説明

トリス(アルコキシシリルアルキル)アミンをベースとする水性シラン系及びその使用

本発明は、本質的に有機溶剤不含で、かつ架橋の際にも本質的にアルコールを遊離しないトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物をベースとする水性組成物及びその製造法、及び金属表面、ガラス表面又は鉱物表面、例えば、コンクリート及び煉瓦を疎水化するための、定着剤としての又は特に岩石を固定するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に有機溶剤不含であり、かつ架橋の際に本質的にアルコールを遊離しないトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物をベースとする水性組成物ならびにその製造方法、また例えば、金属表面、ガラス表面又はセメント及び煉瓦のような鉱物を疎水化するための、定着剤としての、プライマーとしての、ならびに特に岩石を固定するためのその使用に関する。
【0002】
有機溶剤を僅かにしか又は全く含有せず、よって環境に優しい水性シラン系に益々関心が集まっている。しかしこの水性系は、しばしば長期間にわたる耐性がない。
【0003】
水溶性アミノポリシロキサンの製造は、EP0590270A2に記載されている。アミノシランは、50%濃度のアルコール性溶液中に定義付けられた水量と混合され、かつ無水化される。しかし、高い有機溶剤の含有量及びそれに付随する低い引火点が欠点である。希釈された水性ポリシロキサン混合物の硬化は、80℃で行われる。
【0004】
DE10335178A1には、水で希釈可能なシラン系、例えば、アルコール溶剤中の3−アミノプロピルトリアルコキシシランとビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンから成る混合物の製造が開示されている。このシラン混合物は、定義づけられたモル水量で部分的に加水分解される。シラン混合物は、25〜99.99%のアルコール含有量を有し、VOC(揮発性有機化合物)不含ではない。
【0005】
US5051129には、水溶性アミノシランとアルキルトリアルコキシシランの水溶液の組成物が開示されている。この製造は、定義づけられた量の水をシラン混合物に添加し、かつ引き続き60℃で温度処理することにより行われる。このように製造されたシラン混合物は一定の割合で水に溶け、かつ表面の疎水化に利用される。
【0006】
EP0716128A1には、水ベースのオルガノポリシロキサン含有組成物、その製法及びその使用が開示されている。水溶性アミノアルキルアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシラン及び/又はジアルキルジアルコキシシランの混合により、及び定義付けられたpH値で水を添加することにより、オルガノポリシロキサン含有組成物が生じる。
【0007】
アミノアルキルトリアルコキシシランとビス−シリルアミノシランの反応の反応生成物から成る水性シラン系は、EP1031593A2に開示されている。ビス−シリルアミノシランの加水分解のみをベースとするこの水溶液は利用に適していない。それというのも、ゲル化及び薄片状に析出する傾向があるからである。
【0008】
WO00/39177A2には、アルコール含有水溶液中でのビス−シリルアミノシラン及び/又はビス−シリルポリスルファンの使用が記載されている。このシランは、水、アルコール及び任意に酢酸と混合され、かつ少なくとも24時間加水分解される。引き続き金属上で使用される。
【0009】
US6955728B1には、水溶液中の他のシランと組み合わせたアセトキシシランの使用及び金属上でのその使用が記載されている。販売に関しては、シランの縮合を妨げるために2成分系の形の非加水分解濃縮物、又は水不含の予備混合された濃縮物が推奨される。混合後に、水溶液は常に加水分解アルコールを含有している。
【0010】
DE1008703は、ガラス繊維を覆う又は滑らかにするための方法に関する。このために、アミノアルコキシシランはガラス繊維材料上に塗布される。これは例えば、0〜60質量%の水含有量を有するアルコール溶液から行われる。
【0011】
WO2005/014741A1は、僅かな量でトリス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを含有するアミノシランの反応生成物をベースとする水性アルコール調製物に関する。前記調製物は、25〜99質量%のアルコール含有量を有し、かつガラス繊維の変性に適切である。
【0012】
本発明の課題は、トリス−シリル化アミノ官能性アルコキシシランをベースとする水性でかつ本質的にVOC不含及び/又はゾルゲルベースの組成物を提供することであった。これは多岐にわたり使用可能で、特に防腐食性でかつプライマー化特性を有し、かつ低温でも架橋し、広範囲に及び耐摩耗性である。特別な関心事は、これから製造可能な層及び製品の提供にある。
【0013】
前記課題は独立特許請求項により解決され、有利には実施態様は従属請求項及び説明に詳述されている。
【0014】
意外にも、ケイ素化合物をベースとする本質的にアルコール不含の安定な水性組成物は、トリス−アミノ官能性アルコキシシラン(特に式IX)と有機官能性、特にアルキル官能性アルコキシシラン(有利には式VI)から得られることが見出された。その際に、ケイ素化合物は本質的に完全に加水分解されて存在する。更に、この組成物は有利に低温で既に架橋することが強調される。
【0015】
従って本発明によればトリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(トリス−AMEO)から、特別な特性を駆使できる本質的にVOC不含の安定な水性シラン系(以後、組成物とも称する)を製造できることが見出された。従って、例えば、ガラスプレート、金属表面又は他の適切な基材表面上に、トリス−AMEOとn−プロピルトリメトキシシラン(PTMO)から成る水性共縮合物を塗布し、室温で乾燥させた後に、高い安定性と疎水性が示される。ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(ビス−AMEO)又は他のシラン系をベースとする、例えば、アミノシラン又は純粋なアルキルシランをベースとする共縮合物と比べて、トリス−AMEOをベースとするシラン系の硬化は著しく速く行われ、このことは種々の使用、特に基質の被覆にとって特に有利である。更に、得られた被覆は例えば、沸騰水、酸性の周囲の影響、マスタード又は通常の洗浄液のような強い化学的影響に対して著しく安定である。
【0016】
意外にも、室温にて12時間にわたり金属表面又はガラス表面上で硬化した本発明による組成物は沸騰水中でも剥がれない。得られた硬化層は、基材上で本質的に変化しないままであった。それ自体は、酢クリーナー、マスタード及びオーブンクリーナーに対して、室温にて12時間後に得られた硬化被覆は安定性を示した。これは基材との出来るだけ強い架橋によると考えられるが、この理論に固執するわけではない。
【0017】
架橋とは、ケイ素化合物の互いの縮合、及び特に基材の官能基との縮合であると解釈される。これにより、及び場合により例えばケイ素化合物のアミノ官能基と基材の官能基との錯体形成のような相互作用もしくは反応により、本質的にアルコール不含の水性組成物から沸騰水に耐える安定な層が形成される。
【0018】
本発明の対象は、本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物及び水を含有する、特にゾルゲル系として又は溶液としての組成物(以後、シラン系とも称する)であり、その際、該ケイ素化合物はアルコキシシランから由来し、これと比較して以下に挙げるアルコキシシランもしくはオルガノアルコキシシラン、特に一般式II、IX、IV、VI、VIIならびにVIIIによるもの、かつ架橋構造エレメント(特に以下に定義するような基A、Z、Y、C、D及び/又はEを有する、ならびにR1、R3、R5、R7、R8、R11及び/又はR12を有する)は、鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋した構造を形成し、その際、少なくとも1つの構造は理想的な形で一般式I又はIa
【化1】

[式中、アルコキシシランから由来する構造エレメント中、
− Aは二価のアミノアルキル基、
− トリス−シリル化アミン中のZは互いに独立に二価のアルケニル基であり、
− YはOR1、又は互いに独立に架橋及び/又は空間架橋した構造でOR1もしくはO1/2に相応し、
− その際、式Ia中R1は互いに独立に、本質的に水素であり、かつ
11及び/又はR12は互いに独立に有機官能基に相応し、かつ
− HXは酸であり、その際、Xは無機又は有機酸基であり、
− 0≦Δ≦2;0≦Ω≦2;a≧0、有利には1〜12000、特に有利には2〜10000、とりわけ有利には3〜5000、Σ≧1、有利には2〜15000、特に有利には3〜10000、とりわけ有利には4〜6000、e≧0、有利には1からそれぞれの分子中の窒素原子の数までであり、特に有利には2〜10000、とりわけ有利には3〜8000、特に4〜5000、かつ(a+Σ+e)≧1、特に平均して(a+Σ)≧2〜27000であり(その間にある全ての数を含める)]
に相応し、その際、該組成物は本質的に有機溶剤不含であり、かつ架橋、特に硬化の際に本質的にアルコールを遊離しない。
【0019】
また本発明の対象は、本質的にアルコキシ基不含であり、かつケイ素化合物中のアミノ基のうち少なくとも1つがトリス−シリル化されている本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物及と水を含有する、特にゾルゲル系としての又は溶液としての組成物(以後、シラン系とも称する)である。
【0020】
当該のいわゆるトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物とは換言すると、分子中に窒素に結合した3つのシリル基を有する少なくとも1つのアミノ基が存在するアミノ化合物であると解釈される。この場合に、該当するシリル基は通常は二価のアルキレン単位、例えば、−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−CH2[CH(CH3)]CH2−により前記窒素に結合する。更に、前記のシリル基は互いに独立に同じ又は異なっていることができ、かつ"Si−OH"単位及び/又は"Si−O−Si"単位の他に、場合により更なる官能基、特に有機官能基を有することができ、これは以下の一般式I、Ia、II、IX、IV、VII及びVIIIを引用できる(スキームIも参照のこと)。
【0021】
上記の本質的に水溶性でトリス−シリル化アミノ官能性、特にアルコキシ基不含のケイ素化合物とは、加水分解条件及び/又は縮合条件下にトリス−シリル化アミノ官能性アルコキシシラン、特に式IX、それらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物の加水分解及び/又は縮合、特に少なくとも部分的な縮合により得られる化合物であると解釈され、その際、製造は水性アルコール相で、かつ貯蔵は本質的に水相で行うことができる。1〜6の間のpH値で加水分解及び貯蔵するのが有利である。
【0022】
同様に、本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性、特にアルコキシ基不含のケイ素化合物とは、加水分解条件及び/又は縮合条件下にトリス−シリル化アミノ官能性アルコキシシラン、特に式IX、それらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物と、更なる官能性アルコキシシラン、特に式II、III、IV、VI、VII及び/又はVIII、それらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物又は混合物の加水分解及び/又は縮合、特に少なくとも部分的な縮合により得られる化合物であると解釈される。その際、製造は水性アルコール相で、かつ貯蔵は本質的に水相で行うことができる。1〜6の間のpH値で加水分解及び貯蔵するのが有利である。
【0023】
このような共縮合物は、例えばトリス−AMEO/トリス−AMMOとPTMO、又はGLYMOから、又はトリス−AMEO/トリス−AMMOとAMEO、ビス−AMEO、MEMO、VTMO、VTEO、Dynasylan(登録商標)1189、メルカプトアルキルシラン、DAMO、TRIAMO、Dynasylan(登録商標)4144、Dynasylan A、アルキルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルファン(例えば、Si69)、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ジスルファン(例えば、Si266)から製造される。
【0024】
本発明によれば、ゾルゲルは間接的又は直接的に、式IXのトリス−シリル化アミノアルコキシシラン及び/又はこの化合物の加水分解生成物及び/又は縮合物の加水分解及び/又は縮合により、場合により更なる官能性アルコキシシラン(特に式II、III、IV、VI、VII及び/又はVIII)又は前記アルコキシシランの少なくとも2つとの加水分解及び/又は縮合により、それらの加水分解生成物及び/又はグラフト縮合生成物及び/又は共縮合物またブロック−共縮合物から由来する。間接的に由来するとは、トリス−アミノ官能性アルコキシシランと二酸化ケイ素(SiO2)との反応により製造されるゾルゲル系であり、かつ特に専ら添加されたアルコキシシランの縮合によりゾルゲル系が形成される場合には直接的であると解釈される。
【0025】
溶液とは、ケイ素化合物と組成物の本質的に水相の均一な混合物の存在であると解釈される。
【0026】
全組成物に対する溶剤、特に遊離アルコールの含有量は、有利には2質量%未満、特に≦1質量%、特に有利には0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。この場合に、トリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物、特に式Ia又はI(OR1のR1は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基に相応する)のものから、≦1質量%、有利には≦0.5質量%のアルコールが遊離されるのが有利である;有利には、トリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物、特に式Ia及び/又はIは、本質的に完全に加水分解され、かつ少なくとも部分的に縮合、共縮合されるか又はブロック共縮合物として存在する;特に有利には遊離アルコールの含有量は1質量%以下、有利には0.5質量%以下であり、反応生成物が、式II、IX又はIVのシランもしくは前記化合物の少なくとも2つの反応から生じる場合は有利である。同様に、達成可能な引火点が95℃を越えるのが有利である。溶剤として、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、又は当業者に公知の通常の有機溶剤、例えば、炭化水素、ケトン又はエーテルが該当する。
【0027】
本発明の対象は、式IX、又はIXとII、又はIXとIV、又はIX、IIとIVの加水分解及び/又は縮合からの本質的に水溶性でかつアルコキシ基不含の反応生成物ならびにそれらの加水分解生成物及び/又は縮合反応生成物ならびに場合により酸もしくはその共役塩及び水ならびに場合によりアルコールを含む組成物であり、その際に、遊離アルコールの含有量は該組成物に対して1質量%未満である。
【0028】
本質的にアルコキシ基不含で、かつアルコールのような有機溶剤不含のものとして、ケイ素化合物中のケイ素原子:ケイ素化合物、特に一般式Ia又はI中の遊離アルコール(HOR1、R1はアルキル基である)もしくはアルコキシ基(−OR1、R1はアルキル基である)の比が1:0.3未満、有利には1:≦0.15;特に有利には1:≦0.05、とりわけ有利には1:≦0.01、特に1:0.001〜1:0.0001である組成物が該当する。
【0029】
相応のことは、式IXのシランと式II、IV、IX、VI、VII及び/又はVIIIの化合物との反応に基づく反応生成物にも当てはまる。
