説明

デンプンを中芯とする生分解性デンプンラミネートシート

【課題】成形性の著しく向上されたデンプンシートであっても、水に対す溶解性を大幅に改善するとともに透明性及び機械的性質を改善したデンプンラミネートシートを提供すること。
【解決手段】成形性の著しく改善されたデンプンを中芯とし、その外側層にポリ乳酸等水に不溶あるいは難溶の生分解性ポリマーをラミネートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて安価な方法で、従来のデンプンを材料とするシートの物性、特に機械的強度及び耐水性を改善したデンプンラミネートシートに関する。
また、本発明は、無機塩又は有機金属塩の水和物を含むデンプンシートを芯層として、その外側にポリマー層を設けることによって、デンプン乾燥後における成形性等の物性を改善したデンプンラミネートシートに関する。
さらに、本発明は、上記デンプンラミネートシートで成形された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは、食品としては勿論、工業材料としても非常に広く用いられている天然高分子の一つであり、生分解性の観点からも最も好ましい生分解性高分子である。
最近の環境にやさしい材料が希求される観点から、高分子材料等に対しても生分解性の要望は強くなっており、このような状況下、各種合成高分子材料においても、デンプン等による代替が種々試みられているが、現実には多くの問題が存在し、その実現は容易ではない。
現在、広く用いられているプラスチックを始めとする合成高分子材料の代替としてデンプンを考える場合、その重大な問題点の一つが乾燥後の可塑性の欠如にあり、そのために成形性が著しく制約され、成形後の強度が著しく不足するのが実情であった。
このような問題点は、生分解性材料一般に言えることであり、多くの成書にも指摘されている(例えば、辻 秀人著「生分解性高分子材料の科学」(2002,コロナ社)、p.7〜78)。
昨今、これらの問題を改善するために、種々の生分解性を謳う高分子材料が提唱され、現実には市販もされている。例えば、APIC社のVINEX、ノバモント社のマタビー、ワーナー ランバート社のNOVON等が挙げられる。
さらには、微生物により産生させる特殊な材料であるプルラン等があるが、これらの材料はいずれもかなり高度な化学的操作を必要とし、決して安価なものではなく、経済性に欠けていた。
【0003】
また、合成高分子材料の代替可能材料としてのデンプンの物性改善技術に限ってみてみると、無機塩を添加して物性改善を図る技術も数多く知られている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等には糊剤及び接着剤としてのデンプンに無機塩を添加すること、特許文献7、特許文献8等には農業用薬剤としてのデンプンに無機塩を加えること、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13には固形製剤としてデンプンと無機塩を共存させたもの、特許文献14、特許文献15には、デンプンと潮解性無機塩を共存させたものがある。
【0004】
このように、デンプンと無機塩水和物(結晶水を持った無機塩)とを共存させる技術は、既に数多く知られている。しかし、これらの先行技術においては、デンプン中に無機塩水和物を導入し、乾燥後も無機塩水和物として存在せしめ、乾燥後の可塑性(例えば伸び等)を向上させ得ることは知られていない。ましてや、成形性を改善して得られたシートに、本来求められている機械的強度等の物性を改善したデンプンシートは知られていなかった。
そこで、本発明者らは、この問題を解決するため、結晶水を持った無機塩を添加すること(特許文献16)、有機金属塩を添加すること(特許文献17)を提案し、公知技術として知られている。また、さらに架橋剤を添加することにより、機械的性質が改善することも提案した(特許文献18)。
これらの先行技術によれば、デンプンの乾燥後の成形性を向上することが可能となった。例えば、成形性の改善された成形品では、変性タピオカデンプンに30wt%のMgCl6HOを添加することにより、工業規模の装置により厚さ0.1mm×幅40cm×長さ120mのシート又はフィルムの作成に成功した従来のデンプンの物性改善技術では、このような大形のシート又はフィルムの作成は不可能であった。
【0005】
しかしながら、これらの先行技術によって成形性を改善できたといっても、汎用の合成高分子材料の物性には及ぶものではなく、簡単で、経済的に、デンプンの乾燥後の物性を大幅に向上させ、必ずしもデンプン成形物の実現を満たすものではなかった。
また、最近のエコ技術の実現の促進の観点から、環境に優しい原料であるデンプンを主材料とし、デンプンの乾燥後の可塑性が改善され、デンプンシートの機械的強度が向上し、さらに従来デンプンの弱点の易水溶性を抑制する改善技術は存在しなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭50−016726号公報
【特許文献2】特開昭56−143279号公報
【特許文献3】特開平03−012470号公報
【特許文献4】特開平07−119042号公報
【特許文献5】特開平08−291276号公報
【特許文献6】特表平08−502951号公報
【特許文献7】特開昭51−001649号公報
【特許文献8】特開昭51−054931号公報
