説明

デジタル放送受信装置

【課題】本発明は、定められた地域内のサービス局からの受信状態が良好でない場合であっても、ダウンロードの成功確率の高いデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】受信するサービス局300、310を選局する選局手段10と、
エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が、複数存在するか否かを検出するサービス局検出手段80と、
該サービス局検出手段により前記サービス局が複数検出されたときに、該各サービス局から送信される前記エンジニアリングサービスのC/N値を取得するC/N値取得手段90と、
該C/N値取得手段により取得された前記各サービス局の前記C/N値を比較し、前記C/N値が最も高いサービス局を選択するサービス局選択手段100と、
該サービス局選択手段により選択されたサービス局から送信されるエンジニアリングストリーム放送を利用して、ソフトウェアをダウンロードする制御を行う制御手段60と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送受信装置に関し、特に、サービス局から送信されるエンジニアリングストリーム放送を利用して、ソフトウェアをダウンロードするソフトウェアダウンロード手段を含むデジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プログラムデータを放送波経由でダウンロードする場合に、受信状況が悪いためにプログラムが不完全な状態が続くことを防止するため、プログラムが多重化されたデジタルデータの受信レベルを所定時間検出して平均受信レベルを算出し、平均受信レベルが所定レベル以下である場合は、デジタルデータのダウンロードを行わず、平均受信レベルが所定値以上のときのみダウンロードを行うようにしたデータ受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−217089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、プログラムデータ等のコンテンツのダウンロードは、定められた地域内のエンジニアリングサービス局からのみの実施となる。このため、県境等に居住するユーザの場合、サービス管轄地域内よりも地域外のエンジニアリングサービス局からの受信状態が良い場合があっても、受信状態の悪いサービス管轄地域内のサービス局からコンテンツダウンロードを行うしかなく、安定したダウンロードを行うことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、例えば上述のような県境等に居住し、必ずしもサービス管轄地域内のサービス局からの受信状態が良好とは言えない場合であっても、コンテンツダウンロードの成功確率の高いデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るデジタル放送受信装置(200)は、同調周波数を変化させ、受信するサービス局(300、310)を選局する選局手段(10)と、
エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局(300、310)が、複数存在するか否かを検出するサービス局検出手段(80)と、
該サービス局検出手段(80)により前記サービス局(300、310)が複数検出されたときに、前記選局手段(10)に各サービス局(300、310)を選局させ、該各サービス局(300、310)から送信される前記エンジニアリングサービスのC/N値を取得するC/N値取得手段(90)と、
該C/N値取得手段(90)により取得された前記各サービス局の前記C/N値を比較し、前記C/N値が最も高いサービス局を選択して前記選局手段(10)に選局させるサービス局選択手段(100)と、
該サービス局選択手段(100)により選択されたサービス局から送信されるエンジニアリングストリーム放送を利用して、ソフトウェアをダウンロードする制御を行う制御手段(60)と、を含むことを特徴とする。
【0007】
これにより、複数のサービス局からのデジタル放送信号の受信が可能な場合には、最もC/N値が高く、受信状態が良好なサービス局からダウンロードを行うことができ、ダウンロードの成功確率を向上させることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係るデジタル放送受信装置(200)において、
前記C/N値取得手段(90)は、同一のサービス局(300、310)から前記デジタル放送信号の瞬間C/N値を複数取得し、複数の該瞬間C/N値の平均値から前記各サービス局(300、310)の前記C/N値を算出することを特徴とする。
【0009】
