デジタル撮像装置、プログラムおよび記録媒体
【課題】 所望の照明環境の影響を反映させつつ色順応を考慮した画像を再生する。
【解決手段】 照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データ235と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データ236とを生成することができるデジタルカメラにおいて、物体色成分データ235と照明成分データ236とを合成して画像データを生成する合成部205と、画像データに色順応に基づく色変換を施す変換部206とを設ける。変換部206では、照明成分データ236から導かれる色度および露出演算部204からの被写体の明るさを示すデータを利用して色順応に基づく色変換が行われる。また、物体色成分データ235がメモリカード8に保存される際には露出データ237とともに1つのファイルとして保存される。
【解決手段】 照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データ235と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データ236とを生成することができるデジタルカメラにおいて、物体色成分データ235と照明成分データ236とを合成して画像データを生成する合成部205と、画像データに色順応に基づく色変換を施す変換部206とを設ける。変換部206では、照明成分データ236から導かれる色度および露出演算部204からの被写体の明るさを示すデータを利用して色順応に基づく色変換が行われる。また、物体色成分データ235がメモリカード8に保存される際には露出データ237とともに1つのファイルとして保存される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、色順応を考慮しつつ画像の色を変換する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】被写体への照明光が変更された場合、被写体から観測者へと入射する光の分光分布が変化するが、被写体の色が大きく変化したようには感じないという色順応効果が人間の視覚に生じる。そして、このような人間の視覚における色順応を演算式として準備しておき、画像の色を実際に人間が感じとる色へと変換する技術も提案されている。
【0003】例えば、特開平9−178561号公報では、人間の色順応を考慮した色へと画像の色を変換する技術が提案されている。上記文献では、視対象の分光反射率を視対象の色に対応する色票から特定し、視対象への照明光と視対象の分光反射率とから人間が実際に感じとると考えられる色が求められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記文献では視対象はカラーディスプレイに表現される仮想的な物体であり、視対象の色は操作者により数値として入力される。したがって、この技術は実在する被写体を撮影して得られる画像に適用することはできない。
【0005】本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、実写にて得られる画像を撮影時とは異なる照明環境下の画像へと変換し、さらに、人間の色順応効果を考慮した画像とすることを主たる目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データを求める物体色成分データ生成手段と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データと前記物体色成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成手段と、色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換手段とを備える。
【0007】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデジタル撮像装置であって、前記変換手段が、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件を用いて前記色順応に基づく色変換を行う。
【0008】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のデジタル撮像装置であって、前記被写体の画像データから前記照明成分データを求める照明成分データ生成手段をさらに備え、前記変換手段が、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換を行う。
【0009】請求項4に記載の発明は、デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データまたは前記物体色成分データを導くことができるデータと、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件とを一のファイルとして保存する保存手段とを備える。
【0010】請求項5に記載の発明は、画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程とを実行させる。
【0011】請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、画像データから前記物体色成分データを求める工程をさらに実行させる。
【0012】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、前記画像データから前記照明成分データを求める工程をさらに実行させ、前記変換工程において、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換が行われる。
【0013】請求項8に記載の発明は、画像処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程とを実行させる。
【0014】
【発明の実施の形態】<1. 第1の実施の形態>図1は本発明の第1の実施の形態に係るデジタル撮影装置であるデジタルカメラ1の全体を示す斜視図である。デジタルカメラ1は、撮影を行うレンズユニット11、および、レンズユニット11にてデジタルデータとして取得された画像を処理する本体部12とを有する。
【0015】レンズユニット11は、複数のレンズを有するレンズ系111、および、レンズ系111を介して被写体の像を取得するCCD112を有する。そして、CCD112から出力される画像信号は本体部12へと送られる。また、レンズユニット11には、操作者が被写体を捉えるためのファインダ113、測距センサ114等も配置される。
【0016】本体部12には、フラッシュ121およびシャッタボタン122が設けられ、操作者がファインダ113を介して被写体を捉え、シャッタボタン122を操作することにより、CCD112にて電気的に画像が取得される。このとき、必要に応じてフラッシュ121が発光する。なお、CCD112は各画素の値としてR,G,Bの各色に関する値を取得する3バンドの撮像デバイスとなっている。
【0017】CCD112からの画像信号は本体部12内部にて後述する処理が行われ、必要に応じて本体部12に装着されている外部メモリであるメモリカード8に記憶される。メモリカード8は本体部12下面の蓋を開けて取出ボタン124を操作することにより本体部12から取り出される。記録媒体であるメモリカード8に記憶されたデータは別途設けられたコンピュータ等の他の装置に渡すことができる。逆に、他の装置にてメモリカード8に記憶されたデータをデジタルカメラ1が読み出すことも可能である。
【0018】図2はデジタルカメラ1を背後から見たときの様子を示す図である。本体部12の背面の中央には撮影された画像を表示したり、操作者へのメニューを表示する液晶のディスプレイ125が設けられ、ディスプレイ125の側方にはディスプレイ125に表示されるメニューに従って入力操作を行うための操作ボタン126が配置される。これにより、デジタルカメラ1の操作、撮影条件の設定、メモリカード8の保守、後述する画像の再生等ができるようにされている。
【0019】図3は、デジタルカメラ1の主要な構成をブロック等にて示す図である。
【0020】図3に示す構成のうち、レンズ系111、CCD112、A/D変換部115、シャッタボタン122、CPU21、ROM22およびRAM23は画像を取得する機能を実現する。すなわち、レンズ系111により被写体の像がCCD112上に結像され、シャッタボタン122が押されると、CCD112からの画像信号がA/D変換部115によりデジタル変換される。A/D変換部115にて変換されたデジタル画像信号は本体部12のRAM23に画像データとして記憶される。なお、これらの処理の制御はCPU21がROM22内に記憶されているプログラム221に従って動作することにより行われる。
【0021】また、本体部12に設けられるCPU21、ROM22およびRAM23が画像を処理する機能を実現する。具体的には、ROM22に記憶されているプログラム221に従って、RAM23を作業領域として利用しながらCPU21が取得された画像に画像処理を施す。
【0022】カードI/F(インターフェイス)123はRAM23と接続され、操作ボタン126からの入力操作に基づいてRAM23とメモリカード8との間の各種データの受け渡しを行う。また、ディスプレイ125もCPU21からの信号に基づいて画像の表示や操作者への情報の表示を切り替えながら行う。
【0023】フラッシュ121は発光制御回路121aを介してCPU21に接続されており、CPU21からフラッシュ121を点灯する旨の指示を受けた場合には、発光制御回路121aがフラッシュ121の発光特性が撮影ごとにばらつかないように制御を行う。これにより、フラッシュ121からの光の分光分布(分光強度)が一定となるように制御される。
【0024】図4は、主としてCPU21、ROM22およびRAM23により実現される機能を他の構成とともにブロックにて示す図であり、図4に示す構成のうち、差分画像生成部201、物体色成分データ生成部202、照明成分データ生成部203、露出演算部204、合成部205および変換部206が、CPU21、ROM22、RAM23等により実現される機能である。図5は撮影および画像処理の流れを示す流れ図である。以下、図4および図5を参照しながらデジタルカメラ1の動作について説明する。
【0025】まず、フラッシュがONの状態にて撮影を行い、フラッシュ光を浴びた被写体の画像(以下、「第1画像」という。)を得る。すなわち、フラッシュ121を点灯するとともにCCD112にて画像を取得し、得られた画像(正確には、画像信号)がA/D変換部115からRAM23へと送られ、第1画像データ231として記憶される(ステップST11)。
【0026】次に、フラッシュがOFFの状態にて撮影を行い、フラッシュ光を有しない照明環境下での被写体の画像(以下、「第2画像」という。)を得る。すなわち、フラッシュを用いることなくCCD112にて画像を取得し、得られた画像がA/D変換部115からRAM23へと送られ、第2画像データ232として記憶される(ステップST12)。
【0027】これらの2回の撮影は、連写のように迅速に行われる。したがって、第1画像と第2画像との撮影範囲は同一となる。また、2回の撮影はシャッター速度(CCD112の積分時間)および絞り値(すなわち、露出に関する撮影条件)が同一の条件にて行われる。
【0028】露出条件は、撮影直前にCCD112にて取得された画像(または、測光センサの出力)に基づいて露出演算部204により求められる。具体的には、まず、CCD112や測光センサの出力に基づいて被写体の明るさを求め、CCD112の感度特性を考慮して露出値が決定される。その後、デジタルカメラ1内に予め準備されているシャッタースピードと絞り値との関係を示すプログラム線図に従ってシャッタースピードおよび絞り値が自動的に決定される。
