説明

トラクタ

【課題】クラッチ装置を切り操作した時点で作業装置及びPTO軸が保有する回転エネルギーを電力などの形に変換することで再利用することが可能なトラクタを提供する。
【解決手段】作業装置を連結可能なPTO軸25と、原動機によって駆動される入力軸18,31からPTO軸25への入力を入り切り操作するクラッチ装置27とを設け、PTO軸25の外周に外嵌配置された回転子56と、回転子56と径方向で対向可能な固定子57とからなる発電装置60を設け、クラッチ装置27による切り操作に基づいて回転子56と固定子57とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、クラッチ装置27による入り操作に基づいて発電状態を解除する回生制御手段70を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を連結可能なPTO軸と、原動機によって駆動される入力軸から前記PTO軸への入力を入り切り操作するクラッチ装置とを備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のトラクタに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたトラクタでは、PTO軸の出力部に耕耘装置などの作業装置を連結し、クラッチ装置を入り操作して走行させることで圃場での耕耘作業などを行うことができ、クラッチ装置を切り操作することで作業装置の作動を休止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−270975号公報(0027段落、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記されたトラクタでは、作業装置を用いた作業状態からクラッチ装置を切り操作した場合、作業装置は自らの質量に基づく慣性による空転状態としておくか、PTO軸に設けた制動装置によって回転を停止するほかないため、いずれの場合にも、クラッチ装置を切り操作した時点で作業装置が保有する回転エネルギーは全く回収されないままであった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるトラクタが与える課題に鑑み、クラッチ装置を切り操作した時点で作業装置及びPTO軸が保有する回転エネルギーを電力などの形に変換することで再利用することが可能なトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるトラクタの特徴構成は、
作業装置を連結可能なPTO軸と、原動機によって駆動される入力軸から前記PTO軸への入力を入り切り操作するクラッチ装置とを備え、
前記PTO軸の外周に外嵌配置された回転子と、前記回転子と径方向で対向可能な固定子とからなる発電装置を備え、
前記クラッチ装置による切り操作に基づいて前記回転子と前記固定子とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、前記クラッチ装置による入り操作に基づいて前記発電状態を解除する回生制御手段を備えている点にある。
【0007】
上記の特徴構成によるトラクタでは、クラッチ装置による切り操作に基づいて回転子と固定子とが互いに対向して相対回転する発電状態とされるので、作業装置を駆動させている状態からクラッチ装置を切り操作した時点で、作業装置が保有する回転エネルギーによって発電装置が発電状態となる。発電された電力は例えばトラクタに搭載している充電式バッテリの充電などに用いることで利用できる。
また、回転子と固定子との間に発生する回転抵抗により作業装置の回転を少なくとも減衰させることができる。
【0008】
また、クラッチ装置による入り操作に基づいて発電状態すなわち回転子と固定子とが互いに対向して相対回転する状態が解除されるので、原動機の駆動力によって作業装置を駆動しているとき、原動機が互いに対向した回転子と固定子との間に生じる相対回転抵抗を余分に負担するといった問題が抑制される。
【0009】
本発明の他の特徴構成は、前記回生制御手段が、前記クラッチ装置に対する切り操作に基づいて前記回転子を前記PTO軸と共回り可能とし、前記クラッチ装置に対する入り操作に基づいて前記回転子を前記PTO軸と相対回転自在にする操作機構を備えている点にある。
【0010】
本構成であれば、クラッチ装置に対する入り操作に基づいて、回転子はPTO軸に対して相対回転自在の状態となるので、作業装置を駆動させている最中のPTO軸に対しては回転子の質量が実質的に関与しない。したがって、クラッチ装置に対する入り切り操作と無関係に回転子がPTO軸と一体回転される構成に比べて、作業装置を駆動させている間の原動機に対する負荷が少なくて済む。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、前記クラッチ装置が、前記入力軸と前記PTO軸の双方と係合した係合位置と、前記PTO軸にのみ係合した係合解除位置との間で切り換え操作可能なクラッチ部材を備え、
前記操作機構は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子と係合することで、前記回転子と前記PTO軸とを共回りさせる操作片を有する点にある。
