説明

トナーカートリッジ及びこのトナーカートリッジを用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置

【課題】バネ力を大きくしなくとも、トナーカートリッジ又はプロセスカートリッジの輸送中の振動や画像形成装置本体への装着時の振動に起因して発生するギアの歯飛び、白抜けを解消し得るトナーカートリッジを提供する。
【解決手段】本発明のトナーカートリッジは、トナーを感光体に供給してその表面にトナー画像を作像する現像ローラ12と、現像ローラ12にトナーを供給するトナー補給部14とを少なくとも有する。現像ローラ用ギア23と感光体用ギア22とが噛み合わされ、バネ20の付勢力により現像ローラ12が感光体3に接触される。また、現像ローラ用ギア23と感光体用ギア22とが噛み合わされて現像ローラ12が感光体の駆動力により駆動される。現像ローラ12が感光体から離間する方向にスライド変位するのを規制するスライド変位規制部材21’が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーカートリッジ及びこのトナーカートリッジを用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式の画像形成装置には、現像剤としてトナーを用い、現像ローラを円筒状の感光体に押し付けることにより、トナーを感光体の周面に付着させてトナー像を形成する接触現像方式が知られている。
【0003】
この種の画像形成装置では、トナーカートリッジが、トナーを感光体に供給して感光体表面にトナー画像を作像する現像ユニット部と、この現像ユニット部にトナーを供給するトナー補給部とから少なくとも構成されているものがある。また、このトナーカートリッジに感光体ユニットを一体化して構成されたプロセスカートリッジも知られている。
【0004】
その現像ローラは、現像ユニット部に搭載されている。現像ローラの端部には現像ローラ用ギヤが設けられている。現像ユニット部の駆動力は、この現像ローラ用ギアを感光体の端部に設けられている感光体ローラ用ギアに直接噛み合わせることにより得ている。
【0005】
その現像ローラの両端部は、面板に付勢兼用軸受け部材を介して支承されている。その付勢兼用軸受け部材は面板にスライド可能に設けられている。その軸受け部材は、その現像ローラが感光体に接近する方向にバネにより付勢されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のトナーカートリッジでは、感光体に対して現像ユニット部がスライド可能に構成され、現像ローラ用ギアと感光体用ギアとが直接連結され、現像ローラの回転駆動力が感光体の回転駆動力により得られる構成である。従って、トナーカートリッジ又はプロセスカートリッジの輸送中や画像形成装置本体への挿入時に両ギアの噛み合いが外れ、このため、ギヤの歯飛びが発生するおそれがある。
【0007】
また、トナーカートリッジ又はプロセスカートリッジの輸送中の振動やトナーカートリッジの画像形成装置本体への挿入時の振動により、感光体と現像ローラとの軸間距離が大きくなると、以下に説明する不具合が生じる。
【0008】
すなわち、感光体と現像ローラとの軸間距離が大きくなると、このトナーカートリッジ又はプロセスカートリッジが装着された画像形成装置を用いて画像形成を行った場合、本来、塗りつぶして画像が形成されるべき箇所の一部に白い部分が残る現象、すなわち、画像の中に白く抜けた部分が発生するおそれがある。これを、以下、白抜けという。
【0009】
この歯飛びや白抜けを防止するためには、感光体に対する現像ユニット部の押圧力を大きくすれば良いと考えられている。
しかし、感光体に対する現像ユニット部の押圧力を大きくすると、使用中に現像ローラの回転により感光体が削られ、これにより、感光体の寿命が減少する。
【0010】
また、不使用中、現像ローラが感光体の同じ箇所に常時接触し、この感光体の現像ローラへの接触部が現像ローラにより押圧されるので、感光体の接触部が軸方向に窪み、この画像形成装置を用いて画像形成を行った場合、いわゆる横スジが発生する現象を生じるおそれもある。
【0011】
更に、感光体に対する現像ローラの押圧力を大きくすると、これに伴って、バネ力が必然的に大きくなり、その分、トナーカートリッジ、又は、プロセスカートリッジが大型化するという問題もある。
【0012】
特許文献1には、感光体に対する現像ローラの押圧力を安定化させることを目的として、感光体用ローラギアと現像ローラ用ギアとの噛み合いにより現像ローラに加わる力の方向に対して、現像ユニットのスライド方向、すなわち、現像ローラのスライド方向を90度に設定することにより、現像ローラの感光体に対する押圧力変化を抑制している。
【0013】
しかし、この特許文献1には、上述した理由により発生するいわゆる歯飛びや白抜けを解消する技術は開示されていない。
また、特許文献1は、この問題点を解決しようとしたときに発生する現像ローラの変形による画像不良の発生を回避する技術、ひいては、感光体の長寿命化に貢献し得る技術を提供するものでもない。
