説明

データ変換装置、映像表示装置およびデータ変換方法

【課題】データ変換に関する技術を提供する。
【解決手段】Nビット以下で表現可能な入力値に対応するデータを入力し、補間演算を行うことによってNビットの出力値に対応するデータを出力するデータ変換装置であって、Nビットより大きいビット数で表現される値を含む参照値が、Nビットで表現可能な値に圧縮された値を記憶するルックアップテーブルと、入力値に対して、ルックアップテーブルに記憶された参照値に対応する圧縮された値を参照し補間演算を行うことによって補間演算値を算出する補間演算部と、補間演算値に対して、圧縮に対応した拡張演算を行い、該拡張演算によって算出した拡張演算値をNビットの出力値に対応するデータとして出力する拡張補間出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの変換を行うデータ変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター、液晶テレビ、プラズマテレビなどの画像データを扱う画像表示装置では、入力される画像データを、画像表示装置で処理可能なデータ形式に変換するために、データ変換用のルックアップテーブル(以下、LUTとも呼ぶ)を使用する場合がある。このようなLUTを用いてデータ変換を行う際、全ての入力データ値に対応させてデータ変換を行うのではなく、LUTは一部の入力データに対するデータ値のみを記憶し(以下、LUTが記憶しているデータ値を記憶値とも呼ぶ)、残りの入力データに対しては、そのLUTの記憶値に基づく補間演算によって算出することが一般に行われている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−99586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LUTに記憶されるデータ値の範囲は、データ値を何ビットで表すのかによって制限される。たとえば、8ビットの符号なし整数では、最小値が0、最大値が255の範囲の値を表現することができる(以下、許容データ値とも呼ぶ)。しかしながら、LUTに格納したい理想的なデータ値が、データ値を符号化するのに用いられたビット数では表現できない場合がある。許容データ値の範囲内で補間演算を行なう限り、期待した結果が得られるものの、補間演算の過程で許容データ範囲外の値を扱わないといけない場合には、許容データ値の範囲内のデータしか扱えない故、正確な補間演算が行えないと言う課題が指摘されていた。このような課題がもたらす問題は、YUV形式の色空間で表される画像データをRGB形式の色空間で表される画像データに変換する変換装置等において、出力の歪として顕在化することが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0006】
[適用例1]
Nビット以下(Nは2以上の整数)で表現可能な入力値に対応するデータを入力し、補間演算を行うことによってNビットの出力値に対応するデータを出力するデータ変換装置であって、Nビットより大きいビット数で表現される値を含む参照値が、Nビットで表現可能な値に圧縮された値を記憶するルックアップテーブルと、前記入力値に対して、前記ルックアップテーブルに記憶された前記参照値に対応する前記圧縮された値を参照し補間演算を行うことによって補間演算値を算出する補間演算部と、前記補間演算値に対して、前記圧縮に対応した拡張演算を行い、該拡張演算によって算出した拡張演算値をNビットの出力値に対応するデータとして出力する拡張補間出力部とを備えるデータ変換装置。
【0007】
このデータ変換装置によると、Nビットより大きいビット数で表現される値を用いて補間演算値を算出することができるので、Nビットで表現される値以下の参照値しか記憶できないルックアップテーブルを備える場合と比較して、より正確に補間演算値を算出することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載のデータ変換装置であって、前記拡張補間出力部は、前記拡張演算値が前記Nビットより大きいビット数で表現される値である場合には、該拡張演算値を前記Nビットで表現可能な最小値または最大値に制限して、前記出力値に対応するデータとして出力するクリッピング処理部を備えるデータ変換装置。
【0009】
このデータ変換装置はクリッピング処理部を備えるので、拡張演算値がNビットより大きいビット数で表現される値であっても、Nビットの出力値に対応するデータとして出力することが可能である。
【0010】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のデータ変換装置であって、前記圧縮は、前記各参照値に所定の圧縮比「1/g」(gは1以上の任意の数)を乗算し、該乗算によって算出した各乗算値を、オフセット値Sだけオフセットすることであり、前記拡張演算は、前記補間演算値に対して前記オフセットを戻す演算を行い、該オフセットを戻す演算によって算出した値にゲイン値gを乗算することであるデータ変換装置。
