説明

トリアゾール誘導体

新規なトリアゾール誘導体はTGF−β受容体Iキナーゼの阻害剤であり、とりわけ、腫瘍の処置に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有益な性質を有する新規な化合物、具体的には、医薬品を調製するために使用することができる化合物を見出すという目的を有した。
【0002】
本発明は、キナーゼ(具体的には、TGF−β受容体キナーゼ)によるシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす化合物、および、そのような化合物の使用、さらには、このような化合物を含む医薬組成物、および、キナーゼ誘導の疾患を処置するためのそのような化合物の使用に関連する。
【0003】
形質転換増殖因子βは、胚発達時において、また同様に、成長した生物において、その両方で重要な機能を行うTGF−βスーパーファミリー(非常に保存された多指向性増殖因子のファミリー)の原型である。哺乳動物において、TGF−βの3つのイソ型(TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)が特定されており、TGF−β1が最も一般的なイソ型である(Kingsley(1994)、Genes Dev、8:133〜146)。TGF−β3は、例えば、間葉性細胞においてだけ発現し、これに対して、TGF−β1が間葉性細胞および上皮細胞において見出される。TGF−βはプレプロタンパク質として合成され、不活性な形態で細胞外マトリックスに分泌される(Derynck(1985)、Nature、316:701〜705;Bottinger(1996)、PNAS、93:5877〜5882)。切断されたプロ領域(これは潜在関連ペプチド(LAP)としても知られており、成熟領域と会合したままである)のほかに、潜在型TGF−β結合タンパク質の4つのイソ型(LTBP1〜LTBP4)の1つがまた、TGF−βに結合し得る(Gentry(1988)、Mol Cell Biol、8:4162〜4168;Munger(1997)、Kindey Int、51:1376〜1382)。TGF−βの生物学的作用の発生のために必要である不活性な複合体の活性化はまだ完全には明らかにされてない。しかしながら、タンパク質切断的プロセシング、例えば、プラスミン、血漿トランスグルタミナーゼまたはトロンボスポンジンによるタンパク質切断的プロセシングが間違いなく必要である(Munger(1997)、Kindey Int、51:1376〜1382)。活性化リガンドのTGF−βは、膜上の3つのTGF−β受容体(至る所で発現するI型受容体およびII型受容体ならびにIII型受容体のベータグリカンおよびエンドグリン、後者のみが内皮細胞において発現される)を介してその生物学的作用を媒介する(Gougos(1990)、J Biol Chem、264:8361〜8364;Loeps−Casillas(1994)、J Cell Biol、124:557〜568)。両方のIII型TGF−β受容体は、細胞内へのシグナルの伝達を容易にする細胞内キナーゼドメインを有していない。III型TGF−β受容体は3つのTGF−βイソ型のすべてと高い親和性で結合し、II型TGF−β受容体はまた、III型受容体に結合したリガンドに対するより高い親和性を有するので、その生物学的機能は、I型およびII型のTGF−β受容体についてのリガンドの利用性の調節にあると考えられる(Lastres(1996)、J Cell Biol、133:1109〜1121;Lopes−Casillas(1993)、Cell、73:1435〜1344)。構造的に近い関係にあるI型受容体およびII型受容体は、シグナルの伝達を担うセリン/トレオニンキナーゼドメインを細胞質領域内に有する。II型TGF−β受容体はTGF−βと結合し、その後、I型TGF−β受容体がこのシグナル伝達複合体に呼び寄せられる。II型受容体のセリン/トレオニンキナーゼドメインは構成的に活性であり、I型受容体のいわゆるGSドメインにおいてこの複合体におけるセリル基をリン酸化することができる。このリン酸化により、I型受容体のキナーゼが活性化され、今度はこのキナーゼがみずから細胞内のシグナル媒介因子(SMADタンパク質)をリン酸化することができ、したがって、細胞内のシグナル伝達を開始させる(このことは、Derynck(1997)、Biochim Biophys Acta、1333:F105〜F150に要約される)。
【0004】
SMADファミリーのタンパク質は、すべてのTGF−βファミリー受容体キナーゼに対する基質として役立つ。今日までに、8個のSMADタンパク質が特定されており、これらは3つの群に分けることができる:(1)受容体と会合したSMAD(R−SMAD)がTGF−β受容体キナーゼの直接の基質である(SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、SMAD8);(2)co−SMAD、これはシグナルカスケードの期間中にR−Smadと会合する(SMAD4);および(3)阻害性SMAD(SMAD6、SMAD7)、これは上記のSMADタンパク質の活性を阻害する。様々なR−SMADの中で、SMAD2およびSMAD3がTGF−β特異的なシグナル媒介因子である。したがって、TGF−βのシグナルカスケードにおいて、SMAD2/SMAD3がI型TGF−β受容体によってリン酸化され、このリン酸化により、SMAD2/SMAD3がSMAD4と会合することが可能になる。SMAD2/SMAD3およびSMAD4の生じた複合体は次に細胞の核の中に転位することができ、核において、この複合体が、TGF−βにより調節される遺伝子の転写を、直接的に、または、他のタンパク質を介して開始させることができる(このことは、Itoh(2000)、Eur J Biochem、267:6954〜6967;Shi(2003)、Cell、113:685〜700において要約される)。
【0005】
TGF−βの機能の領域は広範囲にわたっており、また、細胞タイプおよび分化状態に依存している(Roberts(1990)、Handbook of Experimental Pharmacology:419〜472)。TGF−βによって影響される細胞機能には、アポトーシス、増殖、分化、可動性および細胞接着が含まれる。したがって、TGF−βは非常に広範囲の様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。胚発達時において、TGF−βが、形態形成の様々な部位において、また、特に、上皮−間葉の相互作用を伴う領域(この領域において、TGF−βが重要な分化プロセスを誘導する)において発現する(Pelton(1991)、J Cell Biol、115:1091〜1105)。TGF−βはまた、幹細胞の自己複製および未分化状態の維持において重要な機能を行う(Mishra(2005)、Science、310:68〜71)。加えて、TGF−βはまた、免疫系の調節において重要な機能を果たす。TGF−βは、特にリンパ球の増殖を阻害し、また、組織マクロファージの活性を制限するので、一般には免疫抑制作用を有する。したがって、TGF−βは炎症反応を鎮めて元の状態に戻すことを可能にし、したがって、過度な免疫反応を防止することを助ける(Bogdan(1993)、Ann NY Acad Sci、685:713〜739;このことは、Letterio(1998)、Annu Rev Immunol、16:137〜161において要約される)。TGF−βの別の機能が細胞増殖の調節である。TGF−βは、内皮起源、上皮起源および造血起源の細胞の成長を阻害し、しかし、間葉起源の細胞の成長を促進させる(Tucker(1984)、Science、226:705〜707;Shipley(1986)、Cancer Res、46:2068〜2071;Shipley(1985)、PNAS、82:4147〜4151)。TGF−βのさらなる重要な機能が細胞接着および細胞−細胞の相互作用の調節である。TGF−βは、細胞外マトリックスのタンパク質(例えば、フィブロネクチンおよびコラーゲンなど)を誘導することによって細胞外マトリックスの組み立てを促進させる。加えて、TGF−βはマトリックス分解メタロプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼの阻害剤の発現を低下させる(Roberts(1990)、Ann NY Acad Sci、580:225〜232;Ignotz(1986)、J Biol Chem、261:4337〜4345;Overall(1989)、J Biol Chem、264:1860〜1869);Edwards(1987)、EMBO J、6:1899〜1904)。
【0006】
TGF−βの作用の範囲が広いことは、TGF−βが多くの生理学的状況(例えば、創傷治癒など)および病理学的プロセス(例えば、ガンおよび線維症など)において重要な役割を果たすことを意味する。
【0007】
TGF−βは創傷治癒における重要な増殖因子の1つである(このことは、O’Kane(1997)、Int J Biochem Cell Biol、29:79〜89において要約される)。肉芽形成期の期間中において、TGF−βが傷害部位において血中の血小板から放出される。その後、TGF−βはマクロファージにおけるそれ自身の産生を調節し、例えば、単球による他の増殖因子の分泌を誘導する。創傷治癒時における最も重要な機能には、炎症性細胞の走化性の刺激、細胞外マトリックスの合成、ならびに、創傷治癒プロセスに関与するすべての重要な細胞タイプの増殖、分化および遺伝子発現の調節が含まれる。