【特許文献9】特開昭49−047169号公報
【特許文献10】特開昭53−006432号公報
【特許文献11】特開昭53−086095号公報
【特許文献12】特表2002−505269号公報
【特許文献13】特開2002−180098号公報
【特許文献14】特開2000−005553号公報
【特許文献15】特開昭57−082576号公報
【特許文献16】特開2007−031592号公報
【特許文献17】特開2007−031593号公報
【特許文献18】特開2007−277426号公報
【非特許文献1】辻 秀人著「生分解性高分子材料の科学」(2002,コロナ社、p.7〜78)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のデンプンラミネートシートやフィルム(以下、シートという)は、上記の公知技術の問題点を克服したものであり、デンプン本来の乾燥後の可塑性が改善され、シートの成形が容易であり、しかも得られたデンプンシートをラミネート化することにより、機械的強度が優れ、さらに従来デンプンシートが有する弱点であった水溶性が抑制され、難水溶性又は耐水性、さらには透明性の改善されたデンプンラミネートシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発明者等の先行技術(特許文献16,特許文献17)に記載されるデンプンシートの成形性等の特性をより一層改善するとともに、難水溶性のポリマーをラミネート化することによって、デンプン本来の生分解性は維持しつつ、機械的強度等の諸物性を改善するとともに、耐水性、透明性を改善したデンプンラミネートシートとすることを基本構成とするものである。
【0009】
本発明は、具体的には以下の構成を特徴とするものである。
(1)結晶水を持つ無機塩又は有機金属塩を含有するデンプンシートを中芯(なかしん)層とし、その少なくとも一方の外側層として水に不溶又は水に難溶の生分解性ポリマーをラミネートすることを特徴とするデンプンラミネートシート。
(2)上記デンプンシートを形成するデンプンが、コーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプン等の植物由来のデンプン;α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、可溶化デンプン等の変性デンプン(修飾デンプン)であることを特徴とする(1)に記載のデンプンラミネートシート。
(3)上記デンプンの少なくとも一方の外側層としてラミネートする生分解性ポリマーが、ポリ尿酸(PLA)又はポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のデンプンラミネートシート。
(4)上記無機塩又は有機金属塩が潮解性である(1)〜(3)のいずれかに記載のラミネートデンプンシート。
(5上記無機塩が、Ca又はMgから選ばれた金属の塩化物又は硝酸塩である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のデンプンラミネートシート。
(6)上記有機金属塩が、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩又は酒石酸塩であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のデンプンラミネートシート。
(7)水に接する側に上記水に不溶又は水に難溶の生分解性ポリマーシートを配置したことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のデンプンラミネートシートより作成された成形品。
(8)容器であることを特徴とする上記(7)の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のデンプンラミネートシートは、デンプン本来の乾燥後の可塑性が改善され、シートやフィルムの成形が容易で、しかも成形後のデンプンシートの機械的強度が優れ、透明性も優れ、さらに従来デンプンの弱点であった水溶性が抑制され、水に難溶性又は耐水性のデンプンラミネートシートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、上記本発明者らにかかる上記公知技術(特許文献16〜特許文献18)におけるデンプンの成形性や機械的物性及び耐水性を改善するために、該デンプンを芯層とし、その外側に水に不溶又は水に難溶の生分解性ポリマーをラミネートすることにより内側のデンプン層をカバーすることによって求められる物性、例えば水に対する難溶性を大幅に向上せしめるものである。
以下の実施例で明らかなように、成形性の向上したデンプンと、水に不溶又は難溶な生分解性ポリマーとの組み合わせにより、得られたラミネートシートは予想以上の機械的性質の改善と透明性の向上、水への難溶性等の顕著な効果を発揮せしめるものである。
【0012】
本発明でデンプンシートに使用されるデンプンは、特に制約はない。例えばコーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプン等の植物由来のデンプン;α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、可溶化デンプン等の変性デンプン(修飾デンプン)が含まれる。