【0029】また、フラッシュ121の発光は、フラッシュ光の分光分布が一定となるように発光制御回路121aにより制御される。図6は発光制御回路121aの動作の流れを示す図である。
【0030】フラッシュONでの撮影の際に、あるいは、撮影に先立って、まず、発光制御回路121aがフラッシュ121のフラッシュ電源への充電電圧(すなわち、フラッシュ121に与えられる電圧)のモニタを開始する(ステップST101)。そして、充電電圧が所定の電圧(例えば、330V)に達したと確認されると(ステップST102)、フラッシュ電源からフラッシュ121へと電力を供給して発光を開始する(ステップST103)。
【0031】発光の開始と同時に発光制御回路121aは発光時間のモニタを開始する(ステップST104)。その後、発光開始から所定の時間が経過したことが確認されると(ステップST105)、発光が停止される(ステップST106)。
【0032】このように、フラッシュ121の発光は一定の電圧および発光時間となるように制御され、フラッシュ121の発光特性が撮影ごとにばらつくことはない。なお、フラッシュ121の分光分布も上記発光制御により一定に保たれ、この分光分布は予め計測されてRAM23にフラッシュ分光データ234として記憶されている。なお、正確にはフラッシュ光の相対的な分光分布(最大の分光強度を1として正規化された分光分布をいい、以下「相対分光分布」という。)がフラッシュ分光データ234として用いられる。
【0033】2回の撮影により、RAM23に第1画像データ231および第2画像データ232が保存されると、差分画像生成部201が第1画像データ231から第2画像データ232を減算して差分画像データ233を求める。これにより、第1画像の各画素のR,G,Bの各値から第2画像の対応する画素のR,G,Bの各値がそれぞれ減算され、第1画像と第2画像との差分画像が得られる(ステップST13)。
【0034】次に、物体色成分データ生成部202により差分画像データ233およびフラッシュ分光データ234を用いて第2画像から照明環境の影響を取り除いた成分が物体色成分データ235として求められ、RAM23に保存される(ステップST14)。物体色成分データ235は、被写体の分光反射率に実質的に相当するデータである。以下、被写体の分光反射率を求める原理について説明する。
【0035】まず、被写体を照明する照明光(光源からの直接的な光および間接的な光を含む照明環境における照明光いう。)の分光分布をE(λ)とし、この分光分布E(λ)を3つの基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)および加重係数ε1,ε2,ε3を用いて、
【0036】
【数1】
【0037】と表し、同様に、ある画素(以下、「対象画素」という。)に対応する被写体上の位置の分光反射率をS(λ)を3つの基底関数S1(λ),S2(λ),S3(λ)および加重係数σ1,σ2,σ3を用いて、
【0038】
【数2】
【0039】と表すと、CCD112上の対象画素に入射する光I(λ)(レンズユニット11内のフィルタ等を無視した場合の入射光)は、
【0040】
【数3】
【0041】と表現される。また、対象画素のR,G,Bのいずれかの色(以下、「対象色」という。)に関する値がρcであり、CCD112の対象色の分光感度をRc(λ)とすると、値ρcは、
【0042】
【数4】
【0043】により導かれる。
【0044】ここで、フラッシュONの第1画像の対象画素の対象色の値がρc1であり、フラッシュOFFの第2画像の対応する値がρc2である場合、差分画像の対応する値ρsは、
【0045】
【数5】
【0046】となる。I1(λ)はフラッシュONの際の対象画素に入射する光であり、ε11,ε12,ε13はフラッシュ光を含む照明光に関する基底関数の加重係数である。同様に、I2(λ)はフラッシュOFFの際の対象画素に入射する光であり、ε21,ε22,ε23はフラッシュ光を含まない照明光に関する基底関数の加重係数である。さらに、εsi(i=1,2,3)は(ε1i−ε2i)である。
【0047】数5において、基底関数Ei(λ),Sj(λ)は予め定められた関数であり、分光感度Rc(λ)は予め計測により求めることができる関数である。これらの情報は予めROM22やRAM23に記憶される。一方、2回の撮影においてシャッター速度(あるいは、CCD112の積分時間)および絞り値が同一に制御され、第1画像から第2画像を減算した差分画像は、照明環境の変更のみの影響を受けた画像、すなわち、フラッシュ光のみを照明光源とする画像に相当することから、加重係数εsiは後述する手法によりフラッシュ光の相対分光分布より導くことができる。
【0048】したがって、数5に示す方程式において未知数は3つの加重係数σ1,σ2,σ3のみである。また、数5に示す方程式は対象画素におけるR,G,Bの3つの色のそれぞれに関して求めることができ、これら3つの方程式を解くことにより3つの加重係数σ1,σ2,σ3を求めることができる。すなわち、対象画素に対応する被写体上の位置の分光反射率が得られる。
【0049】次に、加重係数εsiを求める手法について説明する。既述のように差分画像はフラッシュ光のみを照明光とする画像に相当し、差分画像における照明光の相対分光分布は既知である。一方で、フラッシュから遠い被写体上の領域はフラッシュ121に近い領域よりもフラッシュ光を受ける度合いが小さい。したがって、差分画像ではおおよそフラッシュ121から遠い位置ほど暗く現れる。
【0050】そこで、3つの加重係数εs1,εs2,εs3の値の相対関係を一定に保ったまま差分画像中の対象画素の輝度に比例してこれらの加重係数の値を増減する。すなわち、差分画像中の対象画素の輝度が小さい場合には加重係数εs1,εs2,εs3の値は小さな値として決定され、輝度が大きい場合には加重係数εs1,εs2,εs3の値は大きな値として決定される。なお、3つの加重係数εs1,εs2,εs3の相対関係は3つの基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)の加重和がフラッシュ光の分光分布と比例するように予め求められており、輝度と加重係数εsiとの比例関係は予め測定により求められる。
【0051】加重係数εsiは対象画素に対応する被写体上の位置に照射されるフラッシュ光の分光分布を示す値であり、第1画像および第2画像間におけるフラッシュ121による照明光の変更量の分光分布を示す値である。したがって、フラッシュ分光データ234より加重係数εsiを求める処理は、フラッシュ光の相対分光分布からフラッシュ121による照明環境(照明光)の分光変更量を求める処理に相当する。
【0052】以上の原理に基づき、デジタルカメラ1の物体色成分データ生成部202は差分画像データ233の画素値およびフラッシュ分光データ234を参照しながら、各画素に対応する被写体上の位置の分光反射率を求める。被写体の分光反射率は、照明環境の影響が取り除かれた画像データに相当し、物体色成分データ235としてRAM23に記憶される(ステップST14)。
【0053】物体色成分データ235が求められると、数3および数4より第2画像の各画素のR,G,Bの値に基づいて加重係数ε21,ε22,ε23に関する3つの方程式を求めることができる。照明成分データ生成部203では、これらの方程式を解くことにより第2画像における各画素に関する加重係数ε2iが求められる。求められた各画素の加重係数ε2iは第2画像におけるフラッシュ光を含まない照明環境の影響を示す成分となる。
【0054】ここで、各画素の加重係数ε2iはそのまま照明成分データ236とされてもよいが、およそ均一な照明光の照明環境である場合には画素ごとの加重係数ε2iのばらつきは少ない。そこで、加重係数ε21,ε22,ε23のそれぞれについて全画素の平均値を求め、求められた3つの加重係数が照明成分データ236とされる(ステップST15)。これにより、照明成分データ236は画素の位置に依存しない値となり、後述するように他の物体色成分データ235と合成することでこの照明環境による雰囲気を他の被写体の画像に取り込むことが可能となる。
【0055】物体色成分データ235および照明成分データ236が求められると、これらのデータはデジタルカメラ1の本体に対して着脱自在なメモリカード8へと転送されて保存される(ステップST16,ST17)。このとき、CPU21の制御の下、カードI/F123に露出演算部204から露出に関する撮影条件を示す露出データ237が入力され、図7に示すように物体色成分データ235は露出データ237とともに1つのファイル81として保存される(ステップST16)。照明成分データ236は物体色成分データ235とは別のファイルとして保存され、これらのデータは互いに独立して取り出し可能な状態とされる。
【0056】デジタルカメラ1では、後述するように物体色成分データ235から画像を再生する際に、露出に関する撮影条件を利用して色順応に基づく色変換が行われる。そこで、デジタルカメラ1では、物体色成分データ235の取り扱いを容易とするために物体色成分データ235と露出データ237とを1つのファイル81に格納する。また、これにより、画像再生処理を外部のコンピュータにて行う際にもファイル81をコンピュータに転送することで適切な色変換を容易に行うことが可能となる。
【0057】なお、露出に関する撮影条件としては露出値決定の際に用いられた被写体の明るさが保存されることが好ましいが、撮影時の被写体の明るさを求めることができるデータであれば他の撮影条件が利用されてもよい。例えば、CCD112の感度と被写体の明るさとから露出値が求めることができるため、CCD112の感度が既知である場合には、露出値が露出データ237として利用されてもよい。露出値に代えてシャッタースピードおよび絞り値が露出データ237とされてもよい。また、CCD112の感度および露出値が露出データ237とされてもよい。
【0058】次に、以上のようにしてメモリカード8に保存された物体色成分データ235および照明成分データ236を用いて画像を再生する際のデジタルカメラ1の動作について図4および図8を参照しながら説明する。なお、メモリカード8には、物体色成分データ235および露出データ237を格納する複数のファイル、並びに、照明成分データ236を格納する複数のファイルが予め記録されているものとする。メモリカード8内のこれらのファイルは外部のコンピュータから読み出されたものであってもよい。
【0059】まず、操作者がディスプレイ125の表示を見ながら操作ボタン126を介して指示を行うことにより、所望の物体色成分データ235を格納するファイルを選択する。これにより、再生する画像の対象(すなわち、撮影時の被写体)が決定される。選択された物体色成分データ235はカードI/F123を介して合成部205に読み出される(正確には、RAM23に読み出されて合成部205が取り扱い可能とされる。)。
【0060】さらに、操作者がディスプレイ125の表示を見ながら操作ボタン126を介して指示を行うことにより、所望の照明成分データ236を格納するファイルを選択する。これにより、被写体への照明環境が決定される。選択された照明成分データ236はカードI/F123を介して合成部205に読み出される(ステップST21)。
【0061】既に読み込まれている物体色成分データ235の基礎となった画像を再生したい場合には、物体色成分データ235が求められた時に求められた照明成分データ236が選択され、他の画像が撮影された際の照明環境下での画像として再生したい場合には、他の画像が撮影された際に得られた照明成分データ236がRAM23に読み込まれる。もちろん、CIE規格のD65、蛍光灯等に対応した照明成分データ236や仮想的な光源に対応した照明成分データ236が準備されていてもよく、操作者が照明成分データ236を選択することにより、任意の照明環境が画像に与える影響を再生画像に反映させることが以下の演算処理により実現される。