【0012】
本構成であれば、クラッチ部材を入り切り操作するべく一般にトラクタの運転席などに配置されたクラッチ操作用のレバーの入り切り操作に基づいて簡単に回生制御手段を発電状態と非発電状態との間で切り替えることが可能となる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記操作片は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて、軸心方向で移動することで前記回転子の一方の端面と軸心方向で係合するように、前記PTO軸に対して外嵌配置された環状の摩擦板を有する点にある。
【0014】
本構成であれば、摩擦板を軸心方向に沿って僅かに変位させるだけで、クラッチ部材が摩擦板を回転子の端面と係合させた係合位置と、摩擦板が回転子の端面から離れた係合解除位置との間での切り換えが可能となる。したがって、例えば2つのスプライン要素を軸心方向に沿って相対移動させることで係合/係合解除させる形態の操作片に比べて、PTO軸の軸心に沿った外形寸法を小さくし易い。
また、クラッチ装置を切り操作された後で作業装置を制動するための機構として一般に従来のトラクタに備えられている摩擦板を回生制御手段として利用することができて有利である。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記操作片は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子と係合するように、前記クラッチ部材の一部から延出された係止部を有する点にある。
【0016】
本構成であれば、摩擦板を介して回転力を伝達する機構に比べて、確実な係合状態を維持するために必要な付勢力が小さくて済むか不要となる。また、摩擦板を用いた構成に比べて、部品の摩耗が少なくメンテナンスが容易となる。
さらに、この構成でもやはり、クラッチ装置による入り操作に基づいてクラッチ部材と回転子との係合が解除され、発電状態すなわち回転子と固定子とが互いに対向して相対回転する状態が解除されるので、原動機の駆動力によって作業装置を駆動しているとき、原動機が互いに対向した回転子と固定子との間に生じる相対回転抵抗を余分に負担するといった問題が抑制される。
【0017】
本発明の他の特徴構成は、前記クラッチ装置が、前記入力軸と前記PTO軸の双方の外周と係合した係合位置と、前記PTO軸の外周とのみ係合した係合解除位置との間で切り換え操作されるクラッチ部材を備え、
前記回生制御手段が、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子を前記固定子と対向した発電位置に配置し、前記クラッチ部材の前記係合解除位置から前記係合位置への切り換えに基づいて前記回転子を前記固定子から軸心方向に外れた非発電位置に変位させるように、前記クラッチ部材と前記回転子とを連結する支持部材を有する点にある。
【0018】
本構成であれば、クラッチ装置を切り操作すると、クラッチ部材と連結された回転子が固定子と対向した発電位置に来て発電可能な状態となり、クラッチ装置を入り操作すると、回転子が固定子から軸心方向に外れた非発電位置となる。
【0019】
すなわち、本構成の場合は、回生制御手段の入り切り操作に関しては、常にクラッチ部材と連結された回転子が、固定子と対向した発電位置と固定子から軸心方向に外れた非発電位置との間で移動するのみである。すなわち、クラッチ部材の位置変更に基づいて2つのスプライン要素を軸心方向に沿って係合/係合解除させる操作片、或いは、回転子の一方の端面と軸心方向で係合する摩擦板などの機械的に係合される要素がないため、非常に静寂な回生制御手段が得られる。
尚、この構成でも、クラッチ部材を入り切り操作するべく一般にトラクタの運転席などに配置されたクラッチ操作用のレバーの入り切り操作に基づいて簡単に回生制御手段を発電状態と非発電状態との間で切り替えることが可能となる。
【0020】
本発明の他の特徴構成は、前記回転子の前記入力軸と離間した側の端面と対向する固定摩擦部材が設けられており、前記クラッチ部材の前記係合解除位置よりも更に前記入力軸から軸心方向に離間した制動位置への切り換えに基づいて、前記クラッチ部材と前記固定摩擦部材とが係合されるように構成されている点にある。
【0021】
特にPTO軸のための制動装置を設けなくても、作業装置及びPTO軸の回転速度は、発電装置を構成する固定子と回転子との間で発電中に生じる相対回転抵抗によって減衰される。しかし、本構成であれば、クラッチ部材を制動位置に切り換えるという簡単な操作によって、回転中の作業装置及びPTO軸を積極的に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】第1実施形態による伝動構造の縦断側面図である。
【図3】伝動構造のギヤトレインを示す側面図である。
【図4】クラッチ入り状態のPTOクラッチを示す縦断側面図である。
【図5】クラッチ切り(回生)状態のPTOクラッチを示す縦断側面図である。
【図6】クラッチ切り(制動)状態のPTOクラッチを示す縦断側面図である。
【図7】第2実施形態による伝動構造の作用を示す縦断側面図である。
