説明

デジタルアンプ

【課題】出力電流の過電流及び共振電流の検出時間を短くするとともに、出力の停止を最小限にし、より適切な電流制御動作を可能にする。
【解決手段】デジタルアンプは、スイッチング素子Q1、Q2の出力部において、出力電流における所定値以上の過電流を検出する過電流検出回路19と、過電流検出信号の位相を進める進相回路22と、出力フィルタ15において共振が発生した際の出力電流に関する所定値以上の共振電流を検出する共振電流検出回路21とを有する。駆動回路12は、過電流検出信号または共振電流検出信号に基づき、出力電流の異常状態が検出された場合に、駆動信号をオフしてスイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作を停止させることで、電流制限動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力段のスイッチング素子をスイッチング動作させて入力信号をD級増幅するデジタルアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルアンプは、アナログの入力信号をPWM(Pulse Width Modulation)変換によりデジタルパルス信号に変換し、このデジタルパルス信号によってFET等の能動素子(スイッチング素子)をスイッチング動作させることにより、電力増幅(D級増幅)を行う。そして、電力増幅後のデジタルパルス信号をLC回路のローパスフィルタに通過させることで、源信号を電力増幅したアナログの出力信号を得る。
【0003】
この種のデジタルアンプは、負荷側での過電流、共振等が発生した場合に、出力段のスイッチング素子等の増幅回路を保護する機能を備えている。例えば、負荷ショートなどによって過電流状態となったときは、アンプ出力部に設けたリレー等で出力を遮断してスイッチング素子を保護する。また、デジタルアンプに接続されるスピーカが少ない場合など、軽負荷時(高インピーダンス時)には、アンプ出力部のローパスフィルタにおいて共振が発生し、この共振現象のために増幅回路が破壊されるおそれがある。このような共振現象によるデジタルアンプの破壊を防ぐために、軽負荷時の共振電流を検出し、過大な共振電流が流れた場合に入力信号をミュートすることによって増幅回路を保護する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような構成では、軽負荷時の共振電流が検出されて直ぐに入力信号をミュートするようにすると、次に正常動作に復帰する場合に、PWM回路における動作の初期化のため、デジタルアンプの立ち上げに時間を要するという課題があった。この場合、入力信号のミュートにより出力(音声など)が停止してしまう。
【0006】
また、デジタルアンプの回路保護のために、増幅回路の出力電流を制限するアナログ回路による電流リミッタを搭載する構成も考えられる。このような構成では、電流リミッタの制御に位相遅れが生じて、電流制限動作が間に合わない場合がある。また、この制御遅れを想定して電流リミッタ制御を行うようにすると、電流リミッタ制御が機能する時間が早過ぎたり頻度が増加し、容易に出力を遮断してしまう不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、出力電流の異常を検出する時間を短縮し、出力をできるだけ停止させることなく、異常時に増幅回路を保護することが可能なデジタルアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入力信号をD級増幅するデジタルアンプであって、前記入力信号のデジタルパルス信号に基づく駆動信号によってスイッチング動作するスイッチング素子と、前記駆動信号を前記スイッチング素子に供給する駆動回路と、前記スイッチング素子の出力部に接続されるローパスフィルタを含む出力フィルタと、前記スイッチング素子の出力部に設けられ、前記スイッチング素子からの出力電流の異常状態を検出して異常状態検出信号を出力する異常状態検出部とを備え、前記異常状態検出部は、前記異常状態検出信号の位相を進める進相機能を有し、前記駆動回路は、前記異常状態検出信号に基づき、出力電流の異常状態が検出された場合に、前記駆動信号をオフして前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるデジタルアンプを提供する。
上記構成により、異常状態検出時に駆動回路からの駆動信号をオフしてスイッチング素子のスイッチング動作を停止させることで、入力信号をオフする、出力信号を遮断する等の動作を行うことなく、電流制限動作が可能である。また、異常状態検出部の進相機能によって異常状態検出信号の位相遅れを解消または低減することが可能である。したがって、出力電流の異常を検出する時間を短縮し、出力をできるだけ停止させることなく、異常時に増幅回路を保護することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記異常状態検出部は、前記スイッチング素子からの出力電流における所定値以上の過電流を検出し、前記異常状態検出信号として過電流検出信号を出力する過電流検出回路と、前記過電流検出信号の位相を進める進相回路とを有するものを含む。
