説明

トウモロコシにおける脂肪酸デサチュラーゼの発現

本発明は、一般的に、トランスジェニック・トウモロコシ植物におけるデサチュラーゼ酵素の発現およびそれから派生する組成物に関する。詳細には、本発明は、トウモロコシ植物における改善されたオメガ−3脂肪酸プロフィールを有する油の産生、およびそれによって産生される種子油に関する。かかる油は、トウモロコシ植物中に天然においては見出されず、かつ健康に対して有益な効果を有することが示されているステアリドン酸を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出典明示してその開示全体を本明細書の一部とみなす、2004年4月16日に出願した米国仮特許出願番号60/563,135号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、トウモロコシにおける長鎖ポリ−不飽和脂肪酸(LC−PUFA)中の二重結合の数および位置を変調するデサチュラーゼ酵素の発現およびそれから派生する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
大部分の生物における脂肪酸生合成の一次産物は16−および18−炭素化合物である。これらの脂肪酸の鎖長および不飽和度の相対比は種の中で広く変化する。例えば、哺乳動物は一次的に飽和およびモノ不飽和脂肪酸を産生する一方で、大部分の高等植物は1、2または3の二重結合を有する脂肪酸を産生し、後者の2はポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を含んでいる。
【0004】
PUFAの2の主要なファミリーは、エイコサペンタエン酸(EPA、20:4、n−3)によって例示されるようなオメガ−3脂肪酸(「n−3」脂肪酸としても表される)、および、アラキドン酸(ARA、20:4、n−6)によって例示されるようなオメガ−6脂肪酸(「n−6」脂肪酸としても表される)である。PUFAは細胞および脂肪組織の原形質膜の重要な構成成分であり、それらはそこでは各々リン脂質およびトリグリセリドのような形態で見出し得る。PUFAは哺乳動物における適当な発達に、特に幼児の脳の発達に、ならびに組織の形成および修復に必要である。
【0005】
幾つかの障害が脂肪酸での処理に対して応答する。PUFAを補充すると、血管形成術後の再狭窄の比率が低下することが示されている。心血管疾患および慢性関節リューマチに対するある種の食事オメガ−3脂肪酸の健康上の利益もよく記載されている(Simopoulos, 1997;Jamesら, 2000)。さらに、PUFAは喘息および乾癬の治療において使用することが示唆されている。事実はPUFAがカルシウム代謝に関与し得ることを示しており、PUFAが骨粗鬆症および腎臓または尿路結石の治療または予防に有用となり得ることを示唆している。健康上の利益の事実の大部分が、魚および魚油中に存在する長鎖オメガ−3脂質、EPAおよびドコサヘキサエン酸(DHA、22:6)にあてはまる。この事実に基づいて、カナダ(Scientific Review Committee, 1990, Nutrition Recommendations, Minister of National Health and Welfare, Canada, Ottowa)、欧州(de Deckererら, 1998)、英国(The British Nutrition Foundation, 1992, Unsaturated fatty-acids-nutritional and physiological significance: The report of the British Nutrition Foundation's Task Force, Chapman and Hall, London)、および米国(Simopoulosら, 1999)における健康に関する関係官庁および栄養学者は、これらのPUFAの増加した食事消費を推奨している。
【0006】
PUFAは糖尿病を治療するためにも使用し得る(米国特許第4,826,877号;Horrobinら, 1993)。変化した脂肪酸代謝および組成が糖尿病動物において実証されている。これらの変化は、網膜症、神経障害、ネフロパシー、および再生系損傷を含む糖尿病から生じる長期合併症の幾つかに関与することが示唆されている。γ-リノレン酸(GLA,18:3,Δ6,9,12)を含むプリムローズ油は糖尿病性神経損傷を予防および逆転させることが示されている。
【0007】
リノール酸(LA,18:2,Δ9,12)およびα−リノレン酸(ALA,18:3,Δ9,12,15)のようなPUFAは、哺乳動物がこれらの酸を合成する能力に欠けるため、食物中の必須脂肪酸であると考えられている。しかしながら、摂取すると哺乳動物はLAおよびALAを代謝して長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)のn−6およびn−3ファミリーを形成する能力を有する。これらのLC−PUFAは、膜に流動性を付与し、正常な生理機能を調節するプロスタグランジン、プロスタサイクリンおよびロイコトリエンのような生物活性エイコサノイドの前駆体として機能する重要な細胞構成要素である。アラキドン酸は、ロイコトリエン、プロスタグランジン、およびトロンボキサンを含むエイコサノイドの合成の主な前駆体であり、炎症プロセスにおいても役割を演じている。SDAのようなオメガ−3脂肪酸の投与は、ロイコトリエンの生合成を阻害することが示されている(米国特許第5,158,975号)。SDAの消費はプロ炎症性サイトカインTNF−αおよびIL−1βの血液レベルの低下に通じることが示されている(米国特許公開番号20040039058号)。
【0008】
哺乳動物においては、LC−PUFAの形成は、LAをγ−リノレン酸(GLA,18:3,Δ6,9,12)およびALAをSDA(18:4,Δ6,9,12,15)に変換するΔ6脱飽和化の工程によって律速される。多くの生理学的および病理学的状態がこの代謝工程、およびその結果としてさらにLC−PUFAの産生でさえも押し下げることが示されている。律速段階を克服し、EPAの組織レベルを上昇するためには、大量のALAを消費することができるであろう。しかしながら、ちょうど適量のSDAの消費は、ヒトにおける組織EPAレベルを上昇する際にSDAがALAよりも約4倍より効率がよいので(米国特許公開番号20040039058号)、EPAの効率的な供給源を提供する。同じ研究において、SDA投与はEPAの伸長産物であるドコサペンタエン酸(DPA)の組織レベルも上昇し得た。あるいは、EPAまたはDHAの食事補充を介してΔ6脱飽和化を迂回することは、PUFAの低レベルに関連する多くの病理学的疾患を効果的に緩和することができる。しかしながら、より詳細に後記するように、PUFAの現在利用可能な供給源は、多くの理由により望ましくない。PUFAの信頼できかつ経済的な供給源に対する要望は、PUFAの別の供給源における関心を刺激している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
重要な主要な長鎖PUFAには、最初に異なるタイプの魚油で見出されたDHAおよびEPA、ならびにモルティエレラ(Mortierella)のような糸状菌において見出されたARAが含まれる。DHAについては、種々の海洋生物、寒流海洋魚類から得た油および卵黄画分を含む商業的生産のための多くの供給源が存在する。SDAの商業的供給源には、植物類のトリコデスマ(Trichodesma)、ボラゴ(Borago(ルリヂサ))およびエチウム(Echium)が含まれる。しかしながら、天然供給源からのPUFAの商業的生産に関連する幾つかの不利な点が存在する。動物および植物のようなPUFAの天然供給源は、非常に不均一な油組成を有する傾向がある。したがって、これらの供給源から得た油は、大規模な精製をして1またはそれを超える目的のPUFAを分離するか、または1またはそれを超えるPUFAに富む油を生産する必要があり得る。
【0010】
PUFAの天然供給源は、入手可能性における制御不可能な変動にも付される。魚類ストックは天然の変動を被り得、あるいは濫獲によって涸渇し得る。また、その治療上の利益の抗しがたい事実にもかかわらず、オメガ−3脂肪酸に関する食事推奨は留意されない。魚油は好ましくない味および臭いを有し、それらは目的の産物から経済的に分離することが不可能な場合もあり、かかる産物を食物補充物として許容できないものとし得る。動物油、特に魚油は、環境汚染物を蓄積し得る。食物を魚油に富むものとし得るが、再度、かかる富むことは費用および世界的な魚類ストックの衰退のために問題である。この問題も、全魚類の消費および摂取に対して障害である。それにもかかわらず、魚類摂取を増加させる健康メッセージが共同社会によって採用されれば、問題が魚類に対する要求と合致しそうである。さらに、この産業の持続性に関連する問題が存在し、それは水産養殖飼料用の野生魚類ストックに重くのしかかっている(Naylorら, 2000)。
【0011】
他の天然制限は、オメガ−3脂肪酸の生産の新規なアプローチに味方する。天候および疾病は、魚類および植物の両方の供給源からの収量における変動を引き起こし得る。代替油生産穀物の生産に利用可能な耕作地は、ヒト集団の安定した拡大および残存する耕作に適した土地における食物生産に対する関連した増加した要望と競合する。ルリヂサのごときPUFAを実際に生産する穀物は、商業的成長に適合しておらず、単作においては良好に機能し得ない。したがって、かかる穀物の成長は、より有益かつ良好に確立された穀物が成長し得る場合は、経済学上は競合的でない。モルティエレラ(Mortierella)のごとき生物の大規模発酵も費用がかかる。天然の動物組織は少量のARAしか含まず、加工するのが困難である。ポルフィリジウム(Porphyridium)およびモルティエレラ(Mortierella)のような微生物は、商業スケールで培養するのが困難である。
【0012】
多くの酵素がPUFAの生合成に関与している。LA(18:2,Δ9,12)はΔ12デサチュラーゼによってオレイン酸(OA、18:1,Δ9)から生産される一方、ALA(18:3,Δ9,12,15)はΔ15デサチュラーゼによってLAから生産される。SDA(18:4,Δ6,9,12,15)およびGLA(18:3,Δ6,9,12)はΔ6デサチュラーゼによってLAおよびALAから生産される。しかしながら、前記したように、哺乳動物はΔ9位を超えて脱飽和化することはできず、したがってオレイン酸をLAに変換することができない。同様にして、ALAは哺乳動物によって合成できない。菌類および植物を含む他の真核生物は、12および15位の炭素において脱飽和化する酵素を有する。したがって、動物の主要ポリ不飽和脂肪酸は、その後の食事LAおよびALAの脱飽和化および伸長を介して食事から誘導される。
【0013】