【0030】
ガラスプレート、金属表面上又は他の基材表面上に塗布され、縮合物又は共縮合物を含有する組成物は基材と迅速に架橋し、かつ高い安定度の疎水性層を形成する。室温で架橋したシラン系は、沸騰水中でもガラス表面又は金属表面から再び剥がれることはない。
【0031】
トリス−アミノ官能性アルコキシシラン、例えば、トリス(トリエトキシシラン)アミンもしくはトリス(トリメトキシシラン)アミンと、次の一連のもの:n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン(PTMO)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AMMO)、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(MEEO)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)1189)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MTMO)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MTEO)、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DAMO)、ポリエチレングリコール官能化アルコキシシラン、テトラエトキシシラン(Dynasylan A)、テトラメトキシシラン(Dynasylan M)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Si 69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(Si 266)、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルファンビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビニルトリエトキシシラン(VTEO)、1−アミノメチルトリエトキシシラン、1−アミノメチルトリメトキシシラン、1−メタクリルオキシ−メチルトリエトキシシラン、1−メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、1−メルカプトメチル−トリエトキシシラン、1−メルカプトメチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン(Dynasylan(登録商標)OTEO)、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチル−トリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチル−トリメトキシシラン、オルガノアルコキシシリルアルキル無水コハク酸、例えば、トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジエトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジメトキシシリルプロピル無水コハク酸、ジメチルエトキシシリルプロピル無水コハク酸、ジメチルメトキシシリルプロピル無水コハク酸、一例を挙げるにすぎないが、Dynasylan(登録商標)1151(アルコール不含アミノシラン加水分解生成物)、Dynasylan(登録商標)HS2627(アミノシランとアルキルシランからのアルコール不含共縮合物)、Dynasylan(登録商標)HS2776(ダイナシランとアルキルシランからのアルコール不含水性共縮合物)、Dynasylan(登録商標)HS 2909(アミノシランとアルキルシランからのアルコール不含水性共縮合物)、Dynasylan(登録商標)HS 2926(エポキシシランをベースとするアルコール不含水性生成物)、Dynasylan(登録商標)SIVO 110(エポキシシランからのアルコール不含水性生成物)、ビス(トリエトキシシラン)アミン及び/又はビス(トリメトキシシラン)アミンからのアルコキシシランもしくはオルガノアルコキシシラン系から成る共縮合物をベースとするシラン系は、基材層上で高い安定性を有する。
【0032】
前記シランの特別な組合せにより、硬化表面の疎水性と反応性を目的を定めて調節できることが特に重要である。しかし低い硬化温度を達成するために、本質的に溶剤不含の組成物中に少なくとも1つのトリス−アミノ官能性化合物もしくはそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物(例えば、トリス(トリアルコキシシラン)アミンの)が常に存在することが前提である。従って、更なる成分としてトリス−アミノ官能性化合物が存在する場合には、他の置換アルコキシシランをベースとする水性シラン系は低温で自体が硬化する。それ自体はフルオロシランとの共縮合により室温で硬化する水性シラン系、すなわち、特に基材表面の反応性官能基と架橋及び/又は相互作用又は反応する水性シラン系が製造可能であり、かつ安定な疎油性表面が形成される。
【0033】
特に有利な変法によれば、本発明の対象はゾルゲル系又は溶液としての本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物と水を含有する組成物であり、その際に、ケイ素化合物はアルコキシシランから由来し、かつ鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋した構造を形成する架橋構造エレメントを有し、その際に、少なくとも1つの構造は理想的な形で一般式I
【化2】

[式中、
アルコキシシランから由来する構造エレメント中、
−Aは、二価のアミノアルキル基であり、
−Bは、アミノアルキル基であり、
−Cは、アルキル基であり、
−Dは、エポキシ基又はエーテル基であり、かつ
−Eは、有機官能基に相応し、
−トリス−シリル化アミン中のZは互いに独立に二価のアルキレン基であり、
−Yは、OR1に相応するか又は互いに独立に架橋及び/又は空間架橋した構造でOR1又はO1/2であり、
−その際に、R1は互いに独立に本質的に水素であり、かつR3、R5、R7、R8、R11及び/又はR12は、互いに独立に有機官能基に相応し、かつ
−HXは、酸であり、その際にXは、無機又は有機酸基であり、
−ここで、0≦Δ≦2、0≦Ω≦2;0≦x≦1、0≦y≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、w≧0、Σ≧1、e≧0及び(a+b+c+d+w+Σ+e)≧2である]
に相応し、その際、該組成物は本質的に有機溶剤不含であり、かつ架橋の際にアルコールを遊離しない。
【0034】
特に、ケイ素化合物は本質的に完全に加水分解され、かつ少なくとも部分的に縮合、共縮合又は部分的にブロック共縮合物として存在する。従って、トリス−シリル化ケイ素化合物は本質的にアルコキシ基不含であるのが有利である。
【0035】
アルコキシシランから、特に、式II、IX、IV、VI、VII及び/又はVIIIから由来する反応生成物は、ケイ素化合物の架橋構造エレメントとして、有利には基A、B、D、E、Z、Y、R1、R3、R5、R7、R8、R11及び/又はR12を有する。
【0036】
c≧1及びΣ≧1又はd≧1及びΣ≧1又はw≧1及びΣ≧1であり、かつそれぞれa≧0、b≧0、e≧0である一般式I及び/又はIaにより理想化されて表記されているケイ素化合物が有利である。従って、反応生成物として、式IXとVI又はIXとVII又はIXとVIIの、ならびに場合によりそれぞれ式II及び/又はIIIとのアルコキシシラン、加水分解生成物及び/又は縮合生成物から製造されるか又は得られるケイ素化合物が有利である。この場合に、特にΔ=0、1又は2、Ω=0、1又は2;x=0又は1、y=0又は1、u=0又は1、v=0又は1、a=0、1、2〜無限大、b=0、1、2〜無限大、c=0、1、2〜無限大、d=0、1、2〜無限大、w=0、1、2〜無限大、Σ=0、1、2〜無限大及びe=0、1、2〜無限大であり、ここで(a+b+c+d+w+Σ+e)≧2である。
【0037】
特に有利な組成物では、特に12未満のpH値、有利には3.5〜6の間のpH値でCに関してはc≧1のアルキル基を有する構造エレメントである。二者択一的にDに関してはd≧1のエポキシ基又はエーテル基を有する構造エレメントであることができる。もう1つの有利な態様によれば、Eに関してw≧1の有機官能基、例えばフッ化アルキル基又はアルコキシ基を有する構造エレメントであり、その際に、組成物中のpH値は、有利には12未満、特に有利には3.5〜6の間である。
【0038】
本発明による組成物は、12未満のpH値を有し、特に1〜12の間、有利には1〜5.4の間、特に有利には3.0〜5.4の間であり、しかし特にpH3.5〜4.8の間である。pH値は臨界的な大きさであり、かつケイ素化合物の正確な組成物に応じて、組成物の水溶性と安定性に大きな影響を与える。
【0039】
組成物を製造するための又は最終生成物のpH値を調節するための酸として、当業者に慣用の通常の有機酸又は無機酸が用いられる。これは特に水溶性の酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酸性シリカゾル、氷酢酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸である。
【0040】
1実施態様によれば、本発明による水性の、本質的に溶剤不含のトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含有する組成物の使用により、シラン系の生成物特性をプラスに変性する更なるシラン系と混合して一緒にすることができる。例えば、このシラン系の硬化温度を性能にマイナスに影響を与えずに下げることができる。
【0041】
更に、本発明による組成物に非加水分解シランを添加することができる。これは使用前に例えば間接的に行うことができる。
【0042】
本発明による水性シラン系の使用スペクトルは極めて多様であるので、これらは例えば、ガラス又はセメント、煉瓦、砂岩などのような種々の基材上で疎水化剤として使用できる。フルオロシランとの組合せで(共縮合物又は混合物として)、基材は、疎油性及び防落書き特性及び/又は防指紋特性を有する更なる基材が得られる。更なる利用分野は、基材表面、例えば、ガラス、金属、セメント、砂岩、煉瓦及び更なる無機基材などのプライマー化において生じる。例えば、金属表面のプライマー化によりベース層の接着は、例えば、これに限定されるわけではないが1K−液体塗料ならびに2K−液体塗料又は粉末塗料及びそれにより改善された腐食防止が達成される。更に、トリスアミノ官能性シラン化合物をベースとする水性シラン系は、岩石の固定又は水性塗料調製物、塗料分散液又は一般的な分散液で使用できる。
【0043】
同様に、本発明によるシラン系はそのままの形で、又は使用目的の調製物の形で利用でき、その際に殺菌、防カビ及び/又は殺ウイルス作用が望ましく、医療用容器又は装置の被覆もしくは表面処理に使用される。
【0044】
本発明による組成物は、一官能化又は二官能化アルコキシシラン又はテトラアルコキシシランのような少なくとも1つ又は複数のアルコキシシランから由来する水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物をベースとし、その際に、ケイ素化合物は架橋構造エレメントを有し、特に本発明による方法により製造されるか又は得られるケイ素化合物において、
−構造エレメント中のAは、一般式II
(OR1)3-Δ(R11)ΔSi−A−Si(R11)Δ(OR1)3-Δ (II)
から由来する二価のアミノアルキル基に相応し、ここで前記式中、
Aは、式III
−Z*−[NH(CH2)f]gNH[(CH2)f*NH]g*−Z*− (III)
の二価のアミノ官能基であり、前記式中、
−Z*は、独立に二価のアルキレン基、特に−(CH2)i−又は構造異性体、有利には−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−又は−[CH2CH(CH3)CH2]−であり、i、f、f*、g又はg*は、同じ又は異なり、ここでi=0〜8、f及び/又はf*=1、2又は3、g及び/又はg*=0、1又は2、R11は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であるか又はアリール基であり、ここでΔ=0又は1であり、その際に、iは、有利には0、1、2、3又は4であり、
−トリス−シリル化アミン構造エレメント中のZは、独立に一般式IX
N[ZSi(R12)Ω(OR1)3-Ω]3 (IX)
(式中、Zは、独立に、二価のアルキレン基であり、特に−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−又は−[CH2CH(CH3)CH2]−の系列からのものであり、ここでR12は、1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であるか、又はアリール基であり、かつ独立にΩ=0又は1である)
から由来する二価のアルキレン基に相応し、
−構造エレメント中のBは、一般式IV
B−Si(R3)x(OR1)3-x (IV)
[式中、
x=0又は1であり、その際、R3は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又は置換又は非置換アリール基、アリールアルキル基であり、かつBは、以下の一般式Va又はVb
10h*NH(2-h*)[(CH2)h(NH)]j[(CH2)l(NH)]n−(CH2)k− (Va)
(0≦h≦6;h*=0、1又は2;j=0、1又は2;0≦l≦6;n=0、1又は2;0≦k≦6及びR10は、ベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基及び/又は1〜8個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基に相応し、
有利にはk=3、n=1又は2、l=1、2又は3であり、かつj=0であり、
特に有利にはN,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基ではk=3、n=1又は2、l=2及びj=0;m=2及びp=3である)及び/又は
[NH2(CH2)m]2N(CH2)p− (Vb)
(0≦m≦6、及び0≦p≦6である)
のアミノ官能基のうち1つに相応する]
から由来するアミノ官能基に相応し、
−構造エレメント中のCは、一般式VI
C−Si(R5)y(OR1)3-y (VI)
[ここで、y=0又は1であり、その際、Cは1〜20個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、R5は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、特に有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又は置換又は非置換アリール基又はアリールアルキル基に相応する]から由来するアルキル基に相応する。
− 構造エレメント中のDは、一般式VII
D−Si(R7)u(OR1)3-u (VII)
[式中、
u=0又は1であり、その際、Dは3−グリシドキシアルキル基、3−グリシドキシプロピル基、エポキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基、ポリアルキルグリコールアルキル基又はポリアルキルグリコール−3−プロピル基であり、
7は、1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基、又はアリール基に相応する]
から由来するエポキシ基又はエーテル基に相応する;及び/又は、
− 構造エレメント中のEは、一般式VIII
E−Si(R8)v(OR1)3-v (VIII)
[式中、v=0又は1であり、その際、R8は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、ここで、
