説明

デジタル位相検知器及びデジタル位相検知信号の発生方法

【課題】フェーズロックループで使用可能なデジタル位相検知器において、サンプリングクロック信号を基準として高い位相分解能で入力クロック信号の位相を検知する。
【解決手段】サンプリングクロック信号はサンプリング14に対して、前もってデジタル的に調節可能な位相変位12へ露呈され、「補助サンプリングクロック信号」CK<1:8>が発生する。サンプリング14は位相検知信号PD OUTの第一のより上位のデジタルコンポーネントOUT1<9:0>を送給する。この第一のデジタルコンポーネントOUT1<9:0>の評価に基づいて、位相変位12が行われ且つ位相検知信号PD OUTの第二デジタルコンポーネントOUT2<12:0>が発生される。補助サンプリングクロック信号CK<1:8>は段階的に調節可能であり、それは各場合においてサンプリングクロック信号CKの1周期よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、例えば所謂フェーズロックループ(PLL)において使用することが可能であるような、デジタル位相検知器及びデジタル位相検知方法に関するものである。
【0002】
一般的に、PLLは、出力周波数を有する出力信号を発生する制御可能なオシレータを、フィードバックによって入力周波数を有する入力クロック信号と同期させる目的に適うものである。この目的のために、PLLは、位相検知器又は位相比較器を有しており、その入力において、入力クロック信号とPLL出力信号とが存在している。これら2つの信号の間の夫々の位相を表わす信号は、主に、アクティブ又はパッシブ、デジタル又はアナログフィルタ(「ループフィルタ」)を介して該オシレータを制御するために使用される。
【背景技術】
【0003】
PLL回路に対する適用分野は多く且つ様々である。例えば、PLLはデジタル信号シーケンスからのクロック信号回復のため又はFM復調のために使用することが可能である。「SONET」又は「SDH」等の通信スタンダードにおいて、データの送信及び受信期間中にクロック信号を発生するためにクロック発生回路が必要とされる。この種類の回路においては、PLL回路は、例えば基準として入力される入力クロック信号から、通信システムにおいて使用するための1つ又は複数の出力クロック信号を発生することが可能である。
【0004】
本願出願人の事業組織内における知識に基づく従来技術に従って、デジタル位相検知器の実現のためのアプローチは、アナログ位相検知器を下流側のアナログ・デジタル変換器と結合させることを包含している。然しながら、その場合に達成可能な位相分解能は、アナログ位相検知器の線形性及びアナログ・デジタル変換器の分解能によって厳しく制限されている。従って、別のアプローチによれば、デジタル位相検知器がサンプリング回路で実現されておりその場合に、位相検知器へ供給される入力クロック信号は、同様に位相検知器へ供給されるより高い周波数のサンプリングクロック信号によってサンプリングされる(「オーバーサンプリング」)。従って、位相検知器はサンプリングレート(サンプリングクロック信号の周波数)によって決定的に決定され、然しながら、その場合に、最大サンプリング周波数は、実際上、サンプリング回路において使用されている電子コンポーネントの速度により制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的とするところは、高い位相分解能でサンプリングクロック信号を基準として入力クロック信号の位相を検知することが可能な位相検知を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、位相検知器へ供給されるより高い周波数のサンプリングクロック信号を基準として位相検知器へ供給される入力クロック信号の位相を特定するデジタル位相検知信号を発生するデジタル位相検知器により達成され、それは、
サンプリングクロック信号のデジタル的に調節され位相変位されたバージョンとして補助サンプリングクロック信号を発生するためのデジタル的に調節可能な位相変位装置、尚該補助サンプリングクロック信号は、サンプリングクロック信号の1周期より小さな段階的に調節可能であり、
位相検知信号の第一のより上位のデジタルコンポーネントを発生するために補助サンプリングクロック信号で入力クロック信号をサンプリングするサンプリング装置、
第一デジタルコンポーネントの評価及びその評価結果に基づくデジタル制御信号であって、それにより調節可能な位相変位装置が調節され且つ位相検知信号の第二デジタルコンポーネントが発生されるデジタル制御信号を発生するための評価装置、