デサチュラーゼをコードする種々の遺伝子が記載されている。例えば、米国特許第5,952,544号は、脂肪酸デサチュラーゼ酵素をコードするブラシカ・ナプス(Brassica napus)から単離およびクローン化した核酸フラグメントを記載している。'544号特許の核酸フラグメントの発現は、ALAの蓄積を生じた。しかしながら、ビイ・ナプス(B.napus)のΔ15デサチュラーゼを発現するトランスジェニック植物においては、実質的なLAはデサチュラーゼによって変換されないままである。ある種の菌類Δ15デサチュラーゼは、植物において発現した場合に、LAをALAに変換することができることが実証された。詳細には、ノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)およびアスペルギルス(エメリセラ)ニデュランス(Aspergillus(Emericella)nidulans)からの菌類Δ15デサチュラーゼは有効であった(出典明示して本明細書の一部とみなす国際公開WO 03/099216)。上昇したALAレベルは、Δ15デサチュラーゼをコードする核酸と一緒に同時に発現させた場合、Δ6デサチュラーゼがALAに対して作用し、それによってより高いレベルのSDAを生産することを許容する。SDAについての多数の有益な使用のために、SDAの収量における実質的な増加を創製することに対して要望が存在する。
【0014】
種々の供給源からの核酸が、SDA収量の増加に使用するために求められている。Δ6デサチュラーゼをコードする遺伝子は、菌類モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)(米国特許第6,075,183号)および植物プリミュラ(Primula)(出典明示して本明細書の一部とみなす国際公開WO 05/021761)から単離されている。これらは、酵母および植物中でALAをSDAに変換し得ることが示されている。
【0015】
したがって、PUFA生合成に関与する遺伝物質を得ること、および単離した物質を植物系、詳細には操作して1またはそれを超えるPUFAの商業的な量の生産を提供するように操作し得る地上ベースの陸上穀物植物系で発現することは有利であろう。また、ヒトおよび動物におけるオメガ−3脂質取込みを増加する要望も存在する。したがって、対象が飼料、飼料成分、それらの日常の食餌習慣に適した食物および食物成分を選択し得るような、広範囲のオメガ−3に富む食物および食物補充物を提供することの要望が存在する。特に有利なのは、増加したSDAを有する種子油および肉であろう。
【0016】
現在、植物油で利用可能なものは1のオメガ−3脂肪酸、ALAしか存在しない。しかしながら、摂取されたALAの、EPAおよびDHAのようなより長鎖のオメガ−3脂肪酸への低い変換しか存在しない。「Treatment And Prevention Of Inflammatory Disorders」についての同時係属する米国特許公開番号20040039058号では、アマニ油の使用によって共同体平均1/g日から14g/日にALA取込みを上昇することは血漿リン脂質EPAレベルを適度にしか上昇しなかったことが立証されている。ALA取込みにおける14倍の増加は、血漿リン脂質EPAにおける2倍の上昇を生じた(Manziorisら, 1994)。したがって、そのために、脂肪酸デサチュラーゼ、それらをコードする遺伝子、およびそれらを生産するための組換え法を用いたPUFAの効率的かつ商業的に価値ある生産に対する要望が存在する。また、特定のPUFAのより高い相対比率を含有する油、ならびにそれを含有する食物および飼料組成物および補充物に対する要望が存在する。また、特定のPUFAを生産する信頼し得る経済的な方法に対する要望も存在する。
【0017】
前記した非効率および低収量にもかかわらず、陸生の食物連鎖を介したオメガ−3脂肪酸の生産は、公衆の健康および特にSDAの生産に対して重大な利益である。SDAは重要である。なぜなら、前記したように、ALAからEPAへの低い変換しか存在しないからである。これは、変換における最初の酵素、Δ6−デサチュラーゼがヒトにおいて低い活性を有し、律速であるからである。Δ6−デサチュラーゼが律速であるという事実は、その基質であるALAの変換が、その産物の変換、SDAからEPAよりも低い効率であることをマウスおよびラットにおいて立証した研究によって提供された(Yamazakiら, 1992;Huang, 1991)。
【0018】
トウモロコシのようなある種の種子油はSDAまたは他の重要なオメガ−3脂肪酸を全く欠いており、したがって改良されたPUFAプロフィールを有する種子油を含む植物に対する当該技術における大きな要望が存在する。かかる油を利用してオメガ3−脂肪酸に富む食物および食物補充物を生産することができ、かかる食物の消費はEPAの組織レベルを効率的に上昇する。オメガ−3脂肪酸に富む油を用いてすべて製造または調製したミルク、マーガリンおよびソーセージのような食物および食物材料は、健康上の利益を生じるであろう。抽出した油もしくは肉またはオメガ−3脂肪酸に富む脂肪分の多い(full-fat)穀物を含有する動物の飼料ストックを用いて、EPAの組織レベルを効果的に上昇し、家畜に対して健康上の利益ならびに生産性を提供し得る。したがって、PUFAに富む油を生成する新規な植物発現デサチュラーゼに対する強い要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
1の態様において、本発明は、ステアリドン酸を含有する内因性トウモロコシ種子油を提供する。本発明のある種の形態において、トウモロコシ種子油は約.1%ないし約33%のステアリドン酸を含み、さらなる形態において、すべての中間の値ならびに後記する表中に示す値を含む、約5%ないし約15%;約5%ないし約10%;約7.5%ないし約12%;約10%ないし約15%;約12%ないし約15%;約10%ないし約33%、約15%ないし約33%、約15%ないし約32%、約20%ないし約33%、約20%ないし約30%、約25%ないし約30%、および約25%ないし約33%のステアリドン酸を含み得る。本発明により提供される内因性トウモロコシ種子油は、さらに、ガンマ−リノレン酸を含み得る。本発明のある種の形態において、油のガンマ−リノレン酸含量は、約5%未満および約3%未満を含み、特にすべての中間の値および後記する表中に示す値を含む、約.01%ないし約7.5%および約.01%ないし約5%とし得る。本発明のある種の形態において、α−リノレン酸含量は約5、10、15または20%未満とし得る。
【0020】
本発明のさらなる形態において、本発明のトウモロコシ種子油は約1:1ないし約10:1、約2:1ないし約10:1、約3:1ないし約5:1または少なくとも約3:1のガンマ−リノレン酸に対するステアリドン酸の比を含み得る。本発明によって提供されるトウモロコシ種子油は、さらに、約0.5%:1ないし約10:1、約5:1ないし約10:1、および少なくとも約5:1のオメガ−6脂肪酸に対するオメガ−3脂肪酸の比を含み得る。
【0021】
本発明のもう1の態様は、(a)本発明に係る植物の種子を得;ついで(b)該種子から油を抽出する工程を含む改良されたPUFAプロフィールを含むトウモロコシ種子油の生産方法を提供する。本発明のある種の形態におけるかかる植物細胞を形質転換する好ましい方法には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のTiおよびRiプラスミド、エレクトロポレーションおよび高速衝撃ボンバードメントの使用が含まれる。
【0022】
いまだもう1の態様において、本発明は、本発明の組換えベクターを油産生植物に導入することを含む、改変したレベルのオメガ−3脂肪酸を含有する種子油を含むトウモロコシ植物を生産する方法を提供する。当該方法において、組換えベクターを導入することは遺伝子形質転換を含み得る。1の形態において、形質転換には、(a)植物細胞を本発明の組換えベクターで形質転換し;ついで(b)植物細胞から植物を再生させる工程を含み、ここに植物は、ベクターで形質転換されなかった同じ遺伝子型の対応する植物に対して改変したレベルのオメガ−3脂肪酸を有する。植物は、炭素12および/または15で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換されたものとしてさらに規定し得る。植物は上昇したSDAおよびGLAを含み得る。当該方法は、さらに、組換えベクターを複数のトウモロコシ植物に導入し、組換えベクターを遺伝している植物またはその子孫を、オメガ−3脂肪酸の目的のプロフィールを有する植物についてスクリーニングすることを含み得る。
【0023】
なおいまだもう1の態様において、本発明は、本発明により提供されるトウモロコシ種子油を食用製品に添加することを含む、ヒトまたは動物消費用の食用製品の栄養価(nutritional value)を上昇する方法を提供する。ある種の形態において、製品はヒトおよび/または動物食物である。食用製品は動物飼料および/または食物補充物ともし得る。当該方法において、油は食用製品のSDA含量を増加し得、および/または、食用製品のオメガ−6脂肪酸に対するオメガ−3脂肪酸の比を上昇し得る。食用製品は油を添加する前はSDAを欠いていてもよい。
【0024】
なおいまだもう1の態様において、本発明は、本発明により提供されるトウモロコシ種子油を出発食物または飼料の成分に添加して食物または飼料を生成することを含む、食物または飼料を製造する方法を提供する。ある種の形態において、当該方法は、食物および/または飼料を製造する方法としてもさらに規定する。本発明は、当該方法により生成した食物または飼料も提供する。
【0025】
なおいまだもう1の態様において、本発明は、本発明の種子油をヒトまたは動物に投与することを含む、ヒトまたは動物にSDAを提供する方法を含む。当該方法において、種子油は、食物または飼料を含む食用組成物にて投与し得る。食物の例には、飲料、注入食物、ソース、香辛料、サラダドレッシング、フルーツジュース、シロップ、デザート、アイシングおよびフィリング(icing and filling)、軟質冷凍製品、菓子または中間水分食物が含まれる。食用組成物は、実質的に液体または固体となり得る。食用組成物は、食物補充物および/またはニュートラシューティカルにもなり得る。当該方法において、種子油はヒトおよび/または動物に投与し得る。油を投与し得る動物の例には、家畜または家禽が含まれる。
【0026】
いまだもう1の態様において、本発明のトウモロコシ種子油は、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化することができるポリペプチド(Δ6−デサチュラーゼ)をコードする単離された核酸で形質転換した植物から得ることができる。1の形態において、ユニークなデサチュラーゼ活性を有するプリミュラ(Primula)種から単離した単離されたポリヌクレオチド配列を用い得る。ある種の形態において、単離されたポリヌクレオチドは、例えば、プリミュラ・ジュリア(Primula juliae)から単離する。本発明のある種のさらなる形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号:3および/または配列番号:4のポリペプチド配列に対して少なくとも90%のホモロジーを有するポリペプチドをコードし、これらの配列に対して少なくとも約92%、95%、98%および99%のホモロジーを含む。かかる配列は、リノール酸に対するα−リノレン酸について基質特異性を有し得る。ある種の形態において、約2:1ないし約2.9:1を含む、リノール酸に対するα−リノレン酸について少なくとも2:1の基質特異性が存在する。
【0027】
