説明

デジタル放送受信装置および方法

【課題】
ICカードとCAモジュールとの間で授受されるスクランブル鍵情報が漏洩した場合に、その情報の不正使用を防止するデジタル放送の受信装置および方法を提供する。
【解決手段】
デジタル放送受信装置10は、デジタル放送の限定受信を行うCAモジュール20が、ICカード40と接続して、暗号化されたスクランブル鍵126を受け取るもので、スクランブル鍵保持バッファ50および復号スクランブル鍵保持バッファ26に一時的に格納されたスクランブル鍵120および復号スクランブル鍵128を用いて、暗号鍵124および復号鍵132をそれぞれ作成する。このとき、前回の受信処理の際に格納されたスクランブル鍵を用いることにより、CAモジュール20とICカード40との間で授受されるスクランブル鍵に関する情報を安全性高く暗号化できるためデジタル放送をこのスクランブル鍵でデスクランブルして正規の受信者に限定して受信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送の受信装置およびその受信方法に関するものであり、とくにデジタル放送を限定受信することができる受信装置およびその受信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星・地上デジタルテレビジョン放送などのデジタル放送において、不正受信を防止するコンテンツ管理方法の一つとして、限定受信方式が採用されている。たとえば、送信局側では、スクランブル鍵によって暗号化した映像および音声などの放送情報と、ワーク鍵によって暗号化したスクランブル鍵および番組情報データを含む共通情報と、マスタ鍵によって暗号化したワーク鍵および各受信者の契約情報データを含む個別情報とを多重化し、TS(Transport Stream)信号として送信する。
【0003】
一方、受信装置側、たとえばCA(Conditional Access)モジュールでは、TS信号を受信して、放送情報信号と、個別情報(EMM:Entitlement Management Message)信号と、共通情報(ECM:Entitlement Control Message)信号とに分離する。また、受信者が契約などの正規手続きにより予め入手した電子媒体を受信装置に接続することにより、電子媒体にEMM信号とECM信号が送られ、電子媒体内に予め記録されたマスタ鍵により個別情報が復号される。復号された個別情報から取り出したワーク鍵を用いて、共通情報が復号され、スクランブル鍵を取りだし、再び受信装置に送られる。受信装置側ではこのスクランブル鍵を用いることにより暗号化された映像および音声などの放送情報が復号されることになる。
【0004】
ところで、特許文献1に記載のデジタル放送システムでは、受信装置ワーク鍵が流出したときに、流出元となった受信装置の識別子(ID)を特定することができ、その受信装置のIDを無効化することにより、鍵の流出対策ができるシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2005-110053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のデジタル放送の限定受信装置およびその受信方法では、送信局から受信装置までの信号はスクランブル鍵により暗号化されているが、受信装置から送信され電子媒体で復号されるスクランブル鍵は、暗号化されないで受信装置に送信されている。そのため、電子媒体と受信装置間で送受信の信号が、正規の受信者以外の人に観測され、スクランブル鍵が流出する心配がある。さらに、この情報がインターネットで公開された場合には、不特定多数の人により映像および音声のデータを視聴される可能性がある。
【0006】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、たとえ電子媒体と受信装置間で送受信の信号が観測されたとしても、不正に使用され不特定多数の人に視聴されることを防止するデジタル放送受信装置およびデジタル放送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、このスクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、このCAモジュールに脱着可能に接続され、スクランブル鍵を生成してさらに暗号化してCAモジュールに送信する電子媒体とを含み、デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置において、この電子媒体は、生成したスクランブル鍵を所定の暗号鍵を用いて暗号化し、CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化手段と、生成したスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持手段と、本装置の前回の受信処理の際にスクランブル鍵保持手段に格納された、前回のスクランブル鍵をスクランブル鍵保持手段から得て、この前回のスクランブル鍵を元に、暗号鍵を演算する暗号鍵演算手段とを含み、CAモジュールは、電子媒体から暗号化されたスクランブル鍵を受け取り、このスクランブル鍵を所定の復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号手段と、このスクランブル鍵復号手段で復号されたスクランブル鍵を格納して、所定数の復号されたスクランブル鍵を保持する復号スクランブル鍵保持手段と、本装置の前回の受信処理の際に復