上記構成により、出力電流の異常状態として、スイッチング素子からの出力電流における所定値以上の過電流を検出した場合に、駆動信号をオフしてスイッチング素子のスイッチング動作を停止させ、電流制限を行うことが可能である。この場合、過電流発生時に高速に電流制限動作が可能であり、出力をできるだけ停止することなく、スイッチング素子を含む増幅回路を保護することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記異常状態検出部は、前記出力フィルタにおいて共振が発生した際の出力電流に関する所定値以上の共振電流を検出し、前記異常状態検出信号として共振電流検出信号を出力する共振電流検出回路を有するものを含む。
上記構成により、出力電流の異常状態として、出力フィルタにおいて共振が発生した際の出力電流に関する所定値以上の共振電流を検出した場合に、駆動信号をオフしてスイッチング素子のスイッチング動作を停止させ、電流制限を行うことが可能である。この場合、出力部での共振発生時に高速に電流制限動作が可能であり、可聴域の出力に影響を及ぼすことなく、スイッチング素子を含む増幅回路を保護することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記スイッチング素子またはその周囲の温度を検出する温度検出部と、前記スイッチング素子の出力を遮断する出力遮断部と、前記入力信号を所定レベル以下の無音状態または微小状態にする入力信号ミュート部と、前記出力遮断部と前記入力信号ミュート部とを連動させる連動制御部とを備え、前記連動制御部は、前記温度検出部により所定値以上の高温状態が検出された場合に、前記出力遮断部及び前記入力信号ミュート部を連動させて作動させるものを含む。
上記構成により、スイッチング素子またはその周囲の温度が所定値以上の高温状態となった場合に、出力遮断部と入力信号ミュート部とを連動させて作動させることで、スイッチング素子の入力と出力の双方を停止してスイッチング素子を保護することが可能である。この場合、スイッチング素子の出力を遮断すると無負荷状態となって出力フィルタにおいて共振が発生しやすい状態となるが、入力信号のミュートを行うことで、出力フィルタでの共振を防止することが可能である。
【0012】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記駆動回路は、前記異常状態検出信号に基づき、前記出力電流が所定値以上の場合に前記駆動信号をオフして前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止するとともに、前記出力電流が所定値未満となった場合に前記駆動信号をオンして前記スイッチング素子のスイッチング動作を再開する制御を繰り返し行うことで、前記スイッチング素子の電流制限動作を行うものを含む。
上記構成により、スイッチング動作の停止/再開を繰り返して電流制限動作を行うことで、スイッチング素子の動作をできる限り継続して出力を停止することなく、スイッチング素子を含む増幅回路を保護することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記駆動回路は、前記スイッチング素子の電流制限動作を行う際に、前記デジタルパルス信号の基準発振周波数の1周期単位または1周期単位内の任意のタイミングで前記駆動信号をオン/オフさせるものを含む。
上記構成により、過電流の発生または共振電流の発生などの異常状態が検出されたときに、入力信号のデジタルパルス信号の基準発振周波数に応じて高速にリアルタイムな電流制限動作が可能であり、出力をできるだけ停止することなく、スイッチング素子を含む増幅回路を保護することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記のデジタルアンプであって、前記共振電流検出回路の共振電流検出信号が所定時間継続して出力されていることを判断するとともに前記所定時間継続していた場合にその旨の信号を出力する制御部を有した構成である。
上記構成により、拡声システムのシステム発振を検出することができるとともに、拡声システムの使用者にシステム発振が発生していることを知らせることができるため、ミキサ、デジタルアンプまたはスピーカ等の故障を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、出力電流の異常を検出する時間を短縮し、出力をできるだけ停止させることなく、異常時に増幅回路を保護することが可能なデジタルアンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタルアンプの構成を示す回路図
【図2】本実施形態に係るデジタルアンプの具体的な構成例を示す回路図
【図3】デジタルアンプとアナログアンプの熱設計基準の比較を示す出力特性図
【図4】本実施形態の電流制限回路によるアンプ動作時の波形を示す動作波形図
【図5】本実施形態の電流制限回路における進相回路の有無による出力電流波形の比較図
【図6】デジタルアンプの基本構成を示す回路図
【図7】アンプ出力部のローパスフィルタにおいて共振が発生した場合の増幅回路のゲイン−周波数特性図
【図8】本実施形態に係るデジタルアンプの回路保護機能に関する第1の動作例を示すフローチャート
【図9】本実施形態に係るデジタルアンプの回路保護機能に関する第2の動作例を示す状態遷移図
【図10】本実施形態に係るデジタルアンプを用いた拡声システムを示す図
