説明

トラッピング処理装置、トラッピング処理方法、トラッピング処理プログラム

【課題】文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行するためのトラッピング処理装置、トラッピング処理方法、ならびに、トラッピング処理プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形とから中抜き文字を作成する。そして、中抜き文字と前記配置関係にある図形とからトラッピング図形を作成して、トラッピング処理対象文字に対して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の刷版を使用して印刷を行なう際に生じる版ズレによる印刷不良を防ぐため、ページ上のオブジェクトに対してトラッピング処理を行なうトラッピング処理装置、トラッピング処理方法、トラッピング処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の刷版を使用して印刷を行なう際に生じる版ズレによる印刷不良を防ぐため、製版時に「トラッピング処理」と呼ばれる図形処理を行なうことが一般的になっている。トラッピング処理とは、いくつかの版を重ね刷りするときに隣り合う色の片方を太らせて重ねることで、これにより多少の版ずれが起きても色の境界に地色が出ないように処理する技術である。
【0003】
印刷物を表現するためのページには、文字や線画、画像等のオブジェクトがレイアウトされており、該レイアウト状態をページ記述言語で記述することにより、ページを表現したページファイルを得る。このようなページファイルに対してトラッピング処理を行なう場合、ページファイルを編集するためのアプリケーションソフトウェアにおいて、トラッピングの対象となるオブジェクトである図形や文字を指定し、該指定されたオブジェクトの周囲にトラッピング図形を生成することにより、トラッピング処理を実現している。
【0004】
このようなトラッピング処理に関わる先行技術としては、例えば特開平8−83337、特開2006−166223に開示されているような技術が存在する。
【特許文献1】特開平8−83337
【特許文献2】特開2006−166223
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトラッピング処理では、次のいずれかの方法により、文字に対するトラッピング処理を実現していた。
(1)文字をアウトライン化した図形に変換し、該図形の周囲にトラッピング図形を生成する。
(2)文字の形状を表現するアウトラインを取得し、該アウトラインの形状に基づいてトラッピング図形を生成する。
【0006】
しかし、(1)に記載の方法では、文字が図形化されているために、出力解像度を問わず文字の形状を正確に表現するためのヒント情報が失われるので、低解像度でページファイルを出力する場合に文字が潰れてしまい、結果的に文字とトラッピング図形との整合性が失われるという問題がある。また、(1)に記載の方法では、文字を図形に変換してしまうので、文字の訂正を行ないたい場合は、文字の再入力処理が必要となる問題もあった。
(2)に記載の方法においても、やはり出力解像度によっては文字の形状と該文字の形状を表現するアウトラインとが乖離することがあるため、やはり文字とトラッピング図形との整合性が失われるという問題が生じている。
【0007】
従って、本発明の目的は、文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行するためのトラッピング処理装置、トラッピング処理方法、トラッピング処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決する為に、請求項1に係る発明は、文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理を実行するトラッピング処理装置であって、前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得手段と、前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成手段と、前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成手段と、前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のトラッピング処理装置であって、前記取得した配置関係が複数存在する場合、前記中抜き文字作成手段は該配置関係数分の中抜き文字を作成し、前記トラッピング図形作成手段は該配置関係数分のトラッピング図形を作成することを特徴とする。
【0010】
更に請求項3に係る発明は、請求項1乃至2のいずれかに記載のトラッピング処理装置であって、前記中抜き文字作成手段が作成する中抜き文字は、前記トラッピング処理対象文字の配色と該トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形の配色との合成色が配色された所定幅の輪郭線を有することを特徴とする。
【0011】
また請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のトラッピング処理装置であって、前記トラッピング図形作成手段は、前記中抜き文字と前記トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形との論理積から前記トラッピング図形を作成することを特徴とする。
【0012】