もう1の態様において、トウモロコシ植物は、(a)配列番号:3または配列番号:4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(b)配列番号:1または配列番号:2の核酸配列を含むポリヌクレオチド;および(c)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で、配列番号:1または配列番号:2、またはそれらの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドよりなる群から選択される配列を含む、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドで形質転換する。
【0028】
いまだもう1の態様において、本発明は、(a)配列番号:8の核酸配列を含むポリヌクレオチド;(b)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で配列番号:8にハイブリダイズし、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および(c)配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも90%配列同一性を有し、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および(d)(a)、(b)または(c)の配列の相補体よりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチドを提供する。1の形態において、かかるポリヌクレオチドは、配列番号:9の核酸配列を含み得る。本発明によってさらに提供されるのは、かかるポリヌクレオチドを含む組換え構築物およびトランスジェニック植物ならびに該植物により産生される植物油である。
【0029】
いまだもう1の態様において、トウモロコシ植物は、本発明に係る単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換する。本明細書中で用いる「組換えベクター」なる語は、宿主の細胞、組織および/または生物に導入することを望むDNAのいずれかの組換えセグメントを含み、詳細には、出発ポリヌクレオチドから単離された発現カセットを含む。組換えベクターは線状または環状となり得る。種々の態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に結合した調節配列;ポリヌクレオチドに作動可能に結合した選択マーカー;ポリヌクレオチドに作動可能に結合したマーカー配列;ポリヌクレオチドに作動可能に結合した精製基;およびポリヌクレオチドに作動可能に結合した標的配列、よりなる群から選択される少なくとも1のさらなる配列を含み得る。
【0030】
なおいまだもう1の態様において、本発明は、本明細書中に記載したポリヌクレオチドで形質転換したトウモロコシ細胞を提供する。さらなる形態において、該細胞は、ポリヌクレオチドに加えて、構成的および組織特異的なプロモーターを含む組換えベクターで形質転換されている。本発明のある種の形態において、かかる細胞は、炭素12よび/または炭素15で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換されているとさらに規定し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、改良されたPUFA含量を有する植物の創製のための方法および組成物、ならびにそれによって産生される種子油を提供することによって先行技術の制限を克服する。本発明の1の形態において、出願人らは、ステアリドン酸(SDA)を含有する内因性トウモロコシ種子油を生産し、γ−リノレン酸(GLA)も含み得るトランスジェニック・トウモロコシ(Zea mays)を提供する。このことは極めて重要である。なぜなら、トウモロコシ種子油は、通常これらの成分を欠いており、その各々が重要な健康上の利益を有することが示されているからである。トウモロコシ種子油は、それを、例えばSDAの外的な添加の必要なしにトウモロコシ種子によって生産し得る点において内因性である。かかる内因性の油は、食物および飼料の成分として使用し得、それによってヒトまたは動物の健康が恩恵を受ける抽出油組成物とし得る。したがって、植物のごとき生物の脂肪酸含量の改良は、改善された栄養および健康の恩恵のような多くの恩恵を示す。本発明による脂肪酸含量の修飾を用いて、トウモロコシのような植物、植物部分および植物種子油を含む植物生成物において目的のPUFAの有益なレベルまたはプロフィールを達成することができる。例えば、目的のPUFAを植物の種子組織で生産する場合、油は、典型的に目的のPUFAを多量に含む油、またはついで食物材料および他の生成物に有益な特徴を提供するために使用し得る望ましい脂肪酸含量またはプロフィールを有する油を生じる種子から単離し得る。特に、本発明は、SDAを有する内因性トウモロコシ種子油を提供する。
【0032】
本発明の種々の態様には、細胞のPUFA含量の修飾用の、例えば、トウモロコシ植物細胞のPUFA含量の修飾用の方法および組成物が含まれる。本発明に関連する組成物は、植物および/または植物部分に導入する、新規の単離されたポリヌクレオチド配列およびポリヌクレオチド構築物を含む。かかる単離されたポリヌクレオチドの例は、プリミュラ(Primula)Δ6−デサチュラーゼのようなプリミュラ(Primula)脂肪酸デサチュラーゼである。本発明により調製されるトウモロコシ細胞は、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)からのものような公知のΔ6−デサチュラーゼを含む、他の脂肪酸デサチュラーゼを含み得る。詳細には、本発明者らは、異なるΔ6およびΔ15脂肪酸デサチュラーゼの発現が、SDAを含有するトウモロコシ種子油を産生することを示す。したがって、本発明のある種の形態は、Δ6およびΔ15脂肪酸デサチュラーゼのコード配列で形質転換したトウモロコシ植物および細胞を提供する。本発明の1の形態において、Δ15−デサチュラーゼは、ノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)を含む菌類起源からのものとし得る。本発明の種々の形態は、典型的に宿主細胞に依存するデサチュラーゼ・ポリヌクレオチドおよびコードされるポリペプチド、基質(または複数の基質)のアベイラビリティー、および目的の最終産物(または複数の産物)の組合せを使用し得る。「デサチュラーゼ」とは、1またはそれを超える脂肪酸の連続する炭素間を不飽和化するかまたはその炭素間の二重結合の形成を触媒して、モノ−またはポリ−不飽和脂肪酸またはその前駆体を生成し得るポリペプチドをいう。特に関心があるものは、オレイン酸からLA、LAからALA、またはALAからSDAの変換を触媒し得るポリペプチドであり、それには12、15または6位で脱飽和化する酵素が含まれる。「ポリペプチド」なる語は、鎖長または翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関係なく、アミノ酸のいずれかの鎖をいう。デサチュラーゼ活性を有する具体的なポリペプチドを選択するために考慮すべき事項には、限定されるものではないが、ポリペプチドの至適pH、ポリペプチドが律速酵素またはそのコンポーネントであるか、使用するデサチュラーゼが目的のPUFAの合成に必須であるか、および/または補助因子がポリペプチドによって必要であるか、が含まれる。発現したポリペプチドは、好ましくは、宿主細胞におけるそのロケーションの生化学的環境と親和性である特徴を有する。例えば、ポリペプチドは基質(または複数の基質)について、競合しなければならないものとし得る。
【0033】
問題のポリペプチドのKmおよび比活性の分析は、得られた宿主細胞におけるPUFA(または複数のPUFA)生産、レベルまたはプロフィールを修飾する得られたポリペプチドの適当さを決定することにおいて考慮し得る。特定の状況で使用するポリペプチドは、典型的に、意図する宿主細胞に存在する条件下で機能し得るものであるが、目的の特徴を有する、または目的のPUFA(または複数のPUFA)の相対的生産、レベルまたはプロフィールまたは本明細書で論じたいずれか他の目的の特徴を修飾することができる、いずれか他のデサチュラーゼ・ポリペプチドとし得る。発現した酵素の基質(または複数の基質)は、宿主細胞によって産生され得るかまたは外因的に供給し得る。発現を達成するために、本発明のポリペプチド(または複数のポリペプチド)は、以下に記載するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0034】
本発明のもう1の態様において、プロモーターおよび終結領域が機能的である生物に移入するための、プロモーター、デサチュラーゼコード配列および終結領域を含む核酸、またはそのフラグメントを含むベクターを使用することができる。したがって、組換えΔ6−デサチュラーゼを生産するトウモロコシ植物が本発明によって提供される。トウモロコシにおける発現に最適化されている本発明によって提供されるかかるΔ6−デサチュラーゼコード配列の例は、配列番号:8および配列番号:9によって与えられる。したがって、本発明は、特に、この配列を含む核酸、ならびに少なくとも93%、95%、98%および99%同一性を含む、これらの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む核酸を提供する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの比較を行うことができ、同一性は配列解析ソフトウェア、例えば、Sequence Analysis software package of the GCG Wisconsin Package (Accelrys, San Diego, CA)、MEGAlign (DNAStar, Inc., 1228 S. Park St., Madison, Wis. 53715)およびMac Vector (Oxford Molecular Group, 2105 S. Bascom Avenue, Suite 200, Campbell, Calif. 95008)を用いて決定することができる。かかるソフトウェアは、類似性または同一性の程度を割り当てることによって類似する配列をマッチさせる。
【0035】
宿主細胞のゲノムに組み込まれるかまたは宿主細胞中で自律的に複製する(例えば、細胞質内で独立して複製する)核酸構築物を提供し得る。ALAおよび/またはSDAの生産のために、一般的に使用する発現カセット(すなわち、ポリヌクレオチドの発現を指示する核酸配列(または複数の核酸配列)に作動可能に連結した、タンパク質をコードするポリヌクレオチド)には、Δ6−および/またはΔ15−デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの発現を提供する発現カセットが含まれる。ある種の態様において、宿主細胞は野生型のオレイン酸含量を有し得る。
【0036】