【図8】第3実施形態による伝動構造の作用を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(トラクタの全体構成)
図1に、本発明に係るトラクタの一例として四輪駆動型の農用トラクタの全体側面が示されている。この農用トラクタは、エンジン1(原動機の一例)の後部に連結されたクラッチハウジング2と、ミッションケース3とが板金製のハウジングフレーム4を介して連結されて機体ボディが構成された構造となっている。エンジン1の下部から前方に延出された前フレーム5に操向用の前輪6を備えた前車軸ケース7がローリング自在に支持されるとともに、ミッションケース3の後部に後輪8が装着されている。
【0024】
ミッションケース3は、前部ケース3fとミッドケース3mとデフケース3dとを連結して構成されており、デフケース3dの左右に後輪8が軸支されている。
デフケース3dの上部に連結されたシリンダケース10によって油圧駆動されるリフトアーム9が、作業装置連結用の3点リンク機構11の昇降操作を行う。
デフケース3dの後面からリヤPTO軸12が後ろ向きに突設配備され、ミッドケース3mの下面に連結された動力取出しケース3cにはミッドPTO軸13が支承されている。
【0025】
(伝動構造の構成)
図2に示すように、前部ケース3fの内部には主ギヤ変速部15と前後進切換え部16とが組み込まれ、ミッドケース3mの内部に副ギヤ変速部17が組み込まれている。
主ギヤ変速部15は、入力軸18に入力されたエンジン動力を3段変速して中間軸19に伝達し、前後進切換え部16は、中間軸19の変速動力を正転あるいは逆転して出力軸20に伝達するよう構成されており、前部ケース3fの内部で前進3段、後進3段の主変速を行うことができる。
【0026】
詳述すると、主ギヤ変速部15の入力軸18には、小径遊転ギヤG1と大径遊転ギヤG2が装着され、小径及び大径遊転ギヤG1,G2の間に中径のシフトギヤG3がスプライン装着され、中間軸19には、小径遊転ギヤG1および大径遊転ギヤG2にそれぞれ常時咬合する大径ギヤG4と小径ギヤG5、および、シフトギヤG3に咬合可能な中径ギヤG6が固設されている。
【0027】
シフトギヤG3を前方位置にシフトして小径遊転ギヤG1のボス部にスプライン咬合させることで、小径遊転ギヤG1と大径ギヤG4を介して中間軸19に低速(第1速)での動力伝達がなされ、シフトギヤG3を前後中間位置にシフトして中径ギヤG6に直接咬合させることで中間軸19に中速(第2速)での動力伝達がなされ、シフトギヤG3を後方位置にシフトして大径遊転ギヤG2のボス部にスプライン咬合させることで、大径遊転ギヤG2と小径ギヤG5を介して中間軸19に高速(第3速)での動力伝達がなされる。
【0028】
出力軸20には、中間軸19のギヤG7に常時咬合する正転伝達用遊転ギヤG8と、中間軸19のギヤG9に逆転ギヤG10(図3を参照)を介して常時咬合連動された逆転伝達用遊転ギヤG11とが備えられており、出力軸20にスプライン嵌合したシフトスリーブSをシフトして正転伝達用遊転ギヤG8のボス部、あるいは、逆転伝達用遊転ギヤG11のボス部に選択咬合させることで、中間軸19の変速動力が正転あるいは逆転して出力軸20に伝達される。
【0029】
副ギヤ変速部17は、出力軸20に突き合わせ連結された伝動軸21と出力軸22との間で3段の変速を行い、出力軸22の後端に備えたベベルピニオンギヤGpを介してデフ機構Dを駆動し、左右の後輪8を差動駆動するように構成されている。
【0030】
詳述すれば、伝動軸21の前後には大径遊嵌ギヤG12と小径遊嵌ギヤG13が装着されるとともに、大径及び小径遊嵌ギヤG12,G13の間でシフト操作されるシフトギヤG14がスプライン装着されている。ベベルピニオン軸22には大径遊嵌ギヤ12に常時咬合する小径ギヤG15、小径遊嵌ギヤG13に常時咬合する大径ギヤG16、および、シフトギヤG14に直接咬合可能な中径ギヤG17が固着されている。
【0031】
シフトギヤG14を後方にシフトしてそのボス部を小径遊嵌ギヤG13のボス部に咬合連結することで、小径遊嵌ギヤG13と大径ギヤG16のギヤ比での伝動によって「低速」がもたらされる。シフトギヤG14を前後中間位置にまでシフトして中径ギヤG17に直接咬合させることで、シフトギヤG14と中径ギヤG17とのギヤ比での伝動によって「中速」がもたらされる。シフトギヤG14を前方にシフトしてそのボス部を大径遊嵌ギヤG12のボス部に咬合連結することで、大径遊嵌ギヤ12と小径ギヤG15とのギヤ比での伝動によって「高速」がもたらされる。
【0032】
上記のようにして変速されるベベルピニオン軸22の前端部には前輪6への動力伝達用の出力ギヤG18が固着されるとともに、前部ケース3fとミッドケース3mとに亘って前輪駆動用伝動軸23(図3を参照)が貫通支架され、この前輪駆動用伝動軸23から取出された動力が前輪伝動構造(不図示)を介して前車軸ケース7(図1を参照)に軸伝達されるようになっている。
【0033】
前輪駆動用伝動軸23の後端部にはシフトギヤG19がスプライン嵌着されており、このシフトギヤG19を前方にシフトしてベベルピニオン軸22の出力ギヤG18に咬合させることで、後輪駆動速度と同調した速度の前輪駆動用動力を前輪駆動用伝動軸23から取り出す四輪駆動状態がもたらされる。また、シフトギヤG19を後方にシフトして出力ギヤG18との咬合を解除することで、前輪6の駆動を断って後輪8のみによる後二輪駆動状態がもたらされるようになっている。