【図11】本発明の他の実施形態に係るデジタルアンプの構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施形態では、本発明に係るデジタルアンプの一例として、出力段のスイッチング素子にFETを使用し、負荷にスピーカを接続して、音声信号の増幅を行うデジタルアンプの構成例を示す。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るデジタルアンプの構成を示す回路図である。本実施形態のデジタルアンプは、PWM回路11、駆動回路12、スイッチング素子Q1、Q2を備えて構成される。スイッチング素子Q1、Q2は、NチャネルのMOSFET等からなり、ドレイン−ソース間が互いに直列接続されて一対のスイッチング素子を構成する。このスイッチング素子Q1、Q2は、ゲートへの駆動信号の入力に応じて交互にスイッチング動作し、入力信号の電力増幅を行う。この際、スイッチング素子Q1のドレインに電圧+VBが、スイッチング素子Q2のソースに電圧−VBがそれぞれ印加され、ゲート電圧に応じてスイッチング素子Q1、Q2がオン/オフする。なお、スイッチング素子は、FETに限らず、バイポーラトランジスタなどの他のスイッチング動作可能な素子であってもよい。
【0019】
PWM回路11は、入力信号のPWM変換を行って入力信号レベルに応じたパルス幅を持つデジタルパルス信号を出力する。駆動回路12は、PWM回路11から出力されるデジタルパルス信号に基づいてスイッチング素子Q1、Q2を駆動するもので、スイッチング素子Q1、Q2のゲートに対してそれぞれ駆動信号を出力する。
【0020】
スイッチング素子Q1、Q2の出力部には、コイル13及びコンデンサ14により構成されるローパスフィルタを含む出力フィルタ15が接続されている。この出力フィルタ15の出力端には、出力遮断部の一例として出力信号経路を開閉するリレー16が接続され、リレー16を介して負荷であるスピーカ17が接続されている。なお、出力遮断部は、リレーを用いることが多いが、他のスイッチ手段であってもよい。
【0021】
アナログの音声信号の入力信号は、PWM回路11でデジタルパルス信号に変換され、駆動回路12に入力される。このデジタルパルス信号に基づき、駆動回路12よりスイッチング素子Q1、Q2のゲートに駆動信号が入力され、駆動信号によってスイッチング素子Q1、Q2がスイッチング動作する。スイッチング素子Q1、Q2の出力部より出力される電力増幅されたデジタルパルス信号は、出力フィルタ15によりアナログ信号に変換され、電力増幅されたアナログの音声信号として出力されてスピーカ17に供給される。この出力信号によってスピーカ17が駆動され、音が放出される。
【0022】
また、アンプ出力部の出力フィルタ15のコイル13には、直列に検出抵抗18が接続され、検出抵抗18の両端電圧によりコイル13に流れる電流を検出し、負荷に流れる過電流を検出する過電流検出回路19が設けられている。さらに、コンデンサ14には直列に検出抵抗20が接続され、検出抵抗20の両端電圧によりコンデンサ14に流れる電流を検出し、出力フィルタ15において発生する共振電流を検出する共振電流検出回路21が設けられている。
【0023】
過電流検出回路19の出力端には、過電流検出信号の位相を進める進相回路22が接続され、この進相回路22を介して駆動回路12と接続されている。共振電流検出回路21の出力端も駆動回路12と接続されている。過電流検出回路19は、過電流検出値が所定値以上となった場合に、異常状態検出信号としてハイレベルの過電流検出信号を出力する。共振電流検出回路21は、共振電流検出値が所定値以上となった場合に、異常状態検出信号としてハイレベルの共振電流検出信号を出力する。なお、過電流検出回路19と進相回路22を別回路とせずに、同一の回路ブロックで構成することももちろん可能である。この場合は、検出抵抗18の両端の電圧を図示しないオペアンプにより検出し、この検出波形の位相を進めてから図示しないコンパレータで所定値と比較することで過電流を検出するものである。また、共振電流検出回路21も進相回路以外の回路構成は上述の過電流検出回路19と同様の回路構成で実現できる。
【0024】
駆動回路12は、過電流検出回路19からの過電流検出信号、または共振電流検出回路21からの共振電流検出信号が入力された場合、動作を停止してスイッチング素子Q1、Q2に供給する駆動信号をオフする。これにより、スイッチング素子Q1、Q2のゲート電圧が所定値未満となり、双方ともにオフとなる。スイッチング素子Q1、Q2は、通常のスイッチング動作時には、例えば400kHzなどの基準発振周波数の周期で交互にオン/オフする。これに対し、駆動信号がオフのときは双方がオフとなり、そのオフ期間は出力電流が流れない。上記の過電流検出回路19、進相回路22、共振電流検出回路21、駆動回路12によって、本実施形態における異常時のスイッチング素子Q1、Q2の電流制限を行う電流制限回路(電流リミッタ)が構成される。
【0025】
PWM回路11の入力側には、入力信号ミュート部23が設けられている。入力信号ミュート部23は、ミュート回路24と、バイパス回路25と、これらを切り替えるスイッチ26、27とを有しており、外部からの制御信号に応じてミュート回路24またはバイパス回路25を入力信号経路に接続する。ミュート回路24は、入力信号を所定レベル以下に減衰させるもので、入力信号を無音状態または微小状態にする機能を有する。