【0014】
本発明の目的は、現像ローラを感光体に押しつけるバネ力を大きくしなくとも、トナーカートリッジ又はプロセスカートリッジの輸送中の振動や画像形成装置本体への装着時の振動に起因して発生するギアの歯飛び、白抜けを解消し得るトナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、トナーを感光体ユニットの感光体に供給して感光体の表面にトナー画像を作像する現像ローラを有する現像ユニット部と、該現像ユニット部に前記トナーを供給するトナー補給部とから少なくとも構成され、前記現像ローラの回転軸が軸受け部材に回転可能に支承され、前記現像ローラの回転軸に現像ローラ用ギアが設けられ、前記感光体の回転軸に感光体用ギアが設けられ、前記現像ローラは前記感光体に向かう方向にスライド可能かつ回転可能に支承され、バネの付勢力により前記現像ローラが前記感光体に接触されると共に、前記現像ローラ用ギアと前記感光体用ギアとが噛み合わされて前記現像ローラが前記感光体の駆動力により駆動されるトナーカートリッジにおいて、
前記現像ローラが前記感光体から離間する方向にスライド変位するのを規制するスライド変位規制部材が設けられ、前記現像ローラの回転軸と前記スライド変位規制部材との間に隙間が設けられ、該隙間が前記現像ローラ用ギアのピッチ円の直径と該現像ローラ用ギアの歯先円の直径との差の二分の一と、前記感光体用ギアのピッチ円の直径と該感光体用ギアの歯先円の直径との差の二分の一との和以内であることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、トナーを感光体ユニットの感光体に供給して感光体の表面にトナー画像を作像する現像ローラを有する現像ユニット部と、該現像ユニット部に前記トナーを供給するトナー補給部とから少なくとも構成され、前記現像ローラの回転軸が軸受け部材に回転可能に支承され、前記現像ローラの回転軸に現像ローラ用ギアが設けられ、前記感光体の回転軸に感光体用ギアが設けられ、前記現像ローラは前記感光体に向かう方向にスライド可能かつ回転可能に支承され、バネの付勢力により前記現像ローラが前記感光体に接触されると共に、前記現像ローラ用ギアと前記感光体用ギアとが噛み合わされて前記現像ローラが前記感光体の駆動力により駆動されるトナーカートリッジにおいて、
前記現像ローラが前記感光体から離間する方向にスライド変位するのを規制するスライド変位規制部材が設けられ、前記現像ローラの回転軸の軸受け部材と前記スライド変位規制部材との間に隙間が設けられ、該隙間が前記現像ローラ用ギアのピッチ円の直径と該現像ローラ用ギアの歯先円の直径との差の二分の一と、前記感光体用ギアのピッチ円の直径と該感光体用ギアの歯先円の直径との差の二分の一との和以内であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のトナーカートリッジにおいて、前記現像ローラのスライド方向が前記感光体用ギアと前記現像ローラ用ギアとの噛み合いにより現像ローラに加わる力の方向に対して90度であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のトナーカートリッジにおいて、前記現像ローラの表面と前記感光体ローラの表面とが接するときに、前記隙間がなくなるように、かつ、画像形成時には前記隙間が生じるように、前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のトナーカートリッジにおいて、前記現像ユニットと前記感光体ユニットとを位置決めする面板を有し、前記面板と一体に前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のトナーカートリッジにおいて、前記現像ユニットと前記感光体ユニットとを位置決めする面板を有し、前記軸受け部材と一体に前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のトナーカートリッジにおいて、前記スライド変位規制部材が柔軟部材から構成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のトナーカートリッジにおいて、前記スライド変位規制部材が、前記現像ローラの延びる方向両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のトナーカートリッジと前記感光体ユニットとが一体に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るトナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置は、現像ユニットが感光体から離間する方向のスライド変位量が規制されているので、現像ローラを感光体に押しつけるバネ力を大きくしなくとも、トナーカートリッジ又はプロセスカートリッジの輸送中の振動や画像形成装置本体への装着時の振動に起因して発生するギアの歯飛び、白抜けを解消し得るトナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を提供できる。