これにより、取得するC/N値の精度を高めることができ、正確なC/N値に基づいて、ダウンロードの対象とするサービス局を適切に選択することができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るデジタル放送受信装置(200)において、
前記サービス局検出手段(80)は、受信可能な各サービスのチャンネル情報を一覧化したサービスリスト(72)から、前記エンジニアリングサービスを行う前記サービス局を検出することを特徴とする。
【0011】
これにより、サービスリストを活用し、簡素な構成で容易にサービス局の検出を行うことができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係るデジタル放送受信装置(200)において、
前記サービス局選択手段(80)による前記サービス局の選択は、ダウンロードの対象となる前記ソフトウェアが送信される前記エンジニアリングストリーム放送が行われる前の所定時間内に行われることを特徴とする。
【0013】
これにより、各ダウンロードのタイミングに合わせて、その時々の受信状態に適切に合致した状態で最も受信状態の良いサービス局を選択し、ダウンロードの成功確率を各ダウンロード時で最大限向上させることができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明に係るデジタル放送受信装置(200)において、
前記エンジニアリングストリーム放送によるダウンロードスケジュール(73)を予め記憶する記憶手段(71)を有し、
該記憶手段(71)に記憶された前記ダウンロードスケジュール(73)に基づいて、前記サービス局選択手段(80)による前記サービス局の選択が行われることを特徴とする。
【0015】
これにより、ダウンロードが開始される時刻を予め確実に把握しておき、ダウンロードが開始させる直前の適切なタイミングで受信状態の良好なサービス局を選択することができる。
【0016】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のサービス局からのデジタル放送信号の受信が可能な地域におけるダウンロードの成功確率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例に係るデジタル放送受信装置の使用状況の一例の説明図である。
【図2】本実施例に係るデジタル放送受信装置200の全体構成ブロック図の一例である。
【図3】C/N値を説明するための図である。
【図4】フラッシュメモリ71に記憶されている電子番組表の一例を示した図である。
【図5】サービスリスト72の具体的な内容の一例を示した図である。
【図6】本実施例に係るデジタル放送受信装置200の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0020】
図1は、本発明を適用した実施例に係るデジタル放送受信装置が好適に使用され得る状況の一例について説明するための図である。図1において、家屋250が東京都と千葉県の境界付近の東京都内に位置しており、家屋250内にデジタル放送受信装置200が設置されている。東京都と千葉県は、東京都サービス局300と、千葉県サービス局310とを各々有し、デジタル放送受信装置200は、東京都サービス局200からのデジタル放送波と、千葉県サービス局310からのデジタル放送波の双方を受信可能な状態にある。このような場合、家屋250は、東京都内にあり、東京都サービス局300の管轄地域であるので、東京都サービス局300からのデジタル放送波を受信し、利用するのが一般的である。
【0021】
しかしながら、デジタル放送受信装置200は、東京都サービス局300から送信されるデジタル信号波のみならず、千葉県サービス局310から送信されるデジタル放送波も受信可能な状況にある。このような場合、東京都サービス局300からの放送波の受信感度の方が良好であれば、サービスエリア内である東京都サービス局300からの放送波を受信する設定で問題無いが、受信状態により、千葉県サービス局310からの受信状態の方が良好な場合が起こり得る。このような状況下では、東京都サービス局300が管轄地域内のサービス局だとしても、千葉県サービス局310からの放送波を受信した方が、良好な映像及び音声を楽しむことができる。また、受信するサービス種類が、通常の映像や音声のコンテンツの場合には、受信するサービス局間で受信状態に差があったとしても大きな問題とはならない場合が多いが、デジタル放送においては、サービス局からソフトウェアをダウンロードするサービスを受ける場合がある。これは、新たに行われるデジタル放送でエンジニアリングサービスの一環として行われているものであり、サービス局から放送されるエンジニアリングストリーム放送からソフトウェアをダウンロードすることにより、デジタル放送受信装置200を正常に動作させるためのソフトウェアを最新化及び最適化する。これにより、デジタル放送受信装置200の受信状態を改善してゆくことができる。ところが、放送波を用いてソフトウェアをダウンロードする場合、受信状態が良好でないと、ダウンロードが適切に行われず、デジタル放送受信装置200のソフトウェアの更新が正しく行われないという事態を招くおそれがある。