【0008】
病理学的条件下において、これらのTGF−β媒介による作用(特に、細胞外マトリックス(ECM)の産生の調節)は線維症または皮膚における瘢痕をもたらすことがある(Border(1994)、N Engl J Med、331:1286〜1292)。
【0009】
線維症疾患、糖尿病性腎障害および糸球体腎炎については、TGF−βが腎細胞の肥大および細胞外マトリックスの病原的蓄積を促進させることが示されている。抗TGF−β抗体を用いた処置によるTGF−βのシグナル伝達経路の妨害は、糸球体間質マトリックスの拡大、腎臓機能における進行性低下を防止し、また、糖尿病動物における糖尿病性糸球体障害の明らかにされた病変部を減少させる(Border(1990)、346:371〜374;Yu(2004)、Kindney Int、66:1774〜1784;Fukasawah(2004)、Kindney Int、65:63〜74;Sharma(1996)、Diabetes、45:522〜530)。
【0010】
TGF−βはまた、肝臓線維症において重要な役割を果たす。筋線維芽細胞(肝硬変を発症する途中における細胞外マトリックスの主要な産生体)を生じさせるための肝星細胞の活性化(これは、肝臓線維症の発症には不可欠である)がTGF−βによって刺激される。TGF−βのシグナル伝達経路の妨害が実験的モデルにおいて線維症を軽減させることがこの場合でも同様に示されている(Yata(2002)、Hepatology、35:1022〜1030;Arias(2003)、BMC Gastroenterol、3:29)。
【0011】
TGF−βはまた、ガンの形成において重要な機能を負う(このことは、Derynck(2001)、Nature Genetics:29:117〜129;Elliott(2005)、J Clin Onc、23:2078〜2093において要約される)。ガン発生の初期段階において、TGF−βはガンの形成を阻止する。この腫瘍抑制作用は、主として、TGF−βが上皮細胞の分裂を阻害することができることに基づく。それに反して、TGF−βは、ガンの成長、および、後期の腫瘍段階における転移物の形成を促進させる。これは、ほとんどの上皮性腫瘍がTGF−βの成長阻害作用に対する抵抗性を発達させるという事実に起因し得ると考えられ、TGF−βは他の機構を介してガン細胞の成長を同時に助けている。これらの機構には、血管形成の促進、免疫抑制作用(これは、免疫系の抑制機能(免疫学的監視)を回避することにおいて腫瘍細胞を助けている)、ならびに、転移物の浸襲性および形成の促進が含まれる。腫瘍細胞の浸襲的表現型の形成は、転移物を形成するための最も重要な必要条件の1つである。TGF−βは、細胞接着、運動性および細胞外マトリックスの形成を調節するその能力によってこのプロセスを促進させる。そのうえ、TGF−βは、細胞の上皮表現型から、浸襲性の間葉表現型への移行(上皮間葉移行=EMT)を誘導する。ガン成長の促進においてTGF−βが果たす重要な役割がまた、強いTGF−β発現と、不良な予後との間における相関を示す研究によって明らかにされる。増大したTGF−βレベルが、とりわけ、前立腺ガン患者、乳ガン患者、腸ガン患者および肺ガン患者において見出されている(Wikstrom(1998)、Prostate、37:19〜29;Hasegawa(2001)、Cancer、91:964〜971;Friedman(1995)、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev、4:549〜54)。
【0012】
上記で記載されたTGF−βのガン促進作用のために、TGF−βのシグナル伝達経路の阻害、例えば、TGF−βI型受容体を阻害することによる阻害は、可能性のある治療概念である。TGF−βのシグナル伝達経路の妨害がガンの成長を実際に阻害することが、数多くの前臨床試験において示されている。したがって、可溶性のTGF−βII型受容体による処置では、転移物の形成が、浸襲性の乳ガンを時間の経過とともに発達させる遺伝子組換えマウスにおいて低下する(Muraoka(2002)、J Clin Invest、109:1551〜1559;Yang(2002)、J Clin Invest、109:1607〜1615)。
【0013】
不完全なTGF−βII型受容体を発現する腫瘍細胞株は、低下した腫瘍成長および転移成長を示す(Oft(1998)、Curr Biol、8:1243〜1252;McEachern(2001)、Int J Cancer、91:76〜82;Yin(1999)、Jclin Invest、103:197〜206)。
【0014】
「高まったTGF−β活性によって特徴づけられる」状態には、TGF−βの合成が刺激され、その結果、TGF−βが、増大した量で存在する状態、あるいは、TGF−βの潜在型タンパク質が望ましくないほど活性化されるか、または、活性なTGF−βタンパク質に変換される状態、あるいは、TGF−β受容体がアップレギュレーションされる状態、あるいは、TGF−βタンパク質が、疾患の存在位置において、細胞または細胞外マトリックスに対する高まった結合を示す状態が含まれる。したがって、いずれの場合でも、「高まった活性」は、TGF−βの生物学的活性が、原因にかかわらず、望ましくないほど高い任意の状態を示す。
【0015】
数多くの疾患がTGF−β1の過剰産生に関連している。TGF−βの細胞内シグナル伝達経路の阻害剤は線維増殖性疾患のための有用な処置である。具体的には、線維増殖性疾患には、調節されないTGF−β活性に関連する腎臓障害、および、糸球体腎炎(GN)(例えば、メサンギウム増殖性GN、免疫GNおよび半月体GNなど)を含む過度な線維形成が含まれる。他の腎臓状態には、糖尿病性腎障害、腎間質線維症、シクロスポリンを受けている移植患者における腎線維症、および、HIV関連の腎障害が含まれる。コラーゲン血管障害には、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、または、レイノー症候群の発生に関連する障害が含まれる。過度なTGF−β活性から生じる肺線維症には、成人呼吸窮迫症候群、特発性肺線維症、および、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデスおよび強皮症など)、化学物質接触またはアレルギーに多くの場合には関連する間質性肺線維症が含まれる。線維増殖性特徴を伴う別の自己免疫障害がリウマチ様関節炎である。
【0016】
線維増殖性状態に関連する眼疾患には、網膜再固定手術に付随する増殖性硝子体網膜症、眼内レンズ埋め込みを伴う白内障摘出、および、TGF−β1の過剰産生を伴う緑内障後ドレナージ手術が含まれる。
【0017】
TGF−β1の過剰産生を伴う線維症疾患は、慢性の状態(例えば、腎臓、肺および肝臓の線維症など)、および、より急性の状態(例えば、皮膚瘢痕化および再狭窄など)に分けることができる(Chamberlain、J.Cardiovascular Drug Reviews、19(4):329〜344)。腫瘍細胞によるTGF−β1の合成および分泌はまた、攻撃的な脳腫瘍または乳腫瘍を有する患者において見られるように、免疫抑制を引き起こすことがある(Arteaga他(1993)、J.Clin.Invest.、92:2569〜2576)。マウスにおけるリーシュマニア感染の経過がTGF−β1によって劇的に変化する(Barral−Netto他(1992)、Science、257:545〜547)。TGF−β1は疾患を悪化させ、これに対して、TGF−β1抗体は遺伝的に感受性のマウスにおいて疾患の進行を停止させた。遺伝的に抵抗性のマウスが、TGF−β1を投与したとき、リーシュマニア感染に対して感受性になった。
【0018】
細胞外マトリックスの沈着に対するTGF−β1の顕著な影響が総説されており(RoccoおよびZiyadeh(1991)、Contemporary Issues in Nephrology、v.23、Hormones,autocoids and the kidney、編者:Jay Stein、Churchill Livingston、New York、391頁〜410頁;Roberts他(1988)、Rec.Prog.Hormone Res.、44:157〜197)、そのような影響には、細胞外マトリックス成分の合成の刺激および分解の阻害が含まれる。糸球体の構造およびろ過特性は大部分が糸球体間質および糸球体膜の細胞外マトリックスの組成によって決定されるので、TGF−β1が腎臓に対する顕著な影響を有することは驚くことではない。増殖性糸球体腎炎における糸球体間質マトリックスの蓄積(Border他(1990)、Kidney Int.、37:689〜695)、および、糖尿病性腎障害における糸球体間質マトリックスの蓄積(Mauer他(1984)、J.Clin.Invest.、74:1143〜1155)は、そのような疾患の明瞭かつ主要な病理学的特徴である。TGF−β1のレベルがヒトの糖尿病性糸球体硬化症(進行した神経障害)では上昇している(Yamamoto他(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.、90:1814〜1818)。TGF−β1はいくつかの動物モデルでの腎線維症の発生における重要な媒介因子である(Phan他(1990)、Kidney Int.、37:426;Okuda他(1990)、J.Clin.Invest.、86:453)。ラットにおける実験的に誘導された糸球体腎炎の抑制が、TGF−β1に対する抗血清によって明らかにされており(Border他(1990)、Nature、346:371)、また、TGF−β1と結合することができる細胞外マトリックスタンパク質のデコリンによって明らかにされている(Border他(1992)、Nature、360:361〜363)。
