解の結果として、薬物が層から周囲の環境へと放出されるように設計されている。
【0081】
本発明の実施形態は、本明細書中で「DD/OD薬物貯蔵層」と呼んでいる1つのコーティング層の中に、疎水性ポリマー、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体並びにオリムス薬を含むコーティング構造物を包含する。いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層が基材上の唯一のコーティング層であるが、好ましい実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層に加えて下塗り層が存在する。いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、所望によりそれぞれ1種又は複数のポリマーを含む別々のコーティング層中に適用してもよい。オリムス薬及び/又はデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、疎水性ポリマーを含む層が上にある1つ又は2つの非ポリマー薬物貯蔵層に適用されてもよい。上にある層は、オリムス薬及び/若しくはデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物を含む層、並びに/又はDD/OD薬物貯蔵層であってもよい。
【0082】
本発明の実施形態は、1つ又は複数の薬物貯蔵層、薬物貯蔵層(1つ又は複数)の下の(ゼロを含む)いずれかの数のコーティング層、薬物貯蔵層(1つ又は複数)の上のいずれかの数の層、薬物貯蔵層が2つ以上の場合は複数の薬物貯蔵層の間のいずれかの数のコーティング層、及び上記のいずれかの組合せ、を含む。
【0083】
オリムス薬並びに/又はデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物を含むあらゆる薬物貯蔵層を含むいずれの層も、オリムス薬及び/又はデキサメタゾン誘導体若しくは類似体以外の別の薬物を所望により含んでいてもよい。複数の薬物貯蔵層に関しては、様々なタイプのポリマー、オリムス薬、並びに/又は様々な層で用いるデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの様々な薬物が存在してもよい。
【0084】
薬物貯蔵層中のオリムス薬の質量パーセントは、薬物貯蔵層がポリマーを含む場合は約2〜約90%であってもよく、好ましくは約4〜約50質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。
【0085】
薬物貯蔵層中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量パーセントは、薬物貯蔵層がポリマーを含む場合は約1〜約90%であってもよく、好ましくは約2〜約50質量%、より好ましくは約4〜約20質量%である。
【0086】
非ポリマー薬物貯蔵層に関しては、オリムス薬、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体、及び/又はそれらの組合せのいずれかの質量パーセントが、約100%であってもよく、又は約75〜約100%、好ましくは約50〜約90質量%、より好ましくは約10〜約75質量%であってもよい。
【0087】
薬物貯蔵層中の疎水性ポリマーの質量パーセントは、約10〜約98質量%であってもよく、好ましい範囲は30〜90%、より好ましい範囲は約50〜約85%である。いくつかの実施形態においては、薬物貯蔵層は、実質的にはポリマー及び薬物(1種又は複数)しか含まない。他の実施形態においては、ポリマー及び薬物(1種又は複数)は、薬物貯蔵層の少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%である。
【0088】
本発明の実施形態は、0.2ミクロン〜50ミクロン、好ましくは0.5ミクロン〜25ミクロン、より好ましくは1ミクロン〜15ミクロンの総コーティング厚さを包含する。個々のコーティング層に関しては、厚さは0.2ミクロン〜50ミクロン、好ましくは0.5ミクロン〜25ミクロン、より好ましくは1ミクロン〜15ミクロンの範囲であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態においては、コーティングは、埋め込み型医療デバイスのデバイス本体の外表面といった、基材の表面上の全て、又は実質的に全ての上に配置されていてもよい。本発明のいくつかの実施形態においては、コーティングは、基材のほんの一部又は一部分の上に配置されていてもよい。非限定的な例としては、ステントの反管腔側又は管腔側が選択的にコーティングされていてもよい。
【0090】
改善された適合性
上記の通り、デキサメタゾンとエベロリムス(又はゾタロリムス若しくは別のオリムス薬)の両方を含む埋め込み型医療デバイスは、臨床上の利点を提供すると考えられる。実施例7にも記載の通り、家畜豚(swine)(「ブタ(pig)」)における28日間の安全性試験では、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの両方を含むステントは、同じポリマーでコーティングされた同じステントプラットフォームからなるが薬物はエベロリムスしか含まない対照DESよりも、狭窄の程度が低かった。
【0091】
本発明の実施形態は、DD/OD薬物貯蔵層等の薬物貯蔵層中における、質量基準で約1:1〜約1:6、より好ましくは約1:1.5〜約1:5、最も好ましくは約1:2.3〜約1:4の範囲の薬物対ポリマー比を包含する。本明細書で用いる薬物対ポリマー比は、1種又は複数のオリムス薬とデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループより選択される1種又は複数の薬物との合計である全薬物の、層中の全ポリマーに対する比を指す。
【0092】
上記の通り、デキサメタゾン誘導体及び類似体のサブセットを、疎水性ポリマーを有する1つのコーティング層中でエベロリムス又はゾタロリムス等のオリムス薬とともに用いると、実質的に非晶質であるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を有するコーティング層の製造が可能になる、ということがわかっている。
【0093】
本明細書で用いる「実質的に非晶質」とは、X線結晶学、示差走査熱量測定、固体NMR、又は、使用時、例えば、埋め込み型医療デバイスのための配備又は埋め込みの時に測定したIR分析によって測定した結晶化度が約10%以下であることを指す。
【0094】
オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体との質量比は、10:1〜1:10、好ましくは6:1〜1:6、より好ましくは1:2〜1:4であってもよい。オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体とのモル比は、5:1〜1:25、好ましくは2:1〜1:12、より好ましくは1:3〜1:9であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及び好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。
【0096】
エチレンオキシド滅菌の間、医療デバイスは、有機体の繁殖を抑制するアルキル化反応を通じて滅菌する、気相のエチレンオキシドにさらされる。エチレンオキシドはデバイスを透過し、次いで、エチレンオキシドは毒性が高いため、その残留レベルを確実に非常に低くするためにデバイスに通気する。したがって、エチレンオキシド滅菌は、多くの場合、プロセスの速度を上げるために高温で行われる。
【0097】
ETO滅菌の間の、高温、湿気及びエチレンオキシドガスの組合せは、薬物の再結晶に影響する場合がある。高温は、薬物の再結晶の動態を速め得るか、又はコーティングをそのガラス転移温度(Tg)超に上昇させ得る。ゴム相においては、薬物の結晶化の動態が加速し得る。湿気は、疎水性ではないいくつかのポリマーを可塑化する場合もあり、一方でエチレンオキシドは、多くの疎水性ポリマーを可塑化する場合がある。コーティング表面上の水滴は、薬物の結晶化の核としても働き得る。
【0098】
したがって、いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、エチレンオキシドによる滅菌後に、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及びより好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、約30〜約55℃の範囲の温度、及び約2〜約24時間の期間のエチレンオキシドによる滅菌後に、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及びより好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。
【0099】
放出速度
実施例6で説明する通り、本発明のコーティング層により、オリムス薬と、デキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物との両方の制御放出が可能になる。in vivoにおける薬物放出速度の測定は、37℃にてブタ血清等の生体関連培地を用いることによりin vitroで実施できる。したがって、いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体はそれぞれ、in−vitroでの累積放出(非滅菌状態のコーティングされた基材について測定)が24時間の時点で総薬物量の50%以下であり、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。好ましい実施形態においては、各薬物に関して、24時間の時点でのin−vitroでの放出は総薬物量の40%を超えず、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。
【0100】
いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体はそれぞれ、in−vivoにおける累積放出(ヒト等の動物)が24時間の時点で総薬物量の50%以下であり、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。好ましい実施形態においては、各薬物に関して、24時間の時点でのin−vivoでの放出は総薬物量の40%を超えず、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。
【0101】
いくつかの実施形態においては、2つの薬物のうち1つだけが上記の累積放出基準を満たすことができる。
【0102】
基材
本発明の種々の実施形態に含まれるコーティングは、基材にとってコーティングが有益又は望ましいものであるいずれの基材に塗布してもよい。好ましい基材は、医療デバイス、特に埋め込み型医療デバイスである。
【0103】
本明細書で用いる「埋め込み型医療デバイス」は、外科的又は内科的に患者の体内に、又は内科的介入によって自然開口部内に、全体的又は部分的に導入され、処置後もその場に留まることが意図されている、いずれかのタイプの器具を指す。埋め込みの継続期間は基本的には永久であってもよく、即ち、デバイスが生物分解するまで、又は物理的に取り除かれるまで、患者の残りの人生の間配置されたままであることが意図されていてもよい。埋め込み型医療デバイスの例としては、限定するものではないが、埋め込み型心臓ペースメーカー及び除細動器、これらのためのリード及び電極、神経、膀胱、括約筋及び横隔膜刺激装置等の埋め込み型臓器刺激装置、人工内耳、人工装具、血管グラフト、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト、人口心臓弁、卵円孔閉鎖デバイス、髄液シャント、整形外科固定具、並びに子宮内避妊器具が挙げられる。上述のデバイスは全て第1の機能を有し、なお且つ第2の機能として本発明のコーティングでコーティングされることもあるが、薬物の局所的輸送用に特別に設計され、且つそれだけを対象とした埋め込み型医療デバイスもまた本発明の範囲内である。
【0104】
好ましい埋め込み型医療デバイスはステントである。ステントは、一般的には、患者の体内で組織を適所に保つために用いるいずれかのデバイスを指す。しかしながら、特に有用なステントは、疾患又は障害により血管が狭まるか又は塞がった際に患者の体内の血管の開存性を維持するために用いるステントである。例えば、限定するものではないが、ステントは、不安定プラーク(VP)付近の血管壁を強化し、破裂に対する防御物としての働きをするために用いることができる。上記で概説したように、VPは、破裂して血栓形成へとつながる恐れのある薄い線維性被膜に覆われている。ステントは、限定するものではないが、神経、頸動脈、冠状動脈、肺、大動脈、腎、胆管、腸骨、大腿骨内、及び膝窩、並びに他の末梢血管系で用いることができる。
【0105】
埋め込み型医療デバイスに関して本明細書で用いる「デバイス本体」は、デバイスの製造材料と異なる材料の層が外表面には塗布されていない、完全に形成されている実用的な状態の埋め込み型医療デバイスを指す。「外表面」は、空間的にはどのよう方向を向いていてもよい、身体組織又は体液と接触しているいずれかの表面を意味する。「デバイス本体」の一般的な例は、BMS、即ちベアメタルステントであるが、その名が示す通り、身体組織又は体液と接触しているいずれかの表面上において、ステントの材料となっている金属と異なるいずれの材料の層にもコーティングされていない、完全に形成されている使用可能なステントである。当然のことながら、デバイス本体は、BMSだけではなく、何で製造されているかに関わらず、あらゆるコーティングされていないデバイスも指す。
【0106】
埋め込み型医療デバイスは、金属及び/又はポリマーを含む事実上全ての材料から製造することができる。生体吸収性及び/又は生体安定性ポリマー製のデバイスもまた本発明の実施形態で用いることができる。デバイスは、例えば、生体吸収性のステントであってもよい。デバイスの製造材料は、本発明に対して制限となるものではない。
【0107】
本明細書で用いる「バルーン」は、患者の血管内の特定の位置に置かれた際に、その置かれた血管の内径又は管腔径と実質的に同じである外径まで拡張又は膨張することが可能である、比較的薄く、可撓性又は弾性の材料を含む、通常は血管カテーテルに関連する、当技術分野で周知のデバイスを指す。バルーンの膨張は、当技術分野で公知又は公知になるであろういずれかの手段で達成され得る。本発明に関しては、バルーンの特定のデザインは重要ではなく、多種多様のデザインを用いてもよい。
【0108】
通常、コーティングは基材の表面に塗布してもよいが、その表面は、体液又は身体組織と接触している表面である、埋め込み型医療デバイス用のデバイス本体の外表面、又はカテーテルバルーンの外表面であってもよい。他のデバイスに関しては、外表面、又はその他の適切な表面がコーティングされていてもよい。ステントに関して、外表面としては、管腔、側壁、及び反管腔表面が挙げられる。
【0109】
作製方法
ステント(基材の例)をコーティングするための代表的な製造工程としては、ポリマー及び薬物を、所望によっては他の添加剤とともに、溶媒(液体)中に溶解又は分散させること、及び噴霧又は溶液中へのステントの浸漬等の処置により、生じたコーティング溶液をステント上に配置させることである。このようなコーティング手順は当技術分野では周知である。