【0062】物体色成分データ235および照明成分データ236が合成部205に入力されると、これらのデータを数3および数4の加重係数εi,σjとして用いることによりこれらのデータが合成されて各画素のR,G,Bの値ρr,ρg,ρbが合成済画像データとして求められる(ステップST22)。
【0063】合成済画像データは、照明成分データ236とともに変換部206へと転送され、変換部206は、照明成分データ236が示す照明環境(照明光)の三刺激値X0,Y0,Z0を数6に示す演算により求め、数7により照明光の色度x0,y0を得る(ステップST23)。
【0064】
【数6】
【0065】
【数7】
【0066】なお、数6においてRX(λ),RY(λ),RZ(λ)は等色関数、E(λ)は照明成分データ236から数1により導かれる照明光の分光分布、λは可視領域の波長である。
【0067】変換部206にはさらに物体色成分データ235とともにメモリカード8に保存されている露出データ237がカードI/F123を介して入力される(ステップST24)。
【0068】その後、変換部206により色度x0,y0および露出データ237を用いて合成済画像データに色順応に基づく色の変換が施される(ステップST25)。なお、色順応に基づく色変換には、色度の順応のみならず、明暗の順応を反映した変換が含まれてもよい。また、明暗の順応を反映した変換のみでもよい。色順応に基づく色変換を合成済画像データに施して変換済画像データを生成することにより、色順応を考慮した画像をディスプレイ125に表示することが実現される。
【0069】次に、変換部206による合成済画像データの色変換について説明する。デジタルカメラ1では、CIECAT94LABによる色順応式が利用される(詳細については、Yoshinobu Nayatani et al., "Proposal of an Abridged Color-Appearance Model CIECAT94LAB and Its Field Trials", COLOR reserch and application, vol. 24, No. 6, Dec. 1999を参照。)。
【0070】まず、合成済画像の各画素の画素値が行列式を用いてCIE規格の表色系の三刺激値X,Y,Zに変換され、さらに、数8により各画素の三刺激値X,Y,Zが生理原色系の三刺激値R,G,Bに変換される。
【0071】
【数8】
【0072】次に、数9により変換後の三刺激値RR,GR,BRが求められる。なお、数9の各種パラメータについては後述する。
【0073】
【数9】
【0074】最後に、数10により変換後の三刺激値RR,GR,BRが三刺激値XR,YR,ZRに戻され、変換済画像データが生成される(ステップST25)。
【0075】
【数10】
【0076】上記変換後の各画素の三刺激値XR,YR,ZRがディスプレイ125に表示するための値へと変換され、変換後の画像がディスプレイ125に表示される(ステップST26)。これにより、色順応を考慮した画像が表示される。
【0077】次に、数9の各種パラメータについて説明する。Y0は被写体中の背景の影響を数9に与えるパラメータであり、ここでは20(%)に設定される。nはノイズの影響を考慮したパラメータであり、0.1または1が与えられる。
【0078】ξR,ηR,ζRは色順応に基づく色変換の基準となる基準照明(例えば、CIE規格のD65、照度1000ルクス(lx))の相対色度であり、基準照明の色度xR0,yR0から数11により導かれる。
【0079】
【数11】
【0080】<ξ>,<η>,<ζ>は色度に関する順応を考慮した相対色度であり、数12により照明成分データ236が示す照明(以下、「試験照明」という。)の色度x0,y0から相対色度ξ,η,ζを求めておき、試験照明の相対色度ξ,η,ζと基準照明の相対色度ξR,ηR,ζRとから数13により求められる。
【0081】
【数12】
【0082】
【数13】
【0083】なお、数13中のαは、数14により求められる。
【0084】
【数14】
【0085】数14中のL0は、被写体の順応輝度であり、単位はカンデラ毎平方メートル(cd/m2)である。順応輝度L0の算出には露出データ237が利用され、その詳細については後述する。また、数14では、合成画像の画素値をL*a*b*表色系へと変換した際の値L*も利用される。係数Dは、被写体が発光しない物体の場合には1.0、被写体自体が発光するディスプレイの場合には0.0、カラースライドのように光が投射されるスクリーンが被写体の場合には0.5が与えられる。
【0086】実際の合成済画像が表す被写体は、発光物体であるか否かを区別することが困難であることから、係数Dは画素ごとに厳密に区別されない。通常は、係数Dは1.0とされる。一方、係数Dを使用者の好みを反映する係数として利用することも可能である。すなわち、係数Dを使用者が指定することにより、順応度合い(換言すれば、照明光の影響の度合い)を変更して好みの色再現を実現することができる。
【0087】数9中のRR0,GR0,BR0は、基準照明下の実効順応応答であり、数15により求められる。
【0088】
【数15】
【0089】数15においてLR0は、基準照明の順応輝度であり、数16により求められる。
【0090】
【数16】
【0091】数16において、ER0は基準照明の照度(ER0=1000(lx))である。
【0092】数9中のR0,G0,B0は、試験照明下の実効順応応答であり、被写体の順応輝度L0(後述)を用いて数17により求められる。
【0093】
【数17】
【0094】べき指数の関数β1(C1),β2(C2)(C1=RR0,GR0,R0,G0;C2=BR0,B0)は、数18により示される。
【0095】
【数18】
【0096】さらに、数9中のKは以上の各種パラメータを用いて数19により求められる。
【0097】
【数19】
【0098】ただし、デジタルカメラ1の場合、Y0=20であるため、Kは1となる。
【0099】次に、露出データ237を利用して被写体の順応輝度L0を算出する手法について説明する。
【0100】露出データ237は、被写体の明るさを示すデータ(または、少なくとも被写体の明るさを導き出すことができるデータ)となっている。具体的には、被写体を観測した際の照度E0が被写体の明るさとされる。
【0101】一般に、輝度とは放射源(被写体)を観測方向から見たときの単位面積当たりの放射強度を表し、光束をΦ、立体角をΩ、光束の断面積をS、光束の断面と光束の方向とのなす角をθとして、数20にて表される。
【0102】
【数20】
【0103】一方、照度は単位面積当たりに入射する放射束であり、光束をΦ、入射面積をAとして、数21にて表される。
【0104】
【数21】
【0105】ここで、デジタルカメラ1にて被写体を撮影する場合、観測方向は被写体と正対する方向とみなすことができるため、θを0°(すなわち、cosθ=1)とすることができる。また、被写体上の点から出射した光のうち、1画素に入射する光の度合いも一定である(すなわち、立体角Ωを考慮する必要がない。)とみなすことができ、kを定数として、数22が満たされると想定することができる。
【0106】
【数22】
【0107】デジタルカメラ1では、予め実測により定数kを求めておき、本撮影の前のCCD112の出力や測光センサの出力に基づいて被写体の照度(明るさ)を露出演算部204により求めるようになっている。そして、被写体の明るさが露出データ237として物体色成分データ235とともに1つのファイルとしてメモリカード8に保存される。
【0108】数14および数17にて用いられる被写体の順応輝度L0は、露出データ237から導かれる被写体の照度E0を用いて数23により導かれる。
【0109】
【数23】
【0110】以上、デジタルカメラ1の構成および動作について説明してきたが、デジタルカメラ1では、フラッシュONの状態にて撮影された第1画像、フラッシュOFFの状態にて撮影された第2画像、および、フラッシュ光の相対分光分布とから照明環境の影響が取り除かれた画像データに相当する物体色成分データ235を求めることができる。すなわち、被写体の分光反射率を示す物体色成分データ235を照明環境が変更された2枚の画像から簡単に求めることができる。照明環境の変更はフラッシュ121を用いて容易に行われる。
【0111】また、デジタルカメラ1では求められた物体色成分データ235および第2画像データ232から照明成分データ236が求められる。したがって、デジタルカメラ1では、物体色成分データ235に複数の照明成分データ236から選択されたものを適宜合成することにより、所望の照明環境下の所望の撮影対象の画像を再生することができる。
【0112】このとき、照明成分データ236から照明光の色度を求めつつ色順応に基づいた色変換を行うことにより、より自然な(人間の視覚に合った)画像が再生される。
【0113】さらに、デジタルカメラ1では、色順応に基づく色変換の際に露出演算部204により求められた露出に関する撮影条件が反映されるため、撮影条件ごとに変化する被写体への照明光の強度を色順応に基づく色変換に反映させることができ、一層適切な色変換が実現される。
【0114】なお、デジタルカメラ1としては特殊な機構を有さず、汎用のオンチップフィルタが設けられたCCDを有するデジタルカメラの簡単な仕様変更により物体色成分データ235、照明成分データ236および変換済画像データを求めることが可能となる。これにより、物体色成分データ235等を求める動作を汎用のデジタルカメラ1の特殊モードとして実現することができ、新たな生産コストが生じることはない。
【0115】<2. 第2の実施の形態>第1の実施の形態では、デジタルカメラ1内部にて物体色成分データ235および照明成分データ236を求めたり、色順応を考慮した画像再生を行うが、画像の取得以外の処理はコンピュータにより行われてもよい。
【0116】図9は本発明の第2の実施の形態に係るデジタル撮像システム3の構成を示す図である。デジタル撮像システム3は、撮影対象の画像を取得するデジタルカメラ31、および、デジタルカメラ31にて得られた画像を処理するコンピュータ33を有する。
【0117】デジタルカメラ31は画像を撮影し、得られた画像データをコンピュータ33に伝送ケーブルを介して転送する。もちろん、画像データはメモリカード等の記録媒体を介してコンピュータ33に転送されてもよい。
【0118】デジタルカメラ31は、第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1から画像処理に係る機能を取り除いた動作を行う。すなわち、図5中のステップST11,ST12を実行し、第1画像データ231および第2画像データ232を取得する。また、露出演算部204による露出データ237の生成も行う。そして、図10に示すように、第1画像データ231、第2画像データ232および露出データ237を1つのファイル82に格納する。このファイル82がコンピュータ33に転送され、画像処理が実行される。
【0119】図11はコンピュータ33の構成を示すブロック図である。コンピュータ33は、各種演算処理を行うCPU301、基本プログラムを記憶するROM302および各種情報を記憶するRAM303をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク304、各種情報の表示を行うディスプレイ305、操作者からの入力を受け付けるキーボード306aおよびマウス306b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体91から情報の読み取りを行う読取装置307、並びに、デジタルカメラ31との間で通信を行う通信部308が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0120】コンピュータ33には、事前に読取装置307を介して記録媒体91からプログラム341が読み出され、固定ディスク304に記憶される。そして、プログラム341がRAM303にコピーされるとともにCPU301がRAM303内のプログラム341に従って演算処理を実行することによりコンピュータ33が画像処理装置としての動作を行う。
