説明

トランスファ成形により製造されるマイクロチップ組立体

本発明は、マイクロチップ組立体及び関連する包括的な製造処理に関し、元の形成されていない第1の構成部1が、射出された溶融の第2の構成部5によりトランスファ成形型の表面に押圧されるものに関する。第1の構成部1は、特に、担持層上に電気的トラック3を有し、この担持層は、射出された材料の固化の後に除去されるようにすることができる。好適な実施例によれば、マイクロチップ8は、電気的トラック3に接合され、その後に充填材10の中に埋設される。電気的トラック3は、好ましくはマイクロチップ8の前方側11から、それらが外部回路に接続可能な組立体の後方側へと延びるのが良い。センサマイクロチップ8の感応性のある前方側11は、これにより、組立体全体の前面に非常に接近して配置され、この組立体をバイオセンサの応用に適したものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の構成部の3次元で形成された外層と第2の構成部のボディとの接合を有する物品の製造のための方法に関する。さらに、本発明は、上記方法により製造されるマイクロチップ組立体及び微小流体装置を含む。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願に係る文献のWO2005/038911A1には、センサマイクロチップが絶縁プレートにおける孔の背後に配されたマイクロチップ組立体が記述されている。このような組立体がバイオセンサとして用いられる場合、サンプル流体は当該孔に飛び込み当該センサチップの感応性のある前側に達する必要がある。これは、弱い又は停滞した流れの領域及び当該壁部に対する材料の潜在的損失を生むという不利な点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この状況に基づき、本発明の目的は、サンプル流体により良好に接触可能なセンサマイクロチップを備えたバイオセンサの製造を可能とする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1,2による方法、請求項4によるマイクロチップ組立体及び請求項7によるマイクロ流体装置によって達成される。好適な実施例は、従属請求項に開示される。
【0005】
その第1の態様によれば、本発明は、第1の構成部の3次元に形成された外層と第2の構成部の内部ボディととの接合又は結合を有するようにした部品の製造方法に関する。こうした全体的な構造の特徴に加えて、当該物品及びその所期の目的は、全く任意なものとすることができる。当該物品は、例えば、工具、家庭用具、デザイン物品、玩具、ケース又は特にはマイクロチップ組立体とすることができ、これについては、以下で詳しく説明する。このような物品の製造のための方法は、次のステップを有する。
【0006】
a)未だ形成されていない第1の構成部をトランスファ成形型に置く。
【0007】
b)第1の構成部が当該型の内表面に対して押圧されこれにより当該表面の3次元形状を帯びるように当該非形成の第1の構成部の射出側から当該トランスファ成形型の中へ第2の構成部の(普通は溶融した)材料を射出する。
【0008】
c)当該第2の構成部の材料を固化させ、これにより、当該形成された第1の構成部に当該第2の構成部を付着させ、(必要に応じて)第1の構成部の生成された形状を固定させる。
【0009】
ステップa)において用いられる非形成の第1の構成部は、通常は、平坦な(前置処理される)材料、例えば単層又は複層の金属シートとすることができる。トランスファ成形型は、通常通り、製造すべき物品の形状の陰画である。トランスファ成形型は、普通は溶融材料を流す能力を有する圧力により材料が充填させられ、この材料は、当該型の陰画を帯び、固体化後にこの形状を保つ。上述した方法によれば、この既知の処理は、既存の非形成の第1の構成部の一方側(「射出側」と呼ばれる)から当該トランスファ成形型の中へ第2の構成部の材料を射出することにより改変される。そして充填処理は、第1の構成部の所望の3次元形状を生成する。通常通り、トランスファ成形型は、射出前に排気されることができるように、すなわち空気が射出処理の間にその型から出ることができるように構成されなければならない。
【0010】
射出される材料は、第1の構成部を変形させ鍛造するのに十分なパワーを有していなければならない。したがって、通常は、10barよりも高い圧力、好ましくは30barを超える圧力、より好ましくは50barを超える圧力により射出される。
【0011】
第2の構成部の材料は、普通、(均質性又は不均質性の)プラスチック、例えば反応性エポキシ樹脂、又はポリカーボネート若しくは環状オレフィンポリマ(COP;cyclic olefine polymer)などの熱可塑性物質である。
【0012】