【0110】
本発明のいくつかの態様においては、ステントへのコーティング溶液の塗布は、圧縮ガス(圧縮ガスの非限定的な例としては、空気、窒素、アルゴン又はその他の不活性ガスが挙げられ、或いは超臨界流体を用いてもよい)によって霧化された溶液をステント上に噴霧することにより行われる。噴霧コーティングプロセスの重要な側面としては、霧化ガスの圧力及び離れた場所への噴霧ノズルが挙げられる。コーティング層を得るためには、噴霧機及び乾燥機による複数回の工程が必要な場合もある。
【0111】
溶液をステント上に配置した後、蒸発により溶媒を除去、又は実質的に除去する。溶媒を除去する際に残るのは、コーティング溶液に溶解させた物質が含まれる固体層である。溶媒除去のプロセスは、高温を用いること、及び/又はガス若しくは超臨界流体の流れを、ステント上で、又はステントを通過させて用いることにより加速することができる。完全に全ての溶媒の除去は非常に困難であり得るため、溶媒が実質的に除去された後に残る層には少量の残留溶媒が含まれる場合がある。
【0112】
コーティング層を形成するためには、複数回の噴霧及び乾燥の操作が必要な場合がある。
【0113】
本発明の実施形態は、コーティング層、又はポリマー及び/若しくは薬物等のコーティング層に含まれる材料が、コーティングが塗布された表面と共有結合や化学結合していないコーティングを包含する(基材表面、又は既に塗布されているコーティング層)。
【0114】
障害の治療又は予防方法
本発明の実施形態は、コーティングが、本発明の実施形態のいずれか1つ、又は本発明の実施形態のいずれかの組合せであってもよい、コーティングされた医療デバイスで患者(ヒト等の動物)を治療する方法を包含する。特に、本明細書に記載のコーティングを有する埋め込み型デバイスを用いて、種々の状態又は障害を治療、予防、緩和、軽減又は診断すること、又は治癒促進効果をもたらすことができる。かかる状態又は障害の非限定的な例としては、冠状動脈疾患、頸動脈疾患、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離、血管の穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工グラフトの吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞、尿管閉塞、良性膵疾患並びに(例えば、食道、気管/気管支等における)腫瘍閉塞腫瘍が挙げられる。
【0115】
好ましい実施形態においては、治療方法は、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートを含むステントによる、血管の疾患又は状態の治療を包含し、またより好ましい実施形態においては、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートは、フッ素ポリマーも含む、ステント上の同じコーティング層に含まれている。
【0116】
他の薬物
本発明の実施形態における使用に好適であり得る他の薬物は、当然ながら治療する具体的な疾患によって異なり、限定するものではないが、抗再狭窄薬、増殖促進薬若しくは抗増殖薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン薬、細胞分裂阻害薬、抗生物質、抗酵素薬、代謝拮抗薬、血管形成薬、細胞保護薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、及び/又は心保護薬が挙げられる。
【0117】
本明細書で用いる用語「抗増殖薬」は、急性細胞性拒絶反応の増殖期を遮断するために作用する薬物を指す。抗増殖薬は、細胞毒又は合成分子等の天然のタンパク質性物質であってもよい。他の薬物としては、限定するものではないが、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類似体(Sigma−Aldrich製、1001 West Saint Paul Avenue、Milwaukee、WI53233;又はMerckより入手可能であるCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの同義語としては、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1及びアクチノマイシンC1が挙げられる)等の抗増殖性物質、タキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル、パクリタキセル誘導体等の全てのタキソイド類、ラパマイシン(シロリムス)及びその機能的又は構造的誘導体、エベロリムス(オリムス薬とともに上記で概説)の機能的又は構造的誘導体、FKBP−12介在性mTOR阻害薬、並びにピルフェニドンが挙げられる。細胞分裂阻害薬又は抗増殖薬の更なる例としては、限定するものではないが、アンジオペプチン、及び線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬が挙げられる。
【0118】
抗炎症薬の例としては、限定するものではないが、クロベタゾール、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、αアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デクスメタゾン(dexmethasone phosphate)、モメンタゾン(momentasone)、コルチゾン、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロンスレプタネート、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス及びピメクロリムス等の、ステロイド性及び非ステロイド性(NSAID)両方の抗炎症薬が挙げられる。
【0119】
或いは、抗炎症薬は、炎症促進性シグナリング分子の生物学的阻害薬であってもよい。抗炎症薬は、そのような生物学的炎症性シグナリング分子に対する抗体を含む生物活性物質であってもよい。
【0120】
抗腫瘍薬及び抗有糸分裂薬の例としては、限定するものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン及びマイトマイシンが挙げられる。
【0121】
抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬及び抗トロンビン薬の例としては、限定するものではないが、ヘパリン、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリンデキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン及びトロンビン、ANGIOMAX(登録商標)(ビバリルジン)等のトロンビン阻害剤、ニフェジピン等のカルシウムチャンネル遮断薬、コルヒチン、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的な抗体等のモノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物並びに4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)が挙げられる。
【0122】
ACE阻害薬の例としては、限定するものではないが、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、カプトプリル、ベナゼプリル、トランドラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル及びエナラプリルが挙げられる。
【0123】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬の例としては、限定するものではないが、イルベサルタン及びロサルタンが挙げられる。
【0124】
他の薬物としては、限定するものではないが、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、γ−ヒリダン、モメタゾン、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、フェノフィブラート及びフェノフィブリン酸が挙げられる。
【0125】
具体的に列挙していない他の薬物もまた使用してもよい。薬物によっては上記カテゴリーの2つ以上に属する場合がある。上に列挙した薬物の、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ(co−drug)及びそれらの組合せもまた本発明の種々の実施形態に包含される。
【実施例】
【0126】
本項において提示する実施例は、単に本発明の例示として提供するものであって、いかなる形においても、本発明の範囲を制限することを意図するものでもなければ、そのように解釈されるべきものでも全くない。以下の各実施例は、コーティング可能な表面積が0.557cm2である、3mm×12mmのVISION(登録商標)(Abbott Cardiovascular Systems Inc.)ステントのコーティング、又はコーティングされたステントを用いた実験の結果に関する。
【0127】
実施例1
全てのステントを、イソプロピルアルコール中での超音波処理と、それに続くアルゴンガスプラズマによる処理により洗浄し、表面を調製した。噴霧により、2%(w/w)ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)の下塗りコーティングを、一連の工程で、アセトン/シクロヘキサノン(70/30)(w/w)から塗布した。80℃にて30分間焼いた後、ステント上に堆積した約50μgのPBMAが生じた。2%(w/w)PVDF−HFPを有し、エベロリムス(Novartis)とデキサメタゾン(Sigma、USP)との重量比が1:2、総薬物/ポリマー比(w/w)が1:4である薬物貯蔵層配合物を、アセトン/シクロヘキサノン(70/30)(w/w)中に作製した。この溶液を一連の噴霧−乾燥の工程でステントに塗布し、ステント上に、標的重量の薬物貯蔵層コーティングを得た(コーティング層は、コーティング機による複数回の工程を必要場合もある)。噴霧操作は、噴霧ノズル、乾燥ノズル、及び、表1に概要を示した処理パラメーターを用いて、ノズルの下でステントを回転及び並進させる手段を備えた特注の噴霧コーティング機で実施した。コーティングに続いて、全てのステントを、50℃にて60分間、強制空気対流式オーブンで焼いた。コーティングを焼いた後、ステントを、3.0×12mmのVISIONカテーテル上にクリンプし、管状保護コイル中に設置し、次いでTYVEK(商標)のポーチに封入した。95〜125°Fに調節した、60〜90分のサイクルの蒸気を用いるエチレンオキシド滅菌と、それに続く滞留時間が3時間のETO注入とにより、ステントを滅菌した。ETO滅菌の後、TYVEK(商標)のポーチをホイルポーチで更に包み、アルゴン下で熱封止した。
【0128】
【表1】
【0129】
総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図1A及び1Bは、直交偏光子を用いた反射モードで、それぞれ200倍及び500倍の倍率で撮影した、滅菌した後のコーティングされたステントの光学顕微鏡写真である。図1A及び1Bからわかるように、結晶化が顕著である。
【0130】
実施例2
2つの薬物がコーティングされたステントを、実施例1に記載の通り調製した。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図2A及び2Bは、滅菌する前のコーティングされたステントの、それぞれ200倍及び500倍の拡大図である。図2C及び2Dは、滅菌した後のコーティングされたステントを、それぞれ200倍及び500倍の倍率で撮影したものである。図2A〜2Dからわかるように、デキサメタゾンの結晶化が顕著であり、エチレンオキシド滅菌後に進行している。
【0131】
実施例3
コーティング層の塗布に用いた溶媒が100%アセトンであることを除き、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は1:2であった。図3A及び3Bは、滅菌する前のコーティングされたステントを、それぞれ100倍及び200倍の倍率で撮影したものである。図3C及び3Dは、滅菌した後のコーティングされたステントの、それぞれ100倍及び200倍の拡大図である。図3A〜3Dからわかるように、デキサメタゾンの結晶化が顕著であり、エチレンオキシド滅菌後に進行している。
【0132】
図4は、5000倍の倍率で撮影した、実施例1のステントの表面のSEM顕微鏡写真である。図4からわかるように、デキサメタゾンの結晶は、本体部分のみならずコーティングの表面にも形成している。
【0133】
実施例4
ステントを、デキサメタゾンの代わりにデキサメタゾンアセテートを含むコーティング層でコーティングした。コーティング層の塗布用にアセトン/シクロヘキサノン70/30(w/w)の溶媒混合物を用いて、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンアセテートの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンアセテートの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図5A及び5Bは、100倍の倍率で撮影した、ETO滅菌後の2つの異なるコーティングされたステントの、直交偏光子下の光学顕微鏡写真である。図5A及び5Bからわかるように、薬物結晶の数が著しく減少している。
【0134】
実施例5
ステントを、デキサメタゾンの代わりにデキサメタゾンアセテートを含み、エベロリムスの代わりにゾタロリムスを含むコーティング層でコーティングした。コーティング層の塗布用に100%アセトンの溶媒系を用いて、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの質量比は、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図6A及び6Bは、滅菌した後の2つの異なるコーティングされたステントの100倍の拡大図である。図6A及び6Bからわかるように、薬物結晶の数が著しく減少している。
【0135】
実施例6
多数のステントを、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの比、及び薬物とポリマーの比をいろいろと変えてコーティングした。小型のVISION(商標)12mmステントを用いた。全てのステントを洗浄し、次いでプラズマ処理にかけた。ステントを、2%(w/w)ポリマーの2−ブタノン溶液からの噴霧により、約51μgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の下塗り層でコーティングした。標的重量のステント上のポリマーを得るためには、コーティング機による2回以上の工程が必要であった。噴霧操作は、表2に概要を示した処理パラメーターを用いて、実施例1に記載の通り実施した。コーティングに続き、全てのステントを、80℃にて30分間強制空気対流式オーブンで焼いた。
【0136】
【表2】
【0137】