【0019】
過度なTGF−β1は皮膚の瘢痕組織形成を引き起こす。ラットにおいて治癒途中の創傷部の周辺部に注入された中和するTGF−β1抗体は、創傷治癒速度または創傷部の引張り強さを妨害することなく、瘢痕化を阻害することが示されている(Shah他(1992)、Lancet、339:213〜214)。同時に、低下した血管形成、創傷部における低下した数のマクロファージおよび単球、ならびに、瘢痕組織における低下した量の乱れたコラーゲン繊維の沈着が認められた。
【0020】
TGF−β1は、バルーン血管形成術後の動脈における平滑筋細胞の増殖および細胞外マトリックスの沈着から生じる動脈壁の進行性肥厚における因子であるかもしれない。再狭窄した動脈の直径がこの肥厚によって90%減少することがあり、また、直径における減少のほとんどが、平滑筋細胞体ではなく、むしろ、細胞外マトリックスのためであるので、これらの血管を、単に広範囲の細胞外マトリックスの沈着を減らすことによって50%に広げることが可能である場合がある。TGF−β1遺伝子によりインビボでトランスフェクションされた非損傷のブタ動脈において、TGF−β1の遺伝子発現が細胞外マトリックスの合成および過形成の両方に関連していた(Nabel他(1993)、Proc.Natl.Acad.SciUSA、90:10759〜10763)。TGF−β1により誘導された過形成は、PDGF−BBにより誘導された過形成ほど広範囲ではなく、しかし、細胞外マトリックスは、TGF−β1トランスフェクタントに関してはより広範囲であった。細胞外マトリックスの沈着は、この遺伝子移入ブタモデルにおいて、FGF−1(FGFの分泌型形態)によって誘導された過形成と何ら関連しなかった(Nabel(1993)、Nature、362:844〜846)。
【0021】
腫瘍によって産生されるTGF−β1が有害となり得るガンが数タイプ存在する。MATLyLuラット前立腺ガン細胞(SteinerおよびBarrack(1992)、Mol.Endocrinol、6:15〜25)およびMCF−7ヒト乳ガン細胞(Arteaga他(1993)、Cell Growth and Differ.、4:193〜201)は、マウスのTGF−β1を発現するベクターによるトランスフェクションの後ではより腫瘍形成性かつ転移性になった。TGF−β1は、ヒトの前立腺ガンおよび進行した胃ガンにおける血管形成、転移および不良な予後に関連している(Wikstrom,P.他(1988)、Prostate、37;19〜29;Saito,H.他(1999)、Cancer、86:1455〜1462)。乳ガンでは、不良な予後が、上昇したTGF−β1と関連し(Dickson他(1987)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:837〜841;Kasid他(1987)、Cancer Res.、47:5733〜5738;Daly他(1990)、J.Cell Biochem.、43:199〜211;Barrett−Lee他(1990)、Br.J.Cancer、61:612〜617;King他(1989)、J.Steroid Biochem.、34:133〜138;Welch他(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:7678〜7682;Walker他(1992)、Eur.J.Cancer、238:641〜644)、また、タモキシフェン処置によるTGF−β1の誘導(Butta他(1992)、Cancer Res.、52:4261〜4264)が乳ガンについてのタモキシフェン処置の失敗に関連している(Thompson他(1991)、Br.J.Cancer、63:609〜614)。抗TGF−β1抗体は無胸腺マウスにおいてMDA−231ヒト乳ガン細胞の成長を阻害し(Arteaga他(1993)、J.Clin.Invest.、92:2569〜2576)、これは、脾臓のナチュラルキラー細胞活性における増大と相関する処置である。潜在型TGF−β1によりトランスフェクションされたCHO細胞はまた、低下したNK活性および増大した腫瘍成長をヌードマウスにおいて示した(Wallick他(1990)、J.Exp.Med.、172:1777〜1784)。したがって、乳腫瘍によって分泌されるTGF−βは内分泌の免疫抑制を引き起こすかもしれない。TGF−β1の高い血漿中濃度が、進行した乳ガンの患者についての不良な予後を示すことが示されている(Anscher他(1993)、N.Engl.J.Med.、328:1592〜1598)。高い循環TGF−βを高用量の化学療法および自己骨髄移植の前に有する患者は、肝静脈閉塞疾患(全患者の15%〜50%が50%までの死亡率を有する)および特発性間質性肺炎(全患者の40%〜60%)の危険性が高い。これらの知見が意味するところは、1)TGF−β1の上昇した血漿中レベルは、危険性のある患者を特定するために使用することができること、および、2)TGF−β1を低下させれば、乳ガン患者について、これらの一般的な処置の発病および死亡を低下させることができることである。
【0022】
多くの悪性細胞が形質転換増殖因子β(TGF−β)(強力な免疫抑制因子)を分泌する。このことは、TGF−βの産生が宿主の免疫学的監視からの著しい腫瘍回避機構を表すかもしれないことを示唆する。腫瘍を有する宿主におけるTGF−βのシグナル伝達が乱れている白血球サブ集団の確立は、ガンの免疫治療のための可能性のある手段を提供する。T細胞におけるTGF−βのシグナル伝達が乱れている遺伝子組換え動物モデルは、通常の場合には致死的な、TGF−βを過剰産生するリンパ腫腫瘍(EL4)を根絶することができる(GorelikおよびFlavell(2001)、Nature Medicine、7(10):1118〜1122)。
【0023】
腫瘍細胞におけるTGF−β分泌のダウンレギュレーションは宿主における免疫原性の回復をもたらし、一方で、TGF−βに対するT細胞の非感受性は、加速された分化および自己免疫性をもたらし、その様々な要素が、寛容化された宿主において、自己抗原を発現する腫瘍と闘うために要求されるかもしれない。TGF−βの免疫抑制的影響はまた、そのCD4/CD8 T細胞カウント数に基づいた予測されるよりも低い免疫応答を有するHIV患者のサブ集団に関係している(Garba他、J.Immunology(2002)、168:2247〜2254)。TGF−β中和抗体は培養において影響を取り消すことができた。このことは、TGF−βのシグナル伝達阻害剤が、HIV患者のこのサブセットに存在する免疫抑制を取り消すことにおいて有用性を有するかもしれないことを示している。
【0024】
ガン発生の最も初期段階の期間中において、TGF−β1は強力な腫瘍抑制因子として作用することができ、また、いくつかの化学的予防剤の作用を媒介することがある。しかしながら、悪性新生物の発生時および進行時のある時点で、腫瘍細胞は、微小環境における生物活性なTGF−βの出現と並行して、TGF−β依存的な成長阻害から逃れるようである。TGF−βの二重の腫瘍抑制/腫瘍促進の役割が、TGF−βをケラチノサイトにおいて過剰発現する遺伝子組換え系で明瞭に解明されている。そのような遺伝子組換え体は良性の皮膚病変部の形成に対してより抵抗性であった一方で、遺伝子組換え体における転移変換の速度が劇的に増大した(Cui他(1996)、Cell、86(4):531〜42)。原発性腫瘍における悪性細胞によるTGF−β1の産生は、腫瘍進行の段階が進むに従い、増大するようである。主な上皮ガンの多くにおける研究は、ヒトのガンによるTGF−βの増大した産生が腫瘍進行時における比較的後期の事象として生じることを示唆する。さらに、腫瘍に関連したTGF−βは腫瘍細胞に選択的な利点をもたらし、腫瘍の進行を促進させる。細胞/細胞および細胞/間質の相互作用に対するTGF−β1の影響は、侵入および転移のためのより大きい性向をもたらす。
【0025】
腫瘍に関連したTGF−βは、活性化されたリンパ球のクローン拡大の強力な阻害剤であるので、腫瘍細胞が免疫監視から逃れることを可能にしているかもしれない。TGF−βはまた、アンギオスタチンの産生を阻害することが示されている。様々なガン治療様式(例えば、放射線治療および化学療法など)は、活性化されたTGF−βの産生を腫瘍において誘導し、それにより、TGF−βの成長阻害効果に対して抵抗性である悪性細胞の成長を選択する。したがって、これらの抗ガン処置は、高まった成長および浸襲性を有する腫瘍の危険性を増大させ、また、そのような腫瘍の発達を早める。このような状況では、TGF−β媒介によるシグナル伝達を標的とする薬剤は非常に効果的な治療法であるかもしれない。TGF−βに対する腫瘍細胞の抵抗性は、放射線治療および化学療法の細胞傷害性影響の多くを取り消すことが示されており、したがって、間質におけるTGF−βの処置依存的な活性化は、微小環境を、腫瘍の進行をより促進させるものにすることがあり、また、線維症を引き起こす組織損傷の一因となるので、有害でさえあるかもしれない。TGF−βのシグナル伝達阻害剤の開発は、進行したガンを単独または他の治療との組合せで処置することに利益をもたらす可能性がある。