本方法の他の展開形態によれば、未形成の第1の構成部は、ステップb)において第2の構成部の材料が射出される前又はその間にトランスファ成形型の2つの部分の間にクランプ又は固定される。かかる固定は、当該第1の構成部がトランスファ成形型に対する所望の位置を帯びてかつ維持することを保証する。第1の構成部が、射出材料が当該型の表面に対して圧することにより不動にされると、トランスファ成形型の2つの部分の間の締め付けは、(例えばトランスファ成形型の可動部を引き込めることにより)解放することができる。但し、かかるクランプは、第2の構成部の材料により接触されることのない第1の構成部の領域をもたらす処理全体を通じて継続されられるようにしてもよい。
【0013】
既に述べたように、第1の構成部は、単層金属シートのような均質な材料とすることができる。本発明の好適実施例においては、第1の構成部は、射出側とは反対側に担持層を有し、この担持層がステップc)における固化の後に少なくとも一部が除去される。射出側とは反対であるので、担持層は、トランスファ成形型と接触し、これにより製造される物品の外面の一部となる。したがって、担持層は、その選択的除去を後の段階で可能とする外側からアクセス可能なものとなる。担持層のための好ましい材料は、アルミニウム又は銅のような金属である。担持層が金属(例えば銅)からなる場合、その除去は、フライス加工のような機械的処理及び/又はエッチングのような化学的処理により達成可能である。担持層の厚さは、普通、10μmないし100μmの範囲にある。担持層は、これにより一時的な基礎を提供することによって、脆弱な及び/又は1次元に延在する構造を処理することを可能にする。
【0014】
当該物品を特にマイクロチップ組立体とすることができることは既に述べている。この場合、第1の構成部は、マイクロチップがステップc)における固化の後に接着する電気的トラック又はリード線を有するのが好ましい。当該処理の変形加工ステップにより、これら電気的トラックを所望の3次元形状で実現させることができる。さらに、電気的トラックは、必須ではないが、上述した種類の一時的担持層の上に形成することができる。
【0015】
マイクロチップ組立体の上述した実施例において、マイクロチップは、電気的トラックをマイクロチップの前面側から物品の背面側に至らせて当該物品を通じた孔に配置されるのが好ましい。この場合、マイクロチップの前面側は、その名の通り当該物品の前側に向かって方向づけられ、マイクロチップの背面側は、当該物品の後ろ側に向かって方向づけられる。したがって、マイクロチップは、通常通り、その前側(通常はボンディングパッドが設けられるところ)において接触されるとともに、完成物品は、その後部側において接触されうるものとなる。したがって、物品全体の前側は、略平坦となりうる。これにより、特に、センサマイクロチップの感応性のある前方側がマイクロチップ組立体の前面に沿って流れる或る種のサンプル流体により接触されなければならないバイオセンサの応用分野において有利となる。
【0016】
本発明はさらに、前方側及び後方側を備えるマイクロチップ組立体に関し、この組立体は、次の構成部を有する。
a)マイクロチップ
b)当該マイクロチップを少なくとも一部埋設する充填材
c)当該充填材を少なくとも一部埋設する基板であって、その充填材及び基板が特に同一材料を含むものとすることができるものとした基板
d)組立体の前側から延びる電気的トラックであって、これらが組立体の後部側へ充填材と基板との間の界面に沿ってマイクロチップと接着させられるトラック
【0017】
マイクロチップ組立体は、充填材及び基板においてマイクロチップを確実に埋設する。さらに、電気的トラックがその前側においてマイクロチップと接触するとともにそれら自身が組立体の後部側において接触可能となり、これにより組立体の前側を大きな外部接続部から逃れさせたままにすることができるという利点がある。
【0018】
好適実施例によれば、マイクロチップ組立体の前側は、それを通じてマイクロチップの前側がアクセス可能とする孔を有する。電気的トラックはマイクロチップの前側から組立体の後部側へ延びるので、マイクロチップの前側を、概して組立体全体の前面に配することができる。したがってマイクロチップの前側は、サンプル材料により容易に接触可能となり、この構成は、(バイオ)センサの応用に適したものとなる。
【0019】
組立体のマイクロチップは、特に、磁界センサを有するものとすることができる。この場合、組立体を、電磁ビーズが付された粒子の検出のために用いることができる。
【0020】
マイクロチップ組立体は、好ましくは、上述した種類の方法によって、すなわち、トランスファ成形型における第2の構成部の材料の射出の間に未形成の第1の構成部を形成することによって、製造されるのがよい。
【0021】
本発明はさらに、上述した種類のマイクロチップ組立体を備えるマイクロ流体装置を有する。このようなマイクロ流体装置は、特に、流体生化学サンプルの調査のためのバイオセンサを構成可能である。
【0022】