を有している。
【0007】
上の目的は、更に、高周波数サンプリングクロック信号を基準として入力クロック信号の位相を特定するデジタル位相検知信号を発生する方法により達成され、該方法は、
サンプリングクロック信号のデジタル的に調節され位相変位されたバージョンとして補助サンプリングクロック信号を発生し、尚該補助サンプリングクロック信号は、サンプリングクロック信号の1周期より小さな段階的に調節可能であり、
位相検知信号の第一のより上位のデジタルコンポーネントを発生するために補助サンプリングクロック信号で入力クロック信号をサンプリングし、
第一デジタルコンポーネントを評価し且つその評価結果に基づいて、それにより補助サンプリングクロック信号の発生により与えられた調節可能な位相変位が調節され、且つ位相検知信号の第二デジタルコンポーネントが発生されるデジタル制御信号を発生する、
上記各ステップを有している。
【0008】
本発明の有益的な更なる展開についても以下に説明し且つそのようなものとして又は結合して提供することが可能である。
【0009】
本発明はサンプリングクロック信号を基準として入力クロック信号の位相を特定するデジタル位相検知信号を得るために、より高い周波数のサンプリングクロック信号によって入力クロック信号のサンプリングの上述したアプローチに基づいている。
【0010】
然しながら、ここで、制限されている性能能力の結果として位相分解能の制限、特にサンプリング装置の電子コンポーネントの制限された速度を解消するために、従来の概念の新たな種類の延長を使用しており、その場合にサンプリングクロック信号はサンプリングのために直接的に引き出されるものではなく、前もってデジタル的に調節可能な位相変位へ露呈される。「補助サンプリング信号」によるサンプリングは、位相検知信号の第一のより上位のデジタルコンポーネントを送給する。この第一デジタルコンポーネントの評価に基づいて、小さな位相変位が行われ、それは次のサンプリングに関連している。同時に、この評価に基づいて、位相検知信号の第二デジタルコンポーネントが発生される。
【0011】
本発明においては、位相分解能は、段階的に調節可能である位相変位装置の分解能により最終的に決定される。この分解能は、実際上、サンプリング装置の分解能よりも著しくより高いものであることを想定することが可能であり、従って本発明の場合には、位相検知の分解能は著しく増加させることが可能である。
【0012】
位相検知及び/又は位相検知方法の好適な使用の結果としてPLLにおける位相検知器の実現となる。本願においては、位相検知器の増加された位相分解能は、関連するPLLの性能特性を改善するために効果的に使用することが可能である。
【0013】
特に好適な実施形態において、位相検知信号の第一デジタルコンポーネントの評価は、この第一デジタルコンポーネントと規定されたスレッシュホールド値との単純な比較を包含している。この場合には、その評価は、第一デジタルコンポーネントが、例えば、固定され規定されたスレッシュホールド値より一層大きいか又は一層小さいかの情報を送給する。以下において第一デジタルコンポーネントの「符号」としても示されるこの情報に基づいて、補助サンプリングクロック信号は、例えば次の比較等の次の評価が行われる前に、その位相に関して調節することが可能である。従って、本発明においては、固定されたサンプリングクロック信号はサンプリングのために従来の態様で使用されるものではなく、その代わりに、調節可能な位相変位により発生される可変の補助サンプリングクロック信号である。更に、第一のより上位のデジタルコンポーネントの評価においては、位相検知信号の第二コンポーネントが発生され、それは比較的小さな(より下位の)段階的に変更可能であり、それは、本発明においては、位相検知の付加的に達成された位相分解能を表わす。
【0014】
位相変位の調節のために第一デジタルコンポーネントの評価において発生されたデジタル制御信号は実効的には「補正信号」であり、それにより、補助サンプリングクロック信号の位相が小さな段階的にサンプリングクロック信号を基準として調節される。調節の大きさは「微細情報」を送給し、それはより下位の段階で調節される位相検知器における位相検知信号の第二コンポーネントを形成するか又は変更するために使用される。
【0015】