オーブンから取り出し計量した後、ステントを、PDVF−HFPとゾタロリムス(Abbott Labs)とデキサメタゾンアセテート(AK Scientific、USPグレード)との、ポリマーの溶液でコーティングした。薬物の用量及び薬物対ポリマー比は試験群によって変わり、その標的比をまとめたものを表3に示す。噴霧操作は、表4に概要を示したパラメーターを用いて、下塗り剤の噴霧操作の場合と同様の方法で行った。標的重量のステント上のポリマー及び薬物を得るためには、コーティング機による2回以上の工程が必要であった。薬物層コーティングの後、ステントを、50℃にて60分間強制空気対流式オーブンで焼いた。反射率偏光顕微鏡法により、薬物コーティングされた全てのユニットの、表面欠陥、及びオーブンで焼いた後のデキサメタゾンアセテートの結晶化を検査した。総薬物量及び薬物放出速度等の分析アッセイに用いたステントのいくつかは、分析する前に更なる処理工程にかけられることはなかった。
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
コーティングを焼いた後、ステントを、3.0×12mmのVISIONカテーテル上にクリンプし、管状保護コイル中に設置し、次いでTYVEK(商標)のポーチに封入し、エチレンオキシドで滅菌した(「ETO滅菌した」)。ユニットをエチレンオキシドで滅菌した後、アルゴンを充填したホイルポーチで更に包んだ。滅菌したステントのうち、いくつかは動物試験に用い、いくつかは分析アッセイ用に用いた。ステントをコーティングし、2つの異なるバッチ処理(前臨床ビルド)で処理した。
【0141】
溶出溶媒としてアジ化ナトリウム0.1%(w/v)を加えたブタ血清において、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの両方の累積放出を、米国薬局方VII型テスターを用いて求めた。表示されている累積放出は、ステント上に残っている薬物の端数量を1ステント当たりの薬物の理論量で割り、それを1から引いたものである。放出速度試験の前に、各群からのステントの総薬物量を分析した。各ステントについて、実際の薬物貯蔵層コーティングの重量を用いて、薬物である薬物貯蔵層の割合を算出した。いくつかのステントから算出した値を平均した。この薬物である薬物貯蔵層の割合にステントの貯蔵層コーティングの重量を掛けると、薬物の理論上の重量測定量が得られる。次に、薬物貯蔵層コーティングの重量を基にした放出速度試験を行った各ステントについて、この薬物の理論上の重量測定量を算出した。
【0142】
総薬物量及び累積放出についての分析アッセイ結果をまとめたものを、それぞれ表5及び6に示す。表5からわかるように、エチレンオキシドによる滅菌後に総薬物量がわずかに減少している。
【表5】
【0143】
以下の表6では、いくつかのステントコーティングについては、両方の薬物の制御放出が得られたことが示されている。
【表6】
【0144】
図7は、ゾタロリムス35μg/cm2とデキサメタゾンアセテート70μg/cm2とで総薬物用量105μg/cm2の場合の、群1のステントからのデキサメタゾンアセテート及びゾタロリムス両方についての累積放出プロファイルを表したものである。
【0145】
実施例7
実施例6でコーティングしたステントを前臨床ブタ安全性試験に用いた。6つの試験群では、実施例6で群1〜6として概要を示したステントを用いた。群7は対照であって、用量が100μg/cm2であり、放出率が28日目で約80%であるエベロリムス溶出VISION(登録商標)冠動脈ステントである。試験には、家畜豚(「ブタ」)に、コーティングされたステントを動物1頭当たり3つ埋め込むことが含まれ、それぞれ冠状動脈内に設置する。埋め込みの継続期間は28日間であった。28日間の後、動物を安楽死させ、組織病理学アッセイを行った。
【0146】
図8は、試験の7群についての狭窄率を示したものである。ここで示されているデータには、処理アーティファクトは含まれていない。群6を除き全ての群について、対照と比較しての統計的差異(p値0.05以下)が存在することがデータからわかる。
【0147】
図9及び10は、試験群についての炎症スコア及び肉芽腫率を示したものである。図9には、処理アーティファクトを除き全てのデータが含まれている。処理アーティファクトを除くことに加えて、重篤な肉芽腫を有するステントを除いた場合、エベロリムスのみの対照群は、炎症スコアにおいて、二重薬物群と比較しての統計的差異は示さない。図9のデータに関して、内膜の炎症スコアについて7つの群の間に統計的差異は存在しない。しかしながら、外膜の炎症スコアについては、群A1、A3及びA5対対照群で統計的有意性に達した(p値0.00833を用いるウィルコクソン/クラスカルワリスサブグループ解析に基づく)。図10からわかるように、肉芽腫率はエベロリムスのみの対照群が最も高い。これらの肉芽腫の割合は、必ずしも他の動物種や臨床環境に当てはまるものではない。肉芽腫は、ウサギ等の他の動物種よりもブタにおいてはるかによく見られる。しかしながら、肉芽腫の割合が最も高いのはいずれの抗炎症薬も含まない対照群であることから、抗炎症薬であるデキサメタゾンを含めることの効果が明らかに示されている。
【0148】
本発明の特定の実施形態について説明及び記載してきたが、より広い態様において、本発明から逸脱することなく変更及び改変が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内にあるような全ての変更例及び改変例を、その範囲内に包含するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型医療デバイス(IMD)の分野、より特定すると、コーティングを有し、患者の体内の標的部位にてそのコーティングから薬物(1種又は複数)が放出され得る埋め込み型医療デバイス、更により特定すると、オリムス薬並びにデキサメタゾン誘導体及び類似体を含むコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の考察は、単に背景的情報として本発明の理解を助けることを目的としており、この項において、本発明の先行技術であることが意図されているもの、又は本発明の先行技術と解釈すべきものは何もない。
【0003】
1980年代中頃まで、アテローム性動脈硬化、即ち冠状動脈(1つ又は複数)の狭窄に対する治療として認められていたのは冠状動脈バイパス手術であった。バイパス手術は、効果的であり、このような侵襲的手法にしては安全度が比較的高いところまで発達してきたが、依然として重大な合併症を伴う可能性があり、最良の場合でも長期の回復期間を伴う。
【0004】
1977年の経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)の出現で状況は劇的に変化した。元々心臓検査用に開発されたカテーテル技術を用い、動脈中の閉塞領域を再開通させるためにインフレータブルバルーンが使用された。この手技は比較的非侵襲的であり、バイパス手術に比べて非常に短時間ですみ、回復時間は最低限であった。しかしながら、PTCAは、達成したことの多くを元に戻してしまう可能性のある、伸張した動脈壁の弾性反跳という別の問題をもたらし、加えてPCTAは、治療した動脈が再び詰まる再狭窄という別の問題を十分に改善できなかった。
【0005】
1980年代中頃に進歩した次なる改善は、PTCAの後にステントを用いて血管壁を支えて開放させることであった。これにより弾性反跳はほとんど決着したが、再狭窄の問題が完全に解決されることはなかった。即ち、ステントの導入前には、PTCAを受けた患者の30〜50%で再狭窄が起こっていた。ステントによりこれが約15〜30%に減少し大きく改善したが、更にこれ以上の改善が望ましかった。
【0006】
2003年には、薬物溶出ステント(即ちDES)が導入された。DESと共に最初に使用された薬物は、再狭窄に寄与していた細胞増殖を抑える化合物である細胞増殖抑制化合物であった。その結果、再狭窄は約5〜7%という比較的満足できる数字にまで減少した。今日、DESはアテローム性動脈硬化治療の業界デフォルトスタンダードであり、浅大腿動脈の末梢血管形成術等の、冠状動脈以外の血管の狭窄の治療に関して、急速に支持を得ている。
【0007】
DESにおける1つの改善は多剤DESである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材用コーティング、特にコーティングされた埋め込み型医療デバイス、及びそのデバイスを用いる治療方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様においては、本発明は、外表面を有するデバイス本体とコーティングとを含む医療デバイスに関する。コーティングは、表面上に配置された1つ又は複数のコーティング層、疎水性ポリマー、オリムス薬、及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む。コーティング中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、実質的に非晶質である。
【0010】
したがって、別の態様においては、本発明は、これまでに記載したコーティングされたデバイスを、それを必要とする患者に埋め込むことにより患者の病態を治療する方法に関する。
【0011】
本発明のある態様においては、オリムス薬の用量は約10〜約600μg/cm2であり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量は10〜約600μg/cm2である。
【0012】
本発明のある態様においては、1つのコーティング層は、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む。
【0013】
本発明のある態様においては、オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量比は約1:1〜約1:4である。
【0014】
本発明のある態様においては、デバイスは埋め込み型医療デバイスである。
【0015】
本発明のある態様においては、埋め込み型医療デバイスはステントである。
【0016】
本発明のある態様においては、デバイスはカテーテルバルーンである。
【0017】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーはフッ素ポリマーである。
【0018】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーは少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むフッ素ポリマーである。
【0019】
本発明のある態様においては、疎水性ポリマーはPVDF−HFPである。
【0020】
本発明のある態様においては、オリムス薬は、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス、AP23572、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0021】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せである。
【化1】
式中、R1は、
【化2】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、(C1〜C16)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、フェニル、エステル、カーボネート、エーテル及びケトンからなる群より選択される。シクロアルキル又は芳香環上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、アルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよく、R2上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、塩素、フッ素又はそれらの組合せで置換されていてもよい。R2中の炭素原子の総個数は16以下である。
【0022】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せである。
【化3】
式中、R1は、
【化4】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートからなる群より選択される。
【0023】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンパルミテート、デキサメタゾンジエチルアミノアセテート、デキサメタゾンイソニコチネート、デキサメタゾンtert−ブチルアセテート、デキサメタゾンテトラヒドロフタレート及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0024】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体はデキサメタゾンアセテートである。
【0025】
本発明のある態様においては、オリムス薬の累積薬物放出量は、24時間の時点でオリムス薬総含量の50%以下である。
【0026】
本発明のある態様においては、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の累積薬物放出量は、24時間の時点でデキサメタゾン誘導体若しくは類似体薬物総含量の50%以下である。
【0027】
本発明のある態様においては、コーティングは、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートを含む。
【0028】
別の態様においては、コーティングは、エベロリムス及び/又はゾタロリムス並びにデキサメタゾンアセテートを含む。デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量は、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下であり、ゾタロリムス及び/又はエベロリムスの累積薬物放出量は、24時間の時点でゾタロリムス及び/又はエベロリムス総含量の50%以下である。
【0029】
本発明のある態様においては、治療される病態は、再狭窄、アテローム性動脈硬化、血栓症、出血、血管の解離若しくは穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、(静脈及び人工グラフトに対する)吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞又はそれらの組合せより選択される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】図1Aは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図1B】図1Bは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2A】図2Aは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2B】図2Bは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2C】図2Cは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図2D】図2Dは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ200倍及び500倍の倍率で表したものである。