【0026】
また、スイッチング素子Q1、Q2の近傍には、スイッチング素子Q1、Q2またはその周囲の温度を検出する温度検出部28が設けられている。温度検出部28の出力端は、リレー16及び入力信号ミュート部23を連動制御する連動制御部29に接続されている。連動制御部29は、温度検出部28による温度検出値が所定値以上の場合に、リレー16及び入力信号ミュート部23に制御信号を出力してこれらを連動させて作動させ、リレーオフ及び入力信号ミュートを実行する。これにより、スイッチング素子Q1、Q2に対する入出力がオフされる。
【0027】
図2は本実施形態に係るデジタルアンプの具体的な構成例を示す回路図である。図2は、駆動回路及び進相回路の具体的な構成の一例を示したものである。駆動回路31は、反転回路32、フォトカプラ33、34、ドライバ35、36、スイッチ素子37、NOR回路38を有して構成される。PWM回路11の出力端には、一方のフォトカプラ33のLEDが直接接続され、他方のフォトカプラ34のLEDが反転回路32を介して接続されている。フォトカプラ33、34のフォトトランジスタには、それぞれドライバ35、36が接続されている。このような構成により、PWM回路11から出力されるデジタルパルス信号に基づいて、フォトカプラ33、34のうちの一方がオンし、他方がオフすることで、ドライバ35、36に対して交互にハイレベルの信号が供給される。ドライバ35、36は、フォトカプラ33、34からの入力信号に応じて交互にスイッチング素子Q1、Q2に対して駆動信号を供給することで、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオン/オフするようスイッチング動作させる。なお、ここではフォトカプラ及びスイッチ素子等を用いた構成例を示しているが、他のスイッチ手段によって駆動信号をオン/オフする構成を用いることも可能である。
【0028】
また、フォトカプラ33、34のLEDの他端は、スイッチ素子37を介して接地されている。スイッチ素子37の制御入力端には、進相回路41を介した過電流検出回路19からの過電流検出信号、または共振電流検出回路21からの共振電流検出信号がNOR回路38を介して供給される。スイッチ素子37は、制御入力端にハイレベルが入力された場合にオンして導通し、ローレベルが入力された場合にオフしてオープンとなる。この場合、過電流検出信号と共振電流検出信号の少なくとも一方がハイレベルとなったときに、スイッチ素子37がオフし、フォトカプラ33、34の双方のLEDがオフになる。したがって、過電流検出回路19及び共振電流検出回路21によって所定値以上の過電流または共振電流が検出されたときに、駆動回路31の動作を停止し、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作を停止できる。
【0029】
進相回路41は、直列接続されたコンデンサ42及び抵抗43を有し、抵抗44を介して接地されたCR移相回路により構成される。この進相回路41は、コンデンサ42によって過電流検出信号を進相し、駆動回路31に供給する。なお、進相回路はCR移相回路に限らず、LC移相回路などの他の構成を用いてもよい。この進相回路41により、出力電流の過電流を検出してフィードバックする系統において生じる、過電流検出信号の位相遅れを解消または低減することができる。過電流検出信号の位相遅れは、主に出力フィルタ15及び過電流検出回路19における定数、周波数特性などに起因して生じるものであり、例えば、約10μsec 程度である。ここで、進相回路における位相の進相度合は、出力電流の異常状態を検出して駆動信号をオフするまでの系統全体における信号の遅れを加味した時間分とするのがより好ましい。なお、共振電流検出回路21は、出力フィルタ15のコンデンサ14によって進相機能を有しているため、特に進相回路を設ける必要はない。このように進相機能を持つ回路を設けることによって、過電流状態の検出時間を短くし、過電流に対する回路保護動作の応答特性を向上することができる。
【0030】
ここで、デジタルアンプの熱設計基準について説明する。図3はデジタルアンプとアナログアンプの熱設計基準の比較を示す出力特性図である。図3のグラフにおいて、横軸は出力、縦軸は損失を示している。デジタルアンプは、アナログアンプと比較して出力全域にわたって損失が少ないが、出力に対する損失がほぼリニアであり、出力が増加する(出力電流が増大する)に従って損失が増大する。つまり、デジタルアンプの損失は(通常使用時)≪(異常時)となる。これに対し、アナログアンプは、損失が(通常使用時)≒(異常時)であり、異常時の損失が大きくなったとしても通常使用時とあまり大きな差は生じない。アンプの熱設計基準は、通常使用時の損失に基づいて設定するのが一般的であり、この熱設計基準に基づいてヒートシンクサイズ等を決定する。アナログアンプでは、通常使用時において熱設計をしておけば、異常時を考慮しなくともあまり問題は生じない。しかし、デジタルアンプでは、異常時を十分考慮して熱設計を行わないと、増幅回路の故障を招くなどの不具合が生じることがある。
【0031】