本明細書に提供した教示を参酌した場合、デサチュラーゼ酵素を発現するための発現ベクターを構築するための方法および組成物は、当業者に明らかであろう。本明細書中に記載する発現ベクターは、目的のポリヌクレオチド、例えば、デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチド、の制御された発現のために設計されたDNAまたはRNAである。ベクターの例には、プラスミド、バクテリオファージ、コスミドまたはウイルスが含まれる。シャトルベクター、例えば(Wolkら, 1984;Bustosら, 1991)も本発明により意図される。ベクターならびにそれらを調製および使用する方法の概要は、Sambrookら(2001);Goeddel(1990);およびPerbal(1988)に見出すことができる。ポリヌクレオチドの発現に影響することができる配列エレメントには、プロモーター、エンハンサーエレメント、上流活性化配列、転写終結シグナルおよびポリアデニル化部位が含まれる。
【0037】
デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、強力なプロモーターの転写制御下に置くことができる。このことが、発現するデサチュラーゼ酵素の量の増加と同時に酵素によって触媒される反応の結果として生産される脂肪酸の増加に通じる場合がある。かかるプロモーターの例には、35S CaMV(カリフラワーモザイクウイルス)、34S FMV(ゴマノハグサモザイクウイルス)(例えば、米国特許第5,378,619号、その内容を全体として本明細書中に取り込む)およびLec(トウモロコシからの)が含まれる。トランスジェニック植物においてデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの組織特異的発現を駆動するために使用し得る広範な種々の植物プロモーター配列が存在する。実際、本発明の詳細な形態において、使用するプロモーターは種子特異的プロモーターである。これに関して使用し得るプロモーターの例には、植物種子成熟の間に調節されるナピン(Kridlら, Seed Sci. Res. 1:209:219, 1991)、ファゼオリン(Bustosら, Plant Cell, 1(9):839-853, 1989)、ダイズ・トリプシンインヒビター(Riggsら, Plant Cell 1(6):609-621, 1989)、ACP(Baersonら, Plant Mol. Biol., 22(2):255-267, 1993)、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(Slocombeら, Plant Physiol. 104(4):167-176, 1994)、ダイズβ−コングリシニンのアルファサブユニット(P−Gm7S、例えば、Chenら, Proc. Natl. Acad. Sci. 83:8560-8564, 1986)、ビチア・ファバ(Vicia faba)USP(P−Vf.USP、例えば、配列番号:1、2および3、米国特許出願番号10/429,516)、グロブリンプロモーター(例えば、BelangerおよびKriz, Genet. 129:863-872(1991)、ダイズβ−コングリシンのアルファサブユニット(7S アルファ)(米国特許出願番号10/235,618、出典明示して本明細書の一部とみなす)、オオムギ種子ペロキシジンPER1プロモーター(例えば、Staceyら, Plant Mol. Biol., 31:1205-1216, 1996)およびトウモロコシ(Zea mays)のL3オレオシン・プロモーター(P-Zm.L3、例えばHongら, Plant Mol. Biol., 34(3):549-555, 1997;また、その開示を出典明示して本明細書に特異的に取り込む米国特許第6,433,252号)のような遺伝子からの5'調節領域が含まれる。
【0038】
内胚乳で高度に発現するポロモーターの例には、トウモロコシ内胚乳に見出される貯蔵タンパク質の群であるゼインをコードする遺伝子からのプロモーターが含まれる。ゼイン遺伝子のゲノミッククローンは単離されており(Pedersenら, Cell 29:1015-1026 (1982)、およびRussellら, Transgenic Res. 6(2):157-168)、15kD、16kD、19kD、22kDおよび27kD遺伝子を含むこれらのクローンからのプロモーターも用いて、本発明による内胚乳における発現を提供することができる(例えば、全体を参照することによって本願明細書に特異的に取り込まれる、米国特許第6,326,527号を参照されたい)。トウモロコシおよび他の植物で機能することが知られている他の好適なプロモーターには、以下の遺伝子のプロモーターが含まれる:waxy(顆粒結合デンプン合成酵素)、Brittle and Shrunken 2 (ADPグルコース・ピロホスホリラーゼ)、Shrunken 1(スクロースシンターゼ)、分枝酵素IおよびII、デンプン合成酵素、脱分枝酵素、オレオシン、グルテリン、スクロースシンターゼ(Yangら, 1990)、Betl1 (基底内胚乳移送層)およびグロブリン1。当業者に知られている本発明の実施に有用な他のプロモーターも、本発明によって意図される。
【0039】
当業者は、特定の宿主細胞中での発現に好適なベクターおよび調節エレメント(作動可能に連結されたプロモーターおよびコード領域を含む)を決定し得る。この文脈における「作動可能に連結した」とは、プロモーターおよびターミネーター配列が効果的に機能して転写を調節することを意味する。さらなる例として、トランスジェニック・トウモロコシ植物におけるΔ6および/またはΔ15デサチュラーゼの発現に適当なベクターは、デサチュラーゼコード領域に作動可能に連結し、さらに種子貯蔵タンパク質終結シグナルまたはノパリンシンターゼ終結シグナルに作動可能に連結した種子−特異的プロモーターを含み得る。なおさらなる例として、植物におけるデサチュラーゼの発現に使用するベクターは、デサチュラーゼコード領域に作動可能に連結し、さらに構成的もしくは組織特異的ターミネーターまたはノパリンシンターゼ終結シグナルに作動可能に連結した構成的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを含み得る。
【0040】
本明細書中で意図される機能を維持する、本明細書に開示したヌクレオチド配列または調節エレメントの修飾は、本発明の範囲内にある。かかる修飾には、挿入、置換および欠失、ならびに詳細には遺伝コードの縮重を反映する置換が含まれる。
【0041】
かかる組換えベクターを構築する標準技術は当業者によく知られており、Sambrookら (2001)のような参考文献、または広く入手可能な組換えDNA技術に関するいずれかのミリアドのラボラトリーマニュアルに見出すことができる。DNAのフラグメントを連結するために種々のストラテジーが利用可能であり、その選択はDNAフラグメントの末端の性質に依存する。さらに、核酸ベクターには、クローニング、発現またはプロセシングを促進する他のヌクレオチド配列エレメント、例えばシグナルペプチドをコードする配列、小胞体中のタンパク質の保持に必要なKDELをコードする配列、またはΔ6−デサチュラーゼを葉緑体に指向する輸送ペプチドをコードする配列が含まれることが本発明により意図される。かかる配列は当業者に知られている。最適化された輸送ペプチドは、例えばVan den Broeckら (1985)によって記載されている。原核生物および真核生物のシグナル配列は、例えばMichaelisら(1982)によって開示されている。
【0042】
目的のゲノミックDNAまたはcDNAを単離すれば、公知の方法によって配列決定し得る。かかる方法が、同一領域の複数回の配列決定を日常的に行ってもいまだ得られる推定配列に測定可能な比率の間違い、特に反復したドメイン、大規模な二次構造または高いGC塩基含量を有する領域のような通常でない塩基組成を有する領域において生じる間違いに通じることが予想されるようなエラーに付されることは当該技術分野において認識されている。矛盾が生じる場合は、再配列決定を行うことができ、特別の方法を用いることができる。特別の方法には、異なる温度;異なる酵素;高次構造を形成するオリゴヌクレオチドの能力を変化させるタンパク質;ITPまたはメチル化dGTPのような改変ヌクレオチド;例えばホルムアミドを添加するような異なるゲル組成;異なるプライマーまたは問題の領域から異なる距離に位置するプライマー;または一本鎖DNAのような異なるテンプレートを用いることによって配列決定条件を変化させることが含まれ得る。mRNAの配列決定も利用することができる。
【0043】
デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドのコード配列の幾つかまたは全てを、天然の起源からのものとし得る。しかしながら、コドンの全てまたは一部を修飾すること、例えば宿主が好むコドンを用いることによって発現を高めることが望ましい状況もある。宿主が好むコドンは、関心の特定の宿主種および/または組織において最大量で発現したタンパク質における最も高い頻度のコドンから決定し得る。したがって、デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドのコード配列は、全体または部分的に合成することができる。DNAの全体または部分を合成して、転写されたmRNAに存在するであろう二次構造のいずれかの不安定化する配列または領域を除去することもできる。DNAの全体または部分を合成して、目的の宿主細胞においてより好ましいものに塩基組成を変化させることもできる。配列を合成する方法および配列をまとめる方法は、文献においてよく確立されている。イン・ビトロ(in vitro)突然変異および選択、部位特異的突然変異または他の手段を利用して天然発生するデサチュラーゼ遺伝子の突然変異を得、より長い半減期または目的のポリ不飽和脂肪酸の高比率の生産のような、宿主細胞中で機能するためのより望ましい物理的および動力学的パラメータと一緒に、イン・ビボ(in vivo)でデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドを作製する。
【0044】
デサチュラーゼ・ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが得られれば、それを宿主細胞中で複製することができるベクターに位置させ、またはPCRまたはLong PCRのような技術によってイン・ビトロ(in vitro)で増殖させる。複製するベクターには、プラスミド、ファージ、ウイルス、コスミドなどが含まれ得る。望ましいベクターには、関心のある遺伝子の突然変異導入に有用なもの、または宿主細胞において関心のある遺伝子を発現させるのに有用なものが含まれる。Long PCRの技術により、突然変異導入または発現シグナルの付加のような関心のある遺伝子の修飾および得られる構築物の増殖を、複製性のベクターまたは宿主細胞を使用することなくイン・ビトロ(in vitro)で全体的に起こすことができるように、大きな構築物のイン・ビトロ(in vitro)増殖が可能になった。
【0045】
デサチュラーゼ・ポリペプチドを発現させるためには、機能的な転写および翻訳の開始および終結領域を、デサチュラーゼ・ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。ポリペプチドコード領域の発現は、イン・ビトロ(in vitro)または宿主細胞中で起こすことができる。転写および翻訳の開始および終結領域は、発現させるポリヌクレオチド、目的の系で発現させ得ることが知られているまたは予想される遺伝子、発現ベクター、化学合成を含む種々の非限定的な起源、または宿主細胞中の内因的遺伝子座に由来する。