【図3A】図3Aは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3B】図3Bは、滅菌する前のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3C】図3Cは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図3D】図3Dは、滅菌した後のコーティングされたステントをそれぞれ100倍及び200倍の倍率で表したものである。
【図4】図4は、コーティングされたステントの表面のSEMを表したものである。
【図5A】図5Aは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図5B】図5Bは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図6A】図6Aは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図6B】図6Bは、2つの異なる滅菌した後のコーティングされたステントを100倍の倍率で表したものである。
【図7】図7は、コーティングが本発明の実施形態であるコーティングされたステントからの、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体の累積放出プロファイルを表したものである。
【図8】図8は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての狭窄率を表したものである。
【図9】図9は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての炎症を表したものである。
【図10】図10は、28日間のブタ前臨床試験における、様々なコーティングされたステントについての肉芽腫率を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、基材の表面上に配置されたコーティング、コーティングされた基材、及びコーティングされた医療デバイスを利用する治療方法を包含する。コーティングは、ポリマー、オリムス薬、並びに、デキサメタゾン誘導体及び類似体より選択される薬物を含む。ポリマーは、疎水性ポリマー、好ましくはフッ素ポリマー、より好ましくはフッ化ビニリデンを少なくとも25重量%有するフッ素ポリマーであってもよい。
【0032】
上記で概説したように、DESは、再狭窄を減少させる助けとなるように導入された。血管の再狭窄に至る細胞機構は数多く提案されてきている。これらの機構のうちの2つが、(1)平滑筋細胞の、損傷部位への遊走及び損傷部位での増殖、並びに(2)損傷及び異物の存在に対する急性及び慢性炎症反応である。
【0033】
動脈へのステント挿入は、血管損傷に至る場合がある。これは、一つには、内皮露出及び血管損傷を生じ得るステントの埋め込みに誘発される機械的損傷が原因である。内皮露出は、炎症反応を刺激し得る、血管壁における病巣の形成に直接関与している。血管を裏打ちしている内皮細胞が炎症を起こすと、好中球、単球及びその他の白血球を損傷部位に引き寄せる、ケモカインと呼ばれる物質が生成される。内皮細胞が膨張すると、内皮細胞間の密着結合が破壊され、好中球及び単球が周囲組織へ遊出できるようになる。それに続いて好中球及び単球が組織内へ動員されるのは、治癒過程の通常の一部分である。しかしながら、炎症が慢性化すると、好中球、マクロファージ及びリンパ球の滞留が長引くため、実際、治癒が阻害され、元々の損傷からの組織障害が悪化する恐れがある。組織修復が起きても調節不全が起こり得、長引く炎症と合わさると、このことが過剰な新生内膜形成及び瘢痕につながる可能性がある。
【0034】
不安定プラーク(VP)は、慢性動脈硬化性疾患と血管壁での脂質及び泡沫細胞の蓄積とが合わさって引き起こされると考えられる、動脈内の脂肪の蓄積を指す。VPは、破裂して血栓形成に至る恐れのある薄い線維性被膜で覆われている。VPの部位は、他のタイプの動脈硬化病巣よりもマクロファージ及びリンパ球の密度が高いため、これらの部位にステント挿入すると、平滑筋細胞増殖を促進するサイトカイン(IL−1、TNF−α)が大量に生成されると予測されている。先の動物(ブタ)試験では、炎症によりバルーン血管形成及びステント留置の部位にて増殖が促進されることが実証されている(Kornowskiら、Coron Artery Dis.12(6):513〜5ページ(2001))。
【0035】
細胞増殖を減少させるために、いくつかのDESは細胞毒性化合物を含んでいる。細胞毒性化合物であるパクリタキセルは、内皮の遊走を強力に抑制することが予想され、結果として起こる可能性がある再内皮化は治癒反応の遅れになる(米国特許出願公開第2008/0004694号、図面を含み完全に記載されているかのように、参照により本明細書に援用される)。対照的に、デキサメタゾンは、内皮の遊走に対してプラスの効果があり、血管腔に投与すると血管の治癒を促進し得ることがわかっている。パクリタキセル及びゾタロリムスは内皮細胞増殖を抑制するが、デキサメタゾンは抑制しない。更には、パクリタキセルはin vitroにおけるヒト冠状動脈内皮細胞の遊走を抑制するが、ゾタロリムスやデキサメタゾンは抑制しない。パクリタキセルと比べると、デキサメタゾンとゾタロリムスの組合せは、血管領域の再内皮化に対する抑制が少ないと予想される。
【0036】
ゾタロリムス等のオリムス薬に抗炎症薬を加えると、オリムス薬のみを担持したステントが埋め込まれる場合よりも、ステントの埋め込みに対する炎症反応がより一層抑えられる。炎症が、通常の治癒に求められるものを超えており、且つ慢性である場合、抗炎症薬を加えることは治癒の助けとなり得る。炎症反応自体は新生内膜増殖を悪化させる。活性化された血小板、マクロファージ及び好中球は全て増殖促進サイトカインを分泌する。オリムス薬と抗炎症薬の両方による二重薬物システムは、複数の新生内膜増殖の経路を阻害するため、オリムス薬単独よりもより大きな抗再狭窄効果を有し得る。この特性を利用して、高レベルの有効性を維持しながらオリムス薬の用量や薬物放出の期間を減らすことにより、治癒を促進することが可能である。
【0037】
したがって、1つのDESの中でデキサメタゾンとゾタロリムスを組み合わせると有利であり、1つのコーティング層の中でこの2つを組み合わせるとより一層有利である。
【0038】
多剤DESには課題もある。エベロリムスを含むDESは米国において使用が認可されているが、デキサメタゾンをこのコーティングに加えると、ポリマーコーティング内でデキサメタゾンの大量の結晶化が起こる。デキサメタゾンは、薬物の中のグルココルチコイド又はステロイドファミリーに属する。このファミリーは、全体的に結晶化傾向が強い。この傾向は、分子に内部自由度をほとんど与えず、分子が非常に効率的に積み重なることを可能にする、平面且つ強固な4員環構造により強まっている。このクラスの化合物にしては融点が高いが、それは形成された結晶が熱力学的に安定であることを示すものである。コーティング内での薬物の結晶化は、放出速度に影響を与える場合がある。表面上の結晶もまた塞栓症の危険をもたらす可能性があると考えられている。更には、表面上の結晶は美感上の問題をもたらす。デキサメタゾンの一部のみが結晶化し得るため、結晶化度の経時的な変化によって安定性の問題が発生し得る。デキサメタゾンを含有するDESは、いくつかの親水性基を有するポリマーを利用して製造することができる。しかしながら、コーティングにそのようなポリマーを用いると、デキサメタゾンの速放性放出につながる。
【0039】
より脂溶性であるデキサメタゾンの誘導体若しくは類似体とエベロリムス(又はゾタロリムス)との組合せを、疎水性ポリマーを含むコーティング層において適切な薬物の質量パーセントで用いると、デキサメタゾンとエベロリムスの組合せよりも結晶化のレベルが低くなることがわかっている。より脂溶性であるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体によって、薬物の結晶化の原動力が疎水性ポリマー内で低下する。これは、脂溶性のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体のポリマー内における安定性が増すためである。この改善された適合性は、エチレンオキシドでデバイスを滅菌した後でも維持される。加えて、疎水性ポリマーは、オリムス薬、及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の両方の制御放出をもたらす。
【0040】
本発明の目的のため、コーティングは、ステントを例とする多くの基材に塗布することができる。コーティング又はコーティングされた基材に言及する場合、「あるオリムス薬」、「あるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体」及び「あるポリマー」について説明することがあるが、本発明の実施形態は、1種又は複数のオリムス薬、1種又は複数のデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループ、並びに1種又は複数のポリマーを包含する。いくつかの実施形態においては、臨床的有効性は、薬物を組み合わせて使用することにより得られるが、その組合せの個々の薬物のそれぞれの投与量を単独で用いると臨床的に有効ではない。
【0041】
定義
特に明記しない限り、本明細書で用いる、限定するものではないが、「約」、「本質的に」、「実質的に」等の近似を表すあらゆる単語は、そのように修飾されている要素が、記載された通りのものである必要はないが、本発明の範囲を超えることなく記載から±15%程度は異なっていてもよいということを意味する。
【0042】
本明細書で用いる「薬物」は、疾患又は病態を患う患者に治療上有効な量で投与した際に患者の健康及び幸福に治療上有益な効果を有するいずれかの物質を指す。個人の健康及び幸福への治療上有益な効果としては、限定するものではないが、(1)疾患又は状態を治癒すること、(2)疾患又は状態の進行を遅らせること、(3)疾患又は状態の退行を起こすこと、又は、(4)疾患又は状態の1つ又は複数の症状を緩和することが挙げられる。
【0043】
本明細書で用いる薬物は、ある疾患に特にかかりやすいことが知られているか又は疑われている患者に予防上有効な量で投与した際に、患者の健康及び幸福に予防上有益な効果を有するいずれかの物質も含む。患者の健康及び幸福への予防上有益な効果としては、限定するものではないが、(1)まず初めの段階で疾患若しくは状態の発症を防止若しくは遅延させること、(2)予防上有効な量で用いられる物質と同じであっても異なっていてもよい、治療上有効な量の物質によって退行レベルを一旦達成した後に、疾患又は状態をかかるレベルに維持すること、又は(3)予防上有効な量で用いられる物質と同じであっても異なっていてもよい、治療上有効な量の物質による治療過程の終了後に疾患又は状態の再発を防止若しくは遅延させることが挙げられる。
【0044】
本明細書で用いる「薬物」は、限定するものではないが、塩、エステル、アミド等を含む、医薬として許容できる、薬理学的に活性な、本明細書で具体的に言及するその薬物の誘導体も指す。
【0045】
本明細書で用いる、指し示された基材の「上に配置された」と記述されている材料は、例えば、基材の表面の少なくとも一部の上に直接的又は間接的に堆積させた材料のコーティング層を指す。直接堆積とは、コーティング層が基材の表面に直接塗布されていることを意味する。間接堆積とは、コーティング層が、基材の上に直接的又は間接的に堆積させた介在層に塗布されていることを意味する。コーティング層は、基材の表面上に直接的に堆積しているか間接的に堆積しているかに関わらず、基材の表面によって支持されている。用語「層」及び「コーティング層」は、本明細書中交換可能に用いられる。本明細書で用いる用語「コーティング」は、基材上に堆積させた1つ又は複数の層を指す。
【0046】
本明細書で用いる「無視できるレベルの結晶」及び「無視できる結晶化」は、目に見える結晶の数が1cm2当たり100以下であるか、或いは、X線結晶学、示差走査熱量測定、固体NMR又はIR分析で求めた結晶化した薬物の割合が、適切であれば、約10%以下であることを意味する。直交偏光子を用いる反射顕微鏡観察によりデバイスを検査することが、薬物の結晶を視覚化する効果的な方法である。この方法により、結晶が鮮明に輝き、手動での計数又は画像解析による定量化が行いやすくなる。
【0047】
デキサメタゾン誘導体及び類似体
本発明の実施形態は、デキサメタゾンよりも脂溶性であるデキサメタゾン誘導体及び類似体、並びにこれらのデキサメタゾン誘導体及び類似体いずれかの組合せを包含する。
【0048】
デキサメタゾンは、以下の式の化合物である。
【化5】
デキサメタゾンの分子量は392.45であり、融点は約262〜264℃である。
【0049】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、以下の式の化合物を包含する。
【化6】
(式中、R1は、
【化7】
のうちの1つであり、式中、R2は以下に概説する通り疎水性部分であってもよい。)
【0050】
本明細書で用いる「アルキル」は、直鎖、分岐鎖の完全飽和(二重結合や三重結合がない)炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。本明細書で用いる「アルキル」は「アルキレン」基を含み、「アルキレン」基は、他の基と結合するために1つではなく2つの開放原子価を有する、直鎖又は分岐鎖の完全飽和炭化水素基を指す。アルキレン基の例としては、限定するものではないが、メチレン、−CH2−、エチレン、−CH2CH2−、プロピレン、−CH2CH2CH2−、n−ブチレン、−CH2CH2CH2CH2−、sec−ブチレン、−CH2CH2CH(CH3)−等が挙げられる。
【0051】
本明細書で用いる「Cm〜Cn」(m及びnは整数)は、示された基中に存在し得る炭素原子の数を指す。即ち、基は、「m」から「n」まで(mとnも含む)の炭素原子を含み得る。例えば、限定するものではないが、本発明のアルキル基は3〜8個の炭素原子からなっていてもよいが、その場合は、(C3〜C8)アルキル基、と表される。これらの数は、その始めと終わりの数も含んでおり、示された数の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖構造体が組み込まれている。例えば、限定するものではないが、「C1〜C4アルキル」基は、1〜4個の炭素を有する全てのアルキル基、即ち、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、CH3CH(CH3)−、CH3CH2CH2CH2−、CH3CH2CH(CH3)−及び(CH3)3CH−を指す。
【0052】
本明細書で用いるシクロアルキル基は、アルキル鎖の末端炭素原子が互いに共有結合しているアルキル基を指す。数、「m」及び「n」は、形成された環中の炭素原子の数を指す。したがって、例えば、(C3〜C8)シクロアルキル基は、3、4、5、6、7、又は8員環、即ち、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びシクロオクタンを指す。
【0053】
本明細書で用いる「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を含む炭化水素基を指す。
【0054】
本明細書で用いる「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合を含む炭化水素基を指す。
【0055】
本明細書で用いる「芳香族」は、
【化8】
で表される、ベンゼン環を含む炭化水素化合物を指す。
【0056】