また、本発明の成形性の向上したデンプンラミネートシートを得るために加える塩は、結晶水として水を含有する無水無機塩又は有機金属塩水和物であるが、これらの塩は塩潮解性を持つことが好ましい。特に好ましく使用されるのはCa又はMgの硝酸塩及び塩化物である。
また、上記有機金属塩の金属としては、Fe、Zn、Cr、Al等が適当であり、これらの金属のシュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩又は酒石酸塩を使用すればよい。
さらに、デンプンに加える上記無機塩水和物又は有機金属塩水和物は、格別の制限はないが、デンプン100重量部に対して3重量部以上の無機塩又は有機金属塩の結晶水としての水を含有する程度に加えるのが適当であるが、結晶水を持つ無機塩又は有機金属塩自体の添加量(結晶水を含む)で言えば、2〜200重量部程度、好ましくは、5〜150重量部が適当である。
【0013】
本発明で使用するデンプンとしては、上記デンプンの種類を使用するのが好ましいが、さらに好ましくは、機械的性質の向上したデンプンは、先の発明者等の公知技術(引用文献16、引用文献17)に記載されたデンプンを使用するのが有利である。
一般にデンプンの単独使用でシートを形成しようとしても、乾燥後は可塑性に乏しく、シートに成形することはほとんど不可能であるが、本発明では、これに上記無機塩又は有機金属塩の水和物を存在させることで、乾燥後も工業的な装置を使用することによって、厚み0.1mm×幅40cm×長さ120m程度という、実用性の高い大きなサイズのシートにすることが可能になる。
さらに、本発明ではデンプンとしてコーンスターチを使用した場合に形成したデンプンシートをPLAでラミネート化したものは、伸び150%程度、引張り強さ45MPa程度という、従来のデンプンンシートからは予想もし得ない高い機械的強度のシートを得ることができる。
【0014】
そもそもデンプンは、水に溶けやすく、さらにデンプン中に水溶性の無機塩又は有機金属塩の水和物が含まれていることから該塩が水に溶出しやすく、水に溶けやすい性質を利用する場合は利点であっても、逆に水のあるところでは易水溶性が欠点ともなり、シートとした場合、水に接する個所への使用は難しかった。
本発明では、上述するようなデンプンを使用するが、これらに対して上記無機塩又は有機金属塩を添加してシート物性を改善した場合でも、これらデンプンの単独使用だけでは、水に接する面への使用は水に対する水溶性のために使用できなかった。
【0015】
しかしながら、本発明では、これら先行技術のデンプンシートの水に対する抵抗性あるいは耐水性を向上させるために、外側(すなわち、水に接する面)にラミネートする生分解性ポリマーとしては、水に難溶性のポリマーであれば格別の制限はないが、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等が適当で、本発明の実施に当たってはポリ乳酸(PLAと呼ぶ)が最も好ましく使用される。
また、本発明では、上述するようにデンプンシートを芯層とするものであるが、少なくとも一面の外側層をポリ乳酸(PLA)又はポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)をラミネート化すればよく、両方の外側層を上記ポリマーをラミネート化するときは両方とも上記同一ポリマーを用いてもよいし、一方の外側層をポリ乳酸(PLA)とし、他方をポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)とすることもできる。
上記デンプンラミネートシートで容器等の成形品にする場合には、水に接する面にポリ乳酸(PLA)又はポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)を配置する必要がある。
デンプンシートとPLAやPBSA等の水難溶性ポリマーのラミネート体の厚みの各厚み割合は、使用する用途によって調節可能であるが、一般には、デンプンシートの厚みの比率を高くした方が経済的には有利となる。一般的な本発明のデンプンラミネートシートにおける、デンプンシート/上記ポリマーシートの厚みの比率は、2/1〜5/1程度である。
また、全体の厚さとしては、特に制限はないが、成形の容易さ及び用途の広さからは0.05mm〜1.0mm程度が最もよく使用される。
以上の既述から本発明のデンプンラミネートシートの水に対する抵抗性(難溶性)の実態は明らかであるが、実施例によってさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0016】
デンプンとしてコーンスターチを選び、無機塩としてMgCl6H2Oを選び、デンプン100重量部に対して30重量部のMgCl6H2Oを添加することにより、成形性の著しく向上したデンプンシートを得た(幅5cm×長さ5cm×厚み0.5mm、キャスト法による)。
このデンプン単独のシートに、汎用ラミネーターを用いて、市販の厚さ0.025mmのポリ乳酸(PLAと略称)を接着剤としてPVA系のものを用いデンプンラミネートシートを得た。
得られたラミネート体は、均一に接着されており、剥離等の問題はなく、機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプン単独シート(比較品)及びデンプンラミネートシート(本発明品)の物性を〔表1〕に示す。
【0017】
【表1】

