説明

デジタルカメラ用外付けストロボの発光制御方法及び装置

【課題】水中用のハウジングに内蔵されたデジタルカメラか、水陸両用デジタルカメラの内蔵ストロボと同調発光させる外付けストロボにおいて、撮影時内蔵ストロボが原因となるマリンスノー現象、フレア現象を無くして、コントラストの高い高品位な写真を撮る方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 水中用のハウジングに内蔵するデジタルカメラか、水陸両用デジタルカメラの内蔵ストロボの発光部に赤外光透過可視光阻止フィルターを装備して赤外光のみを照射し、その光を外付けストロボの受光部センサーで受けて同調発光させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 この発明は水中で使用するデジタルカメラの内蔵ストロボ及び外付けされるストロボの発光制御技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】 水中撮影にデジタルカメラ(以下単にカメラの場合も有り)を使用する場合は一般的にデジタルカメラを純正市販品の無色透明な防水カメラハウジングに入れて使用する。無色透明の理由はデジタルカメラに内蔵されたストロボ(以下内蔵ストロボ)を使用する時にストロボ光がそのまま防水カメラハウジングを通過して被写体を照らすようにする為である。水中では陸上に比べ暗い場合が多いため陸上よりもストロボ光が必要になる。その場合内蔵ストロボを使用するとストロボ光がレンズ近くの海水中のゴミ、微生物、細かい物体等(以下ゴミ)に当たって白く反射してしまう。(魚などの生物が多い場所にゴミが多く発生している)
これはカメラのストロボ発光部がレンズに近いためであり、レンズに上記ゴミからの反射光が入ってしまい写真に上記ゴミが白く強く写って、コントラストの良いきれいな写真が撮れなくなる。(これをマリンスノー現象ともいう)また、細かいゴミの場合は写真全体が白濁してコントラストが低下する状態になる。
【0003】この様な問題を解消する為には外付けストロボが使用されている。これは外付けストロボの発光部はカメラのレンズから離す事が出来るのでレンズ近くのゴミの反射光は少なくなり、レンズ側から見ても発光部が離れているためゴミからの反射光が少なくなる。その為前記マリンスノー現象は少なくなり、その分きれいな写真が撮れることになる。また、撮影距離としては通常の撮影と考えて、例えば0.5m〜1.5m位を想定して説明している。
【0004】次に図を用いて説明すると図1は従来の方法であり、デジタルカメラ1にはストロボ発光部2とレンズ3などがあり、それを防水ハウジング4に入れて使用する。7は外枠である。この防水ハウジングには外付けストロボ9が取り付けられている。外付けストロボはカメラのX接点に同調発光させる必要が有るが、純正ハウジングには外付けストロボに接続するためのシンクロコードの端子は付いていない。これを付けると接続部を防水しなくてはならないためと、カメラにX接点の端子が付いてない物があり、この場合は無意味となるためである。シンクロコードを用いないで行う簡単な方法として内蔵ストロボ2の光を外付けストロボ9の受光部の光検出用センサー10(以下センサーと呼ぶこともある)で検出して外付けストロボを同調発光させる方法が利用されている。通常、光ファイバー8は無しでもセンサー10に内蔵ストロボの光が届けば同調発光させることが出来るが、外付けストロボまでの距離が遠い場合は図1のように光ファイバーを使用して光を導けば、確実に光が届くようになる。
【0005】実際に使用する場合前記マリンスノー現象を少なくするための方法として、内蔵ストロボ2の光は前記の理由で被写体に当たらないように拡散板5の前に黒い遮光板6として、黒テープまたは同等品を貼って遮光している。そして内蔵ストロボの光は光ファイバー8により外付けストロボに導かれている。しかし、この方法は光ファイバーが必要となり取り付けにも費用がかかる問題がある。
【0006】この装置を実際に使用すると内蔵ストロボの光が上記遮光板の周りからかなり漏れてくる事が分かる。遮光板を広くしても防水ハウジングが無色透明な為それでも周りから光が漏れてくる。カメラの発光部と防水ハウジングの壁面が離れている事も原因になっている。この漏れたストロボ光はレンズのすぐ近くから出る為、前記のようにマリンスノー現象が起きてしまう。また、撮影距離は近くても遠くても、近くのゴミからの反射が多いと前記と同様にマリンスノー現象は起きることになる。もちろん遮光板を使用しない無対策の場合よりは改善されているが不充分である。
【0007】他の問題として純正ハウジングは無色透明なため内蔵ストロボの光ハウジング内部で反射したり近くで拡散したり回り込んだりして、光の一部がレンズに入り(フレア現象という場合もある)コントラストの良い写真が撮れない事があった。
