説明

トラックの吸気ダクトの取り付け構造とその取り付け方法

【課題】導風板なし及び導風板付きトラックの吸気ダクトを安全、容易にルーフ取り付けできる取付構造とその取り付け方法の提供を目的としている。
【課題手段】キャブ(32)の後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部(37)を有し、その開口部(37)からの吸気を導くためにキャブ(32)の後部を下方に延びる吸気ダクトを有するトラックの吸気ダクトの取り付け構造において、開口部(37)近傍のキャブ(32)のルーフ(34)上方に立設したピン(10)と、そのピン(10)の外周に嵌着する弾性材ブッシュ(20)と、その弾性材ブッシュ(20)を嵌着するために吸気ダクト(6)に設けられた嵌着孔(7c)と、で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックのキャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びる吸気ダクトの取り付け構造とその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明をよく理解するために、まず本発明が適用されるトラックについて図15を参照して説明する。
図15は、箱形状のバン40を荷台に設けたトラック30である。トラック30の前部にあるキャブ32の上部に導風板38が設けられている。導風板38は、箱形状のバン40の前部にあたる走行風圧抵抗を軽減するための装置である。したがって、図15に示した箱形状のバン40以外の、例えば平ボディー荷台車、ダンプ車、ミキサ車等の各種作業車等には装着されない。
図示の例ではキャブ32の左後側方に、ほぼ鉛直に、エンジンにエアを供給する吸気ダクト(キャブバックダクト)36が取り付けられている。キャブバックダクト36の上部に、側方に開口した開口部37が設けられている。
【0003】
本発明は、導風板を有するトラックと導風板を有しないトラックのいずれにも適用できるので、まず図13、図14を参照して、導風板のない平ボディー荷台車、各種作業車等にキャブバックダクト36が取り付けられた状態を説明する。
キャブバックダクト36のキャブ32への取り付けは、開口部37近傍のルーフ34への取り付け(固定点A)と、ダクト部36aのキャブバック32への2か所(固定点B、C)である。固定点A、B、Cは何れも円柱状のラバーブッシュを介して弾性的に支持されている。
【0004】
図17、図18は、従来のキャブバックダクト36の取り付けの態様を示し、キャブバックダクト36の上方の固定点Aの取り付け状態を示している。
図17、図18において、ルーバ付き4角状の開口部37が、接続部37aを介してダクト部36aに接続されている。
開口部37の背部の壁部46に、取り付け部材47を取り付けるための孔46aが設けられている。
その取り付け部材47は、壁部46に接する4角ワッシャと、両端に取り付けボルトを有する円柱状のラバーブッシュ48とL字状ステー49とが1体となって構成されている。
【0005】
キャブバックダクト36をルーフ34に取り付けるに際して、まず、この取り付け部材47を壁部46にナットNで固定する。ナットNによる固定は、開口部37に設けられたルーバ37bをはずして行う。ついで、図17に示すように、ルーフ34に設けられたステー50にボルトBでL字状ステー49をねじ止めして、キャブバックダクト36をルーフ34に取り付ける。
以上のように取り付け部材47の壁部46への面倒な固定のほかに、取り付け部材47を付けたキャブバックダクト36のルーフ34への取り付けは、目視が困難でかつ、高所作業のため面倒で不安全でもある。
以上は導風板のない場合であり、導風板付きではさらに以下のような課題がある。
【0006】
図16は、キャブ32のルーフ34に、導風板38が設けられた状態を示している。導風板38は、導風板38の内部の左右に取り付けられた導風板ステー39(図示では右のみ表示)によってルーフ34に固定されている。
上記のような、導風板38及びキャブバックダクト36の配置構成では、キャブバックダクト36の開口部37近傍と、導風板38とがきわめて密な配置状態になっている。
【0007】