加えて、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のトラッピング処理装置であって、前記文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページを記述したページ記述言語ファイルを出力する出力手段を備え、該出力手段は前記トラッピング図形作成手段が作成したトラッピング図形に関わる記述を前記ページ記述言語ファイルに追記することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理を実行するトラッピング処理方法であって、前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得工程と、前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成工程と、前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成工程と、前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係わる発明は、文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理をCPUとメモリとを備えたコンピュータに実行させるトラッピング処理プログラムであって、前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得ステップと、前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成ステップと、前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成ステップと、前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のトラッピング処理装置は、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形とから中抜き文字を作成し、該中抜き文字と前記配置関係にある図形とからトラッピング図形を作成して配置するので、文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行することができる。
【0016】
特に請求項2に記載のトラッピング処理装置は、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形が複数存在したとしても、トラッピング処理を実行することができる。
【0017】
特に請求項3に記載のトラッピング処理装置は、トラッピング処理対象文字の配色と配置関係にある図形の配色とから得た合成色が配色されたトラッピング図形を作成するので、版ズレが生じた場合であっても印刷色に不具合を生じることがない。
【0018】
特に請求項4に記載のトラッピング処理装置は、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形との論理積からトラッピング図形を作成するので、適切な位置に適切なサイズで配置されるトラッピング図形を得ることができる。
【0019】
特に請求項5に記載のトラッピング処理装置は、トラッピング処理を行なったページファイルをページ記述言語で記述されたファイルとして出力することができるので、ハンドリングに便利である。
【0020】
請求項6に記載のトラッピング処理方法は、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形とから中抜き文字を作成し、該中抜き文字と前記配置関係にある図形とからトラッピング図形を作成して配置するので、文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行することができる。
【0021】
請求項7に記載のトラッピング処理プログラムは、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形とから中抜き文字を作成し、該中抜き文字と前記配置関係にある図形とからトラッピング図形を作成して配置するので、文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施するための最良の形態について、説明を行なう。
【実施例1】
【0023】
第一の実施の形態は、トラッピング処理装置に関わる。
図1は、本発明を実施するためのトラッピング処理装置の構成を示すための図である。トラッピング処理装置1は、一般的に使用されているパーソナルコンピュータであり、CPU11、表示部12、入力部13、ネットワークI/F14、メディアドライブ15、記憶部16、メモリ17より構成されている。
【0024】
CPU11は、トラッピング処理装置1全体を制御し、特にメディアドライブ15に挿入されたメディアディスク18に記録されているプログラム181をメモリ17において実行することによって、トラッピング処理装置1の機能を実現している。
【0025】
表示部12は、トラッピング処理に必要な情報を表示するために使用される。入力部13は、マウスやキーボードで構成されており、トラッピング処理装置1に対してオペレータが指示を入力するために使用する。
ネットワークI/F14は、トラッピング処理装置1と図示しないネットワークとを接続するためのものである。ネットワークI/F14を介して、トラッピング処理装置1はネットワークに接続されている図示しない端末からトラッピング処理に必要な情報を受信することができる。また、図示しないサーバより、トラッピング処理装置1の機能を実現するプログラム181をダウンロードすることも可能である。さらに、図示しない出力装置がネットワークを介してトラッピング処理装置1と接続されている場合には、このネットワークI/F14を介して、出力装置にトラッピング処理が行なわれたページファイルを送信することが可能である。
メディアドライブ15は、メディアディスク18に記録されているプログラム181を読み取るために使用する。メディアドライブ15で読み取られたプログラム181により、トラッピング処理装置1の機能が実現される。
記憶部16は、メディアドライブ15で読み取られたプログラム181を格納する。
【0026】