より高い周波数のサンプリングクロック信号、例えばそれから抽出された補助サンプリングクロック信号での入力クロック信号のサンプリングにおいて、サンプリング装置は、例えば、フリップフロップ、特に側部制御型(flank−controlled)フリップフロップによって実現することが可能であり、その出力において、位相のデジタル表現が得られる。ここでの実際的な問題は、各フリップフロップに対して必要なサンプル・ホールド時間であり、それは達成可能なサンプリングの時間的分解能を制限する。この制限は、又、最初からサンプリングの分解能を改善するためにサンプリングクロック信号(又は補助サンプリングクロック信号)に複数のサンプリング位相を供給する場合にも適用される(「多相サンプリング(multiphase sampling)」)。本発明での達成可能な位相分解能のかなりの改善のために、位相検知の分解能が最終的な場合において、実際上何等の顕著な制限に影響されることのない(供給されたサンプリングクロック信号を基準としての補助サンプリングクロック信号の)位相変位の分解能に基づくものであることが臨界的である。実施例の1つの形態においては、回路及び正確度の点でその実現が簡単であるために特に好適なものであるが、デジタル的に調節可能な位相変位はデジタル的に調節可能な位相補間によって実現され、その場合に、複数の位相を具備するサンプリングクロック信号から開始して、これらの位相の間で補間される補助サンプリングクロック信号が発生される。この位相補間のために、位相補間器の実現に対してそれ自身既知の回路概念に対して効果的に措置を講ずることが可能である(例えば、補間された出力位相の発生のために2個又はそれ以上の入力位相の加重加算)。
【0016】
実施例の1つの形態においては、サンプリングクロック信号の周波数が、少なくとも係数101、好適には少なくとも係数102だけ入力クロック信号に対して予測される周波数よりも一層大きいものとされる。サンプリングクロック信号は、例えば、固定され規定された周期を有する周期的信号とすることが可能である。
【0017】
実施例の1形態においては、第一デジタルコンポーネントの発生において位相分解能を増加させるために補助サンプリングクロック信号は複数の位相が与えられるものとされる。この場合において、「多相サンプリング」が第一デジタルコンポーネントを形成するために使用される。ここで、該複数の補助サンプリングクロック信号位相が互いに等距離のものであるようにさせることが可能である。従って、ここの補助サンプリングクロック信号位相は供給されたサンプリング信号の周期を有しているが互いに位相変位されている。実施例の好適形態においては、位相変位の各調節ステップが互いに隣接している補助サンプリングクロック信号位相間の位相差の整数フラクション(fraction)に対応するようになされている。
【0018】
既に上において詳細に説明したように、本発明に対して必要な位相変位は、位相補間として特に簡単な態様で実現することが可能である。実施例の1つの形態においては、サンプリングクロック信号に複数のサンプリング位相が与えられ且つ位相変位装置がサンプリング位相間のデジタル的に調節可能な補間のために位相補間器として構成されるものとされる。1つの簡単な実施例においては、サンプリングクロック信号は、90゜相互に位相がオフセットした2つのサンプリング位相が与えられ、即ち、所謂「直交信号」が与えられる。
【0019】
実施例の好適形態においては、位相変位の調節が評価装置により発生されたデジタル制御信号が入力されるモジュロ積分器の出力信号により規定されるものとされる。
【0020】
実施例の1つの形態においては、評価装置が第一デジタルコンポーネントの符号を決定するための符号検知器を有するものとされる。ここで用語「符号」は非常に広義に理解すべきものであり、この符号が、ゼロとは異なる規定されたスレッシュホールド値を得ることの失敗又はその超過を表わす場合も包含すべきである。位相検知信号の第二デジタルコンポーネントを発生すべく機能する評価装置の回路の部分は、ここでは、積分器(カウンタ)として簡単な態様で構成することが可能であり、それは符号検知器から決定された符号情報(+1又は−1)を積分する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、位相検知器1へ供給されるより高い周波数のサンプリングクロック信号CKを基準として位相検知器1へ供給される入力クロック信号PD INの位相を特定するデジタル位相検知信号PD OUTを発生する従来のデジタル位相検知器1の機能を示している。信号PD IN及びCKの予測される、即ち平均の周波数は例示的な態様で図1において特定してあり、且つこの例においては、約64の係数だけ互いに異なっている。位相検知器1はサンプリング装置2を有しており、それは二進表現における位相検知信号PD OUTを発生する。ここで単一の位相サンプリング信号CKが使用される場合には、選択した「オーバーサンプリング」に従って、6ビットの分解能を有する信号PD OUTを与えることが可能である(26=64)。表示した例においては、然しながら、サンプリングクロック信号CKは図1においては「CK<1:8>」の表記により記号として示してある互いに等距離に配置された8個の位相が入力され、このことは係数8だけ出力された位相検知信号PD OUTの分解能において対応する増加を可能とさせる。表示例においては、位相検知信号PD OUTは10ビットの分解能で出力される(「PD OUT<9:0>」の表記により記号化してある)。
