説明

トリガースイッチ

【課題】容易に組み立て及び分解をすることができ、かつ部品点数が少なく、かつ、小型化可能なトリガースイッチを提供する。
【解決手段】電動工具10に取り付けられたトリガースイッチ30の部品が、左ハウジング361と右ハウジング362とからなるハウジング36と、ハウジング36に収納されたスイッチ基板39と、ハウジング36に対し摺動自在に設けられたトリガー部38とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に用いられるトリガースイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インパクトドライバー、グラインダーなどの電動工具の駆動源としてブラシレスDCモータが用いられている。このブラシレスDCモータを駆動させるために、電動工具内部にはインバータ回路、このインバータ回路を制御する制御回路などが内蔵されている。そして、電動工具のハウジングに設けられたトリガースイッチを作業者の指で操作することにより工具の回転速度を可変にしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−23823公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなトリガースイッチの構造は、部品が細かく、組み立て及び分解するときに紛失の恐れや破壊の恐れがあった。例えば、従来からあるトリガースイッチの部品の総数は40点以上であり、その組み立てに時間が掛かり、不具合があったときの分解が困難であり、各部品寸法の設計が困難であるという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、容易に組み立て及び分解をすることができ、かつ部品点数が少なく、かつ、小型化可能なトリガースイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、モータを回転させるトリガースイッチにおいて、前記トリガースイッチのハウジングが、左右または上下に分割可能であり、前記ハウジング内にスイッチ基板が収納され、トリガー部が前記ハウジングに対し摺動自在に配されていることを特徴とするトリガースイッチである。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記モータの正逆切り替えスイッチが、前記トリガー部に回動自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記トリガー部から前記ハウジング内部に向かって移動部材が突出し、前記移動部材にはマグネットが設けられ、前記スイッチ基板上であって、前記移動部材が摺動する方向に沿ってn個(但し、n>1である)のホール素子が配列され、かつ、前記n個のホール素子の中で隣接するホール素子同士の一部が摺動方向に関して重なるように配列されていることを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記トリガー部から前記ハウジング内部に向かって移動部材が突出し、前記移動部材にはブラシが設けられ、前記スイッチ基板上であって、前記移動部材が摺動する方向に沿ってn個(但し、n>1である)の印刷抵抗が配列されている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記正逆切替えスイッチにマグネットが設けられ、前記スイッチ基板に正逆切替え用のホール素子が設けられていることを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【0010】
請求項6に係る発明は、前記モータがブラシレスDCモータであることを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【0011】
請求項7に係る発明は、前記トリガースイッチは、電動工具に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明であると、ハウジングと、スイッチ基板とトリガーから構成されるだけであるため、組み立て及び分解が容易であり、部品点数も少なく、かつ、小型化可能である。
【0013】
請求項2に係る発明であると、正逆切り替えスイッチも一体化するために、さらに部品点数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態のコードレス電動工具10について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0015】
(1)コードレス電動工具10の構造
図1に基づいて、コードレス電動工具10の構造について説明する。
【0016】
コードレス電動工具10は、図1に示すようにインパクトドライバーであって、ビストル型のフレーム12から構成され、このフレーム12は筒状の本体14と、この本体14の後部下面から突出した把持部16とを有している。本体14の内部には、ブラシレスDCモータ(以下、単にモータという)18と、このモータ18の出力軸に連結されたギヤボックス20を有し、ギヤボックス20の出力軸には、チャック22を介してドライバ24が取り付けられている。