【0034】
(PTO伝動系の構成)
前部ケース3fの上部に貫通支承された入力軸18の後端と、前部ケース3fおよびミッドケース3mに亘って支承されたPTO系伝動軸25(PTO軸の一例)とが同心に突き合せ配備され、その突き合わせ部位に設けられた一方向クラッチ26およびPTOクラッチ27を介して、入力軸18とPTO系伝動軸25とが連動連結されている。PTO系伝動軸25の後端には中継伝動軸28が同心に連結され、この中継伝動軸28の後端部に設けた小径ギヤG20とリヤPTO軸12に設けた大径ギヤG21とが咬合され、走行系とは独立してリヤPTO軸12が定速駆動されるようになっている。
【0035】
図4に示すように、一方向クラッチ26は、入力軸18の後端部に前後スライド可能にスプライン装着されるとともにバネ29で後方にスライド付勢された駆動側の第1クラッチ部材30と、PTO系伝動軸25の前端部に軸心方向に変位不能に遊嵌装着された従動側の伝動部材31(入力軸の一例)とで構成されており、第1クラッチ部材30と伝動部材31の突き合わせ対向端において互いが傾斜爪係合部32を介して咬合連動されている。傾斜爪係合部32は、従動側の伝動部材31が第1クラッチ部材30をバネ29に抗して前方に押し退け変位させながら、第1クラッチ部材30に対して入力軸回転方向に先行回転できるように爪傾斜方向が設定されているため、入力軸18がPTO伝動系からの逆駆動によって回転されることが防止される。
【0036】
すなわち、回転慣性の大きい作業装置がPTO動力で回転駆動される場合などに、主クラッチを切って走行を停止するとともにPTOクラッチ27によってPTO伝動系への伝動を停止しても、作業装置の回転慣性で入力軸18が駆動されて、走行が続行されてしまうという事態が未然に回避されている。
【0037】
図4に示すように、エンジン1によって駆動される入力軸18からPTO系伝動軸25への入力を入り切り操作するPTOクラッチ27(クラッチ装置の一例)は、一方向クラッチ26の従動側に配備された伝動部材31と、PTO系伝動軸25に遊嵌支持された伝動カラー33と、この伝動カラー33に前後スライド可能にスプライン外嵌された第2クラッチ部材34(クラッチ部材の一例)とからなる噛み合いクラッチとを備えている。
第2クラッチ部材34は、リンク機構(不図示)を介して、運転部横側に立設配備されたPTOクラッチレバー48と連動連結されており、PTOクラッチ27の入り切り操作は、このPTOクラッチレバー48を前後に揺動操作することで実現される。
【0038】
第2クラッチ部材34を前方位置(「クラッチ入り」操作位置)にスライド移動させて、伝動部材31と伝動カラー33とに亘って係合させることで、伝動部材31から伝動カラー33への動力伝達を行う「クラッチ入り」状態がもたらされ、第2クラッチ部材34を後方位置(「クラッチ切り」操作位置)にスライド移動させて伝動部材31との係合を解除することで、伝動部材31から伝動カラー33への動力伝達を遮断する「クラッチ切り」状態がもたらされる。図4は第2クラッチ部材34が「クラッチ入り」操作位置に位置した状態を示している。
【0039】
このトラクタでは、第2クラッチ部材34の後方位置として、比較的前方の第1後方位置OFF1と、第1後方位置OFF1よりも更に後方の第2後方位置OFF2とが設定されており、第2クラッチ部材34の第1後方位置OFF1(回生位置)へのスライド移動に連動して作業装置とPTO系伝動軸25の慣性回転を発電エネルギーの形で回収し、第2クラッチ部材34の第2後方位置OFF2(制動位置)へのスライド移動に連動してPTO系伝動軸25と作業装置の回転を積極的に制動するPTO回生制動装置36Aが設けられている。PTO回生制動装置36Aの詳細な構成については後述する。
【0040】
(PTOモード選択機構)
図4に示すように、PTO回生制動装置36Aの後方にPTOモード選択機構40が配備されている。PTOモード選択機構40によって、伝動カラー33に伝達されたPTO動力をリヤPTO軸12にのみ伝達するリヤ伝動モードと、PTO動力をミッドPTO軸13にのみ伝達するミッド伝動モードと、PTO動力をリヤPTO軸12とミッドPTO軸13に伝達するデュアル伝動モードとの間での択一的な選択が可能となる。
【0041】
図2に示すように、ミッドPTO軸13はミッドケース3mの下面に連結された動力取出しケース3cに支承されており、PTO系伝動軸25の後部に遊嵌した出力ギヤG22から取り出されたPTO動力がミッドPTO軸13にギヤ伝達されるようになっている。つまり、出力ギヤG22は、前輪駆動用伝動軸23(図3を参照)に遊嵌したギヤG23(図3を参照)を介して走行系の伝動軸21に遊嵌したギヤG24に咬合連動され、このギヤG24に一体化したギヤG25が中間支軸39に遊嵌したギヤG26を介してミッドPTO軸13に一体形成したギヤG27に咬合連動されるようになっている。
【0042】