− Eは、基R8*−Ym−(CH2)s−であり、その際、R8*は、1〜9個の炭素原子を有するモノ−、オリゴ−、又はペルフルオロ化アルキル基であるか、又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオロ化アリール基であり、ここで、Yは、CH2−、O−、アリール基又はS基に相応し、かつm=0又は1、かつs=0又は2である及び/又は
− Eは、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、メルカプトアルキル基、スルファンアルキル基、ウレイドアルキル基、アクリルオキシアルキル基又は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルコキシ基である]
から由来する有機官能基に相応する。
− II、IX、IV、VI、VII及び/又はVIII中、それぞれ互いに独立にR1は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、特に有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基に相応する。通常、R1は、メチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0045】
式IXの有利に使用可能な化合物は以下のものである:
トリス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス−N,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン及び/又はトリスN,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、特にトリス(トリエトキシシリルプロピル)−アミン(N[CH2]3Si(OC25)3、Tris-AMEO)、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(N[CH2]3Si(OCH3)3]3、Tris-AMMO)、トリス−DAMO(N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]3)及び/又はTris-TRIAMO(N(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]3)、その際、Tris-AMEOとTris-AMMOが特に有利である。
【0046】
式IIの有利に使用可能なビス−アミノアルコキシシラン化合物は以下のものである:
ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス−N,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン及び/又はビス−N,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、特に、ビス(トリエトキシシリルプロピル)−アミン((H52O)3Si(CH2)3NH(CH2)3Si(OC25)3、ビス−AMEO)、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン((H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)3Si(OCH3)3、ビス−AMMO)、ビス−DAMO((H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)3)Si(OCH3)3)及び/又はビス−TRIAMO((H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH22NH(CH2)3Si(OCH3)3)、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン、ビス(ジエトキシメチルシリルメチル)アミン、ビス(ジメトキシメチルシリルメチル)アミン、(H3CO)2(CH3)Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)2(CH3)及び/又は(H3CO)3(CH3)Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)2(CH3)、その際、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン((H52O)3Si(CH2)3NH(CH2)3Si(OC25)3、ビス−AMEO)が特に有利である。
【0047】
式IVの有利に使用可能なアミノアルコキシ化合物は次のものである:
アミノプロピルトリメトキシシラン(H2N(CH2)3Si(OCH3)3、AMMO)、
アミノプロピルトリエトキシシラン(H2N(CH2)3Si(OC25)3、AMEO)、
ジアミノエチレン−3−プロピルトリメトキシシラン(H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、DAMO);
トリアミノジエチレン−3−プロピルトリメトキシシラン
(H2N(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、TRIAMO)、
アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチル−トリメトキシシラン、2−アミノエチル−メチル−ジメトキシシラン、2−アミノエチル−フェニル−ジメトキシシラン、2−アミノエチル−トリエトキシシラン、2−アミノエチル−メチル−ジエトキシシラン、2−アミノエチル−トリエトキシシラン、(2−アミノエチルアミノ)−エチルトリエトキシシラン、6−アミノ−n−ヘキシル−トリエトキシシラン、6−アミノ−n−ヘキシル−トリメトキシシラン、6−アミノ−n−ヘキシル−メチル−ジメトキシシランならびに特に3−アミノ−n−プロピル−トリメトキシシラン、3−アミノ−n−プロピル−メチル−ジメトキシシラン、3−アミノ−n−プロピル−トリエトキシシラン、3−アミノ−n−プロピル−メチル−ジエトキシシラン、1−アミノメチルトリエトキシシラン、1−アミノメチルメチルジエトキシシラン、1−アミノメチルトリメトキシシラン、1−アミノメチルメチルジエトキシシラン、
N−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルトリメトシキシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−ブチル−1−アミノ−メチルトリエトキシシラン、N−ブチル−1−アミノメチルメチルジメトキシシラン、N−ブチル−1−アミノメチルトリメトキシシラン、N−ブチル−1−アミノメチルメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−1−アミノメチルメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−1−アミノメチルメチルトリメトキシシラン、N−フェニル−1−アミノメチルメチル−トリエトキシシラン、N−フェニル−1−アミノメチルメチルトリメトキシシラン、N−ホルミル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ホルミル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ホルミル−1−アミノ−メチルメチルジメトキシシラン及び/又はN−ホルミル−1−アミノメチルメチルジエトキシシラン又はそれらの混合物。
【0048】
式VIの有利に使用可能なアルキルアルコキシ化合物は次のものである:
y=0又は1、その際、Cが1〜24個の炭素原子、特に1〜8個の炭素原子を有する線状又は分枝アルキル基、有利にはメチル基、エチル基、特に有利にはn−プロピル基、イソプロピル基又はオクチル基であり、R5が1〜24個の炭素原子、特に1〜8個の炭素原子を有する線状又は分枝又は環状アルキル基、有利にはメチル基、エチル基、特に有利にはn−プロピル基、イソプロピル基又はオクチル基であり、R4が1〜3個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝アルキル基、特に有利にはメチル基、エチル基及び/又はイソプロピル基又はn―プロピル基に相応する式VIの化合物。
【0049】
前記アルコキシシラン化合物の有利な例は:プロピルトリメトキシシラン(PTMO)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMO)、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、n−オクチル−メチル−ジメトキシシラン、n−ヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、n−ヘキシル−メチル−ジエトキシシラン、プロピル−メチル−ジエトキシシラン、プロピル−メチル−ジエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−ヘキシル−トリエトキシシラン、シクロヘキシル−トリエトキシシラン、n−プロピル−トリ−n−ブトキシシラン、n−プロピル−トリメトキシシラン、n−プロピル−トリエトキシシラン、イソブチル−トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクラデシルメチルジメトキシシラン、ヘキサデシルメチルジメトキシシラン及び/又はヘキサデシルメチルジエトキシシランならびにこれらのシランの混合物である。
【0050】
基Dで官能化された有利に使用可能な式VIIのアルコキシシラン化合物は、例えば、トリエトキシシラン又はトリメトキシシランとしての3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン;トリエトキシシラン又はトリメトキシシランとしてのエポキシシクロヘキシルトリアルコキシシランのような化合物である。
【0051】
ポリアルキルグリコール基としての基Dは、ポリエチレングリコール−3−プロピル(PEG-プロピル)、ポリプロピレングリコール−3−プロピル、ポリメチレングリコール−3−プロピルのグループから、又はプロピレングリコール基及びエチレングリコール基との、例えば、ランダムな分布の又はブロックポリマーとのコポリマーから選択されるのが好適である。その際、ポリアルキレングリコール基は分子あたり有利には約3〜14個のアルキレングリコール基の平均分布度を有する。
【0052】
式VIIIの有利に使用可能なオルガノ官能化アルコキシシラン化合物は、以下の化合物である:有利な1実施態様によれば、Eは、F3C(CF2)r(CF2)s基に相応し、その際、rは、0〜9の整数であり、sは0又は2であり、特にrは5であり、sは2、CF3(CF2)5(CF2)2−基又はCF3(C64)−基又はC65−基であるのが有利である。
【0053】
もう1つの実施態様によれば、Eは一般式XI
−(CH2)q−X−(CH2)q−Si(R8)v(OR1)3-v (XI)
[式中、
q=1、2又は3、
X=Sp(pは鎖中に2〜12個の硫黄原子の分布を有して平均して2もしくは2.18、又は平均して4もしくは3.8である)、
v、R8及びR1は、前記の定義の通りである]のスルファンアルキル基に相応する。Eが一般式XIに相応して得られるシランは、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(Si266)、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジシルファン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Si69)、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルファン、
ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルファン、
ビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルファン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、
ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルファン、
ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルファン、
ビス(ジメトキシメチルシリルメチル)ジスルファン、
ビス(ジエトキシメチルシリルメチル)ジスルファン、
ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルファン、
ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルファン、
ビス(ジメトキシメチルシリルメチル)テトラスルファン、
ビス(ジエトキシメチルシリルメチル)テトラスルファン、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン及び/又は混合物である。
【0054】
もう1つの好適な実施態様によれば、Eは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基又はn−プロポキシ基に相応し、その際、v=0であるので一般式VIIIの化合物はテトラアルコキシシランに相当する。通常のテトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランである。
【0055】
更に特に有利な一般式VIIIのアルコキシシラン化合物は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−トリエトキシシラン又はこれらに由来するシランを含有する相応の混合物又は3,3,3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチル−ジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−メチル−ジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−シクロヘキシル−ジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−フェニル−ジエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−トリエトキシシラン、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル−メチル−ジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシエチル−トリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメルカプトエチル−トリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシエチル−メチル−ジメトキシシランならびに特にトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−トリメトキシシラン及びトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−トリエトキシシランならびにアクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メチルアクリルオキシ−プロピルトリアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基と置換可能である。適切な化合物は、同様にメタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、メタクリルオキシメチル−メチルジエトキシシラン及び/又はメタクリルオキシメチル−メチルジメトキシシラン及び/又は混合物である。
【0056】