【0017】
モータ18の下方には、モータ18を駆動させるための駆動回路50が設けられた配線基板28が取り付けられている。
【0018】
本体14と把持部16の境目の部分には、後から詳しく説明するトリガースイッチ30が設けられている。また、把持部16の下端には、リチウムイオン電池よりなる充電池32が着脱自在に設けられている。
【0019】
(2)トリガースイッチ30の構造
次に、トリガースイッチ30の構造について図2〜図5に基づいて説明する。
【0020】
トリガースイッチ30は、箱状のハウジング36と、このハウジング36に対し摺動自在に設けられたトリガー部38と、プリント配線基板よりなるスイッチ基板39とよりなる。
【0021】
ハウジング36は、左ハウジング361と右ハウジング362とより構成され、左右一対の左ハウジング361と右ハウジング362は、それぞれ合成樹脂製であって一体成形されている。左ハウジング361の本体は、側面形状が五角形であり、この五角形の本体から円筒部363が突出している。右ハウジング362の本体も、側面形状が五角形であり、この五角形の本体から円筒部364が突出している。
【0022】
トリガー部38は、ハウジング36の方向に向かって棒状の移動部材40が突出している。この移動部材40の先端部にはマグネット42が取り付けられ、このマグネット42を有する移動部材40の先端部がハウジング36内部の円筒部363,364に挿入されている。また、移動部材40の外周にはコイル状のバネ44が嵌め込まれ、トリガー部38をハウジング36の外方に常に付勢されている。
【0023】
スイッチ基板39は、ハウジング36の五角形の本体内部に収納されるものであり、トリガースイッチ30を動作させるための電子部品が配線されている。すなわち、図5に示すように、移動部材40の摺動方向に沿って千鳥状に2個のホールIC46,48が設けられている。第1のホールIC46が、移動部材40の下方であって、かつ、トリガー部38に近い部分に設けられている。第2のホールIC48は、移動部材40の上方であってトリガー部38から離れた位置に取り付けられ、第1のホールIC46と第2のホールIC48とは、移動部材40の摺動方向に関して重なった部分が存在する。
【0024】
また、第1のホールIC46の下方には、マイクロスイッチよりなるメインスイッチ34が配されている。このメインスイッチ34は、トリガー部38の移動部材40の先端にある板状の押圧部材58によって押圧される。このメインスイッチ34は、トリガー部38の押圧部材58が全く押圧していない状態の移動部材40の位置である初期位置を検出するものであり、トリガー部38が少しでも押圧されて移動部材40が移動するとオフ状態からオン状態になる。
【0025】
トリガースイッチ30の移動部材40には、移動部材40と同軸に、正逆切替えスイッチ(以下、単に切替えスイッチという)60が回動自在に設けられている。この切替えスイッチ60には、正逆切替え用のマグネット62が設けられ、切替えスイッチ60を回転させることによりこの切替えマグネット62も回転する。切替えマグネット62と対応するスイッチ基板39上には、この切替えマグネット62を検知するための切替え用ホールIC64が設けられている。そして、切替えスイッチ60を回転させると、切替えマグネット62も同時に回転し、切替え用ホールIC64に届く磁力が変化し、正回転または逆回転であるかを判別する。具体的には、切替えマグネット62が切替え用ホールIC64に最も接近した状態が正回転であり、最も離れ磁力が届かない状態では逆回転であると判断する。そして、この切替え用ホールIC64は、正逆切替え信号を出力する。なお、切替えスイッチ60は略円筒形をなして移動部材40が貫通し、その外周部からレバー66が突出している。このレバー66は略L字状であり、作業者が操作を行い易いようになっている。
【0026】
次に、このトリガースイッチ30によって回転速度を変化させる場合について説明する。
【0027】
トリガースイッチ30のトリガー部38を全く押圧していない状態では、バネ44の付勢力によって、図5の初期位置に保持されている。そして、トリガー部38を指で押圧することにより、移動部材40が移動し、図5における初期位置、Aの範囲、Bの範囲、Cの範囲、Dの範囲に移動する。
【0028】
マグネット42がAの範囲にあるときは、トリガー部38が初期位置から押圧されて移動部材40が移動しているので、メインスイッチ34がOFF状態からON状態になる。また、図5に示すように、第1のホールIC46と第2のホールIC48からのホール信号は、両方ともOFF状態となっている。
【0029】
マグネット42がBの範囲にあるときは、第1のホールIC46のみに対応するため、第1のホールIC46のみからホールICがホール信号がON状態となり、第2のホールIC48からのホール信号はOFF状態となる。
【0030】