したがって、導風板38を、キャブルーフ34に取り付けることが面倒な構成である。
この面倒さを構造的に軽減するために、図16の導風板ステー39(図示の例では左側)の開口部37近傍に別個の取り付け部材を設けている例がある。
しかし、この方法であっても、導風板38のルーフ34への取り付け、導風板ステー39に取り付けた別個の取り付け部材へのキャブバックダクト36の取り付け、は容易ではない。特に高所であること、及び取り付け空間が狭いこと、から専用工具を手探りで使用するので面倒で不安全な作業であった。
【0008】
キャブに吸気ダクトを取り付ける構造については、吸気に際してのバックパネルの共振を避ける従来技術が提案されている(特許文献1)。また、吸気の開口部に、走行によって生じる負圧を減少するための従来技術が提案されている(特許文献2)。しかし、いずれも前記の課題を解決するものではない。
【特許文献1】特開平5−75462号公報
【特許文献2】特開平6−37554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、吸気ダクトを安全、容易にルーフに取り付けできる取付構造と、その取り付け方法の提供を目的としている。
さらに、導風板付きトラックに、吸気ダクトを安全、容易にルーフに取り付けできる吸気ダクトの取り付け構造と、その取り付け方法の提供を別の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の、トラックの吸気ダクトの取り付け構造は、キャブ32の後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部37を有し、その開口部37からの吸気を導くためにキャブ32の後部を下方に延びる吸気ダクトを有するトラックの吸気ダクトの取り付け構造において、前記開口部37近傍をキャブ32のルーフ34上方に取り付けるためにルーフ34上方に立設したピン10と、そのピン10の外周に嵌着される弾性材ブッシュ20と、その弾性材ブッシュ20を嵌着するために吸気ダクト6に設けられたブッシュ嵌着孔7cと、で構成されている(請求項1)。
本発明の実施は、吸気ダクト、ルーフのいずれも従来の形状を変えることなく実施できる。
ここで、吸気ダクトはキャブバックダクトを指している。
【0011】
本発明の、トラックの吸気ダクトの取り付け方法は、キャブ32の後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部37を有し、その開口部37からの吸気を導くためにキャブ32の後部を下方に延びる吸気ダクトを有するトラックの吸気ダクトの取り付け方法において、前記開口部37近傍のキャブ32のルーフ34上方に前記ピン10を立設し、前記ピン10を立設する前または立設した後に前記ピン10に対応する吸気ダクト6の取り付け位置に弾性材ブッシュ20を嵌着したブッシュ嵌着孔7cを形成した吸気ダクト6を準備し、前記弾性材ブッシュ20を嵌着した吸気ダクト6を前記ルーフ34上方に立設したピン10に嵌着する(請求項2)。
ここで、吸気ダクトはキャブバックダクトを指している。
【0012】
本発明の、導風板がキャブのルーフ上に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け構造は、ルーフ上に導風板を装着したトラックのキャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びる吸気ダクトを有し、前記導風板38がキャブ32のルーフ34に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け構造において、前記開口部37近傍をキャブ32のルーフ34上方に導風板に設けられた導風板ステーを挟んで取り付けるためにルーフ34上方に立設したピン10と、そのピン10の外周に嵌着される弾性材ブッシュ20と、その弾性材ブッシュ20を嵌着するために吸気ダクト6に設けられたブッシュ嵌着孔7cとを備えている(請求項3)。
本発明の実施に際して、吸気ダクト、ルーフ、導風板のいずれも、従来の形状を変えることなく実施できる。
【0013】