【0121】すなわち、CPU301およびその周辺構成が図4に示す差分画像生成部201、物体色成分データ生成部202および照明成分データ生成部203として動作することにより第1画像データ231および第2画像データ232(並びに、フラッシュ分光データ234)から物体色成分データ235および照明成分データ236が生成される。フラッシュ分光データ34は、予めコンピュータ33に準備されていてもよく、デジタルカメラ31から転送されてもよい。
【0122】また、画像が再生される際には、CPU301およびその周辺構成が図4に示す合成部205および変換部206として動作することによりキーボード306aおよびマウス306bを介してデータの選択が行われ、任意の照明環境の雰囲気を取り入れつつ色順応を考慮した画像をディスプレイ305に表示することが実現される。このとき、物体色成分データ235を生成する際に利用された第1画像データ231および第2画像データ232と同一ファイル内に存在する露出データ237が利用される。
【0123】以上のように、画像処理はコンピュータ33により行うことも可能であり、この場合、デジタルカメラ31における処理の負担が大幅に軽減される。
【0124】<3. 変形例>以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0125】上記実施の形態ではフラッシュを用いて取得された第1画像およびフラッシュを用いることなく取得された第2画像を利用して物体色成分データ235および照明成分データ236を求めるようにしているが、画像データから物体色成分データ235および照明成分データ236を求める手法として他の手法が用いられてもよい。
【0126】例えば、図12に示すようにモノクロ画像を取得するデジタルカメラ31aの前に互いに異なる分光透過特性の複数のフィルタを有する回転式フィルタ32を配置し、回転式フィルタ32を回転させながら複数の画像を取得する。そして、複数の画像のデータをコンピュータ33に転送し、コンピュータ33にて物体色成分データ235および照明成分データ236が求められてもよい。具体的演算としては、富永昌治、「色恒常性を実現するカメラ系とアルゴリズム」、信学技報 PRU95-11(1995-05)(77〜84頁)に記載された手法が利用可能である。
【0127】また、複数のフィルタを切り替える機構をデジタルカメラ内部に設けてもよい。フィルタの切り替え機構を設けずにデジタルカメラに複数(好ましくは4以上)の入力バンドを有する撮像素子(すなわち、複数種類のオンチップフィルタが設けられたCCD)を設け、これにより複数の波長帯のそれぞれについて画像を取得するようになっていてもよい。
【0128】さらに、デジタルカメラ1に照明光を受光するマルチバンドセンサを設けておき、照明光の分光分布を照明成分データ236として取得してから物体色成分データ235が求められてもよい。
【0129】物体色成分データ235は被写体の分光反射率を正確に示すデータである必要はなく、ほぼ分光反射率を示すデータであれば足りる。照明成分データ236も照明光の分光分布を正確に示すデータとして求められる必要はなく、ほぼ分光分布を示すデータであればよい。
【0130】色順応に基づく色変換も既存の様々な手法が利用されてよい。変換後の画像の出力先もディスプレイに限定されるものではなく、プリンタであってもよい。
【0131】また、上記実施の形態では、露出に関する撮影条件として被写体の明るさが露出データ237として利用されると説明したが、露出に関する撮影条件として他のデータが利用されてもよい。また、被写体の明るさそのものが露出データ237とされる必要はなく、既述のように被写体の明るさを導き出すことができるデータであればどのようなデータが露出データ237とされてもよい。
【0132】第1の実施の形態ではデジタルカメラ1内部にて物体色成分データ235および照明成分データ236の算出、並びに、画像の再生を行い、第2の実施の形態では、これらの処理をコンピュータ33にて行うが、これらの処理の分担はデジタルカメラとコンピュータとの間で任意の設定されてよい。第1の実施の形態では図7に示したように物体色成分データ235と露出データ237とは1つのファイルとして保存されると説明したが、このようなファイルをコンピュータへと転送することにより、コンピュータにて色順応を考慮した画像の再生を容易に行うことができる。
【0133】一方、差分画像データ233の生成のみをデジタルカメラにて行い、差分画像データ233および第2画像データ232が露出データ237とともに1つのファイルとしてコンピュータ33に転送されてもよい。すなわち、物体色成分データ235または物体色成分データ235を導くことができるデータと露出データ237とをコンピュータ33に転送することにより、コンピュータ33にて様々な照明環境下の画像を色順応を考慮しつつ再生することが可能となる。
【0134】また、上記実施の形態では、CPUがプログラムに従って演算を行うことにより、各種機能が実現されると説明したが、演算処理の全部または一部は専用の電気的回路により実現されてもよい。特に、繰り返し演算を行う箇所をロジック回路にて構築することにより、高速な演算が実現される。
【0135】なお、上記実施の形態では、充電電圧および発光時間をモニタすることにより、フラッシュ121の発光特性を一定に保つようにしているが、他の方法によりフラッシュ121の発光特性が一定に保たれてもよい。例えば、フラッシュ121をパルス状に発光することにより、フラッシュの発光特性が一定に保たれてもよい。
【0136】充電電圧および発光時間をモニタすることにより、発光後にフラッシュ光の分光特性を求めるようにしてもよい。被写体への照明環境を変更する方法はフラッシュ121を用いる手法に限定されるものではない。
【0137】また、以上の説明では物体色成分データ235として各画素に対応する加重係数σ1,σ2,σ3が保存され、照明成分データ236として一組の加重係数ε1,ε2,ε3が保存されると説明したが、これらのデータは被写体の分光反射率の基底関数S1(λ),S2(λ),S3(λ)や照明光の分光分布の基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)とともに保存されてもよい。さらに、分光反射率の特性曲線自体が物体色成分データ235とされてもよく分光分布の特性曲線自体が照明成分データ236とされてもよい。
【0138】
【発明の効果】請求項1ないし3の発明では、任意の照明環境の影響を反映しつつ色順応を考慮した画像データを生成することができる。
【0139】また、請求項2の発明では、撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を行うことができる。
【0140】また、請求項3の発明では、照明環境に応じた色変換を行うことができる。
【0141】請求項4の発明では、別途設けられたコンピュータ等を用いて撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を容易に行うことができる。
【0142】請求項5ないし8の発明では、撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を行うことができる。
【0143】また、請求項6の発明では、画像データから物体色成分データを求めることができる。
【0144】また、請求項7の発明では、照明環境に応じた色変換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るデジタルカメラの全体を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面図である。
【図3】デジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図4】デジタルカメラの機能をブロックにて示す図である。
【図5】デジタルカメラの動作の流れを示す図である。
【図6】発光制御回路の動作の流れを示す図である。
【図7】物体色成分データを含むファイルのデータ構造を示す図である。
【図8】画像の再生動作の流れを示す図である。
【図9】デジタル撮像システムを示す図である。
【図10】物体色成分データを含むファイルのデータ構造を示す図である。
【図11】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図12】デジタル撮像システムの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
3 デジタル撮像システム
8 メモリカード
21,301 CPU
22,302 ROM
23,303 RAM
33 コンピュータ
81,82 ファイル
91 記録媒体
112 CCD
123 カードI/F
202 物体色成分データ生成部
203 照明成分データ生成部
205 合成部
206 変換部
221,341 プログラム
231 第1画像データ
232 第2画像データ
235 物体色成分データ
236 照明成分データ
237 露出データ
ST13〜ST15,ST22,ST23,ST25 ステップ
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、色順応を考慮しつつ画像の色を変換する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】被写体への照明光が変更された場合、被写体から観測者へと入射する光の分光分布が変化するが、被写体の色が大きく変化したようには感じないという色順応効果が人間の視覚に生じる。そして、このような人間の視覚における色順応を演算式として準備しておき、画像の色を実際に人間が感じとる色へと変換する技術も提案されている。
【0003】例えば、特開平9−178561号公報では、人間の色順応を考慮した色へと画像の色を変換する技術が提案されている。上記文献では、視対象の分光反射率を視対象の色に対応する色票から特定し、視対象への照明光と視対象の分光反射率とから人間が実際に感じとると考えられる色が求められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記文献では視対象はカラーディスプレイに表現される仮想的な物体であり、視対象の色は操作者により数値として入力される。したがって、この技術は実在する被写体を撮影して得られる画像に適用することはできない。
【0005】本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、実写にて得られる画像を撮影時とは異なる照明環境下の画像へと変換し、さらに、人間の色順応効果を考慮した画像とすることを主たる目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データを求める物体色成分データ生成手段と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データと前記物体色成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成手段と、色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換手段とを備える。
【0007】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデジタル撮像装置であって、前記変換手段が、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件を用いて前記色順応に基づく色変換を行う。
【0008】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のデジタル撮像装置であって、前記被写体の画像データから前記照明成分データを求める照明成分データ生成手段をさらに備え、前記変換手段が、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換を行う。