マグネット42がCの範囲にあるときは、第1のホールIC46と第2のホールIC48の重なった位置に対応するため、第1のホールIC46と第2のホールIC48からの両方のホール信号がON状態となる。
【0031】
マグネット42がDの範囲にあるときは、第1のホールIC46から離れ、第2のホールIC48にのみに対応するため、第2のホールIC48のみからON状態のホール信号が出力される。
【0032】
したがって、2個のホールIC46,48によって、図6に示すように停止、低速、中速、高速の4通りの状態を実現することができる。
【0033】
(3)駆動回路50の構成
次に、駆動回路50の構成について、図7に基づいて説明する。
【0034】
図7に示すように、駆動回路50は、インバータ回路52とインバータ回路52を制御する制御回路54と上記で説明したメインスイッチ回路33と、速度制御回路56と、上記で説明したトリガースイッチ30とから構成されている。
【0035】
インバータ回路52は、6個のFET1〜6から構成され、2個のFETが直列に接続された回路が3組並列に取り付けられたフルブリッジ回路である。そして、各直列に接続されたFET1〜6の中間点からモータ18の固定子巻線に駆動電流を供給する。6個のFET1〜6は、制御回路54に内蔵されている論理回路からのゲート信号によってON/OFFすることができる。また、このインバータ回路52は、リチウムイオン電池よりなる充電池32から電圧が供給される。
【0036】
制御回路54は、上記で説明した論理回路以外に、モータ18の回転速度を検出する回転速度検出回路と、この回転検出回路からの回転信号と、速度制御回路56から入力する速度指令信号に基づいてフィードバック制御を行い、論理回路を経てモータ18を速度指令信号に基づく回転速度のPWM制御をしている。
【0037】
制御回路54は、充電池32からその駆動のための電源が供給され、かつ、充電池32と制御回路54との間には、メインスイッチ回路33が設けられている。このメインスイッチ回路33は、メインスイッチ34とスイッチングトランジスタ35から構成され、メインスイッチ34をON状態になると、スイッチングトランジスタ35もON状態になり、充電池32から直流電源が供給されて制御回路54が駆動する。
【0038】
また、速度制御回路56からは速度指令信号以外に、ブレーキ信号が入力する。ブレーキ信号が入力しているときは、インバータ回路52における6個のFET1〜6の中で、上段にあるFET1,FET3,FET5を全てON状態にし、他の下段にあるFET2,4,6をOFF状態にして、モータ18の回転を停止させる。なお、この場合に上段のFET1,3,5を全てOFF状態にし、下段のFET2,4,6をON状態にしてもよい。この場合であってもモータ18の回転を停止させることができる。
【0039】
さらに、制御回路54には、切替え用ホールIC64が接続され、この切替え用ホールIC64からの正逆切替え信号によつて、モータ18を正回転または逆回転させる。
【0040】
(4)コードレス電動工具10の動作状態
次に、図5に基づいてコードレス電動工具10の動作状態について説明する。
【0041】
メインスイッチ34がOFF状態のときは、制御回路54に電源が供給されていないため、モータ18は停止状態となっている。但し、この場合においても充電池32からインバータ回路52には電圧がかかった状態となっている。
【0042】
コードレス電動工具10の作業者が、トリガー部38を初期位置から少しでも押圧してメインスイッチ34をON状態にすると、すなわち、Aの範囲にあるときは、制御回路54に電源が投入される。しかし、マグネット42が図5におけるAの範囲にあるときは、図5に示すように速度制御回路56からはブレーキ信号が出力され、制御回路54は上記したようにモータ18を停止状態にしている。ここで、メインスイッチ34をON状態にした場合に、メインスイッチ34に流れる電流は微小な電流であり、また、スイッチングトランジスタ35が動作するだけであるため、アークが発生がない。
【0043】
作業者がトリガー部38を押圧しマグネット42がBの範囲にくると、上記で説明したように低速の速度指令信号が速度制御回路56から出力される。また、ブレーキ信号はOFF状態となる。制御回路54は、低速の速度指令信号に併せてモータ18を低速で回転させる。
【0044】
作業者がさらにトリガー部38を押圧して、マグネット42がCの範囲にくると、中速の速度指令信号が速度制御回路56から出力される。
【0045】
作業者がさらにトリガー部38を押圧して、マグネット42がDの範囲にくると、高速の速度指令信号が速度制御回路56から出力される。
【0046】
そして、作業者が作業を終えトリガー部38から手を放すと、バネ44の付勢力によりトリガー部38がAの範囲からさらに初期位置に復帰し、ブレーキ信号が速度制御回路56から出力され、モータ18が停止する。
【0047】
このように、制御回路54への電源をON/OFFするのみであるため、アークによる経年劣化を防止することができる。
【0048】
また、トリガースイッチ30は、2個のホールIC46,48と非接触のマグネット42とから構成されているため、機械的な接触がなく長寿命化を図ることができる。