本発明の、導風板がキャブのルーフ上に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け方法は、ルーフ上に導風板を装着したトラックのキャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びる吸気ダクトを有し、前記導風板がキャブのルーフ上に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け方法において、キャブ32のルーフ34上に立設するためのピン10と、そのピン10の外周に嵌着する弾性材ブッシュ20と、その弾性材ブッシュ20が嵌着される嵌着孔7cを設けた吸気ダクト6を準備し、前記導風板38に設けられた導風板ステー39を挟んで前記ピン10をルーフ34上方に立設し、前記ピン10をルーフ上方に立設する前または立設した後に前記弾性材ブッシュ20を吸気ダクトの6ブッシュ嵌着孔7cに嵌着させ、前記弾性材ブッシュ20を嵌着した吸気ダクト6を前記ルーフ34上方に立設したピン10に嵌着する(請求項4)。
【0014】
前記弾性材ブッシュ20は、外部に軸に直角な円状の円板部22が形成され、その円板部22のルーフ34側に円錐状のテーパ穴23が形成されていることが好ましい(請求項5)。
円錐状のテーパ穴が、ピン位置への案内となって嵌着作業を容易にする。
【0015】
前記弾性材ブッシュ20の円板部22の外周の1部に吸気ダクト6側に突出する縁壁部25が設けられていることが好ましい(請求項6)。
縁壁部は、吸気ダクトへの取り付け位置を決めるためと、弾性材ブッシュの回り止めのために導風板の有無にかかわらず必要である。
【0016】
前記弾性材ブッシュ20の円板部22の1部に外周が開放された切欠き28が設けられていることが好ましい(請求項7)。
切欠きは、導風板を設けたトラックへの吸気ダクト6の取り付けに、特に必要である。
【0017】
前記ピン10は、前記ルーフ34にねじ止めするためのねじ部11と、前記弾性材ブッシュ20に嵌着するための円柱状の胴部12と、6角頭部13とで形成され、頭部13の内部に十字穴14が設けられており、頭部13と胴部12との間に全周にわたってV溝15が設けられていることが好ましい(請求項8)。
V溝に弾性材ブッシュのV突起が嵌着し、ピンを介して吸気ダクトとルーフとの取り付けができる。
【0018】
前記ピン10のねじ部11に、前記導風板ステー39の厚さと等しい厚さのスペーサ18が取り付けられていることが好ましい(請求項9)。
上記導風板ステーの厚さとは、ステーの上下に取り付けられるシムを含めた厚さである。上記スペーサは、導風板のないトラックに使用され、スペーサを除いたピンは導風板を設けたトラックに共用できる。
【発明の効果】
【0019】
上述する構成を具備する本発明によれば、
(1) 開口部近傍のキャブのルーフ上方に立設したピンと、そのピンの外周に嵌着する弾性材ブッシュと、その弾性材ブッシュを嵌着するために吸気ダクトに設けられたブッシュ嵌着孔7cと、で構成されているので、従来技術と異なり、導風板の有無に関係なく、共用部品で吸気ダクトの取り付けができる。
(2) 開口部近傍のキャブのルーフ上方にピンを立設し、弾性材ブッシュを吸気ダクトのブッシュ嵌着孔に嵌着させ、弾性材ブッシュを嵌着した吸気ダクトをルーフ上方に立設したピンに嵌着するので、吸気ダクトをルーフにねじ止めする面倒さがなくなり作業が容易になる。
(3) 導風板に設けられた導風板ステーを挟んでピンをルーフ上方に立設し、弾性材ブッシュを吸気ダクトのブッシュ嵌着孔に嵌着させ、弾性材ブッシュを嵌着した吸気ダクトを前記ルーフ上方に立設したピン10に嵌着するので、従来の導風板ステーではダクト固定用ステーを溶接する従来の技術に比較して、標準車への後付けとなる導風板取り付け現地での溶接作業がなくなり作業が容易になる。
(4) 弾性材ブッシュは、外部に軸に直角な円状の円板部が形成され、その円板部のキャブルーフ側に円錐状のテーパ穴が形成されていれば、テーパに沿って滑らすことで、ルーフに取り付けられたピンを探して弾性材ブッシュを嵌め込むのが容易である。
(5) 弾性材ブッシュの円板部の外周の1部に吸気ダクト側に突出する縁壁部が設けてあれば、縁壁部が吸気ダクトに接して弾性材ブッシュの回転止めとなって位置がずれることがない。