PTOモード選択機構40は、伝動カラー33の内周にスプライン嵌合されたシフト部材41を前後にシフトすることでPTO動力の取出しモードを上記のように選択するよう構成したものであり、シフト部材41を最も前方位置にシフト操作すると、シフト部材41がその内周においてPTO系伝動軸25のスプライン部25aにのみ咬合された状態となり、PTOクラッチ27を介して伝動カラー33に伝達された中継伝動軸28を経てリヤPTO軸12にのみ伝達される(リヤ伝動モード)。
【0043】
他方、シフト部材41を前後中間位置にシフト操作すると、シフト部材41がPTO系伝動軸25のスプライン部25aと出力ギヤG22のボス部に亘ってスプライン咬合された状態となり、PTOクラッチ27を介して伝動カラー33に伝達された動力がリヤPTO軸12に伝達されるとともにミッドPTO軸13にも伝達される(デュアル伝動モード)。
【0044】
シフト部材41を最も後方位置にシフト操作すると、シフト部材41が出力ギヤ22のボス部にのみスプライン咬合された状態となり、PTOクラッチ27を介して伝動カラー33に伝達された動力はミッドPTO軸13にのみ伝達される(ミッド伝動モード)。
【0045】
(PTO回生制動装置)
PTO回生制動装置36Aは、PTO系伝動軸25(PTO軸の一例)の外周に相対回転自在に且つ軸心方向に移動自在に外嵌配置された環状の回転子56と、この回転子56と径方向で対向可能な環状の固定子57とからなる発電装置60、及び、PTOクラッチ27による切り操作に基づいて回転子56と固定子57とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、PTOクラッチ27による入り操作に基づいて発電状態を解除する回生制御手段70とを備えている。
【0046】
回転子56は、複数枚の電磁鋼板を互いに積層して得られ着磁により外周面にN極とS極が交互に2組形成されている。尚、環状磁石を用いずに、外周面がN極とS極である個々の磁石を交互に配置して構成することもでき、N極とS極の極数も任意である。
固定子57は、複数枚の電磁鋼板を互いに積層したものをミッドケース3mの内周面に固定しており、その外周には銅線を巻回したコイル57Aが取り付けられている。コイル57Aの両端部はトラクタに載置された充電制御部(不図示)などと電気的に接続されている。
【0047】
より具体的には、回生制御手段70は、回転子56を前後から挟むような位置で伝動カラー33に外嵌配置された第1摩擦板58A(操作片の一例)と第2摩擦板58Bとを有する。第1摩擦板58Aは第2クラッチ部材34と回転子56との間に介装され、第2摩擦板58Bは回転子56と伝動カラー33の後端付近に固定されたストップ板33Aとの間に介装されている。第1摩擦板58Aと第2摩擦板58Bとはいずれも環状を呈しており、PTO系伝動軸25に対して、伝動カラー33の外周部に対するスプライン係合により、相対回転不能に且つ軸心方向に沿って相対移動自在に設けられている。
【0048】
また、回生制御手段70は、伝動カラー33に外嵌配置される形態で第2クラッチ部材34と第1摩擦板58Aとの間に介装された第1コイルバネ38Aと、第2摩擦板58Bとストップ板33Aとの間に介装された第2コイルバネ38Bとを有する。第2コイルバネ38Bの付勢力は第1コイルバネ38Aの付勢力を十分に上回るように構成されている。
【0049】
(PTO作業モード)
図4に例示されるように、PTO作業モードの実現のために、第2クラッチ部材34が「クラッチ入り」操作のための前方位置(ON)にある状態では、PTOモード選択機構40がリヤ伝動モードまたはデュアル伝動モードであれば、伝動カラー33に伝達されたPTO動力がリヤPTO軸12に伝達されるため、リヤPTO軸12に連結された耕耘装置などの作業装置が駆動される。
【0050】
第2クラッチ部材34がこの前方位置(ON)にある状態では、外力の付与されていない第1コイルバネ38Aと第2コイルバネ38Bの長さの合計が、第2クラッチ部材34から回転子56の前端に接当させた第1摩擦板58Aまでの距離と回転子56の後端に接当させた第2摩擦板58Bからストップ板33Aまでの距離との合計を下回るように構成されている。
【0051】
すなわち、図4に例示されるように、第2クラッチ部材34が前方位置(ON)にある間は、第1コイルバネ38Aや第2コイルバネ38Bは圧縮変形されない自由長に近い状態であり、これらのバネの付勢力が及ばないため、回転子56は第1及び第2摩擦板58A,58Bや伝動カラー33に対して自由に相対移動可能な状態であり、伝動カラー33が回転しても回転子56は実質的に静止した状態となる。したがって、回転子56を固定子57に対して相対回転させる動力が得られず、発電装置60による発電も行われない。また、回転子56はPTO系伝動軸25に対しても相対回転自在な状態が維持されるため、回転子56の質量がエンジン1に対する負荷の一部を構成する虞もない。
【0052】
(発電モード)
次に、図5に例示されるように、第2クラッチ部材34が「クラッチ切り」操作のための第1後方位置(OFF1:回生位置、係合解除位置の一例)にスライド操作されると、回転子56は、第1、第2コイルバネ38A,38Bの付勢力によって第1摩擦板58Aと第2摩擦板58Bの間に挟着されるため、伝動カラー33及びPTO系伝動軸25と一体回転する発電モードとなる。したがって、作業装置とPTO系伝動軸25の慣性回転によって、回転子56が固定子57に対して強制的に相対回転させられ、作業装置とPTO系伝動軸25の慣性回転力が発電装置60による発電エネルギーの形で回収される。そして、作業装置とPTO系伝動軸25の回転は、回転子56と固定子57の間に発生する回転抵抗によって減衰される。