【0009】請求項4に記載の発明は、デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データまたは前記物体色成分データを導くことができるデータと、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件とを一のファイルとして保存する保存手段とを備える。
【0010】請求項5に記載の発明は、画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程とを実行させる。
【0011】請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、画像データから前記物体色成分データを求める工程をさらに実行させる。
【0012】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、前記画像データから前記照明成分データを求める工程をさらに実行させ、前記変換工程において、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換が行われる。
【0013】請求項8に記載の発明は、画像処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程とを実行させる。
【0014】
【発明の実施の形態】<1. 第1の実施の形態>図1は本発明の第1の実施の形態に係るデジタル撮影装置であるデジタルカメラ1の全体を示す斜視図である。デジタルカメラ1は、撮影を行うレンズユニット11、および、レンズユニット11にてデジタルデータとして取得された画像を処理する本体部12とを有する。
【0015】レンズユニット11は、複数のレンズを有するレンズ系111、および、レンズ系111を介して被写体の像を取得するCCD112を有する。そして、CCD112から出力される画像信号は本体部12へと送られる。また、レンズユニット11には、操作者が被写体を捉えるためのファインダ113、測距センサ114等も配置される。
【0016】本体部12には、フラッシュ121およびシャッタボタン122が設けられ、操作者がファインダ113を介して被写体を捉え、シャッタボタン122を操作することにより、CCD112にて電気的に画像が取得される。このとき、必要に応じてフラッシュ121が発光する。なお、CCD112は各画素の値としてR,G,Bの各色に関する値を取得する3バンドの撮像デバイスとなっている。
【0017】CCD112からの画像信号は本体部12内部にて後述する処理が行われ、必要に応じて本体部12に装着されている外部メモリであるメモリカード8に記憶される。メモリカード8は本体部12下面の蓋を開けて取出ボタン124を操作することにより本体部12から取り出される。記録媒体であるメモリカード8に記憶されたデータは別途設けられたコンピュータ等の他の装置に渡すことができる。逆に、他の装置にてメモリカード8に記憶されたデータをデジタルカメラ1が読み出すことも可能である。
【0018】図2はデジタルカメラ1を背後から見たときの様子を示す図である。本体部12の背面の中央には撮影された画像を表示したり、操作者へのメニューを表示する液晶のディスプレイ125が設けられ、ディスプレイ125の側方にはディスプレイ125に表示されるメニューに従って入力操作を行うための操作ボタン126が配置される。これにより、デジタルカメラ1の操作、撮影条件の設定、メモリカード8の保守、後述する画像の再生等ができるようにされている。
【0019】図3は、デジタルカメラ1の主要な構成をブロック等にて示す図である。
【0020】図3に示す構成のうち、レンズ系111、CCD112、A/D変換部115、シャッタボタン122、CPU21、ROM22およびRAM23は画像を取得する機能を実現する。すなわち、レンズ系111により被写体の像がCCD112上に結像され、シャッタボタン122が押されると、CCD112からの画像信号がA/D変換部115によりデジタル変換される。A/D変換部115にて変換されたデジタル画像信号は本体部12のRAM23に画像データとして記憶される。なお、これらの処理の制御はCPU21がROM22内に記憶されているプログラム221に従って動作することにより行われる。
【0021】また、本体部12に設けられるCPU21、ROM22およびRAM23が画像を処理する機能を実現する。具体的には、ROM22に記憶されているプログラム221に従って、RAM23を作業領域として利用しながらCPU21が取得された画像に画像処理を施す。
【0022】カードI/F(インターフェイス)123はRAM23と接続され、操作ボタン126からの入力操作に基づいてRAM23とメモリカード8との間の各種データの受け渡しを行う。また、ディスプレイ125もCPU21からの信号に基づいて画像の表示や操作者への情報の表示を切り替えながら行う。
【0023】フラッシュ121は発光制御回路121aを介してCPU21に接続されており、CPU21からフラッシュ121を点灯する旨の指示を受けた場合には、発光制御回路121aがフラッシュ121の発光特性が撮影ごとにばらつかないように制御を行う。これにより、フラッシュ121からの光の分光分布(分光強度)が一定となるように制御される。
【0024】図4は、主としてCPU21、ROM22およびRAM23により実現される機能を他の構成とともにブロックにて示す図であり、図4に示す構成のうち、差分画像生成部201、物体色成分データ生成部202、照明成分データ生成部203、露出演算部204、合成部205および変換部206が、CPU21、ROM22、RAM23等により実現される機能である。図5は撮影および画像処理の流れを示す流れ図である。以下、図4および図5を参照しながらデジタルカメラ1の動作について説明する。
【0025】まず、フラッシュがONの状態にて撮影を行い、フラッシュ光を浴びた被写体の画像(以下、「第1画像」という。)を得る。すなわち、フラッシュ121を点灯するとともにCCD112にて画像を取得し、得られた画像(正確には、画像信号)がA/D変換部115からRAM23へと送られ、第1画像データ231として記憶される(ステップST11)。
【0026】次に、フラッシュがOFFの状態にて撮影を行い、フラッシュ光を有しない照明環境下での被写体の画像(以下、「第2画像」という。)を得る。すなわち、フラッシュを用いることなくCCD112にて画像を取得し、得られた画像がA/D変換部115からRAM23へと送られ、第2画像データ232として記憶される(ステップST12)。
【0027】これらの2回の撮影は、連写のように迅速に行われる。したがって、第1画像と第2画像との撮影範囲は同一となる。また、2回の撮影はシャッター速度(CCD112の積分時間)および絞り値(すなわち、露出に関する撮影条件)が同一の条件にて行われる。
【0028】露出条件は、撮影直前にCCD112にて取得された画像(または、測光センサの出力)に基づいて露出演算部204により求められる。具体的には、まず、CCD112や測光センサの出力に基づいて被写体の明るさを求め、CCD112の感度特性を考慮して露出値が決定される。その後、デジタルカメラ1内に予め準備されているシャッタースピードと絞り値との関係を示すプログラム線図に従ってシャッタースピードおよび絞り値が自動的に決定される。
【0029】また、フラッシュ121の発光は、フラッシュ光の分光分布が一定となるように発光制御回路121aにより制御される。図6は発光制御回路121aの動作の流れを示す図である。
【0030】フラッシュONでの撮影の際に、あるいは、撮影に先立って、まず、発光制御回路121aがフラッシュ121のフラッシュ電源への充電電圧(すなわち、フラッシュ121に与えられる電圧)のモニタを開始する(ステップST101)。そして、充電電圧が所定の電圧(例えば、330V)に達したと確認されると(ステップST102)、フラッシュ電源からフラッシュ121へと電力を供給して発光を開始する(ステップST103)。
【0031】発光の開始と同時に発光制御回路121aは発光時間のモニタを開始する(ステップST104)。その後、発光開始から所定の時間が経過したことが確認されると(ステップST105)、発光が停止される(ステップST106)。
【0032】このように、フラッシュ121の発光は一定の電圧および発光時間となるように制御され、フラッシュ121の発光特性が撮影ごとにばらつくことはない。なお、フラッシュ121の分光分布も上記発光制御により一定に保たれ、この分光分布は予め計測されてRAM23にフラッシュ分光データ234として記憶されている。なお、正確にはフラッシュ光の相対的な分光分布(最大の分光強度を1として正規化された分光分布をいい、以下「相対分光分布」という。)がフラッシュ分光データ234として用いられる。
【0033】2回の撮影により、RAM23に第1画像データ231および第2画像データ232が保存されると、差分画像生成部201が第1画像データ231から第2画像データ232を減算して差分画像データ233を求める。これにより、第1画像の各画素のR,G,Bの各値から第2画像の対応する画素のR,G,Bの各値がそれぞれ減算され、第1画像と第2画像との差分画像が得られる(ステップST13)。
【0034】次に、物体色成分データ生成部202により差分画像データ233およびフラッシュ分光データ234を用いて第2画像から照明環境の影響を取り除いた成分が物体色成分データ235として求められ、RAM23に保存される(ステップST14)。物体色成分データ235は、被写体の分光反射率に実質的に相当するデータである。以下、被写体の分光反射率を求める原理について説明する。
【0035】まず、被写体を照明する照明光(光源からの直接的な光および間接的な光を含む照明環境における照明光いう。)の分光分布をE(λ)とし、この分光分布E(λ)を3つの基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)および加重係数ε1,ε2,ε3を用いて、
【0036】
【数1】
【0037】と表し、同様に、ある画素(以下、「対象画素」という。)に対応する被写体上の位置の分光反射率をS(λ)を3つの基底関数S1(λ),S2(λ),S3(λ)および加重係数σ1,σ2,σ3を用いて、
【0038】
【数2】
【0039】と表すと、CCD112上の対象画素に入射する光I(λ)(レンズユニット11内のフィルタ等を無視した場合の入射光)は、
【0040】
【数3】
【0041】と表現される。また、対象画素のR,G,Bのいずれかの色(以下、「対象色」という。)に関する値がρcであり、CCD112の対象色の分光感度をRc(λ)とすると、値ρcは、
【0042】
【数4】
【0043】により導かれる。
【0044】ここで、フラッシュONの第1画像の対象画素の対象色の値がρc1であり、フラッシュOFFの第2画像の対応する値がρc2である場合、差分画像の対応する値ρsは、
【0045】
【数5】
【0046】となる。I1(λ)はフラッシュONの際の対象画素に入射する光であり、ε11,ε12,ε13はフラッシュ光を含む照明光に関する基底関数の加重係数である。同様に、I2(λ)はフラッシュOFFの際の対象画素に入射する光であり、ε21,ε22,ε23はフラッシュ光を含まない照明光に関する基底関数の加重係数である。さらに、εsi(i=1,2,3)は(ε1i−ε2i)である。
【0047】数5において、基底関数Ei(λ),Sj(λ)は予め定められた関数であり、分光感度Rc(λ)は予め計測により求めることができる関数である。これらの情報は予めROM22やRAM23に記憶される。一方、2回の撮影においてシャッター速度(あるいは、CCD112の積分時間)および絞り値が同一に制御され、第1画像から第2画像を減算した差分画像は、照明環境の変更のみの影響を受けた画像、すなわち、フラッシュ光のみを照明光源とする画像に相当することから、加重係数εsiは後述する手法によりフラッシュ光の相対分光分布より導くことができる。