【0022】
また、感光体の長寿命化や保管時に発生する現像ローラの変形による画像不良が発生しないトナーカートリッジを小型で安価な構成で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明に係る電子写真装置本体の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は図1に示すトナーカートリッジの概略構成を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るプロセスカートリッジの要部構成を示す断面図である。
【図4】図4は本発明に係るプロセスカートリッジの要部構成を示す側面図である。
【図5】図5は図3に示す軸受け部材の斜視図である。
【図6】図6は図3に示す現像ローラ用ギアと感光体用ギアとの噛み合い関係を示す概要図である。
【図7】図7は従来のプロセスカートリッジの概要を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の実施例に係るプロセスカートリッジの概要を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施例に係るプロセスカートリッジの変形例を示す模式図である。
【図10】図10は本発明に係るプロセスカートリッジの更に他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
以下、本発明に係るトナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置の実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1は画像形成装置本体としてのモノクロ式の電子写真装置本体を中央から断面して示す概略構成図である。
【0025】
(画像形成装置本体の概略構成及び概略の作動説明)
まず、画像形成装置本体の概略構成及び電子写真装置本体の概略の作動について説明する。
その図1において、符号1は電子写真装置本体を示している。
電子写真装置本体1には、機枠の略中央部にトナーカートリッジ2が配置されている。トナーカートリッジ2の上方には、感光体3に潜像を形成するための露光装置4が配置されている。
【0026】
トナーカートリッジ2の下方には転写ローラ5が設置されている。転写ローラ5の下方には記録媒体用紙を積載・収容する給紙カセット6が配置されている。符号7は給紙装置、8は定着器、9は排紙装置、10は排紙トレーである。
【0027】
トナーカートリッジ2は、図2に拡大して模式的に示すように、トナーを感光体ユニット11の感光体3に供給して感光体3の表面にトナー画像を作像する現像ローラ12を有する現像ユニット部13と、この現像ユニット部13にトナーを供給するトナー補給部14とから少なくとも構成される。なお、現像ローラ12は感光体3によって回転駆動される。
【0028】
ここでは、トナーカートリッジ2は、感光体ユニット11と一体化されて、プロセスカートリッジ15を構成している。その感光体ユニット11には、図2に拡大して示すように、帯電ローラ16、クリーニングブレード17、図示を略す除電装置が設けられている。
そのプロセスカートリッジ15は電子写真装置本体1に対して、図1に示す矢印A方向から着脱可能とされている。
【0029】
記録媒体用紙は給紙装置7から感光体3と転写ローラ5との間に向かって送られる。感光体3は、ここでは、図2に示す矢印B方向に回転され、感光体3はその表面の感光層が帯電ローラ16によって、一様に高電位に帯電される。なお、感光体3、現像ローラ12の回転駆動については後述する。
【0030】
その感光体3の感光層は露光装置4により図2に示すように破線で示す光線によって選択的に露光され、露光により電位が低下した低電位部と露光されなかった高電位部とにより、感光体3の表面に静電潜像が形成される。
【0031】
ついで、感光体3の矢印B方向の回転により、感光体3の静電潜像が形成された部分が現像ローラ12に対向する箇所に達すると、現像ローラ12からトナーが感光体3の感光層に転移されて、静電潜像が顕像化され、感光体3の表面にトナー像が形成される。
【0032】
その感光体3の表面に付着したトナー像は、図1に示す転写ローラ5によって感光体3と転写ローラ5との間を通過中の記録媒体用紙に転写される。その記録媒体用紙は定着器8に導かれ、その記録媒体用紙にトナー像が加熱・加圧により定着される。
その後、トナー像が定着された記録媒体用紙は、排紙装置9により排紙トレー10に排出される。
【0033】
感光体3のトナー像の転写後、その感光体3の回転中にその感光体3の表面に残留するトナーがクリーニングブレード17によってクリーニングされ、図示を略す除電装値によって感光体3の表面に残留する残留電荷が除去され、次のトナー像の形成準備がされる。
【0034】
(トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジの駆動部の構成)