【実施例2】
【0018】
実施例1と同様のデンプンシートを用い、水に難溶性のポリマーとしてPLAの代わりに市販の厚さ0.04mmのPBSA(ポリブチレンサクシネートアジペート)シートを用い、実施例1と同じ事務用ラミネーター及び接着剤を用い、ラミネート化した。この場合にも良好なデンプンラミネートシートが得られ、不均一性及び剥離等の問題はなかった。
得られた本発明品のデンプンラミネートシートは、実施例1と同様に機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプンラミネートシートの物性値を〔表2〕に示す。
【0019】
【表2】

【実施例3】
【0020】
実施例1,2と同様デンプンとしてコーンスターチを用い、添加する塩として酢酸マグネシウム4水塩を用いた。添加量は同じく30wt%/デンプンとする。
実施例1,2と同様の成形性のあるデンプンシートが得られたが、透明性は実施例1,2と比べると若干劣るものであった。
このデンプンシートを中芯とし、その外側に実施例1で使用したPLA(厚さ0.025mm)を実施例1と同様の接着剤とラミネーターを用いてラミネートとした。
得られたラミネートシートは、剥離等の問題はなく、機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプンシート(比較品)及びデンプンラミネートシート(本発明品)の物性を並べて〔表3〕に示す。
【0021】
【表3】

【実施例4】
【0022】
デンプンとしてバレイショデンプンを使用し、無機塩としてCa(NO3)4H2Oを選び、デンプン100重量部に対して30重量部のCa(NO3)4H2O を添加することにより、デンプン単独シートを得た(厚み1.0mm×幅5cm×長さ5cm、キャスト法による)。
汎用ラミネーターを用いて、デンプンシートに市販の厚さ0.025mmのポリ乳酸(PLAと略称)を接着剤としてバイオテックDL(大日精化(株)製の生分解性接着剤)を使用し、デンプンラミネートシートを得た。
このラミネート体は均一に接着され、剥離等の問題はなく、実施例3のラミネートシートと同様に、機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプンシート(比較品)及びデンプンラミネートシート(本発明品)の物性を〔表4〕に示す。
【0023】
【表4】