【0046】
宿主細胞における発現は、一時的または安定的な様式で行い得る。一時的な発現は、宿主細胞中で機能する発現シグナルを含む導入した構築物から生じる得るが、その構築物は宿主細胞中で複製せずかつ宿主細胞中でめったに組み込まれず、あるいは宿主細胞が増殖性でない。一時的な発現は、関心のある遺伝子に作動可能に連結した調節可能なプロモーターの活性を誘導することによっても行い得るが、かかる誘導可能な系はしばしば低い基底レベルの発現を示す場合がある。安定的な発現は、宿主ゲノムに組み込まれ得るかまたは宿主細胞中で自律的に複製する構築物の導入によって達成し得る。関心のある遺伝子の安定的な発現は、発現構築物上に位置するかまたは発現構築物と一緒にトランスフェクトする選択マーカーを使用し、つづいて該マーカーを発現している細胞を選択することを通して選択し得る。安定的な発現が組み込みから生じる場合、構築物の組み込みは、宿主ゲノム内にランダムに起こすことができ、または宿主遺伝子座との組換えを標的化するのに十分な宿主ゲノムとのホモロジーを有する領域を含む構築物の使用を通して標的化することができる。構築物を内因性の遺伝子座に標的化する場合、転写および翻訳調節領域の全てまたは幾つかは該内因性遺伝子座によって提供し得る。
【0047】
起源生物におけるデサチュラーゼ・ポリペプチドの上昇した発現が望まれる場合、幾つかの方法を利用し得る。デサチュラーゼ・ポリペプチドをコードするさらなる遺伝子を宿主生物に導入し得る。本来のデサチュラーゼ遺伝子座からの発現は、相同的組換えを通して、例えば、より強力なプロモーターを宿主ゲノムに挿入して上昇した発現を生じさせることによって、宿主ゲノムからその情報を欠失することによってmRNAまたはコードされるタンパク質のいずれかから不安定化する配列を除去することによって、あるいは、mRNAに安定化する配列を付加することによっても上昇させ得る(米国特許第4,910,141号)。
【0048】
デサチュラーゼをコードする1を超えるポリヌクレオチドまたは1を超えるデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドを、細胞質内または組み込まれた発現ベクターの使用を通して宿主細胞に導入し、増殖させ得ることが意図される。2またはそれを超える遺伝子を別の複製性のベクターから発現させる場合、各ベクターは異なる複製手段を有することが望ましい。各々の導入した構築物は、組み込まれるか否かにかかわらず、異なる選択手段を有するべきであり、他の構築物に対するホモロジーを欠いて安定的な発現を維持し、構築物内の再構築を防ぐべきである。調節領域、選択手段および導入した構築物の増殖の方法の賢明な選択は、すべての導入したポリヌクレオチドが必要レベルで発現されて目的産物の合成を提供するように、経験的に決定し得る。
【0049】
形質転換に必要な場合、デサチュラーゼコード配列は植物形質転換ベクター、例えばBevan(1984)によって記載されたバイナリーベクター、に挿入し得る。植物形質転換ベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の天然の遺伝子移入系を修飾することによって誘導し得る。該天然の系は、形質転換植物に移行されるT−DNAとして知られている大きなセグメントを含む大きなTi(腫瘍誘導性)プラスミドを含んでいる。Tiプラスミドのもう1のセグメントであるvir領域は、T−DNAの移行の責任を負っている。T−DNA領域はターミナルリピートによって境界がなされている。修飾バイナリーベクターにおいては、腫瘍誘導性遺伝子は除去されており、vir領域を利用してT−DNAボーダー配列によって境界が設けられた外来DNAを移行する。該T−領域には、抗生物質抵抗性についての選択マーカー、および移行する配列を挿入するためのマルチクローニングサイトも含まれる。かかる設計菌株は「非病原化(disarmed)」アグロバクテリウム・ツメファシエンスとして知られており、T−領域によって境界が設けられた配列の植物の核ゲノムへの効率的な形質転換を許容する。
【0050】
標題の発明は多くの応用を見出す。本発明のポリヌクレオチドに基づくプローブは、関連分子を単離する方法またはデサチュラーゼを発現する生物を検出する方法における用途を見出し得る。プローブとして使用する場合、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは検出可能である必要がある。このことは、通常、例えば修飾した残基の取り込みを介して内部サイト、または5'もしくは3'末端、のいずれかに標識を結合することによって行う。かかる標識は直接的に検出可能であり、検出可能に標識された二次分子に結合し得、あるいは、非標識二次分子および検出可能に標識した三次分子に結合し得る;この工程は、許容し得ないレベルのバックグラウンドシグナルが存在しない満足のゆく検出可能なシグナルを達成するために実行的である限りにおいて拡大し得る。二次、三次または橋かけ系は、標識または他の抗体を含むいずれかの他の分子に対して指向された抗体の使用、あるいは、互いに結合するいずれかの分子、例えばビオチン−ストレプトアビジン/アビジン系を含み得る。検出可能な標識は、典型的には、放射性同位元素、化学的または酵素的に光を生成または変化する分子、検出可能な反応産物を生成する酵素、磁性分子、蛍光分子または結合の際にその蛍光または発光特徴が変化する分子を含む。標識方法の例は、米国特許第5,011,770号に見出し得る。あるいは、標的分子の結合は、BIAcore systemを用いて行い得るように、等温滴定カロリメトリーを介してプローブが標的に結合する際の溶液の熱変化を測定することによって、または表面上のプローブまたは標的をコートし、各々標的またはプローブの結合によって生成する表面からの光の散乱における変化を検出することによって、直接的に検出し得る。
【0051】
関心のある遺伝子を含む構築物は、標準技術によって宿主細胞に導入し得る。簡便のため、いずれかの方法によって操作されてDNA配列または構築物が受け取られた宿主細胞を、本明細書において「形質転換」または「組換え」という。主題の宿主は、発現構築物の少なくも1のコピーを有し、例えば遺伝子がゲノムに組み込まれ、増幅され、または複数のコピー数を有する染色体外エレメント上に存在するか否かに依存して、2またはそれを超えるコピーを有し得る。
【0052】
形質転換した宿主細胞は、導入した構築物上に含まれるマーカーを選択することによって同定し得る。あるいは、多くの形質転換技術が多くのDNA分子を宿主細胞に導入するため、別のマーカー構築物を目的の構築物と導入し得る。典型的に、形質転換宿主は、選択培地上で増殖するその能力について選択する。選択培地は抗生物質を配合し得、または、栄養または成長因子のような非形質転換宿主の増殖に必要な因子を欠くことができる。そのために導入したマーカー遺伝子は抗生物質抵抗性を付与し得、または必須の成長因子または酵素をコードし得、形質転換宿主において発現した場合に選択培地上での増殖を許容し得る。形質転換した宿主の選択は、発現したマーカータンパク質を検出し得る場合は、直接的または間接的のいずれかで起こし得る。マーカータンパク質は単独またはもう1のタンパク質への融合物として発現し得る。マーカータンパク質はその酵素活性によって検出し得る;例えば、ベータ−ガラクトシダーゼは基質X−galを発色産物に変換し得、およびルシフェラーゼはルシフェリンを発光性の産物に変換し得る。マーカータンパク質は、その光を生成するまたは光を修飾する特徴によって検出し得る;例えば、青色光を照射した場合にエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)のグリーン蛍光タンパク質は蛍光する。抗体を用いて、マーカータンパク質、または例えば関心のあるタンパク質上の、分子タグを検出し得る。マーカータンパク質またはタグを発現する細胞は、例えば、視覚的に、またはFACSまたは抗体を用いたえり分け(panning)のごとき技術によって、選択し得る。望ましくは、カナマイシンおよびアミノグリコシドG418に対する抵抗性、ならびにウラシル、ロイシン、リシンまたはトリプトファンを欠く培地上で増殖する能力が関心のあるものである。
【0053】
本発明のもう1の態様は、本明細書に記載する単離されたDNAを含むトランスジェニック植物または植物の子孫を提供する。植物細胞は、いずれかの植物形質転換法によってΔ6−およびΔ15−デサチュラーゼをコードする1またはそれを超える単離されたDNA(または複数のDNA)で形質転換し得る。カルス培養物またはリーフディスク中に存在する場合もある形質転換した植物細胞は、当業者によく知られた方法によって完全なトランスジェニック植物に再生される(例えば、Horschら, 1985)。形質転換した植物の子孫はデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチド(または複数のポリヌクレオチド)を受け継いでいるため、形質転換した植物からの種子または切断物を用いて、トランスジェニック植物系統を維持し得る。
【0054】
本発明は、さらに、増加した含量のGLAおよび/またはSDAを有するトランスジェニック植物を提供する方法を提供する。本発明のある種の形態において、Δ15−および/またはΔ12−デサチュラーゼをコードするDNAは、Δ6デサチュラーゼと一緒に植物細胞に導入し得る。かかる植物は、内因性のΔ12−および/またはΔ15−デサチュラーゼ活性を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。本発明は、さらに、本来のトウモロコシ植物においては欠いているGLAおよび/またはSDAを含む上昇したレベルのPUFAを含むトランスジェニック・トウモロコシ植物を提供する方法を提供する。Δ6−デサチュラーゼ、および/またはΔ12−デサチュラーゼおよび/またはΔ15−デサチュラーゼをコードするDNAを含む発現ベクターは、当業者に知られている組換え技術の方法によって構築し得る(Sambrookら, 2001)。
【0055】
食餌補充のために、精製したPUFA、形質転換した植物または植物部分、またはそれらの誘導体は、通常の使用において受容者が望む量を受容するように処方された調理用油、脂質またはマーガリンに配合し得る。PUFAは幼児処方、栄養補充物または他の食物製品にも配合し得、抗−炎症剤またはコレステロール低下剤としての用途を見出し得る。
【0056】
本明細書中で用いる「食用組成物」とは、食糧、栄養物質および医薬組成物のような哺乳動物によって摂取され得る組成物と定義される。本明細書中で用いる「食糧」とは、哺乳動物用の食物として使用するために使用または調製し得る物質をいい、それには食物または食物添加物の調製に使用し得る物質(フライ油のような)が含まれる。例えば、食糧にはヒト消費に使用される動物、または例えば卵のようなそれからのいずれかの生成物が含まれる。典型的な食糧には、限定されるものではないが、飲料(例えば、ソフトドリンク、炭酸飲料、調製済み混合用飲料)、注入食物(例えば、果物および野菜)、ソース、香辛料、サラダドレッシング、フルーツジュース、シロップ、デザート(例えば、プリン、ゼラチン、アイシングおよびフィリング、ベークト商品ならびにアイスクリームおよびシャーベットのような冷凍デザート)、軟質冷凍製品(例えば、ソフトクリーム、ソフトアイスクリームおよびヨーグルト、日常的または非日常的なホイップ・トッピングのようなソフト冷凍トッピング)、油および乳化製品(例えば、ショートニング、マーガリン、マヨネーズ、バター、調理油、およびサラダドレッシング)ならびに中間水分食物(例えば、コメおよびドッグフード)が含まれる。