メモリ17は、記憶部16によって記憶されたプログラム181をCPU11が実行するためのワークエリアである。CPU11によってプログラム181が実行された結果、メモリ17において、ページファイル入力部171、オブジェクト配置関係取得部172、中抜き文字作成部173、トラッピング図形作成部174、トラッピング図形配置部175、トラッピング処理済ページファイル出力部176の機能が実現する。
【0027】
ページファイル入力部171は、ネットワークI/F14を介して、あるいはディスクドライブ15を介して、トラッピング処理装置1がページ記述言語で記述されたページファイルを入力し、トラッピング処理装置1で作業に供される中間フォーマットによって表現されたページに変換する。なお、外部からページファイルを入力するのではなく、トラッピング処理装置1において図示しないDTPアプリケーションを使用してページファイルを作成してもよい。
【0028】
オブジェクト配置関係取得部172は、ページファイルの構造を分析することにより、ページにレイアウトされたテキストや線画、画像等のオブジェクト各々の配置関係を取得する。オブジェクトの配置関係を取得した結果、配置関係にあるオブジェクト間にトラッピング処理が必要か否かについて、オブジェクト配置関係取得部172が判定する。
あるいは、オブジェクト配置関係取得部172は、中間フォーマットに変換されたページにおいてレイアウト処理が行なわれたオブジェクト各々についてIDを付してビットマップ上に描画し、該ビットマップを走査して隣接するIDからオブジェクトの配置関係を取得するようにしてもよい。
【0029】
中抜き文字作成部173は、配置関係にある図形に対してトラッピング処理の対象となる文字について、トラッピング処理が必要な関係図形分トラッピング対象文字を複製し、各々について中抜き文字の作成を行なう。中抜き文字とは、文字の形状を表現する所定の幅と配色がなされた輪郭線のみで表現された文字である。中抜き文字作成部173は、トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形が複数存在する場合、該図形の数だけ中抜き文字を作成する。作成された中抜き文字は、後述するトラッピング図形作成部174によるトラッピング処理の際に使用される。
【0030】
トラッピング図形作成部174は、オブジェクトの配置関係に基づいて、トラッピング処理が必要なオブジェクト間に配置するためのトラッピング図形を作成する。また、トラッピング図形作成部174は、トラッピング処理対象文字と該文字と配置関係にある図形とから、トラッピング図形を作成する。
トラッピング図形作成部174は、中抜き文字作成部173が作成した中抜き文字について、該中抜き文字の配色と配置関係にある図形の配色とをMax合成した合成色を配色する。そして、トラッピング図形作成部174は、この中抜き文字と配置関係を有する図形との論理積から、図形に隣接する部分だけが表示される論理積中抜き文字を作成する。
トラッピング図形作成部174は、中抜き文字作成部173において複数の中抜き文字が作成された場合、該複数の中抜き文字と各々対応する配置関係にある図形とから論理積を演算して、各々配置関係にある図形が隣接する部分だけが表示される複数の論理積中抜き文字を作成する。
【0031】
トラッピング図形配置部175は、トラッピング図形作成部174で作成された論理積中抜き文字をトラッピング処理が行なわれたトラッピング図形として配置を行なう。トラッピング図形配置部175は、トラッピング処理装置1のオペレータの指示に基づいて、トラッピング図形がスプレッド(太らせ)図形と指示された場合、トラッピング処理対象文字の下位に配置を行なう。逆にトラッピング図形がチョーク(細らせ)図形として指示された場合、トラッピング図形配置部175はトラッピング処理対象文字の上位に配置を行なう。
また、トラッピング図形となる論理積中抜き文字が複数存在する場合、オブジェクト配置関係取得部172によって取得された配置関係に基づく順序で、トラッピング図形配置部175はトラッピング処理対象文字に対してOR合成の形式で配置を行なう。
【0032】
トラッピング処理済ページファイル出力部176は、トラッピング図形配置部175によってトラッピング図形が配置されたページについて、トラッピング処理装置1の作業に供される中間フォーマットからページ記述言語の形式に変換したトラッピング処理済ページファイルを出力する。トラッピング処理済ページファイル出力部176が出力可能なページ記述言語は、例えばPostScript(米アドビ・システムズ社の登録商標)やPDF(Portable Document Format)、あるいはXML(eXtensible Markup Language)等である。トラッピング処理済ページファイル出力部176によって出力されたトラッピング処理済ページファイルは、ネットワークI/F14を介して、あるいはディスクドライブ15を介して、トラッピング処理装置1の外部に出力され、続く印刷工程に供される。
【0033】
図2は、トラッピング処理装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
ステップS1において、トラッピング処理装置1はページファイルを入力する。ネットワークI/F14、あるいはディスクドライブ15を介して、トラッピング処理装置1へ入力されたページファイルは、ページファイル入力部171において、トラッピング処理装置1で処理を行なうため、ページ上にオブジェクトがレイアウトされた状態において編集が可能なように、中間フォーマットページファイルに変換される。
【0034】
ステップS2では、オブジェクト配置関係取得部172が、ページ上にレイアウトされた文字、線画、画像等のオブジェクトの配置関係を取得する。オブジェクト配置関係取得部172は、ページファイルにおいてオブジェクトの配置関係が定義されている場合には、ページファイルの構造を解析してオブジェクトの配置関係を取得する。ページファイルにおいてオブジェクトの配置関係が定義されていない場合には、オブジェクト配置関係取得部172は中間フォーマットページファイルにおけるレイアウト処理が行なわれたオブジェクト各々についてIDを付してビットマップ上に描画し、該ビットマップを走査して隣接するIDからオブジェクトの配置関係を取得する。