号スクランブル鍵保持手段に格納された前回のスクランブル鍵を復号スクランブル鍵保持手段から得て、前回のスクランブル鍵を元に、復号鍵を演算する復号鍵演算手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、このCAモジュールに脱着可能に接続され、スクランブル鍵を生成してさらに暗号化してCAモジュールに送信する電子媒体とを含み、デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置において、電子媒体は、この電子媒体にあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号と、CAモジュールにあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号とを元に選択信号を生成し、電子媒体のスクランブル鍵保持手段およびCAモジュールの復号スクランブル鍵保持手段から、それぞれスクランブル鍵を選択する選択制御手段と、生成したスクランブル鍵を所定の暗号鍵を用いて暗号化し、CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化手段と、生成したスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持手段と、選択信号に従い、スクランブル鍵保持手段に格納されたスクランブル鍵を、スクランブル鍵保持手段から得て、スクランブル鍵を元に、暗号鍵を演算する暗号鍵演算手段とを含み、CAモジュールは、電子媒体から暗号化されたスクランブル鍵を受け取り、このスクランブル鍵を所定の復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号手段と、このスクランブル鍵復号手段で復号されたスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持する復号スクランブル鍵保持手段と、選択信号に従い、復号スクランブル鍵保持手段に格納されたスクランブル鍵を復号スクランブル鍵保持手段から得て、スクランブル鍵を元に、復号鍵を演算する復号鍵演算手段とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、このCAモジュールに脱着可能に接続され、スクランブル鍵を生成してさらに暗号化してCAモジュールに送信する電子媒体とを含むデジタル放送を受信するデジタル放送受信装置でデジタル放送を受信する方法は、電子媒体で、本装置の前回の受信処理の際にスクランブル鍵保持バッファに格納された、前回のスクランブル鍵をスクランブル鍵保持バッファから得て、前回のスクランブル鍵を元に、所定の暗号鍵を演算する暗号鍵演算工程と、生成したスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、スクランブル鍵を暗号鍵を用いて暗号化し、CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化工程と、CAモジュールで、本装置の前回の受信処理の際に復号スクランブル鍵保持バッファに格納された前回のスクランブル鍵を復号スクランブル鍵保持バッファから得て、前回のスクランブル鍵を元に、所定の復号鍵を演算する復号鍵演算工程と、スクランブル鍵復号工程で復号されたスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、電子媒体から暗号化されたスクランブル鍵を受け取り、このスクランブル鍵を復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
さらに、送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、このCAモジュールに脱着可能に接続され、スクランブル鍵を生成してさらに暗号化してCAモジュールに送信する電子媒体とを含むデジタル放送を受信するデジタル放送受信装置でデジタル放送を受信する方法は、電子媒体で、この電子媒体にあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号と、CAモジュールにあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号とを元に選択信号を生成し、電子媒体のスクランブル鍵保持バッファおよびCAモジュールの復号スクランブル鍵保持バッファから、それぞれスクランブル鍵を選択する選択制御工程と、この選択信号に従い、スクランブル鍵保持バッファに格納されたスクランブル鍵を、スクランブル鍵保持バッファから得て、スクランブル鍵を元に、所定の暗号鍵を演算する暗号鍵演算工程と、生成したスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、スクランブル鍵を暗号鍵を用いて暗号化し、CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化工程と、CAモジュールで、選択信号に従い、復号スクランブル鍵保持バッファに格納された前記スクランブル鍵を、復号スクランブル鍵保持バッファから得て、スクランブル鍵を元に、所定の復号鍵を演算する復号鍵演算工程と、電子媒体から暗号化されたスクランブル鍵を受け取り、このスクランブル鍵を復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号工程と、このスクランブル鍵復号工程で復号されたスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程とを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に添付図面を参照して、本発明によるデジタル放送受信装置10の実施例を詳細に説明する。たとえば本実施例のデジタル放送受信装置10は、図1に示すように、デジタル放送を受信する基本的な受信機能を有するCAモジュール20と、このCAモジュール20に脱着可能に接続して暗号化した信号を授受する機能を有する電子媒体、たとえばIC(集積回路)カード40とを含む。なお、本発明の理解に直接関係のない部分は、図示を省略し、冗長な説明を避ける。