【0008】次に水中でも使用可能な水陸両用デジタルカメラの場合では図1のデジタルカメラ1がそのまま防水になったものであり、ハウジングは不要であるが外付けストロボを内蔵ストロボと同調させるためにはシンクロコードで接続する以外は内蔵ストロボを発光させなくてはならないため、この場合には前記と同様マリンスノー現象の問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 本発明はこのような従来技術に鑑みなされたものであり、本発明の目的はカメラの内蔵ストロボの発光部またはその近くから出る光を写真に写らない赤外光(近赤外光も含む)にすることで、内蔵ストロボが原因している前記マリンスノー現象、フレア現象を極力起こらないようにして、従来より高品位な写真が撮れるようにするデジタルカメラ用外付けストロボの発光制御方法及び装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するためになされた請求項1の発明はデジタルカメラと外付けストロボを用いて水中写真を撮る場合の発光制御方法においてデジタルカメラ側内蔵ストロボの発光部側に赤外光透過可視光遮断フィルターを装備し、その赤外光を外付けストロボの受光部で受けると共に受光部は赤外光においても動作するようになっている事を特徴とする。
【0011】請求項2の発明は、デジタルカメラと外付けストロボを用いて水中写真を撮る場合の発光制御装置においてデジタルカメラ側内蔵ストロボの発光部側に赤外光透過可視光遮断フィルターを装備し、その赤外光を外付けストロボの受光部で受けると共に受光部は赤外光においても動作する素子を使用する事を特徴とする。
【0012】請求項3の発明は、請求項1の発明の前記構成に加えて、赤外光透過可視光遮断フィルターを水陸両用か、一般デジタルカメラの内蔵ストロボの発光部前面に貼り付けるか、ハウジングの内面に貼り付けるか、ハウジングの外側に貼り付けた事を特徴とする。
【0013】請求項4の発明は、請求項2の発明の前記構成に加えて赤外光透過可視光遮断フィルターを水陸両用か、一般デジタルカメラの内蔵ストロボの発光部前面に貼り付けるか、ハウジングの内面に貼り付けるか、ハウジングの外側に貼り付けた事を特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明においては外付けストロボの発光開始信号に内蔵ストロボ光の中の赤外光部分を使用する。(近赤外光を使用する場合もある)
ストロボの発光部はクセノン放電管が発光することにより光が出ているわけであるが、クセノン放電管の光は周知のように可視光と同様に赤外光も多く発光している。これは周知のデータからも分かることであるので分布図は省略すが、赤外光の方が可視光より多い位に分布している。本発明では内蔵ストロボの発光部側から照射される光の中の可視光をフィルターで遮断して赤外光(近赤外光の場合もある)を利用する。また、上記赤外光を受光するための受光素子は赤外光に感度がある受光素子を使用することになるが、シリコンフォトトランジスタ、シリコンフォトダイオード、等の素子は元々赤外光に感度が有るため特別な事をしなくてもそのまま使用が可能である。
【0015】
【実施例】次に本発明の実施例について図面に沿って説明する。図2は本発明の実施例を示すものでハウジングに入れる前にカメラの発光部2にあらかじめ赤外線透過可視光遮断のフィルター11を12に示すように貼っておく。このようにすると内蔵ストロボが発光したとき可視光は遮断され周りからも漏れてこなくなり、これに起因する前記マリンスノー現象は起きなくなる。また、赤外光は透過して強く出て照射され、その赤外光により受光部センサー10が動作して外付けストロボ9は、発光制御される。黒い遮光板6は不要となり、赤外光は強く出るため光ファイバー8は使用しなくても動作し、装置を簡単にすることが出来る。外付けストロボがかなり離れている場合などで動作を確実にさせたい場合は光ファイバーを使用する方が良い。
【0016】赤外線透過可視光遮断のフィルターを貼る位置は他の同等に効果の出る場所でも良くハウジングの内側、ハウジングの外側でも良い。例えばハウジングの外側に貼った場合でも赤外光は透過して強く出て照射されるので光ファイバー8が無くても使用可能になる。また、広く貼った場合でも赤外光は透過してくるので、前記に示す従来に比べハウジングにおける発光部分の周りからのストロボ光の漏れが少なく出来、この場合でも前記マリンスノー現象が少なくなる。水陸両用デジタルカメラの場合は内蔵ストロボの発光部の前面に貼ることになる。すなわち図1のカメラがそのまま水陸両用になったと考えれば良く効果は上記と同様になる。
【0017】このフィルターの市販品の代表的な物の特性を図3に示す。グラフの縦軸は透過率で横軸は波長を示す。13は通称SC74、14はIR82、15はIR84と呼ばれているものである。SC74は完全に可視光を遮断しておらず近赤外光も透過しているが、カメラの種類、周囲の明るい場所等の条件により使用が可能である。IR82、IR84は可視光をほとんど遮断していて通常問題なく使用できる。このフィルターには前記以外にもいろいろな種類が有り特性が合えば使用は可能である。また、上記と同等な特性のプラスチック樹脂の成型品でも可能であり、この場合は自由に形を作ることが出来る。ストロボ側受光部センサー10の赤外光の感度が良いものはより遮断点の波長を長くする事が出来る。