ただし、異常時を考慮してヒートシンクを大型化することはデジタルアンプの設計上好ましくないため、ここでは電流制限回路を設けて過電流発生時の電流リミッタ制御を行う構成を採用する場合を想定する。本実施形態では、過電流検出及び共振電流検出によって駆動回路を停止することで電流リミッタ制御を行い、さらに過電流検出回路に進相回路を追加して過電流検出信号の位相遅れを補償する構成を備えている。これにより、デジタルアンプの負荷において過電流または共振電流が発生したときに、出力電流の異常を検出する時間を短縮し、出力をできるだけ停止させることなく、異常時の出力電流を制限する電流リミッタ制御を行うことができる。
【0032】
次に、過電流発生時の電流制限動作について詳細に説明する。図4は本実施形態の電流制限回路によるアンプ動作時の波形を示す動作波形図である。図4において、電流リミット値は、過電流検出回路19において異常状態を検出する所定値に基づく電流制限用閾値の電流値である。負荷の異常等によって出力電流値がこの電流リミット値以上となった場合に、駆動回路12の動作が停止し、それ以上の出力電流が流れないようにしている。ここで、出力電流値が所定値以上となった場合、駆動回路12が駆動信号をオフし、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作を停止する。ここで、出力電流値が所定値以上となっている状態では、駆動回路12の動作停止が継続する。その後、出力電流値が所定値未満となった場合、駆動回路12が駆動信号をオンし、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作を再開する。
【0033】
したがって、異常状態が検出されて電流制限動作が行われるときは、電流制限回路による電流リミッタ制御として、デジタルアンプの基準発振周波数(デジタルパルス信号の基準発振周波数、スイッチング素子のスイッチング周波数…例えば400kHz)の1周期単位で、駆動回路12がリアルタイムに駆動信号のオン/オフ制御を行うことになる。これにより、スイッチング素子Q1、Q2は、スイッチング動作の開始(一方がオン)/停止(双方がオフ)が繰り返される。このとき、図4中の拡大図に示すように、基準発振周波数の1周期単位で(例えば周期T毎に)鋸歯状に出力電流が変動して、電流値が所定値未満に制限される。したがって、スイッチング素子Q1、Q2からの出力を停止することなく、スイッチング動作をできる限り継続しながら、スイッチング素子を含む増幅回路を保護することが可能となる。なお、駆動信号のオン/オフ制御は1周期単位ではなく、1周期内の任意のタイミングでオン/オフ制御することももちろん可能である。
【0034】
図5は本実施形態の電流制限回路における進相回路の有無による出力電流波形の比較図であり、(A)は進相回路を設けない場合、(B)は進相回路を設けた場合のそれぞれの動作波形を示している。図5(A)の進相回路を設けない場合では、過電流検出信号の位相遅れによって電流制限動作の開始が遅れてしまう。スイッチング素子Q1、Q2は、基準発振周波数に基づいて(例えば400kHzの場合は2.5μsec 毎に)スイッチング動作するため、過電流検出信号の位相遅れがあると直ちにスイッチング動作をオフできず、リアルタイムの電流制限ができない。この場合、符号αで示すように、過電流発生から少しの期間は出力電流が電流リミット値をオーバーするため、異常状態が継続すると増幅回路の故障等を招くおそれがある。この位相遅れを考慮して電流リミット値を下げてしまうと、早めに出力が停止してしまったり、頻繁に電流制限動作が作動してしまうなどの不具合が生じる。これに対し、図5(B)の進相回路を設けた場合(本実施形態)では、過電流検出時間を短くでき、スイッチング動作に対して電流制限動作の開始が遅れることを防止でき、リアルタイムの電流制限が可能である。この場合、符号βで示すように、過電流発生当初から出力電流が電流リミット値以上となることなく、確実に電流制限をかけることができる。
【0035】
次に、共振電流発生時の電流制限動作について詳細に説明する。図6はデジタルアンプの基本構成を示す回路図、図7はアンプ出力部のローパスフィルタにおいて共振が発生した場合の増幅回路のゲイン−周波数特性図である。デジタルアンプは、基本構成として、入力信号源51、増幅回路52、ローパスフィルタ53、スピーカ等の負荷54を有する構成となる。負荷54が軽負荷または無負荷の場合(負荷抵抗RLが小さい場合)には、ローパスフィルタ53のコイルLとコンデンサCによるLC共振回路が共振して増幅回路52が発振することがある。通常、このような共振が発生する共振周波数fRは、ローパスフィルタ53の定数に基づき、可聴域を超えた20kHzより高い周波数となる。本実施形態では、共振電流発生時の出力電流値が所定値以上となると駆動回路の動作を停止し、共振電流を抑制するようにしている。この場合、可聴域の周波数の過電流については、過電流検出による電流リミッタが動作して電流制限が行われ、可聴域を超える周波数の共振電流については、共振電流検出による電流リミッタが動作して共振電流抑制が行われることになる。
【0036】
ここで、共振電流発生時の電流制限動作は、上記の過電流発生時の電流制限動作と同様、リアルタイムで電流制限が行われる。このため、可聴域の出力に影響を及ぼすことなく、共振電流を抑制することができる。よって、負荷の異常によって共振が発生した場合でも、出力をできるだけ停止させることなく、共振電流を抑制することができる。
【0037】