プロセスカートリッジ15は、図3、図4に示すように、その左右に現像ユニット部13と感光体ユニット11とを位置決めする面板17a、17bを有する。その左右の面板17a、17bには、軸受け部材15a、15bが設けられている。
感光体3は回転軸3aを有する。その回転軸3aの両端部は軸受け部材15a、15bに回転可能に支承され、感光体3は面板17a、17bに位置決め支持される。
【0035】
トナーカートリッジ2は、図2に示すように、ハウジング18を有する。図3には、符号18a、18bで示すように、そのトナーカートリッジ2のハウジング18の一部を構成する左右の支持板がそれぞれ示されている。その支持板18a、18bには、軸受け部材19a、19bが設けられている。
【0036】
現像ローラ12は、図2、図3に示すように、回転軸12aを有する。その回転軸12aの両端部は軸受け部材19a、19bに回転可能に支承される。面板17a、17bには、図4に示すように、スライド溝17cが形成されている。
【0037】
支持板18a、18bには、図3、図4に示すように、スライド溝17cにスライド可能に嵌合するガイド突起18cが形成されている。トナーカートリッジ2は面板17a、17bに対して、図4に示す矢印C方向にスライド可能とされている。
【0038】
面板17a、17bには、係止ピン17c’が突設され、この係止ピン17c’との間にバネ20が掛け渡されている。トナーカートリッジ2はこのバネ20の付勢力によって感光体3に接近する方向に付勢されている。
【0039】
面板17a、17bには、軸受け部材設置用の凹処が形成され、この凹処に図5に示す軸受け部材21が図示を略す取付けネジ等により固定されている。その軸受け部材21は、回転軸をスライド可能に支承する支承面21aと、後述するスライド変位規制部材21’として機能するスライド変位規制面21bとを有する。
【0040】
感光体3の回転軸3aの一端部には、感光体用ギア22が取り付けられ、現像ローラ12の回転軸12aの一端部には、現像ローラ用ギア23が取り付けられている。
その感光体用ギア22と現像ローラ用ギア23とは直接噛み合わされ、感光体用ギア22は電子写真装置本体1の図示を略す駆動源により回転駆動され、その回転力が現像ローラ用ギア23に伝達される。
【0041】
スライド変位規制面21bは、現像ローラ12が感光体3から離間する方向にスライド変位するのを規制する。その現像ローラ12の回転軸12aとスライド変位規制面21bとの間には隙間hが設けられている。
【0042】
この実施例では、隙間hは、図6に示すように現像ローラ用ギア23のピッチ円25の直径D1と現像ローラ用ギア23の歯先円26の直径D2との差の二分の一((D2−D1)/2)と、感光体用ギア22のピッチ円27の直径D3と感光体用ギア22の歯先円28の直径D4との差の二分の一((D4−D3)/2)との和以内である。
【0043】
支承面21aは、トナーカートリッジ2のスライド方向Cと平行とされている。通常、感光体用ギア22と現像ローラ用ギア23との噛み合いにより現像ローラ12に加わる力Fの方向は、図6に示すように、両ピッチ円25、27の共通接線Kに対して約20度であるので、支承面21aの角度がこの力Fの方向に対して90度となるように、軸受け部材21は面板17a、17bに固定される。
【0044】
ここでは、軸受け部材21にスライド変位規制部材21’を一体に構成しているが、これに限らるものではなく、スライド変位規制部材21’を軸受け部材21とは別の構成として面板17a、17bに設けてもよい。
【0045】
図7、図8はそのトナーカートリッジ2の感光体3に対する模式図であり、図7は従来のトナーカートリッジ2の構成を示す説明図、図8は本発明に係るトナーカートリッジ2の実施例の構成を示す説明図である。
【0046】
現像ローラ12は弾性材料から構成されているので、感光体3に接触する接触式のプロセスカートリッジ15では、図7、図8に示すように、距離d1だけ食い込みを生じることになるが、力Fの方向に対して直交する矢印C方向に、トナーカートリッジ2がスライド変位する構成であるので、力Fの分力に起因する感光体3の経時的変形の発生が防止される。
【0047】
また、図7に示す従来構成のプロセスカートリッジ15では、電子写真装置本体1への装着する際に、トナーカートリッジ2の現像ユニット部分を手で持って電子写真装置本体1に挿入するため、感光体ユニット11の重さによりトトナーカートリッジ2が感光体ユニット11から離間する方向にスライドする。
【0048】
このため、図7に示すように、スライド変位規制部材21’が設けられていないプロセスカートリッジ15では、電子写真装置本体1にプロセスカートリッジ15を装着した後、電子写真装置本体1を駆動して画像形成を行う場合、現像ローラ用ギア23と感光体用ギア22との間で歯飛び現象が発生するおそれがある。
【0049】