【0022】
そこで、デジタル放送受信装置200が、複数のサービス局からの放送波を受信可能な場合には、デジタル放送受信装置200のサービスエリア内のサービス局に拘らず、最も受信状態の良好なサービス局から放送されるエンジニアリングストリーム放送を受信してソフトウェアのダウンロードを行うようにすれば、ダウンロードの成功確率を高めることができる。本実施例に係るデジタル放送受信装置200は、複数のサービス局からエンジニアリングストリーム放送の受信が可能な場合に、最も受信状態の良好なサービス局を選択し、ソフトウェアのダウンロードの成功確率を高めるので、県境等で、デジタル放送波の受信状態があまり良くない地域でデジタル放送受信装置200を用いる場合にも、十分に対応できる。
【0023】
なお、図1においては、2つの東京都サービス局300及び千葉県サービス局310からのデジタル放送波が受信可能な場合が例として挙げられているが、例えば、3県の県境や、4県の県境付近の地域に家屋250が位置し、3つ以上のサービス局からの受信が可能な場合にも、本実施例に係るデジタル放送受信装置200は好適に適用可能である。
【0024】
図2は、本発明を適用した実施例に係るデジタル放送受信装置200の全体構成を示したブロック図の一例である。本実施例に係るデジタル放送受信装置200は、チューナ10と、復調部20と、制御部60と、メモリ70と、サービス局検出手段80と、C/N値取得手段90と、サービス局選択手段100とを有する。また、本実施例に係るデジタル放送受信装置200は、必要に応じて、暗号複合部30と、音声信号処理部40と、映像信号処理部50と、音声信号変換部41と、ビジュアルドライバ51と、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス110と、サブCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)120と、電源ユニット130とを備えてよい。また、デジタル放送受信装置200の関連構成要素として、アンテナ11と、スピーカ42と、表示部52とが備えられていてもよい。
【0025】
チューナ10は、同調周波数を変化させ、所定の周波数に同調周波数を固定して受信するサービス局を選局する選局手段である。チューナ10は、本実施例に係るデジタル放送受信装置200においては、エンジニアリングサービスを提供するサービス局を選択する機能を有するが、その他、通常の映像信号や音声信号を含む番組等を受信する際に、受信チャンネルを選局する手段として利用されてもよい。
【0026】
チューナ10は、デジタル放送波を選局可能なデジタル放送に対応した選局手段が適用される。放送波を利用したソフトウェアのダウンロードは、デジタル放送波を用いることにより可能となるからである。なお、チューナ10は、外部のアンテナ11とともに、受信部15を構成してもよい。チューナ10から出力された受信信号は、復調部20に出力される。
【0027】
復調部20は、チューナ10により選局されて受信された受信波を復調し、デジタル放送波の変調前の信号を復元する手段である。復調される信号は、サービス局側における変調前のデジタル信号であり、ソフトウェア等のデータ信号の他、映像信号や音声信号を含んでもよい。
【0028】
復調部20は、必要に応じて、誤り訂正部21を含んでもよい。誤り訂正部21においては、伝送中に発生した誤りを、例えば、リードソロモン符号と畳み込み符号等の誤り訂正符号により訂正する。
【0029】
なお、復調部20から出力される信号形式は、例えば、トランスポートストリームであってもよい。
【0030】
暗号復号部30は、復調部20から出力された信号を、解読鍵等を用いて復号する。暗号は、例えば、日本の地上デジタル放送の標準暗号として採用されているMULTI2が用いられている場合には、外部からB−CASカードを接続することで、暗号を解除するようにしてもよい。他の暗号が用いられる場合には、用いられる暗号に対応した暗号復号部30を設けるようにしてよい。
【0031】
暗号復号部30は、分離部31を含んでもよい。分離部31は、復号後の信号を、音声信号と、映像信号と、付加情報とに分離する。付加情報は、EPG(Electronic Program Guide、電子番組表)等を含む付加的な情報である。分離部31において分離された音声信号は、音声信号処理部40に出力され、映像信号は、映像信号処理部50に出力される。また、番組情報等を含む付加情報は、制御部60に出力され、メモリ70に記憶される。信号がトランスポートストリーム信号の場合には、暗号復号部30において、パケット毎に分離されることになる。
【0032】