【0026】
本発明の化合物は、前記化合物をその必要性のある患者に投与することによりTGF−βをそのような患者において阻害することによって、TGF−βにより影響されるガンおよび他の疾患状態を処置するために適している。TGF−βはまた、アテローム性動脈硬化(T.A.McCaffrey:アテローム性動脈硬化におけるTGF−psおよびTGF−β受容体、Cytokineand Growth Factor Reviews、2000、11、103〜114)、および、アルツハイマー病(Masliah,E.、Ho,G.、Wyss−Coray,T.、アルツハイマー病微小血管傷害におけるTGF−βの機能的役割:遺伝子組換えマウスからの教訓、NeurochemistryInternational、2001、39、393〜400)に対して有用であると考えられる。
【0027】
本発明による化合物およびその塩は、十分に許容されながら、非常に有益な薬理学的性質を有することが見出されている。
【0028】
具体的には、本発明による化合物およびその塩はTGF−β受容体Iキナーゼ阻害特性を示す。
【0029】
本発明による化合物は、好ましくは、酵素に基づくアッセイ(例えば、本明細書中に記載されるようなアッセイなど)において容易に明らかにされる好都合な生物学的活性を示す。酵素に基づくそのようなアッセイにおいて、本発明による化合物は、好ましくは、好適な範囲(好ましくはマイクロモル濃度の範囲、より好ましくはナノモル濃度の範囲)のIC50値によって通常の場合には報告される阻害作用を示し、そのような阻害作用を生じさせる。
【0030】
本明細書中で議論されるように、これらのシグナル伝達経路は様々な疾患について関連している。したがって、本発明による化合物は、前記シグナル伝達経路の1つまたは複数との相互作用によって前記シグナル伝達経路に依存する疾患の予防および/または処置において有用である。
【0031】
したがって、本発明は、本明細書中に記載されるシグナル伝達経路の促進剤または阻害剤としての本発明による化合物、好ましくは、本明細書中に記載されるシグナル伝達経路の阻害剤としての本発明による化合物に関連する。したがって、本発明は、好ましくは、TGFβのシグナル伝達経路の促進剤または阻害剤としての本発明による化合物、好ましくは、TGFβのシグナル伝達経路の阻害剤としての本発明による化合物に関連する。
【0032】
本発明はさらに、増大したTGFβ活性によって引き起こされ、媒介され、および/または、広がる疾患(好ましくは、本明細書中に記載される疾患)の処置および/または予防における本発明による1つまたは複数の化合物の使用に関連する。
【0033】
したがって、本発明は、前記疾患の処置および/または予防における医薬品および/または医薬品有効成分としての本発明による化合物、ならびに、前記疾患を処置および/または予防するための医薬品を調製するための本発明による化合物の使用、ならびに、本発明による1つまたは複数の化合物を、そのような投与を必要としている患者に投与することを含む前記疾患の処置方法に関連する。
【0034】
宿主または患者は、任意の哺乳動物種に属することができ、例えば、霊長類種(特に、ヒト)、齧歯類(これには、マウス、ラットおよびハムスターが含まれる)、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどが可能である。動物モデルは、ヒト疾患を処置するためのモデルを提供するので、実験的調査のために注目される。
【0035】
本発明による化合物による処置に対する特定の細胞の感受性をインビトロ試験によって求めることができる。典型的には、細胞の培養物が、様々な濃度での本発明による化合物と、活性な薬剤が細胞死を誘導するか、または、遊走を阻害することを可能にするために十分な期間にわたって、通常的には約1時間〜1週間の間で一緒にされる。インビトロ試験を、生検物サンプルに由来する培養細胞を使用して行うことができる。処理後に残存する生細胞がその後で計数される。
【0036】
用量は、使用された具体的な化合物、具体的な疾患、患者の状態などに依存して変化する。治療的用量は、典型的には、患者の生存性が維持されながら、標的組織における望まれない細胞集団をかなり減らすために十分である。処置は、一般には、相当の減少が生じているまで続けられ(例えば、細胞負荷量における少なくとも約50%の減少)、だが、本質的にそれ以上の望まれない細胞が体内で検出されなくなるまで続けることができる。
【0037】
シグナル伝達経路の特定のために、また、様々なシグナル伝達経路の間における相互作用を検出するために、様々な科学者が好適なモデルまたはモデル系を開発している:例えば、細胞培養モデル(例えば、Khwaja他、EMBO、1997、16、2783〜93)、および、遺伝子組換え動物のモデル(例えば、White他、Oncogene、2001、20、7064〜7072)。シグナル伝達カスケードにおける特定の段階を明らかにするためには、相互作用する化合物を、シグナルを調節するために利用することができる(例えば、Stephens他、Biochemical J.、2000、351、95〜105)。本発明による化合物はまた、動物モデルおよび/または細胞培養モデルにおいて、また、本出願において述べられた臨床疾患においてキナーゼ依存的なシグナル伝達経路を試験するための試薬として使用することができる。
【0038】
キナーゼ活性の測定は、当業者には広く知られている技術である。基質、例えば、ヒストン(例えば、Alessi他、FEBS Lett.、1996、399、3、333頁〜338頁)または塩基性ミエリンタンパク質を使用してキナーゼ活性を求めるための一般的な試験システムが文献に記載される(例えば、Campos−Gonzalez,R.およびGlenney,Jr.,J.R.、1992、J.Biol.Chem.、267、14535頁)。
【0039】
キナーゼ阻害剤の特定のために、様々なアッセイシステムを利用することができる。シンチレーション近接アッセイ(Sorg他、J.of.Biomolecular Screening、2002、7、11〜19)およびフラッシュプレートアッセイにおいて、γATPを用いた基質としてのタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化が測定される。阻害性化合物の存在下では、低下した放射能シグナルが検出可能であるか、または、放射能シグナルが全く検出されない。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)の技術がアッセイ方法として好適である(Sills他、J.of Biomolecular Screening、2002、191〜214)。
【0040】
他の非放射性ELISAアッセイ方法では、特異的なホスホ抗体(ホスホAB)が使用される。ホスホABは、リン酸化された基質のみと結合する。この結合を、二次のペルオキシダーゼコンジュゲート化抗ヒツジ抗体を使用して化学発光によって検出することができる(Ross他、2002、Biochem.J.(まもなく発行される)、原稿BJ20020786)。
【0041】
従来技術
「B2」、「B3」、「B4」、「B5」、「B8」、「B9」、「B10」、「B12」、「B14」、「B16」、「B17」、「B19」、「B20」の各化合物が、鎮痛効果および/または炎症性効果を有する医薬品有効成分としてドイツ国特許2409308に記載される。
【0042】
「B1」、「B6」、「B7」、「B11」、「B13」、「B15」、「B18」、「B21」、「B22」の各化合物が、鎮痛作用および/または抗炎症作用を有する医薬品有効成分として、E.Szarvasi他によって、Eur.J.Med.、1978、13、113〜119に記載されている。
【0043】
他のトリアゾロ−1,5−ベンゾジアゼピン系化合物がドイツ国特許2318673から知られている。
【0044】
L.Kosychova他は、Chemistry of Heterocyclic Compounds、Vol.40、811〜815(2004)において、腫瘍を治療するための他の5,6−ジヒドロ−4H−1,2,4−トリアゾロ−a]−1,5−ベンゾジアゼピンを記載する。
【0045】
V.Ambrogi他は、J.Heterocyclic Chem.、31、1349〜1352(1994)において、4,5−ジヒドロ−s−トリアゾロ[3,4−d]−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体を記載する。
【0046】
V.Ambrogi他は、II Farmaco、48、665〜676(1993)において、中枢神経系に対する作用を有する1,4−ベンゾチアジン系化合物および1,5−ベンゾチアゼピン系化合物を記載する。
【0047】
他のトリアゾール誘導体が国際特許出願公開WO03/042211A1においてTGF−β阻害剤として開示される。
【0048】
さらに他のトリアゾール誘導体が国際特許出願公開WO2004/026307A1においてTGF−β阻害剤として知られる。
【0049】
二環式ピロール誘導体が国際特許出願公開WO02/094833においてTGF−β阻害剤として記載される。
【0050】
発明の概要
本発明は、すべての比率でのそれらの混合物を含めて、下記の群:
【0051】
【表1−1】