【0053】
すなわち、第1及び第2摩擦板58A,58Bと第1及び第2コイルバネ38A,38Bとは、第2クラッチ部材34と協働して、PTOクラッチ27に対する切り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と共回り可能とし、PTOクラッチ27に対する入り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と相対回転自在にする操作機構を構成している。
また、第1摩擦板58Aは、第2クラッチ部材34の前方位置(ON)から第1後方位置(OFF1)への切り換えに基づいて回転子56と係合することで、回転子56とPTO系伝動軸25とを共回りさせる操作片を構成している。
【0054】
(制動モード)
さらに、図6に例示されるように、第2クラッチ部材34が第1後方位置(OFF1)よりも更に後方の第2後方位置(OFF2)にスライド操作されると、回転子56が第1、第2コイルバネ38A,38Bの付勢力によって伝動カラー33及びPTO系伝動軸25と一体回転する状態は維持されたまま、回転子56の後端面がミッドケース3mの内面に固定された環状のPTO制動体35(固定摩擦部材の一例)に押付けられた制動モードとなる。すなわち、回転子56とPTO制動体35の間の摩擦によって、第2クラッチ部材34とPTO制動体35とが、それらの中間に位置する伝動カラー33と回転子56と第1及び第2摩擦板58A,58Bとを介して実質的に係合され、PTO系伝動軸25と作業装置の回転が積極的に制動される。
【0055】
第2クラッチ部材34の前方位置(ON)と第1後方位置(OFF1)と第2後方位置(OFF2)との間での切り換えは、運転部横側に立設配備されたPTOクラッチレバー48の操作によって実現される。より具体的には、PTOクラッチレバー48が前方位置に操作されていると、第2クラッチ部材34は前方位置(ON)となって、PTO作業モードが得られる。PTOクラッチレバー48が中間位置に操作されていると、第2クラッチ部材34は第1後方位置(OFF1)となり、発電装置60による発電が可能な状態となる。PTOクラッチレバー48が後方位置に操作されていると、第2クラッチ部材34は第2後方位置(OFF2)となり、PTO系伝動軸25と作業装置の回転が積極的に制動される。
【0056】
回生制御手段70を介して発電装置60によって得られた電力はトラクタに搭載された通常のバッテリ、或いは、PTO回生制動装置36Aに対応して専用に設置されたバッテリに充電することで、エンジン用のセルモータやエンジン冷却用のファンモータの駆動を始めとする様々な用途に用いることができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態によるPTO回生制動装置36Bを示す。
ここでも、PTO回生制動装置36Bは、PTO系伝動軸25の外周に相対回転自在に且つ軸心方向に移動自在に外嵌配置された環状の回転子56と、この回転子56と径方向で対向可能な環状の固定子57とからなる発電装置60、及び、PTOクラッチ27による切り操作に基づいて回転子56と固定子57とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、PTOクラッチ27による入り操作に基づいて発電状態を解除する回生制御手段71とを備えている。
【0058】
この第2実施形態による回生制御手段71では、第2クラッチ部材34の後端一部から後方にオス型スプライン状の係止部34A(操作片の一例)が延出され、回転子56の内面にメス型スプライン状の被係止部56Aが設けられている。
また、第1実施形態に記された環状の第1摩擦板58A及び第1コイルバネ38Aは省略されているが、第1実施形態の第2コイルバネ38Bに相当する部材は残されており、第2摩擦板58Bの位置に単なる中間板59が配置されている。但し、回転子56と中間板59と第2コイルバネ38Bとストップ板33Aとは互いに固定されており、ストップ板33Aを含めた4部材の全てが伝動カラー33に対して相対回転自在に外嵌配置されている。
【0059】
すなわち、図7(a)に示すように、PTO作業モードの実現のために、第2クラッチ部材34が前方位置(ON)にあるときは、第2クラッチ部材34のオス型スプライン状の係止部34Aは、回転子56のメス型スプライン状の被係止部56Aから前方寄りに退避されているため、回転子56は、中間板59、第2コイルバネ38B及びストップ板33Aと共に、伝動カラー33に対して相対移動可能な状態となる。したがって、回転子56を固定子57に対して相対回転させる動力が得られず発電装置60による発電も行われない。また、回転子56はPTO系伝動軸25に対しても相対回転自在な状態が維持され、伝動カラー33の回転中も回転子56は静止状態を保持できるため、回転子56の質量がエンジン1に対する負荷の一部を構成することもない。
【0060】