【0035】
ステップS3において、配置関係が取得されたオブジェクト各々についてトラッピング処理が必要か否かを、オブジェクト配置関係取得部172が判定する。配置されているオブジェクト各々が隣接していない場合、あるいはオブジェクト同士が隣接していたとしても版ズレが生じないような配色がなされている場合には、通常トラッピング処理の必要はない。それ以外の場合は、オブジェクト配置関係取得部172が取得したオブジェクトの配置関係に基づいて、トラッピング処理を行なう。
【0036】
ステップS4では、オブジェクト配置関係取得部172が、トラッピングの処理対象が文字であるか否かを判定する。文字でない場合にはステップS6へ移行し、トラッピング処理装置1は公知である図形同士のトラップ処理を実行する。
なお、トラッピングの処理対象が文字であったとしても、トラッピング処理の必要がない場合には、文字に対するトラッピング処理を行なわず、ステップS6へ移行するようにしてもよい。
【0037】
ステップS5において、トラッピング処理装置1は、トラッピング処理対象文字と配置関係にあるオブジェクト、主に図形である、におけるトラッピング処理を実行する。トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形とのトラッピング処理については、詳細を後述する。
【0038】
ステップS5、あるいはステップS6によるトラッピング処理について、全てのオブジェクトに対して終了したならばステップS8へ移行する。トラッピング処理が行なわれていないオブジェクトが存在する場合には、ステップS4へ戻って、トラッピング処理装置1はトラッピング処理を再開する(ステップS7)。
【0039】
ステップS8では、トラッピング処理済ページファイル出力部176が、トラッピング処理が行なわれた中間フォーマットページファイルをトラッピング処理済ページファイルとしてページ記述言語に変換して出力する。出力されたトラッピング処理済ページファイルは、トラッピング処理装置1の外部にて印刷工程に供される。
【0040】
以下、実際にページにレイアウトされたオブジェクト間の配置関係に基づいて、トラッピング処理装置1がトラッピング処理を行なう動作について、説明を行なう。
【0041】
図3は、ページLP上に3つのオブジェクトO1、O2、L1が配置されている状態を示している。図3(a)に示すオブジェクトO1、O2は図形オブジェクトであり、オブジェクトL1は文字オブジェクトである。オブジェクトO1は、シアン(以降Cと表記)50%の色濃度を有し、オブジェクトO2は、イェロー(以降Yと表記)50%の色濃度を有している。文字オブジェクトL1はアルファベットの「T」であり、マゼンダ(以降Mと表記)100%の色濃度を有している。また、図3(b)は、文字オブジェクトL1がオブジェクトO1、O2に対する配置状態を示すための図である。
【0042】
図3(a)に示しているように、オブジェクトO1、O2、L1はそれぞれ隣接するように表示されるので、図2のステップS2において、図4に示すようなオブジェクト同士の配置関係が取得される。オブジェクト配置関係取得部172によって、オブジェクトO1とO2とがそれぞれ隣接しており、オブジェクトL1もまたオブジェクトO1、O2各々に重複しているというオブジェクト同士の配置関係が取得される。
なお、ここでは説明を容易にするために3つのオブジェクトがレイアウトされた状態を例としているが、ページにレイアウトされるオブジェクトの数が3つに限られることはない。
【0043】
オブジェクトO1とO2とは隣接しているので、図2のステップS3でトラッピング処理が行なわれるものとして、S4へ移行する。オブジェクトO1、O2各々は図形オブジェクトであることから、ステップS6におけるトラッピング処理が行なわれる。なお、ステップS6におけるトラッピング処理については公知なので、ここでの説明は省略する。
【0044】
ステップS7において、ページLPにおけるトラッピング処理が全て終了したわけではないことが判定され、ステップS4へ帰還し、オブジェクトL1が文字であるか否かの判定が行なわれる。オブジェクトL1は文字オブジェクトなので、ステップS5へ移行する。
【0045】
図5は、ステップS5におけるトラッピング処理対象文字と、該文字と配置関係にある図形オブジェクトとのトラッピング処理を説明するためのフローチャートであって、図4に示すページにレイアウトされたオブジェクトに対してトラッピング処理を行なう際の動作を説明する。
【0046】
ステップS51において、中抜き文字作成部173が、中抜き文字を作成するためオブジェクトL1が示す文字をコピーする。この場合、オブジェクトL1は、オブジェクトO1、O2と配置関係にあることから、中抜き文字作成部173はオブジェクトL1である文字「T」を2つコピーし、一時的に格納する。
【0047】
ステップS52では、中抜き文字作成部173がステップS51でコピーした文字に対して中抜き処理を行ない、中抜き文字を作成する。図6は、中抜き文字作成部173が、ステップS51でコピーした文字「T」に対して中抜き処理を行ない、中抜き文字オブジェクトLN1、LN2を作成した状態を示している。図示しているように、中抜き文字オブジェクトLN1、LN2は、オブジェクトL1と同様文字「T」であるが、オブジェクトL1とは異なり、その内部に配色がされておらず、輪郭線のみで文字の形状を示している。また、ここでは、中抜き文字オブジェクトLN1、LN2各々の輪郭線の幅も決定しておらず、輪郭線の配色も決定していない。中抜き文字オブジェクトLN1、LN2における輪郭線の幅、配色は後述するステップで決定される。