【0022】
換言すると、サンプリング装置2は、所謂「多相サンプラー」として構成されており、それにより、供給された入力クロック信号PD INは、位相情報PD OUTを抽出するために、同様に供給されたより高い周波数のサンプリングクロック信号CKの複数の位相と同時的に比較される。
【0023】
多くの適用例にとって、位相検知結果PD OUTの正確度、即ち位相分解能における更なる増加が所望されている。然しながら、図1に示したサンプリング装置2の現在の回路構成においては、迅速に技術的限界に遭遇し、その限界は使用される電子コンポーネントの性能特性によって条件付けされる。
【0024】
従って、実際的な観点からは、サンプリング周波数を増加させることによるか又は同時的に使用されるこのサンプリング信号の位相の数を増加させることのいずれかによって信号PD OUTにおける分解能における増加を達成することは不可能である。
【0025】
以下において、本発明の実施例の1つの例を図2乃至7を参照して説明するが、それにより位相分解能の前述した制限が解消される。この時点において注意すべきことであるが、図1に表示した種類のサンプリング装置は、本発明に基づく位相検知器においても使用される。図3はこのようなサンプリング装置の構成を示している。然しながら、本発明においては、このようなサンプリング装置は更なるコンポーネントで補充され、従って達成される位相検知の位相分解能は、最早、サンプリング装置の分解能能力により制限されるものではない。
【0026】
図2はデジタル位相検知信号PD OUT<12:0>を発生する位相検知器PDの構成を示しており、即ち、それは13ビットの非常に高い分解能を有しており、位相検知器へ供給されるより高い周波数のサンプリングクロック信号CKを基準として位相検知器PDへ供給される入力クロック信号PD INの位相を特定する。互いに90゜だけ変位されている2つのサンプリング位相CK 0及びCK 90を有するサンプリングクロック信号CKが位相補間器12へ供給される。
【0027】
位相補間器12はデジタル信号PHI<4:0>(即ち、5ビット分解能を有している)によってデジタル的に調節可能であり且つサンプリングクロック信号CKのデジタル的に調節され位相変位されたバージョンとして以下において「補助サンプリングクロック信号」CK<1:8>として記載する信号を発生し、それは、表示した実施例の例においては、入力クロック信号PD INも供給されるサンプリング装置14に対する8個の位相を有している。
【0028】
サンプリング装置14の構成に関する限り、それ自身既知の任意の回路概念に対して効果的に措置を講ずることが可能である。表示したサンプリング装置14の構成を図3乃至7を参照して以下により詳細に説明するが、本装置の機能性にとっては二次的な重要性を有するものである。本発明にとって基本的なことは、むしろ、ここでは例示的な態様で多相サンプリング装置として表わされているサンプリング装置の、図2において例示的な態様で示されているようなその他の検知器コンポーネントとの相互作用である。
【0029】
サンプリング装置14は、位相検知信号PD OUT<12:0>の第一のより高い次数のデジタルコンポーネントOUT1<9:0>を図2に表示したように発生させるために、補助サンプリングクロック信号CK<1:8>で入力クロック信号PD INをサンプルし、そのデジタルコンポーネントは、デジタル増幅器(乗算器)16を介して係数8だけ増加されて加算器18内へエンターされ、加算器18には、更に、入力された信号コンポーネントOUT1及びOUT2の加算により所望の位相検知信号PD OUT<12:0>を発生するために第二デジタルコンポーネントOUT2<12:0>が入力される。
【0030】
以下においては、より下位のステップにおいて変更可能な第二デジタルコンポーネントOUT2<12:0>が発生される態様について説明するが、それにより、全体的な装置の位相分解能は著しく増加される。