【実施例5】
【0024】
デンプンとしてカンショデンプンを用い、無機塩としてMg(NO3)6H2Oを選び、デンプン100重量部に対して30重量部のMg(NO3)6H2O を添加することにより、デンプン単独シートを作成した(厚み1.0mm×幅5cm×長さ5cm、キャスト法による)。
このデンプンシートに市販の厚さ0.025mmのポリ乳酸(PLAと略称)を事務用ラミネーターを用いて、実施例4と同じ接着剤を使用し、デンプンラミネートシートを得た。
このラミネート体は、均一に接着され、物性も良好で、剥離等の問題はなく、機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプンシート(比較品)及びデンプンラミネートシート(本発明品)の物性を〔表5〕に示す。
【0025】
【表5】

【実施例6】
【0026】
工業規模の装置で作られた厚み0.1mm×幅40cm×長さ120mのデンプンシートとし、実施例1で使用したPLAシートを工業規模の装置で外側にラミネートとする。接着剤も実施例4と同じものを使用する。
デンプンラミネートシートとしては、幅40cm×長さ70m×厚み0.15mmのものを形成でき、得られたラミネートシートは剥離等の問題はなく、機械的物性(引張り強さ、伸び、弾性率)が改善され、さらに透明性も向上していた。
このデンプンシート(比較品)及びデンプンラミネートシート(本発明品)の物性を〔表6〕に示す。
【0027】
【表6】

【実施例7】
【0028】
実施例6で得られたデンプンラミネートシートを後加工して容器を形成した。得られた容器の内側に、水をはった状態で1週間常温に保持した。その後、容器の重量増加を測定した。
結果は次の通りである:
水接触前の重量(当初) 25.8g
水接触後の重量 26.6g
重量増加率 3.1%
本発明の容器の水接触による重量増加率は、デンプンシート単独シートでは直ちに溶解するのに比して驚異的な極少量であり、本発明のデンプンラミネートシートの難溶性の改善効果の著しいことがわかった。
【0029】
以上述べた実施例から次の本発明におけるデンプンラミネートシートの効果を確認した。
(1)デンプンを中芯とし、両外側層として水に不溶又は難溶の生分解性ポリマーでラミネートすることにより、機械的性質が驚異的に向上する。
(2)デンプンの種類にかかわらず、この傾向は共通する。
(3)PLA、PBSA等のポリマーでラミネートすることによって透明性が向上する。
(4)工業規模の装置で製造されたデンプンシート及びデンプンラミネートシートについても同様の傾向が現われ、機械的性質及び透明性が向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶水を持つ無機塩又は有機金属塩を含有するデンプンシートを芯層とし、少なくともその一面の外側層として水に不溶又は水に難溶の生分解性ポリマーをラミネートしてなることを特徴とするデンプンラミネートシート。
【請求項2】
上記デンプンシートに、植物由来のデンプン及び/又は変性デンプン(修飾デンプン)を用いることを特徴とする請求項1に記載のデンプンラミネートシート。
【請求項3】
上記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデンプンラミネートシート。
【請求項4】
上記無機塩又は有機金属塩が、潮解性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデンプンラミネートシート。
【請求項5】
上記無機塩が、Ca又はMgから選ばれた金属の塩化物又は硝酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデンプンラミネートシート。
【請求項6】
上記有機金属塩が、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩又は酒石酸塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデンプンラミネートシート。
【請求項7】
水に接する側に上記水に不溶又は水に難溶の生分解性ポリマーシートを配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデンプンラミネートシートより作成された成形品。
【請求項8】
容器であることを特徴とする請求項7に記載の成形品。

【公開番号】特開2009−241342(P2009−241342A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89346(P2008−89346)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(592015802)赤穂化成株式会社 (29)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】