このデータ変換装置によると、比較的簡単な演算処理によって拡張演算を行うことができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1または適用例2に記載のデータ変換装置であって、前記圧縮は、前記各参照値をオフセット値Sだけオフセットしてオフセット処理値を算出し、該オフセット処理値に、所定の圧縮比「1/g」(gは1以上の任意の数)を乗算することであり、前記拡張演算は、前記補間演算値に対してゲイン値gを乗算し、該乗算によって算出した乗算値に対して前記オフセットを戻す演算をすることであるデータ変換装置。
このデータ変換装置によると、比較的簡単な演算処理によって拡張演算を行うことができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか記載のデータ変換装置であって、前記入力値に対応するデータは、第1の色空間における色に関する情報を含むデータであり、前記出力値に対応するデータは、第2の色空間における色に関する情報を含むデータであるデータ変換装置。
このデータ変換装置によると、色に関する情報を含むデータに対応しているので、画像データのデータ変換に適用できる。
【0013】
[適用例6]
適用例5記載のデータ変換装置であって、前記第1の色空間は、xvYCCで規格された色空間であるデータ変換装置。
このデータ変換装置によると、xvYCCで規格されたデータに対応している。
【0014】
[適用例7]
映像データを入力し、該映像データに対応する映像を表示する映像表示装置であって、適用例1ないし適用例6のいずれか記載のデータ変換装置を備える映像表示装置。
【0015】
この映像表示装置によると、入力されたNビットの映像データに対して、Nビットより大きいビット数で表現される値を用いて補間演算値を算出することができるので、Nビットで表現される値以下の参照値しか記憶できないルックアップテーブルを備える映像表示装置と比較して、より正確に補間演算値を算出し出力することができる。
【0016】
[適用例8]
Nビット以下(Nは2以上の整数)で表現可能な入力値に対応するデータを入力し、補間演算を用いて、Nビットの出力値に対応するデータを出力するデータ変換方法であって、Nビットより大きいビット数で表現される値を含む参照値が、Nビットで表現可能な値に圧縮された値を記憶し、前記入力値に対して、記憶した前記参照値を参照し補間演算を行い補間演算値を算出し、前記補間演算値に対して、前記圧縮に対応した拡張演算を行い、該拡張演算によって算出した拡張演算値をNビットの出力値に対応するデータとして出力するデータ変換方法。
【0017】
このデータ変換方法によると、Nビットより大きいビット数で表現される値を用いて補間演算値を算出することができるので、Nビットで表現される値以下の参照値しか記憶しない場合と比較して、より正確に補間演算値を算出することができる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、データ変換方法および装置、データ処理システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像表示システム10の構成を示す説明図である。
【図2】画像データ変換処理を概略的に示す説明図である。
【図3】画像データ変換処理の概要を説明するブロック図である。
【図4】LUT1,2について説明する説明図である。
【図5】本実施例における変換曲線に対する圧縮及びオフセットを説明する説明図である。
【図6】クリッピング処理について説明する説明図である。
【図7】本実施例の効果を説明するための説明図である。
【図8】変形例5の具体例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての画像表示システム10の構成を示す説明図である。画像表示システム10は、画像データ供給装置20と、プロジェクター30と、スクリーンSCとを備える。プロジェクター30は、画像データ供給装置20から供給された画像データの表す画像をスクリーンSC上に投写表示する。また、画像データ供給装置20からプロジェクター30へは、Y(明度)U(色差)V(色差)の色空間で表現された画像データ(以下、YUVデータとも呼ぶ)が入力される。
【0021】
プロジェクター30は、画像データ変換回路310、ガンマ補正回路320、色ムラ補正回路330、液晶パネル駆動部340、液晶パネル350、制御部370、メモリー380を備える。また、プロジェクター30は、液晶パネル350を照明するための照明光学系360と、液晶パネル350から射出された変調光(以下、画像光とも呼ぶ)をスクリーンSC上に投写する投写光学系365とを備えている。
【0022】