なお、中抜き文字オブジェクトLN1、LN2とは、区別のために符号を付しているだけであり、実態は同一の文字オブジェクトである。
【0048】
図5に戻り、ステップS53では、トラッピング図形作成部174が中抜き文字と、該中抜き文字を作成する対象となったトラッピング処理対象文字と配置関係にある図形オブジェクトとをAND合成する。
【0049】
図7は、トラッピング図形作成部174がAND合成を行なった結果得られる論理和中抜き文字を説明するための図である。図7(a)、(b)は、トラッピング図形作成部174が、中抜き文字と配置関係にある図形とをAND合成した状態を示している。ステップS52で中抜き文字オブジェクトが2つ作成されていることから、ステップS53ではオブジェクトO1と配置関係にある中抜き文字オブジェクトLN1、オブジェクトO2と配置関係にある中抜き文字オブジェクトLN2とがAND合成され、その結果、トラッピング図形作成部174が論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2を作成する。
【0050】
図7(c)、(d)は、ステップS53において作成された論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2を説明するための図である。ステップS53でトラッピング図形作成部174が論理積中抜き文字オブジェクトを作成するに際して、別途設定された輪郭線幅で論理積中抜き文字オブジェクトの文字形状を表示する。また、輪郭線の配色については、トラッピング図形作成部174がトラッピング処理対象文字および該文字と配置関係にある図形それぞれの配色の最大値を取得して、合成色を作成し、論理積中抜き文字オブジェクトの輪郭線に配色する。
【0051】
トラッピング処理対象文字から作成された中抜き文字と、該文字と配置関係にある図形との論理積なので、トラッピング図形作成部174が作成した論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2は、図7(c)、(d)に図示しているように、オブジェクトO1、O2にそれぞれ重複している部分の輪郭線のみが表示されることになる。トラッピング図形作成部174により、論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2には各々所定の輪郭線幅が付与される。また、トラッピング図形作成部174は、オブジェクトO1、O2、L1からそれぞれ配色を取得し、色濃度の最大値で合成した合成色を論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2の輪郭線の色として配色する。オブジェクトO1がC50%、O2がY50%、L1がM100%の配色がなされていたことから、論理積中抜き文字オブジェクトALN1の輪郭線の色はC50%、M100%であり、ALN2の輪郭線の色はY50%、M100%となる。
【0052】
これまでの説明で示されているように、論理積中抜き文字オブジェクトは、表示形態が通常の文字オブジェクトとは異なる文字オブジェクトであり、本発明におけるトラッピング処理装置1は、それを一種のトラッピング図形として取り扱っている。従って、本発明におけるトラッピング図形は文字フォントのアウトラインを図形化したものとは異なり、テキスト処理による修正や編集が容易であるという特徴を有する。
【0053】
図5に戻って、ステップS54では、トラッピング図形配置部175が、トラッピング処理対象文字に対してステップS53で作成された論理積中抜き文字オブジェクトを配置する。図8は、トラッピング図形配置部175により、オブジェクトL1の下に論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2が配置された状態を説明するための図である。
【0054】
図示しているように、図8では、オブジェクトL1の下にスプレッド図形となる論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2が配置され、さらにその下にオブジェクトO1、O2が配置される。
【0055】
逆に、トラッピング図形としてチョーク図形を使用する場合は、論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2は、オブジェクトL1の上に配置されることになる。
【0056】
ステップS54において、論理積中抜き文字オブジェクトの配置をトラッピング図形配置部175が実行することにより、表示部12には図9に示すようなトラッピング処理済ページファイルが表示される。
なお、オブジェクトO1、O2についても本来ならばトラッピング図形が付与されるが、説明を簡略化するために図9では図示を省略している。
【0057】
ステップS55では、トラッピング処理対象文字と、該文字と配置関係にある図形オブジェクトとのトラッピング処理が全て終了したか否かを判断する。トラッピング図形配置部175による処理が全て終了したとCPU11が判断した場合、あるいはトラッピング処理装置1のオペレータがページにおける文字と図形とのトラッピング処理が全て終了したと判断した場合、図2のフローチャートに帰還する。文字と図形とのトラッピング処理が終了していない場合は、ステップS51に帰還し、トラッピング処理装置1は再度図5のフローチャートに示した動作を実行する。
【0058】
このように、図1に示すトラッピング処理装置1が、図2および図5のフローチャートに示したような動作を行なうことにより、文字属性を残したまま、出力解像度に依存せず、文字に対して正しいトラッピング処理を実行することができる、という作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】トラッピング処理装置1の構成を説明するための図である。
【図2】トラッピング処理装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】ページ上にレイアウトされたオブジェクトO1、O2、L1の状態を説明するための図である。