【0012】
デジタル放送を受信する基本的な受信機能とは、たとえば、放送局から送信されたTS信号を受信して、放送情報信号と、EMM信号と、ECM信号とに分離し、接続されたICカード40などの電子媒体にEMM信号とECM信号を送る機能を含む機能である。
【0013】
本装置10による一回の受信処理では、TS信号を受信し、EMM信号と、ECM信号とからスクランブル鍵を生成し、放送情報信号をデスクランブルする処理を行なう。
【0014】
CAモジュール20は、TS分離回路22、デスクランブル回路24、復号スクランブル鍵保持バッファ26、復号鍵演算回路28、および復号回路30を含んで構成される。
【0015】
ICカード40は、鍵レジスタ42、EMM復号回路44、ECM復号回路46、視聴判定回路48、スクランブル鍵保持バッファ50、暗号鍵演算回路52、および暗号化回路54を含んで構成される。
【0016】
本実施例のCAモジュール20のTS分離回路22は、送信局側(図示せず)から送信されるTS信号104を受信し、そのTS信号104を、スクランブルされた映像および音声を含むスクランブル放送情報信号106と、EMM信号108と、ECM信号110とに分離した後、それぞれデスクランブル回路24とEMM復号回路44とECM復号回路46とに送信する。
【0017】
デスクランブル回路24は、供給される所定のスクランブル鍵128、本実施例では復号回路30から供給されるスクランブル鍵128を用いて、スクランブル放送情報信号106を映像および音声などの放送情報信号134にデスクランブルして出力する。
【0018】
復号スクランブル鍵保持バッファ26は、復号回路30で復号されたスクランブル鍵128を一時的に保持し、必要に応じて復号鍵演算回路28に供給する。なお、復号スクランブル鍵保持バッファ26は、所定数のスクランブル鍵128を保持することができ、たとえば現行の処理において復号回路30で復号されたスクランブル鍵128の他に、前回の処理において復号回路30で復号されたスクランブル鍵128も保持することができる。また復号スクランブル鍵保持バッファ26としてたとえば先入れ先出し(FIFO)方式を用いてもよい。
【0019】
復号鍵演算回路28は、復号スクランブル鍵保持バッファ26からの出力130を暗号鍵演算回路52と同じ鍵生成演算方式で演算することにより復号鍵132を生成し、復号回路30に供給する。
【0020】
復号回路30は、ICカード40の暗号化回路54から受信した暗号化スクランブル鍵126を、復号鍵演算回路28で生成された復号鍵132を使用してスクランブル鍵128を生成し、デスクランブル回路24に送信する。
【0021】
ICカード40の鍵レジスタ42は、EMM信号108を復号するためのICカード40固有の、すなわち受信者固有のマスタ鍵112を格納する機能を有し、EMM復号回路44にマスタ鍵112を供給する。
【0022】
EMM復号回路44は、鍵レジスタ42から供給されるマスタ鍵112を用いて、TS分離回路22から送信されたEMM信号108をワーク鍵114と契約情報を含むEMM情報116とに復号し、それぞれECM復号回路46と、視聴判定回路48とに供給する。
【0023】
ECM復号回路46は、EMM復号回路44から供給されるワーク鍵114を用いてCAモジュール20の分離回路22から送信されたECM信号110を、番組情報を含むECM情報118に復号し、視聴可否判定回路48に供給する。
【0024】
視聴判定回路48は、EMM復号回路44から供給される契約情報を含むEMM情報116と、ECM復号回路46から供給される番組情報を含むECM情報118とから受信者が視聴可能か否かを判定し、視聴可能な場合にはスクランブル鍵120を生成し、スクランブル鍵120を暗号化回路54に供給する。
【0025】
スクランブル鍵保持バッファ50は、視聴判定回路48で生成されたスクランブル鍵120を一時的に保持し、暗号鍵演算回路52に送信する。なお、スクランブル鍵保持バッファ50は、所定数のスクランブル鍵120を一時的に保持することができ、たとえば現行の処理において視聴判定回路48で生成されたスクランブル鍵120の他に、前回の処理において視聴判定回路48で生成されたスクランブル鍵120も保持することができる。またスクランブル鍵保持バッファ50として、たとえばFIFO方式を用いてもよい。
【0026】
暗号鍵演算回路52は、スクランブル鍵保持バッファ50から供給されるスクランブル鍵122を復号鍵演算回路28と同じ鍵生成演算方式で演算することにより暗号鍵124を生成し、暗号化回路54に供給する。
【0027】
暗号化回路54は、暗号スクランブル鍵126をCAモジュール20の復号回路30へ送信する機能を有する。本実施例では、暗号鍵演算回路52から供給される暗号鍵124を用いて視聴判定回路48から供給されるスクランブル鍵120を暗号スクランブル鍵126に暗号化する。