【0031】
図2から理解することが可能であるように、第一デジタルコンポーネントOUT1<9:0>が符号検知器20へ入力され、それはこのデジタルコンポーネントを固定された規定されたスレッシュホールド値(実効的には適宜定義された「ゼロポイント」、例えばこの例においては値「64」)と比較し、且つその比較結果sに対応する符号情報をデジタル形態(「+1」又は「−1」)で出力する。
【0032】
この符号情報sは、一方においては、符号積分器(カウンタ)22へ入力され、且つ、他方においては、モジュロ32積分器(循環カウンタ)24へ入力される。
【0033】
モジュロ32積分器24の出力値は制御信号PHI<4:0>であり、それに関しては既に上に参照しており、且つそれにより、位相補間器12により実行された補助サンプリングクロック信号の位相シフトが入力されたサンプリングクロック信号を基準として調節される。最後の位相比較の結果、即ちこれから発生する符号情報sに依存して、補助サンプリングクロック信号、又はより正確に記載すると、8個の個別的な位相CK<1>,CK<2>,...が、サンプリング装置14によって次の位相比較が行われる前に、位相補間器12によって対応的に位相変位される。デジタル符号積分器22は位相調節の大きさを登録(カウント)し、従って位相検知器PDの付加的な位相情報(位相検知信号の第二デジタルコンポーネント)を送給する。
【0034】
図3は図2の位相検知器PDにおいて使用されるサンプリング装置14の構成を示している。
【0035】
サンプリング信号CKの位相変位されたバージョンCK<1:8>及び位相検知器入力信号PD INが多相サンプラー50へ入力され、それは、これらから、信号CK R及びOUT1<2:0>を発生する。全部で8個の信号コンポーネントCK<1>乃至CK<8>からなる信号CK<1:8>の1つの信号コンポーネントCK<1>の位相アキュムレータ52(カウンタ)へ入力される。位相アキュムレータ52から出力された信号及び信号CK Rは、表示したように、7個のフリップフロップからなるフリップフロップ装置54へ印加され、それは信号コンポーネントOUT1<9:3>を形成し、それは、信号OUT1<2:0>の印加される加算要素56を介して供給されて位相検知器出力信号OUT1<9:0>を形成する。表示した実施例の例においては、サンプリング装置14が、その出力において、10ビットワードを発生し、それはデジタル態様で位相検知器PDへ供給された信号の位相を表わす。サンプリング装置14は信号OUT1<2:0>を供給するために高速で動作している多相サンプラーを有しており、該信号は位相検知器出力信号OUT1<9:0>の最下位の3ビットを表わしている。フリップフロップ装置54は7個のより高い次数のビットを発生する。該多相サンプラーは、この表示した例においては19.44MHzの周波数を有している供給された位相検知器入力信号PD INを、この表示した実施例の例においては1.25GHzの周波数を有しており且つ100psの位相分解能を送給する8個の均等に離隔したクロック信号CK<1>乃至CK<8>でサンプルする。
【0036】
図4は図3に示した多相サンプラー50の構成を示している。
【0037】
多相サンプラー50は、表示したように、フリップフロップ装置58及びデコーダ60を包含しており、それに対して、表示した態様で信号PD IN及びCK<1>乃至CK<8>が印加され、且つその出力側上で信号CK R及びOUT1<2:0>を出力する。
【0038】
図5は、信号コンポーネントCK<1>乃至CK<8>、信号PD IN、信号OUT1<2:0>、信号CK Rの例示的な時間プロフィルを示している。図5は、特に、8個のサンプリングクロック信号CK<1:8>及び位相検知器入力信号PD IN及び位相検知器出力信号OUT1の間の位相関係を示している。
【0039】
これから、位相補間器12により発生された信号コンポーネントCK<1>乃至CK<8>が同一の信号であるが、互いに位相が等距離変位されていることを理解することが可能である。表示した実施例の例においては、隣接しているこれらの信号コンポーネントのうちの2つの間(例えば、CK<1>とCK<2>との間)の時間的な変位は100psに対応している。
【0040】
図6及び7は位相補間器12の構成を明らかにしている。
【0041】