【0048】したがって、数5に示す方程式において未知数は3つの加重係数σ1,σ2,σ3のみである。また、数5に示す方程式は対象画素におけるR,G,Bの3つの色のそれぞれに関して求めることができ、これら3つの方程式を解くことにより3つの加重係数σ1,σ2,σ3を求めることができる。すなわち、対象画素に対応する被写体上の位置の分光反射率が得られる。
【0049】次に、加重係数εsiを求める手法について説明する。既述のように差分画像はフラッシュ光のみを照明光とする画像に相当し、差分画像における照明光の相対分光分布は既知である。一方で、フラッシュから遠い被写体上の領域はフラッシュ121に近い領域よりもフラッシュ光を受ける度合いが小さい。したがって、差分画像ではおおよそフラッシュ121から遠い位置ほど暗く現れる。
【0050】そこで、3つの加重係数εs1,εs2,εs3の値の相対関係を一定に保ったまま差分画像中の対象画素の輝度に比例してこれらの加重係数の値を増減する。すなわち、差分画像中の対象画素の輝度が小さい場合には加重係数εs1,εs2,εs3の値は小さな値として決定され、輝度が大きい場合には加重係数εs1,εs2,εs3の値は大きな値として決定される。なお、3つの加重係数εs1,εs2,εs3の相対関係は3つの基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)の加重和がフラッシュ光の分光分布と比例するように予め求められており、輝度と加重係数εsiとの比例関係は予め測定により求められる。
【0051】加重係数εsiは対象画素に対応する被写体上の位置に照射されるフラッシュ光の分光分布を示す値であり、第1画像および第2画像間におけるフラッシュ121による照明光の変更量の分光分布を示す値である。したがって、フラッシュ分光データ234より加重係数εsiを求める処理は、フラッシュ光の相対分光分布からフラッシュ121による照明環境(照明光)の分光変更量を求める処理に相当する。
【0052】以上の原理に基づき、デジタルカメラ1の物体色成分データ生成部202は差分画像データ233の画素値およびフラッシュ分光データ234を参照しながら、各画素に対応する被写体上の位置の分光反射率を求める。被写体の分光反射率は、照明環境の影響が取り除かれた画像データに相当し、物体色成分データ235としてRAM23に記憶される(ステップST14)。
【0053】物体色成分データ235が求められると、数3および数4より第2画像の各画素のR,G,Bの値に基づいて加重係数ε21,ε22,ε23に関する3つの方程式を求めることができる。照明成分データ生成部203では、これらの方程式を解くことにより第2画像における各画素に関する加重係数ε2iが求められる。求められた各画素の加重係数ε2iは第2画像におけるフラッシュ光を含まない照明環境の影響を示す成分となる。
【0054】ここで、各画素の加重係数ε2iはそのまま照明成分データ236とされてもよいが、およそ均一な照明光の照明環境である場合には画素ごとの加重係数ε2iのばらつきは少ない。そこで、加重係数ε21,ε22,ε23のそれぞれについて全画素の平均値を求め、求められた3つの加重係数が照明成分データ236とされる(ステップST15)。これにより、照明成分データ236は画素の位置に依存しない値となり、後述するように他の物体色成分データ235と合成することでこの照明環境による雰囲気を他の被写体の画像に取り込むことが可能となる。
【0055】物体色成分データ235および照明成分データ236が求められると、これらのデータはデジタルカメラ1の本体に対して着脱自在なメモリカード8へと転送されて保存される(ステップST16,ST17)。このとき、CPU21の制御の下、カードI/F123に露出演算部204から露出に関する撮影条件を示す露出データ237が入力され、図7に示すように物体色成分データ235は露出データ237とともに1つのファイル81として保存される(ステップST16)。照明成分データ236は物体色成分データ235とは別のファイルとして保存され、これらのデータは互いに独立して取り出し可能な状態とされる。
【0056】デジタルカメラ1では、後述するように物体色成分データ235から画像を再生する際に、露出に関する撮影条件を利用して色順応に基づく色変換が行われる。そこで、デジタルカメラ1では、物体色成分データ235の取り扱いを容易とするために物体色成分データ235と露出データ237とを1つのファイル81に格納する。また、これにより、画像再生処理を外部のコンピュータにて行う際にもファイル81をコンピュータに転送することで適切な色変換を容易に行うことが可能となる。
【0057】なお、露出に関する撮影条件としては露出値決定の際に用いられた被写体の明るさが保存されることが好ましいが、撮影時の被写体の明るさを求めることができるデータであれば他の撮影条件が利用されてもよい。例えば、CCD112の感度と被写体の明るさとから露出値が求めることができるため、CCD112の感度が既知である場合には、露出値が露出データ237として利用されてもよい。露出値に代えてシャッタースピードおよび絞り値が露出データ237とされてもよい。また、CCD112の感度および露出値が露出データ237とされてもよい。
【0058】次に、以上のようにしてメモリカード8に保存された物体色成分データ235および照明成分データ236を用いて画像を再生する際のデジタルカメラ1の動作について図4および図8を参照しながら説明する。なお、メモリカード8には、物体色成分データ235および露出データ237を格納する複数のファイル、並びに、照明成分データ236を格納する複数のファイルが予め記録されているものとする。メモリカード8内のこれらのファイルは外部のコンピュータから読み出されたものであってもよい。
【0059】まず、操作者がディスプレイ125の表示を見ながら操作ボタン126を介して指示を行うことにより、所望の物体色成分データ235を格納するファイルを選択する。これにより、再生する画像の対象(すなわち、撮影時の被写体)が決定される。選択された物体色成分データ235はカードI/F123を介して合成部205に読み出される(正確には、RAM23に読み出されて合成部205が取り扱い可能とされる。)。
【0060】さらに、操作者がディスプレイ125の表示を見ながら操作ボタン126を介して指示を行うことにより、所望の照明成分データ236を格納するファイルを選択する。これにより、被写体への照明環境が決定される。選択された照明成分データ236はカードI/F123を介して合成部205に読み出される(ステップST21)。
【0061】既に読み込まれている物体色成分データ235の基礎となった画像を再生したい場合には、物体色成分データ235が求められた時に求められた照明成分データ236が選択され、他の画像が撮影された際の照明環境下での画像として再生したい場合には、他の画像が撮影された際に得られた照明成分データ236がRAM23に読み込まれる。もちろん、CIE規格のD65、蛍光灯等に対応した照明成分データ236や仮想的な光源に対応した照明成分データ236が準備されていてもよく、操作者が照明成分データ236を選択することにより、任意の照明環境が画像に与える影響を再生画像に反映させることが以下の演算処理により実現される。
【0062】物体色成分データ235および照明成分データ236が合成部205に入力されると、これらのデータを数3および数4の加重係数εi,σjとして用いることによりこれらのデータが合成されて各画素のR,G,Bの値ρr,ρg,ρbが合成済画像データとして求められる(ステップST22)。
【0063】合成済画像データは、照明成分データ236とともに変換部206へと転送され、変換部206は、照明成分データ236が示す照明環境(照明光)の三刺激値X0,Y0,Z0を数6に示す演算により求め、数7により照明光の色度x0,y0を得る(ステップST23)。
【0064】
【数6】
【0065】
【数7】
【0066】なお、数6においてRX(λ),RY(λ),RZ(λ)は等色関数、E(λ)は照明成分データ236から数1により導かれる照明光の分光分布、λは可視領域の波長である。
【0067】変換部206にはさらに物体色成分データ235とともにメモリカード8に保存されている露出データ237がカードI/F123を介して入力される(ステップST24)。
【0068】その後、変換部206により色度x0,y0および露出データ237を用いて合成済画像データに色順応に基づく色の変換が施される(ステップST25)。なお、色順応に基づく色変換には、色度の順応のみならず、明暗の順応を反映した変換が含まれてもよい。また、明暗の順応を反映した変換のみでもよい。色順応に基づく色変換を合成済画像データに施して変換済画像データを生成することにより、色順応を考慮した画像をディスプレイ125に表示することが実現される。
【0069】次に、変換部206による合成済画像データの色変換について説明する。デジタルカメラ1では、CIECAT94LABによる色順応式が利用される(詳細については、Yoshinobu Nayatani et al., "Proposal of an Abridged Color-Appearance Model CIECAT94LAB and Its Field Trials", COLOR reserch and application, vol. 24, No. 6, Dec. 1999を参照。)。
【0070】まず、合成済画像の各画素の画素値が行列式を用いてCIE規格の表色系の三刺激値X,Y,Zに変換され、さらに、数8により各画素の三刺激値X,Y,Zが生理原色系の三刺激値R,G,Bに変換される。
【0071】
【数8】
【0072】次に、数9により変換後の三刺激値RR,GR,BRが求められる。なお、数9の各種パラメータについては後述する。
【0073】
【数9】
【0074】最後に、数10により変換後の三刺激値RR,GR,BRが三刺激値XR,YR,ZRに戻され、変換済画像データが生成される(ステップST25)。
【0075】
【数10】
【0076】上記変換後の各画素の三刺激値XR,YR,ZRがディスプレイ125に表示するための値へと変換され、変換後の画像がディスプレイ125に表示される(ステップST26)。これにより、色順応を考慮した画像が表示される。
【0077】次に、数9の各種パラメータについて説明する。Y0は被写体中の背景の影響を数9に与えるパラメータであり、ここでは20(%)に設定される。nはノイズの影響を考慮したパラメータであり、0.1または1が与えられる。
【0078】ξR,ηR,ζRは色順応に基づく色変換の基準となる基準照明(例えば、CIE規格のD65、照度1000ルクス(lx))の相対色度であり、基準照明の色度xR0,yR0から数11により導かれる。
【0079】
【数11】
【0080】<ξ>,<η>,<ζ>は色度に関する順応を考慮した相対色度であり、数12により照明成分データ236が示す照明(以下、「試験照明」という。)の色度x0,y0から相対色度ξ,η,ζを求めておき、試験照明の相対色度ξ,η,ζと基準照明の相対色度ξR,ηR,ζRとから数13により求められる。
【0081】
【数12】
【0082】
【数13】
【0083】なお、数13中のαは、数14により求められる。
【0084】
【数14】
【0085】数14中のL0は、被写体の順応輝度であり、単位はカンデラ毎平方メートル(cd/m2)である。順応輝度L0の算出には露出データ237が利用され、その詳細については後述する。また、数14では、合成画像の画素値をL*a*b*表色系へと変換した際の値L*も利用される。係数Dは、被写体が発光しない物体の場合には1.0、被写体自体が発光するディスプレイの場合には0.0、カラースライドのように光が投射されるスクリーンが被写体の場合には0.5が与えられる。