該組成物は、有利には本質的にアルコール不含であり、かつ該ケイ素化合物は本質的にアルコキシ基不含であるので、一般式I又はIa中、ケイ素化合物中のケイ素原子:アルコール及びアルコキシ基(又はHOR1及び−OR1)のモル比は、1超:0.1である。その際、計算のために水素ではないR1のみを考慮することにする。すなわち、互いに独立に、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基に相応するR1を考慮することにする。既に、1:1の比(すなわち、Si原子1モルあたり、1モル未満のアルコール又はアルコキシ基が存在する)が好適であり、特に前記の比は1超:0.5、有利には1超:0.05、更に有利には1超:0.01、特に有利には1超:0.005であるのが好適である。
【0057】
以下に挙げる組成物(最終生成物)中、質量%での含有量は、本発明による反応の前に使用されるアルコキシシラン化合物及び反応混合物から加水分解アルコールを除去した割合を表す。
【0058】
質量パーセントでの含有量は、pH12未満、特に1〜6の間、有利には1〜4.8、有利には3.5〜4.5の間で、全組成物に対して、0.1〜99.9質量%、特に1〜80質量%、5〜60質量%、有利には5〜50質量%、特に有利には7.5〜40質量%の使用アルコキシシラン化合物の割合として示される。
【0059】
一般に、それぞれの組成物は当業者に慣用の方法により、1質量%未満、特に0.0001〜1質量%の含有量に調節することができる。この方法には、製造前及び/又は後、また利用直前の希釈が含まれる。希釈剤及び/又は希釈媒体として、通常の薬剤、例えば水、溶剤又は塗料又は調製物(薬剤、化粧品、建築又は機械組立て分野からの)が挙げられる。組成物の希釈は、例えば、組成物として、又は基材を処理及び/又は変性するための薬剤としてそれらを使用する直前に行うのが有利である。そのために、水性組成物は使用されるアルコキシシランに対して、ケイ素化合物0.1〜95.5質量%の含有量まで、例えば、1:0.5〜1:1000まで水もしくは水相で希釈できる。通常の希釈は、1:1〜1:100の範囲内、特に1:50の間、有利には1:1〜1:10の間である。溶剤として、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、これらの溶剤の混合物又は一般に当業者に慣用の溶剤を使用できる。
【0060】
本発明による組成物は、0℃以上、かつ有利には100℃を上回って、特に15〜25℃で既に架橋する。高温、例えば200℃までの温度で、架橋又は硬化がより迅速に進行することは当業者に明白である。有利な組成物は、硬化の際に全組成物に対して1質量%未満から0質量%で、有利には0.4質量%未満、特に有利には0.3質量%未満〜0質量%がアルコール不含である。
【0061】
密閉容器中、室温で少なくとも2カ月、有利には6カ月の間にわたり、特に有利には室温(20〜25℃)で10カ月にわたり混濁しないか又は固体化しない場合には、組成物は安定なものと見なされる。特に安定な組成物は、前記条件下で12カ月にわたり安定である。二者択一的に、特に安定な組成物は圧力条件下に2カ月まで、特に6カ月までの安定性を有する。圧力条件とは60℃での密閉容器中の貯蔵であると解釈される。
【0062】
組成物のpH値の調節は、通常はその製造の際に既に行われるので、pH値を後から調節することは行われないままである。
【0063】
pH値を調節するための酸として、特にHX酸(ここで、Xは無機又は有機酸基である)として、有利にはギ酸、酢酸、酸性シリカゲル、酸性シリカゾル、氷酢酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が使用される。シリカゾルとして、特にLevasil100Sが酸性ゾルとして、また沈降ケイ酸、分散ケイ酸が用いられる。更に、加水分解及び/又は縮合及び完成した組成物のpH値の調節に使用できる通常の適切な酸を当業者は公知である。
【0064】
その際に、pH値が1.0〜6の間、特に3.0〜5.4の間、有利には3.0〜4.8の間、とりわけ有利には3.5〜4.8の間である場合に、一般に全ての組成物は特に安定である。好適には、架橋の際に本質的にアルコールを遊離しない溶剤不含の組成物中では、pH値はケイ素化合物がなお水溶性であり及び/又は安定であるように調節される。通常は、これは約6.0のpH値まで又はこれを僅かに上回って添加される。
【0065】
モノマーのシロキサン単位又はビスシロキサン単位の構造エレメントとは、個々の構造単位M、D、T又はQ、すなわちアルコキシ置換されたシラン、これから形成された加水分解シラン及び/又は縮合生成物の存在であると解釈される。本発明によれば、構造エレメント、特に以下の構造エレメント:
N[ZSi(R12)Ω(Y)3-Ω]3、N[ZSi(Y)3]3、[(R1O)1-x(R1)xSi(B)O]b
(R1O)[(R1)1-x(R3)xSi(B)O]b、[(R1O)1-x(R1)xSi(B)O]b
[(R1O)1Si(B)O]b、[(Y)2-Δ(R11)ΔSi(A)Si(R11)Δ(Y)2-ΔO]a
[(Y)2Si(A)Si(Y)2O]a、(Y)[(Y)2Si(A)Si(Y)2O]a
[Si(C)(OR1)1O]c、[Si(C)(R5)y(OR1)1-yO]c
[Si(C)(R5)y(OR1)1-yO]R1c、[Si(D)(R7)u(OR1)1-uO]d
[Si(D)(R7)u(OR1)1-uO]R1d、[Si(E)(R8)v(OR1)1-vO]w
[Si(E)(OR1)1O]w、テトラアルコキシシランからの[Si(Y)O]w、及び/又は
[Si(E)(R8)v(OR1)1-vO]w1、構造エレメントのランダム及び/又は不規則な分布を有する及び/又は構造エレメントのブロック縮合物との鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋した構造が形成される(例えば、スキームIを参照のこと)。一般式Ia及び/又はIは、実際に存在する構造又は組成物を再現しているわけではない。これらは、理想化した表記の可能性に相応する。該組成物は、本発明によるZ、A、B、C、D又はE−基で置換されたアルコキシシランに対して、前記構造エレメントのランダム及び/又は不規則な共加水分解及び/又は共縮合及び/又はブロック縮合により生じる及び/又は選択された試験条件下に形成されるケイ素化合物を含有する。
【0066】
置換モチーフは、理想化した形で記載されていない鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋したシラン系/ケイ素化合物にも相応する。その際、YはOR1に相応するか又は架橋した及び/又は空間架橋した構造の形で、互いに独立にOR1又はO1/2(シロキサン結合)に相応する。R1はケイ素化合物中本質的に水素に相応し、その際、架橋及び/又は空間架橋した構造中、基OR1からは互いに独立にO1/2とシロキサン結合を形成できるか、もしくはこれらの基は互いに独立にO1/2として存在でき、かつR3、R5、R7、R8、R11及び/又はR12は有機官能基に相応し、トリス−シリル化アミン中のZは、二価のアルキレン基に、Aはビス−アミノアルキル基に、Bはアミノアルキル基、Cはアルキル基、Dはエポキシ基又はエーテル基に、かつEは有機官能基に相応する。スキームI中には例示的に可能性としてあり得る一般式IaとIの理想化された表記のバリエーションが記載されているが、これに確定されるわけではない。
【0067】
【表1】

【0068】
本質的に有機溶剤不含である組成物とは、極めて僅かな含有量まで有機溶剤を含有しない、特にメタノール、エタノール又はプロパノールのようなアルコールを含有しない組成物であると解釈される。定義によれば、アルコキシシランの加水分解の際に形成される加水分解アルコールは、これらの組成物から殆ど完全に除去される。本質的に有機溶剤不含、特にアルコール及び/又はアルコキシ基不含の、すなわち架橋の際に本質的にアルコールを遊離しない溶剤として、この含有量が、5質量%未満から0質量%、特に4質量%未満、有利には2質量%未満、特に1質量%未満、とりわけ有利には0.4質量%未満又は0.3質量%未満である場合の組成物が該当する。特に、ケイ素化合物の含有量は、1〜50質量%、特に5〜60質量%、有利には5〜50質量%、更に有利には5〜40質量%、特に7.5〜40質量%である。この含有量は、完成した組成物中で使用されるシランの含有量に対する。
【0069】
トリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含有する本発明による組成物は、式IXのトリス−アミノ官能性シランに対して、少なくとも1つのトリスアミノ官能性構造エレメントを含み、かつ0℃以上、特に5℃以上、有利には5〜30℃の間、特に有利には15〜25℃の間の温度で架橋する。卓越した特性を有する組成物は、5〜30℃の間で24時間以内、特に12時間以内、有利には6時間以内に架橋する。
【0070】
本発明によるトリス−アミノ官能性組成物は、トリス(トリアルコキシシラン)アミンに対して、少なくとも1つのトリス−アミノ官能性構造エレメントを有し、その際、式I及び/又はIaのうち少なくとも1つにおける構造エレメント数はΣ≦1,b≧0、a≧0、c≧0、d≧0、w≧0及びe≧1である。
【0071】
しかし、少なくとも1つのトリス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス−N,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン及び/又はトリス−N,N’−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、特にトリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(N[CH2]3Si(OC25)3]3、Tris-AMEO)、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(N[CH2]3Si(OCH3)3]3、Tris-AMMO)、トリス−DAMO(N[(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]3及び/又はTris-TRIAMO(N[(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]3(ここで、Tris-AMEOとTris-AMMOが特に有利である)を特にアルキルアルコキシシラン、特に式VIのシラン(c≧1)、例えば、n−プロピルトリエトキシシラン(PTEO)、n−プロピルトリメトキシシラン(PTMO)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMO)、ジメチルジエトキシシラン、n−オクチルトリアルコキシシラン、イソブチル−トリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン(Dynasylan(登録商標)OCTEO)、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシラン(シランは、メトキシまたエトキシ置換されていてもよい)と反応させる一般的な組合せが有利である。互いに使用される出発材料、よって組成物中に相応して存在する好適な質量比は、トリス−アミノ官能性シラン:アルキル官能性シラン=3:1〜1:2である。
【0072】
同様に、本発明による本質的に溶剤不含の組成物は、本質的に完全に加水分解され、かつ本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含み、その際、少なくとも1つの構造は、理想化した形で表記された一般式I及び/又はIa(Σ≧1、b≧0、a≧0、c≧1、d≧0及び/又はw≧0及びe≧1)に相応し、かつその際、pH値<12であり、かつb=0であることができる。
【0073】
同様に、本発明による本質的に溶剤不含の組成物は、本質的に完全に加水分解され、かつ本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含み、その際、少なくとも1つの構造は、理想化した形で表記された一般式I(Σ≧1、b≧0、a≧1、c≧0、d≧0及び/又はw≧0及びe≧1)に相応し、かつその際、pH値<12であり、特にc=0であることができ、その際、pH値は有利には3.5〜6の間である。
【0074】
同様に、本発明による本質的に溶剤不含の組成物は、本質的に完全に加水分解され、かつ本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含み、その際、少なくとも1つの構造は理想化した形で表記された一般式I(Σ≧1、b≧0、a≧0、c≧0、d≧0及び/又はw≧0及びe≧1)に相応し、かつその際、pH値<12であり、特にa=0、b=0及びc=0及びd≧1及び/又はw≧1であることができ、その際、pH値は有利には3.5〜4.8の間である。
【0075】
二者択一的に、本質的に溶剤不含の組成物は、本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含み、特に理想化した形で表記された一般式Ia又はI[Σ≧1及びb≧0及び/又はa≧0かつ(c≧1又はd≧1又はw≧1)及びe≧1]の少なくとも1つの構造に相応することを条件とする。その際、pH値は有利には1.0〜6の間であり、特に3.0〜6の間、特に3.5〜6の間、とりわけ有利には3.5〜5の間、有利には3.5〜5の間である。
【0076】
該組成物は、有利には水、酸及び一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの本質的に水溶性のアルコキシシランから由来するケイ素化合物及び/又はそれらの本質的に完全に加水分解された水溶性加水分解生成物及び/又は縮合生成物又は共縮合生成物(その際、少なくとも1つの構造は特に理想化した形で表記された一般式Ia又はIに相応する)から成り、かつ本質的に有機溶剤不含である。この組成物のpH値は、1〜6の間、特に2.0〜5.4の間、有利には3.5〜4.4の間であるのが有利である。該組成物を安定化するための更なる添加剤は通常は必要ではない。助剤及び更なる成分として、該組成物はナノスケールの充填剤又は一般に通常の充填剤を添加できる。これは中性又は塩基性のシリカゾル又はシリカゲルであることができる。また流動助剤又は硬化速度を変性するための触媒のような添加剤を組成物に添加できる。
【0077】
本発明は、本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性及び特に本質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水及び場合により酸を含有する組成物を製造する方法ならびに特に、このような方法により得られる組成物にも関し、該方法は、
− 式IX
N[ZSi(R12)Ω(OR1)3-Ω]3 (IX)
[式中、Zは独立に二価のアルキレン基、特に−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−、又は−[CH2CH(CH3)CH2]−の系列からのものであり、R12は、1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基、又はアリール基に相応し、かつその際に独立にΩ=0又は1である]の少なくとも1つのトリス−シリル化アミノアルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 式II
(OR1)3-Δ(R11)ΔSi−A−Si(R11)Δ(OR1)3-Δ (II)
[式中、Aは式III
−(CH2)i−[NH(CH2)f]gNH[(CH2)f*NH]g*−(CH2)i*− (III)
(式中、i、i*、f、f*、g又はg*は、同じ又は異なっていてよく、ここで、i及び/又はi*=0〜8、f及び/又はf*=1、2又は3、g及び/又はg*=0、1又は2、
11は、1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基、又はアリール基に相応する)のビス−アミノ官能基に相応し、Δ=0又は1である]
の少なくとも1つのビス−アミノアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式IV
B−Si(R3)x(OR1)3-x (IV)