【0052】
【表1−2】



【0053】
【表1−3】



【0054】
【表1−4】



【0055】
【表1−5】



【0056】
【表1−6】



【0057】
【表1−7】



【0058】
【表1−8】



【0059】
【表1−9】



【0060】
【表1−10】



【0061】
【表1−11】



【0062】
【表1−12】



【0063】
【表1−13】



【0064】
【表1−14】



【0065】
【表1−15】



【0066】
【表1−16】



【0067】
【表1−17】



【0068】
【表1−18】



【0069】
【表1−19】



【0070】
【表1−20】



【0071】
【表1−21】



【0072】
【表1−22】



【0073】
【表1−23】



【0074】
【表1−24】



【0075】
【表1−25】



【0076】
【表1−26】



【0077】
【表1−27】



【0078】
ならびに、それらの医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体から選択される化合物に関連する。
【0079】
本発明はまた、これらの化合物の光学活性な形態(立体異性体)、エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマー、ならびに、水和物および溶媒和物に関連する。化合物の溶媒和物という用語は、それらの相互の引力のために形成する、化合物における不活性な溶媒分子の付加物を意味することが理解される。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物あるいはアルコキシドである。
【0080】
医薬的に使用可能な誘導体という用語は、例えば、本発明による化合物の塩、および、同様に、いわゆるプロドラッグ化合物を意味することが理解される。
【0081】
プロドラッグ誘導体という用語は、例えば、アルキル基またはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されている本発明による化合物であって、生物において容易に切断されて、本発明による効果的な化合物を形成する本発明による化合物を意味することが理解される。これらにはまた、例えば、Int.J.Pharm.、115、61〜67(1995)に記載されるように、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体が含まれる。
【0082】
表現「有効量」は、例えば、研究者または医師によって探求または所望される生物学的応答または医学的応答を組織、系、動物またはヒトにおいて引き起こす医薬品または医薬品有効成分の量を示す。
【0083】
加えて、表現「治療有効量」は、この量を受けていない対応する被験体と比較して、下記の結果を有する量を示す:
疾患、症候群、状態、病訴、障害または副作用の改善された処置、治癒、防止または除去、あるいは、同様に、疾患、病訴または障害の進行における軽減。
【0084】
表現「治療有効量」はまた、正常な生理学的機能を増大させるために効果的である量を包含する。
【0085】
本発明はまた、本発明による化合物の混合物の使用、例えば、2つのジアステレオマーの混合物の使用、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比率での2つのジアステレオマーの混合物の使用に関連する。
【0086】
これらは、特に好ましくは、立体異性化合物の混合物である。
【0087】
加えて、本発明による化合物、同様に、その調製のための出発物質は、前記反応について知られ、また、好適である反応条件のもとで明確であるための、文献(例えば、標準的な著作、例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart)に記載されるような、それ自体は知られている方法によって調製される。ここではより詳しくは述べられないそれ自体は知られている変法もまた、ここでは使用することができる。
【0088】
本発明による化合物は、好ましくは、テトラヒドロベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−2−チオン誘導体をカルボヒドラジドと反応することによって得ることができる。
【0089】
この反応は一般には、不活性な溶媒において行われる。
【0090】
使用された条件に依存して、反応時間は数分〜14日の間であり、反応温度は約−15℃〜150℃の間であり、通常の場合には30℃〜130℃の間であり、特に好ましくは60℃〜120℃の間である。
【0091】
好適な不活性な溶媒は、例えば、炭化水素、例えば、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなど;塩素化炭化水素、例えば、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタンなど;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなど;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンなど;グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールのモノメチルエーテルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)など;ケトン、例えば、アセトンまたはブタノンなど;アミド、例えば、アセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF)など;ニトリル、例えば、アセトニトリルなど;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)など;二硫化炭素;カルボン酸、例えば、ギ酸または酢酸など;ニトロ化合物、例えば、ニトロメタンまたはニトロベンゼンなど;エステル、例えば、酢酸エチルなど、または、前記溶媒の混合物である。
【0092】
特に好ましいものが1−ブタノールである。
【0093】
標準的な条件のもとでの三臭化ホウ素による処理が、エーテルを切断するために好適である。
【0094】
医薬用塩および他の形態
本発明による前記化合物はその最終的な非塩形態で使用することができる。他方で、本発明はまた、この技術分野において知られている手順によって様々な有機および無機の酸および塩基に由来し得るそれらの医薬的に許容され得る塩の形態でのこれらの化合物の使用を包含する。本発明による化合物の医薬的に許容され得る塩形態は大部分が従来の方法によって調製される。本発明による化合物がカルボキシル基を含有するならば、その好適な塩の1つを、そのような化合物を、対応する塩基付加塩を与えるための好適な塩基と反応することによって形成することができる。そのような塩基は、例えば、アルカリ金属の水酸化物、これには、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムが含まれる;アルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなど;アルカリ金属のアルコキシド、例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;および様々な有機塩基、例えば、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンなどである。本発明による化合物のアルミニウム塩も同様に含まれる。本発明による特定の化合物の場合、酸付加塩を、これらの化合物を医薬的に許容され得る有機酸および無機酸(例えば、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素など)、他の鉱酸およびその対応する塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など)、ならびに、アルキルスルホン酸塩およびモノアリールスルホン酸塩、例えば、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸など、ならびに、他の有機酸およびその対応する塩、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩など)により処理することによって形成させることができる。したがって、本発明による化合物の医薬的に許容され得る酸付加塩には、下記の塩が含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギナート(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(粘液酸に由来する)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモアート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩。しかし、これは限定を表さない。
【0095】
さらには、本発明による化合物の塩基塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄(III)塩、鉄(II)塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(III)塩、マンガン(II)塩、カリウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩が含まれるが、これは、限定を表すことが意図されない。上記の塩の中で、アンモニウム;アルカリ金属塩(ナトリウムおよびカリウム);およびアルカリ土類金属塩(カルシウムおよびマグネシウム)が好ましい。医薬的に許容され得る有機の無毒性塩基に由来する本発明による化合物の塩には、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、置換アミン(これには、天然に存在する置換アミンも含まれる)、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が含まれるが、これは限定を表すことが意図されない。
【0096】
塩基性窒素含有基を含有する本発明の化合物は、ハロゲン化(C〜C)アルキル、例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化イソプロピル、塩化tert−ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化イソプロピル、臭化tert−ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化tert−ブチル;硫酸ジ(C〜C)アルキル、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルおよび硫酸ジアミル;ハロゲン化(C10〜C18)アルキル、例えば、塩化デシル、塩化ドデシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ドデシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ドデシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステアリル;ハロゲン化アリール(C〜C)アルキル、例えば、塩化ベンジルおよび臭化フェネチルなどの薬剤を使用して四級化することができる。本発明による水溶性化合物および油溶性化合物の両方を、そのような塩を使用して調製することができる。
【0097】
好まれる上記の医薬用塩には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシラート、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバル酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシラートおよびトロメタミンが含まれるが、これは限定を表すことが意図されない。
【0098】
本発明による塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所望される酸と接触させ、これにより、塩の形成を従来の様式で生じさせることによって調製される。遊離塩基は、塩形態を塩基と接触させること、および、遊離塩基を従来の様式で単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、特定の点で、その対応する塩形態と、特定の物理的性質(例えば、極性溶媒における溶解性など)に関して異なる。しかしながら、本発明の目的のために、塩は、それ以外では、そのそれぞれの遊離塩基形態に対応する。
【0099】
述べられたように、本発明による化合物の医薬的に許容され得る塩基付加塩は金属またはアミン(例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなど)により形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0100】
本発明による酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を十分な量の所望される塩基と接触させ、これにより、塩の形成を従来の様式で生じさせることによって調製される。遊離酸は、塩形態を酸と接触させること、および、遊離酸を従来の様式で単離することによって再生することができる。遊離酸形態は、特定の点で、その対応する塩形態と、特定の物理的性質(例えば、極性溶媒における溶解性など)に関して異なる。しかしながら、本発明の目的のために、塩は、それ以外では、そのそれぞれの遊離塩基形態に対応する。
【0101】
本発明による化合物が、このタイプの医薬的に許容され得る塩を形成することができる2つ以上の基を含有するならば、本発明はまた、多重塩を包含する。典型的な多重塩形態には、例えば、二酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは限定を表すことが意図されない。
【0102】
上記での言及に関して、この関連での表現「医薬的に許容され得る塩」は、特に、この塩形態が、有効成分の遊離形態、または、より以前に使用された有効成分の任意の他の塩形態と比較して、改善された薬物動態学的性質を有効成分に与えるならば、本発明による化合物をその塩のいずれか1つの形態で含む有効成分を意味すると見なされることが理解され得る。有効成分の医薬的に許容され得る塩形態はまた、この有効成分に、以前には有していなかったが、体内におけるその治療効力に関して、この有効成分の薬力学に対する正の影響を有することさえできる所望される薬物動態学的性質を初めて与えることができる。
【0103】