音声信号処理部40は、音声信号を復号する手段であり、音声信号の復号に必要な信号処理を行う。音声信号処理部40からの出力は、デジタル音声信号として音声変換部41に出力される。
【0033】
音声変換部41は、音声信号処理部40から入力されたデジタル音声信号をアナログ音声信号にデジタル−アナログ変換する手段である。音声変換部41から出力されたアナログ音声信号は、例えば、外部に接続されたスピーカ42に出力され、スピーカ42からユーザに音声を提供する。
【0034】
映像信号処理部50は、映像信号を復号する手段であり、映像信号の復号に必要な信号処理を行う。映像信号処理部50からの出力は、デジタル映像信号としてビジュアルドライバ51に出力される。
【0035】
ビジュアルドライバ51は、映像信号の表示画像の縦横の長さの比、いわゆる画角等を調節する手段である。ビジュアルドライバ51は、例えば、表示画像を16:9等の所定の画角に変換調整する。ビジュアルドライバ51により、画角が外部の表示部52に適合するように調整された映像信号は、ディスプレイ等の表示部52から出力され、ユーザに映像を提供する。なお、表示部52には、通常のブラウン管の他、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、有機EL(Electronic Luminescence)等が適用されてよい。
【0036】
制御部60は、メモリ70へのアクセスと、各種の演算処理を行う制御手段である。制御部60は、種々の演算処理を行うため、例えば、CPUで構成されてよい。
【0037】
制御部60は、暗号復号部30から番組情報等の付加情報が出力された場合には、これをメモリ70に書き込み、付加情報を記憶させる動作を行う。また、制御部60は、エンジニアリングサービスによるソフトウェアをダウンロードする場合には、ソフトウェアをメモリ70に書き込み、記憶させる制御を行う。更に、制御部60は、メモリ70に記憶されたプログラムや情報を読み込み、種々の演算処理を実行する。
【0038】
メモリ70は、プログラム等のソフトウェアを含む種々の情報を記憶する記憶手段である。メモリ70は、フラッシュメモリ71と、ブートROM(Read Only Memory)74と、RAM(Random Access memory)75とを有する。
【0039】
フラッシュメモリ71は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、番組情報等を含む付加情報と、種々の演算処理のためのプログラムが記憶される。従って、ダウンロードするソフトウェアも、最終的には、フラッシュメモリ71に記憶される。付加情報には、図1に示されるように、受信可能なサービス種類が一覧化されたサービスリスト72や、ダウンロードスケジュール73等の情報が含まれる。
【0040】
ブートROM74は、起動時に用いられるプログラムを記憶した記憶手段であり、不揮発性メモリに、起動用のプログラムが記憶されている。
【0041】
RAM75は、揮発性メモリを用いた記憶手段であり、起動時の情報やプログラムを一時的に記憶する記憶手段である。例えば、ソフトウェアをダウンロードする場合には、一旦RAM75にソフトウェアが記憶され、制御部60で展開され、最終的にフラッシュメモリ71に記憶され、電源が切れてもデータが保存される状態となる。同様に、種々の付加情報や、プログラムについても、デジタル放送受信装置200の動作中は、一旦情報やプログラムがRAM75に記憶され、制御部60で読み込まれ、種々の演算処理動作が実行される。
【0042】
サービス局検出手段80は、受信可能なサービス局が複数存在するか否かを検出する検出手段である。サービス局検出手段80は、種々の手法により受信可能なサービス局の検出を行うことができるが、例えば、制御部60と同様に、フラッシュメモリ71にアクセスし、サービス種類が記憶されたサービスリスト72の情報から受信可能なサービス局の数を検出してもよい。なお、サービスリスト72からサービス局を検出する具体的方法については、後述する。
【0043】
サービス局検出手段80は、制御部60と同様に、フラッシュメモリ71へのアクセスを行うので、例えば、演算処理機能を有するCPUとして構成されてもよい。サービス局検出手段80の検出結果は、C/N値取得手段90に出力される。
【0044】
C/N値取得手段90は、選局されたサービス局から受信したデジタル放送波のC/N値を取得する手段である。サービス局検出手段80において、複数のサービス局からエンジニアリングサービスが受信可能であることが検出された場合には、C/N値取得手段90は、チューナ10に各サービス局を選局させ、受信可能な各サービス局のC/N値を取得する。この場合、例えば、受信可能なサービス局について、図1で説明したように、東京都サービス局300と千葉県サービス局310の2つが検出された場合には、C/N値取得手段90は、東京都サービス局300からのエンジニアリングサービスのC/N値と、千葉県サービス局310からのC/N値とを各々取得する。