本発明のこれらの態様及びその他の態様を、以下に説明される実施例に基づいて詳しく説明する。
【0023】
以下では、本発明は、添付図面を用いて例示により説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、バイオセンサの製造を、本発明の応用例のための一例として説明する。但し、本発明は、これに限定されるものではなく、数多くの異なる領域において簡単に適用可能なものである。
【0025】
今後、バイオセンサは、益々重要なものとなり、電気的相互接続部を備える使い捨てバイオセンサにとって低コストのパッケージングは非常に重要なものとなる。バイオセンサの測定原理の1つは、ラベル付けされた分子のカウントである。例えば、これら分子は、磁気抵抗センサにより検出可能な電磁ビーズがラベル付け可能である。これらセンサは、通常、シリコンウェーハテクノロジにより製造される。このようなバイオチップの例が、国際特許出願に係る文献のWO2005/010542A2、WO2005/010543A1及びWO2005/038911A1に記述されており、参照により本願に組み入れられる。これらバイオチップの不利な点は、センサの上部表面が当該パッケージの上部表面から離れているので、流体はセンサに向かって飛び込まなければならず、すなわち当該流体は、コーナに沿って案内される必要があり、不規則な構造に直面することになることである。これは、大きな流体サンプルの必要性を意味し、低度又は脆弱な流れの領域、そして恐らくは当該壁部に対する材料の損失を意味しうる。したがって、パッケージの上部とセンサチップの感応性のある前側との距離を出来る限り小さくすることが好ましい。以下では、この目的を達成し前述した困難を克服するマイクロチップ組立体の製造のための方法を詳しく説明する。
【0026】
図1は、この方法の第1のステップを概略的に示している。元の未形成の(すなわち平坦な)第1の構成部1´は、その上側に金めっきされた銅トラック3を備える担持層4(代表的厚さは50〜100μm)からなるものとして設けられる。トラック3は、感光性絶縁層2により局部的に被覆される。第1の構成部1´は、当業者に知られた方法によって製造可能である。第1の構成部1´は、トランスファ成形型6の上部6aの平坦な下側と対応の底部6bの直立した円形突起との間でクランプされる。
【0027】
図2は、例えばプラスチックとすることのできる溶融された第2の構成部5の射出後のトランスファ成形型6を示している。この処理の重要な特徴は、トランスファ成形型6の上部6aと第1の構成部1´との間、すなわち、第1の構成部の「射出側」(この場合、絶縁層2の側)から第2構成部5が射出されることである。この成形処理の高圧力(平均的には50barを超える)により、薄い基板1´は、底部6bの突起部周辺において鍛造される。同時に、射出された第2の構成部5と第1のこの時3次元に形成された構成部1との密接な接触及び密着した接合が得られる。第2の構成部5の射出は、図には示されない上部6aにおける通路を通じて行われるようにしてもよい。
【0028】
第2の構成部5の固化の後、図3に示される部品は、トランスファ成形型から除去可能となる。
【0029】
次のステップにおいて、担持層4は、物品から除去される。これは、トラック3の機械的安定性が、当該トラックがここでは第2の構成部5に付けられているのでもはや必要がないからである。この除去は、例えば、図4の物品を産出する化学エッチングにより達成可能である。
【0030】
図5は、電気的トラック3の前側端部3aに金又は半田バンプ9を介してセンサマイクロチップ8をどのようにして取り付けるかを示しており、マイクロチップ8は、トランスファ成形型6の底部6bの突起部により生成された(円形の)孔に配されるようにしている。電気的トラック3の後方側端部3bは、外部接続のための端子として用いることができる。
【0031】
次のステップにおいて、マイクロチップ8は、下部充填材10に埋められ、マイクロチップ8の前側11上のオプションの周囲シールリング7により当該充填材10の越流を回避している。図6は、これを、得られるマイクロチップ組立体の片側半分による拡大断面にて示している。図7は、3次元の透視図で同様の断面を示している。この図示のマイクロチップ組立体の代表的寸法は、次の如くである。
・センサチップ面積:1.4×1.5mm
・150μmのピッチを有する30個のボンディングパッド
・リード線(3)の厚さ:10μm
・センサ表面(11)の上方の相互接続部の全体の厚さ:30μ未満
【0032】
説明したマイクロチップ組立体の利点は、センサマイクロチップ8の前側11が組立体全体の前方平面Eに非常に近いということである。何故なら、バンプ9、電気的トラック3及び外側絶縁層2だけがマイクロチップ8の前側11の上方に延びているからである。これにより、この前方側の感応性回路(例えば、磁界の検出のための発生及び/又はGMR(Giant Magneto Resistances)用の配線)を、前方平面に非常に近づけることができ、サンプル流体は、凹所の中に飛び込む必要がない。