図8は本実施形態に係るデジタルアンプの回路保護機能に関する第1の動作例を示すフローチャートである。第1の動作例では、デジタルアンプの動作時において、過電流検出回路19による出力段の過電流検出、及び共振電流検出回路21による出力段の共振電流検出を行い(S11)、過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となったかどうかによって過電流/共振電流発生時の回路保護動作の有無が切り替わる(S12)。出力電流に異常がなく、所定値以上の過電流または共振電流が検出されない場合は、S11〜S12の動作が繰り返される。
【0038】
過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となり、出力電流の異常状態が検出された場合、過電流検出信号または共振電流検出信号がハイレベルとなって駆動回路12の動作が停止し、スイッチング素子Q1、Q2を共にオフする(S13)。その後、過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となったかどうかによって駆動回路12の動作再開の有無が切り替わる(S14)。ここで、過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となった場合は、駆動回路12の動作停止が継続する。過電流検出値及び共振電流検出値が所定値未満となった場合、過電流検出信号及び共振電流検出信号がローレベルとなって駆動回路12の動作が再開し、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作を再開する(S15)。
【0039】
また、デジタルアンプの動作時には、温度検出部28によるスイッチング素子Q1、Q2の温度検出値が所定値以上となったかどうかによって異常高温時の回路保護動作の有無が切り替わる(S16)。スイッチング素子Q1、Q2の温度検出値が所定値未満で、異常高温状態でない場合は、S11〜S16の動作が繰り返される。
【0040】
出力電流の異常状態が継続するなどして、スイッチング素子Q1、Q2が過大に発熱して異常高温状態となり、温度検出値が所定値以上となった場合、連動制御部29の制御によってリレー16及び入力信号ミュート部23が連動して作動し、リレーオフ及び入力信号ミュートが実行される(S17)。
【0041】
リレー16をオフして出力信号経路を遮断したときは、負荷が切り離されて無負荷状態となるため、より共振が発生しやすくなる。本実施形態では、共振発生時にも駆動回路12及びスイッチング素子Q1、Q2が間欠的に動作して電流制限を行う構成のため、共振状態が継続するとスイッチング素子Q1、Q2が異常に高温になって破壊されるおそれがある。このため、リレー16及び入力信号ミュート部23を連動制御してリレーオフ及び入力信号ミュートを同時に行うことで、入出力の双方をオフして共振を防止できる。
【0042】
なお、図8のフローチャートでは、スイッチング素子の温度検出(S16)をフローの最後に設けたが、スタート直後に設けても良い。これはスイッチング素子Q1、Q2が初期デバイス不良などで発熱していた場合に、異常電流検出を行うことなく速やかに回路動作を停止できるため有効である。
【0043】
図9は本実施形態に係るデジタルアンプの回路保護機能に関する第2の動作例を示す状態遷移図である。第2の動作例では、デジタルアンプの動作時において、過電流検出回路19による出力段の過電流検出と共振電流検出回路21による出力段の共振電流検出(S21)、並びに、温度検出部28によるスイッチング素子Q1、Q2の温度検出(S22)が行われる。過電流検出値及び共振電流検出値が所定値未満で正常の場合は、S21の過電流検出及び共振電流検出が繰り返される。温度検出値が所定値未満で正常の場合は、S22の温度検出が繰り返される。
【0044】
過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となった場合、過電流検出信号または共振電流検出信号がハイレベルとなって駆動回路12の動作が停止し、スイッチング素子Q1、Q2をオフする(S23)。そして、引き続き過電流検出及び共振電流検出が行われる(S24)。ここで、過電流検出値または共振電流検出値が所定値以上となった場合は、S24の過電流検出及び共振電流検出が繰り返され、駆動回路12の動作停止状態が継続する。過電流検出値及び共振電流検出値が所定値未満で正常となった場合、過電流検出信号及び共振電流検出信号がローレベルとなって駆動回路12の動作が再開する(S25)。その後、S21の過電流検出及び共振電流検出に戻って同様の動作が繰り返される。
【0045】
温度検出値が所定値以上となった場合、連動制御部29の制御によってリレー16及び入力信号ミュート部23が連動して作動し、リレーオフ及び入力信号ミュートが実行される(S26)。そして、引き続き温度検出が行われる(S27)。ここで、温度検出値が所定値以上となった場合は、S27の温度検出が繰り返され、リレーオフ及び入力信号ミュートの状態が継続する。温度検出値が所定値未満で正常となった場合、連動制御部29の制御によってリレー16及び入力信号ミュート部23が連動して作動解除し、リレーオン及びミュート解除が実行される(S28)。その後、S22の温度検出に戻って同様の動作が繰り返される。なお、S25での駆動回路12の動作再開後にS22の温度検出に移行し、温度検出値が所定値以上となった場合はS26のリレーオフ及び入力信号ミュート状態となり、温度検出値が所定値未満の場合はS21の過電流検出及び共振電流検出に移行するような動作も可能である。