図7に示す従来構成のプロセスカートリッジ15では、この歯飛びを防止するため、トナーカートリッジ2を付勢するバネ20の強さを画像形成に必要な強さよりも大きくすることにより、現像ローラ用ギア23と感光体用ギア22との噛み合いの確実化を図り、ギアの歯飛びを防止している。
【0050】
しかし、バネ20の力を大きくすると、現像ローラ12による感光体3の削れが大きくなることによる寿命の減少や、放置時の現像ローラ12の感光体3への接触部の変形が発生し、また、横筋等の画像不良が生じる。更に、バネを大きくしなければならないため、プロセスカートリッジ15が大型化する。
【0051】
これに対して、図8に示す本発明の実施例に係るプロセスカートリッジ15では、回転軸12aとスライド変位規制面21bとの間に隙間hが設けられているので、感光体3から離間する方向のスライド変位が可能であり、かつ、そのスライド変位量が回転軸12aとスライド変位規制面21bとの接触により規制されている。
【0052】
しかも、その隙間hが(D2−D1)/2+(D4−D3)/2よりも小さいか等しく設定されている。従って、感光体3から離間する方向に現像ローラ12がスライド変位した場合でも、現像ローラ用ギア23と感光体用ギア22との噛み合い精度を確保できる。
【0053】
すなわち、バネ20の力を大きくしなくとも、ギアの歯飛びを防止でき、ひいては、小型で安価なプロセスカートリッジ15を提供できる。
また、スライド変位規制面21bを軸受け部材21と一体に形成したので、プロセスカートリッジ15を安価に製作できる。
【0054】
(変形例)
図8に示すプロセスカートリッジ15によれば、既述したように、現像ローラ12の回転軸12aとスライド変位規制面21bとの間の隙間hが現像ローラ用ギア23のピッチ円25の直径D1と現像ローラ用ギア23の歯先円26の直径D2との差の二分の一と、感光体用ギア22のピッチ円27の直径D3と感光体用ギア22の歯先円28の直径D4との差の二分の一との和以内であれば、電子写真装置本体1への挿入時にプロセスカートリッジ15を手で持ち挿入したとしても、ギアの歯飛びが発生する現象が生じるのを防止できる。
【0055】
図9は図8に示すプロセスカートリッジ15の変形例を示す模式図である。この変形例では、実線で示すように、現像ローラ12の表面12’と感光体3の表面3’とが接するときに、隙間hが「0」となるように、すなわち、スライド変位規制面21bと回転軸12aとの間の隙間がなくなり互いに接触するように、かつ、画像形成時には、破線で示すように現像ローラ12の表面12’が感光体3の表面3’に押圧されて、実線で示すスライド変位規制面21bと破線で示す現像ローラ12の回転軸12aとの間に隙間h’が生じるように、スライド変位規制面21bを軸受け部材21に一体に設ける構成とすれば、スライド変位規制面21bを設けたにもかかわらず、画像形成時にはスライド変位規制面21bと現像ローラ12の回転軸12aとが接触することなく現像ローラ12を回転させることができ、かつ、現像ローラ12が感光体3から離間して非接触状態になることにより生じる画像の白抜けを確実に防止できる。
【0056】
(他の変形例)
この変形例では、図10に示すように、スライド変位規制面21bを有するスライド変位規制部材21’が軸受け部材21と別の材料を用いて軸受け部材21に形成されている。例えば、スライド変位規制部材21’の材料には、ゴム等の柔らかい柔軟部材が用いられる。
【0057】
スライド変位規制部材21’を柔軟部材により構成すれば、電子写真装置本体1への挿入時や、トナーカートリッジ2の輸送時に現像ユニット部13がスライド変位してスライド変位規制部材21’に衝突することによる衝撃を緩和でき、トナーカットリッジ2を構成する部品の破損等を防止できる。
【0058】
以上、実施例では、スライド変位規制部材21’を、現像ローラ12の延びる方向の両側に設ける構成として説明した。このように構成すれば、画像の白抜け等の画像不良の発生を確実に防止できるからであるが、現像ローラ12の延びる方向の片側にのみスライド変位規制部材21’を設けても良い。
【0059】
また、以上の実施例では、現像ローラ12の回転軸12aとスライド変位規制部材21’との間の隙間hが現像ローラ用ギア23のピッチ円25の直径D1と現像ローラ用ギア23の歯先円26の直径D2との差の二分の一と、感光体用ギア22のピッチ円27の直径D3と感光体用ギア22の歯先円28の直径D4との差の二分の一との和以内としたが、現像ローラ12の回転軸12aの軸受け部材21とスライド変位規制部材21’とを別々の構成にしてスライド変位規制部材21’を面板17a、17bに設け、軸受け部材21を面板17a、17bに対してスライド可能とし、このスライド変位規制部材21’と軸受け部材21との間に隙間hを設け、この隙間hが現像ローラ用ギア23のピッチ円25の直径D1と現像ローラ用ギア23の歯先円26の直径D2との差の二分の一と、感光体用ギア22のピッチ円27の直径D3と感光体用ギア22の歯先円28の直径D4との差の二分の一との和以内とする構成であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
3…感光体
12…現像ローラ
14…トナー補給部