【0018】カメラの撮像用受光素子はCCD、CMOS等であるが最近のものは(2001年)赤外光の感度は以前に比べ落ちていてほとんど写らないようになっている。(受光素子にフィルターをかけて赤外光の感度を落としている場合もある)
これは赤外光まで感度があると通常の写真においてコントラストが悪くなったり、色があせたようになり良い色が出なくなるためである。本発明ではカメラの撮像用受光素子は上記のように赤外光においては感度が悪い、または無い(少ないものも含む)特性を利用している。
【0019】前記フィルター13、14,15を通って出てくる光は当然赤外光のみになりその光は前記のようにカメラには写らない事になる。(13は多少可視光を含む) 内蔵ストロボの光がカメラに写らないということは前記のように内蔵ストロボの原因による前記マリンスノー現象、フレア現象が起こらない事になる。前記フィルター13、14,15を通った赤外光は光ファイバー8を通るか、直接か、被写体からの反射により外付けストロボ9の受光部センサー10に入射する。内蔵ストロボから出る赤外光はかなりエネルギーが大きいので光ファイバーを使用しなくても直接光または被写体からの反射光で動作可能であり使用方法が簡単になり、装置も簡単になる効果もある。
【0020】このセンサーはフォトトランジスタ、フォトダイオード等の素子から出来ていて周知のように受光感度は赤外光の方が良くなっている。代表的な特性を図4に示す。グラフの縦軸は相対的感度を、横軸は波長を示し最大感度は800ナノメートル付近でありその両側に広く感度がある。このように赤外光の感度が良いので前記フィルターからの赤外光を受けて確実に動作する。また、赤外光の感度が良くないものを使用しても放電管から出る赤外光はかなり強いので実用上は問題なく動作する。そして受光部センサー10が内蔵ストロボの赤外光を電気信号に変換してその信号により外付けストロボが発光制御されることになる。
【0021】
【発明の効果】前記に詳しく説明した通り本発明によれば、カメラの内蔵ストロボの発光部は赤外光透過可視光遮断のフィルターで覆われていて、可視光がほとんど漏れてこない。この為、この部分が原因になっている前記マリンスノー現象が起こらなくなる。また、ストロボ光のハウジング部分の反射、拡散、回り込み等によるフレア現象も無くなる。その為コントラストの高い質の良い写真が撮れ実用的効果がある。内蔵ストロボから強い赤外光のみを出せるため、直接光か、被写体からの反射光により外付けストロボは同調発光することが出来、装置が簡単になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来例の装置の接続を説明するための実施図である。
【図2】 本出願の装置の接続を説明するための実施図である。
【図3】 本出願装置のフィルターの透過率特性である。
【図4】 本出願装置の受光部センサーの感度特性を示す図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
2 内蔵ストロボ発光部
3 レンズ
4 ハウジング
5 拡散板
6 黒い遮光板
7 外枠
8 光ファイバー
9 外付けストロボ
10 受光部光検出用センサー
11 可視光遮断赤外光透過フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタルカメラと外付けストロボを用いて水中写真を撮る場合の発光制御方法においてデジタルカメラ側内蔵ストロボの発光部側に赤外光透過可視光遮断フィルターを装備し、その赤外光を外付けストロボの受光部で受けると共に受光部は赤外光においても動作するようになっている事を特徴とするデジタルカメラ用外付けストロボの発光制御方法
【請求項2】 デジタルカメラと外付けストロボを用いて水中写真を撮る場合の発光制御装置においてデジタルカメラ側内蔵ストロボの発光部側に赤外光透過可視光遮断フィルターを装備し、その赤外光を外付けストロボの受光部で受けると共に受光部は赤外光においても動作する素子を使用する事を特徴とするデジタルカメラ用外付けストロボの発光制御装置
【請求項3】 赤外光透過可視光遮断フィルターを水陸両用か、一般デジタルカメラの内蔵ストロボの発光部前面に貼り付けるか、ハウジングの内面に貼り付けるか、ハウジングの外側に貼り付けた事を特徴とする請求項1に記載したデジタルカメラ用外付けストロボの発光制御方法
【請求項4】 赤外光透過可視光遮断フィルターを水陸両用か、一般デジタルカメラの内蔵ストロボの発光部前面に貼り付けるか、ハウジングの内面に貼り付けるか、ハウジングの外側に貼り付けた事を特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ用外付けストロボの発光制御装置

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−140239(P2003−140239A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−374952(P2001−374952)
【出願日】平成13年11月5日(2001.11.5)
【出願人】(591012705)
【Fターム(参考)】