【0086】実際の合成済画像が表す被写体は、発光物体であるか否かを区別することが困難であることから、係数Dは画素ごとに厳密に区別されない。通常は、係数Dは1.0とされる。一方、係数Dを使用者の好みを反映する係数として利用することも可能である。すなわち、係数Dを使用者が指定することにより、順応度合い(換言すれば、照明光の影響の度合い)を変更して好みの色再現を実現することができる。
【0087】数9中のRR0,GR0,BR0は、基準照明下の実効順応応答であり、数15により求められる。
【0088】
【数15】
【0089】数15においてLR0は、基準照明の順応輝度であり、数16により求められる。
【0090】
【数16】
【0091】数16において、ER0は基準照明の照度(ER0=1000(lx))である。
【0092】数9中のR0,G0,B0は、試験照明下の実効順応応答であり、被写体の順応輝度L0(後述)を用いて数17により求められる。
【0093】
【数17】
【0094】べき指数の関数β1(C1),β2(C2)(C1=RR0,GR0,R0,G0;C2=BR0,B0)は、数18により示される。
【0095】
【数18】
【0096】さらに、数9中のKは以上の各種パラメータを用いて数19により求められる。
【0097】
【数19】
【0098】ただし、デジタルカメラ1の場合、Y0=20であるため、Kは1となる。
【0099】次に、露出データ237を利用して被写体の順応輝度L0を算出する手法について説明する。
【0100】露出データ237は、被写体の明るさを示すデータ(または、少なくとも被写体の明るさを導き出すことができるデータ)となっている。具体的には、被写体を観測した際の照度E0が被写体の明るさとされる。
【0101】一般に、輝度とは放射源(被写体)を観測方向から見たときの単位面積当たりの放射強度を表し、光束をΦ、立体角をΩ、光束の断面積をS、光束の断面と光束の方向とのなす角をθとして、数20にて表される。
【0102】
【数20】
【0103】一方、照度は単位面積当たりに入射する放射束であり、光束をΦ、入射面積をAとして、数21にて表される。
【0104】
【数21】
【0105】ここで、デジタルカメラ1にて被写体を撮影する場合、観測方向は被写体と正対する方向とみなすことができるため、θを0°(すなわち、cosθ=1)とすることができる。また、被写体上の点から出射した光のうち、1画素に入射する光の度合いも一定である(すなわち、立体角Ωを考慮する必要がない。)とみなすことができ、kを定数として、数22が満たされると想定することができる。
【0106】
【数22】
【0107】デジタルカメラ1では、予め実測により定数kを求めておき、本撮影の前のCCD112の出力や測光センサの出力に基づいて被写体の照度(明るさ)を露出演算部204により求めるようになっている。そして、被写体の明るさが露出データ237として物体色成分データ235とともに1つのファイルとしてメモリカード8に保存される。
【0108】数14および数17にて用いられる被写体の順応輝度L0は、露出データ237から導かれる被写体の照度E0を用いて数23により導かれる。
【0109】
【数23】
【0110】以上、デジタルカメラ1の構成および動作について説明してきたが、デジタルカメラ1では、フラッシュONの状態にて撮影された第1画像、フラッシュOFFの状態にて撮影された第2画像、および、フラッシュ光の相対分光分布とから照明環境の影響が取り除かれた画像データに相当する物体色成分データ235を求めることができる。すなわち、被写体の分光反射率を示す物体色成分データ235を照明環境が変更された2枚の画像から簡単に求めることができる。照明環境の変更はフラッシュ121を用いて容易に行われる。
【0111】また、デジタルカメラ1では求められた物体色成分データ235および第2画像データ232から照明成分データ236が求められる。したがって、デジタルカメラ1では、物体色成分データ235に複数の照明成分データ236から選択されたものを適宜合成することにより、所望の照明環境下の所望の撮影対象の画像を再生することができる。
【0112】このとき、照明成分データ236から照明光の色度を求めつつ色順応に基づいた色変換を行うことにより、より自然な(人間の視覚に合った)画像が再生される。
【0113】さらに、デジタルカメラ1では、色順応に基づく色変換の際に露出演算部204により求められた露出に関する撮影条件が反映されるため、撮影条件ごとに変化する被写体への照明光の強度を色順応に基づく色変換に反映させることができ、一層適切な色変換が実現される。
【0114】なお、デジタルカメラ1としては特殊な機構を有さず、汎用のオンチップフィルタが設けられたCCDを有するデジタルカメラの簡単な仕様変更により物体色成分データ235、照明成分データ236および変換済画像データを求めることが可能となる。これにより、物体色成分データ235等を求める動作を汎用のデジタルカメラ1の特殊モードとして実現することができ、新たな生産コストが生じることはない。
【0115】<2. 第2の実施の形態>第1の実施の形態では、デジタルカメラ1内部にて物体色成分データ235および照明成分データ236を求めたり、色順応を考慮した画像再生を行うが、画像の取得以外の処理はコンピュータにより行われてもよい。
【0116】図9は本発明の第2の実施の形態に係るデジタル撮像システム3の構成を示す図である。デジタル撮像システム3は、撮影対象の画像を取得するデジタルカメラ31、および、デジタルカメラ31にて得られた画像を処理するコンピュータ33を有する。
【0117】デジタルカメラ31は画像を撮影し、得られた画像データをコンピュータ33に伝送ケーブルを介して転送する。もちろん、画像データはメモリカード等の記録媒体を介してコンピュータ33に転送されてもよい。
【0118】デジタルカメラ31は、第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1から画像処理に係る機能を取り除いた動作を行う。すなわち、図5中のステップST11,ST12を実行し、第1画像データ231および第2画像データ232を取得する。また、露出演算部204による露出データ237の生成も行う。そして、図10に示すように、第1画像データ231、第2画像データ232および露出データ237を1つのファイル82に格納する。このファイル82がコンピュータ33に転送され、画像処理が実行される。
【0119】図11はコンピュータ33の構成を示すブロック図である。コンピュータ33は、各種演算処理を行うCPU301、基本プログラムを記憶するROM302および各種情報を記憶するRAM303をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク304、各種情報の表示を行うディスプレイ305、操作者からの入力を受け付けるキーボード306aおよびマウス306b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体91から情報の読み取りを行う読取装置307、並びに、デジタルカメラ31との間で通信を行う通信部308が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0120】コンピュータ33には、事前に読取装置307を介して記録媒体91からプログラム341が読み出され、固定ディスク304に記憶される。そして、プログラム341がRAM303にコピーされるとともにCPU301がRAM303内のプログラム341に従って演算処理を実行することによりコンピュータ33が画像処理装置としての動作を行う。
【0121】すなわち、CPU301およびその周辺構成が図4に示す差分画像生成部201、物体色成分データ生成部202および照明成分データ生成部203として動作することにより第1画像データ231および第2画像データ232(並びに、フラッシュ分光データ234)から物体色成分データ235および照明成分データ236が生成される。フラッシュ分光データ34は、予めコンピュータ33に準備されていてもよく、デジタルカメラ31から転送されてもよい。
【0122】また、画像が再生される際には、CPU301およびその周辺構成が図4に示す合成部205および変換部206として動作することによりキーボード306aおよびマウス306bを介してデータの選択が行われ、任意の照明環境の雰囲気を取り入れつつ色順応を考慮した画像をディスプレイ305に表示することが実現される。このとき、物体色成分データ235を生成する際に利用された第1画像データ231および第2画像データ232と同一ファイル内に存在する露出データ237が利用される。
【0123】以上のように、画像処理はコンピュータ33により行うことも可能であり、この場合、デジタルカメラ31における処理の負担が大幅に軽減される。
【0124】<3. 変形例>以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0125】上記実施の形態ではフラッシュを用いて取得された第1画像およびフラッシュを用いることなく取得された第2画像を利用して物体色成分データ235および照明成分データ236を求めるようにしているが、画像データから物体色成分データ235および照明成分データ236を求める手法として他の手法が用いられてもよい。
【0126】例えば、図12に示すようにモノクロ画像を取得するデジタルカメラ31aの前に互いに異なる分光透過特性の複数のフィルタを有する回転式フィルタ32を配置し、回転式フィルタ32を回転させながら複数の画像を取得する。そして、複数の画像のデータをコンピュータ33に転送し、コンピュータ33にて物体色成分データ235および照明成分データ236が求められてもよい。具体的演算としては、富永昌治、「色恒常性を実現するカメラ系とアルゴリズム」、信学技報 PRU95-11(1995-05)(77〜84頁)に記載された手法が利用可能である。
【0127】また、複数のフィルタを切り替える機構をデジタルカメラ内部に設けてもよい。フィルタの切り替え機構を設けずにデジタルカメラに複数(好ましくは4以上)の入力バンドを有する撮像素子(すなわち、複数種類のオンチップフィルタが設けられたCCD)を設け、これにより複数の波長帯のそれぞれについて画像を取得するようになっていてもよい。
【0128】さらに、デジタルカメラ1に照明光を受光するマルチバンドセンサを設けておき、照明光の分光分布を照明成分データ236として取得してから物体色成分データ235が求められてもよい。
【0129】物体色成分データ235は被写体の分光反射率を正確に示すデータである必要はなく、ほぼ分光反射率を示すデータであれば足りる。照明成分データ236も照明光の分光分布を正確に示すデータとして求められる必要はなく、ほぼ分光分布を示すデータであればよい。
【0130】色順応に基づく色変換も既存の様々な手法が利用されてよい。変換後の画像の出力先もディスプレイに限定されるものではなく、プリンタであってもよい。
【0131】また、上記実施の形態では、露出に関する撮影条件として被写体の明るさが露出データ237として利用されると説明したが、露出に関する撮影条件として他のデータが利用されてもよい。また、被写体の明るさそのものが露出データ237とされる必要はなく、既述のように被写体の明るさを導き出すことができるデータであればどのようなデータが露出データ237とされてもよい。
【0132】第1の実施の形態ではデジタルカメラ1内部にて物体色成分データ235および照明成分データ236の算出、並びに、画像の再生を行い、第2の実施の形態では、これらの処理をコンピュータ33にて行うが、これらの処理の分担はデジタルカメラとコンピュータとの間で任意の設定されてよい。第1の実施の形態では図7に示したように物体色成分データ235と露出データ237とは1つのファイルとして保存されると説明したが、このようなファイルをコンピュータへと転送することにより、コンピュータにて色順応を考慮した画像の再生を容易に行うことができる。