(6) 弾性材ブッシュの円板部の1部に外周が開放された切欠きが設けてあれば、弾性材ブッシュを水平方向に移動させてピンに近づけることができ、直接ピンに被せて嵌め込むだけの空間がない導風板付きトラックにも吸気ダクトの取り付けが容易である。
(7) ピンは、ルーフにねじ止めするためのねじ部と、前記弾性材ブッシュに嵌着するための円柱状の胴部と、6角頭部とで形成されていれば、ルーフにねじ止めするだけでよく、従来の溶接工事が不要で作業が簡単である。
(8) ピンの頭部と胴部との間に全周にわたってV溝が設けられていれば、このV溝と弾性材ブッシュの突起とが嵌着され、吸気ダクトのルーフへの取り付けが容易である。
(9) 頭部の内部に十字穴が設けてあれば、ピンの着脱が容易である。
(10) ピンのねじ部に、前記導風板ステーの厚さと等しい厚さのスペーサが取り付けてあれば、スペーサありで導風板のないトラックに適用でき、スペーサなしで導風板付きのトラックに適用できて、共用ができる。
(11) 上記構成によれば、関連する吸気ダクト、ルーフ、導風板の何れも従来形状を大きく変えることがなく適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、従来技術の説明で使用した図13、図14、図17、図18も参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の吸気ダクト(以降、キャブバックダクトと記す)6を開口部37の近傍のルーフ34への取り付ける(固定点A)状態を示している。本発明のキャブバックダクト6は、従来のキャブバックダクトと形状が同じであり、ルーフ34への取り付け部(固定点A)を除けば、従来の取り付けを示す図13、図14と同じである。
【0021】
図1において、キャブバックダクト6の開口部17は、開口部17に対してほぼ直角な接続部37aを介してダクト部36aに接続されている。ダクト部36aは、キャブ32の後側方に下方に延びている。
ダクト部36aの上部は、従来技術と同様に、円柱状のラバーブッシュ1個でキャブ32側方の固定点Bに脱着容易に弾性支持されている。ダクト部36aの下部は、ラバーブッシュ2個でキャブ32側方の固定点Cに、脱着容易に弾性支持されている。ダクト部36aの下端部は、エンジンの吸気口に接続されている。
【0022】
図2及び図3は、図1において、ルーフ34に立設されるピン10を示している。
ピン10は、ねじ部11と、ねじ部11より大径の円柱状の胴部12と、6角頭部13とで形成されている。
【0023】
ねじ部11は、ルーフ34にねじ止めするものである。胴部12は、弾性材ブッシュ20に嵌着するためと、ルーフ34とキャブバックダクト6との隙間距離を所定に保つためのものである。
6角頭部13の内部に十字穴14が設けられている。
6角頭部13と、胴部12との間に、全周にわたってV溝15が形成されている。V溝15は、弾性材ブッシュ20に嵌着するためのものである。
【0024】
図1において、接続部37aのルーフ34に近い壁面8の変曲部8a(図10参照)の近傍に、ブッシュ嵌着孔7cが設けられている。そのブッシュ嵌着孔7cに、円形スピーカ状の弾性材ブッシュ20が取り付けられている。
【0025】
図4、図5は、弾性材ブッシュ20の表、裏を示す斜視図である。表側を示す図4において、表側のキャブバックダクト6方向に向いた縁壁部25が、間隙R(図6参照)を挟んで2個が形成されている。図6〜図9で弾性材ブッシュ20の形状を詳しく説明する。
【0026】
弾性材ブッシュ20は、筒部21と、筒部21の下部に設けられた軸に直角水平に設けられた円状の円板部22と、で中央に孔のある円形スピーカ状に形成されている。
筒部21の内部に、ピン10の胴部12に嵌着するための孔21aが形成されている。
筒部21の外部に、ブッシュ嵌着孔7cに滑入を容易にするためのテーパ面21b(図9参照)が形成されている。
孔21aの内端部に、半径方向内方に向かってV状の突起21cが形成されている。突起21cは、ピン10のV溝15に嵌着するために形成されている。
【0027】
円板部22の上面部22cは、緩やかな弧状部22aと、弧状部22aの上端部から連続する水平な水平部22bと、で形成されている。
円板部22に、円錐状のテーパ穴23が形成されている。テーパ穴23は弾性材ブッシュ20をピン10に嵌着するための案内になる機能を有している。