[式中、x=0又は1、R3は1〜24個の炭素原子、特に1〜16個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、その際、R1は、1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であり、かつ
Bは、以下の一般式Va又はVb
10h*NH(2-h*)[(CH2)h(NH)]j[(CH2)l(NH)]n−(CH2)k− (Va)
(0≦h≦6;h*=0、1又は2;j=0、1又は2;0≦l≦6;n=0、1又は2;0≦k≦6及びR10は、ベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基及び/又は1〜8個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基に相応する)及び/又は
[NH2(CH2)m]2N(CH2)p− (Vb)
(0≦m≦6、及び0≦p≦6である)
のアミノ官能基のうち1つに相応する]
のアミノアルキルアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により、
− 少なくとも1つの一般式VI
C−Si(R5)y(OR1)3-y (VI)
[式中、y=0又は1であり、その際、Cは1〜20個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、R5は、1〜24個の炭素原子、特に1〜12個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又はアリール基であり、R1は、1〜24個の炭素原子を有する、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、架橋及び/又は環状アルキル基に相応する]
のアルキルアルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により、
− 少なくとも1つの一般式VII
D−Si(R7)u(OR1)3-u (VII)
[式中、u=0又は1、その際、Dは3−グリシドキシアルキル基、3−グリシドキシプロピル基、エポキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基、ポリアルキルグリコールアルキル基又はポリアルキルグリコール−3−プロピル基であり、R7は、1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基、及びR1は、1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基又はアリール基に相応する]
のエポキシ−又はエーテル−アルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式VIII
E−Si(R8)v(OR1)3-v (VIII)
[式中、v=0又は1であり、その際、R8は、1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、Eは基R8*−Ym−(CH2)s−であり、その際、R8*は1〜9個の炭素原子を有するモノ−、オリゴ−、又はペルフルオロ化アルキル基であるか、又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオロ化アリール基であり、ここで、Yは、CH2−、O−、アリール基又はS基に相応し、かつm=0又は1、かつs=0又は2であるか、又はビニル基、アリル基、イソプロペニル基、メルカプトアルキル基、スルファンアルキル基、ウレイドアルキル基、アクリルオキシアルキル基、又は1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルコキシ基に相応し、かつR1は、1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基に相応する]
の有機官能性アルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び/又は場合により
− 前記アルコキシシランの2種から成る少なくとも1つの混合物、加水分解生成物及び/又は縮合生成物(その際、式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIII中、R1は互いに独立に1〜24個の炭素原子、特に1〜12個の炭素原子、有利には1〜8個の炭素原子、とりわけ有利には1〜4個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル及び/又はブチルに相応する)を、
− 水及び場合により酸の存在で、及び場合によりアルコール及び/又は触媒の装入下及び/又は添加下に加水分解し、特に100℃未満の温度、特に50〜70℃、有利には55〜70℃の間の温度で撹拌することによる。
【0078】
本発明による組成物を製造するために、式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシランの添加を含めて、定義付けられた時間にわたり前記温度で撹拌する。有利には、約60〜65℃で、40〜240分、特に70〜180分、有利には90〜150分撹拌し、かつ特に次の工程でアルコールを本質的に完全に除去する。
【0079】
有利に使用すべきアルコキシシランならびにそれらの置換パターン(特に式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの)は、上記に詳細に記載してあり、かつ相応して、そこに開示された置換パターンを該方法で使用することができる。アルコールを除去した後に、約20μmを越える粒子サイズを有する粒子又は不純物を分離するために、この組成物を濾過してもよい。
【0080】
本発明による方法は、一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシラン、それらの加水分解生成物及び/又はグラフト縮合生成物及び/又は縮合生成物及び/又はこれらの混合物を水溶液及び/又はアルコール溶液に添加して実施できる。更に、一般式IX、II、IV、VI、VII又はVIIIのシラン及び/又はその縮合生成物を、連続して又は混合物として添加できる。
【0081】
本発明による方法は、所望の生成物に応じて、二者択一的な変法で実施できる。特に有利な方法によれば、水と酸を例えば、全混合物の約92質量%まで予め装入し、アルコキシシランの添加後(100質量%まで)に、約8質量%まで一般式IXのアルコキシシラン及び場合により更に式II、IV、VI、VII及び/又はVIIIを添加する。得られるpH値は3.5〜6の間である。アルコキシシランの供給時間を含めて、通常90分間にわたり高温で、特に55〜70℃、有利には60〜65℃で撹拌される。場合により、65℃の温度でもう1時間更に撹拌される。引き続き、通常は約10質量%の反応混合物は、水/アルコール混合物として留去される。通常、酸と添加されたアルコキシシランに相応する量が留去されるので、残った全体量は予め装入された水の元の量におおよそ相応し得る。残ったアルコール含有量が高すぎる場合には、新たに一定量の水を添加することができ、その際、この量は引き続き水/アルコール−混合物として再び留去することができる。
【0082】
二者択一的な方法によれば、水と酸を予め装入し、かつシラン、少なくとも2つのシランを時間的にずらしてシラン、加水分解及び/又は縮合されたシランの混合物を例えば、シランのオリゴマー、共縮合物及び/又はブロック共縮合物として添加することができる。
【0083】
従って、式IXのトリス−シリル化アミノアルキルアルコキシシラン及び一般式VIのアルキルアルコキシシランは、本発明による方法では互いに反応させることができるか、又は式IXのトリス−シリル化アミノアルキルアルコキシシラン及び一般式VIIのアルキルアルコキシシラン又は式IXのトリス−シリル化アミノアルキルアルコキシシラン及び一般式VIIIのアルキルアルコキシシラン又は場合により更に式II及び/又はIVのアルコキシシランを反応させることができる。当業者には、この列挙は単なる例示的な組合せにすぎず、かつこれに確定して解釈されないことが明らかである。
【0084】
本発明による二者択一的な方法に相応して、定義づけられた量の水と酸を予め装入し、引き続き、式IX、II又はIVのアルコキシシラン又は、少なくとも2つのシランの混合物を計量供給し、かつ定義付けられた時間にわたり、特に約1時間の供給時間を含めて、60℃の温度で撹拌される。pH値は、シランの添加後にpH6未満、特に約3.5〜6、とりわけ4.3のpH値であるのがよい。続いて、式VIのアルコキシシランを計量供給することができる。二者択一的に、式VI又はVII又はVIIIのシラン、又は上記シランの少なくとも2つの混合物又は共縮合物を添加することができる。得られた反応混合物は、60〜70℃で約90分間にわたり撹拌され、その後に通常は水/アルコール混合物が、特に最初に予め装入された水量におおよそ相応する反応混合物の含有量まで留去される。
【0085】
また本発明の対象は、組成物を製造するための以下の方法、またこの方法により得られる組成物、特に以下の個々の工程で得られる組成物である。
1)水、及び場合により酸又は触媒を予め装入する。特に水60〜95質量%、有利には80〜95質量%を予め装入し、有利には特に約1〜5質量%、有利には特に約2質量%の酸の添加により1〜6の間のpH値である量で;
2)水及び場合により酸又は触媒から成る混合物を、40〜100℃の間、有利には50〜90℃の間、とりわけ有利には55〜70℃の間、特に約60〜65℃の温度に加熱する。
3)式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの1つ又は複数のシラン、又は前記加水分解生成物及び/又は縮合生成物及び/又はこれらの混合物を、特に反応混合物の2〜40質量%まで、有利には5〜15質量%の間、特にad100質量%まで添加する;特にpH値は1.5〜6の間に保持されるのがよい;
4)シランの添加を含めて、40〜400分の間、特に50〜240分にわたり、有利には60〜200分にわたり、特に有利には60〜180分にわたり、特に前記温度で撹拌する、
5)場合により、式IX;II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの1つ又は複数のシランを更に添加する;特に工程3)で既にad100質量%に調節されなかった場合には、反応混合物のad100質量%の1〜5質量%を添加する;
6)シランの添加を含めて、場合により10〜400分、特に10〜240分、有利には20〜180分にわたり、特に有利には20〜160分にわたり、特に前記温度で更に撹拌する、
7)アルコール/水−混合物を、特に蒸留により、例えば高温及び減圧で、有利には反応混合物もしくは組成物が本質的に溶剤不含になるまで、例えば、反応混合物の残った量が、工程1)で予め装入した水の量に相応するまで除去する。
【0086】
工程1)での水は、全体の反応混合物に対して、特に有利には約90質量%まで予め装入され、通常、酸は式IX、II、IV、VII及び/又はVIIIの1つ又は複数のシランを添加した後に、pH値が1〜6の間、有利には1.5〜6.0の間であるような量で添加される。通常、これは反応混合物の0.5〜1.5質量%である。反応混合物のad100質量%に、式IX、II、IV、VII及び/又はVIIIの少なくとも1つ又は複数のシランが計量供給される。これらは、反応混合物の9.5〜8.5質量%である。当業者には、該組成物は著しく高い又は低い含有量のケイ素化合物を含有でき、かつ酸の量を相応して合わせることができることが明らかである。
【0087】
従来技術の方法から外れて、前記方法では置換アルコキシシランは、水50〜95質量%、特に65〜95質量%の水含有量で加水分解される。水含有量は、予め装入される水の量、又は全反応混合物中の全体の水含有量(アルコール及び/又は水が混合物から除去される前)の量に対する。更に、水は、添加された酸水溶液、触媒又は水性シランもしくはそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物から反応混合物中にもたらされる。
【0088】
本発明によるもう1つの態様によれば、少なくとも1つの式IXのトリスアミノ官能性アルキルアルコキシシラン及び少なくとも1つの一般式VIのアルキルアルコキシシランが方法で使用される。特に有利な化合物は、Tris-AMEO、Tris-AMMO及びプロピルトリアルコキシシラン、例えば、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランであり、これらは数例として挙げるにすぎない。
【0089】
組成物のpH値の調節は、通常は、その製造の際に既に行われるので、pH値を後から調節する必要を省くことができる。pH値を調節するための酸として、特にHX(ここで、Xは無機又は有機酸基である)として、有利にはギ酸、酢酸、クエン酸、酸性シリカゲルもしくは酸性シリカゾル、氷酢酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が使用される。シリカゾルとして、特にLevasil 100Sが酸性シリカゾルとして、また沈降ケイ酸、分散ケイ酸が特に用いられる。触媒として、例えば、プロピオン酸−n−ジルコニウム又は他の通常の触媒が使用できる。
【0090】
通常は水と酸を予め装入し、かつ一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシラン及び/又はそれから由来する生成物、例えば、プロトン化シラン、加水分解生成物、共縮合生成物及び/又は縮合生成物を、特に1.5〜6の間のpH値で、有利には3.0〜5.4の間のpH値で連続して及び/又は混合物として添加し、加水分解し、かつ場合により縮合する。酸の更なる添加により、方法の間のpH値は保持されるか又は調節することができる。この場合に、一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシラン、それらの加水分解生成物、共縮合生成物、縮合生成物及び/又はそれらの混合物を水溶液及び/又はアルコール溶液中に添加することができる。これは連続して又は混合物中で行うことができる。
【0091】
アルコールもしくはアルコール性シラン溶液の添加により、水溶液/アルコール溶液中で方法を実施する場合には、12を下回るpHで、すなわちアルカリ性でも加水分解を実施することができる。引き続き、加水分解アルコール及び場合により更に添加されたアルコールは、反応混合物から本質的に完全に除去される。pH値の調節は、アルコールを除去する前又は後に行うことができる。
【0092】
予め装入され酸性化された水へのアルコール性溶液の添加は、特に以下の方法で行うことができる。まず、アルコール、例えばエタノールを式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシランと、場合により僅かな水及び場合により触媒又は場合により酸と混合し、かつ反応直後に、予め装入された酸性化された水へ添加される。pH値が所望の範囲内にない場合には、更なる酸の添加により変性することができる。同様に、反応混合物に少なくとも1つのシランを添加した後に更なる水を添加することができる。
【0093】
組成物の所望の特性に応じて、方法において無機充填剤、例えば、TiO2、SiO2、シリカゾル、エアロジル、分散剤及び/又はAl23を添加することが好適である。
【0094】
加水分解アルコール又は添加されるアルコールを完全に除去するために、方法の間に組成物に繰り返し水を添加し、組成物が本質的にアルコール不含になるまでアゼオトロープ的にアルコールで留去することができる。
【0095】
二者択一的に、一般式IXの水性シラン及び/又はそれらの共縮合生成物又は縮合生成物、例えば、式IXとVIの共縮合生成物を予め装入し、低いpH値、例えば1.0〜4.8で加水分解され、かつ一般式II、IV、VII及び/又はVIIIのシラン及び/又はこれらの縮合生成物を個々に又は混合物として添加し、有利には少なくとも1つの式VIのシランが添加される。式IX、II及び/又はIVの更なるアミノシランの添加により、pH値を高めることができる。最後のシランの添加後に、撹拌しながら反応混合物を、30〜100℃の間の温度で、本質的に完全に加水分解することができる。本発明の方法では、有利には加水分解は、40〜100℃、特に有利には50〜90℃、とりわけ有利には55〜70℃、特に約60〜65℃の温度で実施される。