画像データ変換回路310は、画像データ供給装置20から入力される画像データ(YUVデータ)を、プロジェクター30で処理可能な各色8ビットのRGB形式で表現される階調データ(以下、RGBデータとも呼ぶ)に変換する回路である。画像データ変換回路310が行う画像データ変換処理については、後で詳しく説明する。ガンマ補正回路320は、液晶パネル350に入力されるRGBデータに対してガンマ補正を行う回路である。具体的には、スクリーンSCへの投写表示画像が自然に近い色表現となるようにRGBデータを補正することによって、液晶パネル350のデバイス毎の光の入出力特性(以下、V−T特性とも言う)の修正を行う。
【0023】
色ムラ補正回路330は、スクリーンSC上に表示される画像に発生する色のムラを制御するように、ガンマ補正回路320でのガンマ補正後の画像データに対して補正を行う。「色ムラ」は、液晶パネル350の液晶層の厚さが不均一であったり、TFTの動作特性が液晶パネル面内でバラついているために生じる液晶パネル面内方向の階調のバラつきを言う。従って、色ムラ補正回路330は、液晶パネル面内の所定の領域毎に色ムラ補正を行う。
【0024】
液晶パネル駆動部340は、色ムラ補正後の画像データに基づいて、液晶パネル350を駆動する。液晶パネル350は、液晶パネル駆動部340による制御によって、照明光学系360から射出された照明光を変調するライトバルブ(光変調器)である。なお、図示は省略しているが、プロジェクター30は、RGBの3色分の3枚の液晶パネル350を有しており、画像データ変換回路310〜色ムラ補正回路330によって処理がされ液晶パネル駆動部340に入力されるRGBデータに基づいて、液晶パネル駆動部340はRGBの3枚の液晶パネル350に画像を形成する。制御部370は、CPUを備えており、メモリー380に格納されているプロジェクター30のドライバープログラムを読み込み、プロジェクター30の動作を制御する機能を有している。
【0025】
(A2)画像データ変換処理:
次に、画像データ変換回路310が行う画像データ変換処理について説明する。図2は、画像データ変換回路310が行う画像データ変換処理を概略的に示す説明図である。画像データ変換処理は、画像データ供給装置20から入力されるYUVデータを、プロジェクター30で処理可能な8ビットのRGBデータに変換する処理である。画像データ変換回路310は(Y,U,V)を(R,G,B)に変換する際に参照するルックアップテーブル(以下、LUTとも呼ぶ)を備えている。LUTは、入力される全てのYUVデータ値(Y,U,V)に対応するRGBデータ値を記憶しているのではなく、一部のYUVデータ値に対応するRGBデータ値を記憶しており、残りのYUVデータ値に対応するRGBデータ値は、そのLUTの記憶値を参照した補間演算を行うことによって算出している。また、入力されるYUVデータのデータ値によっては、画像データ変換処理後のRGBデータのデータ値が、プロジェクター30の内部で取り扱うことのできる値の範囲を超えている場合がある。このような場合の対応方法も含め、以下、本実施例における画像データ変換回路310による画像データ変換処理の詳細について説明する。
【0026】
図3(A)は、画像データ変換回路310が行う画像データ変換処理の概要を説明するブロック図である。図に示すように、画像データ変換回路310に入力されるデータを入力データAinとする。Ainは、画像データ変換回路310に入力される画像データであるYUVデータに対応するデータである。入力データAinは8ビットのデータである。画像データ変換回路310に入力された入力データAinは、LUT1,2、補間演算回路312およびオフセット・ゲイン回路314を用いた演算によって画像データ変換処理が行われ、8ビットの出力データAoutとして画像データ変換回路310から出力される。この出力データAoutは、画像データ310でデータ変換され出力されるRGBデータに対応するデータである。
【0027】
まず、画像データ変換回路310が備えるLUT1,2について説明する。図4は、LUT1,2について説明する説明図である。LUT1とLUT2とは実質的に同じLUTであるので、本説明ではLUT1を例に説明する。図4に示すLUTの横軸は入力データAinに対応し、縦軸は、出力データAoutに対応する。
【0028】
図4(A)は、入力データAinに対して出力データAoutを決定する変換曲線Rと、画像データ変換回路310が備えるLUT1を示している。LUT1は、入力データ、出力データともに8ビットのデータの記憶が可能である。本実施例におけるプロジェクター30では、各色8ビットのRGBデータの表現が可能であるため、LUT1の記憶できるデータ値の範囲(以下、許容データ範囲とも呼ぶ)は、8ビットとして構成されている。しかし、YUVデータをRGBデータに変換する場合、変換後のRGBデータのデータ値がプロジェクター30の表現可能な範囲のデータ値、つまり許容データ範囲を超えることがある。図4(A)に示した変換曲線Rは、上述したように、仮に、プロジェクター30に入力されるYUVデータが許容データ範囲を超えて変換される場合の、入力データAinと出力データAoutとの関係を示す変換曲線の一例である。以下、このような許容データ範囲を超える変換曲線を、画像データ変換回路310が備えるLUTに記憶する方法について説明する。