【0045】
図3は、C/N値を説明するための図である。C/N値は、搬送波(受信電力)と雑音の比(Carrier to Noise ratio)を示す値であり、電波の品質を表すのに用いられる。図3において、受信電力とノイズが示されているが、受信電力のノイズに対するマージンが、C/N値となる。よって、C/N値が大きい程、受信状態が良好であることを示す。ここで、受信電力とは、受信した電波(希望波)の電力のことを意味し、電波の強さを表す。図3に示すように、受信電力が高い場合であっても、ノイズの大きさも大きいと、C/N値が低くなり、希望波を受信出来ない場合がある。よって、本実施例に係るデジタル放送受信装置200においては、C/N値を取得し、各サービス局からのエンジニアリングサービスの放送波の受信状態を適正に評価する。
【0046】
なお、C/N値は、(1)式で表され、単位は〔dB〕で表示する。
【0047】
【数1】

図2に戻る。C/N値取得手段90は、C/N値算出手段91と、C/N値記憶手段92を備えてよい。C/N値算出手段91は、上述の(1)式を用いて、選局された各サービス局のC/N値を算出する手段である。なお、C/N値の算出は、1回だけでなく、所定期間内に複数回行い、複数の瞬間C/N値を算出し、瞬間C/N値の平均値を算出して行うようにしてよい。これにより、より精度の高いC/N値の算出を行うことができる。C/N値算出手段は、このような一連のC/N値の算出演算を行う。
【0048】
C/N値記憶手段92は、C/N値算出手段91で算出した各サービス局のC/N値を一時的に記憶するための手段である。C/N値を算出するサービス局は複数存在するので、算出したC/N値を一時的に記憶し、複数のC/N値が比較可能な状態にしておく。
【0049】
C/N値取得手段90において取得したC/N値は、サービス局選択手段100に出力される。なお、C/N値取得手段90は、上述のようなチューナ10に各サービス局を選局させる制御、C/N値算出のための演算処理を行うので、例えば、CPUで構成されてもよい。
【0050】
サービス局選択手段100は、C/N値取得手段90で取得した各サービス局のC/N値同士を比較し、最もC/N値の高いサービス局を選択してチューナ10に選局を行わせる手段である。サービス局選択手段100は、例えば、C/N値比較手段101と、選局制御手段102とを有してよい。
【0051】
C/N値比較手段101は、C/N値を大小比較するためのものであり、例えば、コンパレータのような比較手段が適用されてもよいし、ソフト的な演算処理により比較が行われてもよい。選局制御手段102は、C/N値比較手段101の比較結果を受け、チューナ10をC/N値の最も大きいサービス局に選局させ、受信サービス局を選択決定するための制御手段である。
【0052】
サービス局選択手段100の最終選択により、チューナ10は、最もC/N値の高いサービス局を選局してソフトウェアのダウンロードを行うことができる。なお、サービス局選択手段100は、所定の電子回路で構成されてもよいし、CPUで構成されてもよい。
【0053】
また、制御部60、サービス局検出手段80、C/N値取得手段90及びサービス局選択手段100は、機能別に別の構成要素として示されているが、これらのうち、CPUとして構成されるものは、総て1つのCPU内に構成されてもよい。制御部60、サービス局検出手段80、C/N値取得手段90及びサービス局選択手段100のハード構成は、用途に応じて種々の形態をとり得る。
【0054】
PCIバス110は、本実施例に係るデジタル放送受信機200を含めてLAN(Local Area Network)を形成する場合に、外部との接続を可能としている外部接続用のバスであり、必要に応じて設けられてよい。
【0055】
サブCPUは、外部のテレビ等のアナログ機器との接続を行う場合の、信号処理用のインターフェースであり、必要に応じて設けられてよい。
【0056】
電源ユニット130は、本実施例に係るデジタル放送受信機200に電源を供給するためのユニットである。
【0057】
次に、引き続き図2を用いて、このような構成を有する本実施例に係るデジタル放送受信装置200のソフトウェアのダウンロードに関する動作の一例について説明する。
【0058】
まず、エンジニアリングサービスを提供するサービス局からのエンジニアリングストリーミング放送が行われるスケジュール、つまりソフトウェアのダウンロードサービスを行うスケジュールに関する情報は、付加情報の一部として、フラッシュメモリ71内にダウンロードスケジュール73として記憶されている。
【0059】
図4は、フラッシュメモリ71に記憶されているソフトウェアのダウンロードの告知情報を含む電子番組表(EPG)の一例を示した図である。図4において、ダウンロードスケジュールSDTT、ネットワークID情報NIT、サービス情報SDT、時間ずれ情報TOT、現在時刻情報TDT、番組パケットID情報PMT、番組表EIT及びデータ放送情報DATA等が示されている。