【0057】
本発明により提供される食糧の1の例は、伴侶動物用に処方化された食物である。「伴侶動物」なる語は、飼い慣らされた動物をいう。伴侶動物は特に哺乳動物とすることができ、詳細には、限定されるものではないが、イヌ、ネコ、ウサギ、齧歯類およびウマが含まれる。記載したように、伴侶動物は、本発明による種子油を含むかかる食糧を消費することによって健康上の恩恵を得ることができる。
【0058】
動物食物製品の処方は当業者によく知られており、伴侶動物用に処方化された食物が含まれる。キャットおよびドッグフードの領域においては、例えば、湿潤ペットフード、やや湿ったペットフード、乾燥ペットフード、ペットのごちそう(pet treat)およびスナックがよく知られている。ネコ用のミルク飲み物のようなペット用飲み物も入手可能である。中間水分食物は、例えば、一般的には20%よりも高い水分含量を有し、一方湿性食物は少なくとも約65%の水分を有する。やや湿性の食物は、典型的に、約20ないし約65%の水分含量を有し、ポリエチレングリコール、ソルビン酸カリウムのような保湿剤、および微生物(すなわち、細菌およびカビ)の増殖を防ぐ他の成分を含み得る。乾燥ペットフード(粗挽き)は、一般的に、約20%未満の水分含量を有し、その製造は押し出し、乾燥および/または加熱して焼くことを含み得る。ペットのごちそうおよびスナックは、当該技術分野でよく知られているように、少し湿ったチュアブルのごちそうまたはスナックの場合があり;多数の形状または形態の乾燥ごちそうまたはスナック;チュアブル・ボーン;焼き、押し出しまたは打ち抜いたごちそう;菓子のごちそう/スナック;または他の種類のごちそうの場合がある。
【0059】
中間水分のペットフード製品は、互いに混合し、調理およびパッケージ化する、穀粒、肉、脂肪、ビタミン、ミネラル、水および機能成分のような成分を含み得る。しかしながら、当業者に知られているいずれかのやや湿ったペットフード処方を使用し得る。例えば、ペットフードは、乾燥物ベースで、約5−40重量%のタンパク質;約5−45重量%の脂肪;約0.1−12重量%の繊維;約1−90重量%の炭水化物、および約0.1−2重量%の機能成分を添加することによって形成し得る。本発明の油組成物はいずれかの望ましい量、例えば約1−30%および約3−15%を含む約1−50重量%で添加し得る。最終生成物の望ましい特徴に基づいて、当業者によく知られているように変化をなし得る。
【0060】
さらに、本明細書に記載する食用組成物は、食物および飲み物に含まれる添加物または補充物としても摂取し得る。これらは、種々のビタミンおよびミネラルのような栄養物質と一緒に処方化し、栄養ドリンク、豆乳およびスープのような実質的に液体の組成物;実質的に固体の組成物;およびゼラチンに配合することができ、あるいは種々の食物に配合する粉末の形態で使用し得る。かかる機能または健康食物中の有効成分の含量は、典型的な医薬剤に含まれる用量と同様とし得る。
【0061】
精製したPUFA、形質転換した植物または植物部分は、動物、特に家禽の飼料にも配合し得る。このようにして、動物はPUFAに富む食餌から恩恵を受け得、一方でかかる家畜から生産される食物製品のヒト消費者もそのうえに恩恵を受け得る。ある種の形態において、動物においてSDAがEPAに変換され、したがってかかる動物はSDAの消費によるEPAにおける増加から恩恵を受け得ることが予想される。
【0062】
医薬用途(ヒトまたは獣医学的)について、組成物は一般的に経口投与し得るが、首尾よく吸収され得るいずれの経路、例えば非経口(すなわち、皮下、筋肉内または静脈内)、直腸、膣内または局所、例えば皮膚軟膏またはローション、によっても投与し得る。本発明のPUFA、形質転換した植物または植物部分は、単独、または医薬上許容される担体もしくは賦形剤と組み合わせて投与し得る。有用な場合、ゼラチンカプセルは経口投与の好ましい形態である。前記した食餌補充は、投与の経口経路も提供し得る。本発明の不飽和酸は、結合した形態で、または脂肪酸の塩、エステル、アミドもしくはプロドラッグとして投与し得る。いずれの医薬上許容し得る塩も本発明によって包含されるが;特に好ましいものはナトリウム、カリウムまたはリチウム塩である。また、国際公開WO 96/33155に見出されるN−メチルグルカミンのようなN−アルキルポリヒドロキシアミン塩も包含される。好ましいエステルはエチルエステルである。固体の塩として、PUFAは錠剤形態でも投与し得る。静脈内投与について、PUFAまたはその誘導体は、イントラリピッド(Intralipids)のような市販の処方に配合し得る。
【0063】
本発明のある種の形態において、コード配列またはそのフラグメントは、センスまたはアンチセンス方向のいずれかで、外因性プロモーターに作動可能に連結されて提供される。また、配列で植物および植物細胞を形質転換するため、これらの配列を含む発現構築物も提供される。本発明に従ってこれらまたは他の配列を用いて植物形質転換技術と結合して利用し得る構築物の構築は、本明細書の開示の観点から当業者に知られているであろう(例えば、Sambrookら, 2001;Gelvinら, 1990を参照されたい)。したがって、本発明の技術は、いずれかの特定の核酸配列に限定されるものではない。
【0064】
本発明により提供される配列の1の用途は、油組成の変化にある。デサチュラーゼ遺伝子は、他の配列と共に提供し得る。必ずしもマーカーコード領域である必要のない発現可能なコード領域をマーカーコード領域と組み合わせて利用する場合、形質転換用の同一または異なるDNAセグメントのいずれかの上の別のコード領域を利用し得る。後者の場合においては、異なるベクターを同時に受容細胞にデリバリーして同時トランスフェクションを最大化する。
【0065】
デサチュラーゼコード配列と結合して使用するいずれかのさらなるエレメントの選択は、形質転換の目的に依存する場合もあるであろう。作物植物の形質転換の主な目的の1は、商業的に望ましい、農業的に重要な特性を植物に付加することである。PUFAは健康に多くの有益な効果を付与することが知られているので、SDA生産において同時に生じる増加も有益であり、プリミュラ(Primula)Δ6−デサチュラーゼの発現によって達成し得る。SDAのかかる増加は、本発明のある種の形態において、Δ12および/またはΔ15デサチュラーゼの発現を含む。
【0066】
植物形質転換に使用するベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)またはいずれか他の好適なクローニングシステム、ならびにそれらからのDNAのフラグメントを含み得る。したがって、「ベクター」または「発現ベクター」なる用語を使用する場合、前記したタイプのすべてのベクター、ならびにそれから単離された核酸配列が包含される。大きなインサート容量を有するクローニングシステムの利用が、1を超える選択した遺伝子を含む大きなDNA配列の導入を許容するであろうことは意図される。本発明により、これを使用して、種々のデサチュラーゼをコードする核酸を導入し得るであろう。かかる配列の導入は、細菌または酵母の人工染色体(各々、BACまたはYAC)の使用、または植物人工染色体の使用によっても促進し得る。例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換へのBACの使用は、Hamiltonら,(1996)によって開示された。
【0067】
形質転換に特に有用なのは、かかるベクターから単離された発現カセットである。植物細胞を形質転換するために使用するDNAセグメントは、勿論、一般的に、宿主細胞に導入し、その中で発現することを望むcDNA、遺伝子または複数の遺伝子を含むであろう。これらのDNAセグメントは、さらに、プロモーター、エンハンサー、ポリリンカーまたは望まれる場合は調節遺伝子でさえのごとき構造を含み得る。細胞導入のために選択されるDNAセグメントまたは遺伝子は、得られる組換え細胞中で発現してスクリーニング可能または選択可能な特性を生じる、および/または、得られるトランスジェニック植物に改善された表現型を付与する、タンパク質をコードする場合もあるであろう。しかしながら、このことが常にある必要はなく、本発明は、非発現トランスジーンを取り込んでいるトランスジェニック植物も包含する。本発明において使用するベクターと一緒に含まれそうな好ましいコンポーネントは以下のものである。
【0068】
転写開始部位とコード配列の開始との間のDNA配列、すなわち非翻訳リーダー配列も、遺伝子の発現に影響し得る。したがって、本発明の形質転換構築物と特定のリーダー配列を利用することを望むことができる。好ましいリーダー配列は、結合した遺伝子の最適な発現を指示することが予想される配列を含むこと、すなわち、mRNA安定性を増大または維持し得、かつ、翻訳の不適当な開始を防ぎ得る好ましいコンセンサスリーダー配列を含むこと、が意図される。かかる配列の選択は、本発明の開示の観点から当業者に知られているであろう。植物において高度に発現されている遺伝子に由来する配列が典型的には好ましいであろう。
【0069】
本発明に従って調製した形質転換構築物は、典型的に、転写を終結するシグナルとして作用する3'末端DNA配列を含み、デサチュラーゼ遺伝子(例えば、cDNA)に作動可能に連結したコード配列によって生成されるmRNAのポリアデニル化を許容する。本発明の1の形態において、デサチュラーゼ遺伝子の本来のターミネーターを使用する。あるいは、外因性の3'末端はデサチュラーゼコード領域の発現を高め得る。有用であると考えられるターミネーターの例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼからのもの(nos 3'末端)(Bevanら, 1983)、ジャガイモまたはトマトからのプロテアーゼインヒビターIまたはII遺伝子の3'末端、およびCaMV 35Sターミネーターを含む。Adhイントロン(Callisら, 1987)、スクロースシンターゼ・イントロン(Vasilら, 1989)またはTMVオメガエレメント(Gallieら, 1989)のような調節エレメントを、望まれる場合はさらに含み得る。
【0070】
本発明で使用する植物または他の細胞の形質転換に好適な方法は、プロトプラストのPEG−媒介形質転換(Omirullehら, 1993)によって、乾燥/阻害−媒介DNA取り込み(Potrykusら, 1985)によって、エレクトロポレーション(米国特許第5,384,253号, 本明細書中に特異的に取り込んでその全体を参照する)によって、炭化ケイ素ファイバーとの振盪(Kaepplerら, 1990;米国特許第5,302,523号, 本明細書中に特異的に取り込んでその全体を参照する;および米国特許第5,464,765号, 本明細書中に特異的に取り込んでその全体を参照する)によって、アグロバクテリウム−媒介形質転換(米国特許第5,591,616号および米国特許第5,563,055号;両方とも本明細書中に特異的に取り込んで参照する)ならびにDNAコーティングした粒子の加速(米国特許第5,550,318号;米国特許第5,538,877号;および米国特許第5,538,880号;各々、本明細書中に特異的に取り込んでその全体を参照する)ほか、によるようなDNAの直接的デリバリーのような、DNAを細胞に導入し得る実質的にいずれの方法をも含むと考えられる。これらのような技術の応用を介して、実質的にいずれの植物種の細胞も安定して形質転換し得、これらの細胞をトランスジェニック植物に発育し得る。