20…バネ
21’…スライド変位規制部材
22…感光体用ギア
23…現像ローラ用ギア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2008−139818号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを感光体ユニットの感光体に供給して感光体の表面にトナー画像を作像する現像ローラを有する現像ユニット部と、該現像ユニット部に前記トナーを供給するトナー補給部とから少なくとも構成され、前記現像ローラの回転軸が軸受け部材に回転可能に支承され、前記現像ローラの回転軸に現像ローラ用ギアが設けられ、前記感光体の回転軸に感光体用ギアが設けられ、前記現像ローラは前記感光体に向かう方向にスライド可能かつ回転可能に支承され、バネの付勢力により前記現像ローラが前記感光体に接触されると共に、前記現像ローラ用ギアと前記感光体用ギアとが噛み合わされて前記現像ローラが前記感光体の駆動力により駆動されるトナーカートリッジにおいて、
前記現像ローラが前記感光体から離間する方向にスライド変位するのを規制するスライド変位規制部材が設けられ、前記現像ローラの回転軸と前記スライド変位規制部材との間に隙間が設けられ、該隙間が前記現像ローラ用ギアのピッチ円の直径と該現像ローラ用ギアの歯先円の直径との差の二分の一と、前記感光体用ギアのピッチ円の直径と該感光体用ギアの歯先円の直径との差の二分の一との和以内であることを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項2】
トナーを感光体ユニットの感光体に供給して感光体の表面にトナー画像を作像する現像ローラを有する現像ユニット部と、該現像ユニット部に前記トナーを供給するトナー補給部とから少なくとも構成され、前記現像ローラの回転軸が軸受け部材に回転可能に支承され、前記現像ローラの回転軸に現像ローラ用ギアが設けられ、前記感光体の回転軸に感光体用ギアが設けられ、前記現像ローラは前記感光体に向かう方向にスライド可能かつ回転可能に支承され、バネの付勢力により前記現像ローラが前記感光体に接触されると共に、前記現像ローラ用ギアと前記感光体用ギアとが噛み合わされて前記現像ローラが前記感光体の駆動力により駆動されるトナーカートリッジにおいて、
前記現像ローラが前記感光体から離間する方向にスライド変位するのを規制するスライド変位規制部材が設けられ、前記現像ローラの回転軸の軸受け部材と前記スライド変位規制部材との間に隙間が設けられ、該隙間が前記現像ローラ用ギアのピッチ円の直径と該現像ローラ用ギアの歯先円の直径との差の二分の一と、前記感光体用ギアのピッチ円の直径と該感光体用ギアの歯先円の直径との差の二分の一との和以内であることを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項3】
前記現像ローラのスライド方向が前記感光体用ギアと前記現像ローラ用ギアとの噛み合いにより前記現像ローラに加わる力の方向に対して90度であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトナーカートリッジ。
【請求項4】
前記現像ローラの表面と前記感光体ローラの表面とが接するときに、前記隙間がなくなるように、かつ、画像形成時には前記隙間が生じるように、前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のトナーカートリッジ。
【請求項5】
前記現像ユニットと前記感光体ユニットとを位置決めする面板を有し、前記面板と一体に前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のトナーカートリッジ。
【請求項6】
前記現像ユニットと前記感光体ユニットとを位置決めする面板を有し、前記軸受け部材と一体に前記スライド変位規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトナーカートリッジ。
【請求項7】
前記スライド変位規制部材が柔軟部材から構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のトナーカートリッジ。
【請求項8】
前記スライド変位規制部材が、前記現像ローラの延びる方向両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のトナーカートリッジ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のトナーカートリッジと前記感光体ユニットとが一体に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−113184(P2012−113184A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263113(P2010−263113)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】