【0046】
次に本実施形態に係るデジタルアンプを拡声システムに用いた場合を図10および11を用いて説明する。図10は本実施形態に係るデジタルアンプを用いた拡声システムを示している。拡声システムは、マイクロホン70より集音された音声信号をケーブルによりミキサ71まで接続し、ミキサ71からデジタルアンプ72、デジタルアンプ72からスピーカ73まで接続することで、拡声したい拡声空間にスピーカ73より音声信号を拡声する。
【0047】
また図11は、本拡声システムに使用されるデジタルアンプの構成を示している。図11の構成において、図2との相違点は、共振電流検出回路21の出力が制御部80にも入力され、制御部80で共振電流検出回路21の出力結果が所定時間継続した場合にLED81で表示させることが可能となるように、制御部80およびLED81を有していることである。
【0048】
本発明のデジタルアンプ72は、このような拡声システムにおいて、スピーカ73の接続数が少ない、いわゆる軽負荷等のときに発生する共振電流を検出できるものであるが、検出している周波数は図7でも示しているように20kHz以上の非可聴周波数帯域である。
【0049】
さて、マイクロホン70およびスピーカ73を含む拡声システムでは、スピーカ73からの拡声音が再びマイクロホン70により集音されることにより、可聴周波数帯域において発生する発振周波数はハウリングとしてよく知られている。これに対し、図10のようにマイクロホン70とスピーカ73のケーブルが互いに沿って配線されたときなどに、入出力が電気・磁気的に結合して正帰還がかかり、発振がおきることがある。これはシステム発振と呼ばれ、ハウリングのように人間の耳には聴こえないため、検知するのが遅れ、しばしばミキサ71、デジタルアンプ72およびスピーカ73等の故障を招く原因となっていた。
【0050】
しかし本発明のデジタルアンプの共振電流検出回路21によれば、システム発振が発生する帯域も併せて検出できるため、この共振電流が定常的に発生しているときにはシステム発振が生じていると判断することができる。そこで共振電流検出回路21の出力を制御部80または図示しないマイコン等で所定時間継続していることを検出し、所定時間継続した場合にはLED81点灯させることで、システム発振が生じていることを拡声システムの使用者に知らせることができる。なお、制御部80としては内部に積分回路を備えその積分値が所定値以上であればLED81点灯させる構成としてもよい。
【0051】
これにより、使用者はシステム発振の発生を認知し、ミキサ71、デジタルアンプ72およびスピーカ73等が故障する前に適切な対応を取ることが可能となる。
【0052】
なお、制御部80としては共振電流検出回路21の出力が所定時間継続して検出されたことを判断できればよいため、タイマ等を使用してもよい。また、LED81はデジタルアンプ内に設けても良いが、拡声システムにおいて使用者が見やすい位置に、例えばミキサ71に設けても良いし、または天井、壁等にLEDまたは警告ランプ等の発光体または液晶、有機EL等の表示体を単体で設けてもよい。さらにマイクロホン70からの音声信号の代わりに、各種オーディオ音源からの音声信号を拡声する場合にもシステム発振を検出することが可能である。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、電流リミッタ制御を行うための出力電流の異常状態を検出する回路において、検出信号の進相回路を設けることで、異常状態検出時の応答を早めて検出時間を短くでき、高速かつ確実な電流制限動作を行うことができる。この場合、位相遅れを想定した電流リミッタ制御を行う必要がないため、過電流等の異常状態発生の際、直ちに出力電流を遮断せずに、電流制限を行いつつ出力を継続することができる。これにより、例えば本実施形態のデジタルアンプを業務放送システム、緊急放送システム、拡声システム等に適用した場合、増幅回路が完全に故障するまで、動作を継続して音を出し続けることができる。
【0054】
また、共振電流検出回路を設け、軽負荷時に発生するアンプ出力部の出力フィルタの共振現象を出力フィルタのコンデンサに流れる電流により検出して、この共振電流検出によって電流制限が可能である。このため、出力部の共振現象による過電流に対しても適切な電流制限動作を行い、増幅回路を保護することができる。すなわち、本実施形態では、異常状態として、負荷ショート時などの過電流発生時と、負荷オープン時または軽負荷時などの共振発生時との双方の負荷異常に対応できる。
【0055】
本実施形態における電流リミッタ制御では、異常状態検出時に駆動回路の動作を停止するのみで、その前段のPWM回路等は正常に動作しているため、正常状態に復帰したときに動作再開に時間を要することがない。このため、異常状態が解消されたときにデジタルアンプを素早く立ち上げて出力を開始することができる。
【0056】
また、連動制御部を設け、出力段のスイッチング素子の温度検出を行い、温度検出値が所定値以上となった場合は、出力部のリレーをオフするとともに入力信号をミュートする出力停止の連動制御を行う。これにより、異常高温状態になったときに入出力双方を停止してスイッチング素子の破壊を防止することができる。例えば、異常状態検出により電流制限動作を行っている状態において、負荷が変動して過電流が生じた場合などに、温度検出によって出力を停止し、増幅回路を保護することができる。