円板部22に外周が開放された弧Rの切欠き28が形成されている。切欠き28はピン10に嵌着する際のアプローチを容易にする機能を有している。
【0028】
円板部22に切欠き28を端部とする縁壁部25が吸気ダクト6側、即ち筒部21の上端部側に向かって形成されている。縁壁部25の背部は、弧状の斜面26で半径方向内方に円板部22の上面に連続している。斜面26は、変曲部8aに接して弾性材ブッシュ20の廻り止めをする機能を有している。
【0029】
筒部21と円板部22の接する部分の外部に、並行溝24が設けられている。並行溝24はキャブバックダクト6のブッシュ嵌着孔7cが嵌着するためのものである。
【0030】
図10は、弾性材ブッシュ20と、キャブバックダクト6と、ピン10とが、嵌着して固定された状態を示している。この状態は、導風板のない構成である。
弾性材ブッシュ20の並行溝24と、キャブバックダクト6のブッシュ嵌着孔7cと、が嵌着して固定されている。また、弾性材ブッシュ20のV状の突起21aと、ピン10のV溝15と、が嵌着して固定されている。ピン11は、ねじ部11でルーフ34にねじ止めされている。
【0031】
弾性材ブッシュ20とキャブバックダクト6とは、ブッシュ嵌着孔7cでの嵌着のほかに、弾性材ブッシュ20の上面部22cがキャブバックダクト6の変曲部8a〜8b〜8c間で凹凸密接している。また、縁壁部25の斜面26が変曲部8aに接して、弾性材ブッシュ20の嵌着孔7cへの嵌込みの際の位置決めの機能を果たしている。
【0032】
図11は、導風板38付きの構成である。弾性材ブッシュ20と、キャブバックダクト6と、ピン10Aと、導風板38の導風板ステー39が、嵌着して固定された状態を示している。
導風板ステー39は、板部39aの両側にシムt1、t2、t3を挟んでいて、ピン10Aでルーフ34にねじ止めされている。
この構成では、ピン10Aの胴部12の長さは、板部39a、シムt1、t2、t3の厚さ分だけ短くなっている。
【0033】
図12は、図11で示した導風板38のある場合のピン10Aを、導風板38のない場合にも共用できるようにしたものである。ここで使用されるピン10Bは、図11における板部39a、シムt1、t2、t3の厚さ分に相当する厚さのスペーサ18が付設されている。
なお、キャブバックダクト、弾性材ブッシュ、ピンなどの本発明に係る形態は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明を実施できる形態であれば変更可能なことはいうまでもない。
【0034】
上記構成のキャブバックダクトの取り付け方法を以下に説明する。
最初に導風板38のないトラックについて、図1、図10、図14を参照して説明する。
(1) 準備工程。
a) キャブ32のルーフ34上に立設すべきピン10を準備する。ピン10は、図10で示した導風板38のないトラック用の標準品でもよいし、図12で示したスペーサ18付きで導風板有無に共用のピン10Bでもよい。
b) ブッシュ嵌着孔7cが設けられたキャブバックダクト6を準備する。
c) 弾性材ブッシュ20ブッシュを準備する。
(2) ピン立設工程。
キャブ32のルーフ34上の所定の位置に、ピン10を立設する。即ち、ねじ部11によってルーフの所定の位置に螺結する。
(3) キャブバックダクトに弾性材ブッシュを嵌着する工程。
キャブバックダクト6のブッシュ嵌着孔7cに、弾性材ブッシュ20を嵌着する(図1)。即ち、ブッシュ嵌着孔7cに弾性材ブッシュ20の筒部21を押し込む。この際に、テーパ面21bを利用して、弾性材ブッシュ20をブッシュ嵌着孔7cに押し込む。押し込みを進ませ、平行溝24にブッシュ嵌着孔7cを嵌着させる(図10のピンがない状態)。この際、縁壁部25の斜面26が変曲部8aに接して、位置きめと回り止めになるようにする。
(4) キャブバックダクトをルーフに取り付ける工程。
ブッシュ嵌着孔7cに弾性材ブッシュ20が嵌着されたキャブバックダクト6を、ルーフ34に立設したピン10に取り付ける。キャブバックダクト6をルーフ34の上方に持ち上げて、弾性材ブッシュ20のV状の突起21cと、ピン10のV溝15とを嵌着させる。最後にダクト36aを固定点B、Cに固定させて作業を終了させる。
【0035】
次に、導風板38のあるトラックについて、キャブバックダクトの取り付け方法を以下に説明する。