【0029】
LUT1に記憶されるデータ値が符号なし8ビット整数の場合、256個の整数「0〜255」を表すことができる。よって、変換曲線Rの出力データAoutの最小値と最大値との差の絶対値が「256」以下になるように、図4(A)に示した変換曲線Rの出力データAoutに対して圧縮比(1/g)を乗算し、変換曲線Rのデータを圧縮する。以下、「g」はゲイン値gとも呼び、ゲイン値gは1以上の任意の数である。本実施例の場合、ゲイン値gは、図4(B)に示すように、変換曲線Rの最大値から最小値までの絶対値がWであるとすると、(g=W/256)として、ゲイン値gを算出する。
【0030】
図4(B)は、(1/g)に圧縮後の変換曲線を示している。図に示すように、圧縮後の変換曲線の最小値から最大値までの絶対値が「256」になっていることがわかる。なお、本実施例では、出力の最小値と最大値との差の絶対値が256になるようにゲイン値gを設定したが、絶対値が256以下になるようなゲイン値gであれば、プロジェクター30で処理可能な範囲で、ゲイン値gを他の値に設定してもよい。
【0031】
次に、データ圧縮後の変換曲線(以下、圧縮変換曲線とも呼ぶ)が、LUT1が記憶できるデータの値の範囲内「0〜255」に収まるように、圧縮変換曲線を所定の値「S」だけ、Aoutの軸方向にオフセットさせる。値「S」はオフセット値Sとも呼ぶ。オフセットは常にAoutに対してのプラス側に行うことを基準とする。例えば、マイナス側にオフセットさせる場合は、オフセット値Sは負の値に設定することによって処理を行う。本実施例の場合、図4(B)に示すように、圧縮変換曲線をプラス側にオフセットすると、LUT1の0〜255の許容データ範囲内に収まるので、オフセット値Sは正の値とし、プラス側にオフセットする。図4(C)は、圧縮変換曲線に対してオフセット値Sだけオフセットさせた後の圧縮変換曲線である。圧縮変換曲線がLUT1の許容データ範囲内、つまり「0〜255」の範囲内に入っていることがわかる。以下、変換曲線に圧縮およびオフセットを行うことを「圧縮処理」とも呼ぶ。このようにして、本来プロジェクター30が備えるLUTの許容データ範囲に収まらない変換曲線Rに対して、圧縮処理を行うことによってLUT1およびLUT2に記憶している。
【0032】
また、本実施例におけるLUTは、上記説明した圧縮処理後の変換曲線の全てのデータ値を記憶しているのではない。図5は、本実施例におけるLUTに記憶された記憶値(データ値)を用いた補間処理を説明する説明図である。図3(B)と(C)は、それぞれ、入力データAinに基づいて出力データAoutの補間演算を行なう補完区間を決定するために使用するLUT1とLUT2の構造を示した図である。LUT1は、補間区間の下限に対応する出力データQ1を、LUT2は、補間区間の上限に対応する出力データQ2を、それぞれ保持するように構成される。本実施例においては、入力データAinのMSB(Most Significant Bit)を含む上位2ビットをインデックスとしてLUT1とLUT2とを参照することにより、データQ1およびQ2が読み出されるものとする。
【0033】
ここで、画像データ変換回路310に入力データAinとしてAin=100が入力された場合の補間演算を例に説明する。10進数の100を2進数で表現すると、「01100100」となる。すなわち、LUT1およびLUT2を参照するためのインデックスは、「01」である。したがって、入力データAinの値が100のとき、LUT1からはAin=64に対応するデータQ1が読み出され、LUT2からはAin=128に対応するデータQ2が読み出される。
【0034】
次に、図3を用いて画像データ変換回路310がLUT1,2を用いて行う補間演算方法について説明する。
【0035】
画像データ変換回路310にAin=100が入力されると、Ainの値を2進数で表現した場合の上位2ビットをインデックスとしてLUT1及びLUT2が参照される。つまりAin=100の場合、上述したように、Ainの上位2ビットである「01」に対応するデータがLUT1とLUT2とからそれぞれ読み出される。
【0036】
一方、入力データとして画像データ変換回路310に入力されたAin=100(2進表現:01100100)のうち、下位6ビット「100100(10進表現:36)」は、そのまま補間演算回路312に、係数αとして入力される。この係数αは、加重平均演算の重み係数に用いる。
【0037】