補間器12の全体的な構成を図6に示してある。1.25GHzの周波数において8個の均等に離隔された(100psだけ)クロック信号CK<1>乃至CK<8>を供給するために、補間器12は2つの表示された補間器半分部分70−1及び7−2及び付加的な分割器回路を具備する本回路の出力セクション72を有している。本回路の補間器半分部分70−1,70−2及び補間器出力セクション72は、表示した態様で一緒に動作して、直交信号CK 0及びCK 90(図2参照)から、信号コンポーネントCK<1>乃至CK<8>により表わされるサンプリング信号CKの位相シフトしたバージョンを形成する。
【0042】
直交信号CK 0及びCK 90は差動形態で補間器12へ供給され、信号CK 0は差動信号コンポーネントCK P及びCK Nから構成されている。信号CK 90は差動信号コンポーネントCK 90 P及びCK 90 Nから構成されている。所望の位相変位の調節は、信号PHI<4:0>、即ちモジュロ32積分器24から位相補間器12の制御入力へ転送された信号、によって行われる。
【0043】
図7は図6に示した2つの補間器半分部分70−1及び70−2の(同一の)構成を示している。各補間器半分部分の構成はそれ自身既知の設計概念に従っており、且つ供給されたPHI<4:0>信号を電流のアナログ表現(表示した電流源により記号で示されている)へ変換するデジタル・アナログ変換器74を有している。該電流源から供給された電流は夫々のトランスコンダクタンス段に対する調節用電流として作用し、その各々は、表示したように、トランジスタ対から形成されており且つ個々の電流の加重重ね合せを実行する。該電流は共通の抵抗負荷Rを介して供給され、従って図6に示した電位PH OUTP及びPH OUTNは抵抗負荷Rを横断しての電圧降下として与えられる。該位相補間器出力信号は、常に90゜の位相差を有しているCK1及びCK2入力信号の加重和(電流の重ね合せにより形成される)に対応している。該位相補間器出力信号の分解能は50psとして特定される。
【0044】
要するに、図2に基づく回路装置で達成される改良は、図1に基づく従来の位相検知器と比較して、再度以下のように詳細に説明することが可能である。
【0045】
図1の従来の位相検知器はサンプラーとして構成することが可能であり、それは8個のクロック信号CK<1:8>(8個の補助サンプリングクロック信号位相)で入力クロック信号PD INをサンプルし、該クロック信号の各々はf=1.25GHzの周波数を有している。クロック信号CK<1:8>は100psの相互位相オフセットを有しており、従って実際のサンプリングレートは8×1.25GHz=10GHzである。10GHzのサンプリングレートの場合には、該サンプラーにおけるフリップフロップに対して100psの最大サンプル・ホールド時間が必要とされる。0.13μmCMOS技術で従来のCMOSフリップフロップを使用する場合には、この10GHzのサンプリングレートは既にこの技術の限界を超えている。
【0046】
図2に示した実施例の形態は、位相分解能をこの100ps限界より下に改善させることを可能とし、その目的のために、サンプラー14に対して示した「フィードバック経路」が設けられている。このフィードバック経路はサンプラー14の出力から符号検知器20及びモジュロ32積分器24を介して位相補間器12へ戻るように走行しており、該位相補間器はサンプラー14に対して2つの入力信号のうちの1つを送給する。この新たな種類の位相検知器PDは従来の種類のサンプラー14、順方向経路(加算器18に対して)における付加的なデジタル符号積分器22及びフィードバック経路におけるモジュロ32積分器24及び位相補間器12を有している。
【0047】
サンプラー14は10個のMSBビット及び符号情報sを符号積分器22へ送給する。符号積分器22の出力及びサンプラー14の出力は、8で乗算され、位相検知器出力において(加算器18において)加算される。フィードバック経路において、符号情報(+/−1)がモジュロ32積分器24によって積分され、且つ全ての8個のサンプリング位相をCK<1:8>の+/−12.5ps(100ps/8)の位相変位となる。従って、本発明に基づく解決は位相検知器の分解能を100psから12.5psへ改善しており且つ位相検知器の出力において3個の付加的なLSBビットを送給する。
【0048】
位相補間器を具備する位相検知器フィードバックループの帯域幅BWは近似的に以下の如くに計算することが可能である。
【0049】
BW=dT×(F0)2/JITTERp−p
尚、dTは1LSBに対して発生する補間器出力における位相変位(例えば、12.5ps)を示しており、F0は入力クロック信号PD INの周波数(例えば、19.44MHz)を示しており、且つJITTERp−pはピーク間の入力ジッター振幅を示している。
【0050】