【0028】
次に、本実施例におけるデジタル放送受信装置10において、受信者がICカード40をセットしたときの動作について説明する。
【0029】
本実施例のデジタル放送受信装置10では、受信者のICカード40がCAモジュール20にセットされると、CAモジュール20で受信されたTS信号104は、TS分離回路22にてスクランブル放送情報信号106とEMM信号108とECM信号110とに分離され、スクランブル放送情報信号106が、デスクランブル回路24に、EMM信号108とECM信号110とがICカード40に送信される。
【0030】
ICカード40に送られたEMM信号108は、EMM復号回路44で鍵レジスタ42にあらかじめ保持されていたマスタ鍵112を用いて契約情報を含むEMM情報116に復号され、ECM信号110は、ECM復号回路46でEMM情報116に含まれるワーク鍵114を用いて番組情報を含むECM情報118に復号される。
【0031】
これら復号されたEMM情報116やECM情報118などの受信情報は、視聴可否判定回路48に供給され、視聴可否判定回路48において受信情報に含まれる番組情報と契約情報とを比較することにより視聴の可否が判定される。
【0032】
視聴可と判断された場合には、スクランブル鍵120が生成され、暗号化回路54に送られる。またこのようにして、現行の処理においてスクランブル鍵120は、スクランブル鍵保持バッファ50にも送られ、次の暗号鍵124を演算するためにスクランブル鍵保持バッファ50に一時的に保持される。
【0033】
暗号化回路54では、前回の処理において視聴判定回路48で生成されスクランブル鍵保持バッファ50に保持されていたスクランブル鍵122を元に暗号鍵演算回路52で演算された暗号鍵124により、スクランブル鍵120が暗号スクランブル鍵126に暗号化され、CAモジュール20に送信される。
【0034】
CAモジュール20の復号回路30では、前回の処理において復号回路30で復号され復号スクランブル鍵保持バッファ26に保持されていたスクランブル鍵130を元に復号鍵演算回路28で演算された復号鍵132により、ICカード40から送信された暗号スクランブル鍵126がスクランブル鍵128に復号され、デスクランブル回路24に送られる。またこのようにして、現行の処理においてスクランブル鍵128は、復号スクランブル鍵保持バッファ26にも送られ、次の復号鍵132を演算するために復号スクランブル鍵保持バッファ26に一時的に保持される。
【0035】
なお、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50に保持されるスクランブル鍵120とCAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26に保持されるスクランブル鍵128とは同じものであり、またICカード40の暗号鍵演算回路52とCAモジュール20の復号鍵演算回路28も同じ演算方式であることから、暗号鍵124と復号鍵132が同じになることは言うまでもない。
【0036】
復号回路30で復号されたスクランブル鍵128がデスクランブル回路24に供給されることにより、スクランブル放送情報信号106がデスクランブルされ、正規の受信者が映像および音声などの放送情報信号134を視聴できることになる。
【0037】
次に、本発明の他の実施例によるデジタル放送受信装置60について、図2を参照にしながら説明する。ただし図1と同様の要素は、同じ参照番号を付与し、その説明を省略する。
【0038】
この実施例は、スクランブル鍵の管理を別に行い、安全性をさらに高めたものであり、先の実施例に新たな機能を追加したものである。
【0039】
CAモジュール20は、TS分離回路22、デスクランブル回路24、復号スクランブル鍵保持バッファ26、復号鍵演算回路28、復号回路30およびシリアル番号レジスタ32を含んで構成される。
【0040】
ICカード40は、鍵レジスタ42、EMM復号回路44、ECM復号回路46、視聴判定回路48、スクランブル鍵保持バッファ50、暗号鍵演算回路52、暗号化回路54、データ選択制御回路58およびシリアル番号レジスタ56を含んで構成される。
【0041】
CAモジュール20のシリアル番号レジスタ32は、受信者固有のシリアル番号202を格納する機能を有し、ICカード40がCAモジュール20に接続されると、シリアル番号202をICカード40の選択制御回路58に送信する。
【0042】
ICカード40のシリアル番号レジスタ56は、受信者の照合のため受信者固有の照合シリアル番号204を格納する機能を有し、ICカード40がCAモジュール20に接続されると、照合照合シリアル番号204を選択制御回路58に供給する。
【0043】
選択制御回路58は、スクランブル鍵120およびスクランブル鍵128を選択制御する機能を有し、CAモジュール20のシリアル番号レジスタ32から送信されるシリアル番号202とICカード40のシリアル番号レジスタ56から供給されるシリアル番号情報204とに基づいて選択信号206を生成し、CAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26と、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50とに送る。本実施例ではシリアル番号202とシリアル番号情報204とを照合し、合致していれば、使用すべきスクランブル鍵を選択する選択信号206を出力する。またこの選択信号206を一定時間ごとに変化させ出力することもできる。
【0044】