本発明はさらに、すべての比率でのそれらの混合物を含めて、本発明による少なくとも1つの化合物、ならびに/または、その医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体と、場合により、賦形剤および/または補助剤とを含む医薬品に関連する。
【0104】
医薬製剤は、投薬単位物あたり所定量の有効成分を含む投薬単位物の形態で投与することができる。そのような単位物は、処置される状態、投与方法、ならびに、患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば、0.5mg〜1gの本発明による化合物、好ましくは、1mg〜700mgの本発明による化合物、特に好ましくは5mg〜100mgの本発明による化合物を含み、または、医薬製剤は、投薬単位物あたり所定量の有効成分を含む投薬単位物の形態で投与することができる。好ましい投薬単位物製剤は、有効成分の上記で示されるような1日用量または部分用量(part−dose)、あるいは、その対応する割合を含む投薬単位物製剤である。さらには、このタイプの医薬製剤は、製薬分野において一般に知られているプロセスを使用して調製することができる。
【0105】
医薬製剤は、例えば、経口方法(口内方法または舌下方法を含む)、直腸方法、鼻腔方法、局所的方法(口内方法、舌下方法または経皮的方法)、膣方法または非経口方法(皮下方法、筋肉内方法、静脈内方法または皮内方法)による任意の所望される好適な方法を介した投与のために適合化することができる。そのような製剤は、製薬分野において知られているすべてのプロセスを使用して、例えば、有効成分を賦形剤または補助剤と組み合わせることによって調製することができる。
【0106】
経口投与のために適合化された医薬製剤を、別個の単位物として、例えば、カプセルまたは錠剤;粉末剤または顆粒;水性液体または非水性液体における溶液または懸濁物;食用の発泡物または発泡物食物;あるいは、水中油型の液体エマルションまたは油中水型の液体エマルションなどとして投与することができる。
【0107】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、有効成分である構成成分は、経口用の非毒性かつ医薬的に許容され得る不活性な賦形剤(例えば、エタノール、グリセロールおよび水など)と組み合わせることができる。粉末剤が、化合物を好適な細かいサイズに粉砕し、それを、同様に粉砕された医薬用賦形剤(例えば食用の炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールなど)と混合することによって調製される。香味剤、保存剤、分散剤および色素を同様に存在させることができる。
【0108】
カプセルが、粉末混合物を上記のように調製し、一定の形状を有するゼラチン外皮に粉末混合物を充填することによって製造される。流動促進剤および滑剤(例えば、高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体形態でのポリエチレングリコールなど)を充填操作前の粉末混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤(例えば、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなど)を同様に、カプセルが摂取された後における医薬品の利用能を改善するために加えることができる。
【0109】
加えて、所望または必要ならば、好適な結合剤、滑剤および崩壊剤、ならびに、色素を同様に、混合物に配合することができる。好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然の糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトースなど)、トウモロコシから作製された甘味料、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよびワックスなどが含まれる。これらの投薬形態物において使用される滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイトおよびキサンタンガムなどが含まれる。錠剤が、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒または乾式圧縮し、滑剤および崩壊剤を加え、混合物全体を圧縮して、錠剤を得ることによって配合される。粉末混合物が、好適な様式で粉砕された化合物を、上記のように希釈剤または基剤と、また、場合により、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンなど)、溶解遅延剤(例えばパラフィンなど)、吸収促進剤(例えば第四級塩など)および/または吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムなど)と混合することによって調製される。粉末製剤は、粉末製剤を結合剤(例えば、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘滑剤、あるいは、セルロースまたはポリマー物質の溶液など)により湿潤化し、それをふるいに通すことによって造粒することができる。造粒の代替として、粉末製剤は、錠剤機に通して、不均一な形状の塊にすることができ、その後、塊は、顆粒を形成するために破砕される。顆粒は、錠剤注入鋳型への粘着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油の添加によって潤滑することができる。潤滑された混合物は、その後、錠剤を得るために圧縮される。本発明による化合物はまた、造粒工程または乾式圧縮工程を行うことなく、易流動性の不活性な賦形剤と一緒にし、直接に圧縮して、錠剤を得ることができる。シェラックのシール層からなる透明または不透明な保護層、糖またはポリマー物質の層、および、ワックスの光沢層を存在させることができる。色素を、種々の投薬形態物を識別することができるためにこれらの被覆に加えることができる。
【0110】
経口用液体(例えば、溶液、シロップおよびエリキシル剤など)を、与えられた量が所定量の化合物を含むように投薬単位物の形態で調製することができる。シロップは、化合物を好適な香味剤とともに水溶液に溶解することによって調製することができ、一方、エリキシル剤は、非毒性のアルコール性ビヒクルを使用して調製される。懸濁物を、化合物を非毒性のビヒクルに分散させることによって配合することができる。可溶化剤および乳化剤(例えば、エトキシル化されたイソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど)、保存剤、香味添加剤(例えば、ペパーミント油または天然甘味剤またはサッカリン、あるいは、他の人工甘味料など)を同様に加えることができる。
【0111】
経口投与される投薬単位物製剤は、所望されるならば、マイクロカプセルにカプセル化することができる。製剤はまた、放出が、例えば、粒状物をポリマーおよびワックスなどにおいて被覆または包埋することなどによって延長または遅延されるような様式で調製することができる。
【0112】
本発明による化合物、ならびに、その塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体はまた、リポソーム送達システム(例えば、小さい単層ベシクル、大きい単層ベシクルおよび多層ベシクルなど)の形態で投与することができる。リポソームを様々なリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなど)から形成することができる。
【0113】
本発明による化合物、ならびに、その塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体はまた、化合物分子がカップリングされる個々のキャリアとしてモノクローナル抗体を使用して送達することができる。化合物はまた、標的化された医薬品キャリアとしての可溶性ポリマーにカップリングすることができる。そのようなポリマーには、パルミトイル基によって置換されたポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリシンが包含され得る。化合物はさらに、医薬品の制御された放出を達成するために好適である一群の生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリラート、および、ヒドロゲルの架橋されたブロックコポリマーまたは両親媒性ブロックコポリマーなど)にカップリングすることができる。
【0114】
経皮投与のために適合化された医薬製剤を、被投与者の表皮と広範囲にわたって密着させるための独立した膏剤として投与することができる。したがって、例えば、有効成分が、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)において一般論として記載されるように、イオン泳動によって膏剤から送達され得る。
【0115】
局所投与のために適合化された医薬化合物を、軟膏、クリーム、懸濁物、ローション、粉末剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー物、エアロゾルまたはオイルとして配合することができる。
【0116】
眼または他の外部組織(例えば、口腔および皮膚)を処置するために、製剤は、好ましくは、局所用の軟膏またはクリームとして塗布される。軟膏を与えるための配合の場合、有効成分はパラフィンまたは水混和性のクリーム基剤のいずれかとともに用いることができる。あるいは、有効成分は、水中油型のクリーム基剤または油中水型の基剤とのクリームを与えるように配合することができる。
【0117】
眼への局所適用のために適合化された医薬製剤には、有効成分が好適なキャリア(具体的には、水性溶媒)に溶解または懸濁される点眼剤が含まれる。
【0118】
口腔における局所適用のために適合化された医薬製剤には、口内錠、トローチおよび口腔洗浄剤が含まれる。
【0119】
直腸投与のために適合化された医薬製剤は、坐薬または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0120】
キャリア物質が固体である、鼻腔投与のために適合化された医薬製剤は、粒子サイズが、例えば20ミクロン〜500ミクロンの範囲にある粗い粉末を含み、この場合、そのような粒子は、かぎタバコを吸う様式で、すなわち、鼻の近くに保持された、粉末を含有する容器からの鼻の中を介した素早い吸入によって投与される。液体をキャリア物質として有する鼻腔スプレーまたは点鼻剤として投与される好適な製剤には、水またはオイルにおける有効成分の溶液が含まれる。
【0121】
吸入による投与のために適合化された医薬製剤には、噴霧器、ネブライザーまたは吹き入れ器を伴う様々なタイプの加圧ディスペンサーによって作製され得る微細な粒子状の粉剤またはミストが含まれる。
【0122】
膣投与のために適合化された医薬製剤は、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡剤またはスプレー製剤として投与することができる。
【0123】
非経口投与のために適合化された医薬製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および、製剤が、処置される被投与者の血液と等張性にされる溶質を含む水性および非水性の滅菌の注射溶液、ならびに、懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性および非水性の滅菌の懸濁物が含まれる。製剤は単回用量容器または多回用量容器(例えば、密封されたアンプルおよびバイアル)において投与することができ、また、使用直前での無菌のキャリア液体(例えば、注射目的の水)の添加のみが必要であるように、冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。処方箋に従って調製される注射用の溶液および懸濁物を、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0124】
上記で特に述べられた構成成分に加えて、製剤はまた、製剤の具体的なタイプに関してこの技術分野において有用である他の薬剤を含むことができることは言うまでもないことである。したがって、例えば、経口投与のために好適である製剤は香味剤を含むことができる。
【0125】
本発明による化合物の治療有効量は、例えば、動物の年齢および体重、処置を必要とする正確な状態、および、その重篤度、製剤の性質、ならびに、投与方法をはじめとする数多くの要因に依存し、最終的には、処置する医師または獣医師によって決定される。しかしながら、新生物の成長(例えば、結腸ガンまたは乳ガン)を処置するための本発明による化合物の有効量は一般には、1日につき被投与者(哺乳動物)の体重1kgあたり0.1mg〜100mgの範囲であり、特に典型的には、1mg/kg体重/日〜10mg/kg体重/日の範囲である。したがって、体重が70kgである成体哺乳動物についての1日あたりの実際の量は通常、70mg〜700mgの間であり、この場合、この量を1日あたり1回の服用として投与することができ、または、通常的には、1日の総服用量が同じであるように、1日あたりの分割服用(例えば、2回、3回、4回、5回または6回)の連続で投与することができる。塩または溶媒和物あるいはその生理学的に機能的な誘導体の有効量は、本発明による化合物それ自体の有効量の割合として決定することができる。類似する用量が、上記で述べられた他の状態を処置するために好適であることが想定され得る。
【0126】
本発明はさらに、すべての比率でのそれらの混合物を含めて、本発明による少なくとも1つの化合物、ならびに/または、その医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体と、少なくとも1つのさらなる医薬品有効成分とを含む医薬品に関連する。
【0127】
本発明はまた、
(a)すべての比率でのそれらの混合物を含めて、本発明による化合物、ならびに/または、その医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体の有効量、
および
(b)さらなる医薬品有効成分の有効量
の別個のパックからなるセット(キット)に関連する。
【0128】
このようなセットは、好適な容器(例えば、箱、個々のビン、バッグまたはアンプルなど)を含む。セットは、例えば、すべての比率でのそれらの混合物を含めて、本発明による化合物、ならびに/または、その医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体の有効量と、さらなる医薬品有効成分の有効量とを、溶解された形態または凍結乾燥された形態でそれぞれが含む別個のアンプルを含むことができる。
【0129】
使用
すべての比率でのそれらの混合物を含めて、下記の群:
【0130】
【表2−1】