実施例の例におけるdT及びF0に対して与えられた値及び0.4(「単位間隔」即ち「UI」で測定した)の入力ジッターに対して、この近似は11.8kHzの帯域幅DWを送給する。
【0051】
図8乃至10は種々のジッター周波数及び0.2UIのジッター振幅を有する正弦波入力ジッターに対する幾つかのシミュレーション結果を示している。
【0052】
これらの図において、符号積分器22、サンプラー14(増幅器16と共に)及び加算器18の出力信号は、夫々、30KHz(図8)、9KHz(図9)及び1KHz(図10)のジッター周波数に対して「符号積分器」、「サンプラー」、「Pd−out」として示してある。これら全ての場合において、加算器からの出力信号「Pd−out」、即ち位相検知信号PD OUTとして上に示した信号は、一方においては、符号積分器22から(OUT2)及び他方においてはサンプリング装置14から(OUT1)の出力信号の和として発生する(加算器18における加算の結果として)。
【0053】
該シミュレーション結果から、3つの全ての場合において、位相検知信号が正弦波ジッターを良好に再現することを理解することが可能である。異なるジッター周波数に対して発生する信号特性間の差異は、単に、2つの加法的な重ね合わせた信号コンポーネントからの位相検知信号の合成は周波数と共に変化するという事実にある。比較的高いジッター周波数の30KHz(図8)においては、位相検知信号がサンプリング装置14の出力信号から大部分が形成され、一方減少するジッター周波数の場合には(例えば、図9)、符号積分器22からの出力信号のコンポーネントが増加する。比較的低いジッター周波数の1KHz(図10)においては、ジッターは基本的にレジスタ即ち登録され且つ符号積分器22の出力信号により再生される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】例えば100psの位相分解能を有する従来の位相検知器の機能を示した概略図。
【図2】例えば12.5psの位相分解能を有する本発明に基づく位相検知器の構成を示した概略図。
【図3】図2の位相検知器において使用されているサンプリング装置の構成を示した概略図。
【図4】図3のサンプリング装置において使用されている多相サンプラーの構成を示した概略図。
【図5】図4の多相サンプラーにおいて発生する信号の時間プロフィルの例示的表示を示したグラフ図。
【図6】図2の位相検知器において使用されている位相補間器の構成を示した概略図。
【図7】図6の位相補間器において使用されている2個の補間器半分部分の構成を示した概略図。
【図8】入力クロック信号におけるあるジッター周波数に対しての図2の位相検知器において発生する幾つかの信号に対するシミュレーション結果を示したグラフ図。
【図9】減少したジッター周波数に対する対応するシミュレーション結果を示したグラフ図。
【図10】更に減少したジッター周波数に対する対応するシミュレーション結果を示したグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相検知器へ供給されるより高い周波数のサンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)を基準として位相検知器へ供給される入力クロック信号(PD IN)の位相を特定するデジタル位相検知信号(PD OUT)の発生のためのデジタル位相検知器において、
サンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)のデジタル調節し位相変位したバージョンとして補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)の発生のためのデジタル調節可能位相変位装置(12)、尚該補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)は各場合においてサンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)の1周期よりも小さく段階的に調節可能であり、
位相検知信号(PD OUT)の第一のより上位のデジタルコンポーネント(OUT1<9:0>)を発生するために補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)での入力クロック信号(PD IN)のサンプリングのためのサンプリング装置(14)、