本出願を通じて、当業者に周知の標準的な略語が用いられている。したがって、意図されている構造は、いずれかの特定の原子が必要とする原子価に基づき、必要な全ての水素原子が提供されているという理解の下、当業者であれば容易に認識することができる。例えば、−COR又は−C(O)Rは、炭素は四価であるため、
【化9】
の構造を指していなければならないが、これが、その構造中に示されていない水素又は他の原子を加えることなく炭素が四価となり得る唯一の方法だからである。
【0057】
同様に、
【化10】
で例示されるいわゆる枝状構造(stick structure)は、
【化11】
の構造を示すこと、即ち、各末端はCH3基でキャッピングされ、且つそれぞれの角の先端は必要な数の水素原子が結合した炭素原子であることは、化学分野の当業者であれば理解できる。
【0058】
上記R1置換基のR2部分は、水素、炭素及び酸素を含むいずれかの部分であってもよいが、酸素が存在する場合は、エステル
【化12】
エーテル(−R5−O−R6)、
カーボネート
【化13】
及び/又はケトン
【化14】
の一部であり、ここで、R5及びR6置換基はそれぞれ、エステル、カーボネート及びケトン基に結合している少なくとも1個の炭素原子を含む(即ちR5及びR6はHや−OHではない)。R2部分中の炭素原子の総個数は16以下である。
【0059】
R2部分は、C1〜C16アルキル等の飽和炭化水素、又は不飽和炭化水素、即ちC2〜C16アルケニル、C2〜C16アルキニル、若しくは二重及び三重炭素−炭素結合の両方を含む部分、等の、1〜16個の炭素を含んだ炭化水素であってもよい。R2部分は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。R2部分は、C3〜C10シクロアルキル等の脂環式基、芳香族基、並びに/或いは1つ若しくは複数の二重及び/又は1つ若しくは複数の三重炭素−炭素結合を含むその他の炭化水素環構造体を含んでいてもよい。必要に応じて、1つ又は複数の置換基が環に結合していてもよい。
【0060】
R2部分が環を含む場合、環は、直接又は置換基を介して、
【化15】
に結合していてもよい。
【0061】
R2部分についての上記記述は、R5及びR6部分、並びに環上のいずれかの任意の置換基にも適用できるが、ただし、R2部分中の炭素原子の総個数が16以下であるように、それぞれの中の炭素原子の数は限定される。したがって、R2部分中には複数のエステル、カーボネート及び/又はケトン基が存在していてもよく、またこれらのうちのいずれかの1つ又は複数が置換基上に存在していてもよい。言い換えれば、R5及びR6部分もまた、エステル、カーボネート及び/又はケトンより独立して選択される1つ又は複数の基を含んでいてもよいが、ただし、エステル、カーボネート及び/又はケトン基のそれぞれの各側には炭素原子が結合している。環上の置換基が別の環を形成してもよい。
【0062】
R2部分はまた、ベンジル、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン又はメタスルホベンゾエートであってもよい。
【0063】
考えられるR2部分のいずれにおいても、水素原子の1個又は複数は、限定するものではないが、フッ素及び/又は塩素等のハロゲン原子で置き換えられていてもよい。
【0064】
R2基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる。
【化16】
上記の例において、m及びnは整数を表す。
【0065】
好ましいR2部分のリストには、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートが含まれる。
【0066】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、溶解パラメーターが10(cal/cm3)1/2以下であるデキサメタゾンの誘導体若しくは類似体も包含する。
【0067】
本明細書で用いる用語「デキサメタゾン誘導体及び類似体」は、限定するものではないが、以下の特定の化合物も包含する。
【化17】
デキサメタゾンアセテート
【化18】
デキサメタゾンパルミテート(リメタゾン)
【化19】
デキサメタゾンジエチルアミノアセテート(SOLU−FORTE−CORTIN(登録商標))
【化20】
デキサメタゾンイソニコチネート
【化21】
デキサメタゾンテトラヒドロフタレート
【化22】
デキサメタゾンtert−ブチルアセテート
【0068】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量は、10〜600μg/cm2、好ましくは20〜400μg/cm2、より好ましくは30〜200μg/cmの範囲であってもよい。
【0069】
オリムス薬
本発明の実施形態は、1種又は複数のオリムス薬を含む。
【0070】
本明細書で用いる用語「オリムス薬」は、ラパマイシン(シロリムス)及びその機能的又は構造的誘導体を指す。これらの誘導体としては、限定するものではないが、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン(ラパマイシンの構造的誘導体)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン(ラパマイシンの構造的誘導体)、40−O−テトラゾリルラパマイシン及び40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシンが挙げられる。オリムス薬に含まれるものとしてはまた、ラパマイシンの42炭素又は40炭素に相当する炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0071】
オリムス薬の用量は、10〜600μg/cm2、好ましくは20〜400μg/cm2、より好ましくは30〜200μg/cm2の範囲であってもよい。
【0072】
疎水性ポリマー
本発明の実施形態は、1種又は複数の疎水性ポリマーを包含する。「疎水性ポリマー」であることを特徴としないポリマーも、本発明のコーティングに含まれ得る。
【0073】
本明細書で用いる「ポリマー」は、本明細書中「構成単位」と呼ぶ、より単純な単位の繰返しからなる分子であり、この構成単位はモノマーの反応に由来するものである。非限定的な例であるCH2=CH2、即ちエチレンは、重合してCH3(CH2)nCH3等のポリエチレンを形成することができるモノマーであり、この場合の構成単位は、重合反応の結果二重結合を失ったエチレンである−CH2−CH2−である。本発明のポリマーは、いくつかの異なるモノマーの重合に由来していてもよく、したがっていくつかの異なる構成単位を含んでいてもよい。このようなポリマーは、「コポリマー」と呼ばれる。ある特定のポリマーを考えた場合、当業者であればそのポリマーの構成単位を容易に認識でき、構成単位の元になっているモノマーの構造も同様に容易に認識できる。本発明のポリマーは、特に明記しない限り、規則性交互ポリマー、ランダム交互ポリマー、規則性ブロックポリマー、ランダムブロックポリマー又は純粋ランダムポリマー(purely random polymer)であってもよい。ポリマーは、架橋してネットワークを形成してもよい。
【0074】
本明細書で用いる「疎水性ポリマー」は、ポリマーによる水分吸収が、生理的条件又はそれに近い条件、即ち約37℃、標準大気圧(約1気圧)及び約pH7.4にて測定した場合に約5重量%以下であるポリマーである。
【0075】
いくつかの実施形態においては、用いる疎水性ポリマーは、37℃及び標準大気圧での水分吸収が、2重量%以下、より厳密には1重量%以下、更により厳密には0.5重量%以下、最も厳密には0.1重量%以下であるポリマーであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態においては、疎水性ポリマーは、溶解パラメーターが約11.5(cal/cm3)1/2以下であるポリマーであってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態においては、疎水性ポリマーはフッ素ポリマーである。フッ素ポリマーは、通常は、同等の非フッ素ポリマー中に1個又は複数の水素原子が存在する位置にフッ素原子を含むポリマーである。フッ素ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(「PDVF−HFP」)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(「PTFE」、即ちTEFLON(登録商標))、フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)(「FEP」)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(「PCTFE」)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)(「PVDF−TFE」)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−プロペン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン−コ−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−フルオロメチルビニルエーテル)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(「ETFE」)、ポリ(エチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化シリコーン、ペルフルオロアルキルビニルエーテルとテトラフルオロエチレンのコポリマー(「PFA」)、二フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー(「TFB」)、ポリフッ化ビニル(「PVF」)、ポリ(テトラフルオロエチレン)とフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−エチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−エチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−トリフルオロエチレン)(「PVDF−TrFE」)並びにポリ(フッ化ビニリデン−コ−テトラフルオロエチレン)が挙げられる。その他のフッ素ポリマーとしては、フルオロアルコキシル含有ポリマー、シリコーンとフッ素ポリマーの混合物が挙げられる。上に列挙したフッ素ポリマーのいずれの組合せも用いることができる。
【0078】
好ましいポリマーのクラスは、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデン、及びPDVF−HFPコポリマーを含むフッ素ポリマーである。より好ましいポリマーのグループは、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むPDVF−HFPポリマーである。
【0079】
コーティング構造物
本明細書で用いる「下塗り層」は、基材の製造材料に対し、また基材上にいかなる材料がコーティングされても良好な接着特性を示すポリマー又はポリマーのブレンドを含むコーティング層を指す。したがって、下塗り層は、基材と、基材が担持する材料との間の接着性中間層として機能し、そのため基材に直接塗布される。
【0080】
本明細書で用いる「薬物貯蔵層」は、1種又は複数の薬物を含む層を指す。層は、混ぜ物無しで、結合剤等の賦形剤とともに、又はポリマーマトリックスの構成成分として適用される1種又は複数の薬物を含んでいてもよい。ポリマー薬物貯蔵層は、いろいろなメカニズムにより、例えば限定するものではないが、溶出により、又はポリマーの生分解の結果として、薬物が層から周囲の環境へと放出されるように設計されている。
【0081】
本発明の実施形態は、本明細書中で「DD/OD薬物貯蔵層」と呼んでいる1つのコーティング層の中に、疎水性ポリマー、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体並びにオリムス薬を含むコーティング構造物を包含する。いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層が基材上の唯一のコーティング層であるが、好ましい実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層に加えて下塗り層が存在する。いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、所望によりそれぞれ1種又は複数のポリマーを含む別々のコーティング層中に適用してもよい。オリムス薬及び/又はデキサメタゾン誘導体若しくは類似体は、疎水性ポリマーを含む層が上にある1つ又は2つの非ポリマー薬物貯蔵層に適用されてもよい。上にある層は、オリムス薬及び/若しくはデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物を含む層、並びに/又はDD/OD薬物貯蔵層であってもよい。
【0082】
本発明の実施形態は、1つ又は複数の薬物貯蔵層、薬物貯蔵層(1つ又は複数)の下の(ゼロを含む)いずれかの数のコーティング層、薬物貯蔵層(1つ又は複数)の上のいずれかの数の層、薬物貯蔵層が2つ以上の場合は複数の薬物貯蔵層の間のいずれかの数のコーティング層、及び上記のいずれかの組合せ、を含む。
【0083】
オリムス薬並びに/又はデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物を含むあらゆる薬物貯蔵層を含むいずれの層も、オリムス薬及び/又はデキサメタゾン誘導体若しくは類似体以外の別の薬物を所望により含んでいてもよい。複数の薬物貯蔵層に関しては、様々なタイプのポリマー、オリムス薬、並びに/又は様々な層で用いるデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの様々な薬物が存在してもよい。
【0084】
薬物貯蔵層中のオリムス薬の質量パーセントは、薬物貯蔵層がポリマーを含む場合は約2〜約90%であってもよく、好ましくは約4〜約50質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。
【0085】
薬物貯蔵層中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量パーセントは、薬物貯蔵層がポリマーを含む場合は約1〜約90%であってもよく、好ましくは約2〜約50質量%、より好ましくは約4〜約20質量%である。
【0086】
非ポリマー薬物貯蔵層に関しては、オリムス薬、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体、及び/又はそれらの組合せのいずれかの質量パーセントが、約100%であってもよく、又は約75〜約100%、好ましくは約50〜約90質量%、より好ましくは約10〜約75質量%であってもよい。
【0087】
薬物貯蔵層中の疎水性ポリマーの質量パーセントは、約10〜約98質量%であってもよく、好ましい範囲は30〜90%、より好ましい範囲は約50〜約85%である。いくつかの実施形態においては、薬物貯蔵層は、実質的にはポリマー及び薬物(1種又は複数)しか含まない。他の実施形態においては、ポリマー及び薬物(1種又は複数)は、薬物貯蔵層の少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%である。
【0088】