【0060】
このうち、ダウンロードスケジュールSDTTが、ソフトウェアのダウンロードスケジュールに関する情報であり、このスケジュールに従って、エンジニアリングサービスのエンジニアリングストリーム放送によるソフトウェアの配信が行われる。なお、ソフトウェアのダウンロードは、主電源が切れておらず、かつ視聴用のデジタル放送波を受信していないタイミングで、自動的に受信用の電源が入り、サービス局への選局が自動的に行われ、ソフトウェアのダウンロードが行われることになる。このとき、時間については、特定地域の時間ずれに関する情報TDTと、現在の時刻と日付情報TDTが参照され、正確にダウンロードスケジュールSDTTに合わせて、ダウンロードを行う。
【0061】
図2に示す本実施例に係るデジタル放送受信装置200においては、例えば、フラッシュメモリ71に記憶されたダウンロードスケジュールSDTTを参照し、ダウンロードが開始される時刻の所定時間前に、ダウンロードの動作を開始するようにしてよい。例えば、午前10時からダウンロードが開始されるスケジュールになっている場合には、5分前の9時55分に動作を開始するようにしてもよい。
【0062】
まず、フラッシュメモリ71内に記憶されたダウンロードスケジュールSDTTを参照し、所定時間前になったら、サービス局検出手段80により、エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が複数存在するか否かが検出される。このとき、フラッシュメモリ71内のサービスリスト72が参照される。
【0063】
図5は、サービスリスト72の具体的な内容の一例を示した図である。サービスリスト72は、受信可能なサービスに関する情報が列挙された一覧表であり、例えば、図5に示すように、ネットワークID、サービスID、チャンネル番号、枝番、局名、C/N値、地域識別ID、サービス種別等が記憶される。ここで、「地域識別」の項目は、地域別に番号が割り当てられたものであり、例えば、1:東京都、2:千葉県、3:神奈川県、・・・のように地域別に番号が割り当てられる。また、「サービス種別」の項目は、サービスの種類を識別するための項目であり、サービスの種類毎に識別IDが割り当てられる。例えば、通常のドラマやスポーツ中継等の音声信号及び映像信号を送信するサービス内容であれば「0X1C」、エンジニアリングサービスを送信するサービス内容であれば「0X1A」のフラグが設定されているとすると、図5の場合、通常の番組の受信局としてはTBSと日テレの2局が示されている。また、図5において、エンジニアリングサービスを示すサービス種別「0X1A」のフラグが2つ存在し、受信可能な地域が、1:東京都と2:千葉県で異なる2つのサービスエリアのエンジニアリングサービスを受信可能であることが分かる。
【0064】
このように、サービス局検出手段80は、フラッシュメモリ71内に記憶されたサービスリスト72内のサービス種別の項目からエンジニアリングサービスのフラグを検出し、次いで、地域識別IDの項目から複数の地域のサービス局が存在するか否かを検出することにより、受信可能なサービス局が複数存在するか否かを検出することができる。
【0065】
なお、サービス種別には、テレビサービス、ラジオサービス、データサービス及びエンジニアリングサービス等がある。上述のように、各々のサービスがフラグを持っているため、フラグによりサービス種別の判断が可能となっている。このようなフラグの設定は、ARIB(Association of Radio Industries and Broadcast、社団法人電波産業会)により規定されている。
【0066】
なお、サービスリスト72は、デジタル放送受信装置200をユーザが購入し、チャンネル設定等を行うチャンネルスキャン時に生成されてよい。サービスリスト72の生成後は、サービスリスト72に基づいて、通常の視聴のための選局及びエンジニアリングサービスによるソフトウェアのダウンロードが行われることになる。
【0067】
ここで、エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が1つしか存在しない場合には、当該エンジニアリングサービスからソフトウェアのダウンロードを実行すれば良いので、通常通りのダウンロード動作を行うようにすればよい。一方、図5に示すように、サービスリスト72から複数の受信可能なサービス局が検出された場合には、サービス局検出手段80の検出結果は、C/N値取得手段90に出力される。
【0068】