次に、図7(b)に例示されるように、第2クラッチ部材34が「クラッチ切り」操作のための第1後方位置(OFF1:回生位置、係合解除位置の一例)にスライド操作されると、第2クラッチ部材34の係止部34Aは、中間板59と第2コイルバネ38Bとによって後方から支持されている回転子56の内面に進入して被係止部56Aと径方向で係合する。回転子56は、係止部34Aと被係止部56Aの間の係止状態に基づいて、伝動カラー33及びPTO系伝動軸25と一体回転する発電モードとなる。
【0061】
すなわち、第2クラッチ部材34の係止部34Aと回転子56の被係止部56Aと中間板59と第2コイルバネ38Bとは、第2クラッチ部材34と協働して、PTOクラッチ27に対する切り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と共回り可能とし、PTOクラッチ27に対する入り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と相対回転自在にする操作機構を構成している。
また、第2クラッチ部材34の係止部34Aは、第2クラッチ部材34の前方位置(ON)から第1後方位置(OFF1)への切り換えに基づいて回転子56と係合することで、回転子56とPTO系伝動軸25とを共回りさせる操作片を構成している。
【0062】
さらに、図7(c)に例示されるように、第2クラッチ部材34が第2コイルバネ38Bの付勢力に抗して第1後方位置(OFF1)よりも更に後方の第2後方位置(OFF2)にスライド操作されると、回転子56が、係止部34Aと被係止部56Aの間の係止状態に基づいて、伝動カラー33及びPTO系伝動軸25と一体回転する状態は維持されたまま、回転子56の後端面の外側がミッドケース3mの内面に固定された環状のPTO制動体35(固定摩擦部材の一例)に押付けられた制動モードとなる。すなわち、回転子56とPTO制動体35の間の摩擦によって、第2クラッチ部材34とPTO制動体35とが、それらの中間に位置する回転子56を介して実質的に係合され、PTO系伝動軸25と作業装置の回転が積極的に制動される。
【0063】
この第2実施形態は、回生制御手段71が、PTOクラッチ27に対する切り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と共回り可能とし、PTOクラッチ27に対する入り操作に基づいて回転子56をPTO系伝動軸25と相対回転自在にする操作機構を備えている点において、第1実施形態と共通である。
また、第2実施形態は、PTOクラッチ27が、入力軸18とPTO系伝動軸25の双方と間接的に係合した係合位置と、PTO系伝動軸25にのみ係合した係合解除位置との間で切り換え操作可能な第2クラッチ部材34を備え、操作機構は、第2クラッチ部材34の係合位置から係合解除位置への切り換えに基づいて回転子56と係合することで、回転子56とPTO系伝動軸25とを共回りさせる操作片(第2クラッチ部材34の係止部34A)を有する点においても、第1実施形態と共通である。
【0064】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態によるPTO回生制動装置36Cを示す。ここでは、PTO回生制動装置36Cは、第2クラッチ部材34の後端から後方に延出された筒状の支持部材34Bを備え、発電装置60は、支持部材34Bの外周に固定された環状の回転子56とミッドケース3mの内面に支持された固定子57とで構成されている。
【0065】
ここでも、PTO回生制動装置36Cは、PTOクラッチ27による切り操作に基づいて回転子56と固定子57とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、PTOクラッチ27による入り操作に基づいて発電状態を解除する回生制御手段72を備えている。
すなわち、図8(a)に示すように、PTO作業モードの実現のために、第2クラッチ部材34が前方位置(ON)にあるときは、支持部材34Bに支持された回転子56は固定子57から軸心方向に沿って前方に離間した状態となるので、発電装置60による発電は行われない。
【0066】
次に、図8(b)に例示されるように、第2クラッチ部材34が「クラッチ切り」操作のための第1後方位置(OFF1:回生位置の一例)にスライド操作されると、第2クラッチ部材34の支持部材34Bに支持された回転子56は固定子57と径方向で向かい合うことで発電モードが実現される。
【0067】
さらに、図8(c)に例示されるように、第2クラッチ部材34が第2コイルバネ38Bの付勢力に抗して第1後方位置(OFF1)よりも更に後方の第2後方位置(OFF2)にスライド操作されると、回転子56と固定子57とが径方向でほぼ向かい合う状態のまま、回転子56の後端面の外側がミッドケース3mの内面に固定された環状のPTO制動体35(固定摩擦部材の一例)に押付けられた制動モードとなる。すなわち、回転子56とPTO制動体35の間の摩擦によって、第2クラッチ部材34とPTO制動体35とが、それらの中間に位置する回転子56を介して実質的に係合され、PTO系伝動軸25と作業装置の回転が積極的に制動される。
【0068】