本発明の実施形態は、0.2ミクロン〜50ミクロン、好ましくは0.5ミクロン〜25ミクロン、より好ましくは1ミクロン〜15ミクロンの総コーティング厚さを包含する。個々のコーティング層に関しては、厚さは0.2ミクロン〜50ミクロン、好ましくは0.5ミクロン〜25ミクロン、より好ましくは1ミクロン〜15ミクロンの範囲であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態においては、コーティングは、埋め込み型医療デバイスのデバイス本体の外表面といった、基材の表面上の全て、又は実質的に全ての上に配置されていてもよい。本発明のいくつかの実施形態においては、コーティングは、基材のほんの一部又は一部分の上に配置されていてもよい。非限定的な例としては、ステントの反管腔側又は管腔側が選択的にコーティングされていてもよい。
【0090】
改善された適合性
上記の通り、デキサメタゾンとエベロリムス(又はゾタロリムス若しくは別のオリムス薬)の両方を含む埋め込み型医療デバイスは、臨床上の利点を提供すると考えられる。実施例7にも記載の通り、家畜豚(swine)(「ブタ(pig)」)における28日間の安全性試験では、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの両方を含むステントは、同じポリマーでコーティングされた同じステントプラットフォームからなるが薬物はエベロリムスしか含まない対照DESよりも、狭窄の程度が低かった。
【0091】
本発明の実施形態は、DD/OD薬物貯蔵層等の薬物貯蔵層中における、質量基準で約1:1〜約1:6、より好ましくは約1:1.5〜約1:5、最も好ましくは約1:2.3〜約1:4の範囲の薬物対ポリマー比を包含する。本明細書で用いる薬物対ポリマー比は、1種又は複数のオリムス薬とデキサメタゾン誘導体及び類似体のグループより選択される1種又は複数の薬物との合計である全薬物の、層中の全ポリマーに対する比を指す。
【0092】
上記の通り、デキサメタゾン誘導体及び類似体のサブセットを、疎水性ポリマーを有する1つのコーティング層中でエベロリムス又はゾタロリムス等のオリムス薬とともに用いると、実質的に非晶質であるデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を有するコーティング層の製造が可能になる、ということがわかっている。
【0093】
本明細書で用いる「実質的に非晶質」とは、X線結晶学、示差走査熱量測定、固体NMR、又は、使用時、例えば、埋め込み型医療デバイスのための配備又は埋め込みの時に測定したIR分析によって測定した結晶化度が約10%以下であることを指す。
【0094】
オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体との質量比は、10:1〜1:10、好ましくは6:1〜1:6、より好ましくは1:2〜1:4であってもよい。オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体とのモル比は、5:1〜1:25、好ましくは2:1〜1:12、より好ましくは1:3〜1:9であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及び好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。
【0096】
エチレンオキシド滅菌の間、医療デバイスは、有機体の繁殖を抑制するアルキル化反応を通じて滅菌する、気相のエチレンオキシドにさらされる。エチレンオキシドはデバイスを透過し、次いで、エチレンオキシドは毒性が高いため、その残留レベルを確実に非常に低くするためにデバイスに通気する。したがって、エチレンオキシド滅菌は、多くの場合、プロセスの速度を上げるために高温で行われる。
【0097】
ETO滅菌の間の、高温、湿気及びエチレンオキシドガスの組合せは、薬物の再結晶に影響する場合がある。高温は、薬物の再結晶の動態を速め得るか、又はコーティングをそのガラス転移温度(Tg)超に上昇させ得る。ゴム相においては、薬物の結晶化の動態が加速し得る。湿気は、疎水性ではないいくつかのポリマーを可塑化する場合もあり、一方でエチレンオキシドは、多くの疎水性ポリマーを可塑化する場合がある。コーティング表面上の水滴は、薬物の結晶化の核としても働き得る。
【0098】
したがって、いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、エチレンオキシドによる滅菌後に、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及びより好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。いくつかの実施形態においては、DD/OD薬物貯蔵層は、約30〜約55℃の範囲の温度、及び約2〜約24時間の期間のエチレンオキシドによる滅菌後に、存在するデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の25重量%以下、好ましくは15重量%以下程度の結晶化、及びより好ましくは無視できる程度の結晶化を示す。
【0099】
放出速度
実施例6で説明する通り、本発明のコーティング層により、オリムス薬と、デキサメタゾン誘導体及び類似体のグループの薬物との両方の制御放出が可能になる。in vivoにおける薬物放出速度の測定は、37℃にてブタ血清等の生体関連培地を用いることによりin vitroで実施できる。したがって、いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体はそれぞれ、in−vitroでの累積放出(非滅菌状態のコーティングされた基材について測定)が24時間の時点で総薬物量の50%以下であり、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。好ましい実施形態においては、各薬物に関して、24時間の時点でのin−vitroでの放出は総薬物量の40%を超えず、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。
【0100】
いくつかの実施形態においては、オリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体はそれぞれ、in−vivoにおける累積放出(ヒト等の動物)が24時間の時点で総薬物量の50%以下であり、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。好ましい実施形態においては、各薬物に関して、24時間の時点でのin−vivoでの放出は総薬物量の40%を超えず、薬物の80%が放出されるまでの期間は7日間以上である。
【0101】
いくつかの実施形態においては、2つの薬物のうち1つだけが上記の累積放出基準を満たすことができる。
【0102】
基材
本発明の種々の実施形態に含まれるコーティングは、基材にとってコーティングが有益又は望ましいものであるいずれの基材に塗布してもよい。好ましい基材は、医療デバイス、特に埋め込み型医療デバイスである。
【0103】
本明細書で用いる「埋め込み型医療デバイス」は、外科的又は内科的に患者の体内に、又は内科的介入によって自然開口部内に、全体的又は部分的に導入され、処置後もその場に留まることが意図されている、いずれかのタイプの器具を指す。埋め込みの継続期間は基本的には永久であってもよく、即ち、デバイスが生物分解するまで、又は物理的に取り除かれるまで、患者の残りの人生の間配置されたままであることが意図されていてもよい。埋め込み型医療デバイスの例としては、限定するものではないが、埋め込み型心臓ペースメーカー及び除細動器、これらのためのリード及び電極、神経、膀胱、括約筋及び横隔膜刺激装置等の埋め込み型臓器刺激装置、人工内耳、人工装具、血管グラフト、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト、人口心臓弁、卵円孔閉鎖デバイス、髄液シャント、整形外科固定具、並びに子宮内避妊器具が挙げられる。上述のデバイスは全て第1の機能を有し、なお且つ第2の機能として本発明のコーティングでコーティングされることもあるが、薬物の局所的輸送用に特別に設計され、且つそれだけを対象とした埋め込み型医療デバイスもまた本発明の範囲内である。
【0104】
好ましい埋め込み型医療デバイスはステントである。ステントは、一般的には、患者の体内で組織を適所に保つために用いるいずれかのデバイスを指す。しかしながら、特に有用なステントは、疾患又は障害により血管が狭まるか又は塞がった際に患者の体内の血管の開存性を維持するために用いるステントである。例えば、限定するものではないが、ステントは、不安定プラーク(VP)付近の血管壁を強化し、破裂に対する防御物としての働きをするために用いることができる。上記で概説したように、VPは、破裂して血栓形成へとつながる恐れのある薄い線維性被膜に覆われている。ステントは、限定するものではないが、神経、頸動脈、冠状動脈、肺、大動脈、腎、胆管、腸骨、大腿骨内、及び膝窩、並びに他の末梢血管系で用いることができる。
【0105】
埋め込み型医療デバイスに関して本明細書で用いる「デバイス本体」は、デバイスの製造材料と異なる材料の層が外表面には塗布されていない、完全に形成されている実用的な状態の埋め込み型医療デバイスを指す。「外表面」は、空間的にはどのよう方向を向いていてもよい、身体組織又は体液と接触しているいずれかの表面を意味する。「デバイス本体」の一般的な例は、BMS、即ちベアメタルステントであるが、その名が示す通り、身体組織又は体液と接触しているいずれかの表面上において、ステントの材料となっている金属と異なるいずれの材料の層にもコーティングされていない、完全に形成されている使用可能なステントである。当然のことながら、デバイス本体は、BMSだけではなく、何で製造されているかに関わらず、あらゆるコーティングされていないデバイスも指す。
【0106】
埋め込み型医療デバイスは、金属及び/又はポリマーを含む事実上全ての材料から製造することができる。生体吸収性及び/又は生体安定性ポリマー製のデバイスもまた本発明の実施形態で用いることができる。デバイスは、例えば、生体吸収性のステントであってもよい。デバイスの製造材料は、本発明に対して制限となるものではない。
【0107】
本明細書で用いる「バルーン」は、患者の血管内の特定の位置に置かれた際に、その置かれた血管の内径又は管腔径と実質的に同じである外径まで拡張又は膨張することが可能である、比較的薄く、可撓性又は弾性の材料を含む、通常は血管カテーテルに関連する、当技術分野で周知のデバイスを指す。バルーンの膨張は、当技術分野で公知又は公知になるであろういずれかの手段で達成され得る。本発明に関しては、バルーンの特定のデザインは重要ではなく、多種多様のデザインを用いてもよい。
【0108】
通常、コーティングは基材の表面に塗布してもよいが、その表面は、体液又は身体組織と接触している表面である、埋め込み型医療デバイス用のデバイス本体の外表面、又はカテーテルバルーンの外表面であってもよい。他のデバイスに関しては、外表面、又はその他の適切な表面がコーティングされていてもよい。ステントに関して、外表面としては、管腔、側壁、及び反管腔表面が挙げられる。
【0109】
作製方法
ステント(基材の例)をコーティングするための代表的な製造工程としては、ポリマー及び薬物を、所望によっては他の添加剤とともに、溶媒(液体)中に溶解又は分散させること、及び噴霧又は溶液中へのステントの浸漬等の処置により、生じたコーティング溶液をステント上に配置させることである。このようなコーティング手順は当技術分野では周知である。
【0110】
本発明のいくつかの態様においては、ステントへのコーティング溶液の塗布は、圧縮ガス(圧縮ガスの非限定的な例としては、空気、窒素、アルゴン又はその他の不活性ガスが挙げられ、或いは超臨界流体を用いてもよい)によって霧化された溶液をステント上に噴霧することにより行われる。噴霧コーティングプロセスの重要な側面としては、霧化ガスの圧力及び離れた場所への噴霧ノズルが挙げられる。コーティング層を得るためには、噴霧機及び乾燥機による複数回の工程が必要な場合もある。
【0111】
溶液をステント上に配置した後、蒸発により溶媒を除去、又は実質的に除去する。溶媒を除去する際に残るのは、コーティング溶液に溶解させた物質が含まれる固体層である。溶媒除去のプロセスは、高温を用いること、及び/又はガス若しくは超臨界流体の流れを、ステント上で、又はステントを通過させて用いることにより加速することができる。完全に全ての溶媒の除去は非常に困難であり得るため、溶媒が実質的に除去された後に残る層には少量の残留溶媒が含まれる場合がある。
【0112】
コーティング層を形成するためには、複数回の噴霧及び乾燥の操作が必要な場合がある。
【0113】
本発明の実施形態は、コーティング層、又はポリマー及び/若しくは薬物等のコーティング層に含まれる材料が、コーティングが塗布された表面と共有結合や化学結合していないコーティングを包含する(基材表面、又は既に塗布されているコーティング層)。
【0114】
障害の治療又は予防方法
本発明の実施形態は、コーティングが、本発明の実施形態のいずれか1つ、又は本発明の実施形態のいずれかの組合せであってもよい、コーティングされた医療デバイスで患者(ヒト等の動物)を治療する方法を包含する。特に、本明細書に記載のコーティングを有する埋め込み型デバイスを用いて、種々の状態又は障害を治療、予防、緩和、軽減又は診断すること、又は治癒促進効果をもたらすことができる。かかる状態又は障害の非限定的な例としては、冠状動脈疾患、頸動脈疾患、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離、血管の穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工グラフトの吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞、尿管閉塞、良性膵疾患並びに(例えば、食道、気管/気管支等における)腫瘍閉塞腫瘍が挙げられる。
【0115】
好ましい実施形態においては、治療方法は、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートを含むステントによる、血管の疾患又は状態の治療を包含し、またより好ましい実施形態においては、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートは、フッ素ポリマーも含む、ステント上の同じコーティング層に含まれている。
【0116】
他の薬物
本発明の実施形態における使用に好適であり得る他の薬物は、当然ながら治療する具体的な疾患によって異なり、限定するものではないが、抗再狭窄薬、増殖促進薬若しくは抗増殖薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン薬、細胞分裂阻害薬、抗生物質、抗酵素薬、代謝拮抗薬、血管形成薬、細胞保護薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、及び/又は心保護薬が挙げられる。
【0117】