第一デジタルコンポーネント(OUT1<9:0>)の評価及びその評価結果に基づいてのデジタル制御信号であって、それにより調節可能な位相変位装置(12)が調節され且つ位相検知信号(PD OUT)の第二デジタルコンポーネント(OUT2<12:0>)が発生されるデジタル制御信号の発生のための評価装置(20,22)、
を有している位相検知器。
【請求項2】
請求項1において、サンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)の周波数が、入力クロック信号(PD IN)に対して予測される周波数よりも少なくとも係数101、好適には少なくとも係数102だけより大きい位相検知器。
【請求項3】
請求項1において、補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)は、第一デジタルコンポーネント(PD OUT<9:0>)の発生において位相分解能を増加させるために複数の位相(CK<1>,CK<2>,...)が設けられている位相検知器。
【請求項4】
請求項3において、該複数の補助サンプリングクロック信号位相(CK<1>,CK<2>,...)が互いに等距離である位相検知器。
【請求項5】
請求項4において、該位相変位の各調節ステップが、互いに隣接している補助サンプリングクロック信号位相(CK<1>,CK<2>,...)の間の位相差の整数フラクションに対応している位相検知器。
【請求項6】
請求項1において、該位相変位の各調節ステップが、サンプリング信号周期の整数フラクションに対応している位相検知器。
【請求項7】
請求項1において、サンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)は複数のサンプリング位相が設けられており、且つ位相変位装置(12)はサンプリング位相(CK 0,CK 90)間のデジタル的に調節可能な補間用の位相補間器として構成されている位相検知器。
【請求項8】
請求項1において、該位相変位の調節は、評価装置(20)により発生されるデジタル制御信号が入力されるモジュロ積分器(24)の出力信号(PHI<4:0>)により規定される位相検知器。
【請求項9】
請求項1において、評価装置(20,22)は第一デジタルコンポーネント(OUT1<9:0>)の符号を決定するための符号検知器(20)を有している位相検知器。
【請求項10】
より高い周波数のサンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)を基準として入力クロック信号(PD IN)の位相を特定するデジタル位相検知信号(PD OUT)を発生する方法において、
サンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)のデジタル的に調節し位相変位させたバージョンとして補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)を発生し、尚補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)は各場合においてサンプリングクロック信号(CK 0,CK 90)の1周期より小さい段階的に調節可能であり、
位相検知信号(PD OUT)の第一のより上位のデジタルコンポーネント(OUT1<9:0>)を発生するために補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)で入力クロック信号(PD IN)をサンプリングし、
第一デジタルコンポーネント(OUT1<9:0>)を評価し且つその評価結果に基づいて、それにより補助サンプリングクロック信号(CK<1:8>)の発生により与えられる調節可能な位相変位が調節され、且つ位相検知信号(PD OUT)の第二デジタルコンポーネント(OUT2<12:0>)が発生されるデジタル制御信号を発生する、
上記各ステップを有している方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−104148(P2008−104148A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−177113(P2007−177113)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507161776)ナショナル セミコンダクタ ジャーマニー アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】National Semiconductor Germay AG
【Fターム(参考)】