【図4】オブジェクトO1、O2、L1の配置関係を説明するための図である。
【図5】トラッピング処理対象文字に対するトラッピング処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】ステップS52における動作の結果作成された中抜き文字オブジェクトLN1、LN2を説明するための図である。
【図7】ステップS53における動作の結果作成される論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2を説明するための図である。
【図8】ステップS54における動作の結果、トラッピング処理対象文字であるオブジェクトL1にトラッピング図形である論理積中抜き文字オブジェクトALN1、ALN2が配置された状態を示すための図である。
【図9】トラッピング処理装置1によりトラッピング処理が行なわれた結果作成されたトラッピング処理済ページファイルによって表現されるページを説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1 トラッピング処理装置
11 制御部
12 表示部
13 入力部
14 ネットワークI/F
15 ディスクドライブ
16 記憶部
17 メモリ
171 ページファイル入力部
172 オブジェクト配置関係取得部
173 中抜き文字作成部
174 トラッピング図形作成部
175 トラッピング図形配置部
176 トラッピング処理済ページファイル出力部
181 プログラム
ALN1、ALN2 論理積中抜き文字オブジェクト
L1 文字オブジェクト
LN1、LN2 中抜き文字オブジェクト
O1、O2 図形オブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理を実行するトラッピング処理装置であって、
前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得手段と、
前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成手段と、
前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成手段と、
前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置手段と、
を備えたことを特徴とするトラッピング処理装置。
【請求項2】
前記取得した配置関係が複数存在する場合、前記中抜き文字作成手段は該配置関係数分の中抜き文字を作成し、前記トラッピング図形作成手段は該配置関係数分のトラッピング図形を作成することを特徴とする請求項1に記載のトラッピング処理装置。
【請求項3】
前記中抜き文字作成手段が作成する中抜き文字は、前記トラッピング処理対象文字の配色と該トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形の配色との合成色が配色された所定幅の輪郭線を有することを特徴とする請求項1乃至2に記載のトラッピング処理装置。
【請求項4】
前記トラッピング図形作成手段は、前記中抜き文字と前記トラッピング処理対象文字と配置関係にある図形との論理積から前記トラッピング図形を作成することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のトラッピング処理装置。
【請求項5】
前記文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページを記述したページ記述言語ファイルを出力する出力手段を備え、該出力手段は前記トラッピング図形作成手段が作成したトラッピング図形に関わる記述を前記ページ記述言語ファイルに追記することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のトラッピング処理装置。
【請求項6】
文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理を実行するトラッピング処理方法であって、
前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得工程と、
前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成工程と、
前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成工程と、
前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置工程と、
を備えたことを特徴とするトラッピング処理方法。
【請求項7】
文字および図形、画像等のオブジェクトが配置された印刷物を表現するためのページにおいて、前記文字に対するトラッピング処理をCPUとメモリとを備えたコンピュータに実行させるトラッピング処理プログラムであって、
前記ページにおいて、トラッピング処理の対象となる文字と前記図形との配置関係を取得する配置関係取得ステップと、
前記取得した配置関係に基づいて前記トラッピング処理対象文字から中抜き文字を作成する中抜き文字作成ステップと、
前記取得した配置関係に基づいて、前記中抜き文字からトラッピング図形を作成するトラッピング図形作成ステップと、
前記トラッピング図形を所定の位置に配置するトラッピング図形配置ステップと、
を備えたことを特徴とするトラッピング処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−81807(P2009−81807A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251182(P2007−251182)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】