本明細書で用いる用語「抗増殖薬」は、急性細胞性拒絶反応の増殖期を遮断するために作用する薬物を指す。抗増殖薬は、細胞毒又は合成分子等の天然のタンパク質性物質であってもよい。他の薬物としては、限定するものではないが、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類似体(Sigma−Aldrich製、1001 West Saint Paul Avenue、Milwaukee、WI53233;又はMerckより入手可能であるCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの同義語としては、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1及びアクチノマイシンC1が挙げられる)等の抗増殖性物質、タキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル、パクリタキセル誘導体等の全てのタキソイド類、ラパマイシン(シロリムス)及びその機能的又は構造的誘導体、エベロリムス(オリムス薬とともに上記で概説)の機能的又は構造的誘導体、FKBP−12介在性mTOR阻害薬、並びにピルフェニドンが挙げられる。細胞分裂阻害薬又は抗増殖薬の更なる例としては、限定するものではないが、アンジオペプチン、及び線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬が挙げられる。
【0118】
抗炎症薬の例としては、限定するものではないが、クロベタゾール、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、αアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デクスメタゾン(dexmethasone phosphate)、モメンタゾン(momentasone)、コルチゾン、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロンスレプタネート、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス及びピメクロリムス等の、ステロイド性及び非ステロイド性(NSAID)両方の抗炎症薬が挙げられる。
【0119】
或いは、抗炎症薬は、炎症促進性シグナリング分子の生物学的阻害薬であってもよい。抗炎症薬は、そのような生物学的炎症性シグナリング分子に対する抗体を含む生物活性物質であってもよい。
【0120】
抗腫瘍薬及び抗有糸分裂薬の例としては、限定するものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン及びマイトマイシンが挙げられる。
【0121】
抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬及び抗トロンビン薬の例としては、限定するものではないが、ヘパリン、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリンデキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン及びトロンビン、ANGIOMAX(登録商標)(ビバリルジン)等のトロンビン阻害剤、ニフェジピン等のカルシウムチャンネル遮断薬、コルヒチン、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的な抗体等のモノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物並びに4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)が挙げられる。
【0122】
ACE阻害薬の例としては、限定するものではないが、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、カプトプリル、ベナゼプリル、トランドラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル及びエナラプリルが挙げられる。
【0123】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬の例としては、限定するものではないが、イルベサルタン及びロサルタンが挙げられる。
【0124】
他の薬物としては、限定するものではないが、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、γ−ヒリダン、モメタゾン、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、フェノフィブラート及びフェノフィブリン酸が挙げられる。
【0125】
具体的に列挙していない他の薬物もまた使用してもよい。薬物によっては上記カテゴリーの2つ以上に属する場合がある。上に列挙した薬物の、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ(co−drug)及びそれらの組合せもまた本発明の種々の実施形態に包含される。
【実施例】
【0126】
本項において提示する実施例は、単に本発明の例示として提供するものであって、いかなる形においても、本発明の範囲を制限することを意図するものでもなければ、そのように解釈されるべきものでも全くない。以下の各実施例は、コーティング可能な表面積が0.557cm2である、3mm×12mmのVISION(登録商標)(Abbott Cardiovascular Systems Inc.)ステントのコーティング、又はコーティングされたステントを用いた実験の結果に関する。
【0127】
実施例1
全てのステントを、イソプロピルアルコール中での超音波処理と、それに続くアルゴンガスプラズマによる処理により洗浄し、表面を調製した。噴霧により、2%(w/w)ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)の下塗りコーティングを、一連の工程で、アセトン/シクロヘキサノン(70/30)(w/w)から塗布した。80℃にて30分間焼いた後、ステント上に堆積した約50μgのPBMAが生じた。2%(w/w)PVDF−HFPを有し、エベロリムス(Novartis)とデキサメタゾン(Sigma、USP)との重量比が1:2、総薬物/ポリマー比(w/w)が1:4である薬物貯蔵層配合物を、アセトン/シクロヘキサノン(70/30)(w/w)中に作製した。この溶液を一連の噴霧−乾燥の工程でステントに塗布し、ステント上に、標的重量の薬物貯蔵層コーティングを得た(コーティング層は、コーティング機による複数回の工程を必要場合もある)。噴霧操作は、噴霧ノズル、乾燥ノズル、及び、表1に概要を示した処理パラメーターを用いて、ノズルの下でステントを回転及び並進させる手段を備えた特注の噴霧コーティング機で実施した。コーティングに続いて、全てのステントを、50℃にて60分間、強制空気対流式オーブンで焼いた。コーティングを焼いた後、ステントを、3.0×12mmのVISIONカテーテル上にクリンプし、管状保護コイル中に設置し、次いでTYVEK(商標)のポーチに封入した。95〜125°Fに調節した、60〜90分のサイクルの蒸気を用いるエチレンオキシド滅菌と、それに続く滞留時間が3時間のETO注入とにより、ステントを滅菌した。ETO滅菌の後、TYVEK(商標)のポーチをホイルポーチで更に包み、アルゴン下で熱封止した。
【0128】
【表1】
【0129】
総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図1A及び1Bは、直交偏光子を用いた反射モードで、それぞれ200倍及び500倍の倍率で撮影した、滅菌した後のコーティングされたステントの光学顕微鏡写真である。図1A及び1Bからわかるように、結晶化が顕著である。
【0130】
実施例2
2つの薬物がコーティングされたステントを、実施例1に記載の通り調製した。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図2A及び2Bは、滅菌する前のコーティングされたステントの、それぞれ200倍及び500倍の拡大図である。図2C及び2Dは、滅菌した後のコーティングされたステントを、それぞれ200倍及び500倍の倍率で撮影したものである。図2A〜2Dからわかるように、デキサメタゾンの結晶化が顕著であり、エチレンオキシド滅菌後に進行している。
【0131】
実施例3
コーティング層の塗布に用いた溶媒が100%アセトンであることを除き、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンの質量比は1:2であった。図3A及び3Bは、滅菌する前のコーティングされたステントを、それぞれ100倍及び200倍の倍率で撮影したものである。図3C及び3Dは、滅菌した後のコーティングされたステントの、それぞれ100倍及び200倍の拡大図である。図3A〜3Dからわかるように、デキサメタゾンの結晶化が顕著であり、エチレンオキシド滅菌後に進行している。
【0132】
図4は、5000倍の倍率で撮影した、実施例1のステントの表面のSEM顕微鏡写真である。図4からわかるように、デキサメタゾンの結晶は、本体部分のみならずコーティングの表面にも形成している。
【0133】
実施例4
ステントを、デキサメタゾンの代わりにデキサメタゾンアセテートを含むコーティング層でコーティングした。コーティング層の塗布用にアセトン/シクロヘキサノン70/30(w/w)の溶媒混合物を用いて、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。ステントをエチレンオキシドで滅菌した。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、エベロリムスとデキサメタゾンアセテートの質量比は、エベロリムス及びデキサメタゾンアセテートの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図5A及び5Bは、100倍の倍率で撮影した、ETO滅菌後の2つの異なるコーティングされたステントの、直交偏光子下の光学顕微鏡写真である。図5A及び5Bからわかるように、薬物結晶の数が著しく減少している。
【0134】
実施例5
ステントを、デキサメタゾンの代わりにデキサメタゾンアセテートを含み、エベロリムスの代わりにゾタロリムスを含むコーティング層でコーティングした。コーティング層の塗布用に100%アセトンの溶媒系を用いて、実施例1に記載の通り、ステントを洗浄し、下塗り剤でコーティングし、次いで薬物−ポリマー層でコーティングした。総薬物とポリマーの質量比は1:4であり、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの質量比は、ゾタロリムス及びデキサメタゾンアセテートの標的用量がそれぞれ100及び200μg/cm2であり、1:2であった。図6A及び6Bは、滅菌した後の2つの異なるコーティングされたステントの100倍の拡大図である。図6A及び6Bからわかるように、薬物結晶の数が著しく減少している。
【0135】
実施例6
多数のステントを、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの比、及び薬物とポリマーの比をいろいろと変えてコーティングした。小型のVISION(商標)12mmステントを用いた。全てのステントを洗浄し、次いでプラズマ処理にかけた。ステントを、2%(w/w)ポリマーの2−ブタノン溶液からの噴霧により、約51μgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の下塗り層でコーティングした。標的重量のステント上のポリマーを得るためには、コーティング機による2回以上の工程が必要であった。噴霧操作は、表2に概要を示した処理パラメーターを用いて、実施例1に記載の通り実施した。コーティングに続き、全てのステントを、80℃にて30分間強制空気対流式オーブンで焼いた。
【0136】
【表2】
【0137】
オーブンから取り出し計量した後、ステントを、PDVF−HFPとゾタロリムス(Abbott Labs)とデキサメタゾンアセテート(AK Scientific、USPグレード)との、ポリマーの溶液でコーティングした。薬物の用量及び薬物対ポリマー比は試験群によって変わり、その標的比をまとめたものを表3に示す。噴霧操作は、表4に概要を示したパラメーターを用いて、下塗り剤の噴霧操作の場合と同様の方法で行った。標的重量のステント上のポリマー及び薬物を得るためには、コーティング機による2回以上の工程が必要であった。薬物層コーティングの後、ステントを、50℃にて60分間強制空気対流式オーブンで焼いた。反射率偏光顕微鏡法により、薬物コーティングされた全てのユニットの、表面欠陥、及びオーブンで焼いた後のデキサメタゾンアセテートの結晶化を検査した。総薬物量及び薬物放出速度等の分析アッセイに用いたステントのいくつかは、分析する前に更なる処理工程にかけられることはなかった。
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
コーティングを焼いた後、ステントを、3.0×12mmのVISIONカテーテル上にクリンプし、管状保護コイル中に設置し、次いでTYVEK(商標)のポーチに封入し、エチレンオキシドで滅菌した(「ETO滅菌した」)。ユニットをエチレンオキシドで滅菌した後、アルゴンを充填したホイルポーチで更に包んだ。滅菌したステントのうち、いくつかは動物試験に用い、いくつかは分析アッセイ用に用いた。ステントをコーティングし、2つの異なるバッチ処理(前臨床ビルド)で処理した。
【0141】
溶出溶媒としてアジ化ナトリウム0.1%(w/v)を加えたブタ血清において、ゾタロリムスとデキサメタゾンアセテートの両方の累積放出を、米国薬局方VII型テスターを用いて求めた。表示されている累積放出は、ステント上に残っている薬物の端数量を1ステント当たりの薬物の理論量で割り、それを1から引いたものである。放出速度試験の前に、各群からのステントの総薬物量を分析した。各ステントについて、実際の薬物貯蔵層コーティングの重量を用いて、薬物である薬物貯蔵層の割合を算出した。いくつかのステントから算出した値を平均した。この薬物である薬物貯蔵層の割合にステントの貯蔵層コーティングの重量を掛けると、薬物の理論上の重量測定量が得られる。次に、薬物貯蔵層コーティングの重量を基にした放出速度試験を行った各ステントについて、この薬物の理論上の重量測定量を算出した。
【0142】
総薬物量及び累積放出についての分析アッセイ結果をまとめたものを、それぞれ表5及び6に示す。表5からわかるように、エチレンオキシドによる滅菌後に総薬物量がわずかに減少している。
【表5】
【0143】
以下の表6では、いくつかのステントコーティングについては、両方の薬物の制御放出が得られたことが示されている。
【表6】
【0144】
図7は、ゾタロリムス35μg/cm2とデキサメタゾンアセテート70μg/cm2とで総薬物用量105μg/cm2の場合の、群1のステントからのデキサメタゾンアセテート及びゾタロリムス両方についての累積放出プロファイルを表したものである。
【0145】
実施例7
実施例6でコーティングしたステントを前臨床ブタ安全性試験に用いた。6つの試験群では、実施例6で群1〜6として概要を示したステントを用いた。群7は対照であって、用量が100μg/cm2であり、放出率が28日目で約80%であるエベロリムス溶出VISION(登録商標)冠動脈ステントである。試験には、家畜豚(「ブタ」)に、コーティングされたステントを動物1頭当たり3つ埋め込むことが含まれ、それぞれ冠状動脈内に設置する。埋め込みの継続期間は28日間であった。28日間の後、動物を安楽死させ、組織病理学アッセイを行った。
【0146】
図8は、試験の7群についての狭窄率を示したものである。ここで示されているデータには、処理アーティファクトは含まれていない。群6を除き全ての群について、対照と比較しての統計的差異(p値0.05以下)が存在することがデータからわかる。