画像データ変換回路310が備える補間演算回路312に、データQ1、データQ2、係数αが入力されると、これらのデータ値と下記式(1)に基づいて加重平均演算がされ、加重平均値Yが算出される。なお、下記式(1)における「L」は、LUTに記憶されたデータ値すなわち記憶値に対応付けられた入力データAinの間隔である。つまり本実施例では、記憶値はそれぞれのルックアップテーブルに、Ain=0,64,128・・と、64ずつの間隔毎に記憶されている。よって、本実施例ではL=64となる。換言すれば、「L」は、画像データ変換回路310における補間区間の幅と言うこともできる。
【0038】
【数1】

ここで、αはAinの下位6ビットの値である。
【0039】
補間演算回路312によって上記補間演算が行われ加重平均値Y1が算出されると、加重平均値Y1の値は画像データ変換回路310が備えるオフセット・ゲイン回路314に入力される。オフセット・ゲイン回路314では、補間演算回路312で算出された加重平均値Y1と、ゲイン値gおよびオフセット値Sを用いて、入力データAin(本実施例の場合はAin=100)に対する、本来の変換曲線R(図4(A)参照)に対応する出力データAoutの値を算出する。換言すれば、圧縮処理をすることによってLUTに記憶した変換曲線のAoutの値に対して、その圧縮およびオフセット分を修正する処理を行うことによって、本来の変換曲線Rにおける出力データAoutの補間演算値を算出する。以下、この圧縮およびオフセット分を修正する処理を、単に「修正演算」とも呼び、修正演算によって算出される値Y2を修正演算値Y2とも呼ぶ。具体的には、下記式(2)に基づいて、修正演算を行う。なお、修正演算に用いるゲイン値gおよびオフセット値Sは、LUTに変換曲線Rを記憶する際に用いている値であるので、本実施例におけるオフセット・ゲイン回路314には、予め設定されているパラメーターである。
【0040】
【数2】

【0041】
上記式(2)によって算出した修正演算値Y2は、上述したように、本来の変換曲線Rにおける出力データAoutの補間演算値に相当する。従って、LUTの許容データ範囲を超えた値、つまり符号なし8ビット整数では表現できない値も算出される(図4(A)参照)。換言すれば、画像データ変換回路310からガンマ補正回路320へ出力する8ビットのRGBデータ(図1,図2参照)のデータ値を超えた値も算出される。そこで、修正演算後の修正演算値Y2に対してクリッピング処理が行われる。クリッピング処理とは、修正演算後の修正演算値Y2の値が、許容データ範囲の最大値(本実施例では255)または最小値(本実施例では0)を超える値である場合には、8ビット表現の許容データ範囲の最大値であるAout=255または最小値であるAout=0とする処理である。
【0042】
図6は、クリッピング処理について説明する説明図である。図6には、修正演算によって算出されうる修正演算値Y2の集合、つまり補間直線Hを実線で示している。図6に示した補間直線Hのうち、許容データ範囲(0〜255)を超えた部分、つまり許容データ範囲外の修正演算値Y2は、図6の点線Kで示すように、一律に8ビット表現の許容データ範囲の最大値であるAout=255または最小値であるAout=0に切り詰めた値に修正して出力する。その後、クリッピング処理後の値をAoutとして、画像データ変換回路310から出力し、ガンマ補正回路320、色ムラ補正回路330によって他のデータ処理が行われ、液晶パネル駆動部340、液晶パネル350等を介してスクリーンSCに投写表示画像として表示される。
【0043】
以上説明したように、画像データ変換回路310は、画像データ供給装置20から入力された8ビットの入力データAinを8ビットの出力データAoutにデータ変換して出力するが、画像データ変換回路310が備えるLUT1,2には、圧縮処理(圧縮およびオフセット)を行うことによって、許容データ範囲外の値、つまり本来記憶する事ができない変換曲線におけるAoutの値を記憶している。よって、実質的に、LUTの許容データ範囲を超える変換曲線のAoutの値を記憶値として用いて、画像データ変換回路310に入力された入力データAinに対して補間演算を行うことができる。したがって、上記クリッピング処理によって修正演算値Y2が切り詰められた値として出力されるAoutに対応するAin以外の入力データAinに対しては、本来の変換曲線における記憶値に基づいた正確な補間演算が行われ、所望の出力データAoutとして出力することができる。
【0044】