図2に戻り、C/N値取得手段90の動作を説明する。サービス局検出手段80で、複数の受信可能なサービス局が検出された場合には、まず1つ目のサービス局、例えば東京都サービス局300をチューナ10で選局し、C/N値を取得する。このとき、C/N値は、受信状態により刻々と変化するので、所定の期間内に、複数のC/N値を瞬間々々で取得するようにしてよい。例えば、1回の瞬間C/N値を、16〔ms〕毎に取得するようにすれば、わずか160〔ms〕の間に、10回の瞬間C/N値を取得できることになる。ここで、例えば、より精度を高めるため、最大値と最小値を除き、中央の8回分の瞬間C/N値を平均してC/N値を算出するようにすれば、高精度のC/N値を算出することができる。このようなC/N値の算出動作は、C/N値算出手段91で行い、算出されたC/N値は、C/N値記憶手段92に記憶させてよい。
【0069】
なお、16〔ms〕は、1〔Tick〕の単位であり、CPUが1つのコマンドを出力する時間間隔と同様である。このように、CPUの動作に同期させたタイミングで瞬間C/N値を取得するようにしてもよい。
【0070】
このようにして1つ目の受信可能なサービス局のC/N値を取得した後、2つ目の受信可能なサービス局、例えば、千葉県サービス局310をチューナ10で選局し、同様の手法でC/N値を取得するようにすれば、各サービス局300、310のC/N値を、わずか数秒以内の時間で取得することができる。
【0071】
C/N値取得手段90で取得された各サービス局のC/N値は、サービス局選択手段100に出力される。
【0072】
サービス局選択手段の動作は、デジタル放送受信装置200の構成要素の説明時に行った内容と同様である。つまり、サービス局選択手段100において、C/N値比較手段101で各サービス局300、310のC/N値の比較を行い、C/N値が最も大きいサービス局を選択して、その結果を選局制御手段102に出力する。選局制御手段102は、C/N値比較手段101の結果を受け、C/N値が最も大きいサービス局をチューナ10に選局させる。このようにして、最もC/N値の大きいサービス局が選局される。
【0073】
その後、選局されたサービス局からのエンジニアリングストリーム放送を受信してソフトウェアのダウンロードを行うようにする。このような本実施例に係るデジタル放送受信装置200の動作により、受信状態の最も良好なサービス局からソフトウェアをダウンロードすることができ、ダウンロードの成功確率を大幅に向上させることができる。
【0074】
次に、図6を用いて、本実施例に係るデジタル放送受信装置200の処理フローを説明する。図6は、本実施例に係るデジタル放送受信装置200の処理フロー図である。
【0075】
ステップ100においては、デジタル放送波より、ソフトウェアダウンロード情報を取得する。なお、図6においては、省略されてSWDL(Software Download)と示されている。本ステップは、通常のデジタル放送波の受信により、付加情報を受信した際に、ソフトウェアダウンロードスケジュール73がフラッシュメモリ71に記憶されることにより、行われてよい。
【0076】
ステップ110においては、サービス局検出手段80により、サービスリスト72の参照が行われる。サービスリスト72の参照は、サービス局検出手段80が、フラッシュメモリ71内に記憶されたサービスリスト72にアクセスすることにより行われてよい。
【0077】
なお、ステップ110が行われるタイミングは、ステップ100で取得したソフトウェアダウンロードスケジュール73に基づき、ダウンロード開始の所定時間前に行われてよい。具体的には、ダウンロード開始時刻の5分前という程度の、数分間前のレベルで十分である。
【0078】
ステップ120では、サービス局検出手段80により、サービスリスト72から、サービス種別がエンジニアリングサービスに該当するサービスが検出される。図5において説明したように、例えば、サービスリスト72のサービス種別の情報からエンジニアリングサービスのフラグを検出し、更に地域識別IDから、受信可能なサービス局が複数存在するか否かを検出することにより、サービス局の検出が行われてよい。
【0079】
ステップ120において、サービス局検出手段80が、2以上の複数のエンジニアリングサービスを受信可能なサービス局を検出した場合には、ステップ130に進む。一方、サービス局検出手段80が、エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局を1つのみ検出した場合には、ステップ160に進む。
【0080】
ステップ130では、C/N値取得手段90において、エンジニアリングサービスを提供する各サービス局を、チューナ10を用いて選局し、各サービス局のC/N値を取得する。その際、例えば、各サービス局について、瞬間C/N値を複数取得し、瞬間C/N値の平均値を算出することにより、より安定したC/N値を取得するようにしてもよい。
【0081】
ステップ140では、サービス局選択手段90において、各サービス局のエンジニアリングサービスのC/N値を比較して、最もC/N値が高いエンジニアリングサービスを提供しているサービス局を選択し、チューナ10の選局を選択したサービス局に合わせる。
【0082】