【0096】
従って本発明の対象は、本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性かつ本質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水及び酸を含有する組成物を製造する方法、またこの方法により得られる組成物であり、その際、
1)一般式IX、IV及び/又はVIIの少なくとも1つの水溶性シラン又はそれらの水溶性縮合生成物、特に式IX、IV及び/又はVIIのシランからの共縮合生成物の水溶液を、互いに又はVI及び/又はVIIIと、例えば、シリカゾルと、又は一般式VIのシランの水溶性加水分解生成物(特にメチル官能化されたもの)を予め装入し、特に少なくとも部分的にプロトン化し、及び
2)場合により酸、場合によりアルコール及び場合により触媒及び場合により一般式II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの1つ又は複数のシラン又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物及び/又はこれらの混合物を添加し、かつ
3)加水分解し、かつアルコールを本質的に除去する。
【0097】
組成物の所望の特性に応じて、好適には、該方法で既に無機充填剤、例えば、TiO2、SiO2、シリカゾル、エアロジル、分散剤及び/又はAl23を添加するのが好適である。
【0098】
既に存在する及び/又は反応の際に生じるアルコールは、本発明による全ての方法のバリエーションにおいて、実施的に有利には完全に反応混合物から除去される。アルコールの蒸留による分離は、有利には減圧下に実施される。アルコールの蒸留による除去は、カラムの塔頂で水の沸騰温度に相応する温度が達成されるまで実施される。アルコールが本質的に完全に除去されなかった場合には、新たに水を添加し、かつ更にアルコール/水−混合物を特に蒸留により除去する。この手法は、アルコールが本質的に除去されるまで繰り返される。アルコールの実質的な除去とは、その含有量が4質量%未満、特に2質量%未満、有利には1質量%未満、特に有利には0.5質量%未満、0.1質量%未満又は0.05質量%未満であることが当てはまる。得られる組成物は本質的にアルコール不含、すなわち場合により添加されたアルコールも加水分解アルコールも、ほぼ完全な加水分解の後に反応系から除去される。従って使用される組成物は、遊離アルコール及び/又はアルコキシ基の含有量が4質量%未満、特に2質量%未満、有利には1質量%未満、特に有利には0.5質量%未満、0.1質量%未満又は0.05質量%未満である場合には本質的に遊離アルコール及び/又はアルコキシ基不含である。
【0099】
反応の間に、pH値はpH12未満、特に1〜6の間、例えば1.5〜6の間、特に3.0〜5.4の間、有利には3.5〜4.8の間であるのがよい。また反応混合物からアルコールを除去した後に、該組成物のpH値は1.0〜6の間、特に1.5〜6の間、有利には3.0〜5.4の間である。使用されるトリス−アミノ、ビス−アミノ、アミノ−、アルキル−、エポキシ−、ポリアルキルグリコールアルキル−、3−グリシドキシアルキル−、グリシドキシアルキル−、フルオロアルキル−、メルカプト−、ウレイドアルキル−、アルケニル−、コハク酸−、無水コハク酸−、アクリルオキシアルキル基置換アルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランは、アルコールを除去した後に、組成物中で使用されたアルコキシシランに対して、有利には全部で5〜50質量%、特に5〜50質量%、有利には7.5〜40質量%、とりわけ有利には10〜30質量%の量で存在する。
【0100】
本発明の方法により製造される組成物は、安定かつ透明であるか又は部分的に乳濁しているか懸濁した溶液であり、本質的に有機溶剤不含であり、任意の比で水で希釈することができ、水を添加する際に、本質的に加水分解アルコール生じず、かつ63℃を上回る、有利には80℃を上回る、特に有利には93℃を上回る引火点を有する。
【0101】
本発明のもう1つの対象は、水溶性のトリス−アミノ官能性でかつ本質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水及び酸を含有する水性組成物もしくは水性シラン系であり、以下により得られる:
1)水、酸及び場合によるアルコールを予め装入し、かつ
2)式IXの少なくとも1つのトリス−アミノ官能性アルコキシシラン、場合により一般式II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの少なくとも1つのシラン又は前記シランの少なくとも2つ(その際、シランの置換パターンは先に記載してある)及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物及び/又はこれらの混合物を、場合により水性又は水性/アルコール又はアルコール相において反応させ、
3)加水分解、特に完全に加水分解させ、本質的に完全にアルコールを除去し、特に更なる水を添加し、かつ水/アルコール混合物として除去する。この工程は、水性組成物が本質的にアルコール不含になるまで繰り返すことができる。
【0102】
更に本発明の対象は、本質的に水溶性のトリス−アミノ官能性でかつ本質的にアルコキシ不含のケイ素化合物、水及び酸を含有する組成物を製造する方法ならびに、この方法により得られる組成物であり、ここで
1)有機機溶剤、場合により水、場合により酸及び/又は場合により触媒を予め装入し、及び
2)− 少なくとも1つの式IXのトリス−アミノアルコキシシラン、及び場合により
− 少なくとも1つの式IIのビス−アミノアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式IVのアミノアルキルアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの一般式VIのアルキルアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの一般式VIIのエポキシ−アルコキシシラン又はエーテル−アルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式VIIIの有機官能性アルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、
− 特に前記アルコキシシランの少なくとも2つ及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物及び/又はそれらの混合物を、
− 加水分解、特に完全に加水分解し、かつ加水分解アルコール及び溶剤を本質的に除去する。
【0103】
式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシランは、上記定義に一致する。例えば、IXとIV、IXとII及びVI、IXとVI、IXとVII、IXとVIII又はVII、II、IV及びVI又は考え得る更なる組合せを方法で使用できる。
【0104】
溶剤として、特にメタノール、エタノール、プロパノールのグループから選択されるアルコール及び/又はこれらの混合物が使用される。しかし好適な溶剤は、酢酸エステル、THF、ケトン又は炭化水素であってもよい。
【0105】
本発明によれば、アルコールを、一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIの少なくとも1つのシラン、それらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物及び/又はそれらの混合物と一緒に予め装入してもよい。引き続き、水及び/又は酸が添加される。水だけを添加する場合には、加水分解をアルカリ性で行うことができる。
【0106】
該方法は、アルコール及び場合により水を予め装入し、少なくとも1つの一般式IXのトリス−アミノアルコキシシラン及び/又はその縮合生成物を添加し、かつ加水分解しならびに場合により縮合するように実施するのが有利である。反応混合物は、一般式IXのトリス−アミノアルコキシシランの添加によりアルカリ性にすることができる。本発明によれば、式IXの少なくとも1つのトリス−アミノアルキルアルコキシシランと一般式VIのアルキルアルコキシシランを使用できる。
【0107】
アルコール及び場合により水及び場合により酸を予め装入する場合には、一般式IXのトリス−アミノアルコキシシラン及び/又はその縮合生成物を添加し、かつ加水分解ならびに場合により縮合される。引き続き、式VIの少なくとも1つのアルキルアルコキシシラン、及び場合により式IVの少なくとも1つのアミノアルキルアルコキシシラン、場合により少なくとも1つの一般式VIIのエポキシ−アルコキシシラン又はエーテル−アルコキシシラン及び場合により少なくとも1つの式VIIIの有機官能性アルコキシシラン及び/又はその縮合生成物を連続して又は混合物として添加するのが有利である。この場合に、加水分解はアルカリ性で、有利には12未満のpH値で行われる。
【0108】
一般式IX、II、IV、VI、VII又はVIIIのシラン及び/又はそれから由来する生成物、例えば、加水分解生成物及び/又は共縮合生成物のような縮合生成物の添加は、連続して又は混合物として行うことができる。同様に、一般式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIIIのシラン及び/又はその縮合生成物の添加は、水溶液及び/又はアルコール溶液中で行うことができる。必要な場合には、方法の間に少なくとも1つの無機充填剤、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、シリカゾル、エアロジル、分散剤及び/又は酸化アルミニウムを添加することが好適である。加水分解の前又は間に酸を添加しない場合には、pH値はアルカリ性、特に12未満であることができる。反応は、30〜100℃、有利には55〜80℃の間で実施できる。加水分解及び場合により行われる縮合の後に、pH値を1.0〜7.0の間に調節することができる。これは酸の添加により行われる。
【0109】
全ての方法において、溶剤及び反応の際に生じるアルコールは蒸留により反応混合物から除去することができる。蒸留による溶剤及び/又はアルコールの分離は、有利には減圧下に実施される。蒸留による除去は、カラムの塔頂で水の沸騰温度に相応する温度が達成されるまで実施される。アルコール及び/又は溶剤を本質的に完全に除去できなかった場合には、新たに水を添加し、かつ更に溶剤/水もしくはアルコール/水−混合物は特に蒸留により除去される。この手法はアルコールが本質的に除去されるまで繰り返される。
【0110】
結果として生じる組成物は、上記の定義に相応して本質的に溶剤不含である。
【0111】
また本発明の対象は、更なるシランをベースとする組成物との混合物における、本発明による組成物の使用である。特に、この混合物は、アルキル−、アルケニル−、アリール−、エポキシ−、ジヒドロキシアルキル−、ビス−アミノアルキル−、アミノアルキル−、ポリアルキルグリコールアルキル−、ハロゲンアルキル−、メルカプトアルキル−、スルファンアルキル−、ウレイドアルキル−、アクリルオキシアルキル−官能性及び/又はテトラアルコキシ官能性シラン及び/又はそれらの混合物をベースとする、シランをベースとする組成物と一緒にトリス−アミノ官能性ケイ素化合物を含有する組成物を含む。特に、更なるシランとの混合物中への本発明による組成物の添加は、硬化温度を下げる。その際、更なるシランの忌避特性は保持されたままであるか又は改善される。
【0112】
従って本発明の対象は、疎水化するための、腐食防止剤としての、定着剤としての、プライマーとしての、岩石を固定するための、基材表面のバリヤー層及び/又は疎油化を生成するための本発明による組成物又は混合物の使用である。この使用は、硬化された組成物又は混合物が鋳型模型から容易に離型できる層を形成する場合にも適用される。従って、本発明の対象は離型助剤としての使用でもある。
【0113】
同様に、本発明による組成物もしくは相応の混合物は、殺菌、防カビ及び/又は殺ウイルス作用を有する被覆を製造するため使用してもよい。
【0114】
本発明による組成物及び/又は混合物は、基材表面又は基材(例えば遊離ヒドロキシ基を有する)を疎水化するために使用できる。ヒドロキシ基との架橋により及び/又は可能性としてあり得るアミノ官能基の錯体形成及び/又は反応により基材表面上に塗布された層の高い強度が達成される。一般に、該組成物及び/又は混合物は、基材及び/又は基材表面を処理又は変性するために、特に基材表面上にバリヤー層を形成するため及び/又は岩石を固定するために利用できる。組成物又は混合物を、例えば、亜鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、合金のような金属表面又は前処理された金属表面(クロム酸塩処理、亜クロム酸塩処理、Zn−リン酸塩処理、リン酸塩処理、陽極処理されたもの)、ガラス表面、有機材料、例えば、樹脂表面、又は特に、天然繊維、例えば、紙、厚紙、綿又は木材、鉱物表面、例えば、コンクリート、煉瓦、砂岩、石膏ならびに更なる有機表面の疎水化に使用するのが有利である。該組成物が、共縮合物又は混合物の形のフルオロシランを含有するケイ素化合物をベースとする場合には、疎油性及び防落書き特性又は防指紋特性を達成できる。更なる利用分野は、ガラス、金属から成る表面、鉱物表面(例えば、コンクリート、モルタル、セメント床又は砂岩、磁器、アスファルト)をプライマー化する際、石材管のような管を被覆するため、床を密閉するため、鋳型を被覆するため、特に内部被覆及び容易に離型可能にするため、又は有機材料、特に例えば紙、厚紙、綿又は木材のような天然繊維を被覆する際に発展する。例えば、金属表面のプライマー化により、改善された接着性及びそれらにより特に改善された腐食防止性が達成できる。処理された又は変性された表面の例は、電子部品、車のボディー部材ならびに当業者に公知の更に適切な基材である。
【0115】
例えば金属表面のプライマー化により、被覆層の改善された接着性及びそれにより特に改善された腐食防止性を達成できる。更に、該組成物又は混合物をプライマー化又は密閉するため、又は前処理された金属表面のバリヤー層として使用することができる。この場合に、リン酸塩処理、クロム酸塩処理、亜クロム酸塩処理又はその他の前処理された金属表面を処理するか又は変性することができる。更に、このように処理された表面を有利に、粉末塗料、2K−液体塗料もしくは1K−液体塗料で被覆することができる。
【0116】
これに確定されるわけではないが、例えば、処理又は変性されたガラスとして、ガラス製のファッサード部材、窓、自動車ガラス、ガラス繊維、光学ガラス、レンズが挙げられる。
【0117】
更に、本発明による組成物は、液体塗料又は粉末塗料用の成分として、もしくは液体塗料又は粉末塗料における構成要素として有利に使用できる。
【0118】
本発明による組成物及び/又は混合物は、ローラー塗り、ハケ塗り、噴霧、押出し、混練、混合、撹拌又は更に当業者に慣用の方法により、基材上に塗布又は設けられる。
【0119】
更に、石油採掘の際、例えば、セメント部材及び/又はモルタル既成部材、例えば、パイプなどの製造の際に岩石を固定するために、又は水性塗料調製物又は樹脂調製物又は塗料分散液又は一般に分散液において水性組成物を使用できる。従って、該水性組成物は、モルタル、セメント床において添加剤として、又は硬化製品上で表面を密閉するために塗布することもできる。もう1つの利用の可能性により、本発明による組成物は、特に添加剤及び/又は充填剤の添加により、その生成物特性を更に変性させることができる。従って、例えば架橋助剤の添加により表面上で改善された分布を達成できる。触媒、例えば、プロピオン酸−n−ジルコニウムの添加により、又はpH値の変性により、既成組成物の硬化を促進することができる。
【0120】
本発明の対象は、少なくとも1つの部分的な層、有利には一貫した層もしくは被覆、特に硬化層を、有機及び/又は無機基材上及び/又は有機−無機コンポジット材料上に製造し、腐食及び/又はUV照射から保護するための、ゾルゲル系としての、又は本質的にゾルゲル不含系としての組成物又は混合物の使用である。
【0121】