【0133】一方、差分画像データ233の生成のみをデジタルカメラにて行い、差分画像データ233および第2画像データ232が露出データ237とともに1つのファイルとしてコンピュータ33に転送されてもよい。すなわち、物体色成分データ235または物体色成分データ235を導くことができるデータと露出データ237とをコンピュータ33に転送することにより、コンピュータ33にて様々な照明環境下の画像を色順応を考慮しつつ再生することが可能となる。
【0134】また、上記実施の形態では、CPUがプログラムに従って演算を行うことにより、各種機能が実現されると説明したが、演算処理の全部または一部は専用の電気的回路により実現されてもよい。特に、繰り返し演算を行う箇所をロジック回路にて構築することにより、高速な演算が実現される。
【0135】なお、上記実施の形態では、充電電圧および発光時間をモニタすることにより、フラッシュ121の発光特性を一定に保つようにしているが、他の方法によりフラッシュ121の発光特性が一定に保たれてもよい。例えば、フラッシュ121をパルス状に発光することにより、フラッシュの発光特性が一定に保たれてもよい。
【0136】充電電圧および発光時間をモニタすることにより、発光後にフラッシュ光の分光特性を求めるようにしてもよい。被写体への照明環境を変更する方法はフラッシュ121を用いる手法に限定されるものではない。
【0137】また、以上の説明では物体色成分データ235として各画素に対応する加重係数σ1,σ2,σ3が保存され、照明成分データ236として一組の加重係数ε1,ε2,ε3が保存されると説明したが、これらのデータは被写体の分光反射率の基底関数S1(λ),S2(λ),S3(λ)や照明光の分光分布の基底関数E1(λ),E2(λ),E3(λ)とともに保存されてもよい。さらに、分光反射率の特性曲線自体が物体色成分データ235とされてもよく分光分布の特性曲線自体が照明成分データ236とされてもよい。
【0138】
【発明の効果】請求項1ないし3の発明では、任意の照明環境の影響を反映しつつ色順応を考慮した画像データを生成することができる。
【0139】また、請求項2の発明では、撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を行うことができる。
【0140】また、請求項3の発明では、照明環境に応じた色変換を行うことができる。
【0141】請求項4の発明では、別途設けられたコンピュータ等を用いて撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を容易に行うことができる。
【0142】請求項5ないし8の発明では、撮影条件を考慮しつつ色順応に基づく色変換を行うことができる。
【0143】また、請求項6の発明では、画像データから物体色成分データを求めることができる。
【0144】また、請求項7の発明では、照明環境に応じた色変換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るデジタルカメラの全体を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面図である。
【図3】デジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図4】デジタルカメラの機能をブロックにて示す図である。
【図5】デジタルカメラの動作の流れを示す図である。
【図6】発光制御回路の動作の流れを示す図である。
【図7】物体色成分データを含むファイルのデータ構造を示す図である。
【図8】画像の再生動作の流れを示す図である。
【図9】デジタル撮像システムを示す図である。
【図10】物体色成分データを含むファイルのデータ構造を示す図である。
【図11】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図12】デジタル撮像システムの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
3 デジタル撮像システム
8 メモリカード
21,301 CPU
22,302 ROM
23,303 RAM
33 コンピュータ
81,82 ファイル
91 記録媒体
112 CCD
123 カードI/F
202 物体色成分データ生成部
203 照明成分データ生成部
205 合成部
206 変換部
221,341 プログラム
231 第1画像データ
232 第2画像データ
235 物体色成分データ
236 照明成分データ
237 露出データ
ST13〜ST15,ST22,ST23,ST25 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データを求める物体色成分データ生成手段と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データと前記物体色成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成手段と、色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換手段と、を備えることを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項2】 請求項1に記載のデジタル撮像装置であって、前記変換手段が、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件を用いて前記色順応に基づく色変換を行うことを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載のデジタル撮像装置であって、前記被写体の画像データから前記照明成分データを求める照明成分データ生成手段、をさらに備え、前記変換手段が、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換を行うことを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項4】 デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データまたは前記物体色成分データを導くことができるデータと、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件とを一のファイルとして保存する保存手段と、を備えることを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項5】 画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】 請求項5に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、画像データから前記物体色成分データを求める工程、をさらに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】 請求項6に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、前記画像データから前記照明成分データを求める工程、をさらに実行させ、前記変換工程において、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換が行われることを特徴とするプログラム。
【請求項8】 画像処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程と、を実行させることを特徴とする記録媒体。
【請求項1】 デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データを求める物体色成分データ生成手段と、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データと前記物体色成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成手段と、色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換手段と、を備えることを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項2】 請求項1に記載のデジタル撮像装置であって、前記変換手段が、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件を用いて前記色順応に基づく色変換を行うことを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載のデジタル撮像装置であって、前記被写体の画像データから前記照明成分データを求める照明成分データ生成手段、をさらに備え、前記変換手段が、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換を行うことを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項4】 デジタル撮像装置であって、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体への照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データまたは前記物体色成分データを導くことができるデータと、前記被写体の画像データを取得する際の露出に関する撮影条件とを一のファイルとして保存する保存手段と、を備えることを特徴とするデジタル撮像装置。
【請求項5】 画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】 請求項5に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、画像データから前記物体色成分データを求める工程、をさらに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】 請求項6に記載のプログラムであって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、前記画像データから前記照明成分データを求める工程、をさらに実行させ、前記変換工程において、前記照明成分データから導かれる色度を用いて前記色順応に基づく色変換が行われることを特徴とするプログラム。
【請求項8】 画像処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、撮影時の照明環境の影響を取り除いた画像のデータに相当する物体色成分データと、照明環境が画像に与える影響を示す照明成分データとを合成して合成済画像データを生成する合成工程と、前記撮影時の露出に関する撮影条件を用いて色順応に基づく色変換を前記合成済画像データに施す変換工程と、を実行させることを特徴とする記録媒体。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図12】
【図11】
【図2】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図12】
【図11】
【公開番号】特開2002−238056(P2002−238056A)
【公開日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−32315(P2001−32315)
【出願日】平成13年2月8日(2001.2.8)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年2月8日(2001.2.8)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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