【0049】
また、2個のホールIC46,48から停止、低速、中速、高速の4段階の速度指令を行うことができる。
【0050】
さらに、モータ18を正逆逆回転させる場合には、切替えスイッチ60を回転させるだけでよい。
【0051】
(5)本実施形態の効果
上記構成のトリガースイッチ30であると、トリガースイッチ30の部品は、切替えスイッチ60を有するトリガー部38と、スイッチ基板39と、左ハウジング361と右ハウジング362だけであり、これらは簡単に組み立てることができる。そして、部品点数も少ない。その上、不具合が生じた場合には分解が容易であり、その不具合の箇所も容易に判別することができる。さらに、各部品の設計が容易であり、部品寸法がシビアにならない。
【0052】
また、ホールIC46,48,64とマグネット42,62との動作であるため、機械的な接点や摺動がなく、長寿命化も可能である。
【0053】
(第2の実施形態)
上記実施形態ではトリガー部38にマグネット42を設け、速度切替え用にホールIC46,48を設けたが、これに代えてトリガー部38の移動部材40の先端に金属製のブラシを設け、スイッチ基板39に印刷抵抗を復数種類設け、このブラシが印刷抵抗に接触したときの抵抗値によって速度を切替えてもよい。
【0054】
(変更例)
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0055】
上記実施形態のコードレス電動工具10では、インバクトドライバーにおいて説明したが、これに代えてグラインダーなどの他のコードレス電動工具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態のコードレス電動工具の側面図である。
【0057】
明細書Eに挿入する内容
【図2】トリガースイッチの縦断面図である。
【図3】トリガースイッチの横断面図である。
【図4】トリガースイッチの分解斜視図である。
【図5】トリガースイッチの動作を示す説明図である。
【図6】トリガースイッチのストローク状態と速度指令信号及びブレーキ信号との関係を示す表の図である。
【図7】駆動回路の回路図である。
【符号の説明】
【0058】
10 コードレス電動工具
12 フレーム
18 モータ
28 配線基板
30 トリガースイッチ
32 充電池
34 メインスイッチ
36 ハウジング
38 トリガー部
40 移動部材
42 マグネット
46 ホールIC
48 ホールIC
50 駆動回路
52 インバータ回路
54 制御回路
56 速度制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを回転させるトリガースイッチにおいて、
前記トリガースイッチのハウジングが、左右または上下に分割可能であり、
前記ハウジング内にスイッチ基板が収納され、
トリガー部が前記ハウジングに対し摺動自在に配されている
ことを特徴とするトリガースイッチ。
【請求項2】
前記モータの正逆切り替えスイッチが、前記トリガー部に回動自在に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。
【請求項3】
前記トリガー部から前記ハウジング内部に向かって移動部材が突出し、
前記移動部材にはマグネットが設けられ、
前記スイッチ基板上であって、前記移動部材が摺動する方向に沿ってn個(但し、n>1である)のホール素子が配列され、かつ、前記n個のホール素子の中で隣接するホール素子同士の一部が摺動方向に関して重なるように配列されている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。
【請求項4】
前記トリガー部から前記ハウジング内部に向かって移動部材が突出し、
前記移動部材にはブラシが設けられ、
前記スイッチ基板上であって、前記移動部材が摺動する方向に沿ってn個(但し、n>1である)の印刷抵抗が配列されている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。
【請求項5】
前記正逆切替えスイッチにマグネットが設けられ、
前記スイッチ基板に正逆切替え用のホール素子が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。
【請求項6】
前記モータがブラシレスDCモータである
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。
【請求項7】
前記トリガースイッチは、電動工具に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載のトリガースイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−157402(P2007−157402A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348523(P2005−348523)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】