ステップ150では、ステップ140で選局された最もC/N値が高いエンジニアリングサービスを放送するサービス局から、ソフトウェアのダウンロードを行い、処理フローを終了する。
【0083】
一方、ステップ120からステップ160に進んだ場合には、1つの該当サービス局においてソフトウェアのダウンロードを実行し、処理フローを終了する。
【0084】
このように、本実施例に係るデジタル放送受信装置200の処理フローによれば、エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が複数存在するときには、ダウンロード時に最も受信状態の良好なサービス局からダウンロードを行い、ダウンロードの成功確率を高めることができる。また、エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が1つしか存在しない場合には、通常通り、サービスエリア内のサービス局からソフトウェアのダウンロードを行うことができる。よって、デジタル放送受信装置200が県境等の地域で使用される場合にも、特にそのような地域ではなく、サービス局が明確に1つに特定される地域に使用される場合にも、好適に使用され得る。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、デジタル放送を受信するセットトップボックス、テレビ受信機等を含むデジタル放送受信装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 チューナ
11 アンテナ
15 受信部
20 復調部
21 誤り訂正部
30 暗号復号部
31 分離部
40 音声信号処理部
41 音声信号変換手段
42 スピーカ
50 映像信号処理部
51 ビジュアルドライバ
52 表示部
60 制御部
70、71、72、73 メモリ
80 サービス局検出手段
90 C/N値取得手段
91 C/N値算出手段
92 C/N値記憶手段
100 サービス局選択手段
101 C/N値比較手段
102 選局制御手段
110 PCIバス
120 サブCPU
130 電源ユニット
200 デジタル放送受信装置
250 家屋
300、310 サービス局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同調周波数を変化させ、受信するサービス局を選局する選局手段と、
エンジニアリングサービスを受信可能なサービス局が、複数存在するか否かを検出するサービス局検出手段と、
該サービス局検出手段により前記サービス局が複数検出されたときに、前記選局手段に各サービス局を選局させ、該各サービス局から送信される前記エンジニアリングサービスのC/N値を取得するC/N値取得手段と、
該C/N値取得手段により取得された前記各サービス局の前記C/N値を比較し、前記C/N値が最も高いサービス局を選択して前記選局手段に選局させるサービス局選択手段と、
該サービス局選択手段により選択されたサービス局から送信されるエンジニアリングストリーム放送を利用して、ソフトウェアをダウンロードする制御を行う制御手段と、を含むことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記C/N値取得手段は、同一のサービス局から前記デジタル放送信号の瞬間C/N値を複数取得し、複数の該瞬間C/N値の平均値から前記各サービス局の前記C/N値を算出することを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
受信可能な各サービスのチャンネル情報を一覧化したサービスリストを記憶する記憶手段を有し、
前記サービス局検出手段は、前記サービスリストから、前記エンジニアリングサービスを行う前記サービス局を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記サービス局選択手段による前記サービス局の選択は、ダウンロードの対象となる前記ソフトウェアが送信される前記エンジニアリングストリーム放送が行われる前の所定時間内に行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項5】
前記エンジニアリングストリーム放送によるダウンロードスケジュールを予め記憶する記憶手段を有し、
該記憶手段に記憶された前記ダウンロードスケジュールに基づいて、前記サービス局選択手段による前記サービス局の選択が行われることを特徴とする請求項4に記載のデジタル放送受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−103515(P2011−103515A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256910(P2009−256910)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】