スクランブル鍵保持バッファ50は、視聴可否判定回路48から続いて送られてくるスクランブル鍵120を、所定数まで一時的に保持するもので、選択制御回路58から送信される選択信号206に従って選択される一つのスクランブル鍵122を暗号鍵演算回路52に送る。
【0045】
復号スクランブル鍵保持バッファ26は、復号回路30から続いて送られてくるスクランブル鍵128を、所定数まで一時的に保持し、選択制御回路58から送信される選択信号206に従って一つのスクランブル鍵130を選択し、復号鍵演算回路28に送る。
【0046】
たとえば、この実施例では、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50は、複数個のスクランブル鍵を保持し、CAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26に保持される複数個のスクランブル鍵と同じスクランブル鍵を保持しており、選択信号206に応じて選択したスクランブル鍵122も、選択信号206に応じて選択したスクランブル鍵130と同じになる。
【0047】
次に、本発明の他の実施例におけるデジタル放送受信装置60において、受信者がICカード40をセットしたときの動作について説明する。なお新たに追加した機能以外は、先の実施例と同じ動作であるので詳細な説明を省略する。
【0048】
他の実施例のデジタル放送受信装置60では、受信者のICカード40がCAモジュール20にセットされると、CAモジュール20のシリアル番号レジスタ32にあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号202が、ICカード40の選択制御回路58に送信される。
【0049】
また、ICカード40がCAモジュール20に接続されると、ICカード40のシリアル番号レジスタ56にあらかじめ格納された受信者の照合のため受信者固有の照合シリアル番号情報204が、選択制御回路58に供給される。
【0050】
選択制御回路58ではCAモジュール20のシリアル番号レジスタ32から送信されたシリアル番号202とICカード40のシリアル番号レジスタ56から供給されたシリアル番号204とに基づいて選択信号206が生成される。本実施例ではシリアル番号202とシリアル番号204とが選択制御回路58で照合され、使用するスクランブル鍵を選択する選択信号206が出力される。
【0051】
この選択信号206は、CAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26と、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50とに同時に送られる。
【0052】
一方、デジタル放送受信装置60では、受信者のICカード40がセットされると、先の実施例と同様に、CAモジュール20で受信されたTS信号104は、TS分離回路22にてEMM信号108とECM信号110とに分離され、ICカード40に送信され、ICカード40で復号された後、視聴可否判定回路48において受信情報に含まれる番組情報と契約情報とを比較することにより視聴の可否が判定され、スクランブル鍵120が生成される。
【0053】
生成されたスクランブル鍵120は、暗号化回路54に送られると共にスクランブル鍵保持バッファ50に送られ、一時的に保持される。
【0054】
また、このスクランブル鍵保持バッファ50では、視聴可否判定回路48から続いて送られてくるスクランブル鍵120を、所定数まで一時的に保持することができる。
【0055】
ここで選択制御回路58から送られてくる選択信号206に従って、スクランブル鍵保持バッファ50に保持されている複数のスクランブル鍵120から一つのスクランブル鍵122が取り出され、このスクランブル鍵122を元に暗号鍵演算回路52で演算され、暗号鍵124が出力される。
【0056】
視聴可否判定回路48から暗号化回路54に送られたスクランブル鍵120は、暗号鍵演算回路52から送られる暗号鍵124により暗号化され、暗号化スクランブル鍵126がCAモジュール20に送信される。
【0057】
ICカード40から送信された暗号スクランブル鍵126は、CAモジュール20の復号回路30で、復号鍵演算回路28から供給される復号鍵132によりスクランブル鍵128に復号され、デスクランブル回路24に送られる。またこのようにして、このスクランブル鍵128は、復号スクランブル鍵保持バッファ26に送られ、復号スクランブル鍵保持バッファ26に一時的に保持される。
【0058】
また、この復号スクランブル鍵保持バッファ26では、復号回路30から続いて送られてくるスクランブル鍵128を、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50と同じ数量まで一時的に保持することができる。
【0059】
ここで、CAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26では、ICカード40の選択制御回路58からICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50に送信されたのと同じ選択信号206を受信し、復号スクランブル鍵保持バッファ26に保持されている複数のスクランブル鍵128から一つのスクランブル鍵130が取り出され、このスクランブル鍵130を元に復号鍵演算回路28で演算され、復号鍵132が出力される。
【0060】