これに対して、例えば仮に、図7に示したように、画像データ変換回路310が備えるLUTが、圧縮やオフセットなどの圧縮処理を用いずに、変換曲線における許容データ範囲を超えるAoutの値を一律にAout=255またはAout=0と記憶する場合について考える。上述したように、YUVデータをRGBデータに変換した際には、その変換後のデータ値がプロジェクター30での表現範囲を超えたデータ値となることがある。例えば、LUTが8ビットの値までしか記憶できない場合に、YUVデータを変換したRGBデータが8ビットで表現可能な範囲を超えた値となる場合である。一例として、変換曲線Rを、圧縮やオフセットを用いずに、許容データ範囲が0〜255であるLUTに記憶すると、許容データ範囲外の変換曲線のAoutの値は、図7の黒点に示す記憶値の値として記憶される。そして、画像データ変換回路310に入力される入力データAinに対して、この記憶値に基づいて補間演算を行って出力データAoutを算出すると、図7の点線で示した補間直線Jに示す出力データAoutが出力される。結果として、このような態様で変換曲線を記憶したLUTを用いると、許容データ範囲を超える変換曲線のAoutが存在する補間区間の全てのAinの値に対して、正確な出力データAoutを出力することができない。一方、本実施例におけるプロジェクター30では、本来データ変換後の出力値(RGBデータ)が、プロジェクター30で表現可能な範囲を超えないデータ、つまり修正演算値Y2が許容データ範囲を超えないAoutについては、正確に補間演算を行い、画像データ変換回路310から出力データAoutとして出力することができる。なお、クリッピング処理される領域の値は、最終的にプロジェクター30から投写される画像に与える影響が小さいため、出力データAoutを切り詰めても実質的な問題はない。
【0045】
また、プロジェクター30での表現範囲を超えたデータ値を、LUTの記憶領域を拡張し、かつAoutの値をオフセットさせて記憶する場合(例えば上記特許文献1)と比較すると、本実施例においてはLUTの記憶領域を拡張することなく、変換曲線をLUTに記憶することができる。さらに、変換曲線のAoutの最大値と最小値がLUTの許容データ範囲を大きく超える場合に、LUTの記憶領域を拡張して変換曲線を記憶する場合は(例えば上記特許文献1)、LUTの記憶領域を大幅に拡張する必要があるが、本実施例においては、変換曲線のAoutの最大値から最小値までの絶対値に対応して、圧縮比(1/g)を調整することにより、変換曲線をLUTに記憶することが可能であり、LUTの記憶領域の拡張を伴わない。
【0046】
本実施例と特許請求の範囲との対応関係としては、画像データ変換回路310が特許請求に範囲に記載のデータ変換装置に相当し、変換曲線が特許請求の範囲に記載の参照値に相当し、加重平均値Y1が特許請求の範囲に記載の補間演算値に相当し、オフセット・ゲイン回路314が特許請求の範囲に記載の拡張補間出力部に相当し、修正演算値Y2が特許請求の範囲に記載の拡張演算値に相当する。また、本実施例における「圧縮処理」は、特許請求の範囲に記載の「圧縮」に相当する。
【0047】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
(B1)変形例1:
上記実施例では、プロジェクター30に入力される入力データAinをYUVデータ、画像データ変換回路310でのデータ変換後の出力データAoutをRGBデータとしたが、これに限ることなく、入力データAin,出力データAoutを、HLS、YCbCr、YPbPrなどの色空間で表現されたデータ形式や、xvYCCで規格された色空間で表現されたデータ形式とすることも可能である。Ain、Aoutをこのようなデータ形式としても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(B2)変形例2:
上記実施例では、許容データ範囲を超えるAoutの値を備える変換曲線をLUTに記憶する際に、変換曲線のAoutに対して、圧縮処理として、圧縮(圧縮比:1/g)を行い、そしてオフセット(オフセット値:S)を行うことによって、LUTの許容データ範囲内に変換曲線を記憶したが、このような方法に限らず、LUTの許容データ範囲内に変換曲線のAoutの最大値と最小値が入るような演算処理であれば、他の圧縮処理の方法を用いることも可能である。例えば、変換曲線に対して先にオフセットを行ってから、その後に圧縮をすることによって、LUTの許容データ範囲内に変換曲線を記憶するとしてもよい。この場合、修正演算の演算式は下記式(3)のようになる。
【0050】
【数3】

【0051】
このように、変換曲線のAoutの最大値と最小値が許容データ範囲内に入るように、変換曲線に所定の演算による圧縮処理を行ってLUTに記憶し、プロジェクターで画像データ変換処理を行う際に、画像データ変換回路310に入力された入力データAinに対して算出した加重平均値Y1に対し、その所定の演算による圧縮処理に対応する修正演算を行って修正演算値Y2を算出するとすれば、プロジェクター30が処理可能な修正演算の範囲で、どのような圧縮処理を用いて変換曲線をLUTに記憶するとしてもよい。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0052】
(B3)変形例3:
上記実施例では、画像データ変換回路310は補間区間の上限値と下限値を決定するためにLUT1とLUT2との2つのLUTを備えるとしたが、これに限ることなく、LUTを1つしか備えないとしてもよい。この場合、入力されたAinの所定の数ビット(本実施例では上位2ビット)に対して、補間区間の上限値に対応するアドレスと、下限値に対応するアドレスとの2つのアドレスを指定し、1つのLUTから、順に、補間区間の上限値と下限値とを決定するとしてもよい。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(B4)変形例4:
上記実施例では、画像データ変換回路におけるLUTおよびそれを用いた画像データ変換処理をプロジェクターに対して適用したが、それに限ることなく、画像データを入力し、入力した画像データに基づいて画像を表示する液晶テレビやプラズマテレビなどの画像表示装置に適用することができる。また、それら画像表示装置と外部接続され、画像データ供給装置からの画像データを入力し、それら画像表示装置で処理可能なデータに変換して画像表示装置に出力する画像処理装置に適用することもできる。このようにしても上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(B5)変形例5:
上記実施例では、変換曲線Rに圧縮処理を行う際に、変換曲線Rの全体に亘って圧縮を行ったが、それに限ることなく、圧縮処理として変換曲線Rを局所的に圧縮するとしてもよい。例えば、変換曲線RのAoutの値が許容データ範囲を超える部分を含む補間区間の変換曲線RのAoutのみを圧縮処理する。具体例を挙げると、図8に示すように、図8(A)の変換曲線Rを、まず図8(B)に示すように、変換曲線Rの最小値をLUTの許容データ範囲の0点にオフセットし、オフセット後の変換曲線において、許容データ範囲を超える部分を含む補間区間の変換曲線Rの部分、つまり図8(B)の点線Z1のみを圧縮し、変換曲線Rを図8(C)に示すような態様の補間直線に圧縮処理してLUTに記憶する。なお、図8(B)の点線Z1は、図8(C)の点線Z2に対応する。
【0055】
本具体例の場合、変換曲線を局所的にしか圧縮していないため、Aoutの圧縮処理および修正演算によって生じるビット演算の量子化誤差を最小限に抑えることができる。圧縮処理を行っているのは変換曲線Rにおける点線Z1の部分のみなので、点線Z1に対応するAoutのみ量子化誤差が生じるが、他の部分については量子化誤差は生じない。また量子化誤差の生じる部分を変換曲線RにおけるAoutの最大値側で生じさせて処理を行うため、最小値側で圧縮を行う場合、または最大値側と最小値側との両方で圧縮を行う場合と比較して、Aoutの値に対する量子化誤差の誤差量の割合を小さくすることができる。結果として本処理による量子化誤差の誤差量を最小限に抑えることができる。また、このように変換曲線Rに局所的に圧縮を行った場合は、画像データ変換回路310に入力される入力データAinの値毎に、その入力データAinの値を含む補間区間毎の変換曲線Rに対して行った圧縮に対応する修正演算を行うことにより、本来の変換曲線Rにおける記憶値に基づいた、より正確な補間演算が行われ、所望の出力データAoutとして出力することができる。
【0056】
上記具体例では、変換曲線における許容データ範囲を超える部分を含む補間区間の変換曲線に対して局所的に圧縮を行う圧縮処理について説明したが、この他、変換曲線の局所的な圧縮として、人間の視覚特性を考慮して、変換曲線に圧縮を行うことも可能である。具体的には、人間の視覚で認識可能な光の波長領域、つまり可視光領域の波長のうち、比較的、人間の視覚が認識しにくい波長領域に相当するAinに対応する領域から優先的に圧縮を行うことにより、圧縮処理を行うことも可能である。圧縮する波長領域の決定は、視感度および錐体分光感度等、より具体的には、人間の錐体細胞(S,M,L)と桿体細胞(R)が含む視物質の吸収スペクトルを考慮して、例えば波長が400nm以下の波長領域やその近傍領域、430〜470nm付近の波長領域、600nm以上の波長領域やその近傍領域などに相当するAinの領域部分について、当該Ainの領域に対応するAoutに対して圧縮を行うことが可能である。このように圧縮処理を行うことにより、変換曲線Rの圧縮処理および修正演算により生じるビット演算の量子化誤差を、人間の視覚特性として認識しにくい波長領域に相当するAinの領域に局在化させることが可能であり、人間の視覚を介した表示画像を、本来の入力データAinの色表現に、より近い色表現とすることが可能である。
【0057】
(B6)変形例6:
上記実施例では、画像データ、つまり色に関する情報を含むデータに対するデータ変換に適用したが、これに限ることなく、音声データや、その他座標変換を伴うデータ処理装置に本データ変換を適用することが可能である。例えば、音声データの場合、所定の圧縮形式(例えば、mp3やwmaなど)の音声データを入力し、音声として出力する音声出力装置において、入力した音声データに対して当該音声出力装置の処理可能なデータ形式へのデータ変換が伴う場合があるが、その際、データ変換後のデータ値が、音声出力装置の処理可能なデータの値を超える場合に有効である。