【0057】
このように本実施形態によれば、出力段のスイッチング素子の破壊を招く過電流及び共振電流の検出時間を短くするとともに、出力の停止を最小限にすることができ、より適切な電流制御動作の実施が可能になる。
【0058】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、出力電流の異常を検出する時間を短縮し、出力をできるだけ停止させることなく、異常時に増幅回路を保護することが可能となる効果を有し、例えば業務放送等における音声信号等の増幅を行うデジタルアンプ等として有用である。
【符号の説明】
【0060】
11 PWM回路
12、31 駆動回路
13 コイル
14 コンデンサ
15 出力フィルタ
16 リレー
17 スピーカ
18、20 検出抵抗
19 過電流検出回路
21 共振電流検出回路
22、41 進相回路
23 入力信号ミュート部
24 ミュート回路
25 バイパス回路
26、27 スイッチ
28 温度検出部
29 連動制御部
32 反転回路
33、34 フォトカプラ
35、36 ドライバ
37 スイッチ素子
38 NOR回路
42 コンデンサ
43、44 抵抗
51 入力信号源
52 増幅回路
53 ローパスフィルタ
54 負荷
Q1、Q2 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をD級増幅するデジタルアンプであって、
前記入力信号のデジタルパルス信号に基づく駆動信号によってスイッチング動作するスイッチング素子と、
前記駆動信号を前記スイッチング素子に供給する駆動回路と、
前記スイッチング素子の出力部に接続されるローパスフィルタを含む出力フィルタと、
前記スイッチング素子の出力部に設けられ、前記スイッチング素子からの出力電流の異常状態を検出して異常状態検出信号を出力する異常状態検出部とを備え、
前記異常状態検出部は、前記異常状態検出信号の位相を進める進相機能を有し、
前記駆動回路は、前記異常状態検出信号に基づき、出力電流の異常状態が検出された場合に、前記駆動信号をオフして前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるデジタルアンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルアンプであって、
前記異常状態検出部は、前記スイッチング素子からの出力電流における所定値以上の過電流を検出し、前記異常状態検出信号として過電流検出信号を出力する過電流検出回路と、前記過電流検出信号の位相を進める進相回路とを有するデジタルアンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のデジタルアンプであって、
前記異常状態検出部は、前記出力フィルタにおいて共振が発生した際の出力電流に関する所定値以上の共振電流を検出し、前記異常状態検出信号として共振電流検出信号を出力する共振電流検出回路を有するデジタルアンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のデジタルアンプであって、
前記スイッチング素子またはその周囲の温度を検出する温度検出部と、
前記スイッチング素子の出力を遮断する出力遮断部と、
前記入力信号を所定レベル以下の無音状態または微小状態にする入力信号ミュート部と、
前記出力遮断部と前記入力信号ミュート部とを連動させる連動制御部とを備え、
前記連動制御部は、前記温度検出部により所定値以上の高温状態が検出された場合に、前記出力遮断部及び前記入力信号ミュート部を連動させて作動させるデジタルアンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のデジタルアンプであって、
前記駆動回路は、前記異常状態検出信号に基づき、前記出力電流が所定値以上の場合に前記駆動信号をオフして前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止するとともに、前記出力電流が所定値未満となった場合に前記駆動信号をオンして前記スイッチング素子のスイッチング動作を再開する制御を繰り返し行うことで、前記スイッチング素子の電流制限動作を行うデジタルアンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のデジタルアンプであって、
前記駆動回路は、前記スイッチング素子の電流制限動作を行う際に、前記デジタルパルス信号の基準発振周波数の1周期単位または1周期単位内の任意のタイミングで前記駆動信号をオン/オフさせるデジタルアンプ。
【請求項7】
請求項3に記載のデジタルアンプであって、
前記共振電流検出回路の共振電流検出信号が所定時間継続して出力されていることを判断するとともに前記所定時間継続していた場合にその旨の信号を出力する制御部を有したデジタルアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−171967(P2011−171967A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33362(P2010−33362)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】