また本発明の対象は、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は基材との又は基材上での混合物の硬化による、基材の又は基材表面上の、例えば、金属表面又は合金、特にクロム酸塩処理、リン塩処理又は亜クロム酸塩処理された金属表面上の被覆である。
【0122】
また本発明の対象は、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物及び/又は混合物の基材との又は基材上での使用及び特に硬化により得られる、被覆された又は硬化された製品である。
【0123】
ここで、特に基材として以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:被覆ガラス、例えば、シリケートベースのガラス、例えば、自動車ガラス、レンズ、実験ガラスなど、又は被覆アクリルガラス、腐食防止金属、合金又は腐食防止性の鉱物基材、例えば、硬化セメント又はモルタル、又は前記有機材料、特に処理もしくは被覆された天然繊維から成る製品。この例は組成物で処理される補強材であり、これはその使用前にコンクリート中で組成物で被覆される。更に、まだ硬化していないコンクリート混合物を本発明による組成物と混合して加工し、かつ引き続き硬化することもできる。この場合に、例えば正しいpH値又は他のパラメーターの選択により、該組成物が加工可能なままであることに留意すべきである。この方法で、例えば疎水性で腐食耐性のコンクリート又はコンクリートから成る製品、例えば、建築物用の排水管又は既成部材のようなものが得られる。このように処理されたコンクリートは、周囲環境の影響に対して著しく優れた腐食耐性を有する。
【0124】
本発明の以下の実施例を用いて説明することにする。
【0125】
実施例:
分析試験:
残留物:水性シラン系の固形分は以下のように決定した:
試料1gを、小さな陶磁器皿に計り入れ、かつ乾燥棚中で質量が一定になるまで105℃で乾燥させた。
【0126】
SiO2−含有量:
400mlビーカーガラス中で試料1.0〜5.0gをケルダール(Kjedahl)−錠と硫酸20mlを混合し、まずゆっくり加熱した。この場合に時計ガラスでビーカーガラスを覆った。硫酸が強く煙を出し、かつ全ての有機成分が分解されるまで温度は上昇し、かつ溶液は透明かつ薄いままであった。冷えた溶解液を蒸留水で約200mlまで希釈し、かつすぐに煮立たせた(ビーカーガラスの縁で水を酸の下に注ぐ)。残留物を白色バンドフィルターにより濾過し、かつ洗浄水が>4のpH値を示すまで(pH紙)熱湯で洗浄した。フィルターを白金るつぼ中で乾燥させ焼却し、かつマッフルオーブン中800℃で1時間アニーリングした。残留物をフッ化水素酸で秤量した後に薫製させ、ファンバーナーでるつぼをアニーリングし、かつ場合により800℃でもう1度アニーリングし、かつ冷却後に秤量した。両方の秤量の差は、SiO2の含有量に一致した。
【0127】
評価:D×100/E=SiO2(質量%)
D=フッ素化の前後の質量の差(mg)
100=%での換算
E=秤量分(mg)。
【0128】
遊離メタノールとエタノール含有量の決定:
アルコールの測定は、GCにより実施した。
【0129】
カラム:RTX200(60m)
温度プログラム:90-10-25-240-0
検出器:FID
注入量:1.0μl
内部基準物:2−ブタノール
【0130】
使用したシランとシラン系:
【表2】

【0131】
合成例1
計量装置と還流冷却器を備えた1リットル管状装置内に、水400.0g、ギ酸(濃度HCOOH85%)3.5gを予め装入した。この溶液を60℃まで加熱した。供給装置を介して、トリス−AMMO32.0gを計量供給した。pH値は、約4.3であるのがよい。60℃で90分間(供給時間を含める)撹拌した。引き続き、65℃で1時間撹拌し、かつその後で130〜200mbarで、アルコール/水−混合物35.5gを留去した。残留物の秤量は400gであった。生成物を室温でSeitz T-900フィルタープレートにより濾過した。得られた溶液は透明で僅かに赤色であった。
【0132】
例1に対する分析:
乾燥させた残留物:6.6%(w/w)
SiO2−含有量:5.5%(w/w)
遊離メタノール:0.3%
【0133】
合成例2
計量装置と還流冷却器を備えた1リットル管状装置中で、水400.0g、ギ酸(濃度HCOOH85%)4.8gを予め装入した。この溶液を60℃まで加熱した。計量供給装置により、ビス−AMMO16.0gとトリス−AMMO16.0gから成る混合物32.0gを供給した。pH値は約4.3であった。60℃で90分間(供給時間を含める)撹拌した。引き続き65℃で1時間撹拌した。130〜200mbarで、アルコール/水−混合物36.8gを留去した。残留物の秤量は400gであった。この生成物を室温でSeitz T-950フィルタープレートにより濾過した。透明で橙−赤を帯びた液体が得られた。
【0134】
例2に対する分析:
乾燥残留物:5.7%(w/w)
SiO2−含有量:2.8%(w/w)
遊離メタノール:0.2%
【0135】
合成例3
計量装置と還流冷却器を備えた1リットル管状装置中で、水400.0g、ギ酸(濃度HCOOH85%)3.5gを予め装入した。この溶液を60℃まで加熱した。計量供給装置により、トリス−AMMO32.0gを供給した。pH値は約4.3であった。供給時間を含めて、60℃で60分間撹拌した。引き続き、PTMO12gを計量供給した。この混合物を65℃で更に90分間撹拌した。続いて、130〜200mbarで、アルコール/水−混合物47.5gを留去した。得られた生成物をSeitz T-950フィルタープレートにより濾過し、透明で僅かに赤い液体が得られた。
【0136】
例3に対する分析:
乾燥残留物:7.2%(w/w)
SiO2−含有量:3.5%(w/w)
遊離メタノール:1.1%
【0137】
使用例
1.方法
1.1 サンドブラストしたガラスプレートの被覆
表面を被覆する前に清浄にし、特に油不含であることに注意した。ガラス表面の前処理(ガラスプレートの大きさ0.07×0.15m):ガラスプレートを60℃の温かい1%濃度のリドライン(Ridoline)C-72溶液に5分間浸漬することにより脱脂し、引き続き、蒸留水を流しながら洗い流した。すぐに2%濃度のH2SO4溶液で浸漬し、かつ蒸留水で徹底的に洗い流した。引き続き、ペーパータオルでガラスプレートの表面を乾燥させた。
【0138】
実施例からのこの系を、浸漬させたペーパータオルで拭き取りによりサンドブラストした表面上に塗布した。引き続きこれから生じた被覆を室温で少なくとも12時間硬化させた。
【0139】
1.2 静的接触角の測定
静的接触角の決定は、DIN EN 828に倣いKRUESS社の接触角測定装置G-15を用いて数回測定することにより行った。疎水性特性を試験するために、蒸留水を用いて静的接触角(RW)を測定した。
【0140】
1.3 DIN 53778に倣った洗浄及び擦りに対する耐性の決定:
DIN 53778に倣い、エリクセン耐水試験装置と擦り試験装置Modell 494を用いて被覆されたガラスプレートを洗浄溶液としてのイソプロパノールで試験した。
【0141】
1.4 DIN EN ISO 4892-3に倣ったUV耐性の試験:
加速風化に使用した装置(QUV-se)はQ-Panel社製のものでありかつDIN EN ISO 4892-3の規定に一致した。ガラスプレートの表面上の照射強度は340nmで0.92W/m2であった。
【0142】
風化サイクルは全部で8時間を含んだ:60℃で4時間の照射サイクル、引き続き、45℃で3時間55分の凝縮水サイクル及び5分のスプレーサイクル。それぞれ161時間、638時間及び1595時間後に、1.2に倣い蒸留水で静的接触角を測定した。
【0143】
使用例1.5
合成例1からの生成物12.5gを水性製品Dynasylan(登録商標)F88150.5gと混合した。この混合物を清浄にしたサンドブラストガラスプレート(大きさ=8×15cm)上に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を2日間室温で乾燥させた。
【0144】
使用例1.6
合成例1からの生成物15.0gを水性製品Dynasylan(登録商標)F88153.0gと混合した。この混合物を清浄にしたサンドブラストガラスプレート(大きさ=8×15cm)上に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を2日間室温で乾燥させた。
【0145】
表1
DIN 53778に倣った洗浄及び擦りに対する耐性の結果
【表3】

【0146】
表2
【表4】

【0147】
摩耗−及びUV負荷後に、接触角は前記被覆の優れた疎水性特性を示した。従って、この試験は合格であった。
【0148】
2.研磨されたステンレス鋼プレートの被覆
2.1 使用したステンレス鋼プレートの説明:
合金1.4301から成るA.F.E.R.A.4001による鋼鉄の薄板、縦長の菱形Ra0.05〜0.4μm、Rz<4μ。大きさ=200×50×2mm、Herkunft Rocholl GmbH。
【0149】
2.2 ステンレス鋼プレートの清浄:
Ridolione C-7210.0gを蒸留水と混合し、かつ60℃まで加熱した。撹拌しながらステンレス鋼細片を30秒間浸漬し、引き続き流れる蒸留水下に洗い流し、かつすぐに0.2%濃度のH2SO4溶液中に浸漬し、蒸留水で洗い流し、引き続きペーパータオルで乾燥させた。
【0150】
2.3 負荷試験後の被覆ステンレス鋼表面の評価
蒸留水、酢クリーナー(フォルシュ社の酢クリーナー)、マスタード(レーベンゼンフ社の激辛)及びオーブンクリーナー(Sidolオーブンクリーナー及びグリルクリーナー)を塗布した後の被覆の視覚的評価。このために、約3cmの大きさの丸い表面上で基材を試験媒体で覆った。1時間後に試験媒体を水で洗い流し、かつ基材面を視覚的に評価した。
(−)=シートが分解もしくは剥がれる
(0)=シートが存在するが、しかし僅かに侵される
(+)=シートに変化無し。
【0151】
2.3 ステンレス鋼表面の被覆
縦長の菱形のステンレス鋼を調製物で3/4まで被覆した。その都度拭き取りによりプレートを被覆した。調製物中に浸した木綿布を用いて被覆を行い、その際、前記調製物をステンレス鋼表面上に塗装した。室温で硬化を行った。
【0152】
表3
選択した合成例における縦長の菱形のステンレス鋼上の均一で透明な被覆の鉛筆硬度試験、耐煮沸性の結果
【表5】

【0153】
評価:
酢クリーナー及び水試験後の被覆の視覚的評価
(−)=シートが分解もしくは剥がれる
(0)=シートが存在するが、しかし僅かに侵される
(+)=シートに変化無し。
【0154】
使用例2.4
合成例1からの生成物12.5gを水性製品Dynasylan(登録商標)F 88150.5gと混合した。この混合物を清浄にした縦長の菱形のステンレス鋼表面(大きさ=8200×50×2mm)上に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を2日間室温で乾燥させた。
【0155】
使用例2.5
例2からの生成物12.5gを水性製品Dynasylan(登録商標)F 8815 0.5gと混合した。この混合物を清浄にした縦長の菱形のステンレス鋼表面(大きさ=8200×50×2mm)上に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を2日間室温で乾燥させた。
【0156】
表4
選択例における研磨したステンレス鋼表面の均一で透明な被覆の鉛筆硬度試験、耐煮沸性の結果
【表6】

【0157】
評価:
蒸留水、酢クリーナー(フォルシュ社の酢クリーナー)、マスタード(レーベンゼンフ社の激辛)及びオーブンクリーナー(Sidolオーブンクリーナー及びグリルクリーナー)を塗布した後の被覆の視覚的評価。このために、約3cmの大きさの丸い表面上で基材を試験媒体で覆った。1時間後に試験媒体を水で洗い流し、かつ基材面を視覚的に評価した。
(−)=シートが分解もしくは剥がれる
(0)=シートが存在するが、しかし僅かに侵される
(+)=シートに変化無し。
【0158】
3.使用例3.1による研磨したステンレス鋼表面上でのDynasylan(登録商標)SIVO 110/SIVO112混合物の架橋温度の低下
合成例1からの生成物20.0gを水性製品Dynasylan(登録商標)SIVO 112 10.0g、Dynasylan(登録商標)SIVO 110 10.0g及び蒸留水40.0gと混合した。この混合物を清浄にして研磨したステンレス鋼表面(大きさ=8200×50×2mm)に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を120℃で10分間乾燥させた。
【0159】
比較例3.2
Dynasylan(登録商標)SIVO 110 10.0gを水性製品Dynasylan(登録商標)SIVO 112 10.0g及び蒸留水20.0gと混合した。この混合物を清浄にして研磨したステンレス鋼表面(大きさ=8200×50×2mm)に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を120℃で10分間乾燥させた。
【0160】
比較例3.3
Dynasylan(登録商標)SIVO 110 10.0gを水性製品Dynasylan(登録商標)SIVO 112 10.0g及び蒸留水20.0gと混合した。この混合物を清浄にして研磨したステンレス鋼表面(大きさ=8200×50×2mm)に湿らせたペーパータオルで塗布した。これから得られた被覆を220℃で10分間乾燥させた。
【0161】
表5:結果
【表7】

【0162】
酢クリーナー及び水試験後の被覆の視覚的評価
(−)=シートが分解もしくは剥がれる
(0)=シートが存在するが、しかし僅かに侵される
(+)=シートに変化無し。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物と水を含有する組成物であって、前記ケイ素化合物はアルコキシシランから由来し、かつ鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋した構造を形成する架橋構造エレメントを有し、その際、少なくとも1つの構造は、理想化された形で一般式Ia
【化1】

[式中、アルコキシシランから由来する構造エレメント中、
− Aは二価のアミノアルキル基、
− トリス−シリル化アミン中のZは互いに独立に二価のアルケニル基であり、
− YはOR1に相応するか、又は互いに独立に架橋及び/又は空間架橋した構造でOR1又はO1/2に相応し、
− その際、R1は互いに独立に、本質的に水素であり、かつ
11及び/又はR12は互いに独立に有機官能基に相応し、かつ
− HXは酸であり、その際、Xは無機又は有機酸基であり、
− 0≦Δ≦2;0≦Ω≦2;a≧0、Σ≧1、e≧0及び(a+Σ+e)≧1である]に相応し、その際、該組成物は本質的に有機溶剤不含であり、かつ架橋の際に本質的にもはやアルコールを遊離しない、本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物と水を含有する組成物。
【請求項2】
本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物と水を特にゾルゲル系又は溶液として含有し、その際、前記ケイ素化合物はアルコキシシランから由来し、かつ鎖状、環状、架橋及び/又は空間架橋した構造を形成する架橋構造エレメントを有し、その際、少なくとも1つの構造は、理想化された形で一般式I
【化2】

[式中、アルコキシシランから由来する構造エレメント中、
− Aは、二価のアミノアルキル基であり、
− Bは、アミノアルキル基であり、
− Cは、アルキル基であり、
− Dは、エポキシ基又はエーテル基であり、かつ
− Eは、有機官能基に相応し、
− トリス−シリル化アミン中、Zは互いに独立に二価のアルキレン基であり、
− Yは、OR1に相応するか又は互いに独立に架橋及び/又は空間架橋した構造でOR1又はO1/2であり、
− その際に、R1は互いに独立に本質的に水素であり、かつR3、R5、R7、R8、R11及び/又はR12は、互いに独立に有機官能基に相応し、かつ
− HXは、酸であり、その際にXは、無機又は有機酸基であり、