【0058】
(B7)変形例7:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。このようにしても上記実施例と同様の効果を得る事ができる。
【符号の説明】
【0059】
10…画像表示システム
20…画像データ供給装置
30…プロジェクター
310…画像データ変換回路
312…補間演算回路
314…オフセット・ゲイン回路
320…ガンマ補正回路
330…色ムラ補正回路
340…液晶パネル駆動部
350…液晶パネル
360…照明光学系
365…投写光学系
370…制御部
380…メモリー
Ain…入力データ
Aout…出力データ
R…変換曲線
g…ゲイン値
S…オフセット値
G…補間直線
H…補間直線
J…補間直線
Y1…加重平均値
Y2…修正演算値
SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nビット以下(Nは2以上の整数)で表現可能な入力値に対応するデータを入力し、補間演算を行うことによってNビットの出力値に対応するデータを出力するデータ変換装置であって、
Nビットより大きいビット数で表現される値を含む参照値が、Nビットで表現可能な値に圧縮された値を記憶するルックアップテーブルと、
前記入力値に対して、前記ルックアップテーブルに記憶された前記参照値に対応する前記圧縮された値を参照し補間演算を行うことによって補間演算値を算出する補間演算部と、
前記補間演算値に対して、前記圧縮に対応した拡張演算を行い、該拡張演算によって算出した拡張演算値をNビットの出力値に対応するデータとして出力する拡張補間出力部と
を備えるデータ変換装置。
【請求項2】
請求項1記載のデータ変換装置であって、
前記拡張補間出力部は、前記拡張演算値が前記Nビットより大きいビット数で表現される値である場合には、該拡張演算値を前記Nビットで表現可能な最小値または最大値に制限して、前記出力値に対応するデータとして出力するクリッピング処理部を備える
データ変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデータ変換装置であって、
前記圧縮は、前記各参照値に所定の圧縮比「1/g」(gは1以上の任意の数)を乗算し、該乗算によって算出した各乗算値を、オフセット値Sだけオフセットすることであり、
前記拡張演算は、前記補間演算値に対して前記オフセットを戻す演算を行い、該オフセットを戻す演算によって算出した値にゲイン値gを乗算することである
データ変換装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のデータ変換装置であって、
前記圧縮は、前記各参照値をオフセット値Sだけオフセットしてオフセット処理値を算出し、該オフセット処理値に、所定の圧縮比「1/g」(gは1以上の任意の数)を乗算することであり、
前記拡張演算は、前記補間演算値に対してゲイン値gを乗算し、該乗算によって算出した乗算値に対して前記オフセットを戻す演算をすることである
データ変換装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載のデータ変換装置であって、
前記入力値に対応するデータは、第1の色空間における色に関する情報を含むデータであり、
前記出力値に対応するデータは、第2の色空間における色に関する情報を含むデータである
データ変換装置。
【請求項6】
請求項5記載のデータ変換装置であって、
前記第1の色空間は、xvYCCで規格された色空間である
データ変換装置。
【請求項7】
映像データを入力し、該映像データに対応する映像を表示する映像表示装置であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか記載のデータ変換装置を備える
映像表示装置。
【請求項8】
Nビット以下(Nは2以上の整数)で表現可能な入力値に対応するデータを入力し、補間演算を用いて、Nビットの出力値に対応するデータを出力するデータ変換方法であって、
Nビットより大きいビット数で表現される値を含む参照値が、Nビットで表現可能な値に圧縮された値を記憶し、
前記入力値に対して、記憶した前記参照値を参照し補間演算を行い補間演算値を算出し、
前記補間演算値に対して、前記圧縮に対応した拡張演算を行い、該拡張演算によって算出した拡張演算値をNビットの出力値に対応するデータとして出力する
データ変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211492(P2011−211492A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77444(P2010−77444)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】