【0131】
【表2−2】



【0132】
【表2−3】



【0133】
【表2−4】



【0134】
【表2−5】



【0135】
【表2−6】



【0136】
【表2−7】



【0137】
【表2−8】



【0138】
【表2−9】



【0139】
【表2−10】



【0140】
【表2−11】



【0141】
【表2−12】



【0142】
【表2−13】



【0143】
【表2−14】



【0144】
【表2−15】



【0145】
【表2−16】



【0146】
【表2−17】



【0147】
【表2−18】



【0148】
【表2−19】



【0149】
【表2−20】



【0150】
【表2−21】



【0151】
【表2−22】



【0152】
【表2−23】



【0153】
【表2−24】



【0154】
【表2−25】



【0155】
【表2−26】



【0156】
【表2−27】



【0157】
【表2−28】



【0158】
【表2−29】



【0159】
【表2−30】



【0160】
【表2−31】



【0161】
【表2−32】



【0162】
ならびに、それらの医薬的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体から選択される本発明の化合物は、ガン、腫瘍成長、転移物成長、線維症、再狭窄、HIV感染、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化を処置および/または治療するための医薬品、ならびに/あるいは、創傷治癒を促進させるための医薬品を調製するために、哺乳動物のための医薬有効成分として、特に、ヒトのための医薬有効成分として好適である。
【0163】
固形腫瘍である疾患を処置するための使用が特に好ましい。
【0164】
固形腫瘍は、好ましくは、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、泌尿生殖路、リンパ系、胃、咽頭および/または肺の腫瘍の群から選択される。
【0165】
固形腫瘍はさらに、好ましくは、肺腺ガン、小細胞肺ガン、膵臓ガン、神経膠芽細胞腫、結腸ガンおよび乳ガンの群から選択される。
【0166】
さらに、血液および免疫系の腫瘍を処置するための使用、好ましくは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍を処置するための使用が好ましい。
【0167】
本化合物はまた、既知の抗癌剤との組み合わせにも適している。これらの既知の抗癌剤としては、以下の:エストロゲン受容体調節物質、アンドロゲン受容体調節物質、レチノイド受容体調節物質、細胞傷害性作用物質、抗増殖性作用物質、プレニル化タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬およびその他の血管新生阻害薬が挙げられる。本化合物は、放射線治療と同時に投与するのに特に適している。放射線治療との組み合わせにおけるVEGF阻害の相乗効果が技術的に記載されている(WO00/61186参照)。
【0168】
「エストロゲン受容体調節物質」とは、その機構は無視して、エストロゲンの受容体への結合を干渉するかまたは阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体調節物質の例としては、非限定で、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−l−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)フェニル2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンおよびSH646が挙げられる。
【0169】
「アンドロゲン受容体調節物質」とは、機構は無視して、アンドロゲンの受容体への結合を干渉するかまたは阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体調節物質の例としては、フィナステリドおよび他の5α−レダクターゼ阻害薬、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよび酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0170】
「レチノイド受容体調節物質」とは、機構は無視して、レチノイドの受容体への結合を干渉するかまたは阻害する化合物を指す。上記レチノイド受容体調節物質の例としては、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミドおよびN−4−カルボキシフェニルレチナミドが挙げられる。
【0171】
「細胞傷害性作用物質」とは、主として細胞機能に対する直接作用によるかまたは細胞減数分裂を伴う阻害もしくは干渉により細胞死をもたらす化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、マイクロチューブリン阻害薬およびトポイソメラーゼ阻害薬が含まれる。
【0172】
細胞傷害性作用物質の例としては、非限定で、チラパザミン、セルテネフ、カケクチン、イフォスアミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモロゾマイド、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロフォスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム(dibrospidium chloride)、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)μ−[ジアミン白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−l0−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトザントロン、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バイルビシン(valrubicin)、アムルビシン、アンチネオプラストン、3'−デアミノ−3'−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド、MEN10755および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシンが挙げられる(WO00/50032参照)。
【0173】
マイクロチューブリン阻害薬の例としては、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3',4'−ジデヒドロ−4'−デオキシ−8'−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オウリスターチン(auristatin)、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、無水ビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258およびBMS188797が挙げられる。
【0174】
トポイソメラーゼ阻害薬のいくつかの例は、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3',4'−O−エキソベンジリデンシャルトルーシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル](20S)−カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2'−ジメチルアミノ−2'−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−l−カルボキシアミド、アスラクライン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3',4':6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]フォルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキシアミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オンおよびジメスナである。
【0175】
「抗増殖性作用物質」としては、アンチセンスRNAおよびアンチセンスDNAのオリゴヌクレオチド、例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、INX3001など、および、代謝拮抗物質、例えば、エノシタビン、カルモフール、テガフル、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクフォスファート、フォステアビン水酸化ナトリウム(fosteabine sodium hydrate)、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2'−デオキシ−2'−メチリデンシチジン、2'−フルオロメチレン−2'−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾルリル)スルホニル]−N'−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アピリジン、エクチナサイジン、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−フォルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワンソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2'−シアノ−2'−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどが挙げられる。「抗増殖性作用物質」としてはまた、「血管新生阻害薬」のもとで掲げたもの以外のトラスツズマブ等の増殖因子に対するモノクローナル抗体、および組換えウイルスが介在する遺伝子により送達することができるp53等の腫瘍抑制遺伝子導入も含まれる(例えば、米国特許第6069134号参照)。
【0176】
TGF−β媒介による影響の阻害の阻害剤の効力を求めるためのインビトロ(酵素)アッセイ
一例として、TGF−β媒介による成長阻害を除くための阻害剤の能力が試験される。
【0177】
肺上皮細胞株Mv1Luの細胞を96ウエルマイクロタイタープレートにおいて規定の細胞密度で接種し、標準的な条件のもとで一晩培養する。翌日、培地を、0.5%のFCSおよび1ng/mlのTGF−βを含む培地によって取り替え、試験物質を、規定された濃度で、一般には、5倍段階による希釈系列の形態で加える。溶媒(DMSO)の濃度は0.5%で一定である。さらに2日の後、細胞のクリスタルバイオレット染色を行う。固定処理された細胞からクリスタルバイオレットを抽出した後、吸収を550nmで分光光度法により測定する。これは、存在する接着性細胞の量的尺度として使用することができ、したがって、培養期間中における細胞増殖の量的尺度として使用することができる。
【0178】
【表3】



【0179】
TGF−β受容体Iキナーゼ阻害剤を試験するための細胞アッセイ
キナーゼアッセイを384ウエルフラッシュプレートアッセイとして行う。
【0180】
31.2nMのGST−ALK5、439nMのGST−SMAD2および3mMのATP(ウエルあたり0.3μCiの33P−ATPを含む)を、試験物質(5個〜10個の濃度)とともに、または、試験物質を伴うことなく、30℃で45分間、35μlの総体積(20mMのHEPES、10mMのMgCl、5mMのMnCl、1mMのDTT、0.1%のBSA、pH7.4)でインキュベートする。反応を、25μlの200mM EDTA溶液を使用して停止させ、30分後に室温で吸引によりろ過し、ウエルを100μlの0.9%NaCl溶液により3回洗浄する。放射能をTopCountで測定する。IC50値を、RS1を使用して計算する。
【0181】
上記および下記において、すべての温度が℃で示される。下記の実施例において、「通常の処理」は、水を、必要ならば加えること、pHを、必要ならば、最終生成物の構成に依存して、2〜10の間の値に調節すること、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンにより抽出すること、相を分離させること、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーションすること、ならびに、生成物を、シリカゲルでのクロマトグラフィーによって、および/または、結晶化によって精製することを意味する。シリカゲルでのRf値;溶離剤:酢酸エチル/メタノール 9:1。
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)
APCI−MS(大気圧化学的イオン化−質量分析)(M+H)
保持時間R[分]:測定をHPLCによって行う
カラム:Chromolith SpeedROD、50x4.6mm(注文番号1.51450.0001)、Merck
グラジエント:5.0分、t=0分、A:B=95:5、t=4.4分、A:B=25:75、t=4.5分〜t=5.0分、A:B=0:100
流速:3.00ml/分
溶出液A:水+0.1%のTFA(トリフルオロ酢酸)、
溶出液B:アセトニトリル+0.08%のTFA
波長:220nm。
【0182】
実施例1
(R,S)−8−ヒドロキシ−4−メチル−1−(6−メチルピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−2,3,6,10b−テトラアザベンゾ[e]アズレン(「A1」)の調製を下記のスキームと同様に行う。
【0183】
【化1】