なお、ICカード40のスクランブル鍵保持バッファ50に保持される複数のスクランブル鍵とCAモジュール20の復号スクランブル鍵保持バッファ26に保持される複数のスクランブル鍵とは同じものであり、選択信号206で取り出されるスクランブル鍵122とスクランブル鍵130とも同じである。またICカード40の暗号鍵演算回路52とCAモジュール20の復号鍵演算回路28も同じ演算方式であることから、暗号鍵124と復号鍵132とは同じものになる。
【0061】
復号回路30で復号されたスクランブル鍵128がデスクランブル回路24に供給されることにより、スクランブル放送情報信号106がデスクランブルされ、正規の受信者が映像および音声などの放送情報信号134を視聴できることになる。
【0062】
このように、本発明によれば、CAモジュール20とICカード40との間で送受信される信号は、暗号化された状態であり、たとえこの信号を傍受されたとしてもそのままでは暗号化されたデータをデスクランブルすることはできないので、スクランブル鍵120を不正に入手することで不特定多数の人が映像および音声などのデータを違法に視聴することになる危険性を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のデジタル放送受信装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明のデジタル放送受信装置の他の実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
10 デジタル放送受信装置
20 CAモジュール
22 TS分離回路
24 デスクランブル回路
26 復号スクランブル鍵保持バッファ
28 復号鍵演算回路
30 復号回路
32 シリアル番号レジスタ
40 ICカード
42 鍵レジスタ
44 EMM復号回路
46 ECM復号回路
48 視聴判定回路
50 スクランブル鍵保持バッファ
52 暗号鍵演算回路
54 暗号化回路
56 シリアル番号レジスタ
58 選択制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、前記スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCA(Conditional Access)モジュールと、該CAモジュールに脱着可能に接続され、前記スクランブル鍵を生成してさらに暗号化して前記CAモジュールに送信する電子媒体とを含み、デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置において、
前記電子媒体は、生成した前記スクランブル鍵を所定の暗号鍵を用いて暗号化し、前記CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化手段と、
生成した前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持手段と、
該装置の前回の受信処理の際に前記スクランブル鍵保持手段に格納された、前回の前記スクランブル鍵を前記スクランブル鍵保持手段から得て、前記前回のスクランブル鍵を元に、前記暗号鍵を演算する暗号鍵演算手段とを含み、
前記CAモジュールは、前記電子媒体から暗号化された前記スクランブル鍵を受け取り、該スクランブル鍵を所定の復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号手段と、
該スクランブル鍵復号手段で復号された前記スクランブル鍵を格納して、所定数の復号された前記スクランブル鍵を保持する復号スクランブル鍵保持手段と、
該装置の前回の受信処理の際に前記復号スクランブル鍵保持手段に格納された前回のスクランブル鍵を前記復号スクランブル鍵保持手段から得て、前記前回のスクランブル鍵を元に、前記復号鍵を演算する復号鍵演算手段とを含むことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、前記スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、該CAモジュールに脱着可能に接続され、前記スクランブル鍵を生成してさらに暗号化して前記CAモジュールに送信する電子媒体とを含み、デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置において、
前記電子媒体は、該電子媒体にあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号と、前記CAモジュールにあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号とを元に選択信号を生成し、前記電子媒体のスクランブル鍵保持手段および前記CAモジュールの復号スクランブル鍵保持手段から、それぞれスクランブル鍵を選択する選択制御手段と、
生成した前記スクランブル鍵を所定の暗号鍵を用いて暗号化し、前記CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化手段と、
生成した前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持手段と、
前記選択信号に従い、前記スクランブル鍵保持手段に格納された前記スクランブル鍵を、前記スクランブル鍵保持手段から得て、前記スクランブル鍵を元に、前記暗号鍵を演算する暗号鍵演算手段とを含み、