本発明の各実施形態によるPTO回生制動装置36A,36B,36Cは、原動機としてエンジン1のみを搭載した上記のトラクタばかりでなく、原動機としてエンジン1と電動モータとを備えたハイブリッド型トラクタや、原動機として電動モータのみを搭載した電動トラクタにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
原動機としてエンジンのみを搭載した内燃機関式トラクタ、原動機としてエンジンと電動モータとを備えたハイブリッド型トラクタ、原動機として電動モータのみを搭載した電動トラクタにおいて、クラッチ装置を切り操作した時点で作業装置及びPTO軸が保有する回転エネルギーを電力などの形に変換することで再利用することを可能にする技術として適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジン(原動機)
18 入力軸
25 PTO系伝動軸(PTO軸)
27 PTOクラッチ(クラッチ装置)
31 伝動部材(入力軸)
34 第2クラッチ部材(クラッチ部材)
34A 係止部(操作片、操作機構)
34B 支持部材(操作片、操作機構)
35 PTO制動体(固定摩擦部材)
36A PTO回生制動装置(第1実施形態)
36B PTO回生制動装置(第2実施形態)
36C PTO回生制動装置(第3実施形態)
38A 第1コイルバネ(回生制御手段)
38B 第2コイルバネ(回生制御手段)
56 回転子
56A 被係止部
57 固定子
58A 第1摩擦板(摩擦板、操作機構)
58B 第2摩擦板
60 発電装置
70 回生制御手段(第1実施形態)
71 回生制御手段(第2実施形態)
72 回生制御手段(第3実施形態)
ON 前方位置(係止位置)
OFF1 第1後方位置(回生位置、係合解除位置)
OFF2 第2後方位置(回生位置、制動位置、係合解除位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を連結可能なPTO軸と、原動機によって駆動される入力軸から前記PTO軸への入力を入り切り操作するクラッチ装置とを備え、
前記PTO軸の外周に外嵌配置された回転子と、前記回転子と径方向で対向可能な固定子とからなる発電装置を備え、
前記クラッチ装置による切り操作に基づいて前記回転子と前記固定子とが互いに対向して相対回転する発電状態とし、前記クラッチ装置による入り操作に基づいて前記発電状態を解除する回生制御手段を備えているトラクタ。
【請求項2】
前記回生制御手段が、前記クラッチ装置に対する切り操作に基づいて前記回転子を前記PTO軸と共回り可能とし、前記クラッチ装置に対する入り操作に基づいて前記回転子を前記PTO軸と相対回転自在にする操作機構を備えている請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記クラッチ装置が、前記入力軸と前記PTO軸の双方と係合した係合位置と、前記PTO軸にのみ係合した係合解除位置との間で切り換え操作可能なクラッチ部材を備え、
前記操作機構は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子と係合することで、前記回転子と前記PTO軸とを共回りさせる操作片を有する請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記操作片は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて、軸心方向で移動することで前記回転子の一方の端面と軸心方向で係合するように、前記PTO軸に対して外嵌配置された環状の摩擦板を有する請求項3に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記操作片は、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子と係合するように、前記クラッチ部材の一部から延出された係止部を有する請求項3に記載のトラクタ。
【請求項6】
前記クラッチ装置が、前記入力軸と前記PTO軸の双方の外周と係合した係合位置と、前記PTO軸の外周とのみ係合した係合解除位置との間で切り換え操作されるクラッチ部材を備え、
前記回生制御手段が、前記クラッチ部材の前記係合位置から前記係合解除位置への切り換えに基づいて前記回転子を前記固定子と対向した発電位置に配置し、前記クラッチ部材の前記係合解除位置から前記係合位置への切り換えに基づいて前記回転子を前記固定子から軸心方向に外れた非発電位置に変位させるように、前記クラッチ部材と前記回転子とを連結する支持部材を有する請求項1に記載のトラクタ。
【請求項7】
前記回転子の前記入力軸と離間した側の端面と対向する固定摩擦部材が設けられており、前記クラッチ部材の前記係合解除位置よりも更に前記入力軸から軸心方向に離間した制動位置への切り換えに基づいて、前記クラッチ部材と前記固定摩擦部材とが係合されるように構成されている請求項3から6のいずれか一項に記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18408(P2013−18408A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154222(P2011−154222)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】