【0071】
受容細胞への外因性DNAのデリバリーを行った後、次の工程は、一般的にさらなる培養および植物再生のための形質転換した細胞の同定に関する。形質転換体を同定する能力を改善するために、本発明により調製した形質転換ベクターと共に選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を利用することを望むことができ、これらのことは当該技術分野でよく知られている。この場合においては、ついで、一般的には、選択剤または複数の選択剤に細胞を曝露することによって潜在的に形質転換された細胞集団をアッセイするか、目的のマーカー遺伝子特性について細胞をスクリーニングするであろう。
【0072】
本発明により調製した構築物を用いた特定の植物表現型の直接的な形質転換に加えて、本発明の選択したDNAを有する植物を該DNAを欠いている第二の植物と交配することによってもトランスジェニック植物を作製し得る。植物育種技術を用いて、複数のデサチュラーゼ、例えばΔ6、Δ12および/またはΔ15−デサチュラーゼ(または複数のデサチュラーゼ)を単一の植物に導入することもできる。このようにして、Δ6−デサチュラーゼ反応の産物を効率的に増加し得る。Δ6−デサチュラーゼ遺伝子および/または他のデサチュラーゼ遺伝子(例えば、Δ12−および/またはΔ15−デサチュラーゼ遺伝子)につきホモ接合体である植物を創製することにより、有益な代謝を植物において増大させ得る。
【0073】
前記したように、選択したデサチュラーゼ遺伝子は、その所定の品種の植物を直接的に形質転換する必要なしに、交配によって特定の植物品種に導入し得る。したがって、本発明は、本発明に従って直接的に形質転換した植物または形質転換した細胞から再生した植物のみならず、かかる植物の子孫も包含する。本明細書中で用いる「子孫」とは、本発明により調製した親植物のいずれかの世代の子を示し、ここに子孫は本発明により調製した選択したDNA構築物を含む。本明細書に開示するように、植物を「交配」して、出発植物系統に対して1またはそれを超える付加したトランスジーンまたは対立遺伝子を有する植物系統を提供することは、出発系統を本発明のトランスジーンまたは対立遺伝子を含む受容植物系統と交配することによって特定の配列の植物系統への導入を生じる技術と定義される。このことを達成するために、例えば、以下の工程(または複数の工程)を行い得る:(a)第1(出発系統)および第2(目的のトランスジーンまたは対立遺伝子を含む受容植物系統)の親植物の植物種子;(b)第1および第2の親植物の種子を、花をつける植物まで生長させ;(c)第1の親植物からの花を第2の親植物からの花粉と受粉させ;ついで(d)受精した花をつけている親植物で生産された種子を収穫する。
【0074】
本明細書において、戻し交配とは、(a)目的の遺伝子、DNA配列またはエレメントを含む第1の遺伝子型の植物を、該目的の遺伝子、DNA配列またはエレメントを欠いている第2の遺伝子型の植物と交配し;(b)目的の遺伝子、DNA配列またはエレメントを含む1またはそれを超える子孫植物を選択し;(c)その子孫植物を第2の遺伝子型の植物に交配し;ついで(d)第1の遺伝子型の植物から第2の遺伝子型の植物に目的のDNA配列を移行するために、工程(b)および(c)を繰り返す。
【0075】
DNAエレメントを植物遺伝子型に遺伝子移入することは、戻し交配転換の結果として定義される。DNA配列が遺伝子移入された植物遺伝子型は、戻し交配転換された遺伝子型、系統、同系繁殖体または雑種ということができる。同様にして、目的のDNA配列を欠いている植物遺伝子型は、非転換遺伝子型、系統、同系繁殖体またはハイブリッドということができる。
【0076】
実施例
以下の実施例は、発明の形態を説明するために含めるものである。つづく実施例に開示する技術が、本発明者らによって発見された本発明の実施においてよく機能する技術を表すことは当業者によって理解されるべきである。しかしながら、本明細書の開示の観点から、当業者であれば、本発明の趣旨、意図および範囲から逸脱することなく、開示したおよびなお類似または同様の結果が得られる特定の形態に多くの変化を作成し得ることは理解する。さらに詳細には、化学的にも生理学的にも関係するある種の因子を、同一または同様の結果を達成しつつ本明細書に記載した因子と置き換え得ることは明らかであろう。当業者に明らかなすべてのかかる同様の置換および修飾は、添付する特許請求の範囲によって定義される発明の意図、範囲および趣旨の中にあると考えられる。
【0077】
実施例1
トウモロコシにおいてΔ15−およびΔ6−デサチュラーゼを発現させるためのベクター
バイナリーベクターを構築して、トウモロコシの胚およびアリューロン組織においてΔ15−デサチュラーゼおよびΔ6−デサチュラーゼを発現させた。この構築物は、突然変異導入してトウモロコシのような単子葉植物における発現を増大させたノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)のΔ15−デサチュラーゼ(配列番号:5)およびモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)のΔ6−デサチュラーゼ(配列番号:6、bp71−1444)(米国特許第6,075,183号)の発現を駆動するグロブリン・プロモーターを用いて構築した。エム・アルピナのΔ6−デサチュラーゼをグロブリン・プロモーターを含むシャトルベクターpMON67624にクローニングして、pMON82809を得た。突然変異導入したエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼをグロブリン・プロモーターを含むシャトルベクターpMON67624にクローニングして、pMON82810を得た。
【0078】
ついで、2のグロブリン−デサチュラーゼ発現カセットを、グリホセート抵抗性のCP4マーカー遺伝子を含むpMON30167トウモロコシ・バイナリーベクターにクローニングした。エム・アルピナのΔ6−サチュラーゼを含む第1の発現カセットをpMON30167にクローニングして、pMON82811を得た。ついで、突然変異導入したエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼを含む第2の発現カセットをpMON82811にクローニングして、トウモロコシ形質転換構築物pMON82812を得た(図1)。形質転換した外植体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換を介して得る。形質転換した組織から植物を再生する。ついで、温室で生育した植物を、油組成について分析する。
【0079】
もう1のバイナリーベクター、pMON78175を構築して、トウモロコシの胚およびアリューロン組織においてΔ15−デサチュラーゼおよびΔ6−デサチュラーゼを発現させた。バイナリーベクターを作製するために、グロブリン・プロモーター制御下のエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼ(配列番号:5)を含む発現カセットを、テンプレートとしてpMON82812を用いてPCR増幅し、シャトルベクターにクローニングし、ついでカセットの配列を確かめた。グロブリン・プロモーターによって駆動されるピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼ(配列番号:7)を含む発現カセットは、PCRによって作製した。このプロセスの一部として、ピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼのATG−開始コドンの直前のヌクレオチドをCAGCCに変化させて、トウモロコシのような単子葉植物における遺伝子発現に最適化した翻訳開始領域を作製した。当該技術分野でよく確立されている標準的な制限および連結手法を用いて、つづいてピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼおよびエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼを、選択マーカーとしてCP4発現カセットを保有するバイナリーベクターにクローニングしてトウモロコシ形質転換ベクター、pMON78175を作製した(図2)。形質転換した外植体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換を介して得る。形質転換した組織から植物を再生する。ついで、温室で生育した植物を、油組成について分析する。
【0080】
実施例2
トウモロコシにおいて単子葉植物配列最適化したプリミュラ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼを発現させるためのベクター
本実施例では、単子葉植物において発現させるために修飾したプリミュラ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼ・ポリヌクレオチド分子の設計および構築を記載する。非−内因性のタンパク質をコードする配列を植物において良好に発現させ得ないことはよく知られている(出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第5,880,275号)。したがって、本来のPjD6Dポリペプチド配列(配列番号:3)を用いて、1)高度に発現される単子葉植物タンパク質のものと同様の同義語コドン使用の偏りを用いることによって、および2)イン・プランタ(in planta)でmRNA安定性に影響することが以前に特徴付けられ、知られているRNA不安定化エレメント(米国特許第5,880,275号)を除去することによって、人工PjD6Dタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を設計および構築した。得られた修飾PjD6Dポリヌクレオチド配列は、PjD6Dnno(配列番号:8)と命名し、これは本来のPjD6Dポリペプチドと配列において同一であるポリペプチドをコードしている(配列番号:3)。
【0081】