【0033】
最後に、本願においては「有する」なる用語は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数表現は複数の存在を排除せず、単一のプロセッサ又は他のユニットは複数の手段の機能を満たしうるものであることに留意されたい。本発明は、あらゆる新規な特徴的事項及び特徴的事項のあらゆる新規な組み合わせに存する。さらに、請求項における参照符号は、これらの範囲を制限するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】バイオセンサマイクロチップ組立体の製造のためのトランスファ成形型を通じる部分の側面図であって、未形成の第1の構成部が当該型の上部及び下部によりクランプされる図。
【図2】第2の構成部の射出及び第1の構成部の結果的変形の後の図1のシステムを示す図。
【図3】第2の構成部の固化及び図2のトランスファ成形型からの除去の後に得られる物品を示す図。
【図4】第1の構成部の担持層の除去後の図3の物品を示す図。
【図5】マイクロチップの第1の構成部の電気的トラックへのボンディングの後の図4の物品を示す図。
【図6】充填材にマイクロチップを埋設した後の図5の物品の拡大図。
【図7】図1ないし図6に示したステップにより製造されるマイクロチップ組立体の透視断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構成部の3次元に形成された外層と第2の構成部のボディとの接合を有する物品の製造のための方法であって、
a)射出側とは反対側に担持層を有する未形成の第1の構成部をトランスファ成形型に入れるステップと、
b)前記第2の構成部の材料を前記未形成の第1の構成部の前記射出側から前記トランスファ成形型に射出して、前記第1の構成部が前記型の内側表面に対して押圧されその3次元形状を帯びるようにするステップと、
c)前記第2の構成部の材料を固化させるステップと、
d)前記固化の後に少なくとも一部につき前記第1の構成部の前記担持層を除去するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
第1の構成部の3次元に形成された外層と第2の構成部のボディとの接合を有する物品の製造のための方法であって、
a)電気的トラックを有する未形成の第1の構成部をトランスファ成形型に入れるステップと、
b)前記第2の構成部の材料を前記未形成の第1の構成部の射出側から前記トランスファ成形型に射出して、前記第1の構成部が前記型の内側表面に対して押圧されその3次元形状を帯びるようにするステップと、
c)前記第2の構成部の材料を固化させるステップと、
d)前記固化の後に前記物品の孔にマイクロチップを配しこれを前記トラックに接着するステップと、
を有し、
前記トラックは、前記マイクロチップの前側から前記物品の後部側へ延びる、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記未形成の第1の構成部は、前記ステップb)における射出の前及び/又はその間において前記トランスファ成形型の2つの部分の間にクランプされる、方法。
【請求項4】
前部側及び後部側を備えたマイクロチップ組立体であって、
a)マイクロチップと、
b)前記マイクロチップを少なくとも一部埋設する充填材と、
c)前記充填材を少なくとも一部埋設する基板と、
d)前記マイクロチップに接合される前記組立体の前方側から、前記充填材と前記基板との間の界面に沿い前記組立体の後方側へ延びる電気的トラックと、
e)前記マイクロチップの前方側がアクセス可能とする前記組立体の前方側の孔と、
を有する組立体。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロチップ組立体であって、前記マイクロチップは、磁界センサを有する、組立体。
【請求項6】
請求項4に記載のマイクロチップ組立体であって、請求項1ないし3のうちのいずれか1つに記載の方法により製造される組立体。
【請求項7】
請求項4ないし6のうちいずれか1つに記載のマイクロチップ組立体を有するマイクロ流体装置又はバイオセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−500191(P2009−500191A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519089(P2008−519089)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052148
【国際公開番号】WO2007/004133
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】