(1) 準備工程。
a) キャブ32のルーフ34上に立設すべきピン10を準備する。ピン10は、図11で示した導風板38付き用の胴部12の短いピン10Aを準備する。
b) ブッシュ嵌着孔7cが設けられたキャブバックダクト6を準備する。
c) 弾性材ブッシュ20ブッシュを準備する。
d) 導風板ステー39の板部39aの両側に取り付けるべきシムt1、t2、t3を準備する。通常、導風板38は導風板なしの標準トラックに後付けするので、シムt1、t2、t3を用いている。
(2) ピン立設工程。
キャブ32のルーフ34上の所定の位置に、ピン10Aを立設する。即ち、ねじ部11によってルーフの所定の位置に螺結する。この際、板部39aの下方にシムt1を配置してルーフ34との間隔を保持して、板部39aによるルーフ34の干渉損傷を避ける。また、板部39aの上方にシムt2、t3を配置してルーフ34とキャブバックダクト6との間隔を保持して、キャブバックダクト6とルーフ34との干渉損傷を避ける。
(3) キャブバックダクトに弾性材ブッシュを嵌着する工程。
この工程は、前記の導風板なしの工程と同じである。
(4) キャブバックダクトをルーフに取り付ける工程。
ブッシュ嵌着孔7cに弾性材ブッシュ20が嵌着されたキャブバックダクト6を、ルーフ34に立設したピン10を取り付ける。即ち、弾性材ブッシュ20のV状の突起21cと、ピン10AのV溝15とを嵌着させる。
この工程では、導風板38があってキャブバックダクト6の上方移動を制限するので、キャブバックダクト6に嵌着された弾性材ブッシュ20の切欠き28を利用する。即ち、切欠き28がピン10Aを避けるように、キャブバックダクト6をなるべく水平方向に移動させる。そして、弾性材ブッシュ20の中心部がピン10Aに近接したところで、上方に持ち上げてピン10Aに嵌め込む。
このようにすることで、導風板38内を手探りしてボルト締めしていた従来の課題を解決している。最後にダクト36aを固定点B、Cに固定させて作業を終了させる。
また、上記は導風板が設けられたトラックへのキャブバックダクト6の取り付け順序であるが、導風板を後付けする場合は、上記(1)〜(3)の工程を実施後に(4)の工程を実施すればよい。
なお、取り付け方法は、導風板の有無に関わらず本方法に限定されるのではなく、可能な範囲で順序などを変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の斜視構成図。
【図2】ピンの側面図。
【図3】図2の正面図。
【図4】(弾性材)ラバーブッシュの正面斜視図。
【図5】(弾性材)ラバーブッシュの裏面斜視図。
【図6】ラバーブッシュの上面図。
【図7】図6のAA断面図。
【図8】図6の側断面図。
【図9】図7のY部拡大図。
【図10】キャブバックダクトが導風板のないトラックのルーフに取り付けられた状態を示す側断面図。
【図11】キャブバックダクトが導風板のあるトラックのルーフに取り付けられた状態を示す側断面図。
【図12】キャブバックダクトが導風板のないトラックのルーフに取り付けられた状態を示す別の側断面図。
【図13】本発明が適用される導風板のない車両の側面図。
【図14】従来の導風板のないトラックのルーフに取り付けられたキャブバックダクトの状態を示す斜視図。
【図15】従来の導風板のあるトラックのルーフに取り付けられたキャブバックダクトの状態を示す斜視図。
【図16】従来の導風板のあるトラックの上部を示す斜視図。
【図17】従来のキャブバックダクトの取り付けを示す斜視図。
【図18】図17を別の方向から見た斜視図。
【符号の説明】
【0037】
6・・・・吸気ダクト、キャブバックダクト
7c・・・ブッシュ嵌着孔
10・・・ピン
20・・・弾性材ブッシュ
22・・・平板部
23・・・テーパ孔
25・・・縁壁部
28・・・切欠き
32・・・キャブ
34・・・ルーフ
36・・・キャブバックダクト
36a・・ダクト部
37・・・開口部
38・・・導風板
39・・・導風板ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びるトラックの吸気ダクトの取り付け構造において、前記開口部近傍をキャブのルーフ上方に取り付けるためにルーフ上方に立設したピンと、そのピンの外周に嵌着される弾性材ブッシュと、その弾性材ブッシュを嵌着するために吸気ダクトに設けられたブッシュ嵌着孔と、で構成されることを特徴とするトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項2】
キャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びるトラックの吸気ダクトの取り付け方法において、前記開口部近傍のキャブのルーフ上方に前記ピンを立設し、前記ピンを立設する前または立設した後に前記ピンに対応する吸気ダクトの取り付け位置に弾性材ブッシュを嵌着したブッシュ嵌着孔を形成した吸気ダクトを準備し、前記弾性材ブッシュを嵌着した吸気ダクトを前記ルーフ上方に立設したピンに嵌着することを特徴とするトラックの吸気ダクトの取り付け方法。
【請求項3】
ルーフ上に導風板を装着したトラックのキャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びる吸気ダクトを有し、前記導風板がキャブのルーフ上に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け構造において、前記開口部近傍をキャブのルーフ上方に取り付けるためにルーフ上方に導風板に設けられた導風板ステーを挟んで立設したピンと、そのピンの外周に嵌着される弾性材ブッシュと、その弾性材ブッシュを嵌着するために吸気ダクトに設けられたブッシュ嵌着孔とを備えたことを特徴とするトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項4】
ルーフ上に導風板を装着したトラックのキャブの後側方に取り付けられ、吸気導入用の開口部を有し、その開口部からの吸気を導くためにキャブの後部を下方に延びる吸気ダクトを有し、前記導風板がキャブのルーフ上に設けられたトラックの吸気ダクトの取り付け方法において、キャブのルーフ上に立設するためのピンと、そのピンの外周に嵌着する弾性材ブッシュと、その弾性材ブッシュが嵌着される嵌着孔を設けた吸気ダクトを準備し、その導風板に設けられた導風板ステーを挟んで前記ピンをルーフ上方に立設し、前記ピンをルーフ上方に立設する前または立設した後に前記弾性材ブッシュを吸気ダクトのブッシュ嵌着孔に嵌着させ、前記弾性材ブッシュを嵌着した吸気ダクトを前記ルーフ上方に立設したピンに嵌着することを特徴とするトラックの吸気ダクトの取り付け方法。
【請求項5】
前記弾性材ブッシュは、外部に軸に直角な円状の円板部が形成され、その円板部のキャブルーフ側に円錐状のテーパ穴が形成されている請求項1または請求項3のトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項6】
前記弾性材ブッシュの円板部の外周の1部に吸気ダクト側に突出する縁壁部が設けられている請求項1、請求項3、請求項5の何れか1項のトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項7】
前記弾性材ブッシュの円板部の1部に外周が開放された切欠きが設けられている請求項1、請求項3、請求項5、請求項6の何れか1項のトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項8】
前記ピンは、前記ルーフにねじ止めするためのねじ部と、前記弾性材ブッシュに嵌着するための円柱状の胴部と、6角頭部とで形成され、頭部の内部に十字穴が設けられており、頭部と胴部との間に全周にわたってV溝が設けられている請求項1、請求項3、請求項5、請求項6、請求項7の何れか1項のトラックの吸気ダクトの取り付け構造。
【請求項9】
前記ピンのねじ部に、前記導風板ステーの厚さと等しい厚さのスペーサが取り付けられている請求項8のトラックの吸気ダクトの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−283919(P2007−283919A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113983(P2006−113983)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】