バイナリーベクター、pMON78171を構築して、トウモロコシの胚およびアリューロン組織においてΔ15−デサチュラーゼおよび配列修飾したΔ6−デサチュラーゼを発現させた。バイナリーベクターを作製するために、グロブリン・プロモーター制御下のエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼ(配列番号:5)を含む発現カセットを、テンプレートとしてpMON82812を用いてPCR増幅し、シャトルベクターにクローニングし、ついでカセットの配列を確かめた。グロブリン・プロモーターによって駆動されるピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼ(配列番号:9)を含む発現カセットは、PCRによって作製した。このプロセスの一部として、ピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼのATG−開始コドンの直前のヌクレオチドをCAGCCに変化させて、トウモロコシのような単子葉植物における遺伝子発現に最適化した翻訳開始領域を作製した。当該技術分野でよく確立されている標準的な制限および連結手法を用いて、つづいてピイ・ジュリアのΔ6−デサチュラーゼおよびエヌ・クラッサのΔ15−デサチュラーゼを、選択マーカーとしてCP4発現カセットを保有するバイナリーベクターにクローニングしてトウモロコシ形質転換ベクター、pMON78171を作製した(図3)。形質転換した外植体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換を介して得る。形質転換した組織から植物を再生する。ついで、温室で生育した植物を、油組成について分析する。
【0082】
実施例3
脂肪酸分析
pMON82812を発現している成熟穀粒の脂肪酸組成を、トウモロコシ穀粒を挽きつぶし、ホモジネートをヘプタンで抽出することによって決定した。ヘプタン抽出物を、0.25mg/mlでトリヘプタデカノインを含有するトルエンおよびメタノール中のナトリウムメトキシド(0.6N)で処理した。塩化ナトリウム水溶液(10% wt/vol)を用いて反応を終結した。室温にて分配させた後に、その有機相をGLC(スプリット/スプリットレスのキャピラリー流入口(250℃)および炎イオン化検出器(270℃)を備えたHewlett Packard model 6890 (120ボルト)によって分析した。カラムは、0.25μmを有するSupelco 24077(外径0.25mm×長さ15m)に結合したポリエチレングリコール固定相とした。脂肪酸メチルエステルは、市販されている標準物と比較した保持時間によって同定する。定性的な重量%組成は、同定したピークの面積%として算出する。SDAおよびGLAを示した穀粒について分析した結果を表1に掲載する。GLAのみ含有する部分的に無効な穀粒は見出されなかった。全体として、分析した穀粒の2/3を超えるものがGLAおよびSDAを含有していた。pMON82812で形質転換した事象ZM 103111:@からの成熟穀粒の分析は、9.68%のSDAを示した。
【0083】
【表1−1】

【0084】
【表1−2】

【0085】
【表1−3】

【0086】
pMON78171で形質転換することによって作製した事象の脂肪酸分析を下記の表2に示す。成熟R1またはF1種子を前記と同様にしてその脂肪酸組成について分析し、平均脂肪酸組成は、無効を排除して、これらの数から算出した。ベクターpMON78171を用いて得た最良の事象は、平均で28.6%のSDAおよび2.2%のGLAを含有していた。最良の単一のトウモロコシ種子は、32.9%のSDAおよび3.5%のGLAを含有していた。
【0087】
【表2−1】

【0088】
【表2−2】

【0089】
【表2−3】

【0090】
pMON78175での形質転換によって作製した事象の脂肪酸分析を、以下の表3に示す。10の成熟R1またはF1種子を、前記と同様にその脂肪酸組成について分析した。最良の単一のトウモロコシ種子は12.4%のSDAおよび0%のGLAを含んでいた。
【0091】
【表3】

【0092】
本明細書に開示し、特許請求した組成物および/または方法の全ては作成することができ、また、本明細書の開示の見地から過度な実験を行うことなく実行することができる。本発明の組成物および方法は好ましい形態の観点から記載したが、本発明の種子、意図および範囲から逸脱しない範囲において、組成物および/または方法に、ならびに本明細書に記載した方法の工程または工程の順序に変化を加え得ることは当業者に明らかであろう。より詳細には、化学的にも生理学的にも関連するある種の因子を、同一または同様の結果を達成しつつ本明細書に記載した因子と置き換え得ることは明らかであろう。当業者に明らかなすべてのかかる同様の置換および修飾は、添付する特許請求の範囲によって定義される発明の意図、範囲および趣旨の中にあると考えられる。
【0093】
参考文献
以下に掲載する参考文献は、本明細書で用いた方法、技術および/または組成物を補充し、説明し、背景を提供し、または教示する範囲において参照して本明細書に取り込まれる。
米国特許第4,826,877号
米国特許第4,910,141号
米国特許第5,011,770号
米国特許第5,158,975号
米国特許第5,302,523号
米国特許第5,378,619号
米国特許第5,384,253号
米国特許第5,464,765号
米国特許第5,538,877号
米国特許第5,538,880号
米国特許第5,550,318号
米国特許第5,563,055号
米国特許第5,591,616号
米国特許第5,952,544号
米国特許第6,603,061号
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【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1はベクターpMON82812のマップを示す。
【図2】図2はベクターpMON78175のマップを示す。
【図3】図3はベクターpMON78171のマップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1%ないし約33%のステアリドン酸(18:4 n−3)含量を有する内因性トウモロコシ種子油。
【請求項2】
ステアリドン酸含量が、約12%ないし約15%、約10%ないし約33%、約15%ないし約32%、約20%ないし約30%、および約25%ないし約30%よりなる群から選択される請求項1記載のトウモロコシ種子油。
【請求項3】
約7.5%未満、約5%未満、および約3%未満よりなる群から選択される含量でガンマ−リノレン酸を含む請求項1記載のトウモロコシ種子油。
【請求項4】
ガンマ−リノレン酸に対するステアリドン酸の比が、約1:1ないし約10:1、約2:1ないし約10:1、約3:1ないし約5:1、および少なくとも約3:1よりなる群から選択される請求項1記載のトウモロコシ種子油。
【請求項5】
油中のオメガ−6脂肪酸に対するオメガ−3脂肪酸の比が、約0.5%:1ないし約10:1、約5:1ないし約10:1、および少なくとも約5:1よりなる群から選択される請求項1記載のトウモロコシ種子油。
【請求項6】
請求項1記載の種子油を含むトウモロコシ種子。
【請求項7】
同系繁殖種子である請求項6記載のトウモロコシ種子。
【請求項8】
雑種種子である請求項6記載のトウモロコシ種子。
【請求項9】
請求項1記載の種子油を産生するトウモロコシ植物。
【請求項10】
同系繁殖植物である請求項6記載のトウモロコシ植物。
【請求項11】
雑種植物である請求項6記載のトウモロコシ植物。
【請求項12】
(a) 配列番号:8の核酸配列を含むポリヌクレオチド;
(b)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で配列番号:8にハイブリダイズし、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(c)配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、炭素6で脂肪酸分子を脱飽和化するデサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(d)(a)、(b)または(c)の配列の相補体
よりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
さらに、配列番号:9の核酸配列を含む請求項12記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項12記載の単離されたポリヌクレオチドを含む組換え構築物。
【請求項15】
請求項14記載の組換え構築物で形質転換したトランスジェニック植物。
【請求項16】
請求項9記載の植物が該種子油を産生するまで、該植物を該植物の成長条件下で生育することを含む種子油を生産する方法。
【請求項17】
請求項1記載のトウモロコシ種子油を食用製品に添加することを含む、ヒトまたは非−ヒト動物の消費用の食用製品の栄養価を上昇する方法。
【請求項18】
食用製品が、ヒト食物、動物飼料および食物補充物よりなる群から選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
トウモロコシ種子油が食用製品のステアリドン酸含量を増加する請求項17記載の方法。
【請求項20】
トウモロコシ種子油が、食用製品のオメガ−6脂肪酸に対するオメガ−3脂肪酸の比を上昇する請求項17記載の方法。
【請求項21】
食用製品が、トウモロコシ種子油を添加する前にステアリドン酸を欠いている請求項17記載の方法。
【請求項22】
出発成分に請求項1記載のトウモロコシ種子油を添加して食物および/または飼料を生産することを含む、食物および/または飼料を製造する方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法によって製造された食物または飼料。
【請求項24】
請求項1記載のトウモロコシ種子油をヒトまたは非−ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非−ヒト動物にステアリドン酸を提供する方法。
【請求項25】
トウモロコシ種子油を食用組成物で投与する請求項24記載の方法。
【請求項26】
食用組成物が食物または飼料である請求項25記載の方法。
【請求項27】
食物が、飲料、注入食物、ソース、香辛料、サラダドレッシング、フルーツジュース、シロップ、デザート、アイシングおよびフィリング(icing and filling)、軟質冷凍製品、菓子または中間水分食物を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
食用組成物が伴侶動物用の食物または飼料である請求項26記載の方法。
【請求項29】
食用組成物が実質的に液体または固体である請求項25記載の方法。
【請求項30】
食用組成物が食物補充物および/またはニュートラシューティカルである請求項25記載の方法。
【請求項31】
トウモロコシ種子油をヒトに投与する請求項24記載の方法。
【請求項32】
トウモロコシ種子油を非−ヒト動物に投与する請求項24記載の方法。
【請求項33】
トウモロコシ種子油を家畜または家禽に投与する請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−533310(P2007−533310A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508551(P2007−508551)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/012778
【国際公開番号】WO2005/102310
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】