− ここで、0≦Δ≦2、0≦Ω≦2;0≦x≦1、0≦y≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、w≧0、Σ≧1、e≧0及び(a+b+c+d+w+Σ+e)≧2である]に相応し、その際、該組成物は本質的に有機溶剤不含であり、かつ架橋の際に本質的にもはやアルコールを遊離しないことを特徴とする、特に請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トリス−シリル化アミノ官能性ケイ素化合物は、以下のアルコキシシランの少なくとも1つ又は複数から由来し、かつ
− 構造エレメント中のAは、一般式II
(OR1)3-Δ(R11)ΔSi−A−Si(R11)Δ(OR1)3-Δ (II)
から由来する二価のアミノアルキル基に相応し、ここで前記式中、
Aは、式III
−Z*−[NH(CH2)f]gNH[(CH2)f*NH]g*−Z*− (III)
[式中、Z*は、独立に二価のアルキレン基、特に−(CH2)i−又は構造異性体、有利には−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−又は−[CH2CH(CH3)CH2]−であり、かつi、f、f*、g又はg*は、同じ又は異なり、ここで、i=0〜8、f及び/又はf*=1、2又は3、g及び/又はg*=0、1又は2、R11は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であるか、又はアリール基である]の二価のアミノ官能基であり、
− トリス−シリル化アミン構造エレメント中のZは、独立に一般式IX
N[ZSi(R12)Ω(OR1)3-Ω]3 (IX)
(式中、Zは独立に二価のアルキレン基であり、特に−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−又は−[CH2CH(CH3)CH2]−の系列からのものであり、R12は、1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であるか、又はアリール基であり、かつ独立にΩ=0又は1である)
から由来する二価のアルキレン基に相応し、
− 構造エレメント中のBは、一般式IV
B−Si(R3)x(OR1)3-x (IV)
[式中、x=0又は1であり、その際、R3は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又はアリール基であり、かつBは、以下の一般式Va又はVb
10h*NH(2-h*)[(CH2)h(NH)]j[(CH2)l(NH)]n−(CH2)k− (Va)
(0≦h≦6;h*=0、1又は2;j=0、1又は2;0≦l≦6;n=0、1又は2;0≦k≦6及びR10は、ベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基及び/又は1〜8個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基に相応する)及び/又は
[NH2(CH2)m]2N(CH2)p− (Vb)
(0≦m≦6、及び0≦p≦6である)
のアミノ官能基のうち1つに相応する]から由来するアミノ官能基に相応し、
− 構造エレメント中のCは、一般式VI
C−Si(R5)y(OR1)3-y (VI)
[ここで、y=0又は1であり、その際、Cは1〜20個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、R5は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又はアリール基に相応する]から由来するアルキル基に相応し、
− 構造エレメント中のDは、一般式VII
D−Si(R7)u(OR1)3-u (VII)
[式中、
u=0又は1であり、その際、Dは3−グリシドキシアルキル基、3−グリシドキシプロピル基、エポキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基、ポリアルキルグリコールアルキル基又はポリアルキルグリコール−3−プロピル基であり、
7は、1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基、又はアリール基に相応する]から由来するエポキシ基又はエーテル基に相応する、及び/又は、
− 構造エレメント中のEは、一般式VIII
E−Si(R8)v(OR1)3-v (VIII)
[式中、v=0又は1であり、その際、R8は1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、ここで、
− Eは、基R8*−Ym−(CH2)s−であり、その際、R8*は1〜9個の炭素原子を有するモノ−、オリゴ−、又はペルフルオロ化アルキル基であるか、又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオロ化アリール基であり、ここで、YはCH2−、O−、アリール基又はS基に相応し、かつm=0又は1、かつs=0又は2である及び/又は
− Eは、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、メルカプトアルキル基、スルファンアルキル基、ウレイドアルキル基、アクリルオキシアルキル基又は1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルコキシ基であり、
− R1は式II、IX、IV、VI、VII及び/又はVIII中、それぞれ互いに独立に1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基に相応する]から由来する有機官能基に相応することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式I又はIa中、ケイ素化合物中のケイ素原子:HOR1もしくは−OR1のモル比は、1超:0.1であり、その際R1は、互いに独立に1〜24個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基に相応することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
1〜12の間、特に1〜9の間、有利には1〜6の間、とりわけ有利には1〜5.4の間のpH値を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
使用されるアルコキシシランに対して、1〜50質量%の含有量のケイ素化合物を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アルキル基を有する構造エレメントCに関して、c≧1であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、酸性シリカゾル、氷酢酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性及びケイ素化合物、特に本質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水及び場合により酸を含有する組成物を製造する方法において、
− 少なくとも1つの式IX
N[ZSi(R12)Ω(OR1)3-Ω]3 (IX)
[式中、Zは独立に二価のアルキレン基、特に−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−、又は−[CH2CH(CH3)CH]−の系列からのものであり、R12は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、かつその際に独立にΩ=0又は1である]のトリス−シリル化アミノアルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式II
(OR1)3-Δ(R11)ΔSi−A−Si(R11)Δ(OR1)3-Δ (II)
[式中、Aは式III
−(CH2)i−[NH(CH2)f]gNH[(CH2)f*NH]g*-(CH2)i*− (III)
(式中、i、i*、f、f*、g又はg*は、同じ又は異なっていてよく、ここで、i及び/又はi*=0〜8、f及び/又はf*=1、2又は3、g及び/又はg*=0、1又は2、R11は、1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基又はアリール基に相応する)のビス−アミノ官能基に相応し、Δ=0又は1である]のビス−アミノアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式IV
B−Si(R3)x(OR1)3-x (IV)
[式中、x=0又は1、R3は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基であり、かつBは、以下の一般式Va又はVb
10h*NH(2-h*)[(CH2)h(NH)]j[(CH2)l(NH)]n−(CH2)k− (Va)
(0≦h≦6;h*=0、1又は2;j=0、1又は2;0≦l≦6;n=0、1又は2;0≦k≦6、及びR10はベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基及び/又は1〜8個の炭素原子を有する線状、分枝及び/又は環状アルキル基に相応する)及び/又は
[NH2(CH2)m]2N(CH2)p− (Vb)
(0≦m≦6及び0≦p≦6である)
のアミノ官能基のうち1つに相応する]のアミノアルキルアルコキシシラン及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により、
− 少なくとも1つの一般式VI
C−Si(R5)y(OR1)3-y (VI)
[ここで、y=0又は1であり、その際、Cは、1〜20個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、R5は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基及び/又はアリール基に相応する]のアルキルアルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により、
− 少なくとも1つの一般式VII
D−Si(R7)u(OR1)3-u (VII)
[式中、u=0又は1、その際、Dは3−グリシドキシアルキル基、3−グリシドキシプロピル基、エポキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基、ポリアルキルグリコールアルキル基又はポリアルキルグリコール−3−プロピル基であり、R7は1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基又はアリール基に相応する]のエポキシ−又はエーテル−アルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 少なくとも1つの式VIII
E−Si(R8)v(OR1)3-v (VIII)
[式中、v=0又は1であり、その際、R8は1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルキル基であり、Eは基R8*−Ym−(CH2)s−であり、その際、R8*は1〜9個の炭素原子を有するモノ−、オリゴ−、又はペルフルオロ化アルキル基であるか、又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオロ化アリール基であり、ここで、Yは、CH2−、O−、アリール基又はS基に相応し、かつm=0又は1、かつs=0又は2であるか、又はビニル基、アリル基、イソプロペニル基、メルカプトアルキル基、スルファンアルキル基、ウレイドアルキル基、アクリルオキシアルキル基、又は1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、分枝又は環状アルコキシ基に相応する]の有機官能性アルコキシシラン、及び/又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物、及び場合により
− 前記アルコキシシラン、加水分解生成物及び/又は縮合生成物の少なくとも2つの混合物(ここで式IX、II、IV、VI、VII及び/又はVIII中、R1は互いに独立に1〜24個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する線状、環状及び/又は分枝アルキル基に相応する)を、
− 水の存在及び場合により酸の存在で、及び場合によりアルコール及び/又は触媒の装入下及び/又は添加下に加水分解し、かつ本質的にアルコールを除去することを特徴とする、本質的に水溶性のトリス−シリル化アミノ官能性及びケイ素化合物、特に本質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水及び場合により酸を含有する組成物を製造する方法。
【請求項10】
本質的に完全に加水分解し、かつ特に少なくとも部分的に共縮合することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
加水分解の間にpH値は、12未満、特に1〜12の間、有利には1〜9の間、特に有利には1〜6の間であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの式IXのトリス−シリル化アミノアルキルアルコキシシランと一般式VIのアルキルアルコキシシランを使用することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水を添加し、かつ組成物が本質的にアルコール不含になるまでアルコール/水−混合物を除去することを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法により得られる組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は混合物の基材との又は基材上での硬化による、基材の又金属表面もしくは合金のような基材表面上の、特にクロム酸塩処理、リン酸塩処理又は亜クロム酸塩処理された金属表面上の被覆。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は混合物の基材との又は基材上での使用及び特に硬化により得られる被覆された又は硬化された製品。
【請求項17】
シランベースの組成物との混合物における、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
基材及び/又は基材表面を変性及び/又は処理するための、特に基材及び/又は基材表面上にバリヤー層を形成するための、殺菌、防カビ及び/又は殺ウイルス作用のある被覆を形成するための、離型助剤としての、定着剤としての、プライマーとしての及び/又は岩石を固定するためのならびに液体塗料又は粉末塗料用もしくは液体塗料又は粉末塗料における成分もしくは構成要素としての、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は請求項17に記載の混合物の使用。
【請求項19】
腐食及び/又はUV照射から保護するための、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は請求項17に記載の混合物をベースとするゾルゲル系としての、及び/又は本質的にゾルゲル不含の請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物又は請求項17に記載のゾルゲル不含の混合物をベースとする、有機及び/又は無機基材上及び/又は有機−無機コンポジット材料上で少なくとも1つの、少なくとも部分的な層、特に硬化層を製造するための、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2012−524162(P2012−524162A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506420(P2012−506420)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053622
【国際公開番号】WO2010/121872
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】