前記CAモジュールは、前記電子媒体から暗号化された前記スクランブル鍵を受け取り、該スクランブル鍵を所定の復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号手段と、
該スクランブル鍵復号手段で復号されたスクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持する復号スクランブル鍵保持手段と、
前記選択信号に従い、前記復号スクランブル鍵保持手段に格納された前記スクランブル鍵を前記復号スクランブル鍵保持手段から得て、前記スクランブル鍵を元に、前記復号鍵を演算する復号鍵演算手段とを含むことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2に記載のデジタル放送受信装置において、
前記CAモジュールは、半導体集積回路で構成され、
前記電子媒体は、半導体集積回路で構成されることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項4】
送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、前記スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、該CAモジュールに脱着可能に接続され、前記スクランブル鍵を生成してさらに暗号化して前記CAモジュールに送信する電子媒体とを含むデジタル放送を受信するデジタル放送受信装置でデジタル放送を受信する方法において、該方法は、
前記電子媒体で、該装置の前回の受信処理の際にスクランブル鍵保持バッファに格納された、前回の前記スクランブル鍵を前記スクランブル鍵保持バッファから得て、前記前回のスクランブル鍵を元に、所定の暗号鍵を演算する暗号鍵演算工程と、
生成した前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、
前記スクランブル鍵を前記暗号鍵を用いて暗号化し、前記CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化工程とを含み、
前記CAモジュールで、該装置の前回の受信処理の際に復号スクランブル鍵保持バッファに格納された前回の前記スクランブル鍵を前記復号スクランブル鍵保持バッファから得て、前記前回のスクランブル鍵を元に、所定の復号鍵を演算する復号鍵演算工程と、
該スクランブル鍵復号工程で復号された前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、
前記電子媒体から暗号化された前記スクランブル鍵を受け取り、該スクランブル鍵を前記復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号工程とを含むことを特徴とするデジタル放送受信方法。
【請求項5】
送信局から送信されるスクランブル放送情報信号を有する受信信号を受信して、前記スクランブル放送情報信号を所定のスクランブル鍵を用いてデスクランブルするCAモジュールと、該CAモジュールに脱着可能に接続され、前記スクランブル鍵を生成してさらに暗号化して前記CAモジュールに送信する電子媒体とを含むデジタル放送を受信するデジタル放送受信装置でデジタル放送を受信する方法において、該方法は、
前記電子媒体で、該電子媒体にあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号と、前記CAモジュールにあらかじめ格納された受信者固有のシリアル番号とを元に選択信号を生成し、前記電子媒体のスクランブル鍵保持バッファおよび前記CAモジュールの復号スクランブル鍵保持バッファから、それぞれ前記スクランブル鍵を選択する選択制御工程と、
前記選択信号に従い、前記スクランブル鍵保持バッファに格納された前記スクランブル鍵を、前記スクランブル鍵保持バッファから得て、前記スクランブル鍵を元に、所定の暗号鍵を演算する暗号鍵演算工程と、
生成した前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程と、
前記スクランブル鍵を前記暗号鍵を用いて暗号化し、前記CAモジュールに供給するスクランブル鍵暗号化工程とを含み、
前記CAモジュールで、前記選択信号に従い、前記復号スクランブル鍵保持バッファに格納された前記スクランブル鍵を、前記復号スクランブル鍵保持バッファから得て、前記スクランブル鍵を元に、所定の復号鍵を演算する復号鍵演算工程と、
前記電子媒体から暗号化された前記スクランブル鍵を受け取り、該スクランブル鍵を前記復号鍵を用いて復号するスクランブル鍵復号工程と、
該スクランブル鍵復号工程で復号された前記スクランブル鍵を格納して、所定数のスクランブル鍵を保持するスクランブル鍵保持工程とを含むことを特徴とするデジタル放送受信方法。
【請求項6】
請求項4および請求項5に記載のデジタル放送受信方法において、該方法は、
前記電子媒体で、前記スクランブル鍵を選択する前記選択信号を一定時間ごとに変化させた前記選択信号を出力し、前記スクランブル鍵保持バッファと前記CAモジュールの前記スクランブル鍵保持バッファとに送信する選択信号送信工程を含むことを特徴とするデジタル放送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−89243(P2009−89243A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258811(P2007−258811)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】