【0184】
1.1 5−メトキシ−2−ニトロアニリンの調製
10gの5−クロロ−2−ニトロアニリンを100mlのメタノールに溶解し、32.3gのナトリウムメトキシドを加える。反応混合物を加熱し、18時間、還流下で沸騰させる。冷却後、混合物をエバポレーションして乾固し、500mlの水を加え、粗生成物をろ過によって単離する。乾燥により、9.15gの5−メトキシ−2−ニトロアニリンを得る。
【0185】
1.2 (R,S)−3−(5−メトキシ−2−ニトロフェニルアミノ)−2−メチルプロピオン酸の調製
9.15gの5−メトキシ−2−ニトロアニリンを60mlのTHFに溶解し、6.5mlの2−メタクリロニトリルと、メタノールにおける水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムの40%溶液の1.35mlとを加える。反応混合物を加熱し、約20時間、沸騰させ、冷却後、エバポレーションして、油状の残渣を得る。粗生成物を400mlのメタノールおよび150mlの水に溶解し、150mlの32%水酸化ナトリウム溶液を加える。混合物を加熱し、3時間、沸騰させ、冷却し、エバポレーションし、処理して、8.9gの(R,S)−3−(5−メトキシ−2−ニトロフェニルアミノ)−2−メチルプロピオン酸を粗生成物として得る。
【0186】
1.3 (R,S)−8−メトキシ−4−メチル−1−(6−メチルピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−2,3,6,10b−テトラアザベンゾ[e]アズレンの調製
8.9gの得られた(R,S)−3−(5−メトキシ−2−ニトロフェニルアミノ)−2−メチルプロピオン酸を40mlの水および40mlの酢酸に溶解し、8.4gの亜鉛(粗い粉末物)を加え、混合物を加熱し、18時間、沸騰させる。水性処理により、2.35gの(R,S)−7−メトキシ−3−メチル−1,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]−1,4−ジアゼピン−2−オンを得て、これを、精製することなくさらに反応させる。この目的のために、粗生成物を25mlのピリジンに溶解し、5.1gの2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−2,4−ジチオキソ−1,3,2,4−ジチアジホスフェタンを加え、混合物を110℃で3時間加熱する。冷却後、混合物を水性処理に供し、粗生成物をジエチルエーテルの添加によって沈殿させる。乾燥により、2.34gの(R,S)−7−メトキシ−3−メチル−1,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]−1,4−ジアゼピン−2−チオンを得る。これを、5mlの1−ブタノールにおいて6−メチルピリジン−2−カルボヒドラジドと一緒に110℃で17時間加熱する。冷却および水性処理の後、油状の粗生成物を調製用HPLCによって精製して、78mgの(R,S)−8−メトキシ−4−メチル−1−(6−メチルピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−2,3,6,10b−テトラアザベンゾ[e]アズレンを得る。
1.4 60mgの(R,S)−8−メトキシ−4−メチル−1−(6−メチルピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−2,3,6,10b−テトラアザベンゾ[e]アズレンを2.5mlのジクロロメタンに溶解し、162μlの三臭化ホウ素を滴下して加える。室温で6時間の後、混合物をエバポレーションして乾固し、粗生成物を調製用HPLCによって精製して、40mgの「A1」を得た。
【0187】
下記の化合物が同様にして得られる。
【0188】
【表4−1】



【0189】
【表4−2】



【0190】
【表4−3】



【0191】
【表4−4】



【0192】
【表4−5】



【0193】
【表4−6】



【0194】
【表4−7】



【0195】
【表4−8】



【0196】
【表4−9】



【0197】
【表4−10】



【0198】
【表4−11】



【0199】
【表4−12】



【0200】
【表4−13】



【0201】
【表4−14】



【0202】
【表4−15】



【0203】
【表4−16】



【0204】
【表4−17】



【0205】
【表4−18】



【0206】
【表4−19】



【0207】
【表4−20】



【0208】
【表4−21】



【0209】
【表4−22】



【0210】
【表4−23】



【0211】
【表4−24】



【0212】
【表4−25】



【0213】
【表4−26】



【0214】
【表4−27】



【0215】
【表4−28】



【0216】
【表4−29】



【0217】
【表4−30】



【0218】
【表4−31】



【0219】
【表4−32】



【0220】
下記の実施例は医薬品に関連する:
実施例A:注射用バイアル
3lの2回蒸留水における100gの式Iの有効成分および5gのリン酸水素二ナトリウムの溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5に調節し、無菌ろ過し、注射用バイアルに入れ、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で封じる。それぞれの注射用バイアルが5mgの有効成分を含有する。
【0221】
実施例B:坐薬
20gの式Iの有効成分と、100gのダイズレシチンおよび1400gのカカオ脂との混合物を溶融し、鋳型に注ぎ、冷却する。それぞれの坐薬が20mgの有効成分を含有する。
【0222】
実施例C:溶液
溶液を、940mlの2回蒸留水において、1gの式Iの有効成分、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから調製する。pHを6.8に調節し、溶液を1lにし、照射によって滅菌する。この溶液は点眼剤の形態で使用することができる。
【0223】
実施例D:軟膏
500mgの式Iの有効成分を無菌条件下で99.5gのワセリンと混合する。
【0224】
実施例E:錠剤
1kgの式Iの有効成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、それぞれの錠剤が10mgの有効成分を含有するような方法で錠剤を得るために従来の様式で圧縮する。
【0225】
実施例F:糖衣錠
錠剤を実施例Eと同様にして圧縮し、続いて、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素の被覆により従来の様式で被覆する。
【0226】
実施例G:カプセル
2kgの式Iの有効成分を、それぞれのカプセル20mgの有効成分を含有するような方法で従来の様式でハードゼラチンカプセルの中に導入する。
【0227】
実施例H:アンプル
60lの2回蒸留水における1kgの式Iの有効成分の溶液を無菌ろ過し、アンプルに入れ、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で封じる。それぞれのアンプルが10mgの有効成分を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すべての比率でのそれらの混合物を含めて、下記の群:
【表1−1】



【表1−2】



【表1−3】



【表1−4】



【表1−5】



【表1−6】



【表1−7】



【表1−8】



【表1−9】



【表1−10】



【表1−11】



【表1−12】



【表1−13】



【表1−14】



【表1−15】



【表1−16】



【表1−17】



【表1−18】



【表1−19】



【表1−20】



【表1−21】



【表1−22】



【表1−23】



【表1−24】



【表1−25】



【表1−26】



【表1−27】



ならびに、それらの医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体から選択される化合物。
【請求項2】
すべての比率でのそれらの混合物を含めて、請求項1に記載される少なくとも1つの化合物、ならびに/または、その医薬的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体と、場合により、賦形剤および/または補助剤とを含む医薬品。
【請求項3】
ガン、腫瘍成長、転移物成長、線維症、再狭窄、HIV感染、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化を処置および/または治療するための医薬品、ならびに/あるいは、創傷治癒を促進させるための医薬品を調製するための、すべての比率でのそれらの混合物を含めて、下記の群:
【表2−1】



【表2−2】



【表2−3】



【表2−4】



【表2−5】



【表2−6】



【表2−7】



【表2−8】



【表2−9】



【表2−10】



【表2−11】



【表2−12】



【表2−13】



【表2−14】



【表2−15】



【表2−16】



【表2−17】



【表2−18】



【表2−19】



【表2−20】



【表2−21】



【表2−22】



【表2−23】



【表2−24】



【表2−25】



【表2−26】



【表2−27】



【表2−28】



【表2−29】



【表2−30】



【表2−31】



【表2−32】



ならびに、それらの医薬的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体から選択される化合物の使用。
【請求項4】
腫瘍が、扁平上皮の腫瘍、膀胱の腫瘍、胃の腫瘍、腎臓の腫瘍、頭頸部の腫瘍、食道の腫瘍、子宮頸部の腫瘍、甲状腺の腫瘍、腸の腫瘍、肝臓の腫瘍、脳の腫瘍、前立腺の腫瘍、泌尿生殖路の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃の腫瘍、咽頭の腫瘍、肺の腫瘍、肺腺ガン、小細胞肺ガン、膵臓ガン、神経膠芽細胞腫、結腸ガン、乳ガン、血液および免疫系の腫瘍、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病の群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
固形腫瘍を処置するための医薬品を調製するための、請求項3に記載の化合物ならびに/またはその生理学的に許容され得る塩および溶媒和物の使用であって、請求項3に記載の化合物の治療有効量を、1)エストロゲン受容体調節物質、2)アンドロゲン受容体調節物質、3)レチノイド受容体調節物質、4)細胞傷害性作用物質、5)抗増殖性作用物質、6)プレニル化タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、8)HIVプロテアーゼ阻害薬、9)逆転写酵素阻害薬および10)その他の血管新生阻害薬の群からの化合物と組み合わせて投与する使用。
【請求項6】
固形腫瘍を処置するための医薬品を調製するための、請求項3に記載の化合物ならびに/またはその生理学的に許容され得る塩および溶媒和物の使用であって、請求項3に記載の化合物の治療有効量を、放射線治療、ならびに1)エストロゲン受容体調節物質、2)アンドロゲン受容体調節物質、3)レチノイド受容体調節物質、4)細胞傷害性作用物質、5)抗増殖性作用物質、6)プレニル化タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、8)HIVプロテアーゼ阻害薬、9)逆転写酵素阻害薬および10)別の血管新生阻害薬の群からの化合物と組み合わせて投与する使用。

【公表番号】特表2009−520706(P2009−520706A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546162(P2008−546162)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011277
【国際公開番号】WO2007/079820
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】