【0147】
図9及び10は、試験群についての炎症スコア及び肉芽腫率を示したものである。図9には、処理アーティファクトを除き全てのデータが含まれている。処理アーティファクトを除くことに加えて、重篤な肉芽腫を有するステントを除いた場合、エベロリムスのみの対照群は、炎症スコアにおいて、二重薬物群と比較しての統計的差異は示さない。図9のデータに関して、内膜の炎症スコアについて7つの群の間に統計的差異は存在しない。しかしながら、外膜の炎症スコアについては、群A1、A3及びA5対対照群で統計的有意性に達した(p値0.00833を用いるウィルコクソン/クラスカルワリスサブグループ解析に基づく)。図10からわかるように、肉芽腫率はエベロリムスのみの対照群が最も高い。これらの肉芽腫の割合は、必ずしも他の動物種や臨床環境に当てはまるものではない。肉芽腫は、ウサギ等の他の動物種よりもブタにおいてはるかによく見られる。しかしながら、肉芽腫の割合が最も高いのはいずれの抗炎症薬も含まない対照群であることから、抗炎症薬であるデキサメタゾンを含めることの効果が明らかに示されている。
【0148】
本発明の特定の実施形態について説明及び記載してきたが、より広い態様において、本発明から逸脱することなく変更及び改変が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内にあるような全ての変更例及び改変例を、その範囲内に包含するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を有するデバイス本体と、
コーティングであって、
前記表面上に配置された1つ又は複数のコーティング層、
疎水性ポリマー、
オリムス薬、及び
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体
を含み、コーティング中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体が実質的に非晶質である、コーティングと
を含む医療デバイス。
【請求項2】
オリムス薬の用量が約10〜約600μg/cm2であり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量が10〜約600μg/cm2である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
1つのコーティング層がオリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量比が約1:1〜約1:4である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
埋め込み型医療デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
埋め込み型医療デバイスがステントである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
カテーテルバルーンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
疎水性ポリマーがフッ素ポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
疎水性ポリマーが、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むフッ素ポリマーである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項10】
疎水性ポリマーがPVDF−HFPである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項11】
オリムス薬が、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス及びAP23572からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せであり、
【化1】
式中、R1は、
【化2】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、(C1〜C16)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、フェニル、エステル、カーボネート、エーテル及びケトンからなる群より選択され、
ここで、
シクロアルキル又はフェニル環上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、アルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよく、
R2上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、塩素、フッ素又はそれらの組合せで置換されていてもよく、
R2中の炭素原子の総個数は16以下である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せであり、
【化3】
式中、R1は、
【化4】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートからなる群より選択される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンパルミテート、デキサメタゾンジエチルアミノアセテート、デキサメタゾンイソニコチネート、デキサメタゾンtert−ブチルアセテート、デキサメタゾンテトラヒドロフタレート及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体がデキサメタゾンアセテートである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
疎水性ポリマーがPVDF−HFPであり、オリムス薬がシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス、AP23572及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
オリムス薬の累積薬物放出量が、24時間の時点でオリムス薬総含量の50%以下である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾン誘導体若しくは類似体薬物総含量の50%以下である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
請求項1のデバイスを、それを必要とする患者に埋め込むことを含む、患者の病態を治療する方法。
【請求項20】
病態が、再狭窄、アテローム性動脈硬化、血栓症、出血、血管の解離若しくは穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、(静脈及び人工グラフトに対する)吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医療デバイスが埋め込み型医療デバイスである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
埋め込み型医療デバイスがステントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オリムス薬がゾタロリムスであり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体がデキサメタゾンアセテートである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ゾタロリムスの累積薬物放出量が、24時間の時点でゾタロリムス総含量の50%以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
外表面を有するデバイス本体と、
コーティングであって、
前記表面上に配置された1つ又は複数のコーティング層、
疎水性ポリマー、
オリムス薬、及び
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体
を含み、コーティング中のデキサメタゾン誘導体若しくは類似体が実質的に非晶質である、コーティングと
を含む医療デバイス。
【請求項2】
オリムス薬の用量が約10〜約600μg/cm2であり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の用量が10〜約600μg/cm2である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
1つのコーティング層がオリムス薬及びデキサメタゾン誘導体若しくは類似体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
オリムス薬とデキサメタゾン誘導体若しくは類似体の質量比が約1:1〜約1:4である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
埋め込み型医療デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
埋め込み型医療デバイスがステントである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
カテーテルバルーンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
疎水性ポリマーがフッ素ポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
疎水性ポリマーが、少なくとも25重量%のフッ化ビニリデンを含むフッ素ポリマーである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項10】
疎水性ポリマーがPVDF−HFPである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項11】
オリムス薬が、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス及びAP23572からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せであり、
【化1】
式中、R1は、
【化2】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、(C1〜C16)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、フェニル、エステル、カーボネート、エーテル及びケトンからなる群より選択され、
ここで、
シクロアルキル又はフェニル環上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、アルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよく、
R2上のいずれかの1個又は複数の水素原子は、塩素、フッ素又はそれらの組合せで置換されていてもよく、
R2中の炭素原子の総個数は16以下である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、以下の式の化合物、又は以下の式で表される化合物のいずれかの組合せであり、
【化3】
式中、R1は、
【化4】
からなる群より選択されてもよく、
式中、R2は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル、ベンジル、ペンタデカン(C15H31)、テトラヒドロフタレート、4−ピリジニウム、ジエチルアミノメチレン及びメタスルホベンゾエートからなる群より選択される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体が、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンパルミテート、デキサメタゾンジエチルアミノアセテート、デキサメタゾンイソニコチネート、デキサメタゾンtert−ブチルアセテート、デキサメタゾンテトラヒドロフタレート及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体がデキサメタゾンアセテートである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
疎水性ポリマーがPVDF−HFPであり、オリムス薬がシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、ノボリムス、テムシロリムス、AP23572及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
オリムス薬の累積薬物放出量が、24時間の時点でオリムス薬総含量の50%以下である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
デキサメタゾン誘導体若しくは類似体の累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾン誘導体若しくは類似体薬物総含量の50%以下である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
請求項1のデバイスを、それを必要とする患者に埋め込むことを含む、患者の病態を治療する方法。
【請求項20】
病態が、再狭窄、アテローム性動脈硬化、血栓症、出血、血管の解離若しくは穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、(静脈及び人工グラフトに対する)吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医療デバイスが埋め込み型医療デバイスである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
埋め込み型医療デバイスがステントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オリムス薬がゾタロリムスであり、デキサメタゾン誘導体若しくは類似体がデキサメタゾンアセテートである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ゾタロリムスの累積薬物放出量が、24時間の時点でゾタロリムス総含量の50%以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
デキサメタゾンアセテートの累積薬物放出量が、24時間の時点でデキサメタゾンアセテート総含量の50%以下である、請求項23に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−504018(P2012−504018A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529111(P2011−529111)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/057033
【国際公開番号】WO2010/036537
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/057033
